(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074285
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】端子と電線の接合方法および電線接続用の端子
(51)【国際特許分類】
H01R 43/02 20060101AFI20170123BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20170123BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20170123BHJP
H01R 4/62 20060101ALI20170123BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
H01R43/02 A
H01R4/18 A
H01R4/02 Z
H01R4/62 A
H01R43/048 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-27761(P2013-27761)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-157716(P2014-157716A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】田淵電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144082
【弁理士】
【氏名又は名称】林田 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【弁理士】
【氏名又は名称】大友 昭男
(72)【発明者】
【氏名】田村 明正
(72)【発明者】
【氏名】国見 武伯
(72)【発明者】
【氏名】許 展人
(72)【発明者】
【氏名】進藤 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】足立 崇彦
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−073930(JP,A)
【文献】
特開昭55−105981(JP,A)
【文献】
特開昭55−096575(JP,A)
【文献】
特開2010−009794(JP,A)
【文献】
特開2010−182566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/02
H01R 43/00
H01R 43/02
H01R 43/048
H01R 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚り線を複数束ねた電線とは異なる材質からなり、電触回避の表面処理がなされたコネクタ部および電線接続部を有する端子を、前記電線接続部で電線に半田付けする端子と電線の接合方法であって、
前記電線接続部に、電線を外力が加わった応力下で保持する第1のかしめ片と、電線を外力が加わらない無応力下で保持する第2のかしめ片とを設け、両かしめ片を電線の長手方向に沿って所定間隔に離間して配置し、
前記第1のかしめ片をかしめることにより、電線を第1のかしめ片による外力が加わった応力下で、端子と電線を電気的に接合するとともに、
前記第2のかしめ片を電線に外力が加わらないようにかしめて電線に近接させ、加熱電極への通電により、電線を無応力下で加熱した状態で、第2のかしめ片との間隙から電線にフラックスおよびハンダを投入して端子に電線を半田付けすることによって、端子と電線を機械的に接合し、さらに、
前記第1のかしめ片と第2のかしめ片との間に位置する電線を、加熱電極により外力が加わった応力下で加熱した状態におき、前記第2のかしめ片に投入されて両かしめ片間の電線に流入したフラックスおよびハンダによって、両かしめ片間の電線における撚り線同士を半田付けする、端子と電線の接合方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1および第2のかしめ片はそれぞれ電線が挿入される電線収納部を有し、前記第1のかしめ片の電線収納部の横断面積は電線の横断面積よりも小さく、前記第2のかしめ片の電線収納部の横断面積は電線の横断面積よりも大きく形成されている、端子と電線の接合方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記電線がアルミニウムまたはアルミニウム合金製であり、前記端子が銅または銅合金製で表面が錫めっき処理されている、端子と電線の接合方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、
