(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1群を構成するレンズのレンズ面のうち最も被検面側に配置される面と、前記第2群を構成するレンズのレンズ面のうち最も点光源側に配置される面とが互いに向き合う一対の凹面であり、該凹面を持つ少なくとも一方が負レンズであり、
前記一対の凹面のうち、前記被検面側に向く凹面の曲率半径をr31と定義し、該曲率半径r31を持つ凹面と向き合う凹面の曲率半径をr32と定義した場合に、次の条件式
―0.2<SF3<0.0
但し、
SF3:(r31+r32)/(r31−r32)
を満たす、
請求項1から請求項8の何れか一項に記載の内視鏡。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る走査用集光光学系を備える一体型内視鏡について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の一体型内視鏡300の先端部の内部構成を示す側断面図である。
図1に示されるように、一体型内視鏡300の先端部内には、被写体(体腔内の生体組織400)を高倍率で観察(共焦点観察)するための共焦点光学システム100、及び生体組織400を通常観察するための通常観察用光学システム200が組み込まれている。なお、一体型内視鏡300は、図示省略されたプロセッサに接続されている。プロセッサは、各光学システムに対応する光源ユニット、及び各光学システムにより撮像された生体組織400の撮像信号を処理する画像処理ユニットを備えている。これらのユニットは周知であるため、その具体的構成の説明は省略する。また、各図においては、共焦点光学システム100の走査用集光光学系10の光軸方向をZ方向と定義し、Z方向と直交し、かつ互いに直交する方向をそれぞれX方向、Y方向と定義する。つまり、X方向とY方向はZ方向と直交する面(XY平面)を規定する。
【0022】
通常観察用光学システム200は、光源ユニットが持つ光源(例えばキセノンランプ)からの光を生体組織400へ照射する照明光学系や、照射された生体組織400を撮像する固体撮像素子等を備えている。
【0023】
共焦点光学システム100は、走査用集光光学系10、シングルモード光ファイバ(以下、単に「光ファイバ」と記す。)20、圧電素子30A及び30B(二軸アクチュエータ)、形状記憶合金40、カバーガラス80を備えている。走査用集光光学系10及び光ファイバ20は、円筒状の枠体50内に保持されている。枠体50は、該枠体50の径よりも若干大きめの径を持つ円筒状の金属パイプ60内にスライド可能に保持されている。
【0024】
光ファイバ20は、光源ユニットより入射したレーザ光(励起光)を伝送し、伝送された励起光を一体型内視鏡300の先端部内(共焦点光学システム100内)に配された射出端21より射出する。光ファイバ20の射出端21は、共焦点光学システム100の二次的な点光源として機能する。点光源である射出端21の二次元方向(XYの各方向)における位置は、圧電素子30A及び30Bの動作に応じて周期的に変化する。具体的には、プロセッサがドライブ信号を生成し、射出端21付近の光ファイバ20の外周面に接着固定された圧電素子30A及び30Bを駆動制御する。圧電素子30A及び30Bは、ドライブ信号に応じた逆圧電効果によりXYの各方向に変形して、射出端21付近を、XY平面に近似する面(以下、「XY近似面」と記し、詳しくは後述する。)上で変位させる。射出端21は、XY近似面上において所定の走査軌跡を描くようにフレームレートに従って周期的に移動する。この種の二次元走査には、例えば、中心軸AXを中心としたスパイラル走査、走査範囲の水平方向を往復走査するラスタスキャン方式、走査範囲を正弦波的に走査するリサージュスキャン方式など、種々の方式を適用することができる。
【0025】
枠体50の外壁面51と金属パイプ60の内壁面61との間には、形状記憶合金40及び圧縮コイルバネ70が取り付けられている。外壁面51、内壁面61は共に、Z方向に対して略直交する(つまり、XY平面上にある)。形状記憶合金40は、常温下で外力が加えられると変形することができ、変形された状態で一定温度以上に加熱されると、記憶している状態に復元する。より具体的には、形状記憶合金40は、加熱されることによりZ方向に収縮する。一方、圧縮コイルバネ70は、自然長から圧縮された状態で外壁面51と内壁面61との間に取り付けられている。つまり、圧縮コイルバネ70は、金属パイプ60内にて枠体50をカバーガラス80側へ付勢している。
