(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボールを打撃する面であるフェースを有するフェース部と、前記フェースの下縁に連なりヘッドの底面をなすソール部と、シャフトが差し込まれるシャフト差込筒を有するホーゼル部とを有し、かつ、内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、
前記シャフト差込筒は、前記中空部内に突出し、
前記ソール部の前記フェース側には、前記中空部側に隆起しかつトウ・ヒール方向にのびる厚さが3.0〜10.0mmの厚肉部を具え、
前記厚肉部は、前記中空部内において前記シャフト差込筒に接続され、
前記厚肉部は、ヘッド重心を通りかつシャフト軸中心線が配される垂直面と直交する垂直面内で厚さが最大となる中央部、前記中央部のヒール側に配されかつ前記中央部よりも厚さが小さいヒール部、及び、前記中央部のトウ側に配されかつ前記中央部よりも厚さが小さいトウ部を含んでいることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
ボールを打撃する面であるフェースを有するフェース部と、前記フェースの下縁に連なりヘッドの底面をなすソール部と、シャフトが差し込まれるシャフト差込筒を有するホーゼル部とを有し、かつ、内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、
前記シャフト差込筒は、前記中空部内に突出し、
前記ソール部の前記フェース側には、前記中空部側に隆起しかつトウ・ヒール方向にのびる厚さが3.0〜10.0mmの厚肉部を具え、
前記厚肉部は、前記中空部内において前記シャフト差込筒に接続され、
前記厚肉部は、ヘッド後方に向かってステップ上に漸減していることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
ボールを打撃する面であるフェースを有するフェース部と、前記フェースの下縁に連なりヘッドの底面をなすソール部と、シャフトが差し込まれるシャフト差込筒を有するホーゼル部とを有し、かつ、内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、
前記シャフト差込筒は、前記中空部内に突出し、
前記ソール部の前記フェース側には、前記中空部側に隆起しかつトウ・ヒール方向にのびる厚さが3.0〜10.0mmの厚肉部を具え、
前記厚肉部は、前記中空部内において前記シャフト差込筒に接続され、
前記厚肉部は、ヘッド重心を通りかつシャフト軸中心線が配される垂直面と直交する垂直面内において、その厚さがヘッド後方に向かって直線状に漸減していることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ソール部のフェース側に設けられた厚肉部の形状を規定することを基本として、低重心化を図りつつ打球フィーリングを向上させたゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ボールを打撃する面であるフェースを有するフェース部と、前記フェースの下縁に連なりヘッドの底面をなすソール部と、シャフトが差し込まれるシャフト差込筒を有するホーゼル部とを有し、かつ、内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、前記シャフト差込筒は、前記中空部内に突出し、前記ソール部の前記フェース側には、前記中空部側に隆起しかつトウ・ヒール方向にのびる厚さが3.0〜10.0mmの厚肉部を具え、前記厚肉部は、前記中空部内において前記シャフト差込筒に接続されていることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、前記シャフト差込筒は、筒状の本体と、その下端を前記中空部内で閉じる底部とを含み、前記厚肉部は、前記底部に接続されている請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
【0007】
