(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記圧力センサにより検出されるコンクリートの充填圧力が所定値を超えるごとに前記コンクリート打設管の後退移動させるように前記打設管送り装置を制御することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のトンネル冠部覆工コンクリート打設システム。
前記制御装置は、前記圧力センサにより検出されるコンクリートの充填圧力に応じて前記打設管送り装置による前記コンクリート打設管の後退移動量を決定することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のトンネル冠部覆工コンクリート打設システム。
前記打設管送り装置は、台車に載置されてトンネル軸方向に延在する案内レール部材と、この案内レール部材に沿って移動可能で前記コンクリート打設管の基端部を支持する走行架台と、を含んで構成されることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のトンネル冠部覆工コンクリート打設システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トンネル冠部を吹上げ方式で打設した場合、コンクリートの充填不足を生じやすい。また、配管により圧送されたコンクリートが型枠内に吐出された後に移動すると、材料分離(例えば、コンクリート中の比較的粒度の小さい骨材が先送りされて、比較的粒度の大きい骨材が手前に留まる等、打設中にフレッシュコンクリートの構成材料の分布が不均一となる現象)が生じる。材料分離の傾向はコンクリートの移動距離が長いほど顕著に現れる。材料分離が生じると、不均一による強度不足や、仕上がりの不良(色むら)の原因となる。
【0008】
これに対し、特許文献1に記載の技術は、圧力計を用いて充填圧力を管理するものであるが、あくまで吹き上げ式であるため、充填不足を生じやすい。また、コンクリート投入口の位置は一定であるため、コンクリート投入口から覆工空間へコンクリートが移動する際に材料分離が生じてしまう。
【0009】
また、特許文献1に記載の技術は、トンネル冠部におけるコンクリートの充填圧力を検出するため、型枠のトンネル冠部にトンネル軸方向に間隔をあけて複数の圧力計を配置している。このため、多数の圧力計を用意しなければならず、多数用意するためにコストがかかり、撤去作業等も必要となるので作業性の悪化を招く。しかも、多数用意しても、トンネル軸方向に連続的に検出することは困難で、充填状態の管理には限界がある。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術は、トンネル冠部の打設用ではないが、これをトンネル冠部の打設に用いることも困難である。特許文献2に記載の技術は、左右のトンネル側壁部及びアーチ形状部の打設に用いるものであるため、コンクリート供給装置はトンネル冠部を移動するものの常に覆工空間内に位置している。このため、トンネル冠部の覆工空間内の全てに、コンクリートを打設することは困難である。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑み、トンネル冠部の打設に最適なトンネル冠部覆工コンクリート打設システム及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るトンネル冠部覆工コンクリート打設システムは、
トンネル軸方向に沿って延在し先端部に吐出口を有するコンクリート打設管と、
前記コンクリート打設管の基端部側を支持し、前記コンクリート打設管の先端部をトンネル軸方向に前記トンネル冠部の覆工空間の外部から内部へ前進及び後退移動させることができる打設管送り装置と、
前記トンネル冠部の覆工空間の外部で、かつコンクリートの供給経路外にて、前記打設管送り装置の駆動系に、又は、前記打設管送り装置のコンクリート打設管支持部に、前記コンクリート打設管を介して前記打設管送り装置にかかる反力を検出するように取付けられ、前記コンクリート打設管に対しこれを後退させる方向にかかるコンクリートの充填圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサにより検出されるコンクリートの充填圧力に応じて前記コンクリート打設管を後退移動させるように前記打設管送り装置を制御する制御装置と、
