(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合部は、前記従動板の固定位置に設けられた収納移動時係合部と、前記進退方向に位置調整可能に設けられた突出移動時係合部とを、前記被係合部を挟むように有する、
請求項1に記載のプラットホーム用転落防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプラットホーム用転落防止装置には、列車への乗降時に転落防止板がプラットホームから張り出した状態で乗降客が転落防止板を踏んだときの反力による転落防止板の移動を防止するためのブレーキ機構やロック機構が設けられている。
【0005】
そして、従来のプラットホーム用転落防止装置におけるブレーキ機構やロック機構は、特許文献1や特許文献2に記載されているように電磁力を利用して動作するので作動状態と解除状態を変化させるために電力を必要とする。そのため、転落防止板が突出完了或いは収納完了に至らない状態で電源断が発生すると、電動駆動機構のブレーキが動作して手動駆動ができなくなる。転落防止板が突出或いは収納途中のままでは列車を運行させることができないので、電源が復旧するまで列車の運行ができなくなる。こうした事態を回避するためには、バックアップ電源が必要であった。
【0006】
また、カーブした線路に沿ってプラットホーム端縁がカーブしている場合には、列車の乗降扉とプラットホームとの間隔が場所によって広狭異なる。そのため、転落防止板を突出させる際の突出量を、設置場所に応じて適応させる必要がある。対策として、設置場所に応じた大きさの転落防止板を製造したりプラットホーム用転落防止装置の構造を設計変更することが考えられるが、装置1台毎のオーダーメイドになるためコスト増につながる。また、プラットホーム用転落防止装置の設計変更に伴って、プラットホーム用転落防止装置の施工位置をずらして施工する必要が生じ得るが、施工後の設置位置に誤差が生じた場合や、施工場所の問題でずらして施工することができない場合等の二次的な問題も起こり得た。
【0007】
本発明は、こうした事情を鑑みてなされたものであり、列車への乗降時に転落防止板がプラットホームから張り出した状態で乗降客が転落防止板を踏んだ時の反力による転落防止板の移動を防止し、且つ、作動/解除の状態遷移のために電力を必要としないロック機構を備えたプラットホーム用転落防止装置を実現することを本発明の第1の課題とする。また、転落防止板のストローク量(軌道側への突出量)を可変にすることを第2の課題とする。また、電源遮断時でもバックアップ電源を設けなくとも手動駆動で転落防止板を収納できるプラットホーム用転落防止装置を実現することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、乗降時に転落防止板を突出させてプラットホームと停車している列車との隙間を塞ぐプラットホーム用転落防止装置であって、
前記転落防止板の移動を抑止するロック作動状態と当該抑止を解除するロック解除状態とに状態遷移するロックブロックと、駆動範囲の端部域において前記ロックブロックを状態遷移させる所定構造を有した原動板と、前記原動板を前記転落防止板の進退方向に駆動する駆動
機構部と、前記原動板の前記端部域において係合せず、前記端部域を超えた前記原動板の前記進退方向の移動の際に係合して従動する従動板と、を備え、
前記従動板は、前記従動の際に前記転落防止板の被係合部(例えば、
図2の第1のステップ係合部162)と係合して前記転落防止板を前記進退方向に移動させる係合部(例えば、
図2の調整ストッパ48)を、当該進退方向に位置調整可能に有し、前記係合部の位置を調整することで前記転落防止板の移動範囲を調整可能なプラットホーム用転落防止装置である。
【0009】
第2の発明は、前記係合部が、前記従動板の固定位置に設けられた収納移動時係合部(例えば、固定ストッパ46)と、前記進退方向に位置調整可能に設けられた突出移動時係合部(調整ストッパ48)とを、前記被係合部を挟むように有する、第1の発明のプラットホーム用転落防止装置である。
【0010】
第3の発明は、前記転落防止板が、被ストッパー部(例えば、
図2の第2のステップ係合部164)を固定位置に設けて有し、前記被ストッパー部が当接することで、前記転落防止板の前記移動範囲を超えた突出方向への移動を規制するストッパー部(例えば、
