(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074387
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】止め輪状固定部を用いた受動再使用防止注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
A61M5/315
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-138961(P2014-138961)
(22)【出願日】2014年7月4日
(62)【分割の表示】特願2011-516723(P2011-516723)の分割
【原出願日】2009年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-176772(P2014-176772A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2014年7月25日
【審判番号】不服2015-22011(P2015-22011/J1)
【審判請求日】2015年12月11日
(31)【優先権主張番号】61/075,941
(32)【優先日】2008年6月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン エイチ.ウェイマン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート オーデル
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ジェームズ カイッツァ
【合議体】
【審判長】
高木 彰
【審判官】
平瀬 知明
【審判官】
関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平3−131270(JP,A)
【文献】
特開平2−147069(JP,A)
【文献】
特表2008−513063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、開いた基端部と、末端部と、この末端部に配されて前記チャンバーに対し流体連通状態にある出口とを画成する内側面を有する注射筒と、
この注射筒内に少なくとも一部が配置され、細長いプランジャーロッドと、末端シール面および反対側の基端面を有するプランジャーヘッドとを具え、このプランジャーヘッドの前記基端面が連続した外周を有し、前記プランジャーロッドおよび前記プランジャーヘッドが一体的に結合されたプランジャーアセンブリーと、
前記注射筒の内側面に配されて前記注射筒のチャンバーへと延在すると共に前記注射筒のチャンバーの外周に関して係合面を画成し、前記プランジャーヘッドの少なくとも一部を前記注射筒のチャンバー内の固定位置に係合して保持するようになっている止め輪状固定部と、
前記プランジャーロッドと前記プランジャーヘッドの基端面との間に延在して前記プランジャーロッドおよび前記プランジャーヘッドを一体的に結合し、前記注射筒の少なくとも一部に吸引するために必要な力よりも大きく、かつ前記プランジャーヘッドを引き出して前記止め輪状固定部を通過させるために必要な力よりも小さな力を前記プランジャーロッドに加えることにより、壊れるようになっている壊れやすい首部と
を具え、前記止め輪状固定部(21)は、前記プランジャーヘッド(32)が末端方向に前記止め輪状固定部(21)を通過して滑動できるように、前記プランジャーヘッド(32)の末端シール面(33)に係合する基端面(122)を持った非対称形状の断面を有し、前記止め輪状固定部(21)の係合面は、前記プランジャーヘッド(32)の基端面(321)に係合する前記止め輪状固定部(21)の末端面(121)であって、前記プランジャーヘッド(32)が前記固定位置にある場合、前記プランジャーヘッド(32)の基端面(321)の連続した外周に外周係合状態で係合し、前記プランジャーヘッド(32)が基端方向に前記止め輪状固定部(21)を通過して滑動するのを抑制するようになっており、
前記末端シール面(33)は、前記固定位置にて前記注射筒(20)の末端部(23)に接して前記出口(11)をシールし、
前記プランジャーアセンブリー(30)が単一連続部品として形成されていることを特徴とする注射器アセンブリー。
【請求項2】
前記プランジャーヘッドは、前記注射筒のチャンバーの幅よりも僅かに大きな幅を前記末端シール面に有することを特徴とする請求項1に記載の注射器アセンブリー。
