(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のバットのうち、打者により対象物に対してスイングされた、互いに慣性モーメントが異なる少なくとも2本以上のバットの各々について、前記打者のスイングに関するスイングパラメータ値の入力を受け付けるように構成されたパラメータ入力部と、
前記パラメータ入力部によって受け付けられた各前記スイングパラメータ値に基づいて、前記複数のバットの各々に対応する前記スイングパラメータ値を推定するように構成された推定部と、
前記複数のバットの各々について、当該バットに対応する前記推定されたスイングパラメータ値に基づいて、スイングした前記打者に適するバットを前記複数のバットから選択するための指標を示す指標パラメータ値を算出し、前記算出された指標パラメータ値に基づいて、前記打者に適するバットを前記複数のバットから選択するように構成された選択部とを備え、
前記スイングパラメータ値は、バット上の前記対象物の打撃位置と、バットによって前記対象物が打撃される直前での前記打撃位置におけるスイング速度とを含み、
前記選択部は、前記複数のバットの各々について、当該バットに対応する前記打撃位置および前記スイング速度に基づいて、当該バットによって打撃された前記対象物の打撃直後の速度を算出し、前記複数のバットのうち、前記算出された速度が最大となるバットを前記打者に適するバットとして選択するように構成されている、バット選択装置。
前記打者の年齢および身体的特徴の少なくともいずれかを含む打者情報と、前記打者にスイングさせるバットを選定するための選定基準情報とを関連付けて格納するように構成された基準情報格納部と、
前記打者情報の入力を受け付けるように構成された打者情報入力部と、
前記打者情報入力部によって受け付けられた打者情報と、前記選定基準情報とに基づいて、前記打者にスイングさせる候補となるバットであって、互いに慣性モーメントが異なる少なくとも2本以上のバットを前記複数のバットから選定するように構成された候補選定部とをさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバット選択装置。
複数のバットのうち、打者によりスイングされた、互いに慣性モーメントが異なる少なくとも2本以上のバットの各々について、前記打者のスイングに関するスイングパラメータ値の入力を受け付けるように構成されたパラメータ入力部と、
前記パラメータ入力部によって受け付けられた各前記スイングパラメータ値に基づいて、前記複数のバットの各々に対応する前記スイングパラメータ値を推定するように構成された推定部と、
前記複数のバットの各々について、当該バット上の予め定められた位置と、当該バットに対応する前記推定されたスイングパラメータ値とに基づいて、スイングした前記打者に適するバットを前記複数のバットから選択するための指標を示す指標パラメータ値を算出し、前記算出された指標パラメータ値に基づいて、前記打者に適するバットを前記複数のバットから選択するように構成された選択部とを備え、
前記スイングパラメータ値は、前記打者のスイング速度であり、
前記推定部は、スイングされた前記少なくとも2本以上のバットの各々について、前記スイング速度を当該バットのグリップ端部を中心とした角速度に変換し、慣性モーメントと前記角速度との関係式を求め、前記求められた関係式と前記複数のバットの慣性モーメントとに基づいて、前記複数のバットの各々に対応するスイング速度を推定するように構成されている、バット選択装置。
複数のバットのうち、打者により対象物に対してスイングされた、互いに慣性モーメントが異なる少なくとも2本以上のバットの各々について、前記打者のスイングに関するスイングパラメータ値の入力を受け付けるステップと、
前記受け付けられた各前記スイングパラメータ値に基づいて、前記複数のバットの各々に対応する前記スイングパラメータ値を推定するステップと、
前記複数のバットの各々について、当該バットに対応する前記推定されたスイングパラメータ値に基づいて、スイングした前記打者に適するバットを前記複数のバットから選択するための指標を示す指標パラメータ値を算出し、前記算出された指標パラメータ値に基づいて、前記打者に適するバットを前記複数のバットから選択するステップとを含み、
前記スイングパラメータ値は、バット上の前記対象物の打撃位置と、バットによって前記対象物が打撃される直前での前記打撃位置におけるスイング速度とを含み、
前記選択するステップは、前記複数のバットの各々について、当該バットに対応する前記打撃位置および前記スイング速度に基づいて、当該バットによって打撃された前記対象物の打撃直後の速度を算出し、前記複数のバットのうち、前記算出された速度が最大となるバットを前記打者に適するバットとして選択することを含む、バット選択方法。
複数のバットのうち、打者により対象物に対してスイングされた、互いに慣性モーメントが異なる少なくとも2本以上のバットの各々について、前記打者のスイングに関するスイングパラメータ値の入力を受け付けるように構成されたパラメータ入力部と、
前記パラメータ入力部によって受け付けられた各前記スイングパラメータ値に基づいて、前記複数のバットのうちスイングされた前記少なくとも2本以上のバット以外の残りのバットに対応する前記スイングパラメータ値を推定するように構成された推定部と、
前記複数のバットの各々について、前記受け付けられた各前記スイングパラメータ値と、前記推定されたスイングパラメータ値とに基づいて、スイングした前記打者に適するバットを前記複数のバットから選択するための指標を示す指標パラメータ値を算出し、前記算出された指標パラメータ値に基づいて、前記複数のバットから前記打者に適するバットを選択するように構成された選択部とを備え、
前記スイングパラメータ値は、バット上の前記対象物の打撃位置と、バットによって前記対象物が打撃される直前での前記打撃位置におけるスイング速度とを含み、
前記選択部は、前記複数のバットの各々について、当該バットに対応する前記打撃位置および前記スイング速度に基づいて、当該バットによって打撃された前記対象物の打撃直後の速度を算出し、前記複数のバットのうち、前記算出された速度が最大となるバットを前記打者に適するバットとして選択するように構成されている、バット選択装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0030】
以下の説明では、実施の形態に従うバット選択装置がノートPC(Personal Computer)である場合について説明する。バット選択装置は、種類を問わず任意の装置として実現可能である。例えば、バット選択装置は、デスクトップPC、タブレット端末装置、PDA(Personal Digital Assistance)、スマートフォンなどとして実現することもできる。
【0031】
<ハードウェア構成>
まず、
図1を参照して、本実施の形態に従うバット選択装置10のハードウェア構成について説明する。
図1は、本実施の形態に従うバット選択装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0032】
図1に示されるように、バット選択装置10は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)100と、メモリ110と、入力装置120と、ディスプレイ130と、通信インターフェイス(I/F)140と、メモリインターフェイス(I/F)150とを含む。
【0033】
CPU100は、メモリ110に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、バット選択装置10の各部の動作を制御する。より詳細には、CPU100は、当該プログラムを実行することによって、後述するバット選択装置10の処理(ステップ)の各々を実現する。CPU100は、例えば、マイクロプロセッサである。なお、CPU100は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific
