特許第6074291号(P6074291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074291
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】回転子および永久磁石電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20170123BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   H02K1/27 501M
   H02K1/27 501A
   H02K1/27 501K
   H02K1/22 A
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-42414(P2013-42414)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-171341(P2014-171341A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100872
【氏名又は名称】アイチエレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行
(74)【代理人】
【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸
(72)【発明者】
【氏名】道木 慎二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光彦
(72)【発明者】
【氏名】冨田 睦雄
(72)【発明者】
【氏名】金子 清一
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−314152(JP,A)
【文献】 特開2007−159197(JP,A)
【文献】 特開2001−197694(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0052560(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0126305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子コアと、前記回転子コアに形成された磁石挿入孔と、前記磁石挿入孔に挿入された永久磁石を有し、軸方向に直角な断面で見て、前記磁石挿入孔と前記永久磁石が、径方向に沿って延びているとともに、周方向に沿って複数設けられており、前記永久磁石によってd軸とq軸が規定される回転子であって、
前記磁石挿入孔は、軸方向に直角な断面で見て、q軸を挟んで周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、q軸に沿って、q軸側に突出している円弧状に延びている第1の磁石挿入孔および第2の磁石挿入孔により磁石挿入孔群として構成されており、
前記永久磁石は、前記第1の磁石挿入孔に挿入される第1の永久磁石と前記第2の磁石挿入孔に挿入され第2の永久磁石により永久磁石群として構成されており、
前記第1の磁石挿入孔は、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、円弧状に延びている第1の側壁および第2の側壁、径方向に沿った外周側および内周側に配置され、周方向に沿って延びている外周壁と内周壁、前記第1の側壁と前記内周壁に接続されている第1の斜壁により形成され、
前記第2の磁石挿入孔は、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、円弧状に延びている第1の側壁および第2の側壁、径方向に沿った外周側および内周側に配置され、周方向に沿って延びている外周壁と内周壁、前記第2の側壁と前記内周壁に接続されている第2の斜壁により形成され、
前記第1の斜壁は、当該第1の斜壁を有する第1の磁石挿入孔が含まれる磁石挿入孔群に挿入される第1の永久磁石および第2の永久磁石と、当該磁石挿入孔群に対して周方向に沿って一方方向側に隣接する磁石挿入孔群に挿入される第1の永久磁石および第2の永久磁石とにより規定されるd軸に平行に形成され、
前記第2の斜壁は、当該第2の斜壁を有する第2の磁石挿入孔が含まれる磁石挿入孔群に挿入される第1の永久磁石および第2の永久磁石と、当該磁石挿入孔群に対して周方向に沿って他方方向側に隣接する磁石挿入孔群に挿入される第1の永久磁石および第2の永久磁石とにより規定されるd軸に平行に形成され、
周方向に隣接する磁石挿入孔群のうち一方の磁石挿入孔群を構成する前記第1の磁石挿入孔の前記第1の斜壁と他方の磁石挿入孔群を構成する前記第2の磁石挿入孔の前記第2の斜壁との間に第1のブリッジ部が形成されており、
同じ磁石挿入孔群を構成する前記第1の磁石挿入孔の前記第2の側壁と前記第2の磁石挿入孔の前記第1の側壁との間に第2のブリッジ部が形成されていることを特徴とする回転子。
【請求項2】
請求項に記載の回転子であって、
前記第1の磁石挿入孔には、前記第1の永久磁石より内周側に空隙部が設けられ、
前記第2の磁石挿入孔には、前記第2の永久磁石より内周側に空隙部が設けられていることを特徴とする回転子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転子であって、
前記第1の磁石挿入孔には、前記第1の永久磁石より外周側に空隙部が設けられ、
前記第2の磁石挿入孔には、前記第2の永久磁石より外周側に空隙部が設けられていることを特徴とする回転子。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の回転子であって、
前記回転子コアの外周面は、軸方向に直角な断面で見て、d軸と交差する第1の外周面と、q軸と交差する第2の外周面が交互に接続されて形成されており、前記第1の外周面は、d軸上に曲率中心を有する円弧形状に形成され、前記第2の外周面は、q軸上に曲率中心を有し、前記第1の外周面の曲率半径より大きい曲率半径を有する円弧形状に形成されていることを特徴とする回転子。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の回転子であって、
永久磁石としてフェライト磁石が用いられていることを特徴とする回転子。
【請求項6】
