(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の空気調和装置の一実施形態の構成を示す概略図である。
【0014】
空気調和装置1は、筐体10の下部側面に設けられた吸気口11と、筐体10の上部側面に設けられた排気口12と、筐体10に収容された空気浄化手段20と、を有している。
【0015】
空気浄化手段20は、洗浄水を収容するとともに、循環経路に沿って洗浄水を循環させ、吸気口11から筐体10内部に導入された空気を洗浄水と接触させることで、空気を浄化するようになっている。このため、空気浄化手段20は、洗浄水を貯留する循環タンク21と、洗浄水が空気と接触する気液接触部を構成する充填塔22と、充填塔22に洗浄水を散水する散水ノズル23と、を有している。筐体10の底部に設置された循環タンク21の上方に、充填塔22と、散水ノズル23とが、この順で設置されている。また、空気浄化手段20は、洗浄水を循環させる循環ポンプ24を有している。
【0016】
空気浄化手段20に収容され、空気を浄化するために使用する洗浄水は、清浄な水であれば特に限定されず、水道水、井水、蒸留水、純水、電解水等を用いることができる。
【0017】
循環タンク21には、配管31を介して外部水源32が接続されており、配管31に設けられた給水弁33の制御により、外部水源32からの洗浄水の補充および交換が可能となっている。また、循環タンク21の底面には、水抜き用の排水弁25が設けられている。さらに、循環タンク21には、一対の電極を有し、洗浄水を電気分解して塩素(次亜塩素酸)を生成し、洗浄水中の雑菌類の繁殖を抑制するための電気分解手段26が設けられている。
【0018】
吸気口11を挟んで循環タンク21の上方には、支持体(図示せず)によって支持され、充填材としてラシヒリングが充填された充填塔22が設けられている。上方の散水ノズル23から散布される洗浄水がラシヒリングの表面に付着し、その表面で、下方から上昇してくる空気との気液接触が行われることになる。充填材としては他にも、レッシングリング、ポールリング、サドル、スルザーパッキン等の、充填塔22において一般的に用いられる充填材を用いることができる。充填塔22の代わりに、棚段塔を用いることもできる。また、気液接触部は、フラットな上面とラフでザラザラした下面とを有するマット状の繊維集合体から構成されていてもよい。このような繊維集合体としては、旭化成ホームプロダクツ株式会社のサランロック(登録商標)が挙げられる。
【0019】
散水ノズル23は、例えば多数の孔の開けられた配管であり、孔から洗浄水を吐出するようになっている。この配管の形状は特に限定されず、充填塔22に洗浄水が均一に散布されれば、直線状または同心円状の複数の管、らせん状の管など、任意の形状の管が選択可能である。散水ノズル23としては、ジョロ、シャワー、スプリンクラー、スプレータイプ等、公知の散水ノズルを適宜用いることができるが、スプレータイプが好適である。スプレータイプは、散布される水が霧状で、粒径が細かい。そのため、充填塔22の充填材を効率良く濡らすことができるだけでなく、スプレーから散布される霧状の水自体が被処理空気と接触して被処理空気を浄化することができ、結果として、気液接触効率が高くなる。また、一つのノズルから広範囲に水を散水することができるため、部品点数を少なくすることができる。
【0020】
循環ポンプ24は、一次側(吸込側)が配管27を介して循環タンク21に接続され、二次側(吐出側)が配管28を介して散水ノズル23に接続され、これにより、循環タンク21と、配管27と、循環ポンプ24と、配管28と、散水ノズル23とから循環経路が形成され、洗浄水を循環させることが可能となる。本実施形態では、循環ポンプ24は、筐体10の外部に設けられているが、洗浄水を循環させるようになっていればよく、筐体10の内部に設けられていてもよい。また、循環ポンプ24は、循環タンク21内に設けられた水中ポンプであってもよい。