【請求項3】
前記止め輪状固定部の係合面が前記注射筒のチャンバーの外周に関して連続し、前記止め輪状固定部は、前記プランジャーヘッドが前記固定位置にある場合、前記プランジャーヘッドの基端面の連続した外周に連続外周係合状態で係合することを特徴とする請求項1に記載の注射器アセンブリー。
【請求項4】
前記止め輪状固定部が前記注射筒のチャンバー内に前記注射筒の末端部に近接して配されていることを特徴とする請求項1に記載の注射器アセンブリー。
【請求項5】
前記止め輪状固定部は、前記プランジャーヘッドを前記注射筒のチャンバー内の前記固定位置に前記注射筒の末端部に近接して保持することを特徴とする請求項4に記載の注射器アセンブリー。
【請求項6】
前記注射筒のチャンバーと流体連通状態にある針カニューレをさらに具えたことを特徴とする請求項1に記載の注射器アセンブリー。
【請求項7】
前記壊れやすい首部がテーパー部を具えていることを特徴とする請求項1に記載の注射器アセンブリー。
【請求項8】
前記壊れやすい首部は、前記プランジャーヘッドの基端面と前記プランジャーロッドの末端面との間に配された中心を有し、前記プランジャーヘッドの基端面および前記プランジャーロッドの末端面の両方から先細りになり、前記中心にて減少した直径を有することを特徴とする請求項7に記載の注射器アセンブリー。
【請求項9】
前記止め輪状固定部は、前記注射筒の内側面と一体であることを特徴とする請求項1に記載の注射器アセンブリー。
【請求項10】
前記止め輪状固定部は、基端傾斜面を持つほぼV字形断面を有し、前記止め輪状固定部の末端面が末端傾斜面であることを特徴とする請求項9に記載の注射器アセンブリー。
【請求項11】
前記非対称形状の断面が丸い先端を持ったほぼV字形断面を有することを特徴とする請求項9に記載の注射器アセンブリー。
【請求項12】
前記止め輪状固定部は、湾曲した基端面と共に平坦な先端を持ったほぼV字形断面を有し、前記止め輪状固定部の末端面が湾曲した末端面であることを特徴とする請求項9に記載の注射器アセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に関する相互参照)
この出願は、「止め輪状固定部を用いた知覚型受動再使用防止注射器」という名称で2008年6月26日に提出された米国仮特許出願第61/075941号の利益を請求し、その内容全体がその全部を参照することによってこの明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、止め輪状固定部を用いた知覚型受動再使用防止注射器に関する。より詳細には、本発明はプランジャーヘッドに係合するため注射筒の内側面の止め輪を含み、プランジャーアセンブリーのシール面を含む注射器に関する。プランジャーヘッドが固定位置に入った後、注射筒からプランジャーアセンブリーを引き抜こうとする試みは、プランジャーアセンブリーが2つに壊れてプランジャーヘッドが注射筒に残ったままになるという結果をもたらそう。
【背景技術】
【0003】
米国および世界全体において、使い捨ての使用を意図した皮下注射器製品の多数回の使用は、薬物乱用、特に病気の伝播の手段になる。日常的に注射器を共用すると共に繰り返し使用する静脈注射による薬物常習者は、エイズウィルスに関して危険性が高いグループにある。また、多数回使用の影響は、注射器製品の繰り返し使用が多くの病気を引き起こす可能性がある発展途上国において、重要な問題である。使い捨て皮下注射器アセンブリーの反復使用はまた、感染や病気がない場合であっても薬物中毒の拡散を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの試みがこの問題を改善するためになされている。これらの試みのいくつかは、力を加えることよって注射器が動作不能になるように、使用後に破壊装置を用いるか、または脆弱な領域を持った注射器アセンブリーを与えることにより、注射器を破壊するための特定の動作を必要とする。他の試みは、注射器の使用者による意図的行動に対し、注射器機能の破壊または使用不能を可能にする構造体の包含を伴う。これらの器具の多くは極めて良好に働くけれども、これらは使用者の特定の意図を必要とし、注射器を破壊するか、またはこれが機能しないようにする実際の動作の結果として起こる。これらの器具は、皮下注射器を繰り返し使おうとする特定の意図を持った使用者対して効果的ではない。
【0005】
