(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
文字板よりも上方に突出した指針軸と、前記指針軸の延びた方向に沿って前記指針軸に取り付けられた複数の指針と、前記複数の指針のそれぞれの、前記指針軸の延びた方向に沿った高さ位置のうち、いずれか2つの指針の高さ位置の間の位置に配置された、透光性を有する環状の指標板とを有し、
前記指標板は、前記環状の内周側の部分が、前記2つの指針の高さ位置の間に位置し、
前記指標板には、前記文字板に形成された指標に平面視で重ね合わされる位置に、他の指標が形成され、
前記指標板よりも低い位置に配置された指針が、前記文字板に形成された指標に、平面視で重なる範囲を通るように形成されていることを特徴とする時計。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る時計の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
(構成)
図1に示した腕時計100(以下、時計100という。)は、本発明に係る時計の一実施形態としての多機能時計である。
【0015】
この時計100は、時針11、分針12および秒針13によって時刻([時]、[分]、[秒])を表示するとともに、第1指針21(小針)、第2指針22および第3指針23によって海抜高度をメートル([m])単位で表示するものである。
ここで、時針11、分針12および秒針13を、以下、時刻系指針10と総称し、第1指針21、第2指針22および第3指針23を、以下、機能系指針20と総称する。
【0016】
時計100は、
図2A,2Bに示すように、ケース70、風防ガラス80、ムーブメント90、時刻系指針10、機能系指針20、第1文字板40(文字板)、第2文字板50(指標板)、および見返しリング60を備えている。
【0017】
ケース70は、上胴71、下胴72、飾りリング73および裏蓋74を備えている。
上胴71および下胴72は、いずれも概略円環状に形成されている。
上胴71は、その内周面に円環状のパッキン81を挟んで風防ガラス80を支持し、下胴72は、その内周面に裏蓋74を支持している。
風防ガラス80は、例えばサファイヤガラスやクリスタルガラスによって形成されていて、透明度が非常に高いものである。
飾りリング73は、装飾を目的とした環であり、上胴71と下胴72との間に配置されている。
【0018】
ムーブメント90、時刻系指針10、機能系指針20、第1文字板40、第2文字板50、および見返しリング60は、ケース70と風防ガラス80とによって囲まれた内部空間に配置されている。
【0019】
ムーブメント90には、裏蓋74から風防ガラス80に向かう方向(以下、高さ方向Hという。)に延びた指針軸31および小針軸32が備えられ、これら指針軸31および小針軸32は、ムーブメント90の上面に取り付けられた第1文字板40よりも上方に突出している。
指針軸31はムーブメント90の上面の中心部に配置され、小針軸32はムーブメント90の上面の中心から外れた位置に配置されている。
指針軸31には、時刻系指針10の時針11、分針12および秒針13並びに機能系指針20の第2指針22および第3指針23が取り付けられていて、ムーブメント90の働きにより、これら各指針11,12,13,22,23を互いに独立して指針軸31回りに回転させる。
小針軸32には、機能系指針20の第1指針21が取り付けられていて、ムーブメント90の働きにより、第1指針21を小針軸32回りに回転させる。
【0020】
なお、これら各指針11,12,13,21,22,23の第1文字板40からの高さ方向Hの位置(高さ位置)は、低い方から順に、第1指針21、第2指針22、第3指針23、時針11、分針12、秒針13となっている。
また、時刻系指針10も機能系指針20もともに、第1文字板40の面に対して平行に延びて形成されているが、時針11、分針12および秒針13はそれぞれ、指針軸31に支持されている部分(被支持部分)と先端部分との間に、先端部分が被支持部分よりも高い位置となるように高さ位置を変化させる傾斜部11a,12a,13aが形成されている。
【0021】
時針11および分針12は、指針軸31から先端部の間がフレーム状(枠状)に形成され、そのフレーム状の内側の部分に、指針軸31側から延びる小針のような形状の部分を有している。
