(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両端面間で軸線方向に延在する通水孔および当該通水孔の周囲に位置する分離層を有する柱状のろ過膜と、内部空間に前記ろ過膜が収容された容器とを有し、前記ろ過膜の前記通水孔内に供給した被処理水を前記分離層でろ過してろ過水を得るろ過装置を備える膜ろ過システムであって、
前記ろ過膜を収容した容器は、ろ過膜の軸線を略鉛直方向に向けて設置され、
前記容器の前記内部空間は、前記被処理水が流れる一次側領域と、前記ろ過水が流れる二次側領域とに区分され、
加圧ガスを用いて前記二次側領域内に存在するろ過水を加圧し、加圧したろ過水を前記一次側領域へ流入させると共に前記加圧ガスを前記二次側領域内に流入させることにより、前記二次側領域内のろ過水を用いて前記ろ過膜を逆洗する逆洗機構と、
前記ろ過膜の上端面と前記内部空間の上端面との間に配設された、前記内部空間よりも小径のスペーサーと、
を更に備え、
前記二次側領域内に前記加圧ガスが流入する位置が、前記容器の上部であり、且つ、前記スペーサーに対向していることを特徴とする、膜ろ過システム。
前記逆洗機構が、前記加圧したろ過水を複数回に分けて前記一次側領域へ流入させ、且つ、少なくとも一回目の前記一次側領域への流入量を、前記スペーサーの外周面と、当該スペーサーに対向する前記容器の内周面との間に存在するろ過水量以下とすることを特徴とする、請求項1に記載の膜ろ過システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、逆洗ポンプを使用して逆洗を行う膜ろ過システムや、逆洗水槽に貯留したろ過水を空気等で加圧して逆洗を行う膜ろ過システムでは、逆洗に使用する逆洗水(ろ過水等)を貯留しておくための逆洗水槽が必要であった。そのため、上記従来の膜ろ過システムには、逆洗水槽を不要として構成を簡素化するという点において改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明者は、逆洗水槽を不要とすることを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、ろ過膜を収容している容器の容積、特に、容器内の、ろ過膜の二次側に位置する領域(以下「二次側領域」と称することがある。)の容積を調整することにより、ろ過膜の逆洗に必要な量のろ過水を二次側領域内に貯留し得るようにし、逆洗時には二次側領域内の水を空気等で加圧してろ過膜に通水することによりろ過膜の逆洗を行うことに着想した。このように、二次側領域内の水を使用して逆洗を実施すれば、逆洗水槽を不要とすることができる。
【0008】
ここで、ろ過膜としては、例えば
図6にその一部を切り欠いて示すような、被処理水が流入する蓮根状の通水孔31を有するモノリス型のセラミック膜30が使用されることがある。そして、蓮根状の通水孔31を有するモノリス型のセラミック膜30では、例えば通水孔31に流入した被処理水が各通水孔31の表面に位置する分離層(図示せず)でろ過され、ろ過水が外周面32から流出する。
【0009】
しかし、モノリス型のセラミック膜のような、両端面間に亘って延在する通水孔と、通水孔の表面に位置する分離層とを有する柱状のろ過膜を用いた膜ろ過システムにおいてろ過膜の逆洗に必要な量のろ過水を二次側領域内に確保し、二次側領域内のろ過水を空気等で加圧して逆洗を行うことについて本発明者が更に検討を進めた結果、通水孔内を一次側とする柱状のろ過膜を用いた膜ろ過システムでは、以下の問題が生じることが明らかとなった。
即ち、
図7(a)に示すように、通水孔91と分離層とを有する柱状のろ過膜92を、ろ過膜92と略等しい長さの内部空間を有する容器93の内部に収容し、通水孔91の延在方向が設置面に対して略鉛直になるように縦置きすると、二次側領域94内のろ過水を空気等で加圧して逆洗を行った際に、
図7(b)に示すように経時的に二次側領域94内のろ過水の水位が低下するため、ろ過膜92の上部を十分に洗浄することができないという問題が生じることが明らかとなった。
