特許第6074413号(P6074413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074413
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】シャフトシールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3232 20160101AFI20170123BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20170123BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20170123BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F16J15/3232 201
   F16J15/18 C
   F16J15/52 C
   F16J15/447
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-514870(P2014-514870)
(86)(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公表番号】特表2014-519586(P2014-519586A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】US2012041491
(87)【国際公開番号】WO2012170777
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年3月30日
(31)【優先権主張番号】61/495,075
(32)【優先日】2011年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599058372
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,リチャード・エム
(72)【発明者】
【氏名】ラップ,デイビッド・シィ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス,レイナルド
(72)【発明者】
【氏名】スターク,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グレーカ,ジェラルド・エイ
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−099560(JP,A)
【文献】 米国特許第04448461(US,A)
【文献】 特開2002−181198(JP,A)
【文献】 特開昭60−060373(JP,A)
【文献】 実開平06−080065(JP,U)
【文献】 米国特許第04874261(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/18
F16J 15/3204−15/3236
F16J 15/447
F16J 15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングナックルを車両の車軸にシールするためのシールアセンブリであって、
内ケースと、前記内ケースの径方向外側に配置された外ケースと、
前記内ケースおよび外ケースの一方に係合する少なくとも1つのエラストマー部材とを備え、前記エラストマー部材は、前記内ケースが回転すると前記内ケースと外ケースとの間に液密シールを確立するように、前記内ケースおよび外ケースの他方に係合する少なくとも1つのリップを含み、
前記外ケースまたは前記少なくとも1つのエラストマー部材は、ほぼ平坦な部分と、前記ほぼ平坦な部分の軸方向の一方側の菊型特徴とを含む外面を有し、前記菊型特徴は、前記シールアセンブリが前記ステアリングナックルの内部に位置決めされると前記シールアセンブリと前記ステアリングナックルとの間に空隙を提供するように、溝によって円周方向に互いに間隔をあけられた複数の径方向外向きに延在する突出部を含み、
前記空隙は、前記エラストマー部材の軸方向端面に開口する、シールアセンブリ。
【請求項2】
前記溝の各々はほぼL字形状であり、その1つの部分が径方向に延在しており、別の部分が軸方向に延在している、請求項1に記載のシールアセンブリ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのエラストマー部材は、前記外ケースに係合する第1のエラストマー部材を含み、前記菊型特徴は前記外ケース上にある、請求項1に記載のシールアセンブリ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのエラストマー部材は前記外ケースとオーバーモールド係合する、請求項3に記載のシールアセンブリ。
