特許第6074411号(P6074411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074411
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】育毛剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/55 20060101AFI20170123BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20170123BHJP
   A61K 31/662 20060101ALI20170123BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   A61K8/55
   A61Q7/00
   A61K31/661
   A61K31/662
   A61P17/14
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-512699(P2014-512699)
(86)(22)【出願日】2013年4月26日
(86)【国際出願番号】JP2013062332
(87)【国際公開番号】WO2013161978
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-102147(P2012-102147)
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508104880
【氏名又は名称】SANSHO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】室伏 きみ子
(72)【発明者】
【氏名】諸星 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】今村 茂行
(72)【発明者】
【氏名】藤原 達郎
(72)【発明者】
【氏名】野方 良彦
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−363081(JP,A)
【文献】 特開2003−081778(JP,A)
【文献】 特開2004−010582(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065480(WO,A1)
【文献】 特開2008−208058(JP,A)
【文献】 特開昭59−027809(JP,A)
【文献】 国際公開第01/012141(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 − 8/99
A61Q 1/00 − 90/00
A61K 31/661 − 31/662
A61P 17/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される化合物を有効成分として0.1〜0.5重量%の含有量で含有する育毛剤。
【化1】
(式中、Rは、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基、又は炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキニル基であり、これらの基はシクロアルカン環又は芳香環を含んでいてもよい。X及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、又はメチレン基を示すが、X及びYが同時にメチレン基になることはない。Mは、水素原子又はアルカリ金属原子である。)
【請求項2】
式(1)において、X及びYが酸素原子である、請求項1に記載の育毛剤。
【請求項3】
式(1)において、X又はYの一方が酸素原子であり、他方がメチレン基である、請求項1に記載の育毛剤。
【請求項4】
式(1)で示される化合物が、大豆レシチン由来の脂肪酸からなるアシル基を有する化合物である、請求項1から3の何れか1項に記載の育毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ホスファチジン酸又はカルバ環状ホスファチジン酸を有効成分とする育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脱毛症には、先天性のもの、後天性のものがあり、その発症原因、発生機序共に多くの研究がなされている。しかし今日、養毛・育毛剤は非常に多く市場に出てはいるものの、不明な点が多いのが現状である。
【0003】
従来、脱毛症の予防及び治療に用いられている多くの養育毛剤における、薬効成分としては、センブリエキス、ビタミンEアセテート等の血管拡張剤、トウガラシチンキ等の刺激剤、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類、更には、ホルモン剤、抗炎症剤、殺菌剤等が使用されている。又、リゾホスファチジン酸又はホスファチジン酸誘導体が養育毛作用を有することも知られている(特許文献1,2)。その他にも、ヒアルロン酸合成促進成分を含有する養育毛剤が知られている(特許文献3)。
【0004】
しかしながら、これらの養育毛剤の効果は必ずしも高くはなく、使用者に必ずしも満足する結果を与えていないという問題があった。近年、技術の進歩に伴い、更に養育毛効果に優れる養育毛剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−41363号公報
【特許文献2】国際公開WO2001/012141
