特許第6074163号(P6074163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074163
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ガス検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   G01N27/12 D
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-125743(P2012-125743)
(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公開番号】特開2013-250179(P2013-250179A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】日本写真印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100100262
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 勉
(72)【発明者】
【氏名】松本 晋一
(72)【発明者】
【氏名】黒江 靖
(72)【発明者】
【氏名】栗林 晴美
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−064079(JP,A)
【文献】 特開2005−092010(JP,A)
【文献】 特開昭58−106685(JP,A)
【文献】 実開平03−116490(JP,U)
【文献】 特開昭50−037494(JP,A)
【文献】 特開2005−037160(JP,A)
【文献】 特開2003−042989(JP,A)
【文献】 特開2000−266714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
G01N 33/497
G08B 19/00−21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象ガスのガス濃度に応じて電気的特性値が変化する感ガス部と、
前記検出対象ガスに対して感度を有する温度範囲に前記感ガス部を加熱する加熱部と、
前記電気的特性値から前記検出対象ガスを検出する検出部と、
前記電気的特性値が高濃度側に変化する場合に前記電気的特性値の変化率が所定の閾値を超えると、前記加熱部による前記感ガス部の加熱を停止させる加熱制御部とを備え、
前記加熱制御部は、前記感ガス部の加熱を停止させた状態で所定時間が経過する毎に前記感ガス部を一定期間加熱し、この加熱期間における前記電気的特性値が所定の再加熱判定レベルよりも低濃度側であれば、前記感ガス部の加熱を再開することを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
検出対象ガスのガス濃度に応じて電気的特性値が変化する感ガス部と、
前記検出対象ガスに対して感度を有する温度範囲に前記感ガス部を加熱する加熱部と、
前記電気的特性値から前記検出対象ガスを検出する検出部と、
前記電気的特性値が高濃度側に変化する場合に前記電気的特性値の変化率が所定の閾値を超えると、前記加熱部による前記感ガス部の加熱を停止させる加熱制御部とを備え、
前記感ガス部は半導体式ガスセンサからなり、
前記加熱部が加熱を停止している状態で、前記検出部は、所定の第1時間の間隔で、前記感ガス部と負荷抵抗とが電気的に直列に接続された直列回路に、前記第1時間よりも短い第2時間だけ電圧を印加することによって、前記感ガス部の前記電気的特性値を検出し、
前記加熱制御部は、前記検出部によって検出された前記電気的特性値が、所定の再加熱判定レベルよりも低濃度側であれば、前記感ガス部の加熱を再開することを特徴とするガス検出装置。
【請求項3】
前記加熱制御部は、前記電気的特性値が高濃度側に変化する場合に前記電気的特性値の変化率が前記閾値を超え、且つ、前記電気的特性値が所定の停止判定レベルよりも高濃度側であれば、前記加熱部による前記感ガス部の加熱を停止させることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、基準レベルに対する前記電気的特性値の比率と、所定のガス判定レベルとの高低を比較することによって、前記検出対象ガスの存否を判定しており、
前記検出対象ガスが存在しないと判定されている状態で前記基準レベルを更新する更新部を備え、
前記更新部は、所定の更新期間が経過する毎に直前の前記更新期間において前記電気的特性値が最も低濃度側に変化した時の値を現在の前記更新期間における前記基準レベルとして設定し、且つ、前記更新期間内で前記電気的特性値が前記基準レベルよりも低濃度側に変化した場合は、その時の前記電気的特性値を新たな前記基準レベルとして即座に更新することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象ガスに感応して電気的特性が変化する半導体材料を用いた半導体式のガス検知素子があった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4532671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような半導体式のガス検知素子はガス警報器やガス検知器などに用いられており、これらの装置で動作点検を行う際には、高濃度ガス(検出対象ガスやライターガスなどの代替ガス)を吹き掛けて、所定の動作が行われるかを確認していた。
