特許第6074195号(P6074195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074195
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】LED光束制御装置、道路照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20170123BHJP
   F21S 8/08 20060101ALI20170123BHJP
   F21W 111/02 20060101ALN20170123BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170123BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
   F21S8/08 100
   F21W111:02
   F21Y115:10
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-190396(P2012-190396)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-49255(P2014-49255A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121599
【弁理士】
【氏名又は名称】長石 富夫
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和夫
(72)【発明者】
【氏名】古川 賢志
(72)【発明者】
【氏名】田中 典明
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−129598(JP,A)
【文献】 特開2012−049317(JP,A)
【文献】 特開2007−242258(JP,A)
【文献】 特開2011−204379(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0105974(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/123800(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
F21S 8/08
F21W 111/02
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードを定電流駆動する駆動源と、
発光ダイオードの順方向電圧を測定する測定部と、
前記発光ダイオードの順方向電圧に対する前記発光ダイオードが放射する光束の強さの特性を示す情報から、前記測定部によって測定された順方向電圧に対する光束の値を求めて前記発光ダイオードの放射する光束が所定の目標値になるように前記発光ダイオードの前記駆動源による駆動状態を制御する光束一定化制御を、繰り返し行う制御部と、
を有し、
前記測定部によって測定される順方向電圧の変化率が、所定値以下に収束したとき、収束前よりも前記光束一定化制御の周期を長くする
ことを特徴とするLED光束制御装置。
【請求項2】
複数の発光ダイオードを駆動すると共に、
前記制御部は、前記測定部によって測定された順方向電圧が所定の正常範囲から外れた場合に一部の発光ダイオードの故障と判断する
ことを特徴とする請求項に記載のLED光束制御装置。
【請求項3】
残りの正常な発光ダイオードの光束を強めて、前記故障による光束の低下を補う
ことを特徴とする請求項に記載のLED光束制御装置。
【請求項4】
前記駆動源による前記発光ダイオードの駆動をオンオフするスイッチングトランジスタを備え、
前記測定部は、発光ダイオードの両端電圧を分圧する分圧抵抗器と、
前記分圧抵抗器の出力する分圧電圧と基準電圧との差を増幅する差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力電圧をA/D変換するA/D変換器とを有し、
前記制御部は、前記スイッチングトランジスタをオンオフすることによって前記発光ダイオードの駆動状態をパルス幅変調方式で制御すると共に、前記A/D変換器の出力値から前記発光ダイオードの順方向電圧を換算し、該換算して得た順方向電圧に基づいて前記光束一定化制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載のLED光束制御装置。
【請求項5】
道路を上方から照明する道路照明装置であって、
透光板で覆われた照射口を有する筐体と、
前記筐体に収容された複数の発光ダイオードと、
前記複数の発光ダイオードを駆動する請求項1乃至のいずれか1つに記載のLED光束制御装置と、
を有する
ことを特徴とする道路照明装置。
【請求項6】
複数の発光ダイオードが配列された発光モジュールを複数備え、
発光モジュール別に複数のLED光束制御装置を備え、