を含んで構成される。
【0013】
本発明に係るトンネル冠部覆工コンクリート打設方法は、
トンネル軸方向に沿って延在し先端部に吐出口を有するコンクリート打設管の基端部側を支持して、前記コンクリート打設管の先端部をトンネル軸方向に前記トンネル冠部の覆工空間の外部から内部へ最前進位置まで前進移動させるステップと、
前記コンクリート打設管の最前進位置にて、覆工コンクリートの打設を開始した後、
前記トンネル冠部の覆工空間の外部で、かつコンクリートの供給経路外に、前記コンクリート打設管を介して前記打設管送り装置にかかる反力を検出するように配置された圧力センサにより、前記コンクリート打設管に対しこれを後退させる方向にかかるコンクリートの充填圧力を検出しつつ、コンクリートの充填圧力に応じて前記コンクリート打設管を後退移動させるステップと、
を含んで構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、打設管の吐出口を打設部の直近へ移動させて打設することができ、充填不足を低減することができる。また、打設中のコンクリートの移動を抑制でき、その結果として、コンクリートの材料分離を低減できる。
【0015】
また、圧力センサは、
打設管送り装置の駆動系又はコンクリート打設管支持部に、コンクリート打設管を介して打設管送り装置にかかる反力を検出するように取付けられて、コンクリート打設管に対しこれを後退させる方向にかかるコンクリートの充填圧力を検出するため、1つの圧力センサで、充填圧力を連続的に検出することができる。
従って、コンクリートの充填圧力を常時検出でき、充填状態の管理が容易となる。これにより、充填不足の低減と同時に、均一な品質のコンクリートの打設が可能となる。
また、トンネル冠部の覆工空間の外部にてコンクリートの充填圧力を検出することができ、打設されるコンクリートの影響を受けることなく、安定的に充填圧力を検出することができる。また、配線の引き回しや信号処理等が容易となる。
【0016】
そして特に、この圧力センサにより検出されるコンクリートの充填圧力に応じてコンクリート打設管を後退移動させるように打設管送り装置を制御することにより、すなわち、コンクリート打設管によりコンクリートを打設して十分な充填圧力が検出されたならコンクリート打設管を後退移動させるような制御を行うことにより、トンネル軸方向に均一かつ十分な充填圧力を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るトンネル冠部覆工コンクリート打設システムを示すトンネルの側面図であり、図の左側が坑口側(覆工空間ラップ側)、図の右側が切羽側(覆工空間妻側)である。また、「前後」というときは、覆工空間へのコンクリート打設管の挿入方向(妻側からラップ側へ挿入)で見て、ラップ側(図の左側)を前側、妻側(図の右側)を後側とする。
図2は同上システムを示す切羽側(妻側)から見たトンネルの断面図、
図3は同上システムを示すトンネルの平面図である。また、
図4は同上システムでの打設管の引き抜き状態を示すトンネルの側面図である。
【0019】
本実施形態のトンネルは山岳トンネルであり、トンネル内周面1は、発破掘削でのトンネル掘削後、吹き付けコンクリート等により一次支保されている。そして、このトンネル内周面1に相対させて型枠2をセットし、トンネル内周面1と型枠2との間に覆工コンクリート打設用の覆工空間3を形成している。型枠2のセットには、トンネル底部(インバート)4に敷設されたレール5上を移動可能なガントリー車6が用いられる。
【0020】
型枠2は、「覆工セントル」とも呼ばれ、トンネル軸方向に所定幅(例えば1.5m)を有する型枠部材をトンネル軸方向に複数(例えば7個)連結し、1スパン(例えば10.5m)として構成される。尚、各型枠部材は周方向に適宜分割されており、組み合わせて使用される。
【0021】