【0005】
ところで、半導体式のガス検知素子は、検出対象ガスが数%以下の濃度で存在する雰囲気中に晒されるのであれば性能の劣化は少なく、繰り返しの使用が可能であるが、動作点検時に高濃度(例えば濃度が数%以上)のガスに晒されると、その接触燃焼による高温経験や還元反応によってダメージを受け、ガス検知性能が劣化する可能性があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、高濃度ガスに晒されてもガス検知性能の劣化が少ないガス検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、感ガス部と、加熱部と、検出部と、加熱制御部とを備えることを特徴とする。感ガス部は、検出対象ガスのガス濃度に応じて電気的特性値が変化する。前記加熱部は、前記検出対象ガスに対して感度を有する温度範囲に前記感ガス部を加熱する。前記検出部は前記電気的特性値から検出対象ガスを検出する。前記加熱制御部は、前記電気的特性値が高濃度側に変化する場合に前記電気的特性値の変化率が所定の閾値を超えると、前記加熱部による前記感ガス部の加熱を停止させている。前記加熱制御部は、前記感ガス部の加熱を停止させた状態で所定時間が経過する毎に前記感ガス部を一定期間加熱し、この加熱期間における前記電気的特性値が所定の再加熱判定レベルよりも低濃度側であれば、前記感ガス部の加熱を再開することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、感ガス部と、加熱部と、検出部と、加熱制御部とを備えることを特徴とする。感ガス部は、検出対象ガスのガス濃度に応じて電気的特性値が変化する。前記加熱部は、前記検出対象ガスに対して感度を有する温度範囲に前記感ガス部を加熱する。前記検出部は前記電気的特性値から検出対象ガスを検出する。前記加熱制御部は、前記電気的特性値が高濃度側に変化する場合に前記電気的特性値の変化率が所定の閾値を超えると、前記加熱部による前記感ガス部の加熱を停止させている。前記感ガス部は半導体式ガスセンサからなる。前記加熱部が加熱を停止している状態で、前記検出部は、所定の第1時間の間隔で、前記感ガス部と負荷抵抗とが電気的に直列に接続された直列回路に、前記第1時間よりも短い第2時間だけ電圧を印加することによって、前記感ガス部の前記電気的特性値を検出する。前記加熱制御部は、前記検出部によって検出された前記電気的特性値が、所定の再加熱判定レベルよりも低濃度側であれば、前記感ガス部の加熱を再開することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記加熱制御部は、前記電気的特性値が高濃度側に変化する場合に前記電気的特性値の変化率が前記閾値を超え、且つ、前記電気的特性値が所定の停止判定レベルよりも高濃度側であれば、前記加熱部による前記感ガス部の加熱を停止させることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1つの発明において、前記検出部は、基準レベルに対する前記電気的特性値の比率と、所定のガス判定レベルとの高低を比較することによって、前記検出対象ガスの存否を判定しており、前記検出対象ガスが存在しないと判定されている状態で前記基準レベルを更新する更新部を備える。そして、前記更新部は、所定の更新期間が経過する毎に直前の前記更新期間において前記電気的特性値が最も低濃度側に変化した時の値を現在の前記更新期間における前記基準レベルとして設定し、且つ、前記更新期間内で前記電気的特性値が前記基準レベルよりも低濃度側に変化した場合は、その時の前記電気的特性値を新たな前記基準レベルとして即座に更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、動作点検時に高濃度ガス(検出対象ガスやライターガスなどの代替ガス)が感ガス部に吹き掛けられた場合、感ガス部の電気的特性値は急激に変化するが、電気的特性値が高濃度側に変化する場合に電気的特性値の変化率が所定の閾値を超えると、加熱部による感ガス部の加熱を加熱制御部が停止させている。これにより、高濃度ガスが存在する場合には、検出対象ガスに対して感度を有する温度範囲まで感ガス部が加熱されなくなり、感ガス部の劣化を抑制することができる。さらに、加熱停止中に所定時間が経過する毎に感ガス部を一定時間加熱し、この期間に求めた電気的特性値が再加熱判定レベルよりも低濃度側になれば、感ガス部の加熱を再開しても、感ガス部の劣化は抑えられるから、感ガス部の加熱を再開することで、検出対象ガスの検出動作を再開することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、動作点検時に高濃度ガス(検出対象ガスやライターガスなどの代替ガス)が感ガス部に吹き掛けられた場合、感ガス部の電気的特性値は急激に変化するが、電気的特性値が高濃度側に変化する場合に電気的特性値の変化率が所定の閾値を超えると、加熱部による感ガス部の加熱を加熱制御部が停止させている。