一の発光モジュールで生じた故障による明るさの低下を、他の発光モジュールの明るさを増加させて補うように、前記複数のLED光束制御装置が連携する
ことを特徴とする請求項に記載の道路照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを一定の光束(明るさ)で点灯させるLED光束制御装置および道路照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、道路の脇に立設された支柱の上部に設置されて、下方の道路を照明する道路照明装置などでは、省エネルギーの要請等から光源としてLED(発光ダイオード)が採用される。
【0003】
LEDの光束(明るさ)を制御する技術として、光センサで光束を測定し、目標の光束に制御する技術がある。
【0004】
また、LEDの光束は温度(特に、ジャンクション温度)に大きく依存するので、温度センサでLEDの周囲温度を測定し、周囲温度から光束を推定して制御することも行われる。
【0005】
また、LEDを駆動するオペアンプにLEDの順方向電圧でフィードバックをかけることで、温度に依存した光束の変化を抑制するようにしたLED駆動回路が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3000667号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光センサや温度センサを用いる方法では、センサを設ける分だけ、コストアップを招く。特に、複数の光源モジュールを使用する照明装置では、光源モジュール毎にセンサを設ける必要があり、コストの上昇が大きい。
【0008】
一方、特許文献1に開示のLED駆動回路では温度に依存した光束の変動をある程度は抑制できるものの、十分でない。
【0009】
特に、道路照明装置では筐体の熱容量が大きく、電源ONから温度が上昇して安定するまでに比較的長い時間を要するので、その間の明るさの変動を抑制することが要請される。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、LEDの発する光束を、光センサや温度センサなどのセンサを用いることなく高い精度で一定に制御することのできるLED光束制御装置および道路照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0012】
[1]発光ダイオードを定電流駆動する駆動源と、
発光ダイオードの順方向電圧を測定する測定部と、
前記発光ダイオードの順方向電圧に対する前記発光ダイオードが放射する光束の強さの特性を示す情報から、前記測定部によって測定された順方向電圧に対する光束の値を求めて前記発光ダイオードの放射する光束が所定の目標値になるように前記発光ダイオードの前記駆動源による駆動状態を制御する光束一定化制御を、繰り返し行う制御部と、
を有し、
前記測定部によって測定される順方向電圧の変化率が、所定値以下に収束したとき、収束前よりも前記光束一定化制御の周期を長くする
ことを特徴とするLED光束制御装置。
【0013】
上記発明では、発光ダイオードの順方向電圧を測定し、その測定値から発光ダイオードの光束を求め、この光束が目標値になるように発光ダイオードの駆動状態を制御する。これにより、温度に依存した明るさの変動がなくなる。
【0015】
上記発明では、順方向電圧が安定、すなわち、温度が安定した後は、安定前より光束一定化制御の制御周期を長くする。これにより、CPUなどが行う制御の処理負担が軽減される。
【0016】
]複数の発光ダイオードを駆動すると共に、
前記制御部は、前記測定部によって測定された順方向電圧が所定の正常範囲から外れた場合に一部の発光ダイオードの故障と判断する
ことを特徴とする[1]に記載のLED光束制御装置。
【0017】
上記発明では、直列に接続した複数の発光ダイオードを駆動しており、その一部が故障すると、直列接続された複数の発光ダイオード全体として順方向電圧の変化が、温度に依存した変動よりも急激にかつ十分大きく生じるので、それを持って、故障を検出する。
【0018】
]残りの正常な発光ダイオードの光束を強めて、前記故障による光束の低下を補う
ことを特徴とする[]に記載のLED光束制御装置。
【0019】
たとえば、複数の発光ダイオードの一部がショート故障した場合には、他の正常な発光ダイオードの光束を強めて全体としての光束の低下を補う。また、器具内の多数の発光ダイオードが複数のグループに区分され、グループ毎に別のLED光束制御装置で駆動されているような場合には、いずれかのグループでオープン故障が生じた場合に、その故障による光束の低下を他のグループの明るさを強めて補う。
【0020】
]前記駆動源による前記発光ダイオードの駆動をオンオフするスイッチングトランジスタを備え、
前記測定部は、発光ダイオードの両端電圧を分圧する分圧抵抗器と、