第2指針22は、指針軸31を中心として互いに反対方向に延びるようにフレーム状に形成され、一方が長く、他方が短く形成されている。
第3指針23は、指針軸31から先端部までフレーム状に形成され、先端部が矢印の形状に形成されている。
【0022】
ムーブメント90の上面に配置された第1文字板40は、
図2,3に示すように、下側に配置された円板状の下板41と上側に配置された円環状の上板42とが重ね合わされて一体化された構造である。
このように2枚の板41,42を重ね合わせた構造とすることで、重ね合わせた部分と重ね合わされていない部分とで厚さ方向(高さ方向H)に段差が形成され、立体感を感じさせたり、2枚の板41,42で材質や色等に差異を与えることで、デザインを多様化させることができる。
ただし、本発明に係る時計における文字板は、本実施形態の第1文字板40のように2枚重ね合わせで一体構造のものに限定されるものではなく、1枚のものであってもよいし、3枚以上重ね合わせたものであってもよい。
【0023】
第1文字板40の中心Cを含む部分には指針軸31を通過させる指針軸孔41aが形成され、中心Cから外れた位置には小針軸32を通過させる小針軸孔41bが形成されている。
第1文字板40とムーブメント90の上面との間には、円板状の日板91(円板)が配置されている。
日板91は、カレンダーの日付(1,2,…,31)の数字を周方向に沿って並べて表示したものであり、指針軸31回りに回転する。
第1文字板40の、指針軸孔41aを挟んで小針軸孔41bとは反対側には、この日板91に表示された日付の数字のうち1つ(所定の情報の一例)を露出させる日付表示窓41cが形成されている。
【0024】
第1文字板40の小針軸孔41bの周りには、「0」,「1」,…,「10」の数字や目盛等の指標が表示され、また、日付表示窓41cの傍には、「500」の数字が表示されているが、これらの意味する内容については後述する。
【0025】
第1文字板40の上方に配置された見返しリング60および第2文字板50は、
図2に示すように、下胴72と風防ガラス80とによって挟まれて、固定、支持されている。
【0026】
見返しリング60は、詳細には
図4に示すように、時計100の12時の位置、3時の位置、6時の位置、9時の位置(時針11の回転角度位置に対応した位置。以下、同じ。)には、それぞれ大きいサイズのインデックスが形成されている。
また、見返しリング60の、相隣り合う方位の文字間の角度間隔を二分する角度45[度]位置には、中サイズのインデックスが形成され、方位の文字と中サイズのインデックスとの間の角度間隔を二分する角度22.5[度]位置には、小サイズのインデックスが形成されている。
なお、図示を省略したが、12時、3時、6時、9時の各位置のインデックスにはそれぞれ、方位を示す「N」(北)、「E」(東)、「S」(南)、「W」(西)の各文字が形成されている。
以上説明した大サイズ、中サイズ、小サイズの各インデックスは、12時の位置に対応した方位「N」を基準とした16の方位を示している。
【0027】
見返しリング60の、4つの中サイズのインデックスに対応した外方部分には、上面から凹んだ凹部61がそれぞれ形成されている。
これらの凹部61は、後述する第2文字板50の底面に4つ形成されたボス(短円柱状の凸部)56が嵌め合わされるように形成されている。
なお、見返しリング60の中心Cは、見返しリング60が時計100に組み込まれている状態で、指針軸31に一致する位置である。
【0028】
見返しリング60と風防ガラス80とによって挟まれている第2文字板50は、
図5に示すように、見返しリング60よりも幅が広い円環状に形成されている。
この第2文字板50は、
図2に示すように、その外周側の部分51が内周側の部分52よりも高さ方向Hの高い位置となるように形成されている。
本実施形態のものでは、具体的には、水平の外周側の部分51と水平の内周側の部分52との間に段差部53が形成されていて、この段差部53と外周側の部分51および内周側の部分52との間にそれぞれ屈曲部51a,52a(
図2)が形成されていることにより、外周側の部分51と水平の内周側の部分52との間に高さの差が形成されている。
【0029】
図2A,2Bに示した例では、段差部53は、水平の外周側の部分51から水平の内周側の部分52に対して傾斜する傾斜部で形成しているが、水平の外周側の部分51と水平の内周側の部分52に対して垂直に形成してもよい。
なお、