【0026】
形状記憶合金40は、通電により加熱されると、圧縮コイルバネ70の張力に抗して収縮する。枠体50は、形状記憶合金40の収縮に伴い、金属パイプ60内にて内視鏡先端部後方に(カバーガラス80から離れる方向に)スライドする。これにより、点光源である射出端21より射出されて走査用集光光学系10を介した光束の集光位置がZ方向にシフトする。つまり、Z方向に走査される。二軸アクチュエータ(圧電素子30A及び30B)による点光源のXY近似面上の周期的な運動と、形状記憶合金40及び圧縮コイルバネ70の作用による点光源のZ方向の進退とを併せることにより、被写体に対する三次元走査が可能となる。
【0027】
光ファイバ20の射出端21は、走査用集光光学系10の物体側焦点位置(言い換えると、走査用集光光学系10の像側焦点位置と光学的に共役な位置)に配置されているため、共焦点ピンホールとして機能する。射出端21には、励起光により励起された被写体の散乱成分(蛍光)のうち射出端21と光学的に共役な集光点からの蛍光のみが入射される。蛍光は、光ファイバ20により伝送されて、プロセッサに備えられた共焦点画像生成用の画像ユニット(不図示)に入光する。当該ユニットによる処理により、生体組織400の3次元画像が得られる。
【0028】
図2は、共焦点光学システム100における走査用集光光学系10近傍の拡大図である。
図2に示されるように、点光源である射出端21が移動するXY近似面は、射出端21より射出される光束の主光線の延長線(破線)と光軸(一点鎖線)AXとの交点Pを曲率中心とする曲面(矢印点線)となる。XY近似面は、XY平面に対して光ファイバ20の基端側に湾曲している。XY平面に対するXY近似面の湾曲量は、光軸AXから離れるほど増加する。なお、
図2に示されるように、交点Pは、光ファイバ20の湾曲中心Cよりも走査用集光光学系10側に位置する。走査用集光光学系10は、交点Pに入射瞳が位置するように配置される。
【0029】
走査用集光光学系において広画角化を達成するためには、点光源である光ファイバの射出端の移動範囲を大きく設定すると共に、広範囲に移動する点光源からの射出光を取り込むために有効光束径を大きく設計する必要がある。しかし、点光源の移動範囲を広げるほどXY平面に対するXY近似面(物体面)の湾曲量が大きくなるため、集光光学系が潜在的に持つアンダー方向の像面湾曲に、アンダー方向の像面湾曲が更に付加されてしまう。また、走査用集光光学系は、被写体を高倍率で観察するため、例えば像側NAと物体側NAとが等しい等倍光学系(若しくはそれ以上の倍率の光学系)であることが好ましい。しかし、等倍光学系の場合、XY平面に対するXY近似面の湾曲量がそのまま像側での湾曲量として現れる。このように、走査用集光光学系には、XY平面に対するXY近似面の湾曲量に起因して像面湾曲が大きく発生する虞があり、周辺解像度の低下を避けることが難しかった。そこで、本発明者は、鋭意検討を重ね、小型化及び広画角化を両立させつつも、上記のように大きく発生し得る像面湾曲(及びその他の諸収差)を抑えるのに好適な走査用集光光学系10を見出した。
【0030】
図3は、本発明の実施例1(詳しくは後述)の走査用集光光学系10及びその後段の光学部品(カバーガラス80)の配置を示す断面図である。ここでは、
図3を利用して、本発明の実施形態の走査用集光光学系10について詳説する。なお、
図3をはじめとする走査用集光光学系10の各構成図は、図中左側が物体側(点光源である射出端21側)であり、図中右側が像側(被検面側)である。
【0031】
図3に示されるように、走査用集光光学系10は、点光源側から順に、第1群G1、第2群G2を少なくとも有している。各群G1、G2を構成する各光学レンズは、走査用集光光学系10の光軸AXを中心とした回転対称形状を有している。第2群G2より被検面側には、カバーガラス80が配置されている。カバーガラス80は球面収差を補正するため、適切な厚みに設計されている。なお、上記において「少なくとも有している」としたのは、本発明の技術的思想の範囲において、別の光学素子を追加する構成例もあり得るからである。例えば、本発明に係る走査用集光光学系に対して光学性能に実質的に寄与しない平行平板を追加する構成例や、本発明に係る走査用集光光学系の構成及び効果を維持しつつ別の光学素子を付加する構成例が想定される。第1群G1、第2群G2の説明においても、同様の理由で「少なくとも有している」と表現している。