また請求項3記載の発明は、シャフト軸中心線を任意の垂直面内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともに前記フェースをロフト角に保持してヘッドが水平面に置かれた基準状態において、前記厚肉部は、前記垂直面を中心として、前後方向に夫々3〜15mmの範囲内に設けられている請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッドである。
【0008】
また請求項4記載の発明は、前記厚肉部は、前記フェース部の前記中空部に面したフェース背面と離間している請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0009】
また請求項5記載の発明は、シャフト軸中心線を任意の垂直面内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともに前記フェースをロフト角に保持してヘッドが水平面に置かれた基準状態において、前記厚肉部の厚さは、ヘッド重心を通りかつ前記垂直面と直交する垂直面内で最大となる請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0010】
また請求項6記載の発明は、前記厚肉部は、ヘッド後方に向かって厚さが漸減している請求項1乃至5のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0011】
また請求項7記載の発明は、前記フェース部を有するフェース部材と、前記ソール部を有するソール部材と、ヘッド本体とを備え、前記ヘッド本体は、前記フェース部材が固着されるフェース側開口部と、前記ホーゼル部と、前記ソール部材が固着されるソール側開口部とを有しており、前記ヘッド本体の比重D1、前記フェース部材の比重D2、及び前記ソール部材の比重D3は、下記式を充足する請求項1乃至6のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
D3>D1>D2
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴルフクラブヘッドは、ボールを打撃する面であるフェースを有するフェース部と、前記フェースの下縁に連なりヘッドの底面をなすソール部と、シャフトが差し込まれるシャフト差込筒を有するホーゼル部とを有し、かつ、内部に中空部が設けられている。ソール部のフェース側には、中空部側に隆起しかつトウ・ヒール方向にのびる厚さが3.0〜10.0mmの厚肉部を具えている。これにより、本発明のゴルフクラブヘッドは、ソール部の質量が大きくなり、低重心化が図られる。また、厚肉部は、打球時の振動を適正に減衰させるため、打球フィーリングが向上する。
【0013】
また、シャフト差込筒は、中空部内に突出し、厚肉部は、中空部内においてシャフト差込筒に接続されている。これにより打球時の振動が厚肉部からシャフト差込筒を介してシャフトに伝達される。従って、シャフトを握るゴルファーの手に、ボールインパクト時の手応えがスムーズにフィードバックされ、さらに打球フィーリングが向上する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1及び2には、本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」又は「クラブヘッド」ということがある。)1の基準状態が示されている。
【0016】
ここで、ヘッド1の基準状態とは、シャフト軸中心線CLを任意の垂直面VP内に配しかつ規定のライ角αで傾けるとともに、フェース2をロフト角(リアルロフト角)に保持(フェース角は零にセットされる)してヘッド1が水平面HPに置かれた状態とする。特に言及されていない場合、クラブヘッド1は、この基準状態にあるものとする。なお、ロフト角は、0度よりも大きい角度として与えられる。また、フェース2にロールが設けられている場合、ロフト角は、フェース2のスイートスポットSSを通る接線を基準に確定される。
【0017】
また、本明細書において、前後方向とは、
図1に示されるように、基準状態における平面視において、ヘッド重心Gからフェース2に下ろした法線Nと平行な方向FRとする。また、トウ・ヒール方向とは、前記平面視における法線Nと直角な方向THとする。なお、法線Nとフェース2との交点がスイートスポットSSになる。
