(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の床マットは、靴裏のクリーニングを促進するために使用される。本発明者が望んでいるダスト飛散防止効果をねらったものではない。特許文献1のフロアマットは、若干の飛散防止効果はあるかもしれないが、その効果は低い。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、ダストの舞い上がりや飛散を防止することができる
ダスト飛散防止床マットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の
ダスト飛散防止床マットは、
弾性体であって表面を有する
シート状の基材と、前記表面に
一体に形成された
凹凸構造部とを有する
乾燥状態のダスト飛散防止床マットであって、
前記
凹凸構造部は、複数の突起部と、隣り合う前記突起部の間を連結する
複数の堰と、前記突起部及び前記堰により周囲
の少なくとも一部が囲ま
れた空間部とを有し、
前記堰の平面方向の幅は、前記突起部の平面方向の幅よりも小さく、且つ
前記堰の頂面は、前記突起部の頂面よりも低くされて
おり、
前記突起部の頂面の平面方向の幅は1.5mm以上5mm以下であり、
隣合う前記突起部の間の距離は1.5mm以上7mm以下であることを特徴とす
る。
【0009】
本発明の
ダスト飛散防止床マットは、基材表面に、複数の突起部を配置させた
凹凸構造部としている。基材表面が
凹凸構造部を有する場合には、基材表面が平面であるときに比べて、靴裏などの移動体の底面と接触する部分の面積が小さくなり、ダストの底面への付着量が低減される。また、靴裏等の移動体が
ダスト飛散防止床マット上を移動した時の、基材表面と移動体との接触面積が低減される。このため、移動体へのダストの付着量を低減させ、ダストの舞い上がりを防止できる。
【0010】
また、基材表面が
凹凸構造部を有する場合には、基材表面が平面であるときに比べて、靴裏等の移動体が基材表面を移動した時に生じる圧着摩擦や、靴裏等の移動体の底面が基材表面から離れるときに生じる剥離摩擦が低減される。基材表面に落下しているダストが靴裏に静電気により付着することを抑えることができ、ダストの舞い上がりも抑制される。
【0011】
さらに、本発明では、突起部は、少なくとも一方向に配列している。突起部が配列している配列方向では、突起部同士が互いに隣り合っている。隣合う突起部の間は、堰により連結されている。突起部の間の凹部が堰により仕切られて、突起部と堰とで囲まれた空間部が形成されている。空間部に落下したダストは、周囲の堰と突起部とにより移動が抑制される。このため、ダストの横方向への飛散も防止できる。
【0012】
堰の平面方向の幅は、突起部の平面方向の幅よりも小さく、且つ堰の頂面は突起部の頂面よりも低い。このため、堰が靴裏等の移動体の底面に接触することが防止される。基材表面において移動体の底面と接触する部分は、突起部の頂面のみとされ、移動体に接触する基材表面の接触面積を極力低減させ、ダストの舞い上がりを効果的に防止できる。
【0013】
以上のように、本発明の
ダスト飛散防止床マットによれば、ダストの飛散を効果的に防止できる。
【0014】
本発明の
ダスト飛散防止床マットは、水で濡らすことなく、乾燥したままで、落下したダストの舞い上がり及び飛散を効果的に抑制することができる。
【0015】
複数の前記突起部と前記堰とは、少なくとも一方向に延びる凸条を形成していることが好ましい。この場合には、空間部に落下したダストの移動が、凸条により制限される。ダストの飛散を効果的に防止できる。
【0016】
前記凸条は、一方向に延びる第1凸条と、前記第1凸条の延び方向と直交する方向に延びる第2凸条とからなることが好ましい。この場合には、空間部が、第1凸条と第2凸条とで囲まれて形成されるため、空間部に落下したダストの平面移動が効果的に制約される。このため、ダストの飛散防止効果が更に高くなる。
【0017】
ダスト飛散防止床マットの平面方向の100mm×100mm面積当たりの突起部の頂面の面積の総和は500〜6000mm