Integrated Circuit)およびその他の演算機能を有する回路などであってもよい。
【0034】
メモリ110は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、ハードディスクなどによって実現される。メモリ110は、CPU100によって実行されるプログラム、またはCPU100によって用いられるデータなどを記憶する。
【0035】
入力装置120は、バット選択装置10に対する操作入力を受け付ける。入力装置120は、例えば、キーボード、ボタン、マウスなどによって実現される。また、入力装置120は、タッチパネルとして実現されていてもよい。
【0036】
ディスプレイ130は、CPU100からの信号に基づいて、表示画面に画像、テキスト、その他の情報を表示する。例えば、CPU100は、打者に適するバットに関する情報をディスプレイ130に表示する。
【0037】
通信インターフェイス(I/F)140は、バット選択装置10と外部装置との間で各種データをやり取りするための通信インターフェイスである。なお、通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)などによる無線通信であってもよいし、USB(Universal Serial Bus)などを利用した有線通信であってもよい。
【0038】
メモリインターフェイス(I/F)150は、外部の記憶媒体152からデータを読み出す。より具体的には、CPU100は、メモリインターフェイス150を介して外部の記憶媒体152に格納されているデータを読み出して、当該データをメモリ110に格納する。CPU100は、メモリ110からデータを読み出して、メモリインターフェイス150を介して当該データを外部の記憶媒体152に格納する。
【0039】
なお、記憶媒体152としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカード、FD(Flexible Disk)、ハードディスク、磁気テープ、カセットテープ、MO(Magnetic Optical Disc)、MD(Mini Disc)、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを除く)、光カード、EPROM、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの、不揮発的にプログラムを格納する媒体が挙げられる。
【0040】
<動作概要>
次に、本実施の形態に従うバット選択装置10の動作概要について説明する。
【0041】
(用意されたバットについて)
バット選択装置10は、予め用意(準備)された複数のバットのスペック情報をメモリ110に格納している。スペック情報は、例えば、バットの長さ(全長)、慣性モーメント(MOI)、重さなどである。例えば、予め用意された複数のバットとは、バットを販売する店舗で用意されたバットである。
【0042】
図2は、本実施の形態に従う予め用意された複数のバットにおいて長さおよび慣性モーメントの関係を示す図である。
【0043】
図2を参照して、No.1〜No.3のバットは、それぞれ長さが32インチであり、互いに慣性モーメントが異なる。同様に、No.4〜No.6のバットは、それぞれ長さが33インチであり、互いに慣性モーメントが異なり、No.7〜No.9のバットは、それぞれ長さが34インチであり、互いに慣性モーメントが異なる。
【0044】
以下、本実施の形態の具体例として、上記のNo.1〜No.9の9本のバットが予め用意され、バット選択装置10のメモリ110には、当該9本のバットのスペック情報が格納されている場合について説明する。
【0045】
(スイングするバットの選定)
まず、バット選択装置10は、上記9本のバットのうち、打者にスイングさせる候補となるバットを選定する。より具体的には、バット選択装置10は、入力装置120を介して、打者の名前、年齢の入力を受け付ける。バット選択装置10は、入力された年齢に応じて、用意された複数のバット(本例では上記9本のバット)のうち、打者にスイングさせる少なくとも2本以上のバット(本例では3本のバットとする。)を選定する。このとき、選定される3本のバットは、少なくとも互いに慣性モーメントが異なるバットである。なお、バット選択装置10のメモリ110には、打者にスイングさせるバットの選定基準情報が年齢に関連付けられて格納されている。ここでは、バット選択装置10が、バットの長さおよび慣性モーメントが互いに異なる、No.2、No.5、およびNo.8のバットを選定するものとする。
【0046】
(スイングパラメータ値の入力)
次に、バット選択装置10は、選定された3本のバットの各々について、打者のスイングに関するスイングパラメータ値の入力を受け付ける。ここでは、バット選択装置10は、スイングパラメータ値として、バット上のボールの打撃位置と、バットによってボールが打撃される直前での当該打撃位置におけるスイング速度との入力を受け付ける。
【0047】
より具体的には、まず、打者は、選定された3本のバットの各々について、ボールに対して複数回(ここでは、3回とする。)スイングする。例えば、打者は、
図3Aに示すようなティーバッティングを行なう。打者に複数回スイングしてもらう理由は、打者のスイングに関する能力の平均値をとるためである。したがって、必ずしも複数回のスイングは必要ない。
【0048】
図3Aは、本実施の形態に従う打者がスイング速度測定装置20の近傍でスイングしている状況を示す図である。
図3Bは、本実施の形態に従うスイング速度測定装置20に含まれる光センサ23とティー24との位置関係を示す図である。
【0049】
図3Aに示すように、本実施の形態に従うスイング速度測定装置20は、支柱21と、センサ取付部22と、光センサ23と、ティー24とを含む。スイング速度測定装置20は、光センサ23が発する2つの光線の間をバットが通過する時間を算出することで、スイング速度を求めることができる。なお、ボール25の打撃位置直前におけるスイング速度を算出するために、ティー24の近傍に光センサ23が配置される。より具体的には、
図3Bに示すように、たとえば、ティー24は、光センサ23との間の水平方向の距離が50mm程度になるように配置される。なお、スイング速度測定装置20は、公知の装置によって実現される。例えば、スイング速度測定装置20は、株式会社ミヤマエ製「Speed Checker」である。
【0050】
打者が、ティー24の上に配置されたボール25に対してバットをスイングすると、当該バットでボール25が打撃された際にできた打痕によって、バット上でのボール25の打撃位置が測定される。なお、測定者が、打痕を確認できるように、バットには、カラースプレー等が塗布されている。打撃位置の測定は、測定者が打痕を確認できるものであれば上記方法に限られない。例えば、バットでペイントボールが打撃される際にできた打痕によって、当該打撃位置が測定されてもよい。また、コストおよび利便性を考慮して、可逆性のピエゾクロミズムを示す物質をバットに塗布して、打痕が確認される構成が用いられてもよい。
【0051】
また、スイング速度測定装置20は、ボール25がバットで打撃される直前での打撃位置におけるスイング速度を測定および算出する。スイング速度の算出結果は、例えば、図示しない表示部に表示される。なお、スイング速度測定装置20の周辺には、ボール25が飛び出すのを防止する保護ネットが設置されていてもよい。
【0052】
バット選択装置10は、入力装置120を介して、上記のように測定されたスイング速度および打撃位置を示す情報の入力を受け付ける。バット選択装置10は、3本のバットの各々について、スイングパラメータ値をメモリ110に一時的または不揮発的に格納する。
【0053】
(打者固有のスイングパラメータ値の推定)
次に、バット選択装置10は、入力を受け付けた3本のバットのスイングパラメータ値に基づいて、予め用意された9本のバットの各々について、打者のスイングに関するスイングパラメータ値を推定する。以下では、スイングパラメータ値として、バット選択装置10が、バット上の対象物の打撃位置と、バットによって対象物が打撃される直前での当該打撃位置におけるスイング速度とを推定する場合について説明する。