これにより、高濃度ガスが存在する場合には、検出対象ガスに対して感度を有する温度範囲まで感ガス部が加熱されなくなり、感ガス部の劣化を抑制することができる。さらに、金属酸化物半導体からなる感ガス部の場合、接触燃焼式のガスセンサと異なり、加熱部が感ガス部の加熱を停止している状態でも、負荷抵抗の他端とヒータ電極の間に電圧を印加して求めた電気的特性値から検出対象ガスのガス濃度を求めることが可能であり、加熱制御部は、加熱停止中に検出した電気的特性値と再加熱判定レベルとを比較することで、感ガス部の加熱を再開するか否かを判定できる。よって、感ガス部の加熱を再開するか否かを判定するために、一時的にでも加熱部を加熱する必要が無く、省電力が図られるとともに、感ガス部が劣化する可能性をさらに低減できる。
請求項の発明によれば、電気的特性値が高濃度側に変化する場合に電気的特性値から求まるガス濃度の変化率が閾値を上回り、且つ、電気的特性値が停止判定レベルよりも高濃度側であれば、加熱部による感ガス部の加熱を加熱制御部が停止させているので、動作点検用に高濃度ガスが吹き掛けられた場合など、高濃度ガスが存在する場合には感ガス部の加熱を停止することで、検出対象ガスに対して感度を有する温度範囲まで感ガス部が加熱されなくなり、感ガス部の劣化を抑制することができる。
【0016】
請求項の発明によれば、基準レベルに対する電気的特性値の比率と、ガス判定レベルとの高低を比較することで検出対象ガスの存否を判定する場合に(いわゆる相対値判定)、更新部が、検出対象ガスの存否を判定するために用いられる基準レベルを、直前の更新期間における電気的特性値や現在の更新期間における電気的特性値をもとに更新しているので、温湿度の変化や風があたることによって発生する電気的特性値の変化にあわせて基準レベルを更新することができ、検出対象ガスの誤検知が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の概略的な回路図である。
図2】同上に用いられる感ガス部を収納したパッケージの断面図である。
図3】同上に用いられるパッケージが外ケースに収納された状態の一部を破断した斜視図である。
図4】同上の動作を説明するフローチャートである。
図5】同上の動作を説明するタイムチャートであり、(a)は感ガス部の抵抗値変化、(b)は報知出力を示す図である。
図6】同上のまた別の動作を説明するタイムチャートであり、(a)は感ガス部の抵抗値変化、(b)はヒータ電圧、(c)は報知出力を示す図である。
図7】同上のさらに別の動作を説明するタイムチャートであり、(a)はヒータ電圧、(b)は中心電極への印加電圧を示す図である。
図8】同上の相対値判定に用いる基準レベルの更新動作を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を、検出対象ガスである燃焼ガス(例えばメタンなど)の濃度が警報レベルを超えるとガス漏れ警報を発するガス警報器に適用した実施形態について図1図8を参照して説明する。尚、本発明に係るガス検出装置はガス警報器に限定されるものではなく、空気の汚れ度合いを検出するものや、匂いガスを検出するものに適用してもよいことは言うまでもない。
【0019】
図1はガス検出装置のブロック図であり、信号処理回路10と、定電圧回路11と、報知回路12と、感ガス部20と、ヒータ21と、中心電極22と、サーミスタ23とを主要な構成として備えている。
【0020】
定電圧回路11は、電池13を電源として、一定の直流電圧(例えばDC5V)を生成し、信号処理回路10などに動作電圧を供給する。尚、電源は電池13に限定されるものではなく、商用電源を電源とするものでもよい。
【0021】
報知回路12は、例えばブザー音や音声メッセージなどの報知音(警報音)を出力するスピーカからなり、信号処理回路10からの出力信号に応じて所定の報知音を出力する。
【0022】
感ガス部20は、例えば酸化錫(SnO)等の金属酸化物半導体の焼結体からなり、雰囲気中の検出対象ガスに感応して電気的特性値である電気抵抗が変化する。検出対象ガスの濃度が高くなるほど、感ガス部20の酸化還元反応によって、感ガス部20の電気抵抗は小さくなる。この種の感ガス部20では、検出対象ガスの種類によって、ガス感度が高感度となる温度範囲が異なっている。例えば400℃付近の比較的高温の温度範囲では、不完全燃焼ガスである一酸化炭素の感度に比べて、燃焼ガスであるメタンの感度が十分高感度であり、この温度範囲における抵抗値変化からメタンを選択的に検知することが可能となっている。また80℃付近の比較的低温の温度範囲では、燃焼ガスであるメタンの感度に比べて、不完全燃焼ガスである一酸化炭素の感度が十分高感度であり、この温度範囲における抵抗値変化から一酸化炭素を選択的に検知することが可能となっている。尚、検出対象ガスに対して感度を有する温度範囲は、要求されるガス検知精度、感ガス部20の組成、検出対象ガスの種類やその検出対象ガスに対して想定されるガス検知時の濃度(すなわち警報判定レベルの濃度)などに応じて適宜設定される。
【0023】
