(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074294
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】車両用ハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/12 20140101AFI20170123BHJP
E05B 79/06 20140101ALI20170123BHJP
【FI】
E05B85/12 B
E05B79/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-46373(P2013-46373)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-173318(P2014-173318A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】遠山 孝生
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4198898(JP,B2)
【文献】
特開2005−307533(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/079800(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁の一対の対向部位の間に配置されるヒンジ形成壁を備え、前記周壁の一方の対向部位とヒンジ形成壁とに各々形成されるヒンジ受け部に操作ハンドルの両側面に形成されるヒンジ受け部を回転自在に軸支するとともに、前記ヒンジ形成壁と周壁の他方の対向部位にロックレバーの両側面を軸支するハンドルベースを有し、
前記操作ハンドルは、一側面側のヒンジ受け部が形成されるヒンジ翼片と対向側面とでヒンジ形成壁を跨架した位置から回転軸軸長方向にスライド操作してハンドルベース、または操作ハンドルのいずれか一方に一体に形成される軸状のヒンジ受け部を他方の孔状のヒンジ受け部に挿入させてハンドルベースに装着されるとともに、装着操作時に前記ヒンジ形成壁に突設される係止爪がヒンジ翼片に弾発的に係止して離脱方向への移動が規制される車両用ハンドル装置。
【請求項2】
前記操作ハンドルのヒンジ翼片には、操作ハンドルの回転中心を中心とし、前記係止爪が弾発係止する円弧状辺縁部が形成される請求項1記載の車両用ハンドル装置。
【請求項3】
前記ヒンジ形成壁には軸状のヒンジ受け部が形成されるとともに、ロックレバーの一側壁は、前記軸状ヒンジ受け部のヒンジ翼片からの突出部により軸支される請求項1または2記載の車両用ハンドル装置。
【請求項4】
前記軸状ヒンジ受け部は、先端に前記ロックレバーの一側壁部に挿入し、基端部によりロックレバーの操作ハンドル側への移動を規制する細径突部を備えて段付きピン形状に形成される請求項3記載の車両用ハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハンドルベースに操作ハンドルとロックレバーとを並べて回転自在に保持した車両用ハンドル装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この従来例において、インサイドハンドル(操作ハンドル)は、回転機端部の一側壁に突設される第1回転軸部をカバー部材(ハンドルベース)に開設された第1支持部に嵌合させるとともに、対向壁面の第1旋回孔をハンドルベースの第3支持部に嵌合させて装着され、操作ハンドルに隣接して装着されるロックノブにより嵌合解除方向への移動が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3138422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来例において、操作ハンドルの軸からの抜去方向、すなわち、幅方向の移動は、ロックノブにより規制されているために、ロックノブの寸法誤差等の影響により側方へのがたつきが発生しやすい上に、がたつきを防止するために、操作ハンドルとロックノブとは摺接状態となるために、操作ハンドルへの操作にロックノブが追随して不用意に動作したり、あるいは操作ハンドルの動作抵抗が大きくなる等の問題が発生する。
【0006】
また、この問題は、別途操作ハンドルの移動を規制する部品を追加することにより解決可能であるが、この場合、追加部品の装着工程を要するために、組み付け作業性が低下するという問題が発生する。
【0007】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、組立作業性が良好で、かつ、操作ハンドルのがたつき、ロックノブの連れ回り等を効果的に防ぐことのできる車両用ハンドル装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記目的は、
