(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧電性フィルムの前記可動部を操作者の指によって変位させるように操作する際に、前記指を接触させる部分を与えるための操作部材をさらに備え、前記操作部材は、前記圧電性フィルムの厚みより大きい幅方向寸法を有し、かつ前記圧電性フィルムの前記第2の辺に沿って取り付けられる、請求項2に記載のセンサーデバイス。
前記固定部は、前記圧電性フィルムの互いに対向する第1および第2の辺にそれぞれ沿うように位置され、前記可動部は、前記圧電性フィルムにおける前記第1および第2の辺の中間部に位置される、請求項1に記載のセンサーデバイス。
前記圧電性フィルムの少なくとも折り返し部分の外表面上に貼り付けられる保護フィルムをさらに備え、前記保護フィルムは、当該保護フィルムと前記圧電性フィルムとによるバイモルフ効果により、前記圧電性フィルムの前記折り返し部分を外方から押圧したとき、前記圧電性フィルムの前記可動部において伸長変形を生じさせるように作用するものであり、
前記電極は、前記圧電性フィルムの前記可動部における伸長または圧縮変形がもたらす出力電圧を取り出すための伸長/圧縮変形検出用電極をさらに含み、
前記圧電性フィルムの前記折り返し部分の内周側に配置される弾性体をさらに備える、
請求項6に記載のセンサーデバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の目的は、ポリ乳酸のようなキラル高分子からなる圧電性フィルムを用いて構成される、センサーデバイスを提供しようとすることである。
【0006】
この発明の他の目的は、上記のようなセンサーデバイスを用いて構成される、携帯通信機器、タブレットPCまたは携帯ゲーム機のような電子機器を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、主成分がキラル分子を単位とするキラル高分子からなり、かつキラル分子の主たる配向方向が主面に対して平行な方向に向けられた、圧電性フィルムと、圧電性フィルムからの出力電圧を取り出すためのもので、圧電性フィルムの少なくとも一部を挟んで互いに対向する状態で圧電性フィルムの両主面上に形成された、電極と、を備える、センサーデバイスにまず向けられるもので、以下のような特徴を有している。
【0008】
上記圧電性フィルムには、当該圧電性フィルムの変位が固定される固定部と当該圧電性フィルムの主面に対して平行な方向に変位する可動部とが配置される。また、電極として、上記可動部の変位によって生じる圧電性フィルムのずり変形がもたらす出力電圧を取り出すためのずり変形検出用電極が形成される。
【0009】
このような構成によって、この発明に係るセンサーデバイスは、圧電性フィルムにもたらされるずり変形を圧電定数d
14の効果によって直接検出しようとすることを特徴としている。
【0010】
好ましくは、圧電性フィルムは、キラル分子の主たる配向方向に対して平行または略平行に延びる辺を持つ矩形状に切り出されたものであり、固定部は、矩形状の圧電性フィルムのいずれかの辺に沿うように位置される。このような構成によれば、圧電性フィルムにずり変形を生じさせたとき、圧電定数d
14に基づく圧電効果をより効率良く発揮させることができる。なお、圧電性フィルムを製造するにあたって、延伸工程が実施されるが、この延伸方向に沿って、通常、キラル分子が配向する。
【0011】
上述の場合において、第1の好ましい実施態様では、固定部は、圧電性フィルムの第1の辺に沿うように位置され、可動部は、第1の辺とは対向する第2の辺に沿うように位置される。これにより、可動部に対して操作者が摩擦力を与える方向に沿って、キラル分子の主たる配向方向を向けることができるので、ずり圧電の結果による圧電性フィルムの変形とよく似た変形を圧電性フィルムにおいて生じさせることができる。したがって、圧電定数d
14に基づく圧電効果を最も効率良く発揮させ得るずり変形を圧電性フィルムに生じさせることができる。
【0012】
上述の第1の好ましい実施態様に係るセンサーデバイスにおいて、圧電性フィルムの可動部を操作者の指によって変位させるように操作する際に、指を接触させる部分を与えるための操作部材が設けられていることが好ましい。この操作部材は、圧電性フィルムの厚みより大きい幅方向寸法を有し、かつ圧電性フィルムの第2の辺に沿って取り付けられる。このような構成によれば、比較的幅広の操作部材によって操作がより容易かつ快適になるとともに、圧電性フィルムの可動部が操作者の指によって直接こすられることがないため、圧電性フィルムそのものが磨滅せず、圧電性フィルムの耐久性を向上させることができる。