感ガス部20の材料である金属酸化物半導体には、雑ガスに対する感度を低減させる触媒を担持していることが好ましい。このような触媒としては、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、セリウム(Ce)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)等がある。これらの触媒は一種類が単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用して用いられてもよい。特に触媒としてPdが用いられる場合、感ガス部20の応答性が向上する。すなわち、検出対象ガスのガス濃度が上昇するのに伴って、感ガス部20の電気抵抗が変化し始めてから、電気抵抗が安定するまでに要する時間が短縮される。
【0024】
図2に示すように、感ガス部20の内部にはヒータ21と中心電極22とが埋設される。ヒータ21は貴金属線(例えば白金線)をコイル状に巻回して形成されている。中心電極22は棒状の貴金属線(例えば白金線)からなり、コイル状に形成されたヒータ21の中心を貫通するように配置されている。図1中に感ガス部20の等価回路を示してあり、ヒータ21の電気抵抗をRhとし、ヒータ21の一端と中心電極22との間の感ガス部20の電気抵抗をRsとしている。
【0025】
この感ガス部20は図2及び図3に示すようにベース31とケース32とからなるパッケージ30内に収納されている。ベース31は絶縁性の樹脂により円盤状に形成され、3本のリード端子33a,33b,33cがベース31を厚み方向に貫通するように設けられている。ヒータ21の両端はそれぞれリード端子33a,33bに溶接され、中心電極22の一端はリード端子33cに溶接されている。ケース32は金属材料により、円筒状の筒部32aと、筒部32aの上端部から内側に張り出すように設けられた上板部32bとを一体に備えている。上板部32bの中央には通気用の貫通孔32cが設けられ、この貫通孔32cには塵や埃の侵入を抑制するために例えばステンレス製の金網34が取り付けられている。
【0026】
そして、このパッケージ30は、合成樹脂製の外ケース40内に収納されている。外ケース40は、筒部32aの外径よりも内径が若干大きめに形成された円筒状の筒部40aと、筒部40aの上端部から内側に張り出すように設けられた上板部40bとを一体に備えている。上板部40bの中央には通気用の開口40cが設けられ、この開口40cには例えばステンレス製の金網41が取り付けられている。外ケース40の内部には、貫通孔32cを内側に向けた状態でパッケージ30が収納されており、貫通孔32cと開口40cとの間のガス流路にはフィルタ42が配置されている。このフィルタ42は例えば活性炭、シリカゲル等で形成され、また活性炭とシリカゲルとを組み合わせた材料で形成されても良い。フィルタ42が設けられていると、開口40cから外ケース40内に流入したガスに含まれる雑ガス(例えばNOx、アルコールのような有機溶剤の蒸気等)や被毒ガス(例えばシリコン蒸気等)がフィルタ42に除去される。これにより、パッケージ30内に流入する雑ガスや被毒ガスが低減されるから、雑ガスによる誤検知が抑制され、また感ガス部20が被毒ガスによって被毒されにくくなる。
【0027】
ヒータ21は、上述のように感ガス部20の内部に埋設されており、その両端は感ガス部20の外部に露出している。そして、ヒータ21はスイッチング素子Q1を介して定電圧回路11の出力端子間に接続されている。スイッチング素子Q1は例えばFET(Field Effect Transistor)からなり、そのゲート電極は信号処理回路10の出力端子T1に接続され、信号処理回路10からの出力信号に応じてオン/オフが切り替えられる。信号処理回路10は、出力端子T1からスイッチング素子Q1のゲート電極に出力するデューティ信号のパルス幅を制御することで、ヒータ21に印加される電圧の平均値及び消費電力を調整し、それによって感ガス部20の温度を制御する。
【0028】
例えば、検出対象ガスがメタンのような燃焼ガスの場合、感ガス部20の温度が約400℃付近で燃焼ガスに対する感ガス部20の感度が、他のガスに対する感度よりも大きくなるので、信号処理回路10は、ヒータ21に印加される電圧の平均値を約0.9V、消費電力を約150mWとすることで、感ガス部20の温度を400℃付近の比較的高い温度領域に制御する。また、検出対象ガスが一酸化炭素のような不完全燃焼ガスの場合、感ガス部20の温度が約80℃付近で一酸化炭素に対する感ガス部20の感度が他のガスに対する感度よりも大きくなるので、信号処理回路10は、ヒータ21に印加される電圧の平均値を約0.2V、消費電力を約36mWとすることで、感ガス部20の温度を80℃付近の比較的低い温度領域に制御する。ここにおいて、ヒータ21によって感ガス部20を加熱する加熱部が構成され、信号処理回路10とスイッチング素子Q1とで、ヒータ21への通電を制御することで感ガス部20の加熱状態を制御する加熱制御回路が構成される。
【0029】