図2の転落防止板用軌道側ストッパ146)を、前記係合部の位置調整範囲に合わせて位置変更可能に備えた、第1又は第2の発明のプラットホーム用転落防止装置である。
【0011】
第4の発明は、前記ロックブロックが、前記従動板の移動を抑止することで前記転落防止板の移動を抑止する、第1〜第3の何れの発明のプラットホーム用転落防止装置である。
【0012】
第5の発明は、前記原動板が、傾斜したカム面を端部に有するカム部を有し、前記ロックブロックが、付勢部材(例えば、
図2のコイルスプリング59)によって前記カム面に向かって押し付けられており、前記カム面に沿って動作することで前記端部域で前記状態遷移が行われる、第1〜第4の何れかの発明のプラットホーム用転落防止装置である。
【0013】
第6の発明は、前記駆動機構部が、モータによる電動駆動の他、手回しハンドルによる手動駆動が可能に構成された、第1〜第5の何れかの発明のプラットホーム用転落防止装置である。
【発明の効果】
【0014】
第1〜第6の発明によれば、ロック作動/ロック解除の状態遷移が、機構的に行われるプラットホーム用転落防止装置を実現できる。よって、故障や電源断に備えて、特別なコントローラや予備電源を用意する必要が無い。また、従来のプラットホーム用転落防止装置のように、駆動機構とロック機構とが分散していないので各機構間の動作確認の為のセンサが不要となる。更には、ロック機構のためのソレノイドやブレーキを備えないので、機器故障の頻度が下がり、また点検の頻度も下げることができる。
更に、ロックブロックを状態遷移させるためのトルクと、従動板および転落防止板を移動させるためのトルクとが同時に必要となることがない。つまり、装置を駆動するために必要とする駆動トルクが小さくて済む。
そして、従動板に対する転落防止板の相対位置を調整可能にしたことで、転落防止板の突出量(ストローク量)を変えることができる。
【0015】
具体的には、第1の発明によれば、ロックブロックが、転落防止板の移動を抑止するロック作動状態と当該抑止を解除するロック解除状態とに状態遷移するが、そのロックブロックの状態遷移は、原動板に構成された駆動範囲の端部域の所定構造によって機能する。また、原動板は、駆動機構部によって転落防止板の進退方向に駆動され、この原動板の駆動によって転落防止板が進退方向に移動する。また、転落防止板の被係合部に係合する従動板の係合部の位置を調整可能とすることで、進退方向における従動板と転落防止板との相対位置を可変でき、転落防止板の突出量を可変できる。
【0016】
第2の発明によれば、従動板から転落防止板への進退方向に移動するための力が伝わる時期を調整可能にしている。これにより、転落防止板の突出量を変更できる。
【0017】
第3の発明によれば、転落防止板の過度な突出を規制する位置を、転落防止板の突出量の変更に応じて可変に設定できる。
【0018】
第4の発明によれば、ロックブロックそれ自体が従動板の移動を抑止するが、転落防止板の移動を直接的には抑止しない構成にできる。
【0019】
第5の発明によれば、カム機構によってロックブロックを状態遷移させる構成を実現できる。
【0020】
第6の発明によれば、原動板および転落防止板を移動させる駆動機構部を、手回しハンドルによる駆動が可能である。従って、停電時に手動で装置を動かすことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を適用したプラットホーム用転落防止装置の実施形態について説明する。
図1は、設置状態にあるプラットホーム用転落防止装置10の(1)上面図、(2)側面図である。プラットホーム用転落防止装置10は、駅のプラットホーム2の線路側端部上部に凹設された設置空間3に嵌め込み固定されている。
【0023】
プラットホーム用転落防止装置10は、設置空間3に固定されるメインフレーム14とその蓋に当たる天板12とを有する。これらで、軌道側に開口する薄型直方形の内部空間を画成し、当該内部空間に、直動機構
部18で略水平にスライド自在に支持されたステップとも呼ばれる転落防止板16と、転落防止板16の駆動機構部20とを内蔵する。
【0024】
乗降時以外では、転落防止板16は、その軌道側端が線路側に突出しないように板全体がプラットホーム用転落防止装置10の内部空間に収納されている。このとき、ロック機構部50は、ロック作動状態となり転落防止板16の移動が抑止される。この状態を「収納完了状態」と呼ぶ。
【0025】