【0018】
ヘッド1は、フェース部3、クラウン部4、ソール部5、サイド部6及びホーゼル部7を含んでいる。
【0019】
フェース部3は、ボールを打撃する打撃面をなすフェース2を有している。クラウン部4は、フェース2の上縁2aに連なり、ヘッド上面を構成している。ソール部5は、フェース2の下縁2bに連なり、ヘッド底面を構成している。サイド部6は、クラウン部4とソール部5との間を継ぎ、フェース2のトウ側縁2cからヘッド後方を通りフェース2のヒール側縁2dにのびている。ホーゼル部7は、クラウン部4のヒール側に設けられる。また、ホーゼル部7は、ゴルフクラブシャフト(図示省略)の先端側が挿入される筒状のシャフト差込筒8を有する。
【0020】
ホーゼル部7のシャフト差込筒8に、ゴルフクラブシャフト(図示省略)が取り付けられることにより、ゴルフクラブ(図示省略)が構成される。クラブヘッド1にシャフトが装着されていない場合、シャフト軸中心線CLとして、シャフト差込筒8の中心線が代用される。
【0021】
フェース2は、上縁2a、トウ側縁2c、下縁2b及びヒール側縁2dからなる周縁2Aで区画されている。フェースの周縁2Aは、明瞭な稜線がある場合には該稜線として定められる。このような稜線がない場合、
図3(a)に示されるように、ヘッド重心GとスイートスポットSSとを結ぶ直線(法線N)を含む各断面E1、E2、E3…において、
図3(b)に示されるように、フェース外面輪郭線Lfの曲率半径rがスイートスポット側からフェース外側に向かって初めて200mmとなる位置Peがフェース2の周縁2Aとして定義される。
【0022】
本実施形態のヘッド1は、内部に中空部iが設けられた中空構造を具え、好ましくはウッド型として構成される。ウッド型のゴルフクラブヘッドとは、少なくともドライバー(#1)、ブラッシー(#2)、スプーン(#3)、バフィ(#4)及びクリーク(#5)等を含み、かつこれらとは番手ないし名称が異なるが、ほぼ類似した形状を持つヘッドをも含む概念である。本実施形態のヘッド1は、好ましくはフェアウェイウッド、具体的にはロフト角が14°以上のヘッド1、より好ましくはロフト角が16°以上のヘッド1に好適である。
【0023】
特に限定されるものではないが、ドライバーの場合、ヘッド1の体積は、好ましくは350cm
3以上、より好ましくは420cm
3以上である。また、フェアウェイウッドのヘッド1の場合、その体積は、好ましくは90cm
3以上、より好ましくは120cm
3以上である。このような大きい体積は、ヘッド1の慣性モーメントMIを効果的に増大させ、ヘッド重心をより深くするのに役立つ。他方、ヘッド1の体積が大きすぎても、ヘッド重量の増加、スイングバランスの悪化及びゴルフ規則違反等の問題があるため、好ましくは460cm
3以下とされる。
【0024】
本明細書において、「慣性モーメントMI」とは、
図1に示されるように、基準状態におけるヘッド重心Gを通る垂直軸A1周りの慣性モーメントをいうものとする。なお、慣性モーメントMIが過度に大きい場合、横のギア効果が小さくなるため、適正なサイドスピン量を得ることができない。従って、ボール打撃位置がフェース2のトウ・ヒール方向にばらついた場合、打球が目標飛球線方向に戻りきらず打球の方向性が悪化するおそれがある。逆に、慣性モーメントMIが過度に小さい場合、ボール打撃位置がフェース2のトウ・ヒール方向にばらついた場合、ヘッドのブレが大きくなり、打球の方向性が悪化するおそれがある。このため、例えば、ドライバーの場合、慣性モーメントMIは、例えば3500〜5000g・cm
2が望ましく、フェアウェイウッドの場合、慣性モーメントMIは、例えば2600〜2800g・cm
2が望ましい。なお、ゴルフ規則により、慣性モーメントMIは、5900g・cm
2以下とされる。
【0025】
ヘッド1の質量は、小さすぎると耐久性が悪化するおそれがある。逆に、ヘッド1の質量が大きすぎると、スイングバランスが悪化し、打球の方向安定性や飛距離が低下するおそれがある。このような観点より、ドライバーの場合、ヘッド1の質量は、好ましくは160g以上、より好ましくは170g以上であり、好ましくは220g以下、より好ましくは210g以下である。また、フェアウェイウッドのヘッド1の場合、ヘッド1の質量は、好ましくは180g以上、より好ましくは190g以上であり、好ましくは250g以下、より好ましくは240g以下である。