中心電極22の両端は感ガス部20の外部にそれぞれ露出している。中心電極22の一方の端部は、負荷抵抗R1を介して信号処理回路10の出力端子T2に電気的に接続されるとともに、信号処理回路10のA/D入力端子T3に接続される。信号処理回路10は、出力端子T2から一定電圧を出力し、負荷抵抗R1と感ガス部20との直列回路に一定電圧を印加した状態で、中心電極22の電圧V1をA/D入力端子T3から取り込んでいる。ここで、感ガス部20の電気抵抗が検出対象ガスのガス濃度に応じて変化すると、負荷抵抗R1と感ガス部20との分圧比が変化して、中心電極22の電圧V1が変化する。例えば検出対象ガスのガス濃度が上昇すると、感ガス部20の電気抵抗が減少するので、分圧比の変化によって中心電極22の電圧V1は低下する。信号処理回路10は、出力端子T2から一定電圧を出力している状態で、A/D入力端子T3に入力される電圧V1をA/D変換して取り込んでおり、この電圧V1から感ガス部20の抵抗値Rsを求め、この抵抗値Rsをもとにガス濃度を検出する。ここにおいて、信号処理回路10と中心電極22と負荷抵抗R1とで、感ガス部20の電気的特性値から検出対象ガスを検出する検出部が構成される。
【0030】
また、サーミスタ23と抵抗R2との直列回路が定電圧回路11の両端間に接続され、サーミスタ23及び抵抗R2の接続点の電圧V2は信号処理回路10のA/D入力端子T4に入力されている。サーミスタ23の電気抵抗は温度に応じて変化するので、温度変化に応じてサーミスタ23と抵抗R2との分圧比が変化し、それによって電圧V2の値が変化する。信号処理回路10の内蔵メモリ(図示せず)には、雰囲気温度と電圧V2との関係を示す検量線データが予め記憶されている。信号処理回路10は、この検量線データと、A/D入力端子T4から取り込んだ電圧V2の値をもとに、雰囲気温度を求めることができる。感ガス部20は温湿度の影響を受けてその電気抵抗が変化するため、信号処理回路10は、サーミスタ23を用いて検出した雰囲気温度をもとに、感ガス部20の電気抵抗を補正する。
【0031】
ところで、上述の感ガス部20は適宜の手法で作製される。例えば感ガス部20に含まれる酸化物半導体がSnOである場合、適宜の手法で調製されたSnOの粉末が用いられる。例えばSnClの水溶液をNHで加水分解してスズ酸ゾルを調製する。このスズ酸ゾルを風乾した後、例えば550〜700℃の空気雰囲気中で0.5〜3時間焼成する。この焼成により得られたSnOの塊状物が粉砕されると、SnOの粉末が得られる。粉末状のSnOにパラジウム(Pd)を担持させるためには、SnOの粉末にPdの王水溶液を含浸させ、例えば500℃の空気雰囲気中で1時間焼成する。Pdの担持量は例えばSnOに対して1.7質量%とすることができる。またPdに加えて、タングステン(W)をSnOに対して5質量%担持させても良い。またPd及びWに加えて、SnOに白金(Pt)、ロジウム(Rh)、セリウム(Ce)、モリブデン(Mo)の内の1つ又は複数を、SnOに対して0.5質量%程度担持させても良い。骨材が使用される場合は、SnOの粉末とアルミナ(α−アルミナ)等の骨材の粉末とを混合する。この混合物に、ポリエチレングリコール、グリセリン、テルピネオール等の有機溶剤が加えられると、ペースト状の混合物が調製される。このペースト状の混合物が、リード端子33a〜33cに支持されたヒータ21及び中心電極22の周囲に塗布され、例えば500℃の空気雰囲気中で1時間焼成されると、感ガス部20が形成される。
【0032】
尚、感ガス部20は平板状、球状(楕円球状を含む)等の適宜の形状に形成でき、また感ガス部20の寸法も適宜設計される。本実施形態では、図2に示すように感ガス部20は長手方向の径が略0.5mm、短手方向の径が略0.3mmの楕円球状に形成されている。感ガス部20が球状に形成されると、感ガス部20が平板状や円筒状に形成される場合と比べて感ガス部20の小型化が可能であり、その結果、感ガス部20の熱容量を低減することができる。また本実施形態では、球状の感ガス部20にヒータ21と中心電極22とを埋設し、ヒータ21により感ガス部20を直接加熱するガスセンサを例に説明したが、上記の構造のガスセンサに限定されるものではなく、アルミナなどの絶縁基板上に感ガス部を配置し、絶縁基板の裏面に配置したヒータで感ガス部を間接加熱するガスセンサでもよい。
【0033】
本実施形態のガス検出装置は、以上のような構成を有しており、その動作について以下に説明する。
【0034】
信号処理回路10に定電圧回路11から電源が供給されると、信号処理回路10は、初期化動作を行った後、検出対象ガスである燃焼ガスの検出を開始する。
【0035】
信号処理回路10は、出力端子T1から出力するパルス信号のデューティ比を制御することによってヒータ21の発熱を制御し、検出対象ガスに対して感度を有するような温度領域であって、より好ましくは検出対象ガスに対する感度が他のガスに対する感度よりも高くなる温度範囲に感ガス部20の温度を制御し、検出対象ガスの検出動作を開始する。
【0036】
ここで、図4のフローチャートを参照して、信号処理回路10による検出対象ガスの検出動作を説明する。信号処理回路10は所定の検出周期のカウントを行い、検出周期が経過する毎に(ステップS1のYes)、出力端子T2から一定電圧を出力して、この時の電圧V1を入力端子T3から取り込むとともに、入力端子T4から電圧V2を取り込む(ステップS2)。
【0037】
信号処理回路10は、サーミスタ23の抵抗値に比例した電圧V2を用いて電圧V1の温度補正を行い(ステップS3)、温度補正後の電圧V1をもとに感ガス部20の抵抗値Rsを求め、抵抗値Rsと所定の警報判定レベルLV1との高低を比較する(ステップS4)。
【0038】