注射器アセンブリーを1回のみ、または選択した回数だけ使用した後、破壊または使えなくする自動機能を設ける試みもまた、なされている。しかしながら、注射器を使えないようにするための手段は、通常の状態にてその充填または使用を阻止しないようにしなければならないので、このような自動機能はより困難である。さらに、典型的な自動固定および無効化器具は、注射器を使用不能にする前に注射器によって一定量の供給を可能にするだけである。
【0006】
従って、注射器を再使用する特定の意図を持つ使用者であっても、注射器が使えないことを意識的に気付くことなく、注射器の正しい使用を通してその機構を作動させるように、自動的に作動しないけれども、これが使用者によって自動または受動器具として認識される固定および無効化機構を含む使い捨て注射器に対する一般的な要求がある。このような機構は、使用者が注射器を反復使用する可能性を制限すると同時に、自動化器具の不必要なコストと投薬量の制限とを回避しよう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、再使用防止特性に加えて伝統的な注射器の実用性を持った注射器を提供すると共にこの再使用防止機構を作動させるために必要となる力を小さくすることによって、従来技術に存在する欠陥の多くを克服する。本発明の一実施形態によると、この注射器は知覚型受動再使用防止機構を含み、これは注射器の通常の使用を通して使用者によって作動させられるけれども、使用者がこの機構が作動していることを意識または気付かなくすることができる。この注射器は、処置によっては重要である可変投薬量を可能にするが、必要ならば一定の投薬量を送出するようにもでき、注射および/または乾燥薬剤を還元するために用いることが可能である。注射器は、最小の注射器寸法から最大の注射器寸法まで調整可能であって、現在の再使用防止注射器と比較してコストの削減を可能にする。この注射器は、プランジャーヘッドにシール面を有し、固定機構によって係合する単一部品のプランジャーアセンブリーと共に与えられ、プランジャーに注射筒をシールするための高価なゴム製ストッパーまたは栓を必要とせず、材料および製造コストを減少させる。さらに、単一の部品のプランジャーは一体的に成形された壊れやすい部分を有し、プランジャーヘッドが固定位置に入った後に注射器を再使用する試みがなされた場合、注射器が使用不能になるようになっている。
【0008】
本発明の実施形態によると、注射器アセンブリーが提供される。この注射器アセンブリーは、
チャンバーと、開いた基端部と、末端部と、この末端部に近接して配されて前記チャンバーに対し流体連通状態にある出口とを画成する内側面を有する注射筒と、
この注射筒内に少なくとも一部が配置され、細長いプランジャーロッドと、末端シール面および基端面を有するプランジャーヘッドとを具え、このプランジャーヘッドの前記基端面が連続した外周を有し、前記プランジャーロッドおよび前記プランジャーヘッドが一体的に結合されたプランジャーアセンブリーと、
前記注射筒の内側面に配されて前記注射筒のチャンバーへと延在すると共に前記注射筒のチャンバーの外周に関して係合面を画成し、前記プランジャーヘッドの少なくとも一部を前記注射筒のチャンバー内の固定位置に係合して保持するようになっている止め輪状固定部と
を含む。前記止め輪状固定部は、前記プランジャーヘッドが末端方向に前記止め輪状固定部を通過して滑動できるように、前記プランジャーヘッドの末端シール面に係合する基端面を持った非対称形状の断面を有し、前記止め輪状固定部の係合面は、前記プランジャーヘッドの基端面に係合する前記止め輪状固定部の末端面であって、前記プランジャーヘッドが前記固定位置にある場合、前記プランジャーヘッドの基端面の連続した外周に外周係合状態で係合し、前記プランジャーヘッドが基端方向に前記止め輪状固定部を通過して滑動するのを抑制するようになっている。前記プランジャーアセンブリーが単一構成部品として形成されている。
【0009】
止め輪状固定部の係合面は、注射筒のチャンバーの周方向に関して連続し、この止め輪状固定部は、プランジャーヘッドが固定位置にある場合、プランジャーヘッドの基端面の連続する外周に連続周縁係合状態で係合する。
【0010】
プランジャーヘッドは、注射筒のチャンバーの幅よりも僅かに大きな幅を末端シール面に有する。注射筒は、外側に延在するフランジをその開いた基端面にさらに含む。プランジャーロッドは、外側に延在するフランジをその基端部に含む。
【0011】