【0026】
図4には、ヘッド1の分解斜視図が示される。
図4に示されるように、本実施形態のヘッド1は、少なくともフェース部3の一部を含む(本実施形態では全部)フェース部材1A、少なくともソール部5の一部を含むソール部材1B、及び、フェース部材1Aとソール部材1Bとが固着されているヘッド本体1Cから形成されている。
【0027】
フェース部材1Aは、例えば、フェース2と、該フェース2の周縁2Aからヘッド後方にのびる返し部9とを含んだ略カップ状に形成されている。返し部9は、クラウン部4の前側を形成するクラウン側返し部9a、ソール部5の前側を形成するソール側返し部9b、サイド部6のトウ側を形成するトウ側返し部9c、及び、サイド部6のヒール側を形成するヒール側返し部9dを含んでいる。各返し部9a乃至9dは、フェース2の周りで環状に連続している。
【0028】
フェース部材1Aは、耐久性を確保するために、例えば、比強度の大きいマレージング鋼、チタン、チタン合金、マグネシウム合金又はアルミニウム合金が採用される。
【0029】
ソール部材1Bは、ソール部5の後側部分をなすソール後部10と、ソール後部10の周縁から上にのびサイド部6の一部を構成するサイド下側部11とを含んでいる。ソール部材1Bは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、ソール部5のみで構成されるものでも良い。
【0030】
ソール部材1Bは、ヘッド1を低重心化させるために、例えば、比重の大きいステンレス合金、マレージング鋼又はタングステン合金が望ましい。
【0031】
図5には、ヘッド1の前記基準状態の底面図が示される。
図5に示されるように、ソール部材1Bは本実施形態では、シャフト軸中心線CLよりもヘッド後方、かつ、ヘッド1の輪郭線Rの内側を該輪郭線Rに沿ってのびる略半月状に形成されている。ヘッド1の低重心化を図りつつ慣性モーメントを適正に大きくするため、
図5の底面視において、ソール部材1Bの面積Saは、ヘッド1の輪郭線Rが囲むヘッド底面積Sの好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。
【0032】
図4に示されるように、本実施形態のヘッド本体1Cは、クラブヘッド1からフェース部材1A及びソール部材1Bを除いた部分で形成される。即ち、ヘッド本体1Cは、フェース部材1Aが固着されるフェース側開口部12fと、ソール部材1Bが固着されるソール側開口部12sと、ホーゼル部7と、ソール部5の前後方向の中央部分をなすソール中央部13と、クラウン部4の後部分をなすクラウン後部14とを有し、これらが一体に形成される。
【0033】
このようなヘッド本体1Cは、ヘッド体積を大きく確保して慣性モーメントMIを最適化させるため、ステンレス合金、マレージング鋼、チタン又はチタン合金が採用される。
【0034】
打球フィーリングを確保しつつ、ヘッド1を低重心化させるため、ヘッド本体1Cの比重D1、フェース部材1Aの比重D2、及び、ソール部材1Bの比重D3とする場合、D3>D1>D2を充足するのが望ましい。本実施形態のヘッド1では、フェース部材1Aには、チタン合金(比重:4.6)、ソール部材1Bには、タングステン合金(比重:8.3)、及びヘッド本体1Cには、ステンレス合金(比重:7.8)が採用されている。
【0035】
ヘッド本体1Cのフェース側開口部12fと、フェース部材1Aの端縁部とは、例えば溶接で固着される。これらの溶接位置は、フェース2の周縁2Aよりもヘッド後方になる。このため、接合面積が大きく確保され、両部材1C、1Aの接合強度が高められる。このような作用を効果的に発揮させるため、
図5に示されるように、基準状態の底面視において、ソール側返し部9bの前後方向の最大長さLaは、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上である。ソール側返し部9bの最大長さLaが大きい場合、ヘッド本体1Cのソール中央部13の前後方向の長さ又はソール部材1Bの前後方向の長さが小さくなり、ヘッド1を低重心化できないおそれがある。このため、ソール側返し部9bの最大長さLaは、好ましくは15mm以下、より好ましくは13mm以下である。なお、ヘッド本体1Cとフェース部材1Aとは、ロウ付けで固着されても良い。また、ヘッド本体1Cのソール側開口部12sとソール部材1Bの端縁部とは、例えば、溶接やロウ付け等で固着される。