【0054】
(打撃位置の推定)
まず、バット選択装置10が、9本のバットの各々について、バット上のボール25の打撃位置を推定する推定方式について説明する。バット選択装置10は、スイングされた3本のバットの各々について、当該バットの全長に対する、当該バットの一端から打撃位置までの長さの割合(以下、「打撃位置割合」ともいう。)を算出する。次に、バット選択装置10は、スイングされた3本のバットの打撃位置割合の平均値を算出する。そして、バット選択装置10は、当該算出された打撃位置割合の平均値と9本のバットの各々の全長とに基づいて、9本のバットの各々の打撃位置を推定する。以下に、このように推定できる理由について
図4および5を参照して説明する。
【0055】
まず、
図4を参照しながら、上記の打撃位置割合について具体的に説明する。
図4は、本実施の形態に従う打撃位置割合を説明するための図である。
【0056】
図4では、一人のソフトボール選手における、32インチ〜34インチの各々のバットでの打撃位置および打撃位置割合の計測結果が示されている。なお、
図4に示された打撃位置および打撃位置割合の計測結果は、当該ソフトボール選手が3回スイングしたときの平均値である。
【0057】
図4を参照すると、当該ソフトボール選手は、32インチのバット(全長:813mm)をスイングしたとき、バットのグリップ側の一端から657mmの位置でボールを打撃したことがわかる。そのため、当該ソフトボール選手における、32インチのバットでの打撃位置割合は、80.8%となる。同様に、当該ソフトボール選手における、33インチのバット、および34インチのバットでの打撃位置割合は、それぞれ80.7%、79.7%となる。このことから、当該ソフトボール選手においては、バットの長さによらず打撃位置割合は、ほぼ同じ値を示していることがわかる。
【0058】
次に、
図5を参照して、30人のソフトボール選手に対して、
図4で説明した計測と同様の計測を行なった結果について説明する。
【0059】
図5は、複数のソフトボール選手の各々についての打撃位置割合を示した図である。
図5では、棒グラフで示される打撃位置割合は、各選手の32インチ、33インチ、および34インチのそれぞれ3本の計9本のバットにおける打撃位置割合の平均値を示している。また、3本のバットにおける打撃位置割合の誤差範囲として、標準偏差を誤差棒(エラーバー)に表している。
【0060】
図5から明らかなように、打撃位置割合は各選手によって異なるが、各選手とも打撃位置割合の誤差範囲は小さいことがわかる。このことから、打撃位置割合は、バットの長さによらず各選手に固有であると推定される。例えば、選手5については、打撃位置割合が30人の選手の中で最も小さいことから、バットの最もグリップ側でボールを打つ傾向があるといえる。一方、選手12については、打撃位置割合が30人の選手の中で最も大きいことから、バットの最もヘッド側でボールを打つ傾向があるといえる。
【0061】
以上より、バット選択装置10は、スイングされた3本のバットから打者に固有の打撃位置割合を算出し、予め用意された9本のバットの各々の全長に、当該算出した打撃位置割合を掛け合わせることで当該9本のバットの打撃位置を推定する。
【0062】
(スイング速度の推定)
次に、バット選択装置10が、予め用意された9本のバットの各々について、バットのスイング速度を推定する推定方式について説明する。バット選択装置10は、スイングされた3本のバットの各々について、打撃位置でのスイング速度をグリップ端部を中心とした角速度に変換する。バット選択装置10は、慣性モーメントと当該角速度との関係式(相関)を求める。バット選択装置10は、求められた関係式と9本のバットの慣性モーメントとに基づいて、9本のバットの各々について、対応する打者のスイング速度を推定する。なお、一般的に、バットの慣性モーメントが大きくなるにつれて、打者のスイング速度は低下していくことが知られている。ただし、打者によって、当該スイング速度の低下の仕方は様々であるため、打者ごとに慣性モーメントと角速度との関係式を求める必要がある。以下に、
図6を参照しながら当該推定方式について説明する。
【0063】
図6は、本実施の形態に従うバットの慣性モーメントと打撃直前でのグリップ端部を中心とした角速度との関係を示す図である。バット選択装置10は、バットの長さが異なることを考慮して、測定された打撃位置でのスイング速度Vをグリップ端部を中心とした角速度ω(なお、以下の説明では、グリップ端部を中心とした角速度を単に「角速度」ともいう。)に変換する。より具体的には、バット選択装置10は、グリップ側の一端から打撃位置までの距離をdとすると、ω=V/dとして変換する。バット選択装置10は、変換された角速度ωと慣性モーメントIとの関係式を求めることで(傾きをa、切片をbとすると、ω=a×I+b)、より精度良くスイング速度を推定することができる。より具体的には、推定スイング速度をVx、上述の方式で推定された推定打撃位置をdxとすると、Vx=dx×ωとして算出される。
【0064】
図6に示されるように、選手Aおよび選手Bともに、バットの慣性モーメントが大きくなるにつれて、角速度が低下していることがわかる。ただし、選手Aよりも選手Bの方が、スイング速度が慣性モーメントに影響されにくいことがわかる。
図6のグラフから慣性モーメントと角速度との関係式(回帰式)が求められる。
【0065】
以上より、バット選択装置10は、求められた関係式(回帰式)と、9本のバットの慣性モーメントとに基づいて、9本のバットの各々について、打者のスイング速度を推定することができる。
【0066】
(ボールの打ち出し速度の算出)
次に、バット選択装置10は、打撃位置と、当該打撃位置でのスイング速度とに基づいて、バットによって打撃されるボールの打撃直後の速度(ボール打ち出し速度)を算出する。より具体的には、まず、バット選択装置10は、
図7に示すような数式に基づいて、打撃位置でのバットの換算質量を算出する。
【0067】
図7は、本実施の形態に従うバット選択装置10の解析に用いられるバットの換算質量を説明するための図である。
【0068】
図7を参照して、換算質量Mは、バットの質量m
1と、バットの重心位置から打撃位置までの距離rと、バット重心回りの慣性モーメントIcgによって求められる。ここで、バットの質量m
1、バットの重心位置、およびバット重心回りの慣性モーメントIcgは、バットごとに固有のスペック情報である。したがって、バット選択装置10は、上述した方式で打撃位置を算出することで、換算質量Mを算出することができる。
【0069】
次に、バット選択装置10は、
図8に示すような数式に基づいて、ボールの打ち出し速度を算出する。
【0070】
図8は、本実施の形態に従うバット選択装置10の解析に用いられるボールの打ち出し速度を説明するための図である。
【0071】
図8を参照して、ボールの打ち出し速度Vоutは、換算質量Mと、バットの反発係数(COR)と、ボールの質量m
2と、スイング速度Vsと、ピッチング速度Vinとによって算出される。ここで、換算質量Mは、
図7で説明したような方式で算出される。また、ボールの質量m
2は、ボールごとに固有のスペック情報であり、バットの反発係数(COR)は、バットごとに固有のスペック情報である。また、本例では、打者は、ティーバッティングを行なっているため、ピッチング速度Vinは0である。したがって、バット選択装置10は、上述した方式でスイング速度を算出することで、用意された9本のバット全てについてボールの打ち出し速度Vоutを算出することができる。なお、ピッチング速度Vinには、打者の能力に合わせて、実際の投球速度、あるいは仮定した投球速度が代入されてもよい。
【0072】
なお、バットの反発係数(COR)は、バットの長手方向のCOR測定値を用いることで、ボール打ち出し速度Vоutの算出精度が上がる。CORは、例えば、ASTM(American Society of Testing and Materials)規格第F2219号に従って測定される。