図5において、符号D1は、内周側の部分52と段差部53との境界(屈曲部52a)を示す線(破線で表記)、符号D2は、段差部53と外周側の部分51との境界(屈曲部51a)を示す線(破線で表記)である。
【0030】
第2文字板50は、
図2に示すように、その外周側の部分51が見返しリング60と風防ガラス80とによって挟まれることで、時計100の内部で固定、支持されている。
第2文字板50の底面(
図5において紙面の裏側の面に対応する面)には、時計100の1時半、4時半、7時半、10時半の位置に、見返しリング60の4つ凹部61に対応したボス56がそれぞれ形成されていて、
図6に示すように、第2文字板50のこれらの各ボス56が、見返しリング60の対応する凹部61にそれぞれ嵌め合わされることで、第2文字板50と見返しリング60との、中心C回りの位置決めがなされ、両者の相対的な回り止めの機能も果たす。
【0031】
段差部53および内周側の部分52は、上下面ともに、いかなるものにも接触せずに、高さ方向Hの空中に浮いた状態となっている。
【0032】
ここで、第2文字板50の内周側の部分52は、機能系指針20の先端部よりも上方の高さ位置で、時刻系指針10の秒針13および分針12の各先端部分よりも下方の高さ位置に位置している。
すなわち、第2文字板50の内周側の部分52は、分針12の先端部分の高さ位置と第3指針23の高さ位置との間の位置に配置されている。
なお、この第2文字板50の内周側の部分52の高さ位置は、時刻系指針10の時針11の先端部分の高さ位置と一致しているが、時針11の先端部分の高さ位置よりも低い位置に配置されていてもよい。
【0033】
第2文字板50の内周側の部分52よりも、先端部分が高い位置に配置された分針12および秒針13は、いずれもその先端部分が平面視で第2文字板50の内周側の部分52に重なるように形成されている。
一方、第2文字板50の内周側の部分52よりも低い位置に配置された機能系指針20のうち第3指針23は、その先端部分が平面視で第2文字板50の内周側の部分52に重なるように形成されている。
【0034】
第2文字板50は透光性(可視光に対する透過性)を有しているため、風防ガラス80の側から第1文字板40を見たとき、
図1に示すように平面視で第1文字板40や見返しリング60に第2文字板50が重なる部分であっても、第2文字板50を透過して第1文字板40の表示や見返しリング60の表示を視認することができる。
なお、第2文字板50の透光性の度合いを表す透過度は、極端に高いものである必要はなく、むしろ、第1文字板40のうち第2文字板50を透過して見える部分と第2文字板50を通さずに見える部分とで、見え方に差異が認められる程度の透過度に設定されている。
また、第2文字板50の透過度を上述した程度に設定するのに代えて、第2文字板50の表面における反射率を比較的大きく設定して、第1文字板40のうち第2文字板50を透過して見える部分と第2文字板50を通さずに見える部分とで、見え方に差異が認められるようにしてもよい。
【0035】
次に、各文字板40,50に表示されている指標について説明する。
第1文字板40には、
図3に示すように種々の指標が表示されている。
小針軸孔41bを中心として形成された円43は、小針軸孔41bを貫通して第1文字板40の上方に突出した小針軸32に支持された第1指針21が小針軸32回りに回転して示す、海抜高度[m]に関する表示を行う範囲(所定の情報を表示する表示部)であり、この円43の外方周囲に時計回りに等角度間隔で配置された「0」〜「10」の数字(機能系指標)は、海抜高度[m]のうち、千の位の数字を表すものである。
一方、この円43の内方には、「0」〜「10」の数字の角度位置に対応して目盛が表示されている。
【0036】
例えば、第1指針21が数字「5」を指し示しているときは、この時計100が位置している海抜高度が5000[m]台であることを表し、第1指針21が数字「0」を指し示しているときは、この時計100が位置している海抜高度が1000[m]未満であることを表している。
なお、第1指針21が実際に指し示すのは、「0」〜「10」の数字自体ではなく、「0」〜「10」の数字の角度位置に対応して円43の内方に形成された目盛である。
【0037】
第1指針21、第2指針22、第3指針23が指し示す海抜高度は、時計100の9時の方向に設けられた圧力センサ95(
図1,2)によって検出された結果に基づいて、ムーブメント90に内蔵されたマイクロチップにより算出される。