【特許文献3】特開2003−81778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消し、優れた養毛・発毛効果を示す育毛剤を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、環状ホスフアチジン酸及びその誘導体が、優れた養毛・発毛効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、下記式(1)で示される化合物を有効成分として含有する育毛剤が提供される。
【化1】
(式中、Rは、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基、又は炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキニル基であり、これらの基はシクロアルカン環又は芳香環を含んでいてもよい。X及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、又はメチレン基を示すが、X及びYが同時にメチレン基になることはない。Mは、水素原子又はアルカリ金属原子である。)
【0009】
好ましくは、式(1)において、X及びYが酸素原子である。
好ましくは、式(1)において、X又はYの一方が酸素原子であり、他方がメチレン基である。
好ましくは、式(1)で示される化合物が、大豆レシチン由来の脂肪酸からなるアシル基を有する化合物である。
【0010】
本発明によればさらに、上記式(1)で示される化合物を、対象者に投与することを含む、育毛方法が提供される。
【0011】
本発明によればさらに、育毛剤の製造のための、上記式(1)で示される化合物の使用が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた養毛・発毛効果を示す育毛剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、コントロール群及びNcPA投与群の育毛スコアの変化を示す。
図2図2は、コントロール群の投与25日の発毛状態を示す。
図3図3は、NcPA投与群の投与25日の発毛状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について更に具体的に説明する。
本発明の育毛剤は、男性型脱毛症の治療などに使用することができ、環状ホスファチジン酸又はカルバ環状ホスファチジン酸又はそれらの塩を有効成分として含む。環状ホスファチジン酸又はカルバ環状ホスファチジン酸又はその塩としては本発明の効果を示すものであれば特に限定されないが、好ましくは、下記式(I)で示される化合物を使用することができる。
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、Rは、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基、又は炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキニル基であり、これらの基はシクロアルカン環又は芳香環を含んでいてもよい。X及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、又はメチレン基を示すが、X及びYが同時にメチレン基になることはない。Mは、水素原子又はアルカリ金属原子である。)
【0017】
式(I)において、置換基Rが示す炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などが挙げられる。
【0018】
置換基Rが示す炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基の具体例としては、例えば、アリル基、ブテニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデカジエニル基、ヘキサデカトリエニル基などが挙げられ、より具体的には、8−デセニル基、8−ウンデセニル基、8−ドデセニル基、8−トリデセニル基、8−テトラデセニル基、8−ペンタデセニル基、8−ヘキサデセニル基、8−ヘプタデセニル基、8−オクタデセニル基、8−イコセニル基、8−ドコセニル基、ヘプタデカ−8,11−ジエニル基、ヘプタデカ−8,11,14−トリエニル基、ノナデカ−4,7,10,13−テトラエニル基、ノナデカ−4,7,10,13,16−ペンタエニル基、ヘニコサ−3,6,9,12,15,18−ヘキサエニル基などが挙げられる。
【0019】
置換基Rが示す炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキニル基の具体例としては、例えば、8−デシニル基、8−ウンデシニル基、8−ドデシニル基、8−トリデシニル基、8−テトラデシニル基、8−ペンタデシニル基、8−ヘキサデシニル基、8−ヘプタデシニル基、8−オクタデシニル基、8−イコシニル基、8−ドコシニル基、ヘプタデカ−8,11−ジイニル基などが挙げられる。
【0020】
上記のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基に含有されうるシクロアルカン環の具体例としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環などが挙げられる。シクロアルカン環は、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、そのような例としては、例えば、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、N−メチルプロリジン環などが挙げられる。
【0021】
上記のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基に含有されうる芳香環の具体例としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環などが挙げられる。
【0022】