固定子と、前記固定子に対して回転可能に支持された回転子を備え、前記固定子は、固定子コアと、固定子巻線を有し、前記回転子は、回転子コアと、前記回転子コアに形成された磁石挿入孔と、前記磁石挿入孔に挿入された永久磁石を有している永久磁石電動機であって、前記回転子として請求項1〜のいずれか一項に記載の回転子が用いられていることを特徴とする永久磁石電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石が設けられている回転子および永久磁石が設けられている回転子を備える永久磁石電動機に関し、特に、遠心力に対する強度の低下を抑制しながら短絡磁束を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石電動機の回転子に設ける永久磁石として、磁束密度が高い、ネオジウム磁石等の希土類磁石が用いられている。しかしながら、希土類磁石は、高価である。このため、希土類磁石より安価であるフェライト磁石等の使用が検討されている。
ここで、フェライト磁石は、希土類磁石に比べて磁束密度が低い。このため、希土類磁石に代えてフェライト磁石を用いる場合には、磁石表面積(N極およびS極の磁極表面積)を大きくし、永久磁石から発生する磁束量を増大させる必要がある。
磁石表面積を大きくすることができる永久磁石電動機として、特許文献1に開示されている永久磁石電動機が知られている。特許文献1に開示されている永久磁石電動機は、図17に示されている回転子コア1000を有する回転子を用いている。なお、図17は、回転子コア1000を軸方向に直角な方向から見た断面図である。図17に示されている回転子コア1000は、回転中心Oから径方向に沿って直線状に延びている磁石挿入孔1011が、周方向に沿って複数形成されている。磁石挿入孔1011には、永久磁石1021が挿入されている。磁石挿入孔1011と永久磁石1021は、断面が四角形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−4722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されている永久磁石電動機は、永久磁石としてフェライト磁石を用いた場合でも、永久磁石から発生する磁束量を増大させることができる。
しかしながら、図17に破線矢印で示すように、回転子コアの内周面側の部分を介して磁束が短絡する。この磁束の短絡を抑制する方法としては、周方向に隣接する磁石挿入孔1011の、内周面側の間隔Wを小さくすることが考えられる。一方、間隔Wを小さくすると、遠心力に対する強度が低減する。このため、間隔Wを小さくするには限界があり、磁束の短絡を十分に抑制することができなかった。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、遠心力に対する強度の低下を抑制しながら磁束の短絡を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のように構成することができる。なお、以下では、「平行」という記載は、「略平行である態様」も包含するものとして用いている。
一つの発明は、回転子に関する。
本発明の回転子は、永久磁石が挿入される磁石挿入孔が形成されている回転子コアを有している。回転子コアは、典型的には、電磁鋼板を積層することによって形成される。磁石挿入孔と磁石挿入孔に挿入された永久磁石は、軸方向に直角な断面で見て、径方向に沿って延びているとともに、周方向に沿って間隔を開けて設けられている。磁石挿入孔に挿入されている永久磁石によって主磁束が流れ、d軸(主磁束の方向)とq軸(d軸に対して電気的に直角な方向)が規定される。永久磁石は、N極の主磁極とS極の主磁極が周方向に沿って交互に配置されるように着磁される。
本発明では、径方向に沿って延びている第1の磁石挿入孔と第2の磁石挿入孔により磁石挿入孔群が構成されており、磁石挿入孔群が周方向に沿って複数配置されている。第1の磁石挿入孔は、q軸を挟んで周方向に沿った一方方向側に、q軸に沿って、q軸側に突出する円弧状に延びている。第2の磁石挿入孔は、q軸を挟んで周方向に沿った他方方向側に、q軸に沿って、q軸側に突出する円弧状に延びている。典型的には、第1の磁石挿入孔および第2の磁石挿入孔は、径方向に沿った外周側と内周側に配置され、直線状に延びている外周壁と内周壁、周方向に沿った一方方向側と他方方向側に配置され、円弧状に延びている第1の側壁と第2の側壁により形成される。
また、永久磁石は、第1の磁石挿入孔に挿入される第1の永久磁石と第2の磁石挿入孔に挿入される第2の永久磁石により永久磁石群が構成されている。
第1の磁石挿入孔は、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、円弧状に延びている第1の側壁および第2の側壁、径方向に沿った外周側および内周側に配置され、周方向に沿って延びている外周壁および内周壁、第1の斜壁により形成されている。第1の斜壁は、第1の側壁と内周壁に接続されている。また、第2の磁石挿入孔は、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、円弧状に延びている第1の側壁および第2の側壁、径方向に沿った外周側および内周側に配置され、周方向に沿って延びている外周壁および内周壁、第2の斜壁により形成されている。第2の斜壁は、第2の側壁と内周壁に接続されている。さらに、第1の斜壁は、当該第1の斜壁を有する第1の磁石挿入孔が含まれる磁石挿入孔群が配置されているq軸に対して周方向に沿った一方方向側に隣接するd軸に平行に形成されている。また、第2の斜壁は、当該第2の斜壁を有する第2の磁石挿入孔が含まれる磁石挿入孔群が配置されているq軸に対して周方向に沿った他方方向側に隣接するd軸に平行に形成されている。
そして、周方向に隣接する二つの磁石挿入孔群のうちの一方の磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔の第1の斜壁と、他方の磁石挿入孔群を構成する第2の磁石挿入孔の第2の斜壁との間に第1のブリッジ部が形成されている。また、同じ磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔の第2の側壁と第2の磁石挿入孔の第1の側壁との間に第2のブリッジ部が形成されている。第1のブリッジ部と第2のブリッジ部は、磁束の短絡を抑制することができるように形成される。
本発明では、径方向に沿って延びている磁石挿入孔群を周方向に沿って複数配置しているため、磁石表面積を大きくすることができる。また、周方向に隣接する磁石挿入孔群の間に第1のブリッジ部が形成されているとともに、同じ磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔と第2の磁石挿入孔との間に第2のブリッジ部が形成されているため、遠心力に対する強度を高めることができる。特に、第1のブリッジ部が、d軸に平行な第1の斜壁と第2の斜壁により形成されている(径方向に平行に形成されている)ため、遠心力に対する強度を高めることができ、隣接する磁石挿入孔群の間の間隔をより小さくして磁束の短絡をより抑制することができる。これにより、磁石挿入孔群間の間隔を小さくして、回転子コアの、隣接する磁石挿入孔群間の部分を介して磁束が短絡するのを抑制することができる。したがって、永久磁石として、希土類磁石より磁束密度が低いフェライト磁石等を用いた場合でも、永久磁石から十分な磁束量を発生させることができる。