そして、列車4への乗降時には、駆動機構部20が作動するのに伴ってロック機構部50がロック解除状態に変化し、転落防止板16が線路側へ突出されてプラットホームと列車4との隙間Dを狭くして転落を防止する。この状態を「突出完了状態」と呼ぶ。「突出完了状態」になるとロック機構部50はロック作動状態に自動的に変化する。転落防止板16の移動は抑止され、乗降中の転落防止板16はロック機構部50により突出完了状態で維持される。
図1は、この「突出完了状態」を示している。
【0026】
乗降が終了すると、駆動機構部20が反転動作してロック機構部50がロック解除状態に変化する。転落防止板16がホーム側へ移動(収納方向へ移動)し、「収納完了状態」になるとロック機構部50が再びロック作動状態に自動的に変化する。転落防止板16は収納完了状態へ戻り、その状態でロックされる。
【0027】
つまり、本実施形態のロック機構部50は、駆動機構部20が収納完了状態/突出完了状態にあるとき自動的にロック作動状態に変化し、転落防止板16側からの入力(例えば、乗降客が転落防止板16に踏み込んで乗り込もうとした時に生じる反力等)に抗してロック作動状態を維持することができる。その一方で、ロック機構部50は、駆動機構部20の作動から始まる正常な転落防止板16の動作に対しては従動し、自動的にロック解除状態に変化することができる。ロック及びロックの解除それ自体には、電力を必要としない。
【0028】
[駆動機構部の説明]
次に、駆動機構部20の構成について詳細に説明する。
図2および
図3は、本実施形態に係るプラットホーム用転落防止装置10の内部構造を示す図であって、
図2は
図1の天板12、転落防止板16を透視した上面図に相当し、
図3は軌道側から見た側面図に相当する。なお、直動機構部18は適宜公知技術を利用できるので説明および
図2以降での図示を省略している。また、
図2および
図3ともに「収納完了状態」を示している。
【0029】
駆動機構部20は、メインフレーム14の底面に転落防止板16の進退方向に沿って配列された駆動プーリ21および従動プーリ22と、これらに回し掛けられたタイミングベルト23と、駆動プーリ21を回転させるモータ24とを備える。モータ24は、外部に設置されたコントローラからの信号を受信して駆動制御される。なお、後述する電源遮断時の対応に関連して、モータ24は内蔵ブレーキ機構を備えない、或いは備えるとしても手動で回転させた際にブレーキを解除できるか、手動で回転できる程度の制動力とする。また、モータ24に電力を供給したり、モータ24を制御するコントローラに制御信号を送信するための信号ケーブル等は、適宜設けることととし、本明細書ではそれらの説明・図示は省略する。
【0030】
また、駆動機構部20は、タイミングベルト23の回転に伴い転落防止板16の進退方向にスライドする原動板30と、原動板30の移動に従動される従動板40とを備える。なお、タイミングベルト23に代えて、ベルト、チェーン、ボールねじを用いる構成も可能である。
【0031】
図4は、原動板30の構成例を示す図であって、それぞれ(1)上面図、(2)タイミングベルト側から見た側面図、(3)ホーム側(
図4(1)の右側)から見た側面図、に相当する。原動板30は、転落防止板16の進退方向に長尺の主部31と、主部31の下面に彫られたガイド溝33と、主部31からタイミングベルト23へ向けて延設された連結腕34とを備える。
【0032】
ガイド溝33は、主部31の下面にメインフレーム14の底面に固定されたガイドレール32(
図2)とスライド自在に嵌合し、原動板30を転落防止板16の進退方向に沿って案内する。連結腕34は、ガイドレール32と平行に張られているタイミングベルト23に把持・連結されている。つまり、タイミングベルト23が回ると、原動板30はガイドレール32に沿って移動し、転落防止板16の進退方向に直動する。
【0033】
図5は、従動板40の(1)上面図と、(2)B−B断面図である。
従動板40の主板41の下面には、転落防止板16の進退方向に沿って配列された一対のホーム側係合片42と軌道側係合片44とを備える。ホーム側係合片42と軌道側係合片44との設置間隔L1は、原動板30の連結腕34の幅W(転落防止板16が進退する方向の幅:
図4)よりも大きく設定されている。
【0034】