【0036】
図4又は
図6に示されるように、ホーゼル部7のシャフト差込筒8は、中空部i側に突出する筒状の本体15と、その下端を中空部i内で閉じる底部16とを具える。本体15は、その側面15aのヒール側の一部が、ヘッド本体1Cのヒール部分と一体成形されている。このような本体15は、ヒール部及びホーゼル部7の剛性を高め、打球の方向安定性能を向上させる。
【0037】
図4に示されるように、ソール部5は、フェース2側に配され中空部i側に隆起しかつトウ・ヒール方向にのびる厚さT1が3.0〜10.0mmの厚肉部17と、厚さT2が3.0mm未満の薄肉部18とを含む。厚肉部17は、ソール部5の質量を大きくして、ヘッド1を低重心化させる。また、厚肉部17は、ボール打撃時の振動を適正に減衰させ、打球フィーリングを向上させる。厚肉部17の厚さT1が3.0mm未満の場合、低いヘッド重心が得られない。厚肉部17の厚さT1が10.0mmを超える場合、ソール部5自体の重心も高くなり、ひいては、低いヘッド重心が得られない。このため、厚肉部17の厚さT1は、好ましくは3.5mm以上であり、好ましくは7.5mm以下である。薄肉部18の厚さT2は、ヘッド1の剛性を確保するため、0.8mm以上が望ましい。
【0038】
厚肉部17は、本実施形態では、ヘッド本体1Cのソール中央部13のみに形成されている。また、ソール部5の薄肉部18は、厚肉部17よりもヘッド後方かつヘッド本体1Cに形成される本体側薄肉部18Aと、ソール部材1Bに形成されるソール部側薄肉部18Bと、フェース部材1Aに形成されるフェース部側薄肉部18Cとを含む。本実施形態では、クラウン部4も、厚さが3mm未満の薄肉部で構成される。これにより、上述の作用を発揮しつつ、ヘッド体積が大きく確保されるため、大きな慣性モーメントMIが得られる。
【0039】
厚肉部17は、中空部i内においてシャフト差込筒8に接続されている。これによりボール打撃時のヘッド1の振動が、厚肉部17からシャフト差込筒8を介してダイレクトにシャフト(図示せず)に伝達される。従って、シャフトを握るゴルファーの手に、ボールインパクト時のしっかりとした手応えが効果的にフィードバックされ、さらに打球フィーリングが向上する。
【0040】
厚肉部17は、例えば、シャフト差込筒8の底部16に接続されている。これにより、上述の振動が底部16を通してシャフトの先端からさらに効果的にゴルファーの手に伝達される。従って、一層、打球フィーリングが向上する。
【0041】
図7には、ヘッド1をスイートスポットSSで水平面HPと平行に切断した断面図が示される。
図7に示されるように、厚肉部17は、シャフト軸中心線CLを通る垂直面VPを中心として、前後方向に夫々3〜15mmの範囲内に設けられるのが望ましい。これにより、ヘッド1の質量の増加を抑制しつつ低重心化を図りうる。即ち、厚肉部17の前後方向の夫々の長さWaが小さい場合、ヘッド1の低重心化が十分に期待できないおそれがある。厚肉部17の前後方向の長さWaが大きい場合、ヘッド1の質量が過度に大きくなるおそれがある。このため、厚肉部17の前後方向の長さWaは、より好ましくは5mm以上であり、より好ましくは13mm以下である。
【0042】
厚肉部17は、トウ・ヒール方向にのびる略矩形状をなす。これにより、打球位置が、トウ・ヒール方向にばらついた場合でも、ボール打撃時の振動が効率良く厚肉部17に伝達される。また、このような厚肉部17は、慣性モーメントMIを大きく確保し得る。厚肉部17のトウ・ヒール方向の長さLbが大きい場合、厚肉部17の質量が過度に大きくなり、ヘッド1の体積を大きくすることができず、慣性モーメントMIが小さくなるおそれがある。このような観点より、厚肉部17のトウ・ヒール方向の長さLbは、好ましくはフェースの周縁2Aのトウ・ヒール方向の長さL1(
図1に示す)の50%以上、より好ましくは60%以上であり、好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下である。