【0073】
(バットの選択および結果表示)
次に、バット選択装置10は、用意された9本のバットのうち、算出されたボールの打ち出し速度が最大となるバットを打者に最も適するバットとして選択する。そして、バット選択装置10は、選択されたバットに関する情報(バット情報、ボール打ち出し速度など)をディスプレイ130に表示する。
【0074】
図9は、本実施の形態に従うボール打ち出し速度の計算値とボールの実測飛距離との関係を示す図である。
図9を参照して、バット選択装置10によって算出されたボール打ち出し速度Vоutは、ボール飛距離の実測値ともかなり高い相関を示している。バット選択装置10は、ボールの打ち出し速度に基づいて置き換えられたボールの飛距離をディスプレイ130に表示してもよい。
【0075】
<機能構成>
次に、
図10を参照して、上述のような本実施の形態に従うバット選択装置10を実現するための機能構成について説明する。
図10は、本実施の形態に従うバット選択装置10の機能ブロック図である。
【0076】
図10に示されるように、バット選択装置10は、主たる機能構成として、スペック情報格納部210と、基準情報格納部220と、パラメータ入力部230と、推定部240と、選択部250と、打者情報入力部260と、候補選定部270と、表示制御部280とを含む。パラメータ入力部230と、推定部240と、選択部250と、打者情報入力部260と、候補選定部270と、表示制御部280とは、基本的には、バット選択装置10のCPU100がメモリ110に格納されたプログラムを実行し、バット選択装置10の構成要素へ指令を与えることなどによって実現される。すなわち、CPU100はバット選択装置10の動作全体を制御する制御部として機能する。また、スペック情報格納部210と、基準情報格納部220とは、メモリ110で実現される。なお、これらの機能構成の一部または全部は、ハードウェアで実現されていてもよい。
【0077】
スペック情報格納部210は、予め用意された複数のバットのスペック情報(重さ、長さ、慣性モーメントなど)を格納する。基準情報格納部220は、打者の年齢および身体的特徴の少なくともいずれかを含む打者情報と、打者にスイングさせるバットを選定するための選定基準情報とを関連付けて格納する。打者の身体的特徴は、例えば、打者の身長、体重などである。
【0078】
パラメータ入力部230は、予め用意された複数のバットのうち、打者により対象物に対してスイングされた、互いに慣性モーメントが異なる少なくとも2本以上のバットの各々について、打者のスイングに関するスイングパラメータ値の入力を受け付ける。より具体的には、パラメータ入力部230は、入力装置120を介して、各スイングパラメータ値の入力を受け付ける。なお、パラメータ入力部230は、通信インターフェイス140を介して、外部装置から各スイングパラメータ値の入力を受け付ける構成であってもよい。例えば、外部装置は、スイング速度測定装置20である。パラメータ入力部230は、入力を受け付けたスイングパラメータ値を推定部240および選択部250に送出する。また、パラメータ入力部230は、入力を受け付けたスイングパラメータ値をメモリ110に格納してもよい。なお、スイングパラメータ値は、バット上の対象物の打撃位置と、バットによって対象物が打撃される直前での当該打撃位置におけるスイング速度とを含む。
【0079】
推定部240は、パラメータ入力部230によって受け付けられた各スイングパラメータ値に基づいて、複数のバットの各々に対応するスイングパラメータ値を推定する。より具体的には、推定部240は、スイングされた少なくとも2本以上のバットの各々について、当該バットの全長に対する、当該バットの一端から打撃位置までの長さの割合を算出し、算出された割合と複数のバットの全長とに基づいて、複数のバットの各々に対応する打撃位置を推定する。さらに詳細には、推定部240は、複数のバットの各々の全長に当該算出された割合を掛け合わせて、複数のバットの各々について、バット上の対象物の打撃位置を推定する。
【0080】
また、推定部240は、スイングされた少なくとも2本以上のバットの各々について、スイング速度をグリップ端部を中心とする角速度に変換する。推定部240は、慣性モーメントおよび当該角速度の関係式を求め、求められた関係式と複数のバットの慣性モーメントとに基づいて、複数のバットの各々に対応するスイング速度を推定する。推定部240は、推定されたスイングパラメータ値を選択部250に送出する。なお、推定部240は、スペック情報格納部210を参照して、各々のバットのスペック(全長、慣性モーメント)を知ることができる。
【0081】
選択部250は、複数のバットの各々について、推定部240によって推定された当該バットに対応するスイングパラメータ値に基づいて、スイングした打者に適するバットを複数のバットから選択するための指標となる指標パラメータ値を算出する。指標パラメータ値は、当該バットによって打撃される対象物の打撃直後のボール打ち出し速度、またはボールの飛距離を含む。ボールの飛距離は、ボール打ち出し速度に基づいて算出される。選択部250は、当該算出された指標パラメータ値に基づいて、予め用意された複数のバットから、打者に適するバットを選択する。より具体的には、選択部250は、複数のバットの各々について、当該バットに対応する打撃位置およびスイング速度に基づいて、当該バットによって打撃される対象物の打撃直後のボール打ち出し速度を算出する。そして、選択部250は、複数のバットのうち、算出された速度が最大となるバットを打者に適するバットとして選択する。選択部250は、指標パラメータ値としてボールの飛距離を算出した場合には、複数のバットのうち、算出された飛距離が最大となるバットを打者に適するバットとして選択する。
【0082】
打者情報入力部260は、入力装置120を介して、打者情報の入力を受け付ける。
候補選定部270は、打者情報入力部260によって受け付けられた打者情報と、選定基準情報とに基づいて、複数のバットから打者にスイングさせる候補となるバットであって、互いに慣性モーメントが異なる少なくとも2本以上のバットを選定する。好ましくは、候補選定部270は、バットの長さ(または重さ)と慣性モーメントとが互いに異なるバットを選定する。例えば、候補選定部270は、選定基準情報に基づいて、打者の年齢が13歳未満の場合には、31インチ〜33インチのバットの中から互いに慣性モーメントが異なるバットを選定し、打者の年齢が13歳以上の場合には、32インチ〜34インチのバットの中から互いに慣性モーメントが異なるバットを選定する。なお、候補選定部270は、選定基準情報が打者の身長などの身体的特徴に関連付けられている場合には、入力を受け付けた打者の身体的特徴に基づいて、バットを選定してもよい。
【0083】
表示制御部280は、選択部250により選択されたバットをディスプレイ130に表示させる。また、表示制御部280は、選択されたバットで打撃されるボールの打ち出し速度の算出結果をディスプレイ130に表示してもよい。
【0084】
<処理手順>
次に、
図11、
図12および
図13を参照しながら、本実施の形態に従うバット選択装置10の処理手順について説明する。
【0085】
図11は、本実施の形態に従うバット選択装置10の処理手順を示すフローチャートである。以下の各ステップは、CPU100がメモリ110に格納されたプログラムを実行することによって実現される。なお、メモリ110は、予め用意された複数のバットのスペック情報を格納しているものとする。
【0086】
図11を参照して、CPU100は、必要な情報の入力を受け付けるための入力画面(ユーザインターフェイス画面500)をディスプレイ130に表示する(ステップS100)。
【0087】
図12は、本実施の形態に従うバット選択装置10が提供するユーザインターフェイス画面500である。
図12を参照して、ユーザインターフェイス画面500は、打者情報の表示領域510と、打者にスイングさせるバット情報の表示領域520と、スイングに関するスイングパラメータ値の表示領域530と、ピッチングスピードの表示領域540と、分析を開始するためのボタン550とを含む。なお、