また、本発明では、円弧状に延びる第1の永久磁石と第2の永久磁石を用いることにより、周方向に隣接する磁石挿入孔のうち一方の磁石挿入孔に挿入される第1の永久磁石と他方の磁石挿入孔に挿入される第2の永久磁石の間の開角が、直線状の第1の永久磁石と第2の永久磁石を用いる場合に比べて小さくなる。これにより、トルクに寄与する有効起電力が増加する。
一つの発明の異なる形態では、第1の磁石挿入孔および第2の磁石挿入孔には、第1の永久磁石および第2の永久磁石より内周側に空隙が形成されている。
本形態では、第1の磁石挿入孔および第2の磁石挿入孔の内周側に形成されている空隙によって、隣接する磁石挿入孔群間の部分を介して磁束が短絡するのを一層抑制することができる。
一つの発明の他の異なる形態では、第1の磁石挿入孔および第2の磁石挿入孔には、第1の永久磁石および第2の永久磁石より外周側に空隙が形成されている。
本形態では、第1の磁石挿入孔および第2の磁石挿入孔の外周側に形成されている空隙によって、第1の磁石挿入孔および第2の磁石挿入孔と回転子コアの外周面との間の部分を介して磁束が短絡するのを抑制することができる。
一つの発明の他の異なる形態では、回転子コアの外周面は、d軸と交差する第1の外周面と、q軸と交差する第2の外周面が交互に接続されて形成されている。第1の外周面は、d軸上に曲率中心を有する円弧形状に形成され、第2の外周面は、q軸上に曲率中心を有し、第1の外周面の曲率半径より大きい曲率半径を有する円弧形状に形成されている。
本形態では、回転子コアの第2の外周面が磁石挿入孔の外周壁と略平行となるため、回転子コアの第2の外周面と磁石挿入孔の外周壁との間の間隔が略等しくなる。これにより、第1の磁石挿入孔および第2の磁石挿入孔と回転子コアの外周面との間の部分を介して磁束が短絡するのをより防止することができる。
一つの発明の他の異なる形態では、永久磁石としてフェライト磁石が用いられている。
本形態では、磁石から発生する磁束量を確保しながら、安価な永久磁石を用いることができる。
【0006】
他の発明は、固定子と、固定子に対して回転可能に支持された回転子を備える永久磁石電動機に関する。回転子は、回転子コアと、回転子コアに形成された磁石挿入孔と、磁石挿入孔に挿入された永久磁石を有している。そして、本発明では、回転子として、前述した回転子のいずれかが用いられている。
本発明は、前述した各回転子の効果を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の回転子および永久磁石電動機を用いることにより、遠心力に対する強度の低下を抑制しながら磁束の短絡を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態の永久磁石電動機の概略構成を示す図である。
図2】第1の実施の形態の永久磁石電動機で用いている回転子の断面図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】第2の実施の形態の永久磁石電動機で用いている回転子の断面図である。
図5図4の部分拡大図である。
図6】第3の実施の形態の永久磁石電動機で用いている回転子の断面図である。
図7図6の部分拡大図である。
図8】第4の実施の形態の永久磁石電動機で用いている回転子の断面図である。
図9】第5の実施の形態の永久磁石電動機で用いている回転子の断面図である。
図10図9の部分拡大図である。
図11】第6の実施の形態の永久磁石電動機で用いている回転子の断面図の部分拡大図である。
図12】第7の実施の形態の永久磁石電動機で用いている回転子の断面図の部分拡大図である。
図13図12の部分拡大図である。
図14】第8の実施の形態の永久磁石電動機で用いている回転子の断面図である。
図15】第9の実施の形態の永久磁石電動機で用いている回転子の断面図である。
図16】第9の実施の形態の永久磁石電動機で用いている永久磁石の1例を示す図である。
図17】従来の永久磁石電動機で用いている回転子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
なお、本明細書では、「軸方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、回転子の中心(回転中心)Oを通る回転中心線の方向を示す。また、「周方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、軸方向(回転中心線の方向)に直角な断面でみて、回転中心Oを中心とする円周方向を示す。また、「径方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心Oを通る方向を示す。
また、「d軸」は、軸方向に直角な断面で見て、磁石挿入孔に挿入されている永久磁石によって形成される主磁極(N極、S極)の主磁束が流れる方向を示し、「q軸」は、「d軸」に対して電気的に直角な方向を示している。
また、「平行」という記載は、「略平行」である態様を含むものとして用いている。
また、断面図において、「周方向に沿った一方方向」は右回り方向(時計まわり方向)を示し、「周方向に沿った他方方向」は、左回り(反時計まわり方向)を示している。勿論、逆方向であってもよい。
【0010】
本発明の永久磁石電動機の第1の実施の形態10が、図1図2図3に示されている。なお、図1は、第1の実施の形態の永久磁石電動機10の概略構成を示す図である。また、図2は、第1の実施の永久磁石電動機10で用いられている回転子コア100を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、図3は、図2の部分拡大図である。
第1の実施の形態の永久磁石電動機10は、固定子20と、固定子20に対して回転可能に支持されている回転子50により構成されている。
固定子20は、固定子コア30と固定子巻線40により構成されている。固定子コア30は、電磁鋼板を積層して形成されている。固定子コア30は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延びているヨークと、ヨークから径方向に沿って回転子50の回転中心方向に延びている複数のティースと、周方向に隣接するティースによって形成されるスロットを有している。固定子巻線40は、スロット内に挿入されている。
【0011】
回転子50は、永久磁石が挿入される磁石挿入孔が形成されている回転子コア100と、回転軸60により構成されている。
回転子コア10は、電磁鋼板を積層することによって形成されている。本実施の形態では、回転子コア10は、軸方向に直角な断面で見て、円形の外周面101を有する円形形状に形成されている。