前記分圧抵抗器の出力する分圧電圧と基準電圧との差を増幅する差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力電圧をA/D変換するA/D変換器とを有し、
前記制御部は、前記スイッチングトランジスタをオンオフすることによって前記発光ダイオードの駆動状態をパルス幅変調方式で制御すると共に、前記A/D変換器の出力値から前記発光ダイオードの順方向電圧を換算し、該換算して得た順方向電圧に基づいて前記光束一定化制御を行う
ことを特徴とする[1]乃至[]のいずれか1つに記載のLED光束制御装置。
【0021】
上記発明では、CPUが、PWMのデューティ比によって明るさを制御する。
【0022】
]道路を上方から照明する道路照明装置であって、
透光板で覆われた照射口を有する筐体と、
前記筐体に収容された複数の発光ダイオードと、
前記複数の発光ダイオードを駆動する[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のLED光束制御装置と、
を有する
ことを特徴とする道路照明装置。
【0023】
上記発明では、道路照明装置の明るさが温度に依存せずに一定に制御される。
【0024】
]複数の発光ダイオードが配列された発光モジュールを複数備え、
発光モジュール別に複数のLED光束制御装置を備え、
一の発光モジュールで生じた故障による明るさの低下を、他の発光モジュールの明るさを増加させて補うように、前記複数のLED光束制御装置が連携する
ことを特徴とする[]に記載の道路照明装置。
【0025】
上記発明では、各発光モジュールは別々のLED光束制御装置で駆動されており、いずれかの発光モジュールで故障(たとえば、オープン故障)が生じた場合に、その故障による光束の低下を他の発光モジュールの明るさを強めて補う。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るLED光束制御装置および道路照明装置によれば、LEDの発する光束を、光センサや温度センサなどのセンサを用いることなく高い精度で一定に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係るLED光束制御装置の構成を示す回路図である。
図2】PWMで駆動されたLEDの順方向電圧をAD変換器でサンプリングするタイミングを示す図である。
図3】周囲温度−順方向電圧の特性を示す図である。
図4】周囲温度−相対光束の特性を示す図である。
図5】順方向電圧−相対光束の特性を示す図である。
図6】LED光束制御装置のCPUが行う処理を示す流れ図である。
図7】本発明の実施の形態に係る道路照明装置の設置例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態に係る道路照明装置を示す斜視図である。
図9】本発明の実施の形態に係る道路照明装置の正面、下面、上面、背面、側面を示す図である。
図10】本発明の実施の形態に係る道路照明装置の内部(発光モジュールの配列)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係るLED光束制御装置10の回路構成を示している。LED光束制御装置10は、駆動対象である発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下、LED5とする)の放射する光束を予め定めた一定の目標値に保つようにLED5を駆動する機能を果たす。
【0030】
LED光束制御装置10は、LED5を定電流駆動するための電源部11および定電流回路18と、電源部11と定電流回路18との間に介装されたスイッチングトランジスタ12と、LED5の両端電圧(順方向電圧)を分圧する分圧抵抗器(第1抵抗器13および第2抵抗器14)と、分圧電圧と基準電圧との差の電圧を増幅する差動増幅回路15と、A/D(analog to digital)変換器16を内蔵したCPU(Central Processing Unit)17とから構成される。
【0031】
詳細には、電源部11の出力はPNP型のスイッチングトランジスタ12のエミッタに接続されている。スイッチングトランジスタ12のコレクタは定電流回路18を経てLED5のアノードに接続され、LED5のカソードは接地されている。LED5のアノードと接地との間の電圧をVfとする。電圧VfはLED5の順方向電圧である。
【0032】
分圧用の第1抵抗器13の一端はLED5のアノードに接続され、第1抵抗器13の他端は第2抵抗器14の一端および差動増幅回路15の入力に接続されている。第2抵抗器14の他端は接地されている。第1抵抗器13の抵抗値をR1、第2抵抗器14の抵抗値をR2とする。第1抵抗器13と第2抵抗器14との接続箇所の電圧(分圧電圧:差動増幅回路15へ入力される電圧)をVfとする。
【0033】
差動増幅回路15には、別途、基準電圧Vfが入力されており、差動増幅回路15はこの基準電圧Vfと分圧電圧Vfとの差の電圧をB倍に増幅する。差動増幅回路15の出力電圧をΔVfとする。差動増幅回路15の出力ΔVfは、CPU17の内蔵するA/D変換器16に入力されて、デジタル値に変換される。