【0032】
第1群G1と第2群G2との間の軸上光は、光軸AXに対して略平行な光(略平行光)となっている。第1群G1と第2群G2との間を略平行光とすることにより、群毎の光学性能を、第1群G1と第2群G2とを組み立てる前段階で例えば干渉計による干渉縞観測を通じて独立に評価することができる。また、各群の評価結果に基づいて適切な群同士を組み合わせた上で、例えば本出願人による特許第4320184号公報に記載されているように、1つのレンズを調芯レンズとし、これを調芯治具で調芯することにより、両群を組み立てた状態での誤差を効率的に低減することができる。
【0033】
また、第1群G1と第2群G2との間を略平行光とすることにより、群間隔の変化に伴う倍率の変化が実質的に無い(被検面側のNAが実質変化しない)。そのため、例えば第2群G2だけを光軸方向に移動させることにより、走査用集光光学系10による観察深さ(生体組織400の深さ方向の観察位置)を変えることができる。
【0034】
図3に示されるように、第1群G1は、正のパワーを持つレンズ群であり、点光源側から順に、点光源側に凹面を向けたメニスカスレンズL1、被検面側に凸面を向けた正レンズL2、点光源側に凸面を向けた正レンズL3、被検面側に凹面を向けた負レンズL4と正レンズL5からなる接合レンズCL1を少なくとも有している。
【0035】
また、第1群G1は、正のパワーを持つレンズ群であり、点光源側から順に、点光源側に凹面を向けたメニスカスレンズ、被検面側に凸面を向けた正レンズ、負レンズと正レンズからなる接合レンズ、被検面側に凹面を向けたメニスカスレンズを少なくとも有する構成としてもよい(後述の実施例2参照)。
【0036】
第1群G1において、正レンズは球面収差の補正に寄与し、接合レンズは色収差の補正に寄与する。
【0037】
図3に示されるように、第2群G2は、正のパワーを持つレンズ群であり、点光源側から順に、点光源側に凹面を向けた負レンズL6と正レンズL7からなる接合レンズCL2、正レンズL8、被検面側に凹面を向けたメニスカスレンズL9を少なくとも有している。
【0038】
第2群G2においても、正レンズは球面収差の補正に寄与し、接合レンズは色収差の補正に寄与する。
【0039】
走査用集光光学系10は、最も点光源側に配置される面(メニスカスレンズL1の点光源側の面)、最も被検面側に配置される面(メニスカスレンズL9の被検面側の面)を共に凹面とすることで、走査用集光光学系10における入射出時のコマ収差及び非点収差の発生を抑えている。
【0040】
ここで、メニスカスレンズL1の点光源側の面の曲率半径をr
11と定義し、メニスカスレンズL1の被検面側の面の曲率半径をr
21と定義し、メニスカスレンズL9の点光源側の面の曲率半径をr
12と定義し、メニスカスレンズL9の被検面側の面の曲率半径をr
22と定義した場合、走査用集光光学系10は、次の条件式(1)及び(2)
−0.4<SF
1<0.0・・・(1)
−0.6<SF
2<−0.1・・・(2)
但し、
SF
1:(r
11−r
21)/(r
11+r
21)
SF
2:(r
12−r
22)/(r
12+r
22)
を満たす。
【0041】
条件式(1)に規定されるSF
1の上限を上回ると、メニスカスレンズL1のパワーが強くなりすぎることにより、コマ収差及び非点収差が大きく発生し、補正が困難となる。また、第1群G1の正のパワーが強くなりすぎることにより、像面湾曲の補正に必要な負のパワーを確保することが難しい(補正不足になりやすい)。一方、条件式(1)に規定されるSF
1の下限を下回る場合もメニスカスレンズL1のパワーが強くなりすぎることにより、コマ収差及び非点収差が大きく発生し、補正が困難となる。また、第1群G1の負のパワーが強くなりすぎることにより、軸外色収差が大きく発生し、補正が困難となる。更に、軸外光の入射高が大きくなり、走査用集光光学系10の細径化設計に不利である。換言すると、径の細い一体型内視鏡300の先端部内への走査用集光光学系10の組み込みが難しくなる。
【0042】
条件式(2)に規定されるSF