そして、時計100の8時の方向に設けられた高度計ボタン96(
図1)が押されて「高度計モード」に移行したとき、圧力センサ95で得られた圧力に対応した海抜高度を第1指針21、第2指針22、第3指針23が指し示すように、マイクロチップが、同じくムーブメント90に内蔵されたモータの駆動を制御して、小針軸32および指針軸31を回転させることによって実現している。
【0038】
円43の内方の、数字「1」から「5」の間に描かれた4つの小短冊状のマークは、後述する「通常モード」のときに、第1指針21によって指し示される、ムーブメント90に電力を供給する二次電池(図示省略)の充電残量を示すものであり、第1指針21が数字「4」と「5」の中間位置を指し示しているときが満充電状態を表し、第1指針21が数字「1」と「2」の中間位置を指し示しているときが要充電状態を表している。
【0039】
日付表示窓41cの図示左方に表示された数字「500」は、第2文字板50に描かれるべき海抜高度[m]の内の百の位の数字を表す「100」〜「900」のうち、スペースの関係で第2文字板50に描くことができなかった数字「500」を表したものである。
【0040】
第2文字板50には、
図5に示すように、多数の指標が表示されている。
外周側の部分51には、時刻を表示するための指標(時刻系指標)が設けられている。
この指標は、時計の12時の位置、1時の位置、…、11時の位置にそれぞれ設けられた立体的な12個のインデックスと、図示を省略した各インデックス間を等角度間隔で5等分する目盛とによって構成されている。
【0041】
時刻系指標の内方で、外周側の部分51と内周側の部分52との間にある段差部53には、海抜高度[m]のうち十の位の数字(機能系指標)を表す「0」,「10」〜「90」が等角度間隔で配置されている。
なお、数字「70」,「80」はスペースの関係で、外周側の部分51に表示されている。
この海抜高度[m]の十の位の数字「0」〜「90」を指し示すのは、機能系指針20のうち指針軸31に支持された第3指針23である。
例えば、第3指針23が数字「30」を指し示しているときは、この時計100が位置している海抜高度が例えば○●30[m](○は海抜高度[m]のうち千の位の数字、●は海抜高度[m]のうち百の位の数字)であることを表し、第3指針23が数字「0」を指し示しているときは、この時計100が位置している海抜高度が例えば△▽00[m](△は海抜高度[m]のうち千の位の数字、▽は海抜高度[m]のうち百の位の数字)であることを表している。
【0042】
海抜高度[m]の十の位の数字の内方で、内周側の部分52には、海抜高度[m]のうち百の位の数字(機能系指標)を表す「100」,「300」〜「900」が等角度間隔で配置されている。
なお、前述した通り、数字「500」はスペースの関係で第1文字板40に表示されている。
この海抜高度[m]の百の位の数字「100」〜「900」を指し示すのは、機能系指針20のうち指針軸31に支持された第2指針22である。
例えば、第2指針22が数字「700」を指し示しているときは、この時計100が位置している海抜高度が例えば○7●0[m](○は海抜高度[m]のうち千の位の数字、●は海抜高度[m]のうち十の位の数字)であることを表し、第2指針22が数字「100」を指し示しているときは、この時計100が位置している海抜高度が例えば△1▽0[m](△は海抜高度[m]のうち千の位の数字、▽は海抜高度[m]のうち十の位の数字)であることを表している。
【0043】
時計100を、12時の位置と6時の位置とを結ぶ仮想線によって、左側の領域(9時の位置の側の領域)と右側の領域(3時の位置の側の領域)とに2分したとき、第1指針21は左側の領域で表示し、第2指針22は、主に、第1指針21の領域(左側の領域)とは別の領域(右側の領域)で表示する。
特に、第2指針22は、第1指針21に重ならない10時半〜6時(時針11の回転角度位置に対応)の範囲で、海抜高度[m]の百の位の数字「100」〜「900」を指し示すので、第1指針21が指し示す海抜高度[m]の千の位の数字の視認を妨げることがない。
【0044】
各指針11,12,13,21,22,23は色分けされて、それぞれ対応する指標(目盛や数字、文字等)とほぼ同じ色で形成されているのが好ましい。
例えば、第1指針21、第2指針22、第3指針23、時刻系指針10は、互いに異なる色で形成されている。