ここで、抵抗値Rsが警報判定レベルLV1よりも高ければ(ステップS4のNo)、信号処理回路10は、ガス濃度が警報レベルを下回っていると判断し、ステップS1に戻って上記の処理を繰り返す。
【0039】
一方、抵抗値Rsが警報判定レベルLV1よりも低ければ(ステップS4のYes)、信号処理回路10は、ガス濃度が警報レベルを超えたと判断して、報知回路12からガス警報を出力させる(ステップS5)。信号処理回路10は、ガス濃度が警報レベルを超えたと判断すると、抵抗値Rs(電気的特性値)の変化率が所定の閾値を超えるか否かを判定する(ステップS6)。本実施形態では、電気的特性値として感ガス部20の抵抗値Rsを検出しており、ガス濃度が高濃度側に変化するにつれて、感ガス部20の抵抗値Rsは小さくなる。したがって、信号処理回路10は、抵抗値Rsの変化率が所定の閾値を下向きに超えるか否かを判定することで、高濃度ガスが感ガス部20に吹き掛けられたか否かを判定する。本実施形態の信号処理回路10は、4秒間の抵抗値Rsの移動平均値Rs0を逐次算出しており、今回求めた感ガス部20の抵抗値Rsと、所定時間前(例えば1秒前)に求めた移動平均値Rs0との比率(Rs/Rs0)を変化率として求め、この変化率が閾値を下向きに超えると(ステップS6のYes)、高濃度ガスが吹き掛けられたと判断する。尚、高濃度ガスが感ガス部20に吹き掛けられた場合には、抵抗値Rsの変化率が閾値を下回り(下向きに超え)、それ以外の場合には抵抗値Rsの変化率が閾値を下回らないように、閾値の値が設定されている。
【0040】
ステップS6の判定で抵抗値Rsの変化率が閾値を下回っていなければ(ステップS6のNo)、信号処理回路10は、高濃度ガスが吹き掛けられていないと判断し、ステップS1に戻って、上記の処理を繰り返す。
【0041】
ステップS6の判定で抵抗値Rsの変化率が閾値を下回っていると(ステップS6のYes)、信号処理回路10は、高濃度ガスに晒されることによって抵抗値Rsが大きく変動したと判断し、出力端子T1からのパルス信号の出力を停止して、ヒータ21による感ガス部20の加熱を停止させる(ステップS7)。このように、信号処理回路10は、抵抗値Rs(電気的特性値)が高濃度側に変化する場合に抵抗値Rsの変化率が所定の閾値を超え、且つ、抵抗値Rsが所定の停止判定レベル(本実施形態では警報判定レベルLV1と同じ)よりも高濃度側であれば、ヒータ21(加熱部)による感ガス部20の加熱を停止させている。
【0042】
その後、信号処理回路10は、加熱停止時からの経過時間をカウントし、加熱停止時から所定時間(例えば15秒)が経過すると(ステップS8のYes)、出力端子T1からパルス信号を出力して、ヒータ21による加熱を再開させる(ステップS9)。そして、加熱を再開してから一定時間(感ガス部20の抵抗値が安定するのに必要な時間、例えば5秒間)が経過した時点で、信号処理回路10は感ガス部20の抵抗値Rsを検出し、この抵抗値Rsと所定の再加熱判定レベルLV2との高低を比較する(ステップS10)。ここで、抵抗値Rsが再加熱判定レベルLV2以下であれば(ステップS10のNo)、信号処理回路10は、高濃度ガスの影響が残っていると判断し、ステップS7に戻って、上記の処理を繰り返す。一方、抵抗値Rsが再加熱判定レベルLV2よりも大きければ(ステップS10のYes)、信号処理回路10は、高濃度ガスが拡散してその影響が十分に低下したと判断し、ステップS1に戻って通常の検出動作を再開する。尚、本実施形態では再加熱判定レベルLV2を、停止判定レベルとなる警報判定レベルLV1よりも大きい値(すなわち低濃度側)に設定しているが、再加熱判定レベルLV2を停止判定レベルや警報判定レベルLV1と同じ値にしてもよい。また停止判定レベルを、警報判定レベルLV1と同じ値に設定しているが、停止判定レベルを、警報判定レベルLV1と異なる値に設定してもよい。
【0043】
次に、本実施形態のガス検出装置の動作を図5及び図6のタイムチャートにしたがって説明する。図5は通常動作時の波形を示し、図5(a)は感ガス部20の抵抗値Rsを、図5(b)は報知出力をそれぞれ示す。検出対象ガスのガス濃度が変化するにつれて、感ガス部20の抵抗値Rsが変化しており、時刻t1において抵抗値Rsが警報判定レベルLV1を下回ると、信号処理回路10は、ガス濃度が警報レベルを超えたと判断し、報知回路12により報知動作を行わせる。その後、検出対象ガスのガス濃度が低下し、時刻t2において抵抗値Rsが警報判定レベルLV1よりも大きくなると、信号処理回路10は、ガス濃度が警報レベルを下回ったと判断し、報知回路12による報知動作を停止させる。
【0044】
図6は高濃度ガスが感ガス部20に吹き掛けられた場合の波形を示し、図6(a)は感ガス部20の抵抗値Rsを、図6(b)はヒータ21に印加されるヒータ電圧を、図6(c)は報知回路12の報知出力をそれぞれ示している。
【0045】
清浄雰囲気中に置かれた感ガス部20に、時刻t11において高濃度ガスが吹き掛けられると、感ガス部20の抵抗値Rsは急激に低下する。信号処理回路10は上記のガス検出処理を定期的に繰り返しており、高濃度ガスの吹き掛けによって抵抗値Rsが警報判定レベルLV1を下回ると、報知回路12からガス警報を出力させる。また信号処理回路10は、抵抗値Rsが警報判定レベルLV1を下回った場合(すなわちガス濃度が警報レベルを超えた場合)、抵抗値Rsの変化率と所定の閾値との高低を比較する。高濃度ガスが吹き掛けられた場合は抵抗値Rsの変化率が閾値を下向きに超えるので、信号処理回路10は、抵抗値Rsの変化率と閾値との高低を比較した結果に基づいて、高濃度ガスが吹き掛けられたと判断し、ヒータ21による感ガス部20の加熱を停止する。