2であることが必要であり、好ましくは1000〜4000mm
2である。
ダスト飛散防止床マット上を歩行した時に靴裏に接触する突起部の頂面が狭くなり、頂面上のダストの靴裏への付着量を効果的に減少させて、ダストの舞い上がりを効果的に防止できる。
【0018】
各前記突起部の頂面の面積は2mm
2以上25mm
2以下である
ことが好ましい。
ダスト飛散防止床マット上を歩行した時に、
ダスト飛散防止床マットと靴裏との間で生じる圧着摩擦や剥離摩擦を効果的に低減させることができ、ダストの舞い上がりを効果的に抑制できる。
前記突起部の高さは1.5mm以上7mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の
ダスト飛散防止床マットは、突起部と堰と空間部とを有する
凹凸構造部を有するため、ダストの飛散を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る
ダスト飛散防止床マット
(以下、「床マット」と称する。)について詳細に説明する。
【0022】
床マットは、表面を有する基材と、表面に形成された
凹凸構造部とを有する。
【0023】
基材は、シート状の弾性体である。弾性体である基材は、例えば、合成樹脂、ゴムからなる。摩擦係数が大きい基材ほど、基材表面に落下したダストの移動が抑制される。合成樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。ゴムは、合成ゴム、天然ゴムのいずれでもよく、合成ゴムとしては、アクリロニトリルゴム、シリコーンゴムなど、その他多数が挙げられる。基材には、木材や金属などの他部材が固定されていてもよい。
【0024】
図1に示すように、基材7の表面には、
凹凸構造部1が形成されている。
凹凸構造部1は、少なくとも一の配列方向に配列する複数の突起部2と、配列方向で隣り合う突起部2の間を連結する堰3と、突起部2と堰3とで囲まれた空間部6とを有する。
【0025】
複数の突起部2と堰3とは、少なくとも一方向に延びる凸条5を形成していることが好ましい。この場合には、空間部6に落下したダストの移動が、凸条5により制限される。ダストの飛散を効果的に防止できる。
【0026】
凸条の延び方向は、一方向のみであってもよい。この場合、
図2(a)に示すように、凸条5は、横方向に延びる第1凸条51であってもよく、又は、
図2(b)に示すように、縦方向に延びる第2凸条52であってもよい。
【0027】
凸条の延び方向は、二方向であるとよく、更には互いに直交する二方向であることが好ましい。
図1に示すように、凸条5は、一方向に延びる第1凸条51と、第1凸条51の延び方向と直交する方向に延びる第2凸条52とからなることが好ましい。この場合には、第1凸条51と第2凸条52とは、格子状に配列される。空間部6は、第1凸条51と第2凸条52とで囲まれて形成される。このため、空間部6に落下したダストの平面移動が効果的に制約される。このため、ダストの飛散防止効果が更に高くなる。
【0028】
例えば、
図2(c)に示すように、基材7が四角形状である場合、第1凸条51の延び方向と第2凸条52の延び方向は、横方向と縦方向にそれぞれ平行であってもよい。また、
図2(d)に示すように、第1凸条51の延び方向と第2凸条52の延び方向は、それぞれ、横方向に対して傾斜する方向と、縦方向に対して傾斜する方向であってもよい。本明細書において「横方向」は、基材の横方向の向きと平行な方向をいい、「縦方向」は、基材の縦方向の向きと平行な方向をいう。「横方向」と「縦方向」は、互いに略直角に交差する。
【0029】
図3は、第1凸条51が横方向に延び、第2凸条52が縦方向に延びている場合の床マットの平面図である、
図4は、
図3のA−A矢視断面図である。
図5は、
図3のB−B矢視断面図である。
図3〜
図5に示すように、突起部2は、基材7の表面から突出する部分である。突起部2の突出方向の先端には頂面20が形成されている。頂面20は、平面又は湾曲面のいずれでもよい。各頂面20の面積は2〜25mm
2であることが必要であり、更には4〜16mm