そして、第1指針21と、これに対応する目盛および数字「0」〜「10」等とがほぼ同じ色に形成されている。
同様に、第2指針22と、これに対応する目盛及び数字「100」〜「900」等とがほぼ同じ色に形成され、第3指針23と、これに対応する目盛及び数字「0」〜「90」および数字「(−90)」〜「(−10)」等とがほぼ同じ色に形成され、時針11、分針12および秒針13と、これらに対応する時刻系の指標とがほぼ同じ色に形成されている。
【0045】
内周側の部分52のうち、時計100の10時半から11時半に対応した時針11の位置に描かれた梯子状の指標は、海抜高度が負(マイナス)の場合の高度[m]の百の位を表すものであり、この梯子の3つの窓のうち10時半側の窓を第2指針22が指し示しているときは、この時計100が位置している高度が−300[m]台であり、3つの窓のうち11時の窓を第2指針22が指し示しているときは、この時計100が位置している高度が−200[m]台であり、3つの窓のうち11時半の窓を第2指針22が指し示しているときは、この時計100が位置している高度が−100[m]台であることを表している。
なお、段差部53に表された、海抜高度[m]のうち十の位の各数字「0」,「10」〜「90」の近接した外方には、括弧で囲まれた負の数字「(−90)」,「(−80)」,…、「(−10)」が配置されているが、この数字は、海抜高度が負(マイナス)の場合の高度[m]の十の位を表すものであり、例えば、第3指針23が数字「(−80)」を指し示しているときは、この時計100が位置している高度が−●80[m](●は高度[m]のうち負の百の位の数字)台であり、第3指針23が数字「(−20)」を指し示しているときは、この時計100が位置している高度が−○20[m](○は高度[m]のうち負の百の位の数字)台であることを表している。
本実施形態の時計100は、海抜高度をメートル単位で表示しているが、メートル単位に代えてフィート単位で表示するようにしてもよい。
【0046】
第2文字板の内周側の部分52の縁部は円ではなく、
図5に示すように、部分的に切り欠かれている。
具体的には、時計100の9時の方向の部分には半円形状の切欠き54が形成され、3時方向の部分には矩形状の切欠き55が形成されている。
なお、端面図を表す
図2Bにおいては、切欠き55は想像線の二点鎖線で表記されている。
半円形状の切欠き54は、第1文字板40に表示された円43の輪郭43aに対応した輪郭54aを有するものであり、平面視で、第2文字板50を通さずに第1文字板40の円43を見通すことができるようになっている。
したがって、仮に、第2文字板50が、第1指針21やその周囲の指標の視認を妨げるような色や透過度であっても、これらの情報をはっきりと視認することができる。
つまり、この半円形状の切欠き54は、平面視で輪郭54aが第1文字板40の円43の輪郭43aに沿うように形成されている。
【0047】
また、この半円形状の切欠き54は、
図7に示すように、先端部分が第2文字板50の内周側の部分52よりも高い位置(同じ高さ位置を含む)に配置される時刻系指針10の先端部分の向きを、この切欠き54が形成された9時の方向の回転角度位置に揃えて重ね合わせた状態で、時刻系指針10と第2文字板50とが平面視(指針軸31の延びた方向での視線で見た状態)で重ならないように設定されている。
具体的には、本実施形態の半円形状の切欠き54は、時刻系指針10の幅よりも相当程度大きい半径で形成されているため、実質的には、第2文字板50の中心Cから切欠き54の輪郭54aのうち中心Cから最も遠い部分までの距離L0が、時刻系指針10のうち平面視で指針軸31から先端部分までの長さLが最も長い指針(本実施形態では秒針13)のその長さLよりも長くなるように、切欠き54は形成されている。
この結果、第2文字板50が組み込まれた状態のケース70に、全ての指針11〜23が取り付けられた状態のムーブメント90を、裏蓋74の側から真っすぐ(高さ方向Hに沿って)組み付ける際に、時刻系指針10のうち、少なくとも分針12と秒針13とが回転中で所定の回転角度位置である9時の方向を指示しているときに、時刻系指針10は切欠き54を通過して第2文字板50よりも高い位置にセットされ、時刻系指針10が第2文字板50に干渉するのを防止することができる。
【0048】
矩形状の切欠き55は、第1文字板40に形成された日付表示窓41cに対応した輪郭55aを有するものであり、平面視で、第2文字板50を通さずに日付表示窓41cから露出した日付(所定の情報を表示する表示部)を見通すことができるようになっている。