従って、置換基Rがシクロアルカン環によって置換されたアルキル基である場合の具体例としては、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシルエチル基、8,9−メタノペンタデシル基などが挙げられる。
【0023】
置換基Rが芳香環によって置換されたアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、p−ペンチルフェニルオクチル基などが挙げられる。
【0024】
Rは、好ましくは、炭素数9〜17の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、炭素数9〜17の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基、又は炭素数9〜17の直鎖状若しくは分岐状アルキニル基である。Rは、さらに好ましくは、炭素数9、11、13、15又は17の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又は炭素数9、11、13、15又は17の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基である。Rは、特に好ましくは、炭素数9、11、13、15又は17の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基である。
【0025】
式(1)で示される化合物中のX及びYはそれぞれ独立に、酸素原子(−O−)又はメチレン基(−CH2−)を示すが、X及びYが同時にメチレン基になることはない。即ち、X及びYの組み合わせは以下の3通りである。
(1)Xが酸素原子であり、Yが酸素原子である。
(2)Xが酸素原子であり、Yがメチレン基である。
(3)Xがメチレン基であり、Yが酸素原子である。
【0026】
式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体中のMは、水素原子又はアルカリ金属原子である。アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。
【0027】
本発明で用いられる式(1)で示される化合物の具体例としては、1位アシル基として、Rが炭素原子数17のステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、リノレノイル基、Rが炭素原子数15のパルミトイル基、パルミトオレオイル基、又は、これら脂肪酸を2種以上含有する、混合脂肪酸残基を有する環状ホスファチジン酸誘導体が好ましい。なかでも、大豆レシチン由来の脂肪酸からなるアシル基を有する環状ホスファチジン酸誘導体が特に好ましい。
【0028】
式(I)の化合物はその置換基の種類に応じて、位置異性体、幾何異性体、互変異性体、又は光学異性体のような異性体が存在する場合があるが、全ての可能な異性体、並びに2種類以上の該異性体を任意の比率で含む混合物も本発明の範囲内のものである。
【0029】
また、式(I)の化合物は、水あるいは各種溶媒との付加物(水和物又は溶媒和物)の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明の範囲内のものである。さらに、式(I)の化合物及びその塩の任意の結晶形も本発明の範囲内のものである。
【0030】
式(1)で示される化合物のうちX及びYが酸素原子である化合物は、例えば、特開平5−230088号公報、特開平7−149772号公報、特開平7−258278号公報、特開平9−25235号公報に記載の方法等に準じて化学的に合成することができる。
【0031】
また、式(1)で示される化合物のうちX及びYが酸素原子である化合物は、特開2001−178489号公報に記載の方法に準じてリゾ型リン脂質にホスホリパーゼDを作用させることによって合成することもできる。ここで用いるリゾ型リン脂質は、ホスホリパーゼDを作用しうるリゾ型リン脂質であれば特に限定されない。リゾ型リン脂質は多くの種類が知られており、脂肪酸種が異なるもの、エーテル又はビニルエーテル結合をもった分子種などが知られており、これらは市販品として入手可能である。ホスホリパーゼDとしては、キャベツや落花生などの高等植物由来のものやStreptomyces chromofuscus, Actinomadula sp.などの微生物由来のものが市販試薬として入手可能であるが、Actinomadula sp. No.362由来の酵素によって極めて選択的に環状ホスファチジン酸が合成される(特開平11−367032号明細書)。リゾ型リン脂質とホスホリパーゼDとの反応は、酵素が活性を発現できる条件であれば特に限定されないが、例えば、塩化カルシウムを含有する酢酸緩衝液(pH5〜6程度)中で室温から加温下(好ましくは37℃程度)で1から5時間程度反応させることにより行う。生成した環状ホスファチジン酸誘導体は、常法に準じて、抽出、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー(TLC)などにより精製することができる。
【0032】
また、式(1)で示される化合物のうちXが酸素原子であり、Yがメチレン基である化合物は、文献記載の方法(Kobayashi,S.,他,Tetrahedron Letters 34,4047−4050(1993))に準じて合成することができ、また国際公開WO2002/094286号公報に記載の方法により合成することができる。具体的な合成経路の一例を以下に示す。
【0033】
【化3】
【0034】
上記においては、先ず、市販の(R)-ベンジルグリシジルエーテル(1)をBF3・Et2Oで活性化させ、メチルホスホン酸ジメチルエステルにn-BuLiを作用させて得られるリチオ体を反応させることでアルコール(2)を得る。