図12では、表示領域510〜表示領域540に、それぞれ対応する情報がすでに表示されている画面例が示されている。
【0088】
図11を再び参照して、CPU100は、入力装置120を介して、打者情報の入力を受け付けたか否かを判断する(ステップS101)。CPU100は、打者情報の入力を受け付けていないと判断した場合には(ステップS101においてNO)、ステップS101の処理を繰り返す。
【0089】
これに対して、CPU100は、打者情報の入力を受け付けたと判断した場合には(ステップS101においてYES)、ステップS102の処理に進む。このとき、CPU100は、表示領域510に入力を受け付けた打者情報(本例では、名前、年齢、および所属チーム名)を表示する。
【0090】
CPU100は、メモリ110にスペック情報が格納されている、用意された複数のバットから、打者にスイングさせるバットを選定する(ステップS102)。より具体的には、CPU100は、入力された打者の年齢と、年齢に関連付けられた選定基準情報とに基づいて、互いに慣性モーメントが異なる少なくとも2本以上のバットを用意された複数のバットから選定する。このとき、CPU100は、選定されたバット情報(本例では、32インチ、33インチ、34インチのバット情報)を表示領域520に表示する。なお、バット情報に含まれる(−9)との表記は、バットの重さを示しており、例えば、32インチのバットであれば、重さが23オンスであることを示している。
【0091】
CPU100は、選定されたバットの各々について、打者のスイングに関するスイングパラメータ値の入力を受け付けたか否かを判断する(ステップS103)。より具体的には、CPU100は、入力装置120を介して、選定されたバットの各々に対応するスイングパラメータ値の入力を受け付けたか否かを判断する。あるいは、CPU100は、外部装置から通信インターフェイス140を介して、選定されたバットの各々に対応するスイングパラメータ値の入力を受け付けたか(スイングパラメータ値を受信したか)否かを判断する。
【0092】
CPU100は、スイングパラメータ値の入力を受け付けていない場合には(ステップS103においてNO)、ステップS103の処理を繰り返す。これに対して、CPU100は、スイングパラメータ値の入力を受け付けた場合には(ステップS103においてYES)、ステップS104の処理に進む。このとき、CPU100は、表示領域530に選定されたバットの各々に対応するスイングパラメータ値(スイング速度、および打撃位置)を表示する。
【0093】
CPU100は、バット選択装置10に対する操作に基づいて、打者に適するバットを選択するための分析を開始するか否かを判断する(ステップS104)。より具体的には、CPU100は、入力装置120を介して、分析開始の指示を受け付けたか否かを判断する。例えば、CPU100は、分析開始を示すボタン550が選択されたか否かに基づいて当該判断を行なう。CPU100は、分析を開始しない場合には(ステップS104においてNO)、ステップS104の処理を繰り返す。これに対して、CPU100は、分析を開始する場合には(ステップS104においてYES)、ステップS105の処理に進む。
【0094】
CPU100は、選定されたバットに対応するスイングパラメータ値に基づいて、複数のバットの各々に対応するスイングパラメータ値を推定するための準備を行なう(ステップS105)。より具体的には、CPU100は、入力された打撃位置に基づいて、打撃位置割合の平均値を算出する。また、CPU100は、入力された打撃位置でのスイング速度に基づいて、当該スイング速度を角速度に変換し、慣性モーメントと当該角速度との関係式を求める(回帰式を求める)。
【0095】
CPU100は、複数のバットの各々に対応するスイングパラメータ値を推定する(ステップS106)。より具体的には、CPU100は、算出された打撃位置割合の平均値と複数のバットの各々の全長とに基づいて、複数のバットの各々に対応する打撃位置を推定する。また、CPU100は、求められた慣性モーメントと当該角速度との関係式と、複数のバットの慣性モーメントとに基づいて、複数のバットの各々に対応するスイング速度を推定する。
【0096】
次に、CPU100は、複数のバットの各々について、当該バットに対応する打撃位置およびスイング速度に基づいて、当該バットで打撃されるボールの打ち出し速度を算出する(ステップS107)。CPU100は、複数のバットのうち、算出されたボール打ち出し速度が最大となるバットを打者に適するバットとして選択する(ステップS108)。
【0097】
ここで、算出されたボール打ち出し速度は、対象物とバットとの直衝突(対象物が打撃される直前のバット円管中心の進行方向が対象物中心に向かっている状態での衝突)を仮定して算出されている。しかし、実際には、スイング時のスイング速度や打撃位置のバラツキが大きいプレーヤー、スイング速度の遅いプレーヤーなどの、いわゆるスイングスキルの低いプレーヤーについては、直衝突する確率(ミート率)が低くなる。このようなスイングスキルの低いプレーヤーが、MOIの大きいバットをスイングする場合には、スイング時間をより長く要したり、ミート率が下がったりすることが想定される。そのため、スイングスキルの低いプレーヤーがMOIの大きなバットを使用する場合には、CPU100は、
図8に示す数式の反発係数CORの値を小さく補正してボール打ち出し速度を算出してもよい。たとえば、MOIが大きなバットを使用すると空振りをするプレーヤーの場合には、CPU100は、反発係数COR値に0を乗じ、ボールの打ち出し速度Vоutを0と出力するようにしてもよい。このことから、反発係数CORを補正する値としては、0から1までの値が想定される。
【0098】
CPU100は、出力結果を表示する(ステップS109)。より具体的には、CPU100は、
図13に示すようなユーザインターフェイス画面600を表示する。
【0099】
図13は、本実施の形態に従うバット選択装置10が提供する他のユーザインターフェイス画面である。
図13を参照して、ユーザインターフェイス画面600は、打者に最も適するバットに関する情報の表示領域610と、2番目に適するバットに関する情報の表示領域620と、3番目に適するバットに関する情報の表示領域630と、バットの長さと慣性モーメントとの関係を示すグラフ640とを含む。
【0100】
図11を再び参照して、CPU100は、出力結果のデータをメモリ110に保存する(ステップS110)。そして、CPU100は、処理を終了する。
【0101】
<計算手順の詳細>
図14および
図15を参照して、予め用意された複数のバットの具体的なスペック情報を用いて、本実施の形態に従うバット選択装置10が、複数のバットの各々のボール打ち出し速度を算出するまでの計算手順の詳細について説明する。
【0102】
図14は、本実施の形態に従うバット選択装置10において実行される計算手順を説明するための図である。
図15は、本実施の形態に従うバットの慣性モーメントと角速度との関係の他の例を示す図である。
【0103】
図14を参照して、メモリ110は、No.1〜No.9までのバットのスペック情報を格納している。これらのスペック情報は、例えば、予めバットを販売する店舗の店員などによって準備される(手順A)。
【0104】
バット選択装置10は、打者の年齢などから、打者にスイングさせるバットを選定し(No.2、No.5、およびNo.8のバット)、打者に選定された各々のバットについてスイングしてもらった結果として、各々のバットの打撃位置およびスイング速度の入力を受け付ける(手順B)。
【0105】
バット選択装置10は、各々のバットについて、当該バットに対応する打撃位置と全長とに基づいて打撃位置割合を算出し、当該バットに対応する打撃位置でのスイング速度を角速度に変換する(手順C)。
【0106】
バット選択装置10は、各々のバットの打撃位置割合の平均値(82.9%)を算出し、
図15に示される慣性モーメントおよび角速度の関係から、慣性モーメントおよび角速度の回帰式を求める(手順D)。