図では、トンネル軸方向に7個の型枠部材2A〜2Gにより1スパンの型枠2が構成され、トンネル内周面1と1スパンの型枠2(2A〜2G)との間に覆工コンクリート打設用の覆工空間3が形成される。そして、この覆工空間3は、
図2を参照し、左右のトンネル側壁部(トンネル側壁部の覆工空間)3A、3Aと、これに続く左右のアーチ形状部(アーチ形状部の覆工空間)3B、3Bと、中央のトンネル冠部(トンネル冠部の覆工空間)3Cとに大別することができる。このうち、左右のトンネル側壁部3A、3A及びアーチ形状部3B、3Bについては、ガントリー車6に装備されているコンクリート打設管(図示せず)を型枠2に設けられている適宜の検査窓(図示せず)から覆工空間3に挿入して、コンクリートを圧送することにより、コンクリートを打設する。その後に、本発明に係るトンネル冠部覆工コンクリート打設システムを用いて、トンネル冠部3Cにコンクリートを打設する。
【0022】
従って、本発明に係るトンネル冠部覆工コンクリート打設システムを用いて、トンネル冠部3Cにコンクリートを打設する際には、型枠部材2A〜2Gより切羽側の型枠の覆工空間には、左右のトンネル側壁部3A、3A及びアーチ形状部3B、3Bからトンネル冠部3Cまで既にコンクリートが打設され、型枠部材2A〜2Gの覆工空間3には、トンネル冠部3Cを除く、左右のトンネル側壁部3A、3A及びアーチ形状部3B、3Bに既にコンクリートが打設されているものとする。
【0023】
また、型枠部材2A〜2Gの覆工空間3のトンネル軸方向の坑口側端部(ラップ側)は、既設コンクリート7により塞がれている。他方、型枠部材2A〜2Gの覆工空間3のトンネル軸方向の切羽側端部(妻側)は、閉塞用の妻板8により塞がれている。
【0024】
本実施形態のトンネル冠部覆工コンクリート打設システムは、トンネル内周面1と型枠2(型枠部材2A〜2G)との間の覆工空間3のうち、トンネル冠部(トンネル冠部の覆工空間)3Cに覆工コンクリートを打設するものであり、トンネル冠部用のコンクリート打設管10と、打設管10を移動させる打設管送り装置20と、打設管送り装置20を装備する台車40と、打設管送り装置20側で打設管10の先端部側を支持する配管支持部材50と、型枠2側で打設管10の先端部側を支持する配管支持部材60とを含んで構成される。
【0025】
コンクリート打設管10は、トンネル軸方向に沿って延在する直管であり、先端部に吐出口を有している。打設管10の基端部は、屈曲し、後述する打設管送り装置20の走行架台25に支持されている。打設管10の基端部に接続されるコンクリート供給用配管については後述する。
【0026】
打設管送り装置20は、トンネル冠部の覆工空間3Cの外部に配置されており、コンクリート打設管10の基端部を支持し、コンクリート打設管10の先端部をトンネル軸方向にトンネル冠部の覆工空間3Cの外部(妻側)から内部(ラップ側)へ前進及び後退移動させる。
【0027】
打設管送り装置20は、台車40上に装備される。
台車40は、ガントリー車6の後方に配置されて、ガントリー車6と同じくトンネル底部4のレール5上を移動可能な、門型の車両であり、その天板41上に打設管送り装置20が装備される。また、門型の台車40の内部空間には、ダンプトラック、ミキサー車などを通過させることができる。
【0028】
打設管送り装置20は、台車40の天板41上に取付けられる前後一対の第1ベース21、21と、第1ベース21、21上に横方向(トンネル横断方向)に位置調整可能に取付けられる前後一対の第2ベース22、22と、第2ベース22、22上に立設される上下方向位置調整用の前後一対の伸縮ジャッキ23、23と、ジャッキ23、23の上端部に支持されて前後方向(トンネル軸方向)に延在する案内レール部材24と、案内レール部材24に沿って前後方向に移動可能な走行架台25と、走行架台25に取付けられてコンクリート打設管10の基端部を保持するホルダ26とを含んで構成される。
【0029】
図5は打設管送り装置20の要部拡大側面図であり、案内レール部材24、走行架台25、ホルダ26などが示されている。