【0043】
図8には、ヘッド重心Gを通りかつシャフト軸中心線CLを通る垂直面と直交する垂直面1V(
図1に示す)で切断した断面図が示される。
図8に示されるように、厚肉部17は、フェース部3の中空部iに面したフェース背面2fから離間している。これにより、ボール打撃時の振動によってフェース背面2fと厚肉部17とが接触するのが防止され、打球フィーリング及び打球の反発性能の悪化が抑制される。なお、フェース背面2fと厚肉部17とが過度に離間すると、ヘッド重心が後方に寄り、基準状態における水平面HPからスイートスポットSSまでの高さであるスイートスポット高さGHが大きくなるおそれがある。このような観点より、フェース背面2fと厚肉部17との前後方向の最小距離Lcは、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上であり、また好ましくは15mm以下、より好ましくは13mm以下である。
【0044】
上述の作用を効果的に発揮させるため、
図7に示されるように、厚肉部17とフェース背面2fとは、厚肉部17のトウ・ヒール方向の長さに亘って離間するのが望ましい。
【0045】
図8に示されるように、厚肉部17は、ヘッド後方に向かって厚さが漸減している。このような厚肉部17は、ヘッド1の質量の過度の増加を抑制することができる。本実施形態の厚肉部17は、その厚さがステップ状に漸減している。特に限定されるものではないが、厚肉部17の厚さは、垂直面1V内において、最大の厚さt1となる領域の前端17eから10mm後方位置での厚さt10は、最大の厚さt1よりも1〜6mm小さいのが望ましい。
【0046】
図6に示されるように、厚肉部17の厚さT1は、ヘッド重心Gを通りかつ垂直面VP(
図1に示す)と直交する垂直面1V内で最大となるのが望ましい。これにより、ヘッド重心Gがさらに低くなる。また、ボール打撃によるスイートスポットSS近傍で生じる大きな振動が効率良く減衰される。なお、ボール打撃位置がトウ・ヒール方向にずれた場合においても、同様の効果を発揮させるため、厚肉部17の厚さが最大となる領域をトウ・ヒール方向に大きく確保するのが望ましい。しかしながら、厚肉部17の厚さが最大となる領域を過度に増加させると、ヘッド1の質量が大きくなる。このため、厚肉部17の厚さが最大となる領域は、トウ・ヒール方向の長さLdが、夫々好ましくは15mm以上、より好ましくは17mm以上であり、好ましくは35mm以下、より好ましくは30mm以下である。
【0047】
図6又は
図7に示されるように、上述の作用をバランス良く発揮させるため、垂直面1Vと平行な断面において、厚肉部17は、例えば、フェース前側に配される前側部19と、該前側部19の後方に配されかつ前側部19よりも厚さが小さい後側部20とで構成されている。
【0048】
前側部19は、例えば、トウ・ヒール方向の中央に配されかつ厚さが最大となる中央前側部19Aと、中央前側部19Aのヒール側に配されかつ中央前側部19Aよりも厚さが小さいヒール前側部19Bと、中央前側部19Aのトウ側に配されかつ中央前側部19Aよりも厚さが小さいトウ前側部19Cとを含んでいる。後側部20は、例えば、トウ・ヒール方向の中央に配されかつ厚さが後側部20で最大となる中央後側部20Aと、中央後側部20Aのヒール側に配されかつ中央後側部20Aよりも厚さが小さいヒール後側部20Bと、中央後側部20Aのトウ側に配されかつ中央後側部20Aよりも厚さが小さいトウ後側部20Cとを含んでいる。
【0049】
厚肉部17の各部19A乃至19C、20A乃至20C及び薄肉部18の間には、剛性段差を解消するため、厚さが滑らかに変化する厚さ変化部22が設けられるのが望ましい。
【0050】
図9には、本発明の他の実施形態のヘッド1の断面図が示される。この断面図は、
図1に示した垂直面1Vで切断されたものである。