止め輪状固定部は、注射筒のチャンバー内に注射筒の末端部に近接して配される。この止め輪状固定部は、プランジャーヘッドを注射筒のチャンバー内の注射筒の末端部に近接する固定位置に保持する。この注射器アセンブリーは、注射筒のチャンバーと流体連通状態にある針カニューレをさらに含む。
【0012】
壊れやすい首部はテーパー部を具える。壊れやすい首部は、プランジャーヘッドの基端面とプランジャーロッドの末端面との間に配された中心部を有し、プランジャーヘッドの基端面およびプランジャーロッドの末端面の両方から先細りになり、中心部にて減少した直径を有する。この壊れやすい首部は、前記注射器に少なくとも部分的に吸引するために必要な力よりも大きく、かつプランジャーヘッドを引き出して止め輪状固定部を通過させるために必要な力よりも小さな力をプランジャーロッドに加えることにより、壊れるようになっている。
【0013】
止め輪状固定部は、注射筒の内側面と一体である。この止め輪状固定部は、基端傾斜面を持つほぼV字形断面を有し、止め輪状固定部の末端面が末端傾斜面である。
【0014】
代わりに、非対称形状の断面が丸い先端を持ったほぼV字形断面を有する。
【0015】
さらなる選択肢において、止め輪状固定部は、湾曲した基端面と共に平坦な先端を持ったほぼV字形断面を有し、止め輪状固定部の末端面が湾曲した末端面である。
【0016】
本発明のさらなる一実施形態によると、注射器のためのプランジャーアセンブリーが提供される。このプランジャーアセンブリーは、
末端面を有する細長いプランジャーロッドと、
末端シール面および基端面を有し、この基端面が注射筒と周縁係合をもたらすようになっている連続する外周を有するプランジャーヘッドと、
このプランジャーロッドの末端面とプランジャーヘッドの基端面との間に延在する壊れやすい首部と
を含む。プランジャーロッドおよびプランジャーヘッドは、壊れやすい首部により一体的に結合され、プランジャーアセンブリーは単一部品として形成されている。壊れやすい首部は、プランジャーヘッドの基端面とプランジャーロッドの末端面との間に配された中心部と、プランジャーヘッドの基端面およびプランジャーロッドの両方から延在して中心部にて減少した直径を有するようなテーパー部とを含む。プランジャーロッドは、外側に延在するフランジをその基端部に含む。
【0017】
プランジャーヘッドは注射器の注射筒内に配された止め輪状固定部に係合し、プランジャーヘッドの少なくとも一部が注射器の注射筒内の固定位置に保持されることができるのに対し、プランジャーロッドは注射器の注射筒から取り外されることができるようになっている。壊れやすい首部は、注射器に少なくとも部分的に吸引するために必要な力よりも大きく、かつ止め輪状固定部を通過してプランジャーヘッドを引き出すために必要な力よりも小さな力をプランジャーロッドに加えることにより、壊れるようになっている。プランジャーヘッドは、プランジャーヘッドの基端面の幅よりも広い幅を末端シール面にて有する。
【0018】
本発明のさらなる一実施形態によると、注射器アセンブリーの作動させる方法が提供される。この方法は、チャンバーを画成する内側面と、開いた基端部と、末端部と、この末端部に近接して配されて前記チャンバーと流体連通状態の出口とを有する注射筒と、
この注射筒内に少なくとも一部が配されるプランジャーアセンブリーであって、末端面を有する細長いプランジャーロッドと、末端シール面および連続した外周を持つ基端面を有するプランジャーヘッドとを含むプランジャーアセンブリーと、
前記プランジャーロッドの末端面と前記プランジャーヘッドの基端面との間に延在し、前記プランジャーロッドと前記プランジャーヘッドとを一体的に結合する壊れやすい首部と、
前記注射筒の内側面に配され、前記注射筒のチャンバーに向けて延在し、前記注射筒のチャンバーの外周に関して係合面を画成する止め輪状固定部と
を含む注射器アセンブリーを提供するステップを含む。この方法は、前記注射筒のチャンバーを吸引するために前記プランジャーアセンブリーの一部を前記注射筒の末端部に近接する位置から基端方向に引き出すステップをさらに含む。この方法はまた、前記プランジャーアセンブリーを前記注射筒のチャンバー内に進め、前記プランジャーヘッドの少なくとも一部を前記止め輪状固定部との周縁係合によって前記注射筒のチャンバー内に固定位置に保持するステップをも含む。
【0019】
本発明のさらなる詳細および利点は、全体を通して類似の部品を類似の参照符号で示した添付図面と共に次の詳細な説明を読解することによって明確となろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による知覚型受動再使用防止注射器の立体投影図である。