2であることが好ましい。頂面20の面積が過小の場合には、突起部2の強度が低下し、荷重が加わったときに耐え得ない。頂面20の面積が過大である場合には、頂面20と靴裏との接触面積が増え、ダストが舞い上がりやすくなるおそれがある。
【0030】
床マットの平面方向の100mm×100mm面積当たりの頂面20の面積の総和は実験から、400〜6000mm
2であることが必要であり、更には1000〜4000mm
2であることが好ましい。
【0031】
床マットの平面方向の100mm×100mm面積当たりの縦方向及び横方向の突起部2の数は、実験結果から、いずれも5〜50個であることが必要であり、更には15〜30個であることが好ましい。
【0032】
各突起部2の頂面20の平面方向の幅B1は、1.5mm以上5mm以下であることが実験結果から必要であり、更には2〜4mmであることが好ましい。頂面20の幅B1が過小の場合には、荷重の印加により突起部2が押し倒されてしまい、ダスト飛散防止効果が低下するおそれがある。頂面20の幅B1が過大である場合には、突起部2と靴裏との接触面積が大きくなり、ダスト飛散防止効果が低くなる。
【0033】
隣り合う突起部2の間の距離Wは、1.5〜7mmであることが実験結果から必要であり、更には2〜4mmであることが好ましい。突起部2の間の距離Wが過小の場合には、ダストの入り込む空間部6が狭くなり、ダスト飛散防止効果が低くなる。突起部2の間の距離Wが過大である場合には、突起部2の高さが低いときに、基材7の表面が平面に近くなり、ダスト飛散防止効果が低くなる。
【0034】
突起部2の高さD1は1.5〜7mmであることが実験結果から必要であり、更には2〜4mmであることが好ましい。突起部2の高さD1が過小の場合には、基材7の表面が平面に近くなり、ダスト飛散防止効果が低くなることが実験より判明した。突起部2の高さD1が過大である場合には、そのような高い突起部2を成形すること自体が困難であるし、更には突起部全体が靴裏圧着により折曲がりダスト飛散防止効果が極端に低下してしまう。
【0035】
図6には、突起部2の断面形状及び平面形状を例示した。
図6(1a)〜
図6(1e)は、突起部2の断面形状を示す。突起部2の断面形状は、正方形(
図6(1a))、台形突起部2の頂面20が底部21よりも狭い形状(
図6(1b))、台形であって突起部2の頂面20が底部21よりも広い形状(
図6(1c))、段部25をもち突起部2の頂面20が底部21よりも狭い形状(
図6(1d))、段部25をもち突起部2の頂面20が底部21よりも広い形状(
図6(1e))などが挙げられる。
【0036】
図6(1b)、
図6(1d)に示すように、突起部2の頂面20の平面方向の幅B1は、突起部2の底部21の平面方向の幅b0よりも狭い場合には、靴裏との接触面積が狭く、ダストのマット表面への積層が少なく、且つ突起部全体の強度が大きくなる。突起部2の底部21は、突起部2の最も低い部分をいい、空間部6の底面と同じ高さに位置する部分である。
【0037】
一方、
図6(1c)、
図6(1e)に示すように、突起部2の頂面20の幅B1が突起部2の底部21の幅B0よりも広い場合には、空間部6に入ったダストが再度外部に飛び出すことを防止できる。実際には、突起部2の頂面20の平面方向の幅B1と突起部2の底部21の平面方向の幅B0との比率は、頂面20と靴裏との接触面積が狭く且つ空間部6のダストの飛散を防止し得るように、適度なバランスを保つことがよい。
【0038】
図6に列挙した突起部2の形状のうち、基材表面と靴裏との接触面積が狭く且つ空間部のダストの飛散を防止することができ、突起部強度も高いという観点から、
図6(1a)又は
図6(1b)の形状がよい。
【0039】
図6(2a)〜
図6(2e)は、それぞれ、
図6(1a)〜
図6(1e)に示した断面形状をもつ突起部2が取り得る平面形状である。
図6(2a)〜
図6(2e)の上段は、突起部2の平面形状が矩形である場合を示し、
図6(2a)〜
図6(2e)の下段は、突起部2の平面形状が円形である場合を示す。突起部2がいずれの平面形状を呈していても、ダスト舞い上がり防止効果が高い。
【0040】
突起部2の立体形状は様々なものが考えられるが、