2の上限を上回ると、メニスカスレンズL9のパワーが弱くなりすぎることにより、被検面に対する励起光の入射角度、及びメニスカスレンズL9への戻り光(被検面にて発生する自家蛍光)の入射角度が大きくなり、励起光による被検面への照射効率及び蛍光の取込効率が低下し得る。一方、条件式(2)に規定されるSF
2の下限を下回ると、第2群G2内の正レンズのパワーが強くなりすぎることにより、コマ収差及び非点収差が大きく発生し、補正が困難となる。また、軸外光の射出高が大きくなり、走査用集光光学系10の細径化設計に不利である。換言すると、径の細い一体型内視鏡300の先端部内への走査用集光光学系10の組み込みが難しくなる。
【0043】
条件式(1)、(2)が同時に満たされることにより、走査用集光光学系10の小型化及び広画角化を両立させた場合も像面湾曲(及びコマ収差、非点収差、球面収差、色収差等の諸収差)の発生を抑えることができると共に、点光源より射出された射出光を効率的に取り込むことができ、かつ励起光を被検面に効率的に照射し、照射された被検面からの蛍光を効率的に取り込むことができる。附言するに、条件式(1)、(2)が同時に満たされることにより、共焦点光学システム100のように、物体面(XY近似面)が湾曲する場合であっても像面湾曲を抑えることができる。また、走査用集光光学系10を、径の細い一体型内視鏡300の先端部内への組み込みに適した寸法に抑えて設計することができる。
【0044】
また、走査用集光光学系10は、例えば、第1群G1を構成するレンズのうち最も負のパワーの強いレンズの焦点距離をf
1nと定義し、第1群G1の焦点距離をf
1と定義した場合に、次の条件式(3)
−4.5≦f
1n/f
1≦−0.5・・・(3)
を更に満たす。
【0045】
条件式(3)に規定されるf
1n/f
1の
下限を
下回ると、像面湾曲の補正に必要な負のパワーを確保することが難しい(補正不足になりやすい)。一方、条件式(3)に規定されるf
1n/f
1の
上限を
上回ると、負のパワーの増加に伴い、レンズ面の曲率を大きくすることとなり、加工が難しくなる。また、負のパワーが強すぎることにより、感度(組立誤差等に応じた収差の変化)が高くなるため、例えば歩留まりが低下する等の問題が生じる。
【0046】
条件式(3)が満たされることにより、共焦点光学システム100のように、物体面(XY近似面)が湾曲する場合であっても像面湾曲が抑えられる。また、レンズ面の曲率を過度に大きく設定する必要がないため、加工に配慮してレンズ面を設計することができる。また、感度を抑え、組立誤差等に対する許容度を高くすることができるため、例えば歩留まりの低下が抑えられる。
【0047】
また、走査用集光光学系10は、例えば、第2群G2を構成するレンズのうち最も負のパワーの強いレンズの焦点距離をf
2nと定義し、第2群G2の焦点距離をf
2と定義した場合に、次の条件式(4)
−0.9≦f
2n/f
2≦−0.5・・・(4)
を更に満たす。
【0048】
条件式(4)に規定されるf
2n/f
2の
下限を
下回ると、像面湾曲の補正に必要な負のパワーを確保することが難しい(補正不足になりやすい)。一方、条件式(4)に規定されるf
2n/f
2の
上限を
上回ると、負のパワーの増加に伴い、レンズ面の曲率を大きくすることとなり、加工が難しくなる。また、負のパワーが強すぎることにより、感度が高くなるため、例えば歩留まりが低下する等の問題が生じる。
【0049】
条件式(4)が満たされることにより、共焦点光学システム100のように、物体面(XY近似面)が湾曲する場合であっても像面湾曲が抑えられる。また、レンズ面の曲率を過度に大きく設定する必要がないため、加工に配慮してレンズ面を設計することができる。また、感度を抑え、組立誤差等に対する許容度を高くすることができるため、例えば歩留まりの低下が抑えられる。
【0050】
また、走査用集光光学系10は、例えば、第1群G1を構成するレンズのうち最も正のパワーの強いレンズの焦点距離をf
1pと定義した場合に、次の条件式(5)
1.0≦f
1p/f
1≦4.0・・・(5)
を更に満たす。
【0051】
条件式(5)に規定されるf
1p/f
1の上限を上回ると、正のパワーが弱くなることにより第1群G1の各面における収差の変化が緩やかになる(すなわち感度が低くなる)が、その代償として、走査用集光光学系10の全長が長くなると共に像面湾曲も補正不足となる。一方、条件式(5)に規定されるf
1p/f