【0010】
そこで、本発明は、通水孔と、通水孔の表面に位置する分離層とを有する柱状のろ過膜を用いた膜ろ過システムであって、簡素な構成でろ過膜を効果的に逆洗可能な膜ろ過システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の膜ろ過システムは、両端面間で軸線方向に延在する通水孔および当該通水孔の周囲に位置する分離層を有する柱状のろ過膜と、内部空間に前記ろ過膜が収容された容器とを有し、前記ろ過膜の前記通水孔内に供給した被処理水を前記分離層でろ過してろ過水を得るろ過装置を備える膜ろ過システムであって、前記ろ過膜を収容した容器は、ろ過膜の軸線を略鉛直方向に向けて設置され、前記容器の前記内部空間は、前記被処理水が流れる一次側領域と、前記ろ過水が流れる二次側領域とに区分され、加圧ガスを用いて前記二次側領域内に存在するろ過水を加圧し、加圧したろ過水を前記一次側領域へ流入させると共に前記加圧ガスを前記二次側領域内に流入させることにより
、前記二次側領域内のろ過水を用いて前記ろ過膜を逆洗する逆洗機構と、前記ろ過膜の上端面と前記内部空間の上端面との間に配設された、前記内部空間よりも小径のスペーサーとを更に備え、前記二次側領域内に前記加圧ガスが流入する位置が、前記容器の上部であり、且つ、前記スペーサーに対向していることを特徴とする。このように、二次側領域内に存在するろ過水を加圧ガスで加圧して逆洗に使用すれば、逆洗水槽を不要として膜ろ過システムの構成を簡素化することができる。また、内部空間よりも小径のスペーサーをろ過膜の上部に設ければ、加圧ガスを用いて逆洗を行った場合であっても、二次側領域内ではスペーサーの周囲の部分から水位が低下する。従って、逆洗初期にはろ過膜の周囲にろ過水が存在する状態でろ過膜を逆洗することができるので、ろ過膜全体を効果的に逆洗することができる。
なお、本発明において、「略鉛直方向」には、本発明の効果が得られる範囲内で鉛直方向に対して傾斜した方向、例えば、鉛直方向に対する角度が15°以下の方向も含まれる。そして、本発明において「ろ過膜の軸線を略鉛直方向に向けて設置する」には、ろ過膜の軸線が鉛直方向に沿って延びるように設置することと、本発明の効果が得られる範囲内でろ過膜の軸線が鉛直方向に対して例えば15°以下の角度で傾斜して延びるように設置することとが含まれる。
【0012】
ここで、本発明の膜ろ過システムは、前記逆洗機構が、前記加圧したろ過水を複数回に分けて前記一次側領域へ流入させ、且つ、少なくとも一回目の前記一次側領域への流入量を、前記スペーサーの外周面と、当該スペーサーに対向する前記容器の内周面との間に存在するろ過水量以下とすることが好ましい。加圧したろ過水を複数回に分けて一次側領域に流入させ、且つ、少なくとも一回目の流入量をスペーサーと容器の内周面との間に存在するろ過水量以下とすれば、二次側領域内のろ過水の水位が一回目の通水時にろ過膜の上端位置まで低下することがない。従って、ろ過膜の外周面に対して均一に圧力をかけた状態でろ過水を複数回通水させ、ろ過膜全体をより効果的に逆洗することができる。
【0013】
そして、本発明の膜ろ過システムは、前記スペーサーが、前記ろ過膜側のスペーサー端部よりも外径が小さい縮径部を有することが好ましい。スペーサーに縮径部を設ければ、スペーサーの外周面と、スペーサーに対向する容器の内周面との間に存在するろ過水の量を増加させて、ろ過膜全体を更に効果的に逆洗することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通水孔と、通水孔の表面に位置する分離層とを有する柱状のろ過膜を用いた膜ろ過システムであって、簡素な構成でろ過膜を効果的に逆洗可能な膜ろ過システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
【0017】
本発明の膜ろ過システムは、特に限定されることなく、上水処理、下水処理、工業用水処理、排水処理、海水淡水化などの各種水処理において被処理水中の汚濁物質を分離除去する際に用いることができる。
【0018】
ここで、