したがって、仮に、第2文字板50が、日付の視認を妨げるような色や透過度であっても、矩形状の切欠き55を介して日付表示窓41cの日付をはっきりと視認することができる。
矩形状の切欠き55も、半円形状の切欠き54と同様に、第2文字板50の中心Cから、切欠き55の輪郭55aのうち中心Cから最も遠い部分までの距離が、時刻系指針10のうち、平面視で指針軸31から先端部分までの長さLが最も長い秒針13のその長さLよりも長くなるように、切欠き55が形成されている。
したがって、前述のように、ムーブメント90を裏蓋74の側から真っすぐ組み付ける際に、時刻系指針10のうち少なくとも分針12と秒針13とが回転中で、所定の回転角度位置である3時の方向を指示しているときに、時刻系指針10は切欠き55を通過して第2文字板50よりも高い位置にセットすることもできる。
【0049】
(作用、効果)
以上のように構成された時計100は、先端部分が第2文字板50の内周側の部分52よりも高い位置に配置された時刻系指針10は、第2文字板50の外周側の部分51に表示された時刻系指標(12個のインデックス、図示しない各インデックス間を等角度間隔で5等分する目盛)を指示する。
一方、機能系指針20のうち高さ方向Hの位置が最も低い位置の第1指針21は、第2文字板50よりも低い位置の第1文字板40に表示された指標(機能系指標)を指示し、第2文字板50よりも低い位置の第2指針22および第3指針23は、第2文字板50の内周側の部分52に表示された機能系指標、第2文字板50の段差部53に表示された機能系指標を、第2文字板50の下面側でそれぞれ指示する。
【0050】
つまり、時刻系指針10は、第2文字板50の上面側から第2文字板50の時刻系指標を指示し、機能系指針20は、第2文字板50の下面側から第2文字板50の機能系指標を指示するか、または第1文字板40の機能系指標を指示することになる。
そして、第2文字板50は、その透過度や表面における反射の状態により、その存在が視認可能であるため、使用者に対して、時刻系指針10の先端部分が第2文字板50よりも高い位置にあることを容易に認識させることができるとともに、機能系指針20が第2文字板50よりも低い位置に存在することを容易に認識させることができる。
この結果、使用者に対して、第2文字板50に対して高い位置に存在する時刻系指針10と、第2文字板50に対して低い位置に存在する機能系指針20とを、容易に識別させることができる。
【0051】
なお、第2文字板50よりも高い位置に配置される分針12および秒針13は、指標を指し示す先端部分のうち少なくとも一部が、平面視で第2文字板50に重なるため、その重なり状態により、第2文字板50との上下関係(高さ方向Hでの位置関係)を一層容易に認識させることができる。
同様に、第2文字板50よりも低い位置に配置される第3指針23は、指標を指し示す先端部分のうち少なくとも一部が、平面視で第2文字板50に重なるため、その重なり状態により、第2文字板50との上下関係(高さ方向Hでの位置関係)を一層容易に認識させることができる。
【0052】
ここで、
図8に示すように、第2文字板50に描かれた機能系指標のうち、数字「(−30)」の内側で段差部53に形成された指標(目盛)「−」は、第1文字板40に描かれた機能系指標のうち数字「2」に、平面視で一部が重ね合わされているが、第2文字板50の下方を通る第3指針23が、両指標「−」,「2」の間を通るような長さで形成されている場合には、第3指針23が第1文字板40の数字「2」を隠すため、第3指針23によって指示される指標「−」が数字「2」に重なって見えにくくなるのを防止することができる。
【0053】
この場合、第3指針23が第1文字板40の数字「2」を隠す範囲は数字「2」の一部でもよく、第3指針23が第1文字板40の数字「2」に平面視で重なる範囲を通るようにすれば、視認性を向上することができる。
これは、第2文字板50の段差部53に描かれた指標の例であるが、第2文字板50の内周側の部分52または外周側の部分51に描かれた指標の場合も、第2文字板50の下方を通る指針によって、第2文字板50の指標と平面視で重なる第1文字板50に描かれた指標を隠すように構成すれば、同様の効果が得ることができる。
【0054】