【請求項5】
前記内ケースに係合する第2のエラストマー部材をさらに備える、請求項3に記載のシールアセンブリ。
【請求項6】
前記第2のエラストマー部材は前記内ケースとオーバーモールド係合する、請求項5に記載のシールアセンブリ。
【請求項7】
前記外ケースは外リムを含み、前記第1のエラストマー部材の少なくとも一部は、前記外ケースの前記外リムの周りを円周方向に延在して前記車両の前記ステアリングナックルの内ボアに係合する、請求項5に記載のシールアセンブリ。
【請求項8】
前記第1のエラストマー部材は複数のロッキングリブを含む、請求項7に記載のシールアセンブリ。
【請求項9】
前記内ケースは軸方向に延在する部分を含み、前記第2のエラストマー部材の少なくとも一部は、前記内ケースの前記軸方向に延在する部分の内周に沿って延在して前記車両の前記車軸に係合する、請求項7に記載のシールアセンブリ。
【請求項10】
前記第2のエラストマー部材は複数のロッキングリブを含む、請求項9に記載のシールアセンブリ。
【請求項11】
前記第1のエラストマー部材は、径方向に延在して前記内ケースに摺動可能に当接する少なくとも1つのシールリップを含む、請求項5に記載のシールアセンブリ。
【請求項12】
前記第1のエラストマー部材の一部の周りを円周方向に延在して前記少なくとも1つのシールリップを前記内ケースに接して付勢するガータースプリングをさらに備える、請求項11に記載のシールアセンブリ。
【請求項13】
前記外ケースは、径方向内向きに延在する第1のレッグを含み、前記内ケースは、径方向外向きに延在する第2のレッグを含み、前記第1および第2のレッグは軸方向に互いに間隔をあけられている、請求項5に記載のシールアセンブリ。
【請求項14】
前記第1および第2のエラストマー部材の少なくとも一方は、前記第1のレッグと第2のレッグとの間を軸方向に延在して前記シールアセンブリを横切る汚染物質の通過を制限する少なくとも1つのシールリップを含む、請求項13に記載のシールアセンブリ。
【請求項15】
前記第1および第2のエラストマー部材は、自身同士の間にラビリンスを提供するように成形される、請求項14に記載のシールアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2011年6月9日に出願された米国仮出願連続番号第61/495,075号の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は概してシャフトシールに関し、より特定的に、空気がシャフトシールの一部を通過することを可能にするための真空特徴を有するシャフトシールに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
ラジアルリップシャフトシールアセンブリは、ホイールハブ、シャフトジャーナルおよび減摩軸受を含む多数の回転機械用途に用いられる。1つの特定の用途では、ラジアルリップシャフトシールアセンブリは、ステアリングナックルのボア内に一体として設置されて、ステアリングナックルと、4×4、すなわち四輪駆動車の前輪アセンブリの半車軸または車軸との間にシールを確立する。
【0004】
多くの4×4車両は、ロッキングハブと、真空信号によってロッキングハブを車両の駆動系に対して係合および解放する電子シフトオンザフライ(Electronic-Shift-On-the-Fly:ESOF)システムとを有する前輪アセンブリを含む。典型的に、高真空レベルではハブが車両の駆動系に係合するのに対し、低真空レベルではハブが車両の駆動系から解放される。真空が解除された後、ロッキングハブは、別の真空信号を受けるまで適切な(係合または解放)モードにあり続けるように構成される。ESOFシステムが適切に機能していない場合、4×4システムは意図した通りに係合および/または解放しない場合がある。これは、車両の運転者にとって不都合であるだけでなく、ロッキングハブまたは前輪アセンブリの他の部品の損傷につながる恐れもある。
【0005】
ESOFシステムを有する4×4車両のそのような前輪アセンブリのラジアルシールアセンブリは典型的に、ステアリングナックルの少なくとも1つの真空ポートの近くに配置される。ラジアルシールアセンブリは、真空ポートがロッキングハブから空気を選択的に抽出することを可能にすることによって、ESOFシステムと協働する。時折、公知のラジアルシールアセンブリはステアリングナックルの真空ポートを部分的にまたは完全に塞ぎ、それによって車両のESOFシステムを妨害する。このような妨害は、公知のシールアセンブリが誤った向きでステアリングナックル内に設置されたときに、またはシールアセンブリが車両の運転時にステアリングナックルに対して故意でなく動いたときに起こり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要約