また、従動板40の主板41の上面には、転落防止板16の進退方向に沿って配列された一対の固定ストッパ46と調整ストッパ48とを備える。調整ストッパ48は、主板41に転落防止板16の進退方向に沿って設けられた長孔47にボルト49で固定されている。つまり、調整ストッパ48は長孔47の方向に固定位置可変に取り付けられている。調整ストッパ48の取り付け位置は、所望する転落防止板16のストローク量により決まる。
【0035】
そして、
図6に示すように、従動板40は、ホーム側係合片42と軌道側係合片44とで、連結腕34を転落防止板16の進退方向に沿って挟むようにして、原動板30の上に重ねて組み合わされる。連結腕34と、ホーム側係合片42および軌道側係合片44の関係に着目すれば、原動板30と従動板40は、余裕長L2(=L1−W)の遊びをもって係合されている。
【0036】
ホーム側係合片42および軌道側係合片44の突設長は、連結腕34の側面に届くように設定されているので、原動板30が転落防止板16の進退方向に沿って直動すると、連結腕34がホーム側係合片42および軌道側係合片44の何れかに当たり、移動するための力を伝える。
【0037】
このように、原動板30と従動板40とが余裕長L2を持って係合する構成であることから、移動方向の反転の際に連結腕34が一方の係合片から他方の係合片へ移動するまで、原動板30は移動するが従動板40は移動しない(係合していない)期間が生まれる。この余裕長L2、換言すると原動板30の移動開始と従動板40の移動開始との時間差が、ロック機構部50のロック解除に重要な要素となる。加えて、原動板
30の進退方向への駆動可能な範囲のうち、端部域に、原動板30と従動板40とが係合しない期間があることが重要である。
【0038】
なお、従動板40の移動経路軌道側には、メインフレーム14の底面から従動板用軌道側ストッパ142(
図2)が立設されており、従動板40の軌道側の側面がこれに当たり、それ以上の軌道方向への移動が制限される。つまり、従動板用軌道側ストッパ142により従動板40の軌道方向への移動限界位置が設定される。
また、従動板40の移動経路ホーム側には、メインフレーム14の底面から従動板用ホーム側ストッパ144(
図2)が立設されており、従動板40のホーム側の側面がこれに当たることでそれ以上の収納方向への移動が制限される。つまり、従動板用ホーム側ストッパ144により従動板40のホーム方向への移動限界位置が設定される。
【0039】
一方、従動板40の上には、転落防止板16が配置される。
そして、
図2に示すように、転落防止板16の下面には、下方に向けて第1のステップ係合部162と、第2のステップ係合部164とが突設されている。第1のステップ係合部162は、固定ストッパ46と調整ストッパ48の間に位置するようにして組み立てられる。第2のステップ係合部164は、フレーム14の底面に対して転落防止板16の進退方向(突出/収納方向)に対向するように配置される転落防止板用軌道側ストッパ146と転落防止板用ホーム側ストッパ148との間に位置するように組み立てられる。
【0040】
転落防止板用軌道側ストッパ146は、固定位置可変に取り付けられる。本実施形態では、転落防止板16の進退方向に沿ってメインフレーム14の底面に開けられた長孔147にボルト149で取り付けられる。転落防止板用軌道側ストッパ146の固定位置は、所望する転落防止板16の突出量(ストローク量)に応じて決まる。
【0041】
転落防止板16が従動板40とともに軌道側(突出方向)に移動すると、やがて第2のステップ係合部164が転落防止板用軌道側ストッパ146のホーム側の側面に当接し、それ以上の軌道方向への移動が制限される。つまり、転落防止板用軌道側ストッパ146により、転落防止板16の突出限界位置が設定される。
反対に、転落防止板16が従動板40とともにホーム側(収納方向)に移動すると、やがて第2のステップ係合部164が転落防止板
用ホーム側ストッパ148の軌道側の側面に当接し、転落防止板16はそれ以上ホーム方向へ移動できなくなる。つまり、転落防止板
用ホーム側ストッパ148により、転落防止板16の収納限界位置が設定される。
【0042】
[ロック機構部の説明]
次に、ロック機構部50の構成について説明する。
図2に示すように、ロック機構部50は、原動板30を挟んでタイミングベルト23とは反対側に設置される。ロック機構部50は、原動板30に設けられたカム部51(