磁石挿入孔に挿入された永久磁石によって主磁極(N極、S極)が形成され、主磁極から主磁束が発生する。「d軸」は、主磁束が流れる方向であり、「q軸」は、d軸に対して電気的に直角な(電気角で90度)方向である。(例えば、図2参照)
【0012】
回転子コア100には、軸方向に直角な断面で見て、径方向(q軸)に沿って延びている磁石挿入孔が、周方向に沿って複数形成されている。
本実施の形態では、図2および図3に示されているように、q軸を挟んで周方向に沿った一方方向側に配置され、q軸に沿って、q軸側に突出している円弧状に延びている第1の磁石挿入孔111と、q軸を挟んで周方向に沿った他方方向側に配置され、q軸に沿って、q軸側に突出している円弧状に延びている第2の磁石挿入孔112によって磁石挿入孔群が構成されている。そして、磁石挿入孔群が、周方向に沿って複数配置されている。
第1の磁石挿入孔111は、外周壁111a、第1の側壁111b、第2の側壁111cおよび内周壁111dによって形成されている。外周壁111aは、径方向に沿った外周側(外周面101側)に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第1の側壁111bおよび第2の側壁111cは、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、q軸に沿って、q軸側に突出している円弧状に延びている。内周壁111dは、径方向に沿った内周側(回転中心O側)に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第2の磁石挿入孔112も、第1の磁石挿入孔111と同様に、外周壁112a、第1の側壁112b、第2の側壁112cおよび内周壁112dによって形成されている。
【0013】
また、第1の磁石挿入孔111に挿入される第1の永久磁石121および第2の磁石挿入孔112に挿入される第2の永久磁石122は、q軸に沿って円弧状に延びている。
第1の永久磁石121は、外周面121a、第1の側面121b、第2の側面121cおよび内周面121dによって形成されている。外周面121aは、径方向に沿った外周側(外周面101側)に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第1の側面121bおよび第2の側面121cは、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、q軸に沿って、q軸側に突出している円弧状に延びている。内周面121dは、径方向に沿った内周側(回転中心O側)に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第2の永久磁石122も、第1の永久磁石121と同様に、外周面122a、第1の側面122b、第2の側面122cおよび内周面122dによって形成されている。
第1の永久磁石121の外周面121a、第1の側面121b、第2の側面121cおよび内周面121dは、第1の磁石挿入孔111の外周壁111a、第1の側壁111b、第2の側壁111cおよび内周壁111dに対向する位置に配置される。第2の永久磁石122の外周面122a、第1の側面122b、第2の側面122cおよび内周面122dは、第2の磁石挿入孔112の外周壁112a、第1の側壁112b、第2の側壁112cおよび内周壁112dに対向する位置に配置される。第1の永久磁石121と第2の永久磁石により永久磁石群が構成されている。
【0014】
第1の永久磁石121および第2の永久磁石122は、隣接する主磁極が異極となるように着磁(磁化)される。
本実施の形態では、図3に示されているように、同じ磁石挿入孔群を構成している第1の磁石挿入孔111および第2の磁石挿入孔112に挿入される第1の永久磁石121および第2の永久磁石122は、周方向に沿って同じ極性となるように着磁される。例えば、第1の永久磁石121の第2の側面121cと第2の永久磁石122の第2の側面122cがN極となり、第1の永久磁石121の第1の側面121bと第2の永久磁石122の第1の側面122bがS極となるように着磁される。すなわち、同じ永久磁石群を構成している第1の永久磁石と第2の永久磁石は、周方向に沿った一方方向側の側面が一方の極となり、周方向に沿った他方方向側の側面が他方の極となるように周方向に沿って着磁される。
また、周方向に隣接する永久磁石群を構成している第1の永久磁石121と第2の永久磁石122については、周方向に沿って対向する面(例えば、一方の永久磁石群を構成する第1の永久磁石121の第1の側面121bと他方の永久磁石群を構成する第2の永久磁石122の第2の側面121c)が同じ極となるように、周方向に沿って着磁される。すなわち、周方向に隣接する永久磁石群のうち一方の永久磁石群の周方向に沿った一方方向側の面と、他方の永久磁石群の周方向に沿った他方方向側の面が同じ極となるように着磁される。
永久磁石を着磁する方法としては、平行に着磁する平行着磁方法あるいはラジアル方向に着磁するラジアル着磁方法を用いることができる。
【0015】
本実施の形態では、第1の磁石挿入孔111の外周壁111aおよび第2の磁石挿入孔112の外周壁112aと回転子コア100の外周面101との間に、ブリッジ部105が形成されている。
このブリッジ部105によって、回転子コア100の、第1の磁石挿入孔111と回転子コア100の外周面101との間の部分および第2の磁石挿入孔112と回転子コア100の外周面101との間の部分を介して磁束が短絡するのを抑制することができる。
ブリッジ部105は、本発明の「第3のブリッジ部」に対応する。
【0016】
また、周方向に隣接する磁石挿入孔群の間に、ブリッジ部106が形成されている。すなわち、周方向に隣接する磁石挿入孔群のうちの一方の磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔111の第1の側壁111b(周方向に沿った他方方向側の第1の磁石挿入孔の周方向に沿った一方方向側の第1の側面)と、他方の磁石挿入孔群を構成する第2の磁石挿入孔112の第2の側壁112c(周方向に沿った一方方向側の第2の磁石挿入孔の周方向に沿った他方方向側の第2の側面)との間に、ブリッジ部106が形成されている。
このブリッジ部106によって、回転子コア100の、周方向に隣接する磁石挿入孔群の間(一方の磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔と他方の磁石挿入孔群を構成する第2の磁石挿入孔との間)の部分を介して磁束が短絡するのを抑制することができる。
好適には、ブリッジ部106の、周方向に沿った間隔の最小値(最小幅)は、0.35mm〜0.5mmの範囲内に設定される。
ブリッジ部106は、本発明の「第1のブリッジ部」に対応する。
【0017】