案内レール部材24の前端部付近及び後端部付近にはそれぞれスプロケット27、28が配置され、これらのスプロケット27、28にチェーン29がエンドレスに巻き掛けられている。そして、チェーン29の一箇所に走行架台25が掛止されている。そして、後端部側のスプロケット28の近傍にモータ30が配置され、このモータ30の出力軸によりベベルギア31を介してスプロケット28を回転駆動可能としている。
【0030】
従って、モータ30により、スプロケット28を回転させることで、チェーン29を介して、走行架台25を案内レール部材24に沿って移動させることができ、また、モータ30の正転により、走行架台25を前進移動させ、モータ30の逆転により、走行架台25を後退移動させることができる。
【0031】
ここで、走行架台25はホルダ26を介してコンクリート打設管10の基端部を支持している。従って、モータ30による走行架台25の前進又は後退移動に伴って、コンクリート打設管10を前進又は後退移動させることができる。そして、コンクリート打設管10の前進移動により、コンクリート打設管10の先端部をトンネル冠部の覆工空間3C内へ挿入し、覆工空間3Cの最奥部(既設コンクリート7近傍)まで到達させることができる(
図1参照)。そして、この状態から、コンクリート打設管10の後退移動により、コンクリート打設管10を覆工空間3Cから引き抜くことができる(
図4参照)。
【0032】
また、
図5に示されているように、走行架台25を牽引するチェーン29の途中にシリンダ型の圧力センサ32を介在させてある。具体的には、走行架台25と、その前側に掛止するチェーン29a(スプロケット27側)との間に、圧力センサ32を介在させてある。コンクリート打設管10により覆工空間3C内にコンクリートが打設されて、コンクリート打設管10の先端部にコンクリートの充填圧力が作用すると、コンクリート打設管10を介して走行架台25に反力がかかり、スプロケット27側のチェーン29a、したがってシリンダ型の圧力センサ32に引張力が作用する。従って、圧力センサ32は、コンクリート打設管10の先端部付近のコンクリート充填圧力を検出することができる。
【0033】
圧力センサ32及び充填圧力の制御について更に詳しく説明する。
図12は圧力センサ32の拡大図である。圧力センサ32はシリンダ32aとピストンロッド32bとを有し、コンクリート充填圧力による引張力がシリンダ32aに作用すると、ピストンロッド32b側の油圧室が圧縮されて油圧が上昇し、この油圧変化が電気的信号に変換されて出力される。
【0034】
本実施形態の圧力センサ32は、打設管送り装置20に取付けられ、コンクリート打設管10に対しこれを後退させる方向にかかるコンクリートの充填圧力を検出するものであり、より詳しくは、コンクリート打設管10を介して打設管送り装置20にかかる反力を検出すべく、打設管送り装置20の駆動系に取付けられる。
【0035】
図13は制御系の概略図である。圧力センサ32の信号は、制御装置100に入力されている。
制御装置100は、圧力センサ32により検出されるコンクリートの充填圧力に応じてコンクリート打設管10を後退移動させるように打設管送り装置20のモータ30を制御する。
【0036】
次に打設管送り装置20側でコンクリート打設管10の先端部側を支持する配管支持部材50について説明する。
図6は打設管送り装置20側の配管支持部材50の具体例を示す図である。
打設管送り装置20の案内レール部材24には、その長手方向の複数箇所(例えば3箇所)に配管支持部材50を取付可能である。
【0037】
配管支持部材50は、
図6に示されるように、コンクリート打設管10を下方から支持する鼓状のローラ51と、このローラ51を回転自在に支承して上下に延びる支持体52とを含んで構成され、支持体52は案内レール部材24に位置変更可能に取付けられる。ここで、支持体52は、
図6(a)のように案内レール部材24より上方へ突出して、ローラ51によりコンクリート打設管10を支持する第1位置と、
図6(b)のように案内レール部材24上から没して退避する第2位置とをとることができる。第2位置では案内レール部材24上での走行架台25の移動を妨げることがない。
【0038】