周壁の一対の対向部位の間に配置されるヒンジ形成壁1を備え、前記周壁の一方の対向部位とヒンジ形成壁1とに各々形成されるヒンジ受け部2に操作ハンドル3の両側面に形成されるヒンジ受け部2を回転自在に軸支するとともに、前記ヒンジ形成壁1と周壁の他方の対向部位にロックレバー4の両側面を軸支するハンドルベース5を有し、
前記操作ハンドル3は、一側面側のヒンジ受け部2が形成されるヒンジ翼片6と対向側面とでヒンジ形成壁1を跨架した位置から回転軸軸長方向にスライド操作してハンドルベース5、または操作ハンドル3のいずれか一方に一体に形成される軸状のヒンジ受け部2を他方の孔状のヒンジ受け部2に挿入させてハンドルベース5に装着されるとともに、装着操作時に前記ヒンジ形成壁1に突設される係止爪7がヒンジ翼片6に弾発的に係止して離脱方向への移動が規制される車両用ハンドル装置を提供することにより達成される。
【0009】
本発明において、ハンドル装置は、ハンドルベース5に操作ハンドル3とロックレバー4とを各々回転自在に軸支して形成され、操作ハンドル3の両側壁は、各側壁、または対応するハンドルベース5のいずれか一方に一体形成される軸状ヒンジ受け部(ヒンジ軸部2A)を他方の孔状ヒンジ受け部(ヒンジ孔2B)に挿入してハンドルベース5に連結される。
【0010】
操作ハンドル3の側壁等にヒンジ軸部2Aを一体に形成し、操作ハンドル3を軸長方向にスライドさせて装着することにより、別途シャフト等の軸部品が不要となるために、部品点数を減少させることが可能になる上に、組立作業性も向上する。
【0011】
また、操作ハンドル3の移動規制が係止爪7により行われてロックレバー4が関与しないことから、ロックレバー4の寸法誤差等によるがたつき、あるいは操作ハンドル3とロックレバー4の圧接によるロックレバー4の連れ回りを確実に防止することができる。
【0012】
さらに、係止爪7は操作ハンドル3のハンドルベース5への装着操作に伴って弾発係止して操作ハンドル3の軸長方向への移動を規制するために、部品点数が増加することもなく、装着工数が増加することもない。
【0013】
加えて、操作ハンドル3は、ロックレバー4を装着することなくハンドルベース5に保持されるために、サブアセンブリ状態での保管が可能な上に、操作ハンドル3へのリターンスプリングの装着等の作業性も向上する。
【0014】
また、車両用ハンドル装置は、
前記操作ハンドル3のヒンジ翼片6には、操作ハンドル3の回転中心を中心とし、前記係止爪7が弾発係止する円弧状辺縁部8が形成されるように構成することができる。
【0015】
係止爪7の係止箇所は操作ハンドル3の適宜箇所に設定することが可能であるが、本発明のように係止爪7を、ヒンジ形成壁1に対応して設けられ、該ヒンジ形成壁1に軸支されるヒンジ翼片6の円弧状辺縁部8に係止させると、操作ハンドル3の回転に伴って係止爪7が円弧状辺縁部8に沿って相対的に移動することができるために、より簡単な構造で操作ハンドル3の回転に伴う係止爪7との干渉を容易に回避することが可能になる。
【0016】
また、係止爪7の係止箇所はロックレバー4を取り外した状態で外部に露出するために、操作ハンドル3の取り外しも容易に行うことができる。
【0017】
さらに、ロックレバー4は、適宜手段によりハンドルベース5に軸支可能であるが、
前記ヒンジ形成壁1には軸状のヒンジ受け部2Aが形成されるとともに、ロックレバー4の一側壁は、前記軸状ヒンジ受け部2Aのヒンジ翼片6からの突出部により軸支されるように構成すると、構造が簡単になる。
【0018】
この場合、
前記軸状ヒンジ受け部2Aは、先端に前記ロックレバー4の一側壁部に挿入し、基端部によりロックレバー4の操作ハンドル3側への移動を規制する細径突部9を備えて段付きピン形状に形成される車両用ハンドル装置を構成すると、操作ハンドル3側の係止爪7と相俟ってロックレバー4と操作ハンドル3との接触を確実に防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、操作ハンドルは回転軸軸長方向のスライド操作によりハンドルベースに装着され、かつ、スライド方向の移動を装着操作時に弾発係止する係止爪によりスライド方向の移動を規制し、ロックノブとは独立に所定位置に保持されるために、組立作業性を劣化させることなくロックノブとの接触を防止することが可能になり、操作ハンドルのがたつき、ロックノブの連れ回り等を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の1B-1B線断面図である。
【
図2】ハンドルベースを示す図で、(a)は要部を示す正面図、(b)は操作ハンドルの装着状態を示す断面図である。
【
図3】操作ハンドルの装着状態を示す図で、(a)は
図2(a)の3A-3A方向から見た要部拡大図、(b)は装着状態を示す図である。
【
図4】ハンドル装置の断面図で、(a)は
図3(b)の4A-4A線断面図、(b)は
図1(a)の4B-4B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1以下に車両のインサイドハンドル装置として構成された本発明の実施の形態を示す。インサイドハンドル装置は、ほぼ全周にわたって周壁が立ち上げられた薄形容器状のハンドルベース5と、ハンドルベース5の一角に回転自在に軸支されるロックレバー4、および操作ハンドル3とを有する。