1の下限を下回ると、走査用集光光学系10の全長を短くすることができるが、その代償として、球面収差及びコマ収差が大きくなり、補正が困難となる。また、第1群G1の各面における収差の変化が大きくなる(すなわち感度が高くなる)ため、組立誤差等により収差が発生しやすくなる。
【0052】
条件式(5)が満たされることにより、走査用集光光学系10全系における像面湾曲を補正しつつ、第1群G1内の球面収差及びコマ収差が抑えられる。また、走査用集光光学系10の全長を抑えることができると共に感度も抑えられる。
【0053】
また、走査用集光光学系10は、例えば、第2群G2を構成するレンズのうち最も正のパワーの強いレンズの焦点距離をf
2pと定義した場合に、次の条件式(6)
0.5≦f
2p/f
2≦3.0・・・(6)
を更に満たす。
【0054】
条件式(6)に規定されるf
2p/f
2の上限を上回ると、正のパワーが弱くなることにより第2群G2の各面における収差の変化が緩やかになる(すなわち感度が低くなる)が、その代償として、走査用集光光学系10の全長が長くなると共に像面湾曲も補正不足となる。一方、条件式(6)に規定されるf
2p/f
2の下限を下回ると、走査用集光光学系10の全長を短くすることができるが、その代償として、球面収差及びコマ収差が大きくなり、補正が困難となる。また、第2群G2の各面における収差の変化が大きくなる(すなわち感度が高くなる)ため、組立誤差等により収差が発生しやすくなる。
【0055】
条件式(6)が満たされることにより、走査用集光光学系10全系における像面湾曲を補正しつつ、第2群G2内の球面収差及びコマ収差が抑えられる。また、走査用集光光学系10の全長を抑えることができると共に感度も抑えられる。
【0056】
また、走査用集光光学系10は、例えば、メニスカスレンズL1の焦点距離をf
1mと定義した場合に、次の条件式(7)
5.0≦|f
1m/f
1|≦20.0・・・(7)
を更に満たす。
【0057】
条件式(7)に規定される|f
1m/f
1|の上限を上回ると、メニスカスレンズL1のパワーが弱くなることにより第1群G1の各面における収差の変化が緩やかになる(すなわち感度が低くなる)が、その代償として、走査用集光光学系10の全長が長くなる。一方、条件式(7)に規定される|f
1m/f
1|の下限を下回ると、メニスカスレンズL1のパワーが強くなることにより走査用集光光学系10の全長を短くすることができるが、その代償として、球面収差及び非点収差が大きくなり、補正が困難となる。また、第1群G1の各面における収差の変化が大きくなる(すなわち感度が高くなる)ため、組立誤差等により収差が発生しやすくなる。
【0058】
条件式(7)が満たされることにより、走査用集光光学系10全系における像面湾曲を補正しつつ、第1群G1内の球面収差及び非点収差が抑えられる。また、走査用集光光学系10の全長を抑えることができると共に感度も抑えられる。
【0059】
また、走査用集光光学系10は、例えば、メニスカスレンズL9の焦点距離をf
2mと定義した場合に、次の条件式(8)
1.5≦|f
2m/f
2|≦4.5・・・(8)
を更に満たす。
【0060】
条件式(8)に規定される|f
2m/f
2|の上限を上回ると、メニスカスレンズL9のパワーが弱くなることにより、被検面に対する励起光の入射角度が緩やかとなって、カバーガラス80と被検面との距離(
図2に示される作動距離WD)を確保することができるが、その代償として、走査用集光光学系10の全長が長くなる。一方、条件式(8)に規定される|f
2m/f
2|の下限を下回ると、メニスカスレンズL9のパワーが強くなりすぎて、作動距離を確保することが困難となったり、径方向に大きくなる。
【0061】
条件式(8)が満たされることにより、作動距離を確保しつつ走査用集光光学系10の全長が抑えられる。
【0062】
また、走査用集光光学系10は、強い負のパワーを全系内に分割して配置せず、負のパワーを局所的に強めて光束を一旦絞る配置とすることで、湾曲する物体面(XY近似面)上で点光源を移動させることによって発生する像面湾曲の補正に有利になる。一例として、強い負のパワーを持つレンズを第1群G1と第2群G2との境付近に並べて配置することにより、上記堺付近で負のパワーが局所的に強まって光束が一旦絞られて、上記像面湾曲が補正される。ここでいう強い負のパワーを持つレンズは、例えば、e線に対する屈折率をn