図7に示した略々の三角錐形(
図7(a))、方錐形(
図7(b))、円錐形(
図7(c))が好ましい。これらの突起部2は、ダスト舞い上がり防止効果が比較的高く、且つ突起部2の折れ曲がりが少なく強度も高い。また、これらの錐形の突起部2をもつ床マットは、生産性がよい。
【0041】
図3に示すように、複数の突起部2の間は、堰3により連結されている。堰3は、縦方向又は/及び横方向で隣り合う突起部2の間を連結している。堰3の平面方向の幅b1は、突起部2の平面方向の幅B1よりも小さい。
【0042】
図4に示すように、堰3の頂面30は、突起部2の頂面20よりも低くされている。突起部2の底部21から頂面20までの高さをD1とし、堰3の底部31から頂部30までの高さをd1としたときに、実験より、d1は、D1の5〜90%の範囲にあることよく、さらには、D1の30〜60%の範囲にあることが好ましい。これにより、床マットに落下しているダストが靴裏による空気の圧縮で平面方向に飛散することを堰き止めるとともに、床マット表面と靴裏との接触をできるだけ少なくすることで、ダストの舞い上がり現象を抑えることができる。d1が過小の場合には、ダストの平面方向の移動を堰き止めにくくなる。d1が過大である場合には、堰3の高さd1が突起部2の高さD1と同程度になり、基材表面と靴裏との接触面積を大きくしてしまい、ダストの舞い上がりをかえって大きくする。
【0043】
図3に示すように、突起部2の平面方向の幅をB1とし、堰の平面方向の幅をb1としたときに、b1は、B1の80%以下であることがよい。b1は、可能な限り小さいことがよい。これは、b1は、可能な限り靴裏との接触を避け、ダストの舞い上がりを少なくするためである。
【0044】
堰3は、縦方向又は横方向で隣り合う突起部2の間を連結するだけでなく、縦方向及び横方向の双方で隣り合う突起部2の間を連結してもよい。横方向で隣り合う突起部2の間を連結する横堰31の高さは、縦方向で隣り合う突起部2の間を連結する縦堰32の高さと同じであってもよいし、いずれか一方が他方に対して高くてもよい。
【0045】
本発明の床マットは、各種工場、病院、家庭などの屋内の床の上に敷設されるとよい。床マットは、床全体又は床の一部に敷設される。また、床マットは、出入り口の近辺に敷設してもよい。
【実施例1】
【0046】
各種床マットを試作し、ダスト飛散試験に供した。具体的には、マット表面が平坦(フラット)の床マットを比較試料C1とし、
凹凸構造部を有する床マットを試料1〜7とした。これらの床マットは、いずれも三井化学製の商品名パロニアスーパーHD(発泡ポリエチレン)を用いて形成した。
【0047】
<ダスト飛散試験条件>
比較試料C1及び試料1〜7の床マット(100mm×250mm)を試験台の上に配置した。2種類のダストをそれぞれ各種床マットの上に落下させた。
【0048】
・ダストの種類
エポキシ樹脂パウダー(粒径10μm〜5mm、比重1.2)と、コットンリンター(綿屑)(長さ1mm以下、比重1.54)を用いた。エポキシ樹脂パウダーは、工場実物のダスト、鉱物ダストに見立てたものである。コットンリンターは、衣料品から発生した塵に見立てたものである。
【0049】
・ダストの散布量
エポキシ樹脂パウダーについては、床マットの100mm×250mmの範囲に5gを均一に散布した。コットンリンターについては、床マットの100mm×250mmの範囲に2gを均一に散布した。
【0050】
・歩行条件
ダストが落下している床マットの上を歩行した。歩行時に履いている靴は、安全靴、一般的な革靴、スリッパの3種類とした。
図14、
図15、
図16は、順に、安全靴、革靴、スリッパの裏面説明図である。これらの図面の中で、ハッチング部分は、歩行時に床マットに接触可能な凸部であり、白抜き部分は床マットに接触しない凹部である。
図14に示すように、安全靴の靴裏は、
凹凸構造部を有していた。
図15に示すように、革靴の靴裏は、靴裏面の約2/3が平板状であった。
図16に示すように、スリッパは、靴裏全体が平面であった。歩行者は、体重60kgの男性であり、速度約4km/hで歩行した。
【0051】