【0021】
空気浄化手段20の上方には、気液接触方式により浄化された空気に含まれる大量の湿分を除去するための湿度調節手段が設けられている。本実施形態では、湿度調節手段としてデシカントロータ40が用いられている。
【0022】
デシカントロータ40は、内部に乾燥剤を保持した回転可能なロータ41を有し、ロータ41の回転軸Cに関して一定の角度範囲に吸湿領域42を形成している。吸湿領域42では、水分を大量に含む、空気浄化手段20を通過した空気が、上方に向かって、ロータ41の厚み方向にロータ41を通過する。その際、ロータ41の内部に保持された乾燥剤によって、空気の湿分が吸収される。一方、残りの角度範囲は再生領域43となっている。そこでは、吸湿した乾燥剤に対して、再生用ヒータ13からの高温空気が下向きに送られ、乾燥剤に含まれる湿分が除去される。つまり、ロータ41の一部は、再生領域43で再生される。ロータ41は一定の回転速度で回転しているため、ロータ41の各領域(角度位置)は、一定時間ごとに、吸湿領域42と再生領域43との間を切り替わることになる。再生用ヒータ13は、筐体10内部の空気の流路から空間的に分離された再生ヒータ室14に設置されているため、吸湿中の乾燥剤に再生用の高温空気が接触することはない。
【0023】
デシカントロータ再生用の高温空気の生成は、デシカントロータ40を出た乾燥した空気の一部を再生室ファン15によって再生ヒータ室14に取り入れ、再生ヒータ室14に取り入れられた空気を再生用ヒータ13で加熱することによって行われる。高温空気に吸収されたデシカントロータ40の湿分は、一部が充填塔22に送られて、洗浄水として再利用され、残りは、再生ヒータ室14に還流して、大気に放出される。
【0024】
デシカントロータ40の上方であって、排気口12の手前には、吸気口11から導入された空気に上向きの駆動力を与え、空気浄化手段20によって浄化された空気を排気口12から排出させるための送風機16が設置されている。なお、浄化された空気が排気口12から排出されるようになっていればよく、送風機16の代わりに、排気口12から空気を排出する排気手段が筐体10外部に設けられていてもよい。
【0025】
なお、循環ポンプ24の吸込側の配管27または吐出側の配管28、あるいは循環タンク21の内部に、洗浄水を加熱または冷却する洗浄水加熱冷却手段が設けられていてもよい。洗浄水加熱冷却手段は、熱交換器と、熱交換器の熱媒体を加熱または冷却する熱源とによって構成されていることが好ましい。熱源としては、加熱と冷却の両方を行える熱源であることが好ましく、ヒートポンプ、吸収式冷温水機、ペルチェ素子を用いた加熱冷却装置などを使用することができる。また、洗浄水加熱冷却手段は、加熱手段と冷却手段とを別に設けて、それらを適宜切り替えるような構成であってもよい。その場合、加熱手段の熱源としては、ボイラー、コジェネレーション排熱とボイラーとの組み合わせ等を用いることができ、冷却手段の熱源としては、吸収式冷凍機、排熱利用の吸収式冷凍機と電気駆動冷凍機との組み合わせなどを用いることができる。
【0026】
ここで、本実施形態の空気調和装置1を用いた空気調和動作について、簡単に説明する。
【0027】
送風機16が作動すると、筐体10内部が減圧状態となり、浄化すべき空気が吸気口12から筐体10内へと導入される。導入された空気は、送風機16によって上向きの駆動力を与えられており、筐体10の内部を下から上へと流れ、充填塔22に到達する。
【0028】
一方、循環タンク21内に貯留された洗浄水は、循環ポンプ24によって、散水ノズル23に供給される。散水ノズル23に供給された洗浄水は、散水ノズル23によって充填塔22に散水されて、充填塔22のラシヒリングの表面に付着して濡れ面を形成する。
【0029】
充填塔22の下方から上昇してくる空気は、ラシヒリングの表面で気液接触を行い、洗浄水によって、空気中の粒子性物質やガス状化学物質が除去される。浄化された空気は、気液接触が行われたことで高湿度となっており、デシカントロータ40を通気することで除湿されて、送風機16によって排気口12から排出される。