neと定義した場合に、次の条件式(9)
n
ne≧1.85・・・(9)
を満たすレンズである。高屈折率材を用いると、負レンズの曲率を抑えつつ強い負のパワーを得ることができるため、曲率に依存して発生する諸収差が抑えられる。
【0063】
また、走査用集光光学系10は、第1群G1のうち最も被検面側に配置される面(
図3においては正レンズL5の被検面側の面)と、第2群G2のうち最も点光源側に配置される面(
図3においては負レンズL6の点光源側の面)とが互いに向き合う一対の凹面となっており、一対の凹面のうち、被検面側に向く凹面の曲率半径をr
31と定義し、曲率半径r
31を持つ凹面と向き合う(点光源側に向く)凹面の曲率半径をr
32と定義した場合に、次の条件式(10)
―0.2<SF
3<0.0・・・(10)
但し、
SF
3:(r
31+r
32)/(r
31−r
32)
を更に満たす。このようなレンズ配置において条件式(10)が満たされることにより、凹面を向かい合わせて配置したことによるコマ収差の補正作用に加えて、ペッツバール和を小さく又は負に維持することができ、物体面(XY近似面)が湾曲する場合であっても像面湾曲を抑えることができる。
【0064】
条件式(10)に規定されるSF
3の上限を上回ると、点光源側に向く凹面の曲率半径r
32が小さくなることにより、コマ収差の補正が困難になると共に被検面側に凹面を向けたレンズの負のパワーが大きくなりすぎて、像面湾曲の補正が困難になる。一方、条件式(10)に規定されるSF
3の下限を下回ると、被検面側に向く凹面の曲率半径r
31が小さくなることにより、像面湾曲の補正には有利となるが、その代償として、コマ収差の補正が困難になる。
【0065】
また、例えば、凹面が向き合う一対のレンズの夫々を符号の異なるパワーを持つレンズとの接合レンズとすることにより、色収差の補正に有利となる。
図3に示されるように、本実施形態では、色収差を補正するため、凹面が向き合う一対の正レンズL5、負レンズL6を夫々、負レンズL4、正レンズL7と接合し、接合レンズCL1、CL2としている。
【0066】
次に、これまで説明した走査用集光光学系10の具体的数値実施例を8例説明し、各数値実施例1〜8と比較する比較例を1例説明する。各数値実施例1〜8の走査用集光光学系10及び比較例1の走査用集光光学系は、
図1に示されるように、一体型内視鏡300の先端部内に配置されている。
【実施例1】
【0067】
上述したように、本発明の実施例1の走査用集光光学系10の構成は、
図3に示される通りである。
【0068】
本実施例1の走査用集光光学系10(及びその後段に配置されたカバーガラス80)の具体的数値構成(設計値)は、表1に示される。表1に示される面番号NOは、絞りに対応する面番号1を除き、
図3中の面符号rn(nは自然数)に対応する。表1において、R(単位:mm)は光学部材の各面の曲率半径を、D(単位:mm)は光軸AX上の光学部材厚又は光学部材間隔を、N(E)はe線(波長546nm)の屈折率を、NDはd線(波長588nm)の屈折率を、νdはd線のアッベ数を、それぞれ示す。また、本実施例1の走査用集光光学系10は、NA(被検面側開口数)が0.30、像高が0.05mm、バックフォーカスBFが0.17mmである。なお、各実施例では等倍光学系を想定するため、被検面側開口数は、物体面側開口数と等しい。
【0069】
【表1】
【0070】
図4(a)〜(d)は、本実施例1の走査用集光光学系10の各種収差図である。具体的には、
図4(a)は、e線(546nm)、d線(588nm)、F線(486nm)での球面収差及び軸上色収差を示す。
図4(b)は、e線、d線、F線での倍率色収差を示す。
図4(a)、(b)中、実線はe線での収差を、点線はd線での収差を、一点鎖線はF線での収差を、それぞれ示す。
図4(c)は、非点収差を示す。
図4(c)中、実線はサジタル成分を、点線はメリディオナル成分を、それぞれ示す。
図4(d)は、歪曲収差を示す。
図4(a)〜(c)の各図の縦軸は像高を、横軸は収差量を、それぞれ示す。
図4(d)の縦軸は像高を、横軸は歪曲率を、それぞれ示す。なお、本実施例1の各表又は各図面についての説明は、以降の各数値実施例又は比較例で提示される各表又は各図面においても適用する。
【実施例2】
【0071】
図5は、本発明の実施例2の走査用集光光学系10及びその後段の光学部品(カバーガラス80)の配置を示す断面図である。