図4参照)と、これに追従する2つのホーム側ロックブロック52H,軌道側ロックブロック52Kとを備える。ホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kは、カム部51に対して係合するロッド状のカムフォロワであり、転落防止板16の進退方向と直交する方向に沿って、メインフレーム14に立設された一対のブロックガイド53の間に配置される。
【0043】
カム部51(
図4参照)は、原動板30の駆動範囲の端部域においてホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kを状態遷移させる所定構造であって、原動板30の主部31の側面を利用して構成される。具体的には、原動板30の主部31のタイミングベルト23とは反対側(
図2に向かって上側)の側面がカム面として機能する。ガイドレール32から当該側面までの距離の違いがカムプロフィールを決定する。本実施形態のカムプロフィールは、
図4に示すように、主部31の中央に高リフト域51bを有し、主部31の進退方向の両端部(換言すれば原動板30の駆動範囲の両端部)に低リフト域51aを有する。そして、これらのリフト域をスロープ51cで繋いで構成される。両端部それぞれにおいて、低リフト域51aおよびスロープ51cの合計幅(転落防止板16が進退する方向の長さ)は、少なくとも余裕長L2(
図6参照)を有するように設定されている。
【0044】
図7は、ホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kの構成例を示す図である。(1)がホーム側ロックブロック52Hの上面図、(2)が同ロックブロックをホーム側から見た側面図に相当する。また、(3)が軌道側ロックブロック52Kの上面図、(4)が同ロックブロックをホーム側から見た側面図に相当する。
【0045】
ホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kは、一端部(
図7に向かって下側)の背面側(
図7(2)、(4)に向かって右側)に、ローラ56を片持ちの軸で枢支する。
【0046】
また、ホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kは、原動板30とは反対側の他端部(
図7に向かって上側)の側面に立設されたガイドピン58と、コイルスプリング59とを備える。ガイドピン58は、一端(
図7に向かって下側)がロックブロック52に固定され、他端(
図7に向かって上側)がメインフレーム14の底面から立設されたガイドピン支持部60のガイド孔61に挿通される(
図2参照)。コイルスプリン
グ59は、フレーム14に固定されたガイドピン支持部60とロックブロックとの間に設けられ、コイルの内側にガイドピン58が挿通されている。
【0047】
従って、ホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kは、ブロックガイド53とガイドピン58とにガイドされて、転落防止板16の進退方向と直交する方向にメインフレーム14の底面に沿ってスライド自在に支持されつつも、コイルスプリング59により常に原動板30方向に付勢される。ホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kの一端部の角は、ローラ56の軸周りにカム部51のスロープ51cと略同じ角度で面取りされている。
【0048】
ホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kの状態は、それぞれのホーム側の側面、軌道側の側面に設けられたホーム側リミットスイッチ66H、軌道側リミットスイッチ66K(
図2参照)により検出される。これらのスイッチは、例えば、押し込み型スイッチにより実現される。具体的には、ホーム側ロックブロック52Hのホーム側の側面および軌道側ロックブロック52Kの軌道側の側面には、
図7に示すように、それぞれ段差形状部55が設けられている。段差形状部55は、ホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kがカム部51に追従し、ロック作動状態からロック解除状態に変化する過程で、リミットスイッチの前を通過する位置に設けられている。従って、ホーム側リミットスイッチ66Hおよび軌道側リミットスイッチ66Kの押し込みの有無により、ホーム側ロックブロック52Hおよび軌道側ロックブロック52Kが、それぞれロック作動状態にあるかロック解除状態にあるかを検知することができる。