【0030】
このような空気調和装置1では、充填塔22で気液接触が行われることで、洗浄水は蒸発していき、長時間定常運転を行う場合、循環タンク21内の洗浄水は徐々に減少することになる。そのため、定期的に洗浄水の補充が必要となるが、洗浄水の蒸発量(減少量)を正確に把握して、適切な補充のタイミングを知ることは、循環ポンプ24がエア噛みすることや電気分解手段26が空気に露出することを防止する意味で重要となる。また、洗浄水の減少は補充によって解消されるが、補充を繰り返していくと、洗浄水の濃縮が進行し、過度に濃縮されると、スケール生成の虞が生じる。そのため洗浄水は、補充だけでなく、交換も必要となる。この交換のタイミングを正確に制御することは、スケール生成抑制の観点だけでなく、節水効果の観点からも有効となる。
【0031】
このために、本実施形態の空気調和装置1は、洗浄水の単位時間当たりの蒸発量を算出するとともに、その算出された蒸発量に基づいて、循環タンク21内の洗浄水の補充または交換のタイミングを判定するコントローラ50を有している。これに加えて、吸気口11には、吸気口11から導入される空気(入口空気)の乾球温度(気温)および相対湿度を検出する第1の温湿度モニタ51が設けられている。さらに、コントローラ50は、少なくともこの第1の温湿度モニタ51によって検出される空気の乾球温度および相対湿度に基づいて、洗浄水の単位時間当たりの蒸発量を算出するようになっている。蒸発量の算出方法の詳細については、後述する。
【0032】
蒸発量の算出は、定常運転中に所定時間ごとに行われ、所定時間ごとに算出された蒸発量を積算し、積算値が所定値以上になったか否かに応じて、洗浄水の補充または交換が必要であるか否かが判定される。
【0033】
図2は、本実施形態の空気調和装置1で実施される、洗浄水の補充または交換のタイミング判定動作を示すフローチャートである。
【0034】
まず、後述する算出方法に基づいて、洗浄水の単位時間当たりの蒸発量が算出される(ステップS1)。そして、この単位時間当たりの蒸発量に基づいて、所定期間内に蒸発した洗浄水の蒸発量が算出される(ステップS2)。ここで、所定期間とは、以前に洗浄水を補充または交換してから初めてタイミング判定動作を行う場合には、洗浄水を補充または交換してから経過した時間を意味し、その後にタイミング判定動作を行う場合には、前回蒸発量を算出してから経過した時間を意味する。
【0035】
次に、算出された所定期間内での洗浄水の蒸発量が積算される(ステップS3)。以前に洗浄水を補充または交換してから初めてタイミング判定動作を行う場合には、算出された蒸発量が、初期値としてコントローラ50に記憶される。また、その後にタイミング判定動作を行う場合には、算出された蒸発量がコントローラ50に記憶されている積算値に加算されて、新たな積算値となる。このとき、コントローラ50には、2つの積算値が記憶されている。1つは、前回の洗浄水の補充時からの積算値であり、もう1つは、前回の洗浄水の交換時からの積算値である。算出された蒸発量は、それぞれの積算値に加算され、それぞれ新たな積算値となる。なお、コントローラ50に記憶されている2つの積算値は、洗浄水の補充が行われると、前回の洗浄水の補充時からの積算値のみがリセットされ、洗浄水の交換が行われると、どちらもリセットされる。
【0036】
そして、これらの積算値(積算蒸発量)がそれぞれ所定値以上であるか否かが判定され(ステップS4)、積算蒸発量が所定値以上であった場合、洗浄水の補充または交換が必要であると判定され、洗浄水の補充または交換が行われる(ステップS5)。
【0037】
洗浄水の補充は、前回の洗浄水の補充時からの積算蒸発量が所定値以上になった場合に必要であると判定される。ここで、洗浄水補充の判定基準となる所定値は、例えば、循環タンク21にオーバーフロー排水口が設けられている場合、オーバーフロー水位と運転保証最低水位(循環ポンプ24がエア噛みしたり、電気分解手段26が露出したりしない最低水位)との差に相当する水量である。