図1に、本発明の膜ろ過システムの一例の概略構成を示す。
図1に示す膜ろ過システム100は、被処理水を貯留する被処理水槽10と、容器20の内部にろ過膜30を収容してなるろ過装置とを備えている。そして、この膜ろ過システム100では、被処理水槽10中の被処理水をろ過装置のろ過膜30でろ過してろ過水を得る。
【0019】
被処理水槽10は、被処理水ライン11を介してろ過装置の容器20の下部と接続されている。そして、被処理水槽10内に貯留された被処理水は、被処理水ライン11に設けられた被処理水ポンプ12を用いて容器20内へと送水され、ろ過膜30でろ過される。
なお、被処理水ライン11の、被処理水ポンプ12と容器20との間には、被処理水弁13が設けられている。また、被処理水ライン11の、被処理水弁13と容器20との間からは、逆洗排水ライン70が分岐して延びている。そして、逆洗排水ライン70には、逆洗排水弁71が設けられている。
【0020】
容器20は、円筒状の容器本体の下端部を2枚の仕切り板22,23で液密に閉止し、容器本体の上端部を2枚の仕切り板25,26で液密に閉止したものである。ここで、仕切り板22と仕切り板23との間には第1共通流路24が形成されている。また、仕切り板25と仕切り板26との間には第2共通流路27が形成されている。そして、第1共通流路24には被処理水ライン11が接続されており、第2共通流路27にはエアーブロー用加圧空気ライン80および水張りライン82が接続されている。また、容器本体の上部には、ろ過水ライン50が接続されている。
なお、ろ過水ライン50には、ろ過水弁51が設けられており、エアーブロー用加圧空気ライン80には、エアーブロー用加圧空気弁81が設けられており、水張りライン82には、水張り弁83が設けられている。更に、ろ過水ライン50の、容器20とろ過水弁51との間からは、逆洗用加圧空気ライン60が分岐して延びており、逆洗用加圧空気ライン60には、逆洗用加圧空気弁61が設けられている。
【0021】
そして、容器20は、容器20の軸線が鉛直方向と平行になるように設置されている。また、容器20の内部空間21(仕切り板22と仕切り板25との間の空間)には、図示例では3本のろ過膜30が収容されている。より具体的には、内部空間21には、3本のろ過膜30と、各ろ過膜30の上部に液密に取り付けられたスペーサー40とが収容されている。
なお、本発明の膜ろ過システムでは、容器としては、ろ過膜を液密に収容可能な任意の容器を用いることができる。また、本発明の膜ろ過システムでは、容器は、軸線が鉛直方向に対して傾斜するように設置してもよい。
【0022】
ここで、ろ過膜30としては、柱状で、且つ、両端面間で軸線方向に延在する通水孔と当該通水孔の周囲に位置する分離層とを有するろ過膜を用いることができる。具体的には、ろ過膜30としては、特に限定されることなく、
図6に示すようなセラミックろ過膜を用いることができる。
【0023】
図6に示すろ過膜30は、円柱状で、両端面間に亘って軸線方向に延在する複数の通水孔31と、通水孔31の表面に位置する分離層(図示せず)とを有するモノリス型のセラミックろ過膜である。そして、ろ過膜30では、通水孔31に流入した被処理水が、各通水孔31の表面に位置する分離層でろ過されて外周面32から流出する。
なお、ろ過膜30は、図示例では、ろ過膜30の軸線が鉛直方向と平行になるように設置されている。即ち、膜ろ過システム100では、ろ過膜30およびろ過膜30を収容した容器20は、ろ過膜30の軸線が鉛直方向と平行になるように設置されている。因みに、本発明の膜ろ過システムでは、ろ過膜は、軸線が鉛直方向に対して傾斜するように設置してもよい。
【0024】
スペーサー40は、ろ過膜30の上端面と、容器20の内部空間21の上端面(図示例では仕切り板25)との間に配設されている。また、スペーサー40の外径は、容器20の内径、即ち内部空間21の直径よりも小さい。なお、スペーサー40は、ろ過膜30とは異なり、非透水部材である。
【0025】
そして、スペーサー40は、