前記第2のかしめ片に、かしめ片を貫通する1つ以上の貫通部位を設けている、端子と電線の接合方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項において、
前記第2のかしめ片に、底部の切片を起立させる切り起こし部材を設けている、端子と電線の接合方法。
【請求項6】
撚り線を複数束ねた電線とは異なる材質からなり、電触回避の表面処理がなされた、コネクタ部と電線が半田付けにより接続される電線接続部とを有する電線接続用の端子であって、
前記電線接続部は、電線を外力が加わった応力下で保持する第1のかしめ片と、電線を外力が加わらない無応力下で保持する第2のかしめ片とを備えて、両かしめ片が電線の長手方向に沿って所定間隔に離間して配置されており、
前記第1のかしめ片がかしめられることにより、電線を第1のかしめ片による外力が加わった応力下で、端子と電線が電気的に接合されるとともに、
前記第2のかしめ片を電線に外力が加わらないようにかしめられて電線に近接させ、加熱電極への通電により、電線を無応力下で加熱した状態で、第2のかしめ片との間隙から電線にフラックスおよびハンダを投入して端子に電線を半田付けすることによって、端子と電線が機械的に接合され、さらに、
前記第1のかしめ片と第2のかしめ片との間に位置する電線が、加熱電極により外力が加わった応力下で加熱した状態におかれ、前記第2のかしめ片に投入されて両かしめ片間の電線に流入したフラックスおよびハンダによって、両かしめ片間の電線における撚り線同士が半田付けされる、電線接続用の端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子が電線と異なる材質である場合に、当該端子と電線の接合方法および電線接続用の端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線としては、銅または銅合金製のものが多く用いられている。その一方、アルミニウムまたはアルミニウム合金は電導性もよく、銅などに比べて軽量かつ安価であるので、電線にアルミニウムなどを用いることができれば利点が多い。
【0003】
しかし、電線にアルミニウムなどを用いた場合、これと異なる材質の銅や銅合金製の端子との接合が必要になるが、このとき、電線と端子間で電触が生じて電線が腐食するおそれがある。
【0004】
このため、従来から、端子金具にアルミニウム線を圧着接続したあと圧着部全体をホットメルトモールディングする水密封止構造として、電触防止機能を向上させた圧着接続構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
一方、加熱電極(ヒュージング溶接電極や抵抗溶接電極など)で絶縁被覆された電線を挟んで加熱しながら加圧することにより、絶縁被覆を溶かして電線と端子を接合する端子構造が従来から知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−286385号公報
【特許文献2】特開2000−277325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1および2のように、アルミニウムなどの電線を加圧および加熱する圧着接続により端子に接合すると、銅などに比べて強度が低いため、電線が当該加圧により折れてしまう場合があり、機械的な接合が弱いという問題があった。その一方、端子と電線の導通を確保して電気的な接合を安定させる必要もある。
【0008】
また、特許文献1のように、電蝕防止のために水密封止構造とするのは、端子と電線接合の工程数が増加するとともに、端子構造が複雑となる。
【0009】
本発明は、端子と電線が異なる材質であっても、電蝕発生を回避しながら、電線と端子を機械的に強固に接合するとともに、電気的に安定した状態で接合することが可能な端子と電線の接合方法および電線接続用の端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一構成に係る端子と電線の接合方法は、撚り線を複数束ねた電線とは異なる材質からなり、電触回避の表面処理がなされたコネクタ部および電線接続部を有する端子を、前記電線接続部で電線に半田付けするものであって、前記電線接続部に、電線を外力が加わった応力下で保持する第1のかしめ片と、電線を外力が加わらない無応力下で保持する第2のかしめ片とを設け、両かしめ片を電線の長手方向に沿って所定間隔に離間して配置し、前記第1のかしめ片をかしめることにより、電線を第1のかしめ片による外力が加わった応力下で、端子と電線を電気的に接合するとともに、前記第2のかしめ片を電線に外力が加わらないようにかしめて電線に近接させ、加熱電極への通電により、電線を無応力下で加熱した状態で、第2のかしめ片との間隙から電線にフラックスおよびハンダを投入して端子に電線を半田付けすることによって、端子と電線を機械的に接合する。