また、同じ磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔111と第2の磁石挿入孔112の間に、ブリッジ部107が形成されている。すなわち、周方向に沿った一方方向側の第1の磁石挿入孔111の周方向に沿った他方方向側の第2の側面111cと、周方向に沿った他方方向側の第2の磁石挿入孔112の周方向に沿った一方方向側の第1の側面112bとの間に、ブリッジ部107が形成されている。
このブリッジ部107によって、磁石挿入孔群から発生する磁束が短絡するのを抑制することができる。
本実施の形態では、ブリッジ部107を形成する第1の磁石挿入孔111の第2の側面111cと第2の磁石挿入孔112の第1の側面112b(周方向に対向する側面)が円弧状に形成されているため、図3に示されているように、ブリッジ部107の周方向に沿った幅(間隔)が、径方向に沿った位置によって異なる。例えば、内周面102側の端部位置(第1の磁石挿入孔111の内周壁111dと第2の磁石挿入孔112の内周壁121dを結んだ線の位置)では間隔がHであり、外周面101側にLだけ離れた位置では間隔がK(K>H)である。好適には、ブリッジ部107は、内周面側の端部位置から径方向に沿って1.5mm以上離れている位置まで、周方向に沿った幅(間隔)が0.35mm〜0.5mmの範囲内となるように形成される。
ブリッジ部107は、本発明の「第2のブリッジ部」に対応する。
【0018】
本実施の形態では、永久磁石(第1の永久磁石121と第2の永久磁石122により構成される永久磁石群)が径方向に沿って延びるように配置されているため、永久磁石の磁石表面積を大きくすることができ、永久磁石から発生する磁束量を増大させることができる。
また、第1の磁石挿入孔(111)と第2の磁石挿入孔(112)により磁石挿入孔群を構成し、同じ磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔(111)と第2の磁石挿入孔(112)の間に第2のブリッジ部(107)が形成されている。これにより、第2のブリッジ部(107)と、隣接する磁石挿入孔群間に形成される第1のブリッジ部(106)とによって、遠心力に対する強度を高めることができる。この場合、第1のブリッジ部(106)の間隔を小さくすることができるため、隣接する磁石挿入孔群間の部分を介して磁束が短絡するのを抑制することができる。
したがって、回転子に設ける永久磁石として、磁束密度が高いが高価である希土類磁石に代えて、磁束密度は低いが安価であるフェライト磁石を用いた場合でも、遠心力に対する強度の低下や磁束の短絡を抑制しながら、十分な磁束量を確保することができる。
また、本実施の形態では、円弧状に延びる第1の永久磁石(121)と第2の永久磁石(122)を用いることによって、周方向に隣接する磁石挿入孔のうち一方の磁石挿入孔に挿入される第1の永久磁石(121)と他方の磁石挿入孔に挿入される第2の永久磁石(122)の間の開角が、直線状の第1の永久磁石と第2の永久磁石を用いる場合に比べて小さくなる。これにより、トルクに寄与する有効起電力が増加する。
【0019】
次に、本発明の他の実施の形態を以下に説明する。なお、以下の実施の形態では、固定子の構成は第1の実施の形態と同じであるため、回転子の構成についてのみ説明する。また、以下の実施の形態の各構成要素に付されている参照数字と第1の実施の形態の各構成に付されている参照数字のうち、3桁目以外の数字が同じである参照数字が付されている構成要素は同じものを表している。
【0020】
本発明の第2の実施の形態の回転子の回転子コア200を、図4および図5を参照して説明する。図4は、第2の実施の形態の回転子の回転子コア200を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、図5は、図4の部分拡大図である。
本実施の形態の回転子コア200には、第1の実施の回転子コア100と同様に、q軸を挟んで周方向に沿った両側に、円弧状に延びている第1の磁石挿入孔211と第2の磁石挿入孔212が形成されている。
また、第1の磁石挿入孔211および第2の磁石挿入孔212には、第1の実施の形態の永久磁石121および122と同様の構成の第1の永久磁石221および第2の永久磁石222が挿入されている。
【0021】
本実施の形態の回転子コア200は、回転子コア200の外周面201の形状が第1の実施の形態の回転子コア100の外周面101の形状と異なっている。
回転子コア200の外周面201は、軸方向に直角な断面でみて、第1の曲線部分201Aと第2の曲線部分201Bが交互に配置されて構成されている。
第1の曲線部分201Aは、d軸と交差し、回転子コア200の外周方向に飛び出ている第1の曲線形状に形成されている。また、第2の曲線部分201Bは、q軸と交差し、回転子コア200の外周方向に飛び出ている第2の曲線形状に形成されている。第1の曲線形状は、d軸上の回転中心Oを曲率中心とする半径R1の円弧形状である。また、第2の曲線形状は、q軸上の、回転中心Oより第2の曲線部分201Bと反対方向に離れた点Pを曲率中心とする半径R2(>R1)の円弧形状である。
第1の曲線部分201Aが、本発明の「第1の外周面」に対応し、第2の曲線部分201Bが、本発明の「第2の外周面」に対応する。
本実施の形態では、第1の曲線部分(201A)と第2の曲線部分(201B)の切り換わり部分201aがティースと対向する箇所を通過する時に、ティースに流れる磁束量の急激な変化を抑制することができる。これにより、ティースを流れる磁束量の急激な変化によって固定子巻線に誘起される誘起電圧の波形に含まれる高調波成分が増大するのを抑制することができる。したがって、固定子巻線の誘起電圧に基づいてインバータを正確に制御することができる。
また、第1の磁石挿入孔211の外周壁211aおよび第2の磁石挿入孔212の外周壁212aと回転子コア200の外周面201の第2の曲線部分201Bとの間の間隔が略等しくなるため、外周壁211aおよび212aと第2の曲線部分201Bとの間の間隔を小さくすることができ、磁束の短絡を抑制することができる。なお、回転子コア200の外周面201が円形形状である場合には、外周壁211aおよび212aの周方向に沿った両端部と外周面201との間の間隔は、周方向に沿った中央部と外周面201との間の間隔より小さい。このため、外周壁211aおよび212aの両端部と外周面201との間の部分が遠心力に対する強度を有するように設計する必要があり、磁束の短絡を抑制するには限界がある。
【0022】
本発明の第3の実施の形態の回転子の回転子コア300を、図6および図7を参照して説明する。図6は、第3の実施の形態の回転子の回転子コア300を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、図7は、図6の部分拡大図である。
本実施の形態の回転子コア300では、磁石挿入孔および永久磁石の形状が第1の実施の形態の回転子コア100の磁石挿入孔および永久磁石と異なっている。