図2(a)に軸線方向に沿う断面を示すように、筒状で、ろ過膜30に接続される大径部41と、大径部41の上側(ろ過膜30とは反対側)に位置して外径および内径が上側に向かって漸減するテーパー部42と、テーパー部42の上側に位置する小径部43とを備えている。即ち、スペーサー40は、ろ過膜30側のスペーサー端部(大径部41)よりも外径が小さい縮径部(テーパー部42および小径部43)を有している。
【0026】
ここで、
図2(a)に示すように、スペーサー40とろ過膜30との接続は、特に限定されることなく、スペーサー40の大径部41の内周面に形成した段差にパッキン45を配置し、スペーサー40に対してろ過膜30を圧入することにより行うことができる。具体的には、スペーサー40の大径部41の内周面の下端側にパッキン45の厚さよりも小さい段差を形成し、当該段差に、ろ過膜30の端面の外周縁部およびろ過膜30の外周面上端部を覆う略環状のパッキン45を配置した状態でろ過膜30をスペーサー40の大径部41に圧入することにより、ろ過膜30の通水孔31内とスペーサー40内とを連通させつつ、スペーサー40とろ過膜30とを液密に接続することができる。なお、
図2(a)に示すように、パッキン45の、ろ過膜30の外周面およびスペーサー40の大径部41の内周面と接触する部分には、シール性を向上するための環状凸部を形成してもよい。
【0027】
また、
図2(a)に示すように、スペーサー40と仕切り板25との接続は、特に限定されることなく、スペーサー40の小径部43の外周面に形成した環状凹部44にOリング46を配置し、仕切り板25に形成した孔に小径部43を圧入することにより行うことができる。このように、Oリング46を配置した状態で仕切り板25の孔に小径部43を圧入することにより、スペーサー40内と第2共通流路27内とを連通させつつ、スペーサー40と仕切り板25とを液密に接続することができる。
【0028】
なお、容器20の下端側に位置する仕切り板22と、ろ過膜30との接続は、特に限定されることなく、
図2(b)に示すように、仕切り板22に形成した孔の周囲に段差を形成し、当該段差に、ろ過膜30の端面の外周縁部およびろ過膜30の外周面下端部を覆う略環状のパッキン47を配置した状態でろ過膜30を段差上に戴置することにより行うことができる。このように、パッキン47を配置した状態で仕切り板22の孔の上にろ過膜30を戴置することにより、ろ過膜30の通水孔31内と第1共通流路24内とを連通させつつ、ろ過膜30と仕切り板22とを液密に接続することができる。
【0029】
即ち、互いに液密に接続されたろ過膜30およびスペーサー40は、仕切り板22および仕切り板25に対して液密に接続されている。そのため、ろ過膜30の通水孔31に被処理水を通水してろ過を行う場合、容器20の内部空間21は、ろ過膜30およびスペーサー40により、被処理水が流れる一次側領域(通水孔31内およびスペーサー40内)と、ろ過水が流れる二次側領域(ろ過膜30の分離層よりも容器20の内周面側に位置する部分)とに区分される。
【0030】
そして、この膜ろ過システム100では、被処理水をろ過してろ過水を得る場合には、
図1に示すように、被処理水弁13およびろ過水弁51を開き、逆洗用加圧空気弁61、逆洗排水弁71、エアーブロー用加圧空気弁81および水張り弁83を閉じた状態で被処理水ポンプ12を運転する。そして、被処理水ライン11および第1共通流路24を介してろ過膜30の通水孔31内に流入した被処理水をろ過膜30の分離層(図示せず)でろ過する。なお、分離層でろ過されてろ過膜30の外周面から流出したろ過水は、容器20内の二次側領域を流れ、ろ過水ライン50から流出する。
なお、上記では被処理水をデッドエンドろ過する場合について説明したが、この膜ろ過システム100では、被処理水をクロスフローろ過してもよい。
【0031】
ここで、被処理水のろ過を継続すると、被処理水中の汚濁物質等がろ過膜に付着してろ過膜の目詰まりが生じ、ろ過性能が低下する。そこで、この膜ろ過システム100では、所定時間毎に、或いは、ろ過膜30の差圧が所定値以上まで上昇した際に、被処理水弁13、ろ過水弁51、逆洗用加圧空気ライン60、逆洗用加圧空気弁61、逆洗排水ライン70、逆洗排水弁71およびエアーブロー用加圧空気弁81を逆洗機構として使用して、ろ過膜30を逆洗する。なお、逆洗時の各弁やポンプの動作は、図示しない制御装置を用いて制御することができる。