図9に示されるように、この実施形態では、厚肉部17の厚さT1が、ヘッド後方に向かって直線状に斬減している。このような厚肉部17は、ヘッド重心Gをヘッド前方に配することができ、スイートスポット高さGHが小さくなるため、バックスピン量を抑制できる。また、厚肉部17による打球フィーリングの向上効果を確保することができる。なお、厚肉部17のヘッド上面側の面17zと水平面HPとの傾斜角θ1が大きい場合、ヘッド重心Gが高くなり低重心化できないおそれがある。このため、垂直面1Vの断面視において、厚肉部17のヘッド上面側の面17zと水平面HPとの傾斜角θ1及び、ヘッド重心Gを通る前記法線Nと水平面HPとの傾斜角θ2の差の絶対値|θ1−θ2|は、好ましくは10°以下、より好ましくは5°以下である。
【0051】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく、必要に応じて種々の態様に変更しうる。
【実施例】
【0052】
本発明の効果を確認するために、
図4に示されるヘッドが試作され、スイートスポット高さ、反発性能、慣性モーメント及び打球フィーリングがテストされた。なお、厚肉部の大きさ、ソール部材及びフェース部材を実施例1と異ならせたことによる質量差は、夫々の部材の厚さを均一に変化させてヘッド質量及びヘッド体積が統一された。
各ヘッドは、表1に示されるパラメータ以外はすべて同一であり、主な共通仕様は次の通りである。
ヘッド質量:215g
ヘッド体積:161cc
ロフト角:18°
ライ角:59°
ヘッド厚さ:35mm
フェース高さ:29mm
フェースのトウ・ヒール方向の最大長さL1:87mm
厚肉部のトウ・ヒール方向の長さLb:70mm
最大厚肉部のトウ・ヒール方向の長さLd+Ld:30mm
厚肉部の前後方向の長さWa+Wa:16mm
トウ前側部の厚さt3:5.5mm
中央後側部の厚さt4:4.5mm
ヒール後側部の厚さt5:3.0mm
トウ後側部の厚さt6:2.5mm
ソール部材の面積比Sa/S:55%
ヘッド本体の材質:ステンレス合金(CUSTOM450、比重7.8)
テスト方法は、次の通りである。
【0053】
<スイートスポット高さ>
ヘッドの基準状態において、ヘッドのスイートスポット高さが測定された。結果は実測値で表示される。数値が小さいほど低重心化されており優れていることを示す。
【0054】
<反発性能>
U.S.G.A.の Procedure for Measureing the Velocity Ratio of a Club Head for Conformance to Rule 4-1e, Revision 2 (February 8, 1999) に従って、反発係数が求められた。ただし、計測位置は、スイートスポットの他、該スイートスポットからトウ側及びヒール側にそれぞれ20mmを隔てたトウ側位置及びヒール側位置を含む計3カ所の平均の値とした。数値は、ゴルフ規則の上限である0.83を超えることなく、0.83に近いほど良好である。
【0055】
<慣性モーメント>
ヘッドの基準状態において、ヘッド重心を通る垂直軸周りの慣性モーメントMIを INERTIA DYNAMICS Inc 社製のMOMENT OF INERTIA MEASURING INSTRUMENTの MODEL NO.005-002を用いて測定した。結果は実測値で表示される。本テストで使用されるゴルフクラブの場合、2600〜2800g・cm
2の範囲であれば、ミスショット時のヘッドのブレが小さく良好である。
【0056】
<打球フィーリング>
各供試ヘッドにFRP製のシャフト(ダンロップスポーツ株式会社製のMP700、フレックスR)を装着し42インチのウッド型ゴルフクラブ(#5)が試作された。そして、このウッド型ゴルフクラブを用いて、ハンディキャップ5〜15のゴルファー20名が、市販の3ピースゴルフボール(ダンロップスポーツ株式会社製「XXIO LX」)を10球ずつ打球し、このときの、打球時の手に伝達される振動のしっかり感が、上記ゴルファーの官能により評価された。結果は、5点を満点とする5点法である。
テストの結果などを表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
テストの結果、実施例のヘッドは、比較例のヘッドに比して、慣性モーメントが安定しているとともに、低重心化と打球フィーリングとがバランス良く向上している。また、各部材の金属材料やソール部材の面積比を上述の好ましい範囲内で異ならせたものを用いて、同様のテストを行ったが、このテスト結果と同じ傾向が示された。