次に型枠2側でコンクリート打設管10の先端部側を支持する配管支持部材60について説明する。
図7は型枠2側の配管支持部材60の具体例を示す図である。
型枠2には、トンネル冠部におけるトンネル軸方向の複数箇所(例えば4箇所)に配管支持部材60を取付可能である。
【0039】
配管支持部材60は、中央の第1ロッド61と、両側の第2及び第3ロッド62、63とを含んで構成され、それぞれ型枠2にその内周面側から取付けられる。
【0040】
第1ロッド61は、その上端部に案内ローラ64を回転自在に保持している。案内ロータ64は、第1ロッド61のロッド径より小さく、第1ロッド61の軸方向に見たときに第1ロッド61の径内に収まる大きさにしてある。
第1ロッド61は、型枠2に設けた穴、具体的には型枠2の内周面側に固着した筒状体65に下側から挿入されて、覆工空間3C内に進入し、上端部の案内ローラ64でコンクリート打設管10を支持する。
【0041】
第2及び第3ロッド62、63は、第1ロッド61よりやや長い。第2及び第3ロッド62、63は、型枠2に設けた穴、具体的には型枠2の内周面側に固着した筒状体66、67に下側から挿入されて、覆工空間3C内に進入し、上端部は第1ロッド61の案内ローラ64により支持されるコンクリート打設管10の左右に位置して、案内ローラ64上からコンクリート打設管10が脱落するのを防止する。
【0042】
第1ロッド61は、筒状体65と第1ロッド61とを径方向に貫通する固定ピン65aにより固定される。ここで、第1ロッド61には、ピン65aが貫通可能なピン穴が軸方向に複数設けられ、これらの選択により、覆工空間3C内への第1ロッド61の進入位置を調整可能である。
【0043】
第2ロッド62についても同様で、筒状体66と第2ロッド62とを径方向に貫通する固定ピン66aにより固定され、ピン穴の選択により、覆工空間3C内への第2ロッド62の進入位置を調整可能である。
第3ロッド63についても同様で、筒状体67と第3ロッド63とを径方向に貫通する固定ピン67aにより固定され、ピン穴の選択により、覆工空間3C内への第3ロッド63の進入位置を調整可能である。
【0044】
図8は型枠2側の配管支持部材60の配置を示す図である。この図からわかるように、第1ロッド61と、第2及び第3ロッド62、63とは、トンネル軸方向の位置をずらしている。言い換えれば、筒状体65と、筒状体66、67とは、トンネル軸方向の位置をずらしてある。幅方向の隙間を確保するためである。
【0045】
図9は型枠2側の配管支持部材60の穴埋め状態を示す図である。この図からわかるように、第1〜第3ロッド61〜63を筒状体65〜67より抜き去った後に、筒状体65〜67の穴を穴埋め部材65b、66b、67bにより塞ぐことができるようになっている。穴埋め部材65b、66b、67bの固定も固定ピン65a、66a、67aにより行う。
【0046】
次に妻板8部の構成について説明する。
図10は妻板8部の正面図、
図11は妻板8部の断面図である。
覆工空間3Cの妻側を閉塞する妻板(妻型枠)8には、コンクリート打設管10を貫通させる貫通孔70が形成される。また、妻板8には、貫通孔70に連なって案内管71が取付けられる。案内管71は、妻板8の貫通孔70に連なって妻板8より覆工空間3Cの外部側に突出しており、コンクリート打設管10を挿入し得る内径を有している。
【0047】
また、妻板8の貫通孔70に対しては、貫通孔70からコンクリート打設管10を引き抜いたときに貫通孔70を閉止可能なシャッター73が設けられる。
シャッター73は、妻板8の外面と案内管71のフランジ部との間に設けられており、貫通孔70を開閉する板状のスライドゲート74と、このスライドゲート74をスライド可能に案内する案内部材75とから構成される。よって、案内部材75は、妻板8の外面と案内管71のフランジ部とから構成される。
【0048】
スライドゲート74は手動で上下に移動可能である。下位置では、
図11(a)のように貫通孔70(及び案内管71)を開通させ、下側の係止部77aに係止させたロック部材78により位置決めされる。上位置では、
図11(b)のように貫通孔70(及び案内管71)を閉止し、上側の係止部77bに係止させたロック部材78により位置決めされる。