【0032】
具体的には、最初に、
図3(a)に示すように、被処理水ポンプ12を停止し、被処理水弁13、ろ過水弁51、逆洗排水弁71、エアーブロー用加圧空気弁81および水張り弁83を閉じた状態で逆洗用加圧空気弁61を開き、加圧ガスとしての逆洗用加圧空気を用いて容器20の二次側領域内に存在するろ過水を加圧する。
次に、
図3(b),(c)に示すように、逆洗排水弁71を開き、二次側領域内の加圧したろ過水をろ過膜30の通水孔31(一次側領域)内へ流入させて、ろ過膜30を逆洗する。
なお、二次側領域内のろ過水を用いた逆洗が終了した後は、任意に、逆洗用加圧空気弁61を閉じ、エアーブロー用加圧空気弁81を開いてエアーブロー用加圧空気をろ過膜30の通水孔31内に流し、通水孔31内をエアーブロー用加圧空気で更に洗浄してもよい。因みに、エアーブロー用加圧空気を用いたろ過膜30の洗浄が終了した後は、例えば、逆洗排水弁71およびエアーブロー用加圧空気弁81を閉じ、被処理水弁13および水張り弁83を開いた状態で被処理水ポンプ12を運転させ、一次側領域内の空気を水張りライン82から抜いて一次側領域に被処理水を満たしてから被処理水のろ過を再開することができる。
【0033】
ここで、この膜ろ過システム100では、ろ過膜30の逆洗に使用するろ過水を貯留する逆洗水槽が設けられておらず、容器20の近傍に配置された逆洗用加圧空気ライン60を介して逆洗用加圧空気を供給することにより、実質的に容器20の二次側領域内に存在するろ過水のみを使用してろ過膜30を逆洗している。因みに、二次側領域内に存在するろ過水のみを使用してろ過膜を十分に逆洗する観点からは、二次側領域の容積は、ろ過膜面積1m
2当たり0.5L以上確保することが好ましく、2L以上確保することが更に好ましい。
なお、本発明において、「実質的に容器の二次側領域内に存在するろ過水のみを使用してろ過膜を逆洗する」とは、逆洗水槽を設けることなく、二次側領域内に存在する水と、逆洗用加圧空気を供給する際に不可避的に二次側領域内に流入するろ過水ライン中のろ過水とを用いてろ過膜を逆洗することを指す。
【0034】
従って、この膜ろ過システム100では、逆洗水槽を不要として膜ろ過システム100の構成を簡素化することができるが、
図3(b),(c)に示すように、この膜ろ過システム100では、逆洗を開始すると、逆洗開始直後(例えば、逆洗開始から1秒以内)に容器20の二次側領域内に空気(加圧ガス)が流入する。そして、二次側領域内の空気が流入した部分では、順次、通水孔31(一次側領域)内にろ過水が流れなくなる。
【0035】
しかしながら、この膜ろ過システム100では、ろ過膜30の上部にスペーサー40を配設しているので、逆洗の開始直後に空気が二次側領域内に流れ込んでも、二次側領域内の水位がスペーサー40の周囲の部分から低下する。そのため、膜ろ過システム100では、逆洗開始直後の二次側領域内のろ過水の水位を所定の時間だけろ過膜30の上端位置よりも鉛直方向上方に位置させ、ろ過膜30全体を均一かつ効果的に逆洗することができる。
【0036】
また、この膜ろ過システム100では、スペーサー40が、テーパー部42および小径部43よりなる縮径部を有しているので、スペーサー40の外径を軸線方向に一定とした場合と比較して、スペーサー40の半径方向外側に位置する内部空間21の体積を増加させることができる。従って、スペーサー40の外周面と、スペーサー40に対向する容器20の内周面との間に存在するろ過水の量を増加させ、二次側領域内のろ過水の水位がろ過膜30の上端位置よりも鉛直方向上方に位置する時間を長くして、ろ過膜30全体を更に効果的に逆洗することができる。
【0037】