図5に示されるように、本実施例2の走査用集光光学系10は、第1群G1の構成が本実施例1と異なる。具体的には、本実施例2の第1群G1は、点光源側から順に、点光源側に凹面を向けたメニスカスレンズL1、被検面側に凸面を向けた正レンズL2、正レンズL11と負レンズL12からなる接合レンズCL3、被検面側に凹面を向けたメニスカスレンズL13を少なくとも有する。
図6(a)〜(d)は、本実施例2の走査用集光光学系10の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表2は、本実施例2の走査用集光光学系10を含む各光学部品の具体的数値構成を示す。また、本実施例2の走査用集光光学系10は、NA(被検面側開口数)が0.30、像高が0.12mm、バックフォーカスBFが0.17mmである。
【0072】
【表2】
【実施例3】
【0073】
図7は、本発明の実施例3の走査用集光光学系10及びその後段の光学部品(カバーガラス80)の配置を示す断面図である。
図7に示されるように、本実施例3の走査用集光光学系10は、本実施例1と同様のレンズ配置となっている。
図8(a)〜(d)は、本実施例3の走査用集光光学系10の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表3は、本実施例3の走査用集光光学系10を含む各光学部品の具体的数値構成を示す。また、本実施例3の走査用集光光学系10は、NA(被検面側開口数)が0.30、像高が0.13mm、バックフォーカスBFが0.14mmである。
【0074】
【表3】
【実施例4】
【0075】
図9は、本発明の実施例4の走査用集光光学系10及びその後段の光学部品(カバーガラス80)の配置を示す断面図である。
図9に示されるように、本実施例4の走査用集光光学系10は、本実施例1と同様のレンズ配置となっている。
図10(a)〜(d)は、本実施例4の走査用集光光学系10の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表4は、本実施例4の走査用集光光学系10を含む各光学部品の具体的数値構成を示す。また、本実施例4の走査用集光光学系10は、NA(被検面側開口数)が0.40、像高が0.12mm、バックフォーカスBFが0.12mmである。
【0076】
【表4】
【実施例5】
【0077】
図11は、本発明の実施例5の走査用集光光学系10及びその後段の光学部品(カバーガラス80)の配置を示す断面図である。
図11に示されるように、本実施例5の走査用集光光学系10は、本実施例1と同様のレンズ配置となっている。但し、本実施例5においては、本実施例1の正レンズL2及びL3が3つのレンズL31〜L33に分けられている。また、本実施例1の正レンズL8が2つのレンズL41、42に分けられている。
図12(a)〜(d)は、本実施例5の走査用集光光学系10の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表5は、本実施例5の走査用集光光学系10を含む各光学部品の具体的数値構成を示す。また、本実施例5の走査用集光光学系10は、NA(被検面側開口数)が0.30、像高が0.14mm、バックフォーカスBFが0.14mmである。
【0078】
【表5】
【実施例6】
【0079】
図13は、本発明の実施例6の走査用集光光学系10及びその後段の光学部品(カバーガラス80)の配置を示す断面図である。
図13に示されるように、本実施例6の走査用集光光学系10は、本実施例1と同様のレンズ配置となっている。
図14(a)〜(d)は、本実施例6の走査用集光光学系10の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表6は、本実施例6の走査用集光光学系10を含む各光学部品の具体的数値構成を示す。また、本実施例6の走査用集光光学系10は、NA(被検面側開口数)が0.30、像高が0.13mm、バックフォーカスBFが0.08mmである。
【0080】
【表6】
【実施例7】
【0081】
図15は、本発明の実施例7の走査用集光光学系10及びその後段の光学部品(カバーガラス80)の配置を示す断面図である。
図15に示されるように、本実施例7の走査用集光光学系10は、本実施例1と同様のレンズ配置となっている。