また、第2文字板50における段差部53に描かれた指標は、仮に、第1文字板40の指標に平面視で重なっていた場合であっても、第1文字板40の指標に対して傾いていることによっても、重なって見えにくくなるのを防止することができる。
【0055】
第2文字板50に表示されている指標のうち、いずれが時刻系指標であるかについては、使用者の経験によって容易に認識することはできるため、いずれの指針が時刻系指針10であるかが認識されれば、時刻系指針10と時刻系指標との対応関係が明確になる。
そして、本実施形態の時計100は、第2文字板50よりも高い位置に配置された時刻系指針10を機能系指針20と容易に識別させることができるため、使用者に対して、時刻系指針10と時刻系指標との対応関係を容易に認識させることができる。
【0056】
一方、第2文字板50に表示されている指標のうち時刻系指標を除いたものが機能系指標であり、メートルの単位表示等に基づいて、いずれの指針が機能系指針20であるかが認識されれば、機能系指針20と機能系指標との対応関係が明確になる。
そして、本実施形態の時計100は、第2文字板50よりも低い位置に配置された機能系指針20を時刻系指針10と容易に識別させることができるため、使用者に対して、機能系指針20と機能系指標との対応関係を容易に認識させることができる。
したがって、時計100の使用者に対して、一見して、時刻系の情報と機能系の情報とを識別させることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る時計100は、第2文字板50の外周側の部分51が、見返しリング60や風防ガラス80によって支持されているが、第2文字板50は内周側の部分52と外周側の部分51とで高さ位置が異なるもので形成されているため、第2文字板50の外周側の部分51の高さ位置に拘わらず、内周側の部分52を、任意の2つの指針(本実施形態では、分針12と第3指針23)の各高さ位置の間の高さ位置に配置することができる。
つまり、第2文字板50の外周側の部分51を支持する見返しリング60等の高さ位置と、内周側の部分52を配置しようとする高さ位置とが異なる場合であっても、その高さ位置の差分に対応した高さの差で段差部53を形成することにより、見返しリング60等で支持される部分の高さ位置の高低に拘わらず、内周側の部分52を任意の2つの指針(本実施形態では、分針12と第3指針23)の各高さ位置の間に配置することができる。
【0058】
したがって、第2文字板50の内周側の部分52を任意の高さ位置に配置するに際して、この第2文字板50を固定、支持する部分や指針軸31を変更する必要がなく、製造コストの上昇を抑制することができる。
しかも、本実施形態の時計100によれば、第2文字板50を配置する高さ位置の自由度を高めることができる。
【0059】
なお、本実施形態の時計100における時刻系指針10は、上述したように、常に時刻系指標を指し示して現在時刻を表示するものであるが、機能系指針20は、以下の動作モードに応じて動作内容が変化する。
すなわち、時計100の高度計ボタン96および方位計ボタン97の操作により「高度計モード」や「方位計モード」に設定されていないときは、ムーブメント90のマイクロチップの制御により「通常モード」となる。
そして、「通常モード」では、第1指針21は、ムーブメント90に電力を供給するためにムーブメント90に装着された二次電池の充電残量に対応した指標(4つの小短冊状のマーク)を指し示すとともに、第2指針22および第3指針23は、いずれも時計100の12時の位置の方向に向いて停止される。
【0060】
時計100の高度計ボタン96が押されたときは、ムーブメント90のマイクロチップの制御により「高度計モード」となる。
この「高度計モード」では、第1指針21は、圧力センサ95で得られた圧力に対応した海抜高度に対応した指標を第1指針21、第2指針22、第3指針23がそれぞれ指し示す。
【0061】
時計100の方位計ボタン97が押されたときは、マイクロチップの制御により「方位計モード」となる。
この「方位計モード」では、第1指針21は「通常モード」と同じく二次電池の充電残量の指標を指示して充電残量を表示し、第2指針22は時計100が存在する環境における現実の方位の「北」を指し示し、第3指針23は「通常モード」と同じく、時計100の12時の位置の方向に向いて停止される。
【0062】
なお、「方位計モード」において、見返しリング60に形成された12時の位置の「北」に対応するインデックスを、第2指針22が指す「北」の方位に一致する向きに時計100を向けることで、見返しリング60に形成した16個のインデックスから、方位を読み取ることができる。