【0038】
一方で、洗浄水は、上述したように、補充を繰り返していくと濃縮が進行し、その度合いが一定以上になると、スケール生成の虞が生じる。すなわち、洗浄水の補充が一定以上繰り返されて、その補充量の総量が所定値以上になると、スケール生成の可能性が高まることになる。上述の洗浄水の補充において、洗浄水の補充量は、洗浄水の蒸発量に実質的に相当し、したがって、洗浄水の総補充量は、前回の洗浄水の交換時からの積算蒸発量に実質的に相当する。そのため、洗浄水の交換は、前回の洗浄水の交換時からの積算蒸発量が、スケール生成の目安となる上記総補充量に相当する所定値以上になった場合に必要であると判定される。
【0039】
なお、洗浄水の交換における上記所定値は、運転条件や周囲環境、使用する洗浄水の水質に応じて変更されることに留意されたい。また、洗浄水の補充と洗浄水の交換とが同時に必要であると判定された場合には、当然ながら、洗浄水の交換が優先される。
【0040】
一方、ステップS4においていずれの積算蒸発量も所定値未満であった場合には、いずれかの積算蒸発量が所定値を上回るまで、ステップS1〜S3が繰り返し行われる。そして、洗浄水の補充または交換が行われると、タイミング判定動作は終了する。
【0041】
次に、
図3から
図5を参照して、洗浄水の単位時間当たりの蒸発量の算出方法について説明する。
【0042】
図3は、本実施形態の空気調和装置1による洗浄水の単位時間当たりの蒸発量の算出方法の一例を示すフローチャートである。
【0043】
まず、第1の温湿度モニタ51によって、吸気口11から導入される空気(入口空気)の乾球温度(気温)および相対湿度が検出され(ステップS11)、それと同時に、吸気口11に設けられた風量計29(
図1参照)によって、入口空気の風量(単位時間当たりに導入される空気量)が検出される(ステップS12)。また、ステップS11で検出された入口空気の気温から、入口空気の空気密度が算出される(ステップS13)。
【0044】
次に、ステップS11で検出された入口空気の気温および相対湿度から、入口空気の絶対湿度(重量絶対湿度)が算出される(ステップS14)。具体的には、入口空気の気温から飽和蒸気圧が算出され、この飽和蒸気圧および相対湿度から、入口空気の絶対湿度が算出される。
【0045】
次に、ステップS11で検出された入口空気の気温および相対湿度から、入口空気の湿球温度が算出される(ステップS15)。一例として、入口空気の湿球温度は、通風型乾湿計用の湿度表を用いて、入口空気の気温および相対湿度から算出することができる。他には、入口空気の気温および相対湿度から、湿り空気線図上での状態点を求め、それにより、湿球温度を算出することができ、あるいは、湿球温度計の値を直接読み取ることでも、湿球温度を得ることができる。
【0046】
次に、ステップS15で算出された入口空気の湿球温度から、以下に示すように、浄化された空気(浄化空気)の絶対湿度が算出される(ステップS16)。ここで、浄化空気とは、空気浄化手段20で浄化された空気であって、デシカントロータ40を通過する前の空気を意味する。
図4に、浄化空気の絶対湿度の算出方法を説明するための湿り空気線図の模式図を示す。水散布方式の空気調和装置における浄化空気の状態は、湿り空気線図において、入口空気の状態(
図4の点A参照)と同じ等湿球温度線上にあって、気液接触により加湿されることで、その線上を左上へ移動することが知られている(図中矢印参照)。浄化空気の相対湿度が100%であると仮定すると、浄化空気の乾球温度(気温)は、等湿球温度線と飽和空気線との交点(
図4の点B参照)から読み取ることができ、これは入口空気の湿球温度と等価である。こうして得られた浄化空気の気温および相対湿度(100%と仮定)から、入口空気の場合と同様に、浄化空気の絶対湿度が算出される。