【0107】
バット選択装置10は、9本のバットの各々の全長に算出された打撃位置割合の平均値を掛け合わせて、各々のバットについて推定打撃位置を算出する。また、バット選択装置10は、9本のバットの各々の慣性モーメントと当該回帰式とに基づいて、各々のバットについて推定角速度を算出し、当該推定角速度を打撃位置でのスイング速度に変換しなおして推定スイング速度を算出する(手順E)。
【0108】
バット選択装置10は、推定打撃位置を
図7に示される式に代入して換算質量Mを求める。そして、バット選択装置10は、換算質量Mと推定スイング速度とを
図8に示される式に代入することで、各々のバットについて、ボールの打ち出し速度を算出する(手順F)。
【0109】
<他の局面>
上記では、バット選択装置10が、入力を受け付けたスイングパラメータ値に基づいて、予め用意された複数のバットの各々に対応するスイングパラメータ値を推定する場合について説明した。ここでは、他の局面として、バット選択装置10が、入力を受け付けたスイングパラメータ値に基づいて、複数のバットのうち、スイングされた少なくとも2本以上のバット以外の残りのバットに対応するスイングパラメータ値を推定する場合について説明する。なお、バット選択装置10のハードウェア構成は、
図1で示したハードウェア構成と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0110】
(機能構成)
図10を参照して、他の局面におけるバット選択装置10の機能構成について説明する。なお、スペック情報格納部210と、基準情報格納部220と、パラメータ入力部230と、打者情報入力部260と、候補選定部270と、表示制御部280とは、上述した機能構成と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0111】
推定部240は、パラメータ入力部230によって受け付けられた各スイングパラメータ値に基づいて、複数のバットのうちスイングされた少なくとも2本以上のバット以外の残りのバットに対応するスイングパラメータ値を推定する。より具体的には、推定部240は、スイングされた少なくとも2本以上のバットの各々について、当該バットの全長に対する、当該バットの一端から打撃位置までの長さの割合を算出し、算出された割合と残りのバットの全長とに基づいて、残りのバットの各々に対応する打撃位置を推定する。さらに詳細には、推定部240は、残りのバットの各々の全長に当該算出された割合を掛け合わせて、残りのバットについて、バット上の対象物の打撃位置を推定する。
【0112】
また、推定部240は、スイングされた少なくとも2本以上のバットの各々について、スイング速度をグリップ端部を中心とする角速度に変換する。推定部240は、慣性モーメントおよび当該角速度の関係式を求め、求められた関係式と残りのバットの慣性モーメントとに基づいて、残りのバットの各々に対応するスイング速度を推定する。推定部240は、推定されたスイングパラメータ値を選択部250に送出する。なお、推定部240は、スペック情報格納部210を参照して、各々のバットのスペック(全長、慣性モーメント)を知ることができる。
【0113】
選択部250は、複数のバットの各々について、当該受け付けられたスイングパラメータ値と、推定部240によって推定されたスイングパラメータ値とに基づいて、スイングした打者に適するバットを複数のバットから選択するための指標を示す指標パラメータ値を算出する。選択部250は、算出された指標パラメータ値に基づいて、複数のバットから打者に適するバットを選択する。より具体的には、選択部250は、スイングされた少なくとも2本以上のバットの各々について、パラメータ入力部230によって受け付けられた、当該バットに対応する打撃位置およびスイング速度に基づいて、当該バットによって打撃される対象物の打撃直後のボール打ち出し速度を算出する。また、選択部250は、残りのバットの各々について、推定部240によって推定された、当該バットに対応する打撃位置およびスイング速度に基づいて、ボール打ち出し速度を算出する。そして、選択部250は、複数のバットのうち、当該算出されたボール打ち出し速度が最大となるバットを打者に適するバットとして選択する。選択部250は、指標パラメータ値としてボールの飛距離を算出した場合には、複数のバットのうち、算出された飛距離が最大となるバットを打者に適するバットとして選択する。
【0114】
(処理手順)
次に、
図16を参照して、他の局面におけるバット選択装置10の処理手順について説明する。
【0115】
図16は、他の局面におけるバット選択装置10の処理手順を示すフローチャートである。以下の各ステップは、CPU100がメモリ110に格納されたプログラムを実行することによって実現される。なお、メモリ110は、予め用意された複数のバットのスペック情報を格納しているものとする。
【0116】
図16を参照して、ステップS200〜ステップS205までの処理は、それぞれ
図11のステップS100〜ステップS105までの処理と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0117】
CPU100は、残りのバットの各々に対応するスイングパラメータ値を推定するための準備を行ない(ステップS205)、残りのバットの各々に対応するスイングパラメータ値を推定する(ステップS206)。より具体的には、CPU100は、打撃位置割合の平均値と残りのバットの各々の全長とに基づいて、残りのバットの各々に対応する打撃位置を推定する。また、CPU100は、求められた慣性モーメントと角速度との関係式と、残りのバットの慣性モーメントとに基づいて、残りのバットの各々に対応するスイング速度を推定する。
【0118】
CPU100は、複数のバットの各々について、当該バットで打撃されるボールの打ち出し速度を算出する(ステップS207)。より具体的には、CPU100は、スイングされた少なくとも2本以上のバットの各々について、入力を受け付けた打撃位置およびスイング速度に基づいて、当該バットで打撃されるボールの打ち出し速度を算出する。また、CPU100は、残りのバットの各々について、推定された打撃位置およびスイング速度に基づいて、ボール打ち出し速度を算出する。すなわち、CPU100は、スイングされたバットについては、実測されたスイングパラメータ値に基づいてボール打ち出し速度を算出し、残りのバットについては、推定されたスイングパラメータ値に基づいてボール打ち出し速度を算出する。
【0119】
ステップS208〜ステップS210までの処理は、それぞれ
図11のステップS108〜ステップS110までの処理と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0120】
(計算手順の詳細)
次に、
図17を参照して、予め用意された複数のバットの具体的なスペック情報を用いて、他の局面におけるバット選択装置10が、複数のバットの各々のボール打ち出し速度を算出するまでの具体的な計算手順について説明する。
【0121】
図17は、他の局面においてバット選択装置10によって実行される計算手順を説明するための図である。なお、
図17の(手順A)〜(手順D)までの計算手順は、
図14の(手順A)〜(手順D)までの計算手順と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0122】
バット選択装置10は、スイングされていない残りの6本のバットの各々の全長に打撃位置割合の平均値を掛け合わせて、6本のバットの各々について推定打撃位置を算出する。また、バット選択装置10は、6本のバットの各々の慣性モーメントと回帰式とに基づいて、各々のバットについて推定角速度を算出し、当該推定角速度を打撃位置でのスイング速度に変換しなおして推定スイング速度を算出する(手順E)。
【0123】
バット選択装置10は、スイングされた3本のバットについては、入力(実測)された打撃位置および入力(実測)されたスイング速度を、それぞれ
図7および