【0063】
また、高度計ボタン96と方位計ボタン97とを同時に押すなどの、使用者に積極的に知らせない特殊な操作(隠しコマンドのような操作)が行われたときは、マイクロチップの制御により「メンテナンスモード」となるように構成してもよい。
この「メンテナンスモード」は、時刻系指針の時針11、分針12、秒針13を、それらの各先端部分の向きが所定の回転角度位置である時計100の3時の方向または9時の方向となるように、マイクロチップがムーブメントを制御する。
これにより、第2文字板50が組み込まれた状態のケース70に、全ての指針11〜23が取り付けられた状態のムーブメント90を、裏蓋74の側から真っすぐ(高さ方向Hに沿って)組み付ける際や、これとは反対に時計100の裏蓋74の側から、指針11〜23が取り付けられた状態のムーブメント90を引き出す際に、時刻系指針10を第2文字板50の切欠き54の部分で通過させることができ、組み立て作業やメンテナンス作業を容易にすることができる。
【0064】
本実施形態の時計100は、表示する機能として高度を適用したものであるが、本発明に係る時計において表示する時刻以外の機能としては、高度に限定されるものではなく、水深計等の他の物理量を表示するものであってもよい。
【0065】
本実施形態の時計100は、第2文字板50が、外周側の部分51が内周側の部分52よりも高い位置となる段差部53を有する形態の例であるが、本発明に係る時計は、この形態に限定されるものではなく、指標板として、その外周側の部分が内周側の部分よりも低い位置となる段差部を有するものであってもよい。
【0066】
また、本発明の時計における指標板は、水平な外周側の部分と水平な内周側の部分との間に水平ではない段差部を形成することで、外周側の部分と水平な内周側の部分との間で高さ位置に差を形成したものに限定されるものではなく、例えば
図9に示すように、第2文字板50(指標板)の全体を、外周側の部分51と内周側の部分52とを含めて、水平ではない滑らかに連なる傾斜面(中心Cを通る鉛直面での断面において傾斜度合いが一定の直線状であってもよいし、傾斜度合いが変化する曲線状であってもよい)によって形成することで、外周側の部分と水平な内周側の部分との間で高さ位置に差を形成したものであってもよい。
【0067】
本実施形態の時計100は、時針11、分針12および秒針13がそれぞれ傾斜部11a,12a,13aを有するものであるが、本発明に係る指針は、このような傾斜部を有するものに限定されるものではなく、水平に一直線状に延びたものであってもよい。
ただし、本発明の時計は、指標板の内周側の部分の高さ位置に最も近い高さ位置の指針については、その先端部分が指標板の内周側の部分から遠ざかるような(高さ方向の高くなる向きまたは低くなる向きへの)傾斜部を有するものは、指針の先端部と指標板との上下関係が明確になるように指針側でも、指標板に対する指針の先端部の高さ位置を調整することができるため好ましい。
したがって、本実施形態の時計100においては、時刻系指針10が、その先端部分が被支持部分よりも高くなるような傾斜部を有するものとするのに代えて、機能系指針20が、その先端部分が被支持部分よりも低くなるような傾斜部を有するものとしてもよい。
【0068】
また、指針軸に支持される被支持部分が、指標板の内周側の部分よりも高い位置にある指針であっても、指針の先端部が指標板の内周側の部分よりも低い位置になるように、指針の傾斜部を構成してもよいし、指針の被支持部分および先端部と指標板の内周側の部分との高さ位置の関係を、これとは反対の構成にしてもよい。
【0069】
なお、本実施形態の時計100における第2文字板50は、中心C回りの1周が繋がった完全な環状(O字状)であるが、本発明に係る時計における指標板は、完全な環状のものに限定されるものではなく、中心回りの1周のうち一部が欠けていて完全には繋がっていないが略環状のもの(C字状など)も本発明における「環状」に含む。
この場合、本実施形態における切欠き54や切欠き55を、内周側の部分52から外周側の部分51の縁まで延長して、繋がっていない部分としてもよい。
また、時計として、第2文字板50よりも上方の高さ位置と第2文字板50よりも下方の高さ位置とにそれぞれ1つ以上の指針が設けられたものであれば、本発明を適用することができる。