【
図2】使用前の初期状態にある
図1の知覚型受動再使用防止注射器の側断面図である。
【
図3】注射器の吸引後の
図1の知覚型受動再使用防止注射器の側断面図である。
【
図4】固定位置にある注射器の内容物の注射後であって、固定位置に置かれたプランジャーを持つ
図1の知覚型受動再使用防止注射器の側断面図である。
【
図5B】
図5の拡大断面図であり、本発明のさらなる一実施形態を示す。
【
図5C】
図5の拡大断面図であり、本発明のさらなる一実施形態を示す。
【
図6】2片へと壊れて固定されたプランジャーを持つ
図1の知覚型受動再使用防止注射器の側断面図である。
【
図7】本発明のさらなる一実施形態による
図1の知覚型受動再使用防止注射器の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明の目的のため、空間を方向付ける用語は、これが用いられている場合、これは添付図面で方向付けられるか、あるいは次の詳細な説明で記述されるように、参照した実施形態に関係すべきである。しかしながら、以下に記述された実施形態は、多数の異なる変形例および実施形態を採用することができることを理解すべきである。添付図面に示され、かつここに記述された特定の部材が単なる例示であって、限定するものとして考慮すべきではないこともまた、理解すべきである。
【0022】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による注射器アセンブリー10が示されている。この注射器アセンブリー10は、注射筒20とプランジャーアセンブリー30とを有する。
図1に示すように、注射筒20はチャンバー26を画成する内側面25を有する。この注射筒20はまた、開いた基端部24と、注射筒20の末端部23に配された出口11とを含む。この出口11は、注射筒20のチャンバー26と流体連通状態にある。針カニューレ12は、この針カニューレ12の内部が注射筒20のチャンバー26と流体連通状態となるように、出口11に近接して注射筒20に装着される。図示のように、注射筒20は円筒状またはほぼ円筒形状を有することができ、外側に延在するフランジ22を開いた基端部24に含むことができるけれども、注射筒20を任意の適当な形状に形成することができることを理解すべきである。加えて、注射筒20はポリプロピレンおよびポリエチレンの如き熱可塑性材料から当業者らに知られた技術により射出成形することができるけれども、ガラスを含む他の適当な材料および他の適用可能な技術により、この注射筒を作ることができることを理解すべきである。さらに、注射筒20のチャンバー26内に配された固定機構として機能する止め輪状固定部21は、注射筒20の内側面25に一体的に成形または装着される。図示のように、止め輪状固定部21は注射筒20のチャンバー26内の注射筒20の末端部23の直近位置に配されるけれども、この止め輪状固定部21が注射器アセンブリー10の再使用を効果的に阻止するように配される限り、止め輪状固定部21を注射筒20の内側面25の任意の位置に配することができることを理解すべきである。
【0023】
図1に示すように、プランジャーアセンブリー30は末端部35と基端部36とを有し、注射筒20内に延在する。このプランジャーアセンブリー30は、細長いプランジャーロッド31と、プランジャーアセンブリー30の末端部35に配された末端シール面33を有するプランジャーヘッド32とを含む。プランジャーロッド31およびプランジャーヘッド32は、ほぼ円筒形状をそれぞれ有することができ、プランジャーロッド31はプランジャーアセンブリー30の基端部36にもある外側に延在したフランジ34をプランジャーロッド31の基端部に含むことができる。プランジャーアセンブリー30が注射筒20のチャンバー26を注射筒20の開いた基端部24から効果的にシールするように、プランジャーロッド31およびプランジャーヘッド32の両方が注射筒20の内側面25の形状に適合する限り、プランジャーロッド31およびプランジャーヘッド32を任意の適当な形状に形成することができることを理解すべきである。このため、プランジャーロッド31およびプランジャーヘッド32は、注射筒20のチャンバー26の幅とほぼ等しい幅をそれぞれ有することができる。加えて、このプランジャーアセンブリー30をポリプロピレン,ポリエチレン,ポリスチレンの如き熱可塑性材料から当業者らに知られた技術によって射出成形することができるけれども、この注射筒を他の適当な材料および他の適用可能な技術によって作ることができることを理解すべきである。