図8に示される式に代入することで、各々のバットに対応するボール打ち出し速度を算出する。バット選択装置10は、スイングされていない残りの6本のバットについては、推定打撃位置および推定スイング速度を、それぞれ
図7および
図8に示される式に代入することで、各々のバットに対応するボール打ち出し速度を算出する(手順F)。
【0124】
<その他>
上記において、スイング速度測定装置20がバット選択装置10と通信するための通信インターフェイスを有する場合には、スイング速度測定装置20が測定したスイング速度をバット選択装置10に送信するように構成されていてもよい。このとき、バット選択装置10は、通信インターフェイス140を介して、当該送信されたスイング速度情報の入力を受け付ける。
【0125】
また、スイング速度測定装置20は、上述した打撃位置を測定するように構成されていてもよい。例えば、スイング速度測定装置20は、高速度カメラを設けており、バットがボールを打撃する様子を撮像可能に構成されている。そして、高速度カメラは、ティー24の真上に配置されて、ティー24に配置されているボール25をバットが打撃する直前を上方から撮像できるように構成されている。
【0126】
また、スイング速度測定装置は、上述した
図3Aおよび
図3Bに示すような構成に限られず、打撃位置におけるスイング速度を、バットの先端のスイング速度から換算して算出するように構成されていてもよい。この場合、スイング速度測定装置は、バットの先端のスイング速度を計測し、バット先端から打撃位置までの距離に基づいて、当該計測結果を換算して打撃位置におけるスイング速度を算出する。また、スイング速度は、グリップ端部に取り外し式のセンサ装置(加速度計およびジャイロセンサ)を取り付けて、当該センサ装置により計測される角速度に基づいて算出されてもよい。または、スイング速度は、打者の手甲に取り外し式のセンサ装置を取り付けて、当該センサ装置により計測される角速度に基づいて算出されてもよい。なお、グリップ端部に取り付けたセンサ装置で計測される角速度と、手甲に取り付けたセンサ装置で計測される角速度とは、バットと手甲の位置関係が打撃中に固定されると仮定した場合には同じである。この場合には、上述したスイングパラメータ値は、バット上のボールの打撃位置と、センサ装置により計測される角速度情報とを含む。
【0127】
具体的には、バット選択装置10(パラメータ入力部230)は、スイングされた少なくとも2本以上(たとえば、3本)のバットの各々に対応する当該打撃位置および当該角速度情報の入力を受け付ける。
【0128】
続いて、バット選択装置10(推定部240)は、受け付けた各々の打撃位置および角速度情報に基づいて、予め用意された複数(たとえば、9本)のバットの各々に対応する打撃位置およびスイング速度を推定する。具体的には、バット選択装置(推定部240)は、スイングされた3本のバットから打者に固有の打撃位置割合を算出し、9本のバットの各々の全長に、当該算出した打撃位置割合を掛け合わせて当該9本のバットの打撃位置を推定する。また、バット選択装置10(推定部240)は、受け付けた各々の角速度と慣性モーメントとの関係式を求め(
図6参照)、求められた関係式と9本のバットの慣性モーメントとに基づいて、9本のバットの各々に対応するスイング速度を推定する。すなわち、バット選択装置10は、センサ装置により直接測定された角速度と、推定打撃位置とを用いてスイング速度を推定するため、スイング速度が測定される場合と比較して、スイング速度から角速度への変換処理が不要となる。
【0129】
そして、バット選択装置10(選択部250)は、9本のバットの各々について、当該バット上の推定打撃位置と、当該バットに対応する推定されたスイング速度とに基づいて指標パラメータ値(ボール打ち出し速度または飛距離)を算出し、算出された指標パラメータ値に基づいて、打者に適するバットを9本のバットから選択する。
【0130】
(打撃位置を仮定する場合)
上述した実施の形態では、バット上の対象物の打撃位置を測定する場合について説明したが、これに限られない。たとえば、この打撃位置が、バット上の予め定められた位置であると仮定してボール打ち出し速度を算出し、当該算出されたボール打ち出し速度に基づいて打者に最適なバットを選択する場合であってもよい。まず、このような選択方式の妥当性について説明する。
【0131】
上記では、打撃位置割合がバットの長さによらず各選手に固有であることについて説明した(
図5参照)。ここでは、打者に最適なバットとして選択されるバットに、この打撃位置割合がどのような影響を与えるのかについてさらに説明する。具体的には、実測の打撃位置割合を用いた場合と、予め定められた仮定の打撃位置割合(以下「仮定打撃位置割合」ともいう)を用いた場合とで、打者に最適なバットとして選択されるバットにどのような変化があるのかを説明する。なお、
図5に示す30人の全選手の打撃位置割合の平均値は80.4%であったことから、仮定打撃位置割合はこの平均値近傍の75%、80%、85%であるとする。
【0132】
図18〜
図20は、それぞれ打者A〜打者Cが9本のバットを使用したときのボール打ち出し速度を示す図である。
図18〜
図20に示すように、打者A〜Cの実測の打撃位置割合は、それぞれ84.9%、76.4%、82.2%である。なお、実測の打撃位置割合は、
図14に示す手順A〜手順Dにより算出され、各々のバットに対応するボール打ち出し速度は、実測の打撃位置割合を用いて
図14に示す手順Eおよび手順Fにより算出されている。
【0133】
図18を参照して、9本のバットについて、実測の打撃位置割合(84.9%)から算出されるボール打ち出し速度を比較すると、No.7のバットを使用した場合に最大のボール打ち出し速度になっているため、No.7バットが打者Aにとって最適なバットとして選択される。
【0134】
ここで、打者Aの打撃位置割合が75%であったと仮定して、
図14の手順Eおよび手順Fにより各々のバットに対応するボール打ち出し速度が算出された場合について考える。打撃位置割合が75%であったと仮定して算出されたボール打ち出し速度は、実測の打撃位置割合の値を用いて算出されたものよりも小さくなる。しかし、9本のバットのうちNo.7のバットを使用した場合に最大のボール打ち出し速度となるため、この場合にもNo.7のバットが打者Aにとって最適なバットとして選択される。
【0135】
さらに、打者Aの平均打撃位置割合が80%、85%であったと仮定した場合についても、9本のバットのうちNo.7のバットを使用した場合に最大のボール打ち出し速度となるため、No.7のバットが打者Aにとって最適なバットとして選択される。
【0136】
このように、打撃位置割合が実測値とは異なる値(75%、80%、85%)であると仮定した場合に算出されるボール打ち出し速度は、実測値の打撃位置割合から求められるものとは異なるが、打者Aに最適なバットとして選択されるバット(いずれもNo.7のバット)には変化がないことがわかる。
【0137】
図19を参照して、9本のバットについて、実測の打撃位置割合(76.4%)から算出されるボール打ち出し速度を比較すると、No.7のバットが最大のボール打ち出し速度であるため、No.7のバットが打者Bにとって最適なバットとして選択される。また、打者Bの平均打撃位置割合が75%、80%、85%であったと仮定した場合についても、9本のバットのうちNo.7のバットを使用した場合に最大のボール打ち出し速度となるため、No.7のバットが打者Bにとって最適なバットとして選択される。すなわち、この場合にも打者Bに最適なバットとして選択されるバット(いずれもNo.7のバット)には変化がない。
【0138】
図20を参照して、9本のバットについて、実測の打撃位置割合(76.4%)から算出されるボール打ち出し速度を比較すると、No.9のバットが最大のボール打ち出し速度であることから、No.9のバットが打者Cにとって最適なバットとして選択される。また、打者Cの平均打撃位置割合が75%、80%、85%であったと仮定した場合についても、9本のバットのうちNo.9のバットを使用した場合に最大のボール打ち出し速度となるため、No.9のバットが打者Cにとって最適なバットとして選択される。すなわち、この場合にも打者Cに最適なバットとして選択されるバット(いずれもNo.9のバット)には変化がない。