試験台の横にハイスピードカメラを設置し、レーザ光を照射しつつ撮影することで床マット上の靴の動きによるダストの挙動を厳密に観察した。精密に撮影した動画を見て、ダストの舞い上がりの有無を観察した。その結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1において、評価レベルは、以下のように表記した。
◎:飛散しなかった
○:僅かに飛散した
△:○よりも更に飛散した
×:大量に飛散した
【0054】
(比較試料C1)
比較試料C1の床マットは、基材7の表面が平坦面である。基材7の厚みは5mmである。
【0055】
(試料1)
試料1の床マットは、
図1に示すように、横方向に隣り合う突起部2の間を横堰31により連結されているだけでなく、縦方向に隣り合う突起部2の間を縦堰32により連結されている。
【0056】
突起部2の断面形状は、正方形である。突起部2の平面形状は、縦3mm×横3mmの正方形である。突起部2の側面22は、底部21から鉛直方向に延びていて、頂面20の平面方向の幅B1と底部21の平面方向の幅B0はいずれも3mmである。頂面20の面積は9mm
2である。
【0057】
床マットの平面方向の横100mm×縦100mm面積当たりの突起部2の数は、横20個×縦20個=400個である。床マットの平面方向の100mm×100mm面積当たりの頂面20の面積の総和は、3600mm
2である。
【0058】
突起部2の底部21から頂面20までの高さD1は3mmである。横方向及び縦方向でそれぞれ隣合う突起部2の間の距離Wは、いずれも2mmである。
【0059】
横堰31は、突起部2の横方向で隣合う突起部2と相対する側面22に一体に固定されている。突起部2と横堰31は、交互に横方向に配列されることで、基材7の表面に横方向に延びる第1凸条51が形成される。横堰31の高さd1は1.5mmであり、突起部2の高さD1の50%である。横堰31の平面方向の幅b1は1mmである。
【0060】
縦堰32は、突起部2の縦方向で隣合う突起部2と相対する側面22に一体に固定されている。突起部2と縦堰32は、交互に縦方向に配列されることで、縦方向に延びる第2凸条52が形成される。縦堰32の高さd1は1.5mmである。縦堰32の平面方向の幅b1は1mmである。
【0061】
第1凸条51と第2凸条52とは、格子形状を形成しており、突起部2で交差している(
図2(c))。第1凸条51と第2凸条52との間には、空間部6が形成されている。空間部6は、第1凸条51と第2凸条52とで囲まれている。基材7の表面全体の面積を100%としたときに、空間部6の平面方向の面積(基材7の表面全体の面積から突起部2及び第1、第2凸条51,52の面積を引いた値。以下の試料においても同様。)の比率は48%である。基材7の空間部6の底部に位置する部分の厚みt1は2mmである。
【0062】
(試料2)
試料2の床マットは、
図8に示すように、基材7と、基材7の表面に形成された
凹凸構造部1とからなる。
凹凸構造部1は、基材7の横方向に配列する複数の突起部2と、横方向で隣り合う突起部2の間を連結する横堰31と、突起部2と横堰31とにより囲まれた空間部6とを有する。突起部2の断面形状は、正方形である。突起部2の平面形状は、縦3mm×横3mmの正方形である。突起部2の側面22は、底部21から鉛直方向に延びていて、頂面20の平面方向の幅B1と底部21の平面方向の幅B0はいずれも3mmである。各突起部2の頂面20の面積は、9mm
2である。突起部2の底部21から頂面20までの高さD1は3mmである。横方向及び縦方向でそれぞれ隣合う突起部2の間の距離Wは、いずれも2mmである。
【0063】
横堰31は、突起部2の横方向で隣り合う突起部2と相対する側面22に一体に固定されている。
【0064】
横堰31の高さd1は1.5mmである。横堰31の平面方向の幅b1は1mmである。基材7の表面全体の面積を100%としたときに、空間部6の平面方向の面積の比率は56%である。基材7の空間部6の底面に位置する部分での厚みt1は2mmである。
【0065】
(試料3)
試料3の床マットは、
図9に示すように、隣り合う突起部2が横堰31及び縦堰32で連結されていない点が、試料1と相違する。突起部2の形状及び配置は試料1と同様である。