【0011】
この構成によれば、第1のかしめ片に保持された電線を外力が加わった応力下でかしめて、撚り線同士の接合密度を増大させることにより、端子と電気的に接合するとともに、第2のかしめ片に保持された電線を加熱電極への通電により外力が加わらない無応力下で加熱した状態で端子に半田付けして、電線外周面と端子との接合強度を増大させることにより、端子と電線を機械的に接合する。また、電線と異なる材質の端子は、電線との電触を回避するための表面処理がなされている。したがって、端子と電線が異なる材質であっても、電蝕発生を回避しながら、電線と端子を機械的に強固に接合するとともに、電気的に安定した状態で接合することが可能となる。
【0012】
本発明では、さらに、前記第1のかしめ片と第2のかしめ片との間に位置する電線を、加熱電極により外力が加わった応力下で加熱した状態におき、前記第2のかしめ片に投入されて両かしめ片間の電線に流入したフラックスおよびハンダによって、両かしめ片間の電線における撚り線同士を半田付けすることが好ましい。この場合、両かしめ片間で撚り線同士を半田付けするので、電線と端子を機械的により強固に接合することができる。
【0013】
また、前記第1および第2のかしめ片はそれぞれ電線が挿入される電線収納部を有し、前記第1のかしめ片の電線収納部の横断面積は電線の横断面積よりも小さく、前記第2のかしめ片の電線収納部の横断面積は電線の横断面積よりも大きく形成されていることも好ましい。この場合、第1のかしめ片に保持された電線を容易に応力下でかしめることができ、第2のかしめ片を電線に外力が加わらないように容易に無応力下でかしめることができる。
【0014】
好ましくは、前記電線がアルミニウムまたはアルミニウム合金製であり、前記端子が銅または銅合金製で表面が錫めっき処理されている。したがって、端子と電線が異なる材質であっても、電蝕発生を回避しながら、電線と端子を機械的に強固に接合するとともに、電気的に安定した状態で接合することが可能となる。
【0015】
好ましくは、前記第2のかしめ片に、かしめ片を貫通する1つ以上の貫通部位を設けている。したがって、かしめ片の貫通部位を介して、フラックスおよびハンダの流れを良好にするとともに、加熱電極による熱が電線に伝播しやすくなる。また、前記第2のかしめ片に、底部の切片を起立させる切り起こし部材を設けている。したがって、かしめ片と撚り線の接触面が増大して、加熱電極による熱が撚り線間内部に伝播しやすくなる。
【0016】
本発明の他の構成に係る電線接続用の端子は、撚り線を複数束ねた電線とは異なる材質からなり、電触回避の表面処理がなされた、コネクタ部と電線が半田付けにより接続される電線接続部とを有するものであって、前記電線接続部は、電線を外力が加わった応力下で保持する第1のかしめ片と、電線を外力が加わらない無応力下で保持する第2のかしめ片とを備えて、両かしめ片が電線の長手方向に沿って所定間隔に離間して配置されている。前記第1のかしめ片をかしめられることにより、電線を第1のかしめ片による外力が加わった応力下で、端子と電線が電気的に接合されるとともに、前記第2のかしめ片を電線に外力が加わらないようにかしめられて電線に近接させ、加熱電極への通電により、電線を無応力下で加熱した状態で、第2のかしめ片との間隙から電線にフラックスおよびハンダを投入して端子に電線を半田付けすることによって、端子と電線が機械的に接合される。
【0017】