本実施の形態では、q軸を挟んで周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、q軸に沿って円弧状に延びている第1の磁石挿入孔311および第2の磁石挿入孔312によって磁石挿入孔群が構成されている。
第1の磁石挿入孔311は、外周壁311a、第1の側壁311b、第2の側壁311c、内周壁311dおよび第1の斜壁311gによって形成されている。外周壁311aは、径方向に沿った外周側に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第1の側壁311bおよび第2の側壁311cは、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、q軸に沿って円弧状に延びている。内周壁311dは、径方向に沿った内周側に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第1の斜壁311gは、第1の側壁311bと内周壁311dに接続され(周方向に沿った一方方向側に配置され)、q軸より周方向に沿って一方方向側のd軸に平行に直線状に延びている。
第2の磁石挿入孔312は、外周壁312a、第1の側壁312b、第2の側壁312c、内周壁312dおよび第2の斜壁312hによって形成されている。外周壁312aは、径方向に沿った外周側に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第1の側壁312bおよび第2の側壁312cは、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、q軸に沿って円弧状に延びている。内周壁312dは、径方向に沿った内周側に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第2の斜壁312hは、第2の側壁312cと内周壁312dに接続され(周方向に沿った他方方向側に配置され)、q軸より周方向に沿って他方方向側のd軸に平行に直線状に延びている。
【0023】
また、第1の磁石挿入孔311に挿入される第1の永久磁石321および第2の磁石挿入孔312に挿入される第2の永久磁石322は、q軸に沿って円弧状に延びている。
第1の永久磁石321は、外周面321a、第1の側面321b、第2の側面321c、内周面321dおよび第1の斜面321gによって形成されている。外周面321aは、径方向に沿った外周側に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第1の側面321bおよび第2の側面321cは、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、q軸に沿って円弧状に延びている。内周面321dは、径方向に沿った内周側に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第1の斜面321gは、第1の側面321bと内周面321dに接続され(周方向に沿った一方方向側に配置され)、q軸より周方向に沿って一方方向側のd軸に平行に直線状に延びている。
第2の永久磁石322は、外周面322a、第1の側面322b、第2の側面322c、内周面322dおよび第2の斜面322hによって形成されている。外周面322aは、径方向に沿った外周側に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第1の側面322bおよび第2の側面322cは、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、q軸に沿って円弧状に延びている。内周面322dは、径方向に沿った内周側に配置され、周方向に沿って直線状に延びている。第2の斜面322hは、第2の側面322cと内周面322dに接続され(周方向に沿った他方方向側に配置され)、q軸より周方向に沿って他方方向側のd軸に平行に直線状に延びている。
第1の久磁石321および第2の永久磁石322は、第1の実施の形態と同様に着磁される。
【0024】
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第1の磁石挿入孔311および第2の磁石挿入孔312と回転子コア300の外周面301との間にブリッジ部305が形成され、隣接する磁石挿入孔群の間にブリッジ部306が形成され、同じ磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔311と第2の磁石挿入孔312との間にブリッジ部307が形成されている。
本実施の形態では、ブリッジ部306は、周方向に隣接する磁石挿入孔群のうちの一方の磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔311の第1の斜壁311gと、他方の磁石挿入孔群を構成する第2の磁石挿入孔312の第2の斜壁312hとの間に形成されている。
好適には、ブリッジ部306は、周方向に沿った幅(間隔)(第1の斜壁311gと第2の斜壁312hとの間の距離)が0.35mm〜0.5mmの範囲内、径方向に沿った長さ(第1の斜壁311gおよび第2の斜壁312hの長さ)が1.5mm以上になるように形成される。
【0025】
本実施の形態では、周方向に隣接する磁石挿入孔群の間のブリッジ部(306)が、周方向に隣接する磁石挿入孔群のうち、一方の磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔(311)の第1の斜壁(311g)と、他方の磁石挿入孔群を構成する第2の磁石挿入孔(312)の第2の斜壁(312h)とによって、d軸に沿って直線状に延びるように形成されている。すなわち、第1の磁石挿入孔(311)の第1の斜壁(311g)および第2の磁石挿入孔(312)の第2の斜壁(312h)がd軸(径方向)に平行に延びている。これにより、回転中に回転子コア(300)に作用する遠心力に対する強度をより高くすることができる。
したがって、ブリッジ部306の幅をより小さくすることができ、周方向に隣接する磁石挿入孔群間の部分を介して磁束が短絡するのをより抑制することができる。
【0026】
本発明の第4の実施の形態の回転子の回転子コア400を、図8を参照して説明する。図8は、第4の実施の形態の回転子の回転子コア400を軸方向に直角な方向から見た断面図である。
本実施の形態の回転子コア400には、第3の実施の形態の第1の磁石挿入孔311および第2の磁石挿入孔312と同様の構成の第1の磁石挿入孔411および第2の磁石挿入孔412が形成されている。そして、第3の実施の形態の第1の永久磁石321および第2の永久磁石322と同様の構成の第1の永久磁石421および第2の永久磁石422が用いられている。
また、回転子コア400の外周面401は、第2の実施の形態の回転子コア200の外周面201と同様に、第1の曲線部分401Aと第2の曲線部分401Bが交互に配置されて構成されている。