本発明の少なくとも1つの局面によると、ステアリングナックルを車両の車軸にシールするためのシールアセンブリが提供される。シールアセンブリは、車軸を受けるように構成された内ケースと、ステアリングナックルの内ボアの内部に受けられるように構成された外ケースとを含む。少なくとも1つのエラストマー部材が内ケースおよび外ケースの一方に係合し、車軸が回転すると車軸とステアリングナックルとの間に液密シールを確立するように内ケースおよび外ケースの他方に摺動係合する少なくとも1つのリップを含む。外ケースおよびエラストマー部材のいずれか一方は菊型特徴を含み、菊型特徴は、シールアセンブリがステアリングナックルの内ボアの内部に位置決めされるとシールアセンブリとステアリングナックルとの間に空隙を提供する、溝または流路によって円周方向に互いに間隔をあけられた複数の径方向外向きに延在する突出部を含む。空隙および溝は、空気がハブからステアリングナックルの真空ポートに流れることを可能にする。空隙はシールアセンブリの周りを円周方向に延在しているので、ハブから真空ポートへの空気の通過は、ステアリングナックルに対するシールアセンブリの向きに依存しない。これによって、アセンブリ作業員はシールアセンブリを予め定められた向きでステアリングナックルに挿入しなくてもよいため、他の公知のシールアセンブリと比べて製造上の利点が与えられ、また車両の運転時にシールアセンブリがステアリングナックルに対して回転してもシールアセンブリは適切に機能するため、信頼性の利点も与えられる。
【0007】
本発明の別の局面によると、シールアセンブリは、外ケースに係合する第1のエラストマー部材と、内ケースに係合する第2のエラストマー部材とを含む。第1のエラストマー部材のみがステアリングナックルに摩擦係合し、第2のエラストマー部材のみが車軸に摩擦係合する。このため、シールアセンブリは、他の公知のシールアセンブリに必要とされる大きな力での押込を必要とせずにこれらの部品上に迅速に設置可能である。
【0008】
本発明のさらに別の局面によると、第1および第2のエラストマー部材は、シールアセンブリを横切るゴミ、水または他の汚染物質の通過を制限するための、自身同士の間に延在する複雑なラビリンスを提供する。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、添付の図面に関連して考慮されると以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるため、容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発明の1つの局面に従って構成される例示的なシールアセンブリの断面図である。
図2】車両の前輪アセンブリ内に設置される図1の例示的なシールアセンブリの部分断面図である。
図3図2とは異なる視点からとられた、車両の前輪アセンブリ内に設置される図1の例示的なシールアセンブリの別の部分断面図である。
図4図1の例示的なシールアセンブリの第1のエラストマー部材の菊型特徴の一部の正面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施可能な実施形態の説明
いくつかの図全体にわたって同様の番号は対応の部分を示す図面を参照して、本発明の1つの局面に従って構成される例示的なシールアセンブリ20が図1に全体的に示され、図2および図3に全体的に表示される。例示的なシールアセンブリ20は、電子シフトオンザフライ(ESOF)システムを有する4×4(四輪駆動)車(ピックアップトラックまたはスポーツ汎用車など)の前輪アセンブリ(図2および図3に示される)内に用いられるように構成され、ESOFシステムは、各前輪アセンブリのステアリングナックル24の真空ポート22を通って真空を引くように選択的に作動する真空ポンプ(図示せず)を有する。真空ポンプが作動するとロッキングハブ26から空気が抽出され、これによってロッキングハブ26の内部に圧力差が生じ、ハブ26が車軸28に係合するかまたは車軸28から解放される。例示的なシールアセンブリ20は、関連付けられたハブ26からステアリングナックル24の真空ポート22に空気が通過することを可能にしつつ、前輪アセンブリの各々の内部でステアリングナックル24を車軸28にシールする。
【0012】