【0047】
次に、ステップS14で算出された入口空気の絶対湿度と、ステップS16で算出された浄化空気の絶対湿度とから、絶対湿度の増加量が算出される(ステップS17)。そして、ステップS12で検出された風量と、ステップS13で算出された空気密度とから、単位時間当たりに導入される空気の質量が算出され、この質量と、ステップS17で算出された絶対湿度の増加量とから、単位時間当たりに洗浄水から空気に加えられる湿分、すなわち洗浄水の単位時間当たりの蒸発量が算出される(ステップS18)。
【0048】
なお、上述の空気の質量を算出する際に用いられる空気の風量として、風量計29での検出値の代わりに、運転条件として送風機16に設定された値を用いることもできる。
【0049】
図5は、本実施形態の空気調和装置1による洗浄水の単位時間当たりの蒸発量の算出方法の別の例を示すフローチャートである。
【0050】
図3のフローチャートで示す算出方法では、浄化空気の相対湿度が100%であり、気温が入口空気の湿球温度であると仮定して、浄化空気の絶対湿度を算出したが、別の方法で浄化空気の絶対湿度を算出することもできる。
図5のフローチャートで示す算出方法は、浄化空気の絶対湿度の算出方法の点で、
図3のフローチャートで示す算出方法と異なっている。以下では、
図3のフローチャートで示す算出方法と異なるステップのみ説明する。
【0051】
本実施形態の空気調和装置1では、空気浄化手段20によって浄化された浄化空気は、デシカントロータ40によって除湿された後、排気口12から排気される。したがって、排気口12から排気される空気(出口空気)に含まれる水分量と、デシカントロータ40に吸収された水分量とを検出することで、浄化空気に含まれる水分量を知ることができる。ここで、デシカントロータ40に吸収された水分量は、デシカントロータ40を再生した空気(デシカント排出空気)に含まれる水分量に等しいため、浄化空気に含まれる水分量は、出口空気に含まれる水分量と、デシカント排出空気に含まれる水分量とから算出される。
【0052】
このため、
図5のフローチャートで示す算出方法では、ステップS11で検出される入口空気の気温および相対湿度の他に、排気口12に設けられた第2の温湿度モニタ52によって、出口空気の気温および相対湿度が検出され(ステップS21)、デシカントロータを再生するための再生用空気の排出側に設けられた第3の温湿度モニタ53によって、デシカントロータを再生した空気(デシカント排出空気)の気温および相対湿度が検出される(ステップS22)。
【0053】
そして、出口空気の気温および相対湿度と、デシカント排出空気の気温および相対湿度とから、入口空気の場合と同様に、それぞれ出口空気およびデシカント排出空気の絶対湿度が算出される(ステップS23)。
【0054】
図5のフローチャートで示す算出方法では、これら出口空気およびデシカント排出空気の絶対湿度から、単位時間当たりの出口空気およびデシカント排出空気にそれぞれ含まれる水分量が算出される。具体的には、出口空気の絶対湿度と、出口空気の空気密度と、出口空気の風量(単位時間当たりに排気口12から排出される空気量)とから、単位時間当たりの出口空気に含まれる水分量が算出される。また、デシカント排出空気の絶対湿度と、デシカント排出空気の空気密度と、デシカント排出空気の風量(単位時間当たりに排出される空気量)とから、単位時間当たりのデシカント排出空気に含まれる水分量が算出される。そして、これらの水分量から、単位時間当たりに浄化される空気に含まれる水分量(単位時間当たりの浄化空気に含まれる水分量)が算出される(ステップS24)。
【0055】
なお、出口空気およびデシカント排出空気の風量は、入口空気の場合と同様に、ステップS12において、排気口12およびデシカントロータ40の排出側にそれぞれ設けられた風量計(共に図示せず)によって検出することができ、あるいは、運転条件として送風機16や再生室ファン15に設定された値で代替することもできる。また、出口空気およびデシカント排出空気の空気密度は、ステップ13において、入口空気の場合と同様に算出される。