【0022】
ロックレバー4と操作ハンドル3とは並べて配置されており、ロックレバー4を
図1(b)に示す初期回転位置から表面側に引き出す矢印A方向に回転操作することにより図外のドアロック装置をロック解除することができる。また、操作ハンドル3はトーションスプリング10により
図1(b)に示す初期回転位置側に付勢されており、初期回転位置から矢印B方向に回転させることによりドアロック装置のラッチを解除することができる。
【0023】
図2に示すように、ロックレバー4、および操作ハンドル3を軸支するために、ハンドルベース5の前端部(
図1の左端側)にはヒンジ部格納開口11が開設され、その中間部に架設されるヒンジ形成壁1によりレバー用開口11Aとハンドル用開口11Bが区画される。ヒンジ形成壁11のレバー用開口11A側の壁面には、先端に細径突部9を備えた軸上のヒンジ受け部(ヒンジ軸部2A)が一体に突設される。
【0024】
上記操作ハンドル3は、一端に指掛部3aを備え、他端に一対のヒンジ受け部2が形成される。一対のうち一方のヒンジ受け部2は、上記ヒンジ形成壁11のヒンジ軸部2Aが挿通可能な孔状ヒンジ受け部(ヒンジ孔2B)としてヒンジ翼片6に形成され、他方のヒンジ受け部2はヒンジ軸部2Aとして形成される。
【0025】
上記ヒンジ翼片6は、半円筒形状の支柱部6aの自由端部から側方に向けて突設され、このヒンジ翼片6の内壁と、対向する内壁面との間隔(D)は、ヒンジ形成壁1のヒンジ軸部2Aの先端から反対壁面までの間隔(d)に比して大きく設定されており、操作ハンドル3は、
図2(b)に示すように、ヒンジ翼片6と対向内壁面とでヒンジ形成壁1を挟み付けることができる。
【0026】
操作ハンドル3の装着は、このヒンジ翼片6と対向壁面によりヒンジ形成壁1を跨架した状態から側方(
図2(b)における矢印C方向)にスライドさせて行うことができ、スライド操作によって、ヒンジ翼片6のヒンジ孔2Bがヒンジ形成壁1のヒンジ軸部2Aに、ヒンジ翼片6に対向する壁面のヒンジ軸部2Aがハンドルベース5のヒンジ孔2Bに嵌合する。
【0027】
さらに、上記ヒンジ形成壁1には支柱部7aの先端から爪部7bを突設した係止爪7が形成される。係止爪7の支柱部7aは、ヒンジ形成壁1上で、ヒンジ形成壁1上のヒンジ軸部2Aの中心から適宜間隔離れた位置に配置され、爪部7bは上記ヒンジ軸部2A側に向けて突設される。
【0028】
一方、操作ハンドル3のヒンジ翼片6には、上記ヒンジ軸部2Aの中心を中心とする円弧状辺縁部8が形成される。円弧状辺縁部8の径は、上記係止爪7の支柱部7aとヒンジ軸部2Aの中心との間隔よりやや小寸に形成されており、周縁の操作ハンドル3の操作角に比してやや大きな範囲に表面に係止凹部8aが設けられる。
【0029】
したがってこの実施の形態において、操作ハンドル3をハンドルベース5に装着するために操作ハンドル3をヒンジ軸部2Aの軸長方向にスライド操作すると、ヒンジ翼片6の円弧状辺縁部8が係止爪7の爪部7bに当接する。爪部7bのヒンジ翼片6との当接部位には斜面が形成されており、操作ハンドル3をさらに押し込むと、係止爪7はこの斜面から外方に向かう押圧力を付与され、一旦弾性変形してヒンジ翼片6をかわした後、
図4(a)に示すように、弾性的に原形復帰し、爪部7bが係止凹部8aに係止する。係止凹部8aは、爪部7bが係止した状態で爪部7bの上面がヒンジ翼片6の上面から飛び出さない深さに形成される。
【0030】
爪部7bがヒンジ翼片6に係止した状態で操作ハンドル3は爪部7bによりヒンジ軸部2Aからの抜去方向への移動が規制されて装着状態が維持され、さらに、円弧状辺縁部8は係止爪7の支柱部に沿って移動するために操作ハンドル3の回転操作の支障になることもない。
【0031】
ハンドル装置の組立は、以上のようにして装着した操作ハンドル3にトーションスプリング10を装着した後、操作ハンドル3に隣接してロックレバー4を装着して行われる。
図4に示すように、ロックレバー4には、上記ヒンジ形成壁1上野ヒンジ軸部2Aの先端に形成された細径突部9が挿通可能なヒンジ孔2Bが貫通状に開設されており、ロックレバー4は、上記細径突部9、およびヒンジ形成壁1に対向するハンドルベース5の外壁部から突設されるヒンジ軸部2Aをヒンジ孔2Bに挿通させて装着される。
【0032】
図4(a)に示すように、ロックレバー4のヒンジ孔2Bに挿入されるヒンジ軸部2Aは、ハンドルベース5の外壁に形成される片持梁状の脚片12に形成されており、ロックレバー4は、この脚片12を弾性変形させながら所定位置に装着させることができる。
【0033】
ヒンジ軸部2Aに軸支された状態でロックレバー4は、ヒンジ形成壁1側に形成されるヒンジ軸部2Aの細径突部9基端に形成される段部によって操作ハンドル3側への移動が規制され、操作ハンドル3との接触が規制される。
【符号の説明】
【0034】
1 ヒンジ形成壁
2 ヒンジ受け部
3 操作ハンドル
4 ロックレバー
5 ハンドルベース
6 ヒンジ翼片
7 係止爪
8 円弧状辺縁部
9 細径突部