この構成によれば、電線は第1のかしめ片による外力が加わった応力下でかしめられて、撚り線同士の接合密度を増大させて、端子と電気的に接合されるとともに、第2のかしめ片による外力が加わらない無応力下で加熱した状態で端子に半田付けして、撚り線表面と端子との接合強度を増大させて、端子と電線が機械的に接合される。また、電線と異なる材質の端子は、電線との電触を回避するための表面処理がなされている。したがって、端子と電線が異なる材質であっても、電蝕発生を回避しながら、電線と端子を機械的に強固に接合するとともに、電気的に安定した状態で接合することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、電線と異なる材質の端子と電線とを、第1のかしめ片により電気的に接合し、第2のかしめ片により機械的に接合する。また、端子に電線との電触を回避するための表面処理をする。これにより、端子と電線が異なる材質であっても、電蝕発生を回避しながら、電線と端子を機械的に強固に接合するとともに、電気的に安定した状態で接合することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(A)は本発明の第1実施形態にかかる電線接続用の端子を示す展開図、(B)はその電線接続用の端子を示す斜視図、(C)は完成した端子と電線の接続状態を示す斜視図である。
【
図3】(A)〜(C)は第2のかしめ片の変形例を示す斜視図である。
【
図4】第2のかしめ片の他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる端子と電線の接続状態を示す斜視図である。
図2は、端子と電線の接合状態を示す斜視図である。
図1(A)のように、端子1は、電線5と異なる材質からなり、コネクタ部2および電線5を半田付けにより接続する電線接続部3を有する。
図1(B)のように、電線接続部3は第1のかしめ片6および第2のかしめ片7を有する。
図1(C)のように、電線5は、電線接続部3に保持された状態で端子1に接合される。コネクタ部2と電線接続部3は、電線5の長手方向Xと合致した方向に沿って並んでいる。
【0021】
図2のように、例えばヒュージング溶接電極のような加熱電極はタングステン製で、2つの上電極10、11と1つの下電極12とを備えている。電線5と端子1は、上電極10、11と1つの下電極12により上下から挟まれた状態で、各電極への通電により加熱される。
【0022】
図1(A)のように、電線5は例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金製の撚り線を束ねたものからなり、端子1は、これと異なる材質の例えば銅または黄銅のような銅合金の板材からなり、表面が錫めっき処理されている。これにより、端子1と電線5が異なる材質であっても、錫めっきの表面処理により電蝕発生が回避される。
【0023】
電線接続部3は、電線5を外力が加わった応力下で保持する第1のかしめ片6と、電線5を外力が加わらない無応力下で保持する第2のかしめ片7とを備えている。第1および第2のかしめ片6、7は、それぞれ両側のかしめ片を内側に曲げて形成される、
図1(B)のような電線5が挿入される電線収納部8、9を有する。第1および第2のかしめ片6、7は電線5の長手方向Xに沿って、所定間隔に離間して設けられており、第1のかしめ片6が電線5の先端側に配置されている。
【0024】
図1(B)のように、電線5の横断面積Aに対して、第1のかしめ片6電線収納部8の横断面積A1は、例えば、A1≦0.85Aの範囲に設定される。つまり、第1のかしめ片6の電線収納部8の内周面と電線5の外周面5aとの間には間隙がない状態にある。このとき、第1のかしめ片6をかしめることにより電線5が端子1の上面に強く押圧されて、電線5が第1のかしめ片6による外力が加わった応力下の状態となる。これにより、電線5における撚り線同士が隙間なく密着して、撚り線同士の接合密度が増大することにより、端子1と電線5が電気的に安定して接合される。なお、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の電線5の先端部分は予め酸化皮膜が除去された状態で、第1のかしめ片6によりかしめられる。
【0025】
電線5は、第1のかしめ片6によりかしめられることにより、ある程度機械的な強度を有するので、ヒュージング溶接に際して、第2のかしめ片7のかしめ前に、端子1が電線5から抜け落ちないように保持されて、仮り止めとして使用されることが可能となる。第2のかしめ片7がかしめられて、電線5が半田付けされた後は、第2のかしめ片7が専ら機械的強度を負担して、第1のかしめ片6は、機械的な負担がほとんど掛からず、専ら電気的接合を負担する。
【0026】
一方、
図1(B)のように、電線5の横断面積Aに対して、第2のかしめ片7の電線収納部9の横断面積A2は、例えば、1.01A≦A2≦1.05Aの範囲に設定される。つまり、第2のかしめ片7の電線収納部8の内周面と電線5の外周面との間に間隙がある状態もしくは僅かに接触する状態に設定される。このとき、第2のかしめ片7が電線5に外力が加わらないようにかしめられて電線5に近接させ、