得られたアルコールを、トルエン中で過剰のp-トルエンスルホン酸のピリジニウム塩を用いて80℃で反応させることにより、環化体(3)を得る。この環化体を、水素雰囲気下で20% Pd(OH)2-Cを用いて加水素分解し、脱ベンジル化を行う(4)。縮合剤として1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いて、脂肪酸と反応させてカップリング体(5)を得る。次に、求核剤としてブロモトリメチルシランを用いて、メチル基だけを位置選択的に除去し、環状ホスホン酸(6)を得る。これをエーテルを用いて分液ロートに移しこみ、少量の0.02Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、分液操作を行い、ナトリウム塩(7)として目的化合物を抽出、精製する。
【0035】
また、一般式(1)で示される化合物のうちXがメチレン基であり、Yが酸素原子である化合物は、特開2004−010582号公報又は国際公開WO03/104246号公報に記載の方法により合成することができる。
【0036】
本発明の育毛剤の剤型としては、下記式(1)で示される化合物を配合しうる剤型で、外皮に適用可能な剤型であれば特に限定されず、例えば、適当な化粧品基剤又は医薬基剤と配合して液状、乳液状、半固形状あるいは固形状の育毛剤として用いることができる。さらに吸収を高めるために、マイクロカプセルや、リポソームに包含してもよい。
【0037】
また、本発明の育毛剤の形態は任意であり、ヘヤーリキッド、ヘヤートニック、ヘヤーローション、軟膏、ヘヤークリーム、ムース、ジェル、シャンプー、リンス等があげられ、各々好適な基剤に本発明に用いられる環状ホスファチジン酸誘導体を添加し、常法により製造することができる。
【0038】
本発明の育毛剤中の環状ホスファチジン酸誘導体の含有量は、環状ホスファチジン酸誘導体の種類によって異なるが、通常0.01〜5.0重量%、好ましくは0.01〜3.0重量%、より好ましくは、0.1〜1.0重量%である。
【0039】
液状剤型に好適な基剤としては、育毛剤に通常使用されているもの、例えば精製水、エチルアルコール、多価アルコール類があげられ、必要により添加剤を添加してもよい。
多価アルコールとしては、グリセロール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等があげられる。
添加剤としては、界面活性剤、ビタミン類、消炎剤、殺菌剤、ホルモン剤、生薬エキス、チンキ類、清涼剤、保湿剤、角質溶解剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料等があげられる。
【0040】
界面活性剤としては、特に限定されず、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、両性界面活性剤を適宜用いることができる。
【0041】
ビタミン類としては、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、D−パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、ビオチン、塩酸ピリドキシン、リボフラビン等があげられる。
【0042】
消炎剤としては、グリチルリチン酸ジカリウム、β−グリチルレチン酸、アラントイン、塩酸ジフェンヒドラミン、グアイアズレン、1−メントール等があげられる。
殺菌剤としては、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、ヒノキチオール、トリクロサン、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、イソプロピルメチルフェノール、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、感光素301号、モノニトログアヤコールナトリウム等があげられる。
【0043】
ホルモン剤としては、エチニルエストラジオール、エストロン、エストラジオール等があげられる。
生薬エキスとしては、センブリエキス、ニンニクエキス、ニンジンエキス、アロエエキス、キナエキス等があげられる。
チンキ類として、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、カンタリスチンキ等があげられる。
清涼剤としては、トウガラシチンキ、1−メントール、カンフル等があげられる。
【0044】
保湿剤としては、L−ピロリドンカルボン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、冬虫夏草抽出物、サフラン抽出物等があげられる。
酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシアニソール、イソプロピルガレート、没食子酸プロピル、エリソルビン酸等があげられる。
金属イオン封鎖剤としては、エチレンジアミンテトラアセテートまたはその塩等があげられる。
【0045】
香料としては、オレンジ油、レモン油、ベルガモット油、ライム油、レモングラス油、ラベンダー油等の天然香料およびメントール、ローズオキサイド、リナロール、シトラール、酢酸リナリル等の合成香料があげられる。
【0046】
上記の液状剤型を噴霧剤として用いるときは、可燃ガス、不燃ガス等を用いることができる。可燃ガスとしては、LPG(液化石油ガス)、ジメチルエーテル等があげられ、不燃ガスとしては、窒素ガス、炭酸ガス等があげられる。
半固形状又は固体状剤型の基剤としては、ワセリン、固形パラフィン、植物油、鉱物油、ラノリン、ろう類、マクロゴール等があげられ、必要により前記の添加剤、レシチン等の乳化剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール等を添加してもよい。
【0047】