【0066】
(試料4)
試料4の床マットは、
図10に示すように、横堰31及び縦堰32の高さd1が突起部2の高さD1と同一である点で、試料1と相違する。横堰31及び縦堰32の高さd1並びに突起部2の高さD1は、いずれも3mmである。その他は、試料1と同様である。
【0067】
(試料5)
試料5の床マットは、
図11に示すように、隣合う突起部2の間の距離Wが、試料2の突起部2の間の距離Wよりも大きい。横方向及び縦方向でそれぞれ隣合う突起部2の間の距離Wは、いずれも10mmである。
【0068】
床マットの平面方向の横100mm×縦100mm面積当たりの突起部2の数は、横7個×縦7個=49個である。床マットの平面方向の100mm×100mm面積当たりの頂面20の面積の総和は、441mm
2である。その他は、試料2と同様である。
【0069】
(試料6)
試料6の床マットは、
図12に示すように、隣合う突起部2の間の距離Wが、試料2の突起部2の間の距離Wよりも極小である。横方向及び縦方向でそれぞれ隣合う突起部2の間の距離Wは、いずれも0.8mmである。
【0070】
床マットの平面方向の横100mm×縦100mm面積当たりの突起部2の数は、横26個×縦26個=676個である。床マットの平面方向の100mm×100mm面積当たりの頂面20の面積の総和は、6084mm
2である。その他は、試料2と同様である。
【0071】
(試料7)
試料7の床マットは、
図13に示すように、各突起部2の頂面20の面積が、64mm
2であり、試料2の突起部2の頂面20の面積よりも大きい。横方向及び縦方向でそれぞれ隣合う突起部2の間の距離Wは、いずれも2mmである。
【0072】
床マットの平面方向の横100mm×縦100mm面積当たりの突起部2の数は、横10個×縦10個=100個である。床マットの平面方向の100mm×100mm面積当たりの頂面20の面積の総和は、6400mm
2である。その他は、試料2と同様である。
【実施例2】
【0073】
前記の試料1〜7の比較試験を基に、実用素材として最も適正である塩化ビニルを用いて試料1〜7と同形状の床マットを作製し、性能を評価したところ、実施例1と同様の結果となった。
【0074】
実施例2では、実施例1で最も結果が良好であった前記試料1と同形状の塩化ビニル素材マットを表面抵抗率の異なる2種類用意し(試料8,9)、床マットの表面抵抗率とダスト飛散防止効果の関連を調べた。試験条件及び評価方法については実施例2と同様である。試験結果は表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
(比較試料C2)
比較試料C2の床マットは、基材表面が平面である。床マットは、塩化ビニル製の市販のマットである。床マットの厚みは6.5mmである。
【0077】
(試料8)
試料8の床マットは、
図1に示すように、試料1の床マットの同様の突起部2及び横堰31と縦堰32とを有する。突起部2の頂面20の平面方向の幅B1は、横方向及び縦方向ともに、いずれも3mmである。頂面20の面積は9mm
2である。突起部2の底部21から頂面20までの高さD1は3mmである。横方向及び縦方向でそれぞれ隣合う突起部2の間の距離Wは、1.5mmである。
【0078】
床マットの平面方向の横100mm×縦100mm面積当たりの突起部2の数は、横22個×縦22個=400個である。床マットの平面方向の100mm×100mm面積当たりの頂面20の面積の総和は、3600mm
2である。
【0079】
基材7の空間部6の底部に位置する部分の厚みt1(
図5参照)は1mmである。試料1の床マットの材質は、塩化ビニル製である。本例の床マットの表面抵抗率は1×10
11Ωであった。その他の点は、試料1と同様である。
【0080】
(試料9)
試料9の床マットは、試料8の床マットを構成する塩化ビニル樹脂に帯電防止材を練り込み、静電処理を施している。試料9の表面抵抗率は1×10
10Ωであった。その他の点は、試料8と同様である。
【0081】
<実施例1,2の考察(動画観察からの考察)>
・実施例1の考察