【0027】
本発明の第5の実施の形態の回転子の回転子コア500を、図9および図10を参照して説明する。図9は、第5の実施の形態の回転子の回転子コア500を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、図10は、図9の部分拡大図である。
本実施の形態の回転子コア500には、第3の実施の形態の第1の磁石挿入孔311および第2の磁石挿入孔312と同様の形状の第1の磁石挿入孔511および第2の磁石挿入孔512が形成されている。
本実施の形態では、第1の磁石挿入孔511には、第1の永久磁石521より内周側に空隙511mが形成されている、また、第2の磁石挿入孔512には、第2の永久磁石522より内周側に空隙512mが形成されている。
本実施の形態では、第1の磁石挿入孔511および第2の磁石挿入孔512の内周側に空隙が形成されているため、周方向に隣接する磁石挿入孔群間の部分を介する磁束の短絡を抑制する効果を高めることができる。
【0028】
本発明の第6の実施の形態の回転子の回転子コア600を、図11を参照して説明する。図11は、第6の実施の形態の回転子の回転子コア600を軸方向に直角な方向から見た断面図である。
本実施の形態の回転子コア600には、第5の実施の形態の回転子コア500と同様に、第1の磁石挿入孔611および第2の磁石挿入孔612の内周側に空隙が形成されている。
そして、回転子コア600の外周面601は、第2の実施の形態の回転子コア200の外周面201と同様に、第1の曲線部分601Aと第2の曲線部分601Bが交互に配置されて構成されている。
【0029】
本発明の第7の実施の形態の回転子の回転子コア700を、図12および図13を参照して説明する。図12は、第7の実施の形態の回転子の回転子コア700を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、図13は、図12の部分拡大図である。
本実施の形態の回転子コア700には、第3の実施の形態の第1の磁石挿入孔311および第2の磁石挿入孔312と同様の構成の第1の磁石挿入孔711および第2の磁石挿入孔712が形成されている。
また、回転子コア700の外周面701は、第2の実施の形態の回転子コア200の外周面201と同様に、第1の曲線部分701Aと第2の曲線部分701Bが交互に配置されて構成されている。
また、第1の磁石挿入孔711(第2の磁石挿入孔712)には、第1の永久磁石721(第2の永久磁石722)より内周側に空隙711m(712m)が形成されているとともに、第1の永久磁石721(第2の永久磁石722)より外周側に空隙711n(712n)が形成されている。
第1の磁石挿入孔711(第2の磁石挿入孔712)の内周側に空隙711m(712m)が形成されていることにより、周方向に隣接するよび磁石挿入孔群間を介する磁束の短絡を抑制することができる。また、外周側に空隙711n(712n)が形成されていることにより、第1の磁石挿入孔711(第2の磁石挿入孔712)と回転子コア700の外周面701との間の部分を介する磁束の短絡を抑制することができる。
【0030】
本発明の第8の実施の形態の回転子の回転子コア800を、図14を参照して説明する。図14は、第8の実施の形態の回転子の回転子コア800を軸方向に直角な方向から見た断面図の部分拡大図である。
本実施の形態の回転子コア800では、軸方向に直角な断面で見て、永久磁石の角部がR状(円弧状)に形成されている。すなわち、第1の永久磁石821の角部にR面(円弧状の面)821eが形成され、第2の永久磁石822の角部にR面822eが形成されている。R面を形成する角部は、適宜選択可能である。
【0031】
本発明の第9の実施の形態の回転子の回転子コア900を、図15を参照して説明する。図15は、第9の実施の形態の回転子の回転子コア900を軸方向に直角な方向から見た断面図の部分拡大図である。
本実施の形態の回転子コア900では、軸方向に直角な断面で見て、永久磁石の角部がテーパー状(直線状)に形成されている。すなわち、第1の永久磁石921の角部にテーパー面(直線状の面)921fが形成され、第2の永久磁石922の角部にテーパー面922fが形成されている。テーパー面を形成する角部は、適宜選択可能である。
【0032】
永久磁石の角部にテーパー面を形成した一例を図16に示す。図16は、図15に示されている第1の永久磁石921にテーパー面を形成したものである。
第1の永久磁石921は、外周面921a、第1の側面921b、第2の側面921c、内周面921dおよびテーパー面921f1〜921f4により形成されている。テーパー面921f1は、第2の側面921cと内周面921dとの間の角部に形成され、テーパー面921f2は、内周面921dと第1の側面921bとの間の角部に形成され、テーパー面921f3は、第2の側面921cと外周面921aとの間の角部に形成され、テーパー面921f4は、外周面921aと第1の側面921bとの間の角部に形成されている。図16に示す例では、テーパー面921f2と921f4に沿った線が、テーパー面921f1に沿った線およびテーパー面921f3に沿った線と直交(90度)している。これにより、円弧状に形成された磁石体から本実施の形態で用いる第1の永久磁石921および第2の永久磁石922を効率よく製造することができる。
【0033】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
実施の形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択して組み合わせて用いることもできる。
永久磁石としては、フェライト磁石に限定されず、希土類磁石を含む種々の永久磁石を用いることができる。
磁石挿入孔や永久磁石の形状は、実施の形態で説明した形状に限定されず、種々の形状に設定することができる。
【0034】
本発明は、「回転子コアと、前記回転子コアに形成された磁石挿入孔と、前記磁石挿入孔に挿入された永久磁石を有し、軸方向に直角な断面で見て、前記磁石挿入孔と前記永久磁石が、径方向に沿って延びているとともに、周方向に沿って複数設けられており、前記永久磁石によってd軸とq軸が規定される回転子であって、前記磁石挿入孔は、軸方向に直角な断面で見て、q軸を挟んで周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、q軸に沿って、q軸側に突出している円弧状に延びている第1の磁石挿入孔および第2の磁石挿入孔により磁石挿入孔群として構成されており、前記永久磁石は、前記第1の磁石挿入孔に挿入される第1の永久磁石と前記第2の磁石挿入孔に挿入され第2の永久磁石により永久磁石群として構成されており、周方向に隣接する磁石挿入孔群のうち一方の磁石挿入孔群を構成する第1の磁石挿入孔と他方の磁石挿入孔群を構成する第2の磁石挿入孔との間に第1ブリッジ部が形成されており、同じ磁石挿入孔群を構成する前記第1の磁石挿入孔と前記第2の磁石挿入孔との間に第2のブリッジ部が形成されていることを特徴とする回転子。」(態様1)として構成することができる。