本発明の育毛剤の投与量は、対象者の症状や投与方法等により異なるが、成人一人当たり、一回に、式(1)で示される化合物として0.1〜250mg、好ましくは1mg〜100mgが一日一回から数回、経皮投与される。
【0048】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されることはない。
【実施例】
【0049】
製造例1:
本実施例で使用したnative cPA(以下、NcPAとも称する)は、以下の通り調製したものである(特願2011−126901の実施例1、3及び5を参照)。
大豆リン脂質(レシチン含量:70%)10gを0.3M塩化カルシウムを含有する100mlの1M酢酸バッファー(pH6.5)で溶解させた後、6000単位のストレプトマイセス属由来のホスホリパーゼA2を添加し、40℃で18時間攪拌して反応させた。反応液をpH2.5に調整して酵素を失活させた後、100mlのクロロホルム、50mlのメタノールを添加して十分攪拌混合し脂質成分を抽出した。クロロホルム層を集め、ロータリーエバポレータで減圧乾固させた。固形分に100mlのアセトンを加えリン脂質を沈殿させ遊離脂肪酸を除去した。沈殿物5gを40mlのクロロホルムに溶解させ、1M酢酸バッファー(pH5.5)10mlを加え、更に1500単位のアクチノマジュラ属由来のホスホリパーゼDを添加して40℃で18時間攪拌しながら反応を行った。反応液に20mlの3M塩化ナトリウム、20mlの0.1M EDTA溶液を添加して40℃で1時間攪拌を行った。更に20mlのメタノールを添加して十分攪拌した後、3000回転、5分間遠心分離してクロロホルム層を集めた。この溶液をロータリーエバポレータで減圧乾固させ環状ホスファチジン酸ナトリウム塩3.8gを得た。収率はレシチン含量70%(10g中7g)から環状ホスファチジン酸Naを3.8gを得たので54.3%であった。環状ホスファチジン酸ナトリウム塩の純度分析は、シリカゲルプレートを用い、クロロホルム:メタノール:酢酸:5%二亜硫酸ナトリウム(100:40:12:5、V/V)で展開後、5%酢酸銅:8%燐酸:2%硫酸混合液に短時間浸漬し風乾後、180℃で約10分加熱した後、生成したスポットをスキャナー(アトー社製)法によって行った。即ち、標準品(97%純度品)をコントロールとして、薄層クロマトグラフのスポットをデンシトメーターにより測定し、面積比で定量した。上記工程で得られた生成物中環状ホスファチジン酸ナトリウム塩の純度は54%であった。
【0050】
上記の環状ホスファチジン酸ナトリウム塩500mgを5mlの10%メタノールを含むクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラムにかけ、同一溶媒で展開、更に20%メタノールを含むクロロホルムで展開し、10mlの画分に分取した。上記のTLC法によって環状ホスファチジン酸ナトリウム塩を含有する画分を確認して集め、ロータリーエバポレータで減圧乾固させ環状ホスファチジン酸ナトリウム塩の粉末320mgを得た。本試料の環状ホスファチジン酸ナトリウム塩の純度は95%であった。
【0051】
上記でで得られた高純度環状ホスファチジン酸ナトリウムの脂肪酸組成をガスクロマトグラム法により分析した。試料20mg/mlになるように塩酸メタノールに溶解し、65度Cで30分間加温した。室温に戻した後、棟梁の水、次いで棟梁のヘキサンを加えて十分に攪拌混合した。3000回転、5分間遠心分離を行い、ヘキサン層2μlをキャピラリーカラムに注入し構成脂肪酸を分析した。分析は以下である。
脂肪酸 含量(%)
パルミチン酸 23.9
ステアリン酸 5.4
オレイン酸 8.6
リノール酸 53.4
リノレン酸 4.9
その他の脂肪酸 3.8
【0052】
試験例1:
製造例1で製造したNcPAを用いて、マウスにおける発毛効果試験を実施した。
【0053】
(1)投与検体
コントロール;50%エタノール(エタノールと生理食塩液を等量で調製したもの)
被験物質:生理食塩液によりNcPAの1%水溶液を調製し、このNcPAの1%水溶液をエタノールで希釈し、0.5%濃度に調製したものを使用した。
【0054】
(2)試験動物及び飼育条件
試験には、雄性C3H/HeNCrlCrlj(以下、C3H、SPF、日本チャールス・リバー株式会社)(18.8g〜23.6g)を使用した。動物は、群分け3日前(47−48週齢)にマウスの頸部から尾部までの背部(側腹は含まない)をシェービングフォームを用いてカミソリで剃毛した。動物は、設定温度23℃、設定湿度55%、明暗各12時間、換気回数(12回/時)に維持された動物飼育室で飼育した。飼料は固形資料(MF、ロット番号:111206、オリエンタル酵母工業株式会社)を自由に摂取させ、飲料水は水道水を自由に摂取させた。
【0055】
(3)投与
投与経路は、経皮投与とした。投与検体(コントロール又は被験物質)を、マイクロピペットを用いてマウスの背部皮膚に投与し、指で軽く塗りこんだ(コントロール群:10匹;及びNcPA投与群10匹)。投与液量は100μl/部位とした。投与回数は1日1回とした。投与期間は、投与開始日を投与1日とし、24日間とした。
【0056】
(4)判定
剃毛部の肉眼観察は、群分け日(投与1日)、投与5、7、10、13、16,19,22および25日に、以下の表1に示す判定基準を基にスコアで採点し、群毎に平均値±標準偏差を算出した。また、スコア観察日に群ごとに写真撮影を行った。写真撮影及びスコア観察は投与前に行った。
【0057】
【表1】
【0058】
(5)結果
発毛状態のスコア観察の結果を表2及び図1に示す。また、マウスの写真撮影の結果を図2及び図3に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2及び図1に示す通り、1100μl/部位/日のNcPAを24日間経皮投与したNcPA投与群は、コントロール群と比較して、投与19日と25日に高値傾向(P<0.1)が認められ、NcPAの発毛促進作用が確認された。
図1
図2
図3