【0034】
CPU17はA/D変換器16の出力を取り込み、スイッチングトランジスタ12のオンオフを制御するPWM(Pulse Width Modulation、パルス幅変調)信号をスイッチングトランジスタ12のベースへ出力する。CPU17は、PWM方式でLED5の駆動状態を制御する。
【0035】
上記のLED光束制御装置10の動作を説明する。
【0036】
定電流回路18はLED5を定電流駆動する。分圧抵抗器(第1抵抗器13と第2抵抗器14)は、LED5の順方向電圧Vfを分圧することで、Vfを扱い易い電圧Vfに変換する。Vfは下記の(1)式で表される。
【0037】
【数1】
【0038】
順方向電圧の変化量は微小(数十mV〜数百mV)であるため、差動増幅回路15により順方向電圧の変化量をB倍する。なお、ΔVfは順方向電圧の変化量であり、Vfは順方向電圧の変化量を算出するための基準電圧であり、例えば接合温度が25℃のときの順方向電圧を採用する。ΔVfは、以下の(2)式で表される。
【0039】
【数2】
【0040】
CPU17は、ΔVfをA/D変換器16でA/D変換して取り込み、LED5の順方向電圧であるVfを算出する。Vfは、以下の(3)式で表される。
【0041】
【数3】
【0042】
なお、図2に示すように、A/D変換はPWMで駆動された定電流回路18の出力電圧がHighのタイミングに同期して行なう。図2では、A/D変換するタイミングを矢印21で示してある。
【0043】
CPU17は、Vfを、より高精度とするために、N回サンプリングし、その平均値Vfaveを算出する。Vfaveは、以下の(4)式で表される。
【0044】
【数4】
【0045】
ここで、LED5が、M個のLEDを直列接続したものの場合、1個当たりのLEDの順方向電圧は以下の(5)式で表される。
【0046】
【数5】
【0047】
CPU17は、算出したVfeに基づいて、LED5の放射する光束が所定の目標値に維持されるように、PWM信号のデューティ比を制御する。
【0048】
LED5の周囲温度と順方向電圧の特性は図3で表され、LED5の周囲温度と相対光束の特性は図4で表される。なお、図3図4は共に、LED5に流す電流Ifが700mAのときの特性である。図4の相対光束は、700mAで駆動したときの光束を1としたときの値を示す。
【0049】
図3図4の特性を統合すれば、順方向電圧と相対光束の特性は図5に示すものになる。図5も、LED5の駆動電流Ifが700mAのときの特性である。なお、図3図5は、LEDが1個の場合の特性である。
【0050】
CPU17は内蔵するROM(Read Only Memory)などに、上記の順方向電圧と相対光束との関係を示す特性を、たとえば、近似式、あるいはテーブル形式で記憶している。CPU17は、算出したVfeに対応する相対光束を上記の特性から求め、現時点でLED5が放射している光束を推定する。そして、CPU17は、LED5の放射する光束が目標値となるようなPWMのデューティ比を求め、そのデューティ比を有するPWM信号を出力する。
【0051】
LED5(LED1個当たり)の放射する光束φは、以下に示す(6)式で表される。
【0052】
【数6】
ここで、L:相対光束、D:PWMのデューティ比、φ:If=700mAのときの光束、φ:現在の光束、とする。φは予め測定されてROMに記憶されている。
【0053】
また以下の(7)式は、(6)式を変形して得た、デューティ比Dを求める式である。現在の光束φの値として目標値を代入すれば、その目標値の光束が放射されるようにLED5を駆動するためのデューティ比が導出される。CPU17はこの求めたデューティ比のPWM信号を出力する。
【0054】
【数7】
【0055】
LED光束制御装置10は、上記の制御(光束一定化制御とする)を繰り返し行うことで、LED5が放射する光束が常に一定値(目標値)になるように制御する。これにより、LED5の周囲温度が変化しても、LED5の放射する光束を一定に保つことができる。特に、電源オンの直後にLED5の温度が大きく変動した場合でも、LED5の放射する光束を一定に保つことができる。
【0056】
<光束一定化制御の周期>
LED5の電源投入直後は、LED5の温度変化が大きい(速い)ため光束の変化も大きい(速い)。そのため、光束一定化制御の周期は短くする。しかし、LED5の温度が安定した後は光束も安定するため、周期を長くしても光束を一定に維持することができる。また、周期を長くすれば、その分、CPU17の負荷が軽減される。
【0057】
そこで、LED5の光束が安定したことを判断し、安定状態では光束一定化制御の周期を安定する前より長くするように制御する。具体的には、現在のVfeと前回のVfeとの差分が、例えば10秒間連続で−0.1V〜0.1Vの範囲にあれば、安定していると判断し、A/D変換のサンプリング周期を長くする。なお、A/D変換のサンプリング周期をQ、Vfeを求める際のサンプリング回数をNとすると、光束一定化制御の周期は、凡そ、Q×Nとなるので、A/D変換のサンプリング周期Qを長くすることで、結果的に、光束一定化制御の周期が長くなる。