また、「態様1の回転子であって、前記第1の磁石挿入孔は、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、円弧状に延びている第1の側壁および第2の側壁、径方向に沿った外周側および内周側に配置され、周方向に沿って延びている外周壁と内周壁、前記第1の側壁と前記内周壁に接続されている第1の斜壁により形成されており、前記第2の磁石挿入孔は、周方向に沿った一方方向側および他方方向側に配置され、円弧状に延びている第1の側壁および第2の側壁、径方向に沿った外周側および内周側に配置され、周方向に沿って延びている外周壁と内周壁、前記第2の側壁と前記内周壁に接続されている第2の斜壁により形成されており、前記第1の斜壁は、当該第1の斜壁を有する第1の磁石挿入孔が含まれる磁石挿入孔群に挿入される第1の永久磁石および第2の永久磁石と、当該磁石挿入孔群に対して周方向に沿って一方方向側に隣接する磁石挿入孔群に挿入される第1の永久磁石および第2の永久磁石とにより規定されるd軸に平行に形成され、前記第2の斜壁は、当該第2の斜壁を有する第2の磁石挿入孔が含まれる磁石挿入孔群に挿入される第1の永久磁石および第2の永久磁石と、当該磁石挿入孔群に対して周方向に沿って他方方向側に隣接する磁石挿入孔群に挿入される第1の永久磁石および第2の永久磁石とにより規定されるd軸に平行に形成され、周方向に隣接する磁石挿入孔群のうち一方の磁石挿入孔群を構成する前記第1の磁石挿入孔の前記第1の斜壁と他方の磁石挿入孔群を構成する前記第2の磁石挿入孔の前記第2の斜壁とによって前記第1のブリッジ部が形成されていることを特徴とする回転子。」(態様2)として構成することができる。
また、「態様1または2の回転子であって、前記第1の磁石挿入孔には、前記第1の永久磁石より内周側に空隙部が設けられ、前記第2の磁石挿入孔には、前記第2の永久磁石より内周側に空隙部が設けられていることを特徴とする回転子。」(態様3)として構成することができる。
また、「態様1〜3のいずれかの回転子であって、前記第1の磁石挿入孔には、前記第1の永久磁石より外周側に空隙部が設けられ、前記第2の磁石挿入孔には、前記第2の永久磁石より外周側に空隙部が設けられていることを特徴とする回転子。」(態様4)として構成することができる。
また、「態様1〜4のいずれかの回転子であって、前記回転子コアの外周面は、軸方向に直角な断面で見て、d軸と交差する第1の外周面と、q軸と交差する第2の外周面が交互に接続されて形成されており、前記第1の外周面は、d軸上に曲率中心を有する円弧形状に形成され、前記第2の外周面は、q軸上に曲率中心を有し、前記第1の外周面の曲率半径より大きい曲率半径を有する円弧形状に形成されていることを特徴とする回転子。」(態様5)として構成することができる。
また、「態様1〜5のいずれかの回転子であって、永久磁石としてフェライト磁石が用いられていることを特徴とする回転子。」(態様6)として構成することができる。
また、「固定子と、前記固定子に対して回転可能に支持された回転子を備え、前記固定子は、固定子コアと、固定子巻線を有し、前記回転子は、回転子コアと、前記回転子コアに形成された磁石挿入孔と、前記磁石挿入孔に挿入された永久磁石を有している永久磁石電動機であって、前記回転子として態様1〜6のいずれかの回転子が用いられていることを特徴とする永久磁石電動機。」(態様7)として構成することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 永久磁石電動機
20 固定子
30 固定子コア
40 固定子巻線
50 回転子
60 回転軸
100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000 回転子コア
101、201、301、401、501、601、701、801、901、1001 外周面
102、202、302、402、502、602、702、802、902、1002 内周面
105、205、305、405、505,605、705、805、905、1005 ブリッジ部(外周ブリッジ部)
106、206、306、406、506、606、706、806、906 ブリッジ部(内周ブリッジ部)
107、207、307、407。507、707、807,907 ブリッジ部(極間ブリッジ部)
111、112、211、212、311、312、411、412、511、512、611、612、711、712、811、812、911、912、1011 磁石挿入孔
111a、112a、211a、212a、311a、312a、511a、512a、711a、712a、811a、812a、911a、912a 外周壁
111b、111c、112b、112c、211b、211c、212b、212c、311b、311c、312b、312c、511b、511c、512b、512c、711b、711c、712b、712c、811b、811c、812b、812c、911b、911c、912b、912c 側壁
111d、112d、211d、212d、311d、411d、412d、511d、512d、711d、712d、812d、912d 内周壁
121、122、221、222、321、322、421、422、521、522、621、622、721、722、821、822、921、922、1021 永久磁石
121a、122a、221a、222a、321a、322a、421a、422a、521a、522a、621a、622a、721a、722a、821a、822a、921a、922a 永久磁石の外周面
121b、121c、122b、122c、221b、221c、222b、222c、321b、321c、322b、322c、421b、421c、422b、422c。521b、521c、522b、522c、621b、621c、622b、622c、721b、721c、722b、722c、821b、821c、822b、822c、921b、921c、922b、922c 側面
121d、122d、221d、222d、321d、322d、421d、422d、521d、522d、621d、622d、721d、722d、821d、822d、921d、922d 永久磁石の内周面
201A、401A、401A、701A 第1の外周面
201B、401B、70B 第2の外周面
511g、512h 斜壁
511m、512m、711n、712n 空隙
521g、522h、721g、722h 斜面
821e、822e R面
921f、922f、921f1〜921f4 テーパー面
図1
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