【0139】
以上より、実測の打撃位置割合が84.9%、76.4%、82.2%とそれぞれ異なる打者A〜Cのいずれにおいても、実測の打撃位置割合を用いた場合と仮定打撃位置割合(75%、80%、85%)を用いた場合とで、最適なバットとして選択されるバットには変化がないことがわかる。このことから、仮定打撃位置割合が75%〜85%の範囲内であれば最適なバットとして選択されるバットには変化がないものと考えられる。より好適には、
図5に示す30人の全選手の打撃位置割合の平均値に近い80%が望ましい。
【0140】
そのため、バット選択装置10は、
図7の式に示される打撃位置を、バット上の予め定められた位置(以下「仮定打撃位置」ともいう)としてボール打ち出し速度を算出し、当該算出されたボール打ち出し速度に基づいて打者に最適なバットを選択する場合であってもよい。仮定打撃位置とは、バットのグリップ端部側から、バットの全長に仮定打撃位置割合(75%、80%、または85%)を掛けた値だけ離れた位置である。たとえば、32インチのバット(全長:813mm)で、仮定打撃位置割合が80%の場合には、仮定打撃位置はバットのグリップ端部側から650.4mmの位置である。
【0141】
次に、仮定打撃位置を用いる場合のバットの選択方式について説明する。バットの選択方式は、上述した(用意されたバットについて)、(スイングするバットの選定)、(ボールの打ち出し速度の算出)、および(バットの選択および結果表示)については同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0142】
仮定打撃位置を用いる場合には、スイングパラメータ値は、バットによってボールが打撃される直前でのスイング速度となる。具体的には、バット選択装置10(パラメータ入力部230)は、スイングされた少なくとも2本以上(たとえば、3本)のバットの各々について、入力装置120(または通信インターフェイス140)を介して、スイング速度測定装置20(
図3A参照)により測定されたスイング速度の入力を受け付ける。
【0143】
続いて、バット選択装置10(推定部240)は、受け付けた各スイング速度と、バット上の仮定打撃位置とに基づいて、9本のバットの各々に対応するスイング速度を推定する。具体的には、まず、バット選択装置10(推定部240)は、グリップ側の一端から仮定位置までの距離(バットの全長に仮定打撃位置割合を掛けた値)に基づいて、受け付けた各スイング速度をグリップ端部を中心とする角速度に変換する。続いて、バット選択装置10は、変換された角速度と慣性モーメントとの関係式を求め、求められた関係式と9本のバットの慣性モーメントとに基づいて、9本のバットの各々に対応するスイング速度を推定する(
図6参照)。
【0144】
そして、バット選択装置10(選択部250)は、9本のバットの各々について、当該バット上の仮定打撃位置と、当該バットに対応する推定されたスイング速度とに基づいて、指標パラメータ値(ボール打ち出し速度または飛距離)を算出し、9本のバットから打者に適するバットを選択する。
【0145】
具体的には、バット選択装置10(選択部250)は、仮定打撃位置を
図7に示される式に代入して換算質量Mを求め、換算質量Mと推定スイング速度とを
図8に示される式に代入して、各々のバットについて、ボールの打ち出し速度を算出する。そして、バット選択装置10(選択部250)は、9本のバットのうち、当該算出されたボール打ち出し速度が最大となるバットを打者に適するバットとして選択する。
【0146】
なお、スイング速度測定装置20ではなく上述したセンサ装置を用いてもよい。この場合には、スイングパラメータ値は、センサ装置により計測される角速度情報となる。具体的には、バット選択装置10(パラメータ入力部230)は、スイングされた3本のバットの各々について、入力装置120(または通信インターフェイス140)を介して、センサ装置より測定された角速度の入力を受け付ける。続いて、バット選択装置10(推定部240)は、受け付けた各々の角速度情報と、バット上の仮定打撃位置とに基づいて、9本のバットの各々に対応するスイング速度を推定する。具体的には、バット選択装置10は、角速度と慣性モーメントとの関係式を求め、求められた関係式と9本のバットの慣性モーメントと仮定打撃位置とに基づいて、9本のバットの各々に対応するスイング速度を推定する。そして、バット選択装置10(選択部250)は、9本のバットの各々について、当該バット上の仮定打撃位置と、当該バットに対応する推定されたスイング速度とに基づいて指標パラメータ値を算出し、9本のバットから打者に適するバットを選択する。
【0147】
さらに、仮定打撃位置を用いる場合には、ボールの打撃位置を測定する必要がないことから必ずしもボールを打撃する必要はない。すなわち、バット選択装置10は、打者に素振りしてもらうことにより、打者に適するバットを選択することも可能となる。この場合には、スイングパラメータ値は、スイング速度測定装置20で測定されたスイング速度、または、バットのグリップ端部あるいは打者の手甲に取り付けられたセンサ装置により測定される角速度情報である。
【0148】
なお、他のスイング速度測定装置を用いる場合には、スイングパラメータ値として、他のスイング速度測定装置により計測される最大のスイング速度、または最大のスイング速度に到達するタイミングの近傍でのスイング速度を用いてもよい。また、他のセンサ装置を用いる場合には、スイングパラメータ値として、他のセンサ装置により計測される最大の角速度、最大の角速度に到達するタイミングの近傍での角速度、または最大の角速度に到達するタイミングの近傍での平均角速度を用いてもよい。なお、最大のスイング速度または角速度に到達するタイミングの近傍とは、当該タイミングから所定時間(たとえば、1/100秒程度)だけ前、後、または前後のタイミングまでを意味する。また、
図8に示す式のボール質量m
2は固有のスペック情報であるため、実際に使用しているボールの質量とすればよい。
【0149】
(プログラム)
なお、コンピュータを機能させて、上述のフローチャートで説明したような制御を実行させるプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、ROM、RAMおよびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0150】
プログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
【0151】
また、本実施の形態にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
【0152】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によると、バットの慣性モーメントおよびバット上でのボールの打撃位置が考慮されているため、重さおよび長さがそれぞれ異なる複数のバットから、打者にとって、重さおよび長さが最適なバットを簡易に精度良く提供することができる。
【0153】
また、本実施の形態によると、特殊なバットを必要とせず、簡易な方式で打者に最適なバットを提供することができる。
【0154】
また、本実施の形態によると、用意された複数のバットのうち、少なくとも2本以上のバットを打者にスイングしてもらうことで、実際にスイングされていないバットを含む当該複数のバットの各々に対応するスイングパラメータ値を推定できる。そのため、打者に対して過度の負担を強いることなく打者に最適なバットを提供することができる。
【0155】
また、本実施の形態によると、ボールの打撃位置を予め定められた位置と仮定することで、打撃位置を測定する必要のないより簡易な方式で打者に適するバットを提供することができる。
【0156】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。