【0058】
CPU17は、起動時はサンプリング周期を20msとして動作を開始し、その後は、以下の条件でサンプリング周期を決める。
・10秒間連続で、|Vfe−Vfe_OLD|>0.1Vのとき、サンプリング周期=20ms、
・10秒間連続で、|Vfe−Vfe_OLD|≦0.1Vのとき、サンプリング周期=1000ms
なお、Vfe_OLDは、前回のVfeを表す。また、|Vfe−Vfe_OLD|は(Vfe−Vfe_OLD)の絶対値を示す。
【0059】
図6は、LED光束制御装置10のCPU17が行う処理の流れを示している。CPU17は、電源オン直後からこの処理を繰り返し行う。
【0060】
まず、差動増幅回路15から入力されているΔVfをA/D変換器16でA/D変換して取り込む(ステップS101)。そして、前述の(3)式から、LED5の順方向電圧Vfを算出する(ステップS102)。N回サンプリングしていなければ(ステップS103;No)、ステップS101に戻る。なお、初期のサンプリング周期は20msになっている。N回のサンプリングが完了したならば(ステップS103;Yes)、N回分のVfを平均したVfaveを算出し、さらに、直列接続されているLEDの個数MでVfaveを除して、LED1個当たりの順方向電圧であるVfeを求める(ステップS104)。
【0061】
次に、順方向電圧と相対光束の特性からVfeに対応する相対光束を求め(ステップS105)、これを(7)式に代入して、LED5の放射する光束が目標値になるPWMのデューティ比を求め、該デューティ比にPWM信号のデューティ比を変更する(ステップS106)。
【0062】
次に、Vfeが安定したか否かを判断し(ステップS107)、安定してなければ(ステップS107;No)、A/D変換のサンプリング周期を20msに設定して(ステップS108)、ステップS101に戻る。Vfeが安定している場合は(ステップS107;Yes)、A/D変換のサンプリング周期を1000msに設定して(ステップS109)、ステップS101に戻る。
【0063】
<故障への対応>
現在のVfaveと前回のVfaveを比較し、LED5のオープン故障またはショート故障を検知する。たとえば、1個のLED5の順方向電圧が3.0Vのとき、現在のVfaveと前回のVfaveの差が3.0V以上であればオープン故障と判断する。また、現在のVfaveと前回のVfaveの差が−3.0V以下の場合はショート故障と判断する。すなわち、
Vfave−Vfave_OLD≧3.0V・・・オープン故障
Vfave−Vfave_OLD≦−3.0V・・・ショート故障
と判断する。
【0064】
これにより、正常なLED5を調光し、適切な光束を維持することができる。たとえば、照明装置が複数のLED5を直列に接続した発光モジュールを複数有し、発光モジュール毎にLED光束制御装置10を設けて駆動しているものとする。このとき、1つの発光モジュールで上記の故障が検出されたとき、同じ発光モジュール内の正常なLEDや他の正常な発光モジュールの放射する光束を強くするように制御して、照明装置全体としての光束の低下を補う。
【0065】
たとえば、LEDが14個直列接続されている発光モジュールを駆動している場合に、Vfaveが正常値より9V下がった場合は、LEDが3個ショート故障したと判断する。このとき、残りの正常な11個のLED、およびまたは、他の発光モジュールの光束を上げる。Vfaveが正常値より3V以上上がった場合は、LEDがオープン故障したと判断する。この場合、オープン故障の生じた発光モジュールの全てのLEDが不点灯なので、正常な他の発光モジュールの光束を上げる。
【0066】
図7は、上記LED光束制御装置10によってLED5を駆動する道路照明装置60の設置例を示している。道路照明装置60は、道路52の脇に立設された支柱53の上部に取り付けられて、上方から道路52およびその周辺を照明する。道路照明装置60は、道路の長手方向に沿って数十m(たとえば、40m)間隔で設置される。なお、各図において矢印Lは道路52の長手方向(縦断方向)を、矢印Wは道路52の幅方向(横断方向)をそれぞれ示す。
【0067】
図8は、道路照明装置60を斜め前方上方から見た斜視図である。図9は、道路照明装置60の正面、下面、上面、背面、側面を示す。道路照明装置60は、下面側に光の照射口を有する筐体61と、この筐体61に収容された複数の発光モジュール70(図10参照)と、発光モジュール70を駆動するLED光束制御装置10などで構成される。筐体61の主要部は、溶かした金属を鋳型に流し込み、冷却、凝固させて製作された鋳造品である。
【0068】