【0049】
次にコンクリート打設管10へのコンクリート供給用配管について説明する。
図1〜
図3を参照し、コンクリート打設管10へのコンクリート供給用配管は、コンクリート打設管10側から供給源側へ、第1連結管11、第2連結管12、第3連結管13及び第4連結管14を含んで構成される。
【0050】
コンクリート打設管10の基端部は横方向に屈曲した後、下方向に屈曲し、下向きの第1連結部81を形成している。
第1連結管11は中間部が水平方向に配置され、一端側は上向きに屈曲して、前記第1連結部81にてコンクリート打設管10と回転自在に連結している。第1連結管11の他端側は上向きに屈曲して、第2連結部82を形成している。
【0051】
第2連結管12は中間部が水平方向に配置され(第1連結管11より高位置)、一端側は下向きに屈曲して、前記第2連結部82にて第1連結管11と回転自在に連結している。第2連結管12の他端側は下向きに屈曲して、第3連結部83を形成している。
【0052】
第3連結管13は中間部が水平方向でかつ台車40の長手方向に固定配置され(第2連結管12より低位置)、一端側は上向きに屈曲して、前記第3連結部83にて第2連結管12と回転自在に連結している。第3連結管13の他端側は下向きに屈曲して、台車40の天板41を貫通し、第4連結部84を形成している。
【0053】
第4連結管14は、第3連結管13の第4連結部84に連結されて門型の台車40の内部空間へ延び、コンクリート供給源(図示せず)に接続される。
【0054】
従って、
図3を参照し、走行架台25の前進によるコンクリート打設管10の前進時には、第2連結管12が第3連結管13との連結部(第3連結部83)を中心として図示実線のように時計方向に回動し、これに追従して第2連結管12とコンクリート打設管10との間で第1連結管11が変位する。
【0055】
また、走行架台25の後退によるコンクリート打設管10の後退時には、第2連結管12が第3連結管13との連結部(第3連結部83)を中心として
図3の点線示のように反時計方向に回動し、これに追従して第2連結管12とコンクリート打設管10との間で第1連結管11が変位する。尚、
図3の点線示の状態の側面図が
図4である。
【0056】
これにより、走行架台25の前進・後退によるコンクリート打設管10の前進・後退を、第1及び第2連結管11、12の水平面内での変位により吸収することができる。
【0057】
次に本実施形態のトンネル冠部覆工コンクリート打設システムを用いたトンネル冠部覆工コンクリート打設方法について説明する。
トンネル冠部の覆工空間3Cに覆工コンクリートを打設する際は、
図4の状態から、打設管送り装置20のモータ30を正転させて、スプロケット28を回転させ、チェーン29により案内レール部材24上で走行架台25を前進させる。そして、
図1に示すように、走行架台25の前進により、これに支持されているコンクリート打設管10を前進させ、コンクリート打設管10の先端部を妻板8部の案内管71に挿入し、貫通孔70を貫通させて、覆工空間3C内に進入させる。そして、最終的にはコンクリート打設管10の先端部を覆工空間3Cの最奥部付近(既設コンクリート7近傍)まで到達させる。
【0058】
このとき、案内レール部材24上で走行架台25が前進する際は、案内レール部材24上では、
図4に示されるように配管支持部材50によりコンクリート打設管10を案内するが、走行架台25の前進に伴って案内を終えた配管支持部材50は、
図1に示されるように案内位置から退避位置に付け替える。
【0059】
その一方、型枠2側では、覆工空間3C内でのコンクリート打設管10の前進に伴って、型枠2に取付けられている配管支持部材60を
図4の状態から覆工空間3C内に突出させるように付け替えて、
図1に示されるようにコンクリート打設管10を案内するようにする。
【0060】
コンクリート打設管10が最奥部まで移動した段階で、コンクリート供給源からコンクリートを圧送し、コンクリート打設管10の先端部から吐出させて、トンネル冠部の覆工空間3Cへのコンクリートの打設を開始する。
【0061】