図2のように、ヒュージング溶接電極10、12への電流量および時間が適切に制御された通電により、電線5を無応力下で加熱した状態で、第2のかしめ片7との間隙から電線5にフラックスおよびハンダが投入されて端子1に電線5が半田付けされる。
【0027】
この場合、電線5は、かしめ片により強固にかしめられて固定されるのではなく、かしめ片を撚り線の束の外形に沿ってゆるく曲げることにより、かしめ片の内周面と電線5の外周面5aとの間に間隙が形成された状態で、電線5が電線接続部3内でがたつかない程度の非かしめ状態で保持される。また、この間隙からフラックスおよびハンダを投入しやすくなる。したがって、アルミニウム製のように折れやすい電線5の折れが防止されて適切な半田付けが可能となる。
【0028】
これにより、電線5の外周面5a全体にフラックスおよびハンダがまわり、電線5の外周面5aと端子1との接合強度を増大させて、端子1と電線5が機械的に強固に接合される。このとき、第2のかしめ片7は、フラックスおよびハンダが撚り線間内部まで浸透しないことから、電気的な接合密度が低く、専ら機械的強度を負担するものであり、上記した第1のかしめ片6が専ら電気的接合を負担する。
【0029】
図2のように、第1および第2のかしめ片6、7間に位置する電線5を、ヒュージング溶接電極における上電極11と下電極12の間で挟んで加圧し、外力が加わった応力下で、電極11、12への通電により加熱した状態におき、両かしめ片6、7間の電線5に第2のかしめ片7へ投入されて流入したフラックスおよびハンダにより、両かしめ片6、7間の電線5における撚り線同士を半田付けして、端子1と電線5をより強固に機械的に接合することができる。さらに、このフラックスおよびハンダの一部は、第1のかしめ片6内の電線5にも流入し、撚り線間を半田付けして、機械的な接合強度を向上させることもできる。この場合、上電極10および11と下電極12との通電を同時にしてもよいし、時間的にずらして行ってもよい。
【0030】
こうして、本発明では、第1のかしめ片に保持された電線を外力が加わった応力下でかしめて、撚り線同士の接合密度を増大させて、端子と電気的に接合するとともに、第2のかしめ片に保持された電線をヒュージング溶接への通電により外力が加わらない無応力下で加熱した状態で端子に半田付けして、電線外周面と端子との接合強度を増大させて、端子と電線を機械的に接合する。また、電線と異なる材質の端子は、電線との電触を回避するための表面処理がなされている。したがって、端子と電線が異なる材質であっても、電蝕発生を回避しながら、電線と端子を機械的に強固に接合するとともに、電気的に安定した状態で接合することが可能となる。
【0031】
図3(A)〜(C)は第2のかしめ片7の変形例を示す斜視図である。第2のかしめ片7には、かしめ片7を貫通する1つ以上の貫通部位15が設けられている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
図3(A)は、かしめ片7の頂面に、平面視で略L字状の貫通部位15Aが設けられている。この場合、電線5に直接、ヒュージング溶接電極が接触することも可能となる。
図3(B)は、かしめ片7の頂面から側面にかけてスリット状の貫通部位15Bが設けられている。
図3(C)は、かしめ片7の頂面および側面に、複数の貫通部位15Cが設けられている。したがって、これらの変形例では、第2のかしめ片7の貫通部位15を介して、フラックスおよびハンダの流れを良好にするとともに、ヒュージング溶接電極による熱が電線5に伝播しやすくなる。
【0032】
また、
図4に示すように、第2のかしめ片7に、底面の切片を起立させる切り起こし部材16を設けている。したがって、撚り線が切り起こし部材16によってかしめ片の内周面に接近して、第2のかしめ片7と撚り線の接触面積が増大し、ヒュージング溶接電極による熱が撚り線間内部に伝播しやすくなる。
【0033】
なお、上記各実施形態では、加熱電極として、ヒュージング溶接電極で電線を加熱しているが、抵抗溶接電極で加熱してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1:電線接続用の端子
2:コネクタ部
3:電線接続部
5:電線
6:第1のかしめ部
7:第2のかしめ部
8:第1のかしめ部の電線収納部
9:第2のかしめ部の電線収納部
10:上電極(加熱電極)
11:上電極(加熱電極)
12:下電極(加熱電極)
15:貫通部位
16:切り起こし部材