【0024】
図2および
図3に示すように、プランジャーアセンブリー30は、プランジャーロッド31およびプランジャーヘッド32と連続する単一部品として形成され、これらはプランジャーロッド31の末端面322(
図5に示す)とプランジャーヘッド32の基端面321(
図5に示す)との間に延在する壊れやすい首部37により一体的に結合される。壊れやすい首部37は、環状の凹部38がプランジャーヘッド32とプランジャーロッド31との間のプランジャーアセンブリー30内に形成されるように、プランジャーヘッド32の幅およびプランジャーロッド31の幅よりも実質的に小さな幅を有する。
【0025】
図4,
図5および
図5Aを参照すると、止め輪状固定部21は、注射筒20の末端部23に近接する注射筒20の内側面25に配され、注射器アセンブリー10の内容物の完全な注入の後に続き、プランジャーヘッド32を注射筒20の末端部23にて出口11に近接する注射筒20のチャンバー26内の固定位置に保持するようになっている。
図4および
図5に示すように、止め輪状固定部21はプランジャーヘッド32に係合し、プランジャーヘッド32を固定位置に保持するのに対し、プランジャーロッド31が注射筒20のチャンバー26から取り外しできるようになっている。
図5に示すように、プランジャーヘッド32は、末端シール面33にて注射筒20の内側面25に係合してチャンバー26をシールするため、プランジャーヘッド32の幅よりも増大した幅を基端面321に有し、これは注射筒20のチャンバー26の幅よりも僅かに大きい。また、プランジャーヘッド32が固定位置にある場合に出口11とチャンバー26との流体連通を封じるため、シール面33は注射筒20の末端部23の形状に合致するように形成されている。従って、ゴム製のストッパーまたは栓をプランジャーアセンブリー20の末端部に配する必要なく、プランジャーヘッド32は注射筒20のチャンバー26を効果的にシールするような寸法形状に形成される。代わりに、ゴム製の被覆体またはカバーをプランジャーヘッド32に設けてプランジャーヘッド32と注射筒20の内側面25との間のシール係合を容易にすることができる。
【0026】
図5Aに示すように、止め輪状固定部21は注射筒20の内側面25から先端123まで注射筒20のチャンバー26へと延在するほぼV字形断面を有する。この止め輪状固定部21は、相対的に長く小さなテーパー角を持った基端傾斜面122を有し、この基端傾斜面122がプランジャーヘッド32の末端シール面33に係合し、プランジャーヘッド32が止め輪状固定部21を越えて末端方向に滑動できるようになっている。止め輪状固定部21の末端傾斜面121は相対的に短く大きなテーパー角を有し、この末端傾斜面121がプランジャーヘッド32の基端面321に係合し、プランジャーヘッド32が止め輪状固定部21を越えて基端方向に滑動するのを抑制するようになっている。
【0027】
図5Bに示すように、止め輪状固定部21は、丸めた先端123Aまで延在するほぼV字形断面を代わりに有することができる。この止め輪状固定部21は、相対的に長いく小さなテーパー角を持った基端面122Aを有し、この基端面122Aがプランジャーヘッド32の末端シール面33に係合してプランジャーヘッド32が止め輪状固定部21を越えて末端方向に滑動できるようになっている。止め輪状固定部21の末端面121Aは相対的に短く大きなテーパー角を有し、この末端面121Aがプランジャーヘッド32の基端面321に係合し、プランジャーヘッド32が止め輪状固定部21を越えて基端方向に滑動するのを抑制するようになっている。
【0028】
図5Cに示すように、止め輪状固定部21はまた、平らな先端123Bまで延在するほぼV字形断面を代わりに有することができる。この止め輪状固定部21は、曲率の小さな相対的に長い湾曲基端面122Bを有し、この湾曲基端面122Bがプランジャーヘッド32の末端シール面33に係合し、プランジャーヘッド32が止め輪状固定部21を越えて末端方向に滑動できるようになっている。止め輪状固定部21の湾曲末端面121Bは相対的に短くて大きな曲率を持ち、この湾曲末端面121Bがプランジャーヘッド32の基端面321に係合し、プランジャーヘッド32が止め輪状固定部21を越えて基端方向に滑動するのを抑制するようになっている。
【0029】
図1,
図5および