図1を参照して、例示的なシールアセンブリ20は、ステアリングナックル24の内ボアの内部に受けられるように構成された外ケース30と、車軸28の外面の周りに(直接的または間接的に)係合するように構成された内ケース32とを含む。図1に示されるように、例示的な外ケース30は曲げられて、軸方向に延在する外リム34と、円弧状部分36と、内リム38と、第1のレッグ40とを含む。外リムおよび内リム34,38は、内リム38が外リム34の径方向内側に間隔をあけられるように、円弧状部分36を介して互いに一体に接続される。例示的なシールアセンブリ20の第1のレッグ40は、内リム38の円弧状部分36と反対の端から径方向内向きに延在する。外ケース30は好ましくは鋼鉄製であり、深絞り加工で成形される。しかし、外ケース30は任意の所望の方法(ロール成形、鋳造、機械加工など)で成形されてもよく、任意の好適な金属または非金属(鉄、アルミニウム、チタン、マグネシウム、複合物など)製であってもよいことを認識すべきである。例示的なシールアセンブリ20は、外ケース30に係合し、かつ外リム34、円弧状部分36および第1のレッグ40に沿って延在する、第1のエラストマー部材42をさらに含む。第1のエラストマー部材42は好ましくはオーバーモールド加工によって外ケース30に取付けられるが、代替的に、たとえば締結具、接着剤等の使用を含む任意の所望の方法によって外ケース30に取付けられてもよい。
【0013】
次に図2を参照して、ステアリングナックル24の真空ポート22はステアリングナックル24の内ボアの内部へと径方向に延在する。例示的なシールアセンブリ20がステアリングナックル24内に設置されると、外ケース30の外リム34、および外リム34に取付けられる第1のエラストマー部材42の部分の両方が、真空ポート22の両側で軸方向に延在する。例示的な実施形態では、第1のエラストマー部材42の一部が外ケース30の外リム34の周りを円周方向に延在する。このため、例示的なシールアセンブリ20では、第1のエラストマー部材42のみがステアリングナックル24と直接接触する。これによって、例示的なシールアセンブリ20は、アセンブリ作業員または機械工によって手動でステアリングナックル24内に設置可能である。これは、例示的なシールアセンブリ20を、金属製の外面を有し、したがって大きな力で押込んでステアリングナックル24内に促す必要がある多くの他の公知のシールアセンブリから区別する。第1のエラストマー材料は好ましくはゴム材料製であるが、ステアリングナックル24を摩擦係合し得る任意の他の材料製であってもよい。真空ポート22の軸方向の一方側において、第1のエラストマー部材42は、ステアリングナックル24に対するシールアセンブリ20の摩擦取付を向上させるように軸方向に互いに間隔をあけられた複数のロッキングリブ44をさらに含む。
【0014】
ロッキングリブ44と反対の真空ポート22の軸方向の側において、第1のエラストマー部材42は、複数の溝50または流路によって互いに間隔をあけられた複数の径方向外向きに延在する突出部48を有する菊型の(castellated)特徴46を含む。第1のエラストマー部はロッキングリブ44と菊型特徴46との間でほぼ平坦であり、したがって、シールアセンブリ20がステアリングナックル24内に設置されると、ステアリングナックル24と第1のエラストマー部材42との間に空隙52が存在する。空隙52は第1のエラストマー部材42の周りを円周方向に延在し、ステアリングナックル24の真空ポート22と流体連結する。好ましくは、ステアリングナックル24の内ボアもこの領域内で膨張して空隙52のサイズをさらに拡大する。ロッキングリブ44と菊型特徴46との間の第1のエラストマー部材42の部分を引込めて空隙52のサイズをさらに拡大してもよい。
【0015】
次に、菊型特徴46の溝50のうち1つを貫通してとられた断面図である図3を参照して、各溝50は、軸方向成分および径方向成分を有するほぼL字形状である。空気経路(複数の矢印として示される)がハブ26から、ハブ26とシールアセンブリ20との間を、菊型特徴46の溝50の径方向および軸方向成分の両方を通り、空隙52を通り、ステアリングナックル24の真空ポート22に延在する。運転時、空気はこの空気経路を通ってハブ26から抽出され、ロッキングハブ26を車両の駆動系に対して選択的に係合および解放する。空隙52は第1のエラストマー部材42の周りを円周方向に延在しているので、空気経路はステアリングナックル24に対するシールアセンブリ20の向きに関わらず存在する。したがって、アセンブリ作業員または機械工はシールアセンブリ20を任意の所望の向きに挿入することができる。これによって、車輪アセンブリを組立てるのに必要な時間を短縮することができ、不良車輪アセンブリの数も減らすことができる。また、車両の運転時にシールアセンブリ20がステアリングナックル24の内部で向きを変えても、車両のESOFシステムの性能を妨害しない。
【0016】