比較試料C1の床マットは、安全靴、革靴、スリッパのいずれで歩行した場合にも、エポキシ樹脂パウダー、コットンリンターのどちらのダストにおいても飛散した。これは、マット表面がフラットであるため、靴裏との接触面積が多大となり、その接触により、革裏−マット間の圧着摩擦及び剥離摩擦が多大となるため、いずれの靴及び、ダスト種類においても大量にダストが飛散したと考えられる。
【0082】
試料1,2のマットでは、エポキシ樹脂パウダーについてはいずれの靴であっても飛散しなかった。コットンリンターにおいては、革靴で歩行した時に試料1の方が良好であり、◎であった。試料2は、○でありやや有意差が見られた。スリッパではどちらも飛散が見られ、△であった。
【0083】
試料3は、試料1の縦横の堰をなくした床マットである(
図9)。試料3は、試料1,2と比べダストの舞い上がりが多くみられた。これは着地時の靴裏とマット間に生じる圧縮空気により、空間部6の底部に堆積したダストが左右横方向に飛ばされ、堰がないためにダストが遮られず飛散するためである。
【0084】
また、試料4は、試料1の堰3の高さd1と突起部2の高さD1と同一としたマットである(
図10)。試料4は、試料1,2と比べて、ダストが多く飛散した。これは、堰3の高さが突起部2の高さと同一であるために、床マットと靴裏との接触面積が大幅に増加した結果、圧着摩擦、剥離摩擦共に多大となったため、ダスト飛散につながったと考えられる。
【0085】
試料5は突起部2間の間隔を広げ、空間部6の底部面積を増大せしめ、その上で横方向に延びる横堰31を設けたマットである(
図11)。試料5は、類似構造の試料2と比べ、ダスト舞い上がりが多くみられた。このことは、空間部6の底部の面積が広くなりすぎ、着地時に靴裏と空間部6の底部表面に堆積したダストが直接接触するため、横堰31も十分な機能を果たせず、飛散防止の効果が減少し、その結果、ダストが多く飛散したと考えられる。
【0086】
試料6は突起部2間隔を極端に狭くすることで突起部2の面積を増大せしめ、それに加え、横方向に延びる横堰31を設けたマットである(
図12)。試料6は、試料5同様にダストの舞い上がりが多くみられた。これは単位面積当たりの突起部2の頂面20が過大であり、頂面20が靴裏と接触することと、空間部6の底部の面積が過小であるため、空間部6にダストが収容しきれないことから、横堰31がその機能を発揮せず、ダストが多く飛散したと思われる。
【0087】
試料7は突起部2の頂面20の面積を増大し、突起部2間に横方向に延びる横堰31を設けたマットである(
図13)。試料7は、試料6と同様にダストの飛散が多く見られた。試料7は、試料6と同様に、突起部2の頂面20の面積が過大であり、マットと靴裏と接触する面積がある限界を超えて大きいために、靴裏とマット間の圧着摩擦、剥離摩擦が多大となるためであると考えられる。
【0088】
試料2,5,6,7と同形状で堰の延び方向を縦方向としたマットについても同様の評価を実施した。縦堰を設けた場合にも、横堰を設けた場合と同様の結果となった。また、突起部の頂面の面積を2mm
2未満とした場合についても評価を実施したが、強度不足であり、使用に耐えなかった。
【0089】
床マットの平面方向の100mm×100mm面積当たりの突起部の頂面の面積の総和は500〜6000mm
2であることで、ダスト飛散防止効果が高くなることがわかった。また、各突起部の頂面の面積は2mm
2以上25mm
2以下であることで、ダスト飛散防止効果が高くなることがわかった。
【0090】
・実施例2の考察
比較試料C2の塩化ビニル製床マットは、実施例1の比較試料C1と同様にマット表面形状がフラットであり、ダスト飛散に関してもC1と同様であった。
【0091】
試料8,9はどちらも塩化ビニルで作製した床マットであり、実施例1の試料1と同形状である。試料9は帯電防止材を添加することにより、試料8よりも表面抵抗率を低減させたものである。試料8,9の床マットのどちらも、ダスト飛散防止効果に有意差はみられなかった。
【0092】
このことから、床マットの表面抵抗率の大小は床マットの形状の差異によるダスト飛散量の変化程、影響しないことがわかった。