図16(a)〜(d)は、本実施例7の走査用集光光学系10の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表7は、本実施例7の走査用集光光学系10を含む各光学部品の具体的数値構成を示す。また、本実施例7の走査用集光光学系10は、NA(被検面側開口数)が0.30、像高が0.13mm、バックフォーカスBFが0.19mmである。
【0082】
【表7】
【実施例8】
【0083】
図17は、本発明の実施例8の走査用集光光学系10及びその後段の光学部品(カバーガラス80)の配置を示す断面図である。
図17に示されるように、本実施例8の走査用集光光学系10は、本実施例1と同様のレンズ配置となっている。
図18(a)〜(d)は、本実施例8の走査用集光光学系10の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表8は、本実施例8の走査用集光光学系10を含む各光学部品の具体的数値構成を示す。また、本実施例8の走査用集光光学系10は、NA(被検面側開口数)が0.30、像高が0.12mm、バックフォーカスBFが0.08mmである。
【0084】
【表8】
【0085】
(比較例1)
図19は、比較例1の走査用集光光学系及びその後段の光学部品(カバーガラス80)の配置を示す断面図である。比較例1の走査用集光光学系は、本実施例1と同様のレンズ配置となっている。
図20(a)〜(d)は、比較例1の走査用集光光学系の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表9は、比較例1の走査用集光光学系を含む各光学部品の具体的数値構成を示す。また、比較例1の走査用集光光学系は、NA(被検面側開口数)が0.30、像高が0.12mm、バックフォーカスBFが0.17mmである。
【0086】
【表9】
(比較検証)
表10は、本実施例1〜8及び比較例1の各例において、条件式(1)〜(10)のそれぞれを適用したときに算出される値の一覧表である。なお、表10中、各条件式の各値の右隣に記載された符号は、当該条件式を主として規定するレンズを示す。条件式(1)及び(7)を主として規定するレンズは、全系のうち最も点光源側に配置されるレンズ(例えばメニスカスレンズL1)である。条件式(2)及び(8)を主として規定するレンズは、全系のうち最も被検面側に配置されるレンズ(例えばメニスカスレンズL12)である。条件式(3)を主として規定するレンズは、第1群G1を構成するレンズのうち最も負のパワーの強いレンズ(例えば負レンズL4)である。条件式(4)を主として規定するレンズは、第2群G2を構成するレンズのうち最も負のパワーの強いレンズ(例えば負レンズL6)である。条件式(5)を主として規定するレンズは、第1群G1を構成するレンズのうち最も正のパワーの強いレンズ(例えば正レンズL5)である。条件式(6)を主として規定するレンズは、第2群G2を構成するレンズのうち最も正のパワーの強いレンズ(例えば正レンズL8)である。なお、条件式(9)については、当該条件式を満たす負レンズの符号が記載されている。
【0087】
【表10】
【0088】
表10に示されるように、比較例1の走査用集光光学系は、条件式(2)を満たさない。そのため、比較例1の走査用集光光学系は、
図20に示されるように、球面収差、軸上色収差及び倍率色収差が抑えられていない。すなわち、小型化及び広画角化の両立及び像面湾曲の補正を試みた結果、少なくとも一部の光学性能を犠牲にせざるを得ない。
【0089】
これに対して、本実施例1〜8の走査用集光光学系10は、表10に示されるように、条件式(1)、(2)を同時に満たすことにより、小型化及び広画角化を両立させた場合も像面湾曲及び諸収差の発生が抑えられている。また、点光源からの射出光を効率的に取り込むことができ、かつ励起光を被検面に効率的に照射し、照射された被検面からの自家蛍光を効率的に取り込むことができる。
【0090】
また、本実施例1〜8の走査用集光光学系10は、条件式(1)及び(2)以外の他の条件式も更に満たす。従って、本実施例1〜8の走査用集光光学系10では、条件式(1)及び(2)を満たすことによる効果のみならず、他の条件式を満たすことによる効果も奏される。
【0091】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。