【0049】
ここで重要な寸法関係を述べると、ホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kの上下方向の厚さは、原動板30の上下方向の厚さよりも大きくなるように設定されている。メインフレーム14の底面を基準にして述べると、ホーム側ロックブロック52Hと軌道側ロックブロック52Kのローラ56を片持ちしている一端部側の上端までの高さH(
図7参照)は、原動板30の上端高さHg(
図4参照)よりも大きくなるように設定されている。
【0050】
[動作の説明]
次に、
図2,
図8〜
図14を参照しながら、プラットホーム用転落防止装置10の動作を説明する。
【0051】
先ず、転落防止板16を収納完了状態から突出させる動作について説明する。
図2は、前述のように転落防止板16がメインフレーム14にホーム側いっぱいに収納された「収納完了状態」を示している。当該状態では、原動板30の連結腕34は、従動板40のホーム側係合片42に当接した状態であり、従動板40は従動板用ホーム側ストッパ144に当接して止まっている。また、従動板40の固定ストッパ46には、転落防止板16の第1のステップ係合部162が当接している。転落防止板16のもう一つの係合部である第2のステップ係合部164は、転落防止板用ホーム側ストッパ148に当接している。
【0052】
また、ロック機構部50に着目すれば、軌道側ロックブロック52Kのローラ56が、カム部51の左端の低リフト域51aにあり、ホーム側ロックブロック52Hはカム部51の高リフト
域51bにある。つまり、軌道側ロックブロック52Kがロック状態にある。よって、軌道側リミットスイッチ66Kがオンになり、ホーム側リミットスイッチ66Hがオフになっている。
【0053】
この状態では、軌道側ロックブロック52Kが従動板40の軌道側に差し込まれた格好となる。よって、従動板40が軌道方向に移動しようとしても、従動板40の軌道側でロックブロック寄りの角が、軌道側ロックブロック52Kに当たり移動できない。結果、転落防止板16が軌道側に出ようとしても、第1のステップ係合部162が従動板40の固定ストッパ46に当って軌道側へは移動できないこととなる。つまり、転落防止板16はロックされた状態にある。
【0054】
次に、
図2から
図8へ変化する過程について述べる。
モータ24を反時計周りに駆動させると、原動板30が係合している側のタイミングベルト23は軌道側の方向(突出方向)へ移動する。これに伴って原動板30が軌道側(突出方向)へ移動を開始すると、連結腕34がホーム側係合片42から離れる。この段階では、まだ従動板40は動かない。
【0055】
ここで、ロック機構部50に目を移すと、原動板30が軌道方向へ移動することにより、軌道側ロックブロック52Kのローラ56が低リフト域51aからスロープ51cを登り高リフト域51bに達する。ローラ56がスロープ51cを登る過程は、従動板40の進行方向前方に差し込まれていたロックブロックが抜かれることに相当する。よって、ロックが解除される。この段階でも未だ従動板40は動かない。
【0056】
原動板30が軌道方向へ移動を続けると、やがて
図8の状態に至る。原動板30の連結腕34が軌道側係合片44に当たり、以降は軌道方向へ移動するための力が原動板30を介して従動板40に伝達され、従動板40は従動し原動板30と一体となって軌道方向へ移動する。この段階では、転落防止板16は動いていない。
【0057】
モータ24が更に駆動すると、原動板30および従動板40が更に軌道方向へ移動する。すると、やがて
図9に示すように、固定ストッパ46が転落防止板16の第1のステップ係合部162から離れ、代わりに調整ストッパ48が近づいてくる。第1のステップ係合部162に調整ストッパ48が当ると、従動板40が軌道方向へ移動するための力が転落防止板16へ伝達される。以降、転落防止板16は従動し、原動板30および従動板40と一体となって軌道方向へ移動することとなる。当然、これに伴って転落防止板16の第2のステップ係合部164は、転落防止板用ホーム側ストッパ148から離れ、転落防止板用軌道側ストッパ146へ近づく。
【0058】
原動板30・従動板40・転落防止板16の一体的な移動は、