更に、この膜ろ過システム100では、二次側領域内に逆洗用加圧空気が流入する位置(即ち、図示例ではろ過水ライン50と容器20との接続位置)が、容器20の上部であり、且つ、スペーサー40に対向している。従って、逆洗用加圧空気が流入する位置を容器20の下部にした場合と比較して、二次側領域内での空気の流れにより通水孔31内へのろ過水(逆洗水)の流れが邪魔されることがない。また、逆洗用加圧空気が流入する位置をろ過膜30の外周面に対向させた場合と比較して、ろ過膜30の外周面への空気の吹き付けにより通水孔31内へのろ過水(逆洗水)の流入が邪魔されることがない。
【0038】
なお、加圧したろ過水を一度に通水孔31(一次側領域)内へと流入させた場合、ろ過膜30内での目詰まりの度合いの分布などに起因して、通水孔31内で目詰まりの原因物質(閉塞物質)が均一に剥離しない場合がある。
そこで、膜ろ過システム100では、ろ過膜全体をより効果的に逆洗する観点から、加圧したろ過水を複数回に分けて通水孔31(一次側領域)に流入させることが好ましく、少なくとも一回目の流入量をスペーサー40と容器20の内周面との間に存在するろ過水量以下とすることが更に好ましい。ろ過水を複数回に分けて通水孔31に流入させれば、一度目のろ過水の流入では剥離しなかった閉塞物質を二度目以降のろ過水の流入で剥離させることができるからである。また、一回目の流入量をスペーサー40と容器20の内周面との間に存在するろ過水量以下とすれば、二次側領域内のろ過水の水位が一回目の通水時にろ過膜30の上端位置(
図3(b)に示す位置)まで低下することがない。従って、ろ過膜30の外周面に対して均一に圧力をかけた状態でろ過水を2回以上通水させ、ろ過膜全体をより効果的に逆洗することができるからである。
因みに、加圧したろ過水は、例えば、制御装置を用いて逆洗排水弁71の開閉を制御することにより、或いは、逆洗排水弁71の開閉をタイマー制御することにより、複数回に分けて通水孔31に流入させることができる。
【0039】
以上、一例を用いて本発明の膜ろ過システムについて説明したが、本発明の膜ろ過システムは、上記一例に限定されることはなく、本発明の膜ろ過システムには、適宜変更を加えることができる。
【0040】
具体的には、上記一例の膜ろ過システム100では、スペーサーとして、筒状で、縮径部(テーパー部42および小径部43)を有するスペーサー40を用いたが、本発明の膜ろ過システムでは、
図4に示すように、スペーサー40Aは、縮径部を有していなくてもよく、また、中実体であってもよい。なお、スペーサー40Aが中実体の場合には、ろ過膜30の上側の端面はスペーサー40Aで閉止されるので、ろ過水はデッドエンドろ過される。
【0041】
また、上記一例の膜ろ過システム100では柱状のろ過膜30を3本用いたが、本発明の膜ろ過システムでは、使用するろ過膜の本数は3本に限定されることはなく、1本であってもよいし、複数本であってもよい。なお、例えば複数本のろ過膜を容器内に配置する場合には、容器の形状および容器内でのろ過膜の配置位置は任意の形状および位置とすることができる。具体的には、複数本のろ過膜は、直方体状の容器中に、平面視一直線上に位置するように配置してもよいし、円筒状の容器中に、平面視円周線上または平面視放射線上に位置するように配置してもよい。更に、本発明の膜ろ過システムでは、二次側領域内に薬品を添加するラインを設けて薬品添加逆洗(CEB:Chemical Enhanced Backwash)を実施してもよい。
【0042】
更に、上記一例の膜ろ過システム100では一つの容器20内に複数本の柱状のろ過膜30を収容したが、本発明の膜ろ過システムでは、
図5に示すように、1本のろ過膜を収容した容器20を複数個設けてもよい。なお、逆洗水槽を設置し、逆洗用加圧空気を用いて逆洗水槽内の水を加圧して逆洗を行うと、1本のろ過膜を収容した容器を複数個設けた膜ろ過システムでは、配管内の圧力損失等に起因して全てのろ過膜を均一に洗浄することができず、容器間でろ過膜の洗浄度合いに差が生じることがある。しかし、本発明に従う膜ろ過システム100Aでは、逆洗用加圧空気を流入させる位置(逆洗用加圧空気ライン60)が容器20に近く、且つ、実質的に各容器の二次側領域内のろ過水のみを使用して逆洗を行うので、各容器20内のろ過膜を均一に逆洗することができる。