図5Aに示すように、プランジャーヘッド32の基端面321は、フランジを持たない連続した非分割の外周を有する。同様に、止め輪状固定部21は注射筒20の内側面25の全周に延在して注射筒20のチャンバー26を囲む。それとして、止め輪状固定部21の末端傾斜面121は、注射筒20のチャンバー26の周方向に関して連続非分割係合面を画成する。従って、プランジャーヘッド32が固定位置内に配された場合、止め輪状固定部21の連続係合面(末端傾斜面121)は、連続する外周と、プランジャーヘッド32の基端面321と、末端傾斜面121との間の完全な係合により、プランジャーヘッド32の基端面321の連続する外周に連続周縁係合状態で係合する。
【0030】
基端面321と止め輪状固定部21の末端傾斜面121との間の連続周縁係合は、以下に記述されるように、プランジャーヘッド32が固定位置に入ってプランジャーロッド31をプランジャーヘッド32から分離した後、使用者がプランジャーアセンブリー30を注射筒20から引き抜こうとした場合、注射筒20に対してプランジャーヘッド32が傾くことを阻止するのに役立つ。特に、プランジャーロッド31を破壊してプランジャーヘッド32から分離するか、あるいはプランジャーヘッド32を固定位置から取り除くために使用者がプランジャーロッド31を引っ張った場合、プランジャーロッド31をある角度にて揺り動かしたり、引いたりする傾向があろう。このような揺り動かしや引っ張りは、プランジャーヘッド32が注射筒20に対して傾いたり曲げられたりすることをもたらす可能性があり、これはプランジャーヘッド32の末端シール面33と注射筒の内側面25との間のシール係合の破壊や、あるいはプランジャーヘッド32を注射筒20のチャンバー26内で揺り動かすことにより、注射完了後に出口11または針カニューレ12内に残留する少量の注射筒20の内容物が強制的に排出され、これによって患者に対する不適切な過剰投薬の送出を結果としてもたらす可能性がある。
【0031】
図7を参照すると、さらなる一実施形態による止め輪状固定部21Aは、不連続であってよい。図示のように、止め輪状固定部21Aは、注射筒20の内側面25を完全に取り囲んで配された複数の個別の不連続部分から作られ、注射筒20のチャンバー26を取り囲むようになっている。プランジャーヘッド32が固定位置内に配された場合、止め輪状固定部21Aのそれぞれの部分の係合面は、連続する外周と、プランジャーヘッド32の基端面321と、止め輪状固定部21Aの部品の係合面との間の係合により画成される周縁係合状態にてプランジャーヘッド32の基端面321の連続する外周に係合する。
【0032】
図4,
図5および
図6を参照すると、壊れやすい首部37は、プランジャーヘッド32の基端面321とプランジャーロッド31の末端面322との間の配された中心部371を有する。この壊れやすい首部37は、両方の端面321,322でから延在す内側にテーパー部を含み、中心部371にて減少した直径を有するようになっている。それとして、壊れやすい首部37の軸線方向の強度は中心部371にて減少し、プランジャーロッド31に軸線方向の実質的な力を基端方向に加えることによって、この壊れやすい首部37を破壊するようになっている。
【0033】
図6に示すように、注射筒20のチャンバー26の内容物の完全な注入が完了し、プランジャーヘッド32が末端方向にある止め輪状固定部21の固定位置に保持されると、末端方向にプランジャーロッド31を引っ張ることは、壊れやすい首部37が中心部371から離れるか、またはその近傍にて壊れるという結果をもたらし、プランジャーヘッド32の基端面321と止め輪状固定部21の末端傾斜面121との間の連続周縁係合のためにプランジャーヘッド32の少なくとも一部が注射筒20のチャンバー26内の固定位置に残ったままとなるのに対し、プランジャーロッド31はプランジャーヘッド32から分離して注射筒20のチャンバー26から取り外すことができるようになっている。中心部37A,37Bは、壊れやすい首部37が壊された後、プランジャーヘッド32の基端面321とプランジャーロッド31の末端面322とにそれぞれ残る。
【0034】