【0046】
信号処理回路10は、加熱を停止した時刻t11から所定時間W1(例えば15秒)が経過した時刻t12において、出力端子T1からパルス信号を出力し、ヒータ21による加熱を一定時間行わせる。そして、加熱開始から所定時間W2(例えば5秒)が経過した時刻t13において信号処理回路10は感ガス部20の抵抗値Rsを求め、この時の抵抗値Rsと再加熱判定レベルLV2との高低を比較する。時刻t13では感ガス部20に吹き掛けた高濃度ガスの影響が残っており、抵抗値Rsは再加熱判定レベルLV2よりも低いため、信号処理回路10は、高濃度ガスが感ガス部20の周囲に残っていると判断して、ヒータ21を停止させる。
【0047】
その後も、信号処理回路10は、加熱停止時(時刻t13)からの経過時間をカウントしており、時刻t13から所定時間W1が経過した時刻t14において、出力端子T1からパルス信号を出力し、ヒータ21による加熱を一定時間行わせる。そして、加熱開始から所定時間W2(例えば5秒)が経過した時刻t15において、信号処理回路10は感ガス部20の抵抗値Rsを求め、この時の抵抗値Rsと再加熱判定レベルLV2との高低を比較する。時刻t15では高濃度ガスの影響が低下し、抵抗値Rsが再加熱判定レベルLV2よりも大きくなっているので、信号処理回路10は、高濃度ガスが拡散したと判断し、報知回路12によるガス警報を停止させるとともに、ヒータ21の加熱を継続し、通常のガス検出動作に復帰する。
【0048】
以上のように、加熱制御部たる信号処理回路10は、感ガス部20の電気的特性値(例えば抵抗値Rs)が高濃度側に変化する場合に電気的特性値の変化率が所定の閾値を超えると、ヒータ21(加熱部)による感ガス部20の加熱を停止させている。高濃度ガス(例えば検出対象ガスやライターガスなどの代替ガス)が周囲に存在している状態で感ガス部20の加熱が継続されていると、接触燃焼による高温経験や還元反応によって感ガス部20がダメージを受ける可能性があるが、信号処理回路10は、感ガス部20の電気的特性値が高濃度側に変化する場合に電気的特性値の変化率が所定の閾値を超えると、ヒータ21による感ガス部20の加熱を停止させているので、感ガス部20の劣化を抑制して、ガス検知性能の劣化を低減することができる。尚、本実施形態では感ガス部20として半導体式ガスセンサを用いた場合を例に説明したが、接触燃焼式のガスセンサを用いた場合でも同様の効果が得られる。
【0049】
また、加熱制御部たる信号処理回路10は、感ガス部20の加熱を停止させた状態で所定時間が経過する毎に感ガス部20を一定期間加熱し、この加熱期間における電気的特性値(抵抗値Rs)が所定の再加熱判定レベルLV2よりも低濃度側になると、感ガス部20の加熱を再開している。
【0050】
これにより、検出対象ガスの濃度が低下した状態で感ガス部20の加熱を再開して、検出対象ガスの検出動作を開始することができる。
【0051】
また、加熱制御部たる信号処理回路10は、感ガス部20の電気的特性値(例えば抵抗値Rs)が高濃度側に変化する場合に電気的特性値の変化率が所定の閾値を超え、且つ、電気的特性値が所定の停止判定レベル(本実施形態では警報判定レベルLV1と同じ値を使用)よりも高濃度側になると、加熱部(ヒータ21)による感ガス部20の加熱を停止させている。
【0052】
これにより、信号処理回路10は、高濃度ガスが存在する場合、ヒータ21による感ガス部20の加熱を確実に停止できるので、高濃度ガスに晒されることによって感ガス部20の劣化が進むのを抑制できる。尚、本実施形態では停止判定レベルを警報判定レベルLV1と同じ値にしているが、停止判定レベルは警報判定レベルLV1と異なる値に設定されていてもよい。
【0053】
なお、本実施形態では感ガス部20に半導体式ガスセンサを用いている。接触燃焼式のガスセンサの場合、白金コイルで触媒を加熱し、触媒でガスを接触燃焼させたときの温度上昇を白金コイルの抵抗値変化から検出するため、ガス検出のためには白金コイルに通電する必要があり、消費電力が大きくなる。それに対して、本実施形態では感ガス部20に半導体式ガスセンサを用いており、検出対象ガスの種類によっては(例えば一酸化炭素や水素などでは)、加熱停止中でも感ガス部20が検知対象ガスに対して感度を有しているので、感ガス部20と負荷抵抗R1との直列回路に検出電圧を印加するだけで、感ガス部20の抵抗値Rsからガスの存否を検出することが可能である。そこで、信号処理回路10は、図7(a)(b)に示すように、感ガス部20の加熱停止中に、出力端子T2から例えば30秒間隔で約1m秒間、一定電圧を出力することによって、負荷抵抗R1の他端とヒータ21との間に電圧を印加し、この状態で中心電極22に発生する電圧をもとに感ガス部20の電気的特性値を検出する。そして、加熱制御部たる信号処理回路10は、感ガス部20の電気的特性値が所定の再加熱判定レベルよりも低濃度側であれば、感ガス部20の加熱を再開する。
【0054】