再び図2を参照して、径方向外向きに延在する突出部48の領域では、菊型特徴46がステアリングナックル24と摩擦接触してこれら2つの部品同士の間の取付を向上させる。菊型特徴46の別の図が、菊型特徴46の一部の正面拡大図である図4に示される。例示的な菊型特徴46は、ほぼ均一にサイズ決めされ、かつ4つの溝50によってほぼ均一に互いに間隔をあけられた、約4つの突出部48を含む。しかし、菊型特徴46は任意の所望の数の突出部48を含んでもよく、突出部は異なるサイズを有してもよく、および/または互いに異なる距離の間隔をあけられてもよいことを認識すべきである。
【0017】
再び図1を参照をして、内ケース32は断面に見られるようにL字形状に曲げられており、軸方向に延在する軸方向部分54と、軸方向部分54から径方向外向きに延在する第2のレッグ56とを有する。外ケース30と同様に、内ケース32は好ましくは深絞り加工で成形され、金属製である。しかし、内ケース32は任意の所望の方法で成形されてもよく、任意の好適な金属または非金属製であってもよいことを認識すべきである。
【0018】
第2のエラストマー部材58が内ケース32の一方側においてL字形状に取付けられ、これを通って延在する。例示的な実施形態では、第2のエラストマー部材58の一部が内ケース32の軸方向部分54の径方向内側に配置される。このため、例示的なシールアセンブリ20が車両の車輪アセンブリ内に設置されると、内ケース32ではなく、第2のエラストマー部材58のみが車軸28に係合する。こうして、例示的なシールアセンブリ20はアセンブリ作業員または機械工によって手動で車軸28上に設置可能である。これは、例示的なシールアセンブリ20 20を、大きな力で押込んで車軸上に促す必要がある他の公知のシールアセンブリから区別する。第1のエラストマー部材42と同様に、第2のエラストマー部材58も好ましくはゴム材料製であるが、代替的に、車軸28を摩擦係合し得る任意の他の材料製であってもよい。例示的な実施形態では、第2のエラストマー部材58の軸方向部分54は、例示的なシールアセンブリ20と車軸28との間の取付を向上させるように軸方向に互いに間隔をあけられた複数のロッキングリブ45を含む。
【0019】
再び図1を参照して、第1のエラストマー部材42は、軸方向に延在して内ケース32の第2のレッグ56に接して係合してシールする複数のシールリップ60a,bと、径方向外向きに延在して内ケース32の軸方向部分54に接してシールする複数のシールリップ60c,dとを含む。例示的なシールアセンブリ20は、第1のエラストマー部材42の一部の周りを円周方向に延在してシールリップ60dのうち少なくとも1つを内ケース32に接して付勢してそれらの間のシールを向上させるガータースプリング61をさらに含む。グリースまたは何らかの他の種類の潤滑油が典型的に、シールアセンブリ20のハブ26を有する側に配置される。さらに、径方向に延在するシールリップ60c,dのうち2つの間にグリースパック63が配置され、それらのシールリップ60c,dと内ケース32との間に確立されたシールを損なうことなくこれらの間の摩擦を減少させる。
【0020】
例示的なシールアセンブリ20の第1および第2のエラストマー部材42,58はさらに組合わさって、複数の曲げ部および湾曲部を含むラビリンス62を提供し、汚染物質はシールアセンブリ20を横切るためにはラビリンス62を通り抜けなければならなくなる。具体的に、第2のエラストマー部材58は、内ケース32の第2のレッグ56から離れるように軸方向にかつ径方向外向きに延在するほぼL字形状の特徴64を含み、第1のエラストマー部材42は、第2のエラストマー特徴のL字形状の特徴64の端に隣接した自由端に突出する突起部66を含む。シールリップ60および複雑なラビリンス62はともに、汚染物質が例示的なシールアセンブリ20を横切ることを十分防止する。
【0021】
運転時、車軸28および内ケース32がステアリングナックル24に対して回転すると、シールリップ60が内ケース32に接して摺動して、グリースがシールアセンブリ20を通って逃げることを防止する。第1および第2のエラストマー部材42,58によって形成されるシールリップ60および複雑なラビリンス62は、水、ゴミまたは他の汚染物質がシールを通って漏れることを防止する。また、第1のエラストマー部材42の菊型特徴46およびそれに隣接して形成される空隙52によって、ステアリングナックル24の真空ポート22がロッキングハブ26から空気を抽出してロッキングハブ26を車両の駆動系に対して係合または解放することができる。他の公知のシールアセンブリとは異なり、例示的なシールアセンブリ20は、ステアリングナックル24に対する自身の向きに関わらずこれらの目的のすべてを達成する。
【0022】
上記教示に照らして本発明の多数の修正例および変形例が可能であり、添付の請求項の範囲内で、具体的に記載されたもの以外の態様で実践され得ることが明らかである。また、請求項中の参照番号は便宜上に過ぎず、いかなる意味でも限定的であると解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4