覆工空間3C内へのコンクリートの打設に伴って、コンクリート打設管10の先端部付近のコンクリートの充填圧力が上昇すると、これが圧力センサ32により検知される。すなわち、コンクリートの充填圧力がコンクリート打設管10に作用し、コンクリート打設管10を後退させようとする結果、走行架台25を介してチェーン29a(
図5)に引張力がかかり、これがシリンダ型の圧力センサ32により検知される。従って、コンクリートの充填圧力が所定値に達するごとに、モータ30を僅かずつ逆転させて、コンクリート打設管10を後退させることにより、所定の充填圧力で覆工コンクリートを打設することができる。
【0062】
図14は制御装置100(
図13)により実行される充填圧力制御のフローチャートであり、打設管送り装置20によりコンクリート打設管10を最前進位置まで移動させてコンクリートの打設を開始した後に実行される。
【0063】
S1では、圧力センサ32の信号を読込んで、コンクリート打設管10の先端部付近のコンクリートの充填圧力Pを検出する。
【0064】
S2では、検出されたコンクリートの充填圧力Pと予め定めた目標圧力(所定値)P0とを比較し、充填圧力Pが目標圧力P0を超えたか否かを判定する。
P<P0の場合は、S1へ戻る。すなわち、打設管送り装置20(モータ30)によりコンクリート打設管10を後退移動させることなく、コンクリートの打設を続け、充填圧力Pの検出(S1)と判定(S2)とを繰り返す。
P>P0の場合は、S3、S4へ進む。
【0065】
S3では、コンクリート打設管10の送り量(後退移動量)を決定する。そして、S4では、決定された送り量の分、打設管送り装置20(モータ30)を作動させて、コンクリート打設管10を後退移動させる。すなわち、コンクリート打設管10を後退移動させて、未充填の領域にコンクリートを打設する。そして、S1、S2へ戻って、充填圧力Pの検出(S1)と判定(S2)とを繰り返す。
【0066】
前記S3で決定する送り量(後退移動量)は一定値としてもよいが、充填圧力に応じて、例えば充填圧力の検出値−目標値(目標値からの超過量)に応じて、定めるようにしてもよい。また、単位時間当たりの送り量(後退移動量)を定めることにより、送り速度(後退移動速度)を定めることもできる。
【0067】
覆工空間3C内でのコンクリート打設管10の後退に伴って、案内作用を終えた配管支持部材60(第1〜第3ロッド61、62、63)を覆工空間3Cから順次退出させ、筒状体65〜67の穴を穴埋め部材65b〜67bで埋めることにより、コンクリート充填の邪魔にならないようにする。
その一方、案内レール部材24の側では、配管支持部材50を順次突出させて、コンクリート打設管10に対する案内作用を発揮させる。
【0068】
最終的には、覆工空間3C内へのコンクリートの充填完了と共に、コンクリート打設管が覆工空間3C内から引き抜かれる。この際、
図11(a)→(b)に示されるように、コンクリート打設管10の先端部を妻板8の貫通孔70から引き抜いて、案内管71内に位置させた状態で、シャッター73(スライドゲート74)により妻板8の貫通孔70を塞ぎ、しかる後に、コンクリート打設管10を案内管71から引き抜く。これにより、引き抜きによる妻板8近傍でのコンクリート充填圧力の低下を防止することができる。
【0069】
本実施形態によれば、コンクリート打設管10の吐出口を打設部の直近へ移動させて打設することができ、充填不足を低減することができる。また、打設中のコンクリートの移動量を抑制でき、その結果として、コンクリートの材料分離を低減できる。
【0070】
また、圧力センサ32は、打設管送り装置20に取付けられて、コンクリート打設管10に対しこれを後退させる方向にかかるコンクリートの充填圧力を検出するため、1つのセンサで充填圧力を連続的に検出することができる。
【0071】
従って、コンクリートの充填圧力(打設圧力)を常時検出することができ、これに基づいて打設圧力を所定の圧力に保つことが容易となる。これにより、充填不足の低減と同時に、均一な品質のコンクリートの打設が可能となる。尚、打設圧力が変動する場合は、硬化後のコンクリートの密度・強度が不均一となる。不均一なコンクリートはトンネル覆工体のように長大な連続構造物では弱点となり、ひび割れや肌落ちなどの原因となる。