図10の状態になるまで続く。この状態に至ると、従動板40の軌道側の側面がメインフレーム14に突設された従動板用軌道側ストッパ142に当たり、それ以上軌道方向へ移動できないようになる。また、転落防止板用軌道側ストッパ146の固定位置が適切に調整されていることにより、従動板40が従動板用軌道側ストッパ
144に当たるのとほぼ同じタイミングで、転落防止板16の第2のステップ係合部164が転落防止板用軌道側ストッパ146に当たる、或いは極近い位置まで接近する。
【0059】
もし、転落防止板16がそれ以上軌道方向へ移動しようとしても、第2のステップ係合部164が転落防止板用軌道側ストッパ146に当たって移動できない。つまり、転落防止板16の設計以上の突出が制限されることになる。
従って、モータ24の駆動力に基づいて転落防止板16が移動される範囲の外に、何らかの原因で転落防止板16が移動する可能性があるとしても、その範囲は、転落防止板用軌道側ストッパ146と転落防止板用ホーム側ストッパ148との間に制限され、これを超えて転落防止板16が移動することはない。
【0060】
ここでロック機構部50に着目して説明する。
図10の状態に至ると、ホーム側ロックブロック52Hのローラ56が、カム部51の高リフト域51bからスロープ51cを下り、低リフト域51aに至る。ローラ56がスロープ51cを降りる過程は、従動板40のホーム側にロックブロックが差し込まれ、ロックが作動することに相当する。ホーム側ロックブロック52Hがロック作動状態になったことは、ホーム側リミットスイッチ66Hがオンになることで検知される。
図11に示すように、モータ24の動作が停止され、転落防止板16が軌道側に突出しきった「突出完了状態」となる。
【0061】
突出完了状態において、転落防止板16がホーム側に移動しようした場合を考える。
転落防止板16がホーム側へ移動しようとすると、第1のステップ係合部162が従動板40の調整ストッパ48をホーム方向へ押す。しかし、従動板40の右端のロック機構部50寄りの角部が、ロック作動状態にあるホーム側ロックブロック52Hに当たるので移動できない。
【0062】
よって、突出完了状態では、転落防止板16は軌道側へもホーム側へも移動が規制された状態、つまりロックされた状態となっている。
【0063】
次に、
図11〜
図13を参照して、転落防止板16を突出完了状態から収納させる動作について説明する。
図11の突出完了状態から、モータ24を時計回りに駆動させると、タイミングベルト23の原動板側の部分はホーム方向(収納方向)に移動する。連結されている原動板30もホーム方向(収納方向)へ移動を開始する。連結腕34は従動板40の軌道側係合片44から離れ、ホーム側係合片42に向かって移動する。やがて
図12に示すように両者は当接し、原動板30から従動板40へホーム方向へ移動するための力が伝わる。以降、原動板30と従動板40とは一体となってホーム方向へ移動する。この段階では、転落防止板16はまだ移動しない。
【0064】
一方、ロック機構部50では、ホーム側ロックブロック52Hのローラ56が、カム部51の低リフト域51aからスロープ51cを昇り、高リフト域51bに至ってロックが解除される。ホーム側ロックブロック52Hがロック解除状態になったことは、ホーム側リミットスイッチ66Hがオフになることで検知される。
【0065】
図12の状態から、原動板30および従動板40が一体的にホーム側へ移動を開始すると、相対的に調整ストッパ48は転落防止板16の第1のステップ係合部162から離れ、代わりに固定ストッパ46が第1のステップ係合部162へ近づく。やがて
図13に示すように、固定ストッパ46が第1のステップ係合部162へ当たり、ホーム方向へ移動するための力が従動板40から転落防止板16へ伝わる。以降、原動板30と従動板40と転落防止板16とは一体的にホーム側(収納方向)へ移動する。
【0066】
原動板30・従動板40・転落防止板16が、更にホーム側へ移動すると、
図13から
図2の状態へ変化する。この過程では、転落防止板16の第2のステップ係合部164が、転落防止板用軌道側ストッパ146から離れ、転落防止板用ホーム側ストッパ148に近づき、やがて当接する。それ以降、転落防止板16はそれ以上ホーム方向へは移動できなくなる。つまり、収納完了位置に止められる。そして、これと時をほぼ同じくして、従動板40のホーム側端部が従動板用ホーム側ストッパ144に当接し、それ以上ホーム側へは移動できないようになる。