【0056】
さらに、ステップS14で算出された入口空気の絶対湿度と、ステップS12で検出された風量と、ステップS13で算出された空気密度とから、単位時間当たりに吸気口12から導入される水分量(単位時間当たりの入口空気に含まれる水分量)が算出される(ステップS25)。そして、単位時間当たりの入口空気および浄化空気に含まれる水分量から、単位時間当たりに洗浄水から空気に加えられる湿分、すなわち洗浄水の単位時間当たりの蒸発量を算出することができる(ステップS18)。
【0057】
このように、
図5のフローチャートで示す算出方法では、浄化空気の絶対湿度の算出から絶対湿度の増加量の算出は行われないため、
図3のフローチャートで示す算出方法におけるステップS15〜S17は行われない。
【0058】
なお、デシカントロータが設けられていない空気調和装置の場合、浄化された空気が排気口からそのまま排出されるため、排気口に設けられた温湿度モニタによって、浄化空気の気温および相対湿度を直接検出することができる。こうして検出された浄化空気の気温および相対湿度から、浄化空気の絶対湿度を算出することができ、これにより、絶対湿度の増加量、すなわち洗浄水の単位時間当たりの蒸発量を算出することができる。
【0059】
上述したいずれの算出方法でも、空気調和装置1の使用環境や運転条件については考慮されていない。そのため、空気調和装置1の使用環境や運転条件に応じて各検出値を補正することで、洗浄水の蒸発量をより正確に算出することができる。このために、空気調和装置1には、さまざまな検出手段を追加して設けることができる。
【0060】
例えば、吸気口11および排気口12の少なくとも一方に、吸気口11から導入される空気および排気口12から排気される空気の少なくとも一方の圧力を検出する圧力モニタが設けられていてもよい。また、洗浄水を加熱または冷却する洗浄水加熱冷却手段が設けられている場合には、例えば循環タンク21内に、洗浄水の温度を検出する水温検出手段を設け、洗浄水の温度を監視するようになっていてもよい。
【0061】
上述のように、気液接触によって洗浄水が蒸発し、それに応じて洗浄水を補充していくことで、洗浄水の濃縮が進行していくことになる。洗浄水の濃縮が進行すると、例えば塩化物イオン濃度が上昇するため、洗浄水の導電率も変化する。そのため、一定条件下で洗浄水の電気分解を行っていくと、必要以上に次亜塩素酸が生成されてしまい、浄化された空気に塩素臭が混じってしまう。このような問題を回避するためには、洗浄水の導電率の変化に応じて、電気分解手段26の電極間に流す電流を最適値に適宜設定し、生成される次亜塩素酸の濃度を適切に維持する必要がある。
【0062】
本実施形態では、電気分解手段26の電極間の電圧を検出することで、洗浄水の導電率を算出し、算出した導電率と洗浄水の温度とから、所定の関係式によって、電解電流の最適値を決定することができる。このため、本実施形態の空気調和装置1には、
図1には図示していないが、電気分解手段26の電極間の電圧を検出する電圧検出手段と、洗浄水の温度を検出する水温検出手段とが設けられている。そして、コントローラ50が、これらの検出値に基づいて、電気分解手段26の電極間に流す電流を決定する制御手段としても機能するようになっている。
【0063】
以上のように、本実施形態の空気調和装置では、装置に導入される空気(入口空気)の乾球温度(気温)および相対湿度を検出し、その検出値に基づいて、気液接触によって蒸発する洗浄水の水量を把握することができる。入口空気の気温や相対湿度は、複雑な構成を必要とすることなく簡単な方法で検出可能である。したがって、コストを増加させることなく、洗浄水の蒸発量を監視することができ、それにより、洗浄水の補充または交換のタイミングを適切に判定することができる。