【0072】
そして特に、この圧力センサ32により検出されるコンクリートの充填圧力に応じてコンクリート打設管10を後退移動させるように打設管送り装置20を制御することにより、すなわち、コンクリート打設管10によりコンクリートを打設して十分な充填圧力が検出されたならコンクリート打設管10を後退移動させるような制御を行うことにより、トンネル軸方向に均一かつ十分な充填圧力を得ることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、圧力センサ32により検出されるコンクリートの充填圧力Pが所定値P0を超えるごとにコンクリート打設管10の後退移動させるように打設管送り装置20を制御することにより、簡単な制御で、必要十分な充填圧力を得ることができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、圧力センサ32により検出されるコンクリートの充填圧力Pに応じて打設管送り装置20によるコンクリート打設管10の後退移動量を決定することにより、より高精度に充填圧力を制御することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、圧力センサ32は、コンクリート打設管10を介して打設管送り装置20にかかる反力を検出するように、打設管送り装置20の駆動系(走行架台25の駆動系であるチェーン29)に取付けられることにより、トンネル冠部の覆工空間3Cの外部にてコンクリートの充填圧力を検出することができる。従って、打設されるコンクリートの影響を受けることなく、安定的に充填圧力を検出することができる。また、配線の引き回しや信号処理等が容易となる。
【0076】
また、本実施形態によれば、打設管送り装置20は、台車40に載置されてトンネル軸方向に延在する案内レール部材24と、この案内レール部材24に沿って移動可能でコンクリート打設管10の基端部を支持する走行架台25と、を含んで構成されることにより、コンクリート打設管10を確実に前進及び後退移動させることができる。
【0077】
次に本発明の他の実施形態について説明する。
図15は本発明の他の実施形態として圧力センサの他の配置例を示す図である。本図には
2つの圧力センサ91、92
を示してあり、圧力センサ91が他の配置例で、圧力センサ92は参考例である。
【0078】
圧力センサ91は、コンクリート打設管10を介して打設管送り装置20にかかる反力を検出するように、打設管送り装置20のコンクリート打設管10支持部に取付けられる。この例では、コンクリート打設管10とこれを支持するホルダ26との間に介装してあり、コンクリート打設管10に対しこれを後退させる方向にコンクリート充填圧力がかかると、コンクリート打設管10とホルダ26との間の圧力センサ91に圧縮力が作用し、これが電気的信号に変換される。尚、圧力センサ91としては、ロードセルを用いることができる。
【0079】
このように、圧力センサ91は、コンクリート打設管10を介して打設管送り装置20にかかる反力を検出するように、打設管送り装置20のコンクリート打設管10支持部(ホルダ26)に取付けられることにより、トンネル冠部の覆工空間3Cの外部にてコンクリートの充填圧力を検出することができる。従って、前述の圧力センサ32と同様に、打設されるコンクリートの影響を受けることなく、安定的に充填圧力を検出することができる。また、配線の引き回しや信号処理等が容易となる。
【0080】
圧力センサ92は、コンクリート打設管10の先端部(先端面)に取付けられ、コンクリート打設管10に対しこれを後退させる方向にかかるコンクリートの充填圧力を検出する。尚、圧力センサ92としては、ロードセルを用いることができる。
【0081】
このように、圧力センサ92は、コンクリート打設管10の先端部に取付けられることにより、コンクリート打設管10の先端部付近のコンクリートの充填圧力を直接的に検出できるという利点がある。
【0082】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。