【0067】
また、ロック機構部50では、軌道側ロックブロック52Kのローラ56が高リフト域51bからスロープ51cを下って低リフト域51aに至る。つまり、軌道側ロックブロック52Kが従動板40の軌道側に差し込まれ、ロック作動状態となる。軌道側ロックブロック52Kがロック作動状態になったことは、軌道側リミットスイッチ66Kがオンになることで検知され、モータ24が停止される。
図2の収納完了状態となる。
【0068】
[転落防止板の突出量調整について]
転落防止板16の突出量(ストローク量)は、調整ストッパ48の固定位置の調整により可変され、これに伴って転落防止板用軌道側ストッパ146の固定位置も調整される。
具体的には、天板12(
図1、
図3)を外し、転落防止板16を外すと、従動板40と転落防止板用軌道側ストッパ146とが露出する。調整ストッパ48および転落防止板用軌道側ストッパ146の固定位置をよりホーム側に変えると、転落防止板16の突出量(ストローク量)は減少する。反対に、両者の固定位置をより軌道側へ変えると転落防止板16の突出量(ストローク量)は増加する。
【0069】
より具体的には、
図14は、
図2の調整状態に比べて、調整ストッパ48および転落防止板用軌道側ストッパ146の固定位置を、ホーム側に変更した場合を示している。調整状態(固定位置)が違っても、収納完了状態における転落防止板16のメインフレーム14に対する位置関係は変わらない。
【0070】
この
図14の調整状態(固定位置)で転落防止板16を軌道方向へ移動させると、
図15に示す突出完了状態に至る。同じ突出完了状態である
図11と比較すると、転落防止板16の突出量(ストローク量ST2<ST1)の違いが明らかである。
【0071】
[電源断対策について]
次に、プラットホーム用転落防止装置10の電源断対策について説明する。
図16(1)に示すように、プラットホーム用転落防止装置10には手回しハンドル90が用意されている。そして、駆動プーリ21の回転軸上端には、手回しハンドル90を差し込んで連結する連結孔92が設けられている。
【0072】
また、プラットホーム用転落防止装置10は、ロックの状態を目視確認できるように、天板12に確認窓96が設けられている(
図1)。また、ホーム側ロックブロック52H,軌道側ロックブロック52Kの上面には、それぞれロック作動状態になると、確認窓96に対して所定位置(例えば、直下)に来るように予め調整された位置に印98を有している(
図7)。すなわち、印98が所定位置に表示されるか否か、或いは印98の表示位置によってロックの状態を目視確認できる。
【0073】
電源遮断時には、天板12に設けられたハンドル用ハッチ94を開け(
図1)、
図16(2)に示すように、手回しハンドル90を駆動プーリ21の連結孔92に差し込んで連結させる。上述のように、本実施形態のロック機構部50は、ロック作動状態/ロック解除状態に変化するには、駆動機構部20が駆動して原動板30が移動さえすれば良い。更に言えば、駆動プーリ21が回りさえすれば良い。駆動プーリ21は、手回しハンドル90により回すことができる。
【0074】
よって、プラットホーム用転落防止装置10は、手動で転落防止板16を収納させることも突出させることも可能である。そして、転落防止板16が収納完了状態になれば機構的に拘束状態(ロックされた状態)となり、その状態を目視確認することもできる。プラットホーム用転落防止装置10には、予備電源を用意する必要が無い。また、各機構が分散していないので各機構間の動作確認の為のセンサが不要となる。更には、ロック機構のためのソレノイドやブレーキを備える必要がないので、機器故障の頻度が下がり、また点検の頻度も下げることができる。
【0075】
以上、本発明を適用した実施形態について説明したが、本発明の適用形態は上記に限るものでは無く、適宜構成要素の変更・追加・省略が可能である。
例えば、突出完了状態と収納完了状態それぞれのロックに対応する2つのホーム側ロックブロック52H,軌道側ロックブロック52Kを備えることとして説明したが、突出完了状態と収納完了状態とを1本のロックブロックでロック可能に構成することとしてもよい。その場合、ホーム側リミットスイッチ66H,軌道側リミットスイッチ66Kは、例えば従動板用軌道側ストッパ142や従動板用ホーム側ストッパ144近傍に設け、従動板40とそれらストッパとの当接を検知することで代用する等すればよい。