従って、注入完了および末端側の止め輪の固定位置にプランジャーヘッド32を配した後に注射器アセンブリー10を再使用することは、人がプランジャーアセンブリー30を注射筒20から引き出すか、あるいは注射筒20のチャンバー26に再度吸引しようとした場合、プランジャーアセンブリー30が2部品に破壊されるので、阻止される。壊れやすい首部37は、使用者がプランジャーロッド31に任意の力を加えることにより破壊するように構成できるけれども、壊れやすい首部を壊してプランジャーロッド31をプランジャーヘッド32から分離ために必要とされる破壊力37は、注射筒20のチャンバー26の少なくとも一部に吸引するために必要な力よりも大きいが、止め輪状固定部21を通過してプランジャーヘッド32を引き出すために必要な力よりも小さいことを理解すべきである。特に、この破壊力は、注射筒20のチャンバー26に吸引するために必要な最大の力よりも僅かに大きいだけであってよい。
【0035】
図2〜
図6を参照すると、ここで本発明の一実施形態による注射器10の作動が詳細に記述されよう。
図2に示すように、初期状態、すなわち包装状態において、プランジャーヘッド32の少なくとも一部が注射筒20のチャンバー26内に配され、プランジャーロッド31が注射筒20の末端部23の直近に位置し、止め輪状固定部21に近接するようになっている。次に、プランジャーアセンブリー30が基端方向に部分的に引き出され、
図3に示すように、注射筒20のチャンバー26に吸引して注射器10を満たすようになっている。包装状態にあるプランジャーアセンブリー30を末端側に押し込むことは、注射器の早すぎる固定状態を結果としてもたらす可能性がある。プランジャーヘッド32が固定されていない状態にある限り、薬剤またはワクチンを薬瓶または他の流体源から注射筒のチャンバー26に吸引および充填し、次いでこの薬剤またはワクチンを針カニューレ12を介して患者に注射するため、注射器10を通常のように用いることができる。代わりに、乾燥薬剤を還元するために注射器10を通常のように用いることができる。注射筒20のチャンバー26の内容物を注入し終える前はプランジャーアセンブリー30が固定されていない状態なので、注射筒20のチャンバー26を吸引してさまざまな量を保持することができ、しかもプランジャーヘッド32を固定することなく、その内容物の一部を注入することが可能なため、注射器10は投薬量を変更することができる。代わりに、固定した投与量のみもたらすように注射器10を適合させることができる。
【0036】
注射筒20のチャンバー26の望ましい吸引が完了すると、プランジャーアセンブリー30は注射筒20のチャンバー26内に押し込まれる。
図4〜
図6に示すように、プランジャーヘッド32が注射筒20のチャンバー26の内容物の完全注射によって止め輪状固定部21を通過すると、このプランジャーヘッドは、止め輪状固定部21を通過して止め輪状固定部21との連続周縁係合により、少なくとも一部が注射筒20のチャンバー26内の固定位置に保持され、従って基端方向に引き戻すことができない。人がプランジャーヘッド32を引っ張ることによってプランジャーヘッド32を固定位置から引き抜こうとした場合、プランジャーロッド31は、上述したように壊れやすい首部37にてプランジャーヘッド32から分離しよう。次に、プランジャーロッド31を注射筒20のチャンバー26から取り外すことができる。プランジャーヘッド32は、固定位置に残って注射筒20のチャンバー26を塞ぐと共に出口11をシールし、従って注射器10を完全に使用不能にしよう。
【0037】
本発明の固定および再使用防止機構は、これが注射器10を自動固定、すなわち再使用を阻止することなく、通常の一般的な注射器として用いることを可能にする知覚型受動手段であるが、注射器10の通常の操作および注射器10の内容物の完全注入を介して使用者により固定されて使えなくなることを理解すべきである。一般的に、固定機構が作動していることを使用者が気付くことなく、プランジャーヘッド32が注射筒20に固定されて注射器10を使えなくしよう。従って、注射器10の使用者は、使用者が注射器を受動的に固定して使えないようにし、かつ注射器10の内容物の完全注入によって注射器10が底付きした後、固定機構が注射器10を自動的に使えないようにすることを認識する。
【0038】
止め輪状固定部を用いた知覚型受動再使用防止注射器のいくつかの実施形態および方法を前述の詳細な説明にて記述したけれども、当業者らは本発明の範囲および精神から逸脱することなく、これらの実施形態に対して修正および変更を行うことができる。従って、前述の説明は、限定するというよりはむしろ例示することを意図している。上述した本発明は添付された特許請求の範囲によって規定され、この特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内に属する本発明に対するすべての変更は、その範囲内に包含される。