このように本実施形態では感ガス部20に半導体式ガスセンサを用いているので、ヒータ21に通電していない状態でも、感ガス部20と負荷抵抗R1との直列回路に一定電圧を印加することによって、感ガス部20の抵抗値を検出して、ガスの存否を判断できる。よって、ヒータ21への通電を停止した状態で高濃度ガスの影響が低下したか否かを判断でき、感ガス部20の電気的特性値を検出するために、一時的にでもヒータ21に通電する必要が無いから、省電力が図られるとともに、感ガス部20が劣化する可能性をさらに低減できる。
【0055】
ところで、上述の実施形態では、感ガス部20の電気的特性値(抵抗値Rs)と所定のガス判定レベル(警報判定レベルLV1)との高低を比較することによって、検出対象ガスの存否を判定しているが、空気の汚れ度合いを検出するガス検出装置や、匂いガスを検出するガス検出装置には、基準レベルに対する電気的特性値(例えば抵抗値Rs)の比率と、ガス判定レベルとの高低を比較することによって、検出対象ガスの存否を判定するものもある。ここにおいて、基準レベルに対する電気的特性値の比率と所定のガス判定レベルとの高低を比較する判定方法を相対値判定といい、電気的特性値と所定のガス判定レベルとの高低を比較する判定方法を絶対値判定という。
【0056】
そして、相対値判定により検出対象ガスの存否を判定する場合に、電気的特性値の基準レベルを一定値としてもよいが、温湿度の変化や風があたることによって発生する電気的特性値の変化にあわせて基準レベルを更新することも好ましい。
【0057】
以下に、信号処理回路10が、電気的特性値(例えば抵抗値Rs)の基準レベルR0を、周囲の環境変化に応じて更新する動作について図8を参照して説明する。尚、図8中の実線aは感ガス部20の抵抗値Rs、図8中の点線bは基準レベルR0をそれぞれ示している。
【0058】
信号処理回路10は、検出対象ガスが存在しないと判定されている状態で抵抗値Rsの基準レベルR0を逐次更新する。すなわち、更新部たる信号処理回路10は、所定の更新期間D1,D2…が経過する毎に直前の更新期間D(n−1)において感ガス部20の電気的特性値が最も低濃度側に変化した時の値を現在の更新期間D(n)における基準レベルR0として設定し、且つ、現在の更新期間D(n)内で電気的特性値が現在の基準レベルR0よりも低濃度側に変化した場合は、その時の電気的特性値を新たな基準レベルR0して即座に更新する。尚、(n−1)番目(nは2以上の整数)の更新期間をD(n−1)と表記している。
【0059】
図8(a)の更新期間D1では感ガス部20の抵抗値Rsが漸増傾向(低濃度側に変化する傾向)にあり、この期間内では感ガス部20の抵抗値Rsが基準レベルR0よりも低濃度側に常に変化するので、更新部たる信号処理回路10は、感ガス部20の抵抗値Rsを演算により求める毎に、この抵抗値Rsを新たな基準レベルR0として即座に更新する。
【0060】
一方、更新期間D4〜D7では、現在の更新期間における感ガス部20の抵抗値Rsが、直前の更新期間における抵抗値Rsの最大値よりも高濃度側に変化しているので、更新部たる信号処理回路10は、直前の更新期間における抵抗値Rsの最大値を、現在の更新期間における基準レベルR0として設定する。
【0061】
信号処理回路10は、上述のようにして更新した基準レベルR0に対する感ガス部20の抵抗値Rsの比率を求め、この比率と所定のガス判定レベルとの高低を比較することによって、検出対象ガスの存否を判定する。尚、図8の例では、基準レベルR0に対する感ガス部20の抵抗値Rsの比率がガス判定レベルを常に上回っているので、信号処理回路10は、検出対象ガスが存在しないと判定する。更新部としての信号処理回路10は、検出対象ガスが存在すると判定した場合、基準レベルR0の更新処理を停止しており、検出対象ガスが存在すると判定した状態で基準レベルR0が更新されることによって、検出対象ガスの存否を判定した結果が変更されるのを防止できる。
【0062】
以上のように、検出部たる信号処理回路10は、基準レベルに対する電気的特性値(例えば抵抗値Rs)の比率と所定のガス判定レベルとの高低を比較することによって検出対象ガスの存否を判定する。更新部たる信号処理回路10は、検出対象ガスが存在しないと判定されている状態で基準レベルを更新する処理を行う。そして、更新部たる信号処理回路10は、所定の更新期間が経過する毎に直前の更新期間において電気的特性値が最も低濃度側に変化した時の値を現在の更新期間における基準レベルとして設定し、且つ、更新期間内で電気的特性値が基準レベルよりも低濃度側に変化した場合は、その時の電気的特性値を新たな基準レベルとして即座に更新する。
【0063】
このように、検出対象ガスの存否を判定するために用いられる基準レベルを、直前の更新期間における電気的特性値や現在の更新期間における電気的特性値をもとに更新しているので、温湿度の変化や風があたることによって発生する電気的特性値の変化にあわせて基準レベルを更新することができ、検出対象ガスの誤検知が発生しにくくなる。
【符号の説明】
【0064】
10 信号処理回路(検出部、加熱制御部、更新部)
20 感ガス部
21 ヒータ(加熱部)
22 中心電極(検出部)
R1 負荷抵抗(検出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8