道路照明装置60の筐体61は、道路照明装置60を支柱53に固定するための金具や発光モジュール70を駆動するLED光束制御装置10を収容する基部62と、基部62から前方へ延設された、横長の略長方形で比較的薄い中空の箱形状を成した本体部64とから構成される。
【0069】
本体部64の下面には、略長方形の照射口66が開口されている。照射口66には、パッキンを挟んで透光板68が嵌め込まれている。透光板68は、光を透過する板状部材であり、ガラスや樹脂などで構成される。
【0070】
図10は、透光板68を取り外した状態の道路照明装置60を下面側から見た様子を示している。本体部64の中には、本体部64の内側から照射口66を臨むようにして、複数の発光モジュール70が収容されている。
【0071】
発光モジュール70は、平らな基板上に、複数のLED5を配列して備えると共に、各LED5にレンズ75を被せて構成される。ここでは、長方形の基板上に、レンズ75の被せられたLED5が、2×7の行列状に14個配列されている。本体部64の中には、上記の発光モジュール70が、3×2の行列状に配列されて6枚取り付けられる。なお、発光モジュール70の取り付け枚数は増減可能になっている。
【0072】
LED光束制御装置10は、発光モジュール70別に複数設けられている。各LED光束制御装置10は対応する1つの発光モジュール70を駆動する。各発光モジュール70内の複数のLED5は直列に接続されている。LED光束制御装置10は、直列に接続された14個のLED5を駆動する。
【0073】
道路照明装置60は、筐体61が鋳造により製作されており、熱容量が大きい。このため、点灯開始からの温度上昇が安定するまでに比較的長い時間を要する。よって、LED光束制御装置10によって光束一定化制御を行わない場合には、点灯開始直後は、目標より明るくなり、温度上昇に従って次第に暗くなるというように、明るさが比較的長い時間にかけて変動する。
【0074】
しかし、道路照明装置60は、LED光束制御装置10によって光束一定化制御が行われるので、点灯開始直後から目標の明るさを維持することができる。
【0075】
また、いずれかの発光モジュール70にてLED5のショート故障が生じたとき、ショート故障を検出したLED光束制御装置10は、該ショート故障による明るさの低下を補うように、自装置の制御する発光モジュール70内の正常な他のLED5の明るさ強めるように制御する。あるいは、ショート故障の生じた発光モジュールと他の発光モジュールの双方の明るさを調整して、故障による光束の低下を補うようにしてもよい。
【0076】
オープン故障を検出したときは、その故障の生じた発光モジュール70全体が発光しなくなるので、その故障の生じた発光モジュール70を駆動していたLED光束制御装置10は、オープン故障の発生を他のLED光束制御装置10へ通知する。これを受けた他の正常なLED光束制御装置10は、故障による明るさの低下を補うように、自装置が駆動する発光モジュール70の明るさが通常より明るくなるように制御する。たとえば、6枚の発光モジュール70の中の1枚がオープン故障したとき、他の正常な5枚の発光モジュール70の明るさがそれぞれ20%増加するように制御される。
【0077】
なお、複数のLED光束制御装置10の中の1つをマスタとし、故障の発生に関する情報をマスタに収集し、マスタがすべてのLED光束制御装置10に対して、制御目標の明るさを指示することで、故障による明るさ低下を全体として補うように構成されてもよい。
【0078】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0079】
たとえば、実施の形態ではPWM方式で明るさを制御するようにしたが、制御の方式はこれに限定されない。
【0080】
順方向電圧と相対光束の特性を示す情報は、たとえば、周囲温度と順方向電圧の特性と、周囲温度と相対光束の特性の情報を有し、これらから求めるようにされてもよい。
【0081】
光束一定化制御の周期は、実施の形態で例示した20msと1000msに限定されず、適宜に設定すればよいが、電源オンの直後は周期を短くすることが望ましい。周期の変更は2段階に限らず、3段階以上に細かく変更してもよい。
【0082】
実施の形態では、故障を検出して明るさを補うように制御する例を示したが、故障の検出を、たとえば、道路照明装置を管理する管理事務所などにネットワーク経由で自動通知するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
5…LED
10…LED光束制御装置
11…電源部
12…スイッチングトランジスタ
13…第1抵抗器
14…第2抵抗器
15…差動増幅回路
16…A/D変換器
17…CPU
18…定電流回路
21…サンプリングタイミング
52…道路
53…支柱
60…道路照明装置
61…筐体
62…基部
64…本体部
66…照射口
68…透光板
70…発光モジュール
75…レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10