【0013】
他方、第2の好ましい実施態様では、固定部は、圧電性フィルムの互いに対向する第1および第2の辺にそれぞれ沿うように位置され、可動部は、圧電性フィルムにおける第1および第2の辺の中間部に位置される。このような構成によれば、圧電性フィルムにずり変形を生じさせるように、可動部を操作したとき、第1の辺側と第2の辺側とで逆符号の電荷を生じさせることができる。
【0014】
この発明に係るセンサーデバイスは、好ましくは、圧電性フィルムを平面状態で保持するための保持部材をさらに備える。これにより、圧電性フィルムにおいて、所望のずり変形をより確実に生じさせることができる。
【0015】
前述した第2の好ましい実施態様では、圧電性フィルムが、保持部材によって、第1および第2の辺の中間部を湾曲させて折り返した状態で保持されていてもよい。この構成によれば、圧電性フィルム自体の湾曲した中間部によって、比較的幅広の操作面が与えられるので、容易かつ快適な操作を実現するため、特別な操作部材を必要としない。
【0016】
上述したように、圧電性フィルムが折り返した状態で保持される場合、圧電性フィルムの少なくとも折り返し部分の外表面上には、保護フィルムが貼り付けられ、この保護フィルムと圧電性フィルムとによるバイモルフ効果により、圧電性フィルムの折り返し部分を外方から押圧したとき、圧電性フィルムの可動部において伸長変形を生じさせるようにし、また、電極として、圧電性フィルムの可動部における伸長または圧縮変形がもたらす出力電圧を取り出すための伸長/圧縮変形検出用電極をさらに形成し、また、圧電性フィルムの折り返し部分の内周側に弾性体を配置することが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、圧電性フィルムの折り返し部分をその稜線に沿ってこすれば、圧電性フィルムのずり変形による出力電圧をずり変形検出用電極によって取り出すことができるとともに、圧電性フィルムの折り返し部分を押圧操作すれば、圧電性フィルムの伸長または圧縮変形による出力電圧を伸長/圧縮変形検出用電極によって取り出すことができる。
【0018】
この発明に係るセンサーデバイスにおいて、圧電性フィルムは、ポリ乳酸からなることが好ましい。ポリ乳酸が用いられると、透明性に優れた圧電性フィルムを得ることができる。また、ポリ乳酸によれば、安定した圧電特性を実現することができるとともに、安価にセンサーデバイスを提供することができる。さらに、ポリ乳酸は、カーボンニュートラルであり、また、生分解性であるので、地球環境保護の点でも好ましい。
【0019】
この発明は、また、上述したセンサーデバイスをHMI(ヒューマンマシンインタフェース)として組み込んだ、携帯通信機器、タブレットPCまたは携帯ゲーム機のような電子機器にも向けられる。このような電子機器では、操作者が指でなでるなど、所定の操作を行なうことにより、たとえば画面のスクロールを行なう、といった動作モードを実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係るセンサーデバイスによれば、圧電性フィルムにもたらされるずり変形を圧電定数d
14の効果によって直接検出する構成とされるので、高い検出効率を得ることができる。また、この発明によれば、焦電性がなく、それゆえ温度ドリフトのないセンサーデバイスを実現することができる。さらに、この発明に係るセンサーデバイスは、静電容量方式などとは異なるため、操作者がたとえば手袋をしたままでも操作することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、この発明の原理を理解する上で参考となる技術について詳細に説明する。
【0023】
ポリ乳酸(PLA)は、脱水縮合重合体であり、乳酸の環状二量体であるラクチドを開環重合することによって得られる。乳酸は不斉炭素を含むため、キラリティを有する。したがって、PLAにはL体とD体とが存在し、その重合体をそれぞれL型ポリ乳酸(PLLA)、D型ポリ乳酸(PDLA)と呼ぶ。PLLAの主鎖は左巻き螺旋、PDLAの主鎖は右巻き螺旋構造をとる。L体とD体は乳酸の合成過程において用いる菌などの微生物の種類によってその種類が決定される。現在量産され利用されるPLAはそのほとんどがPLLAである。したがって、以下には、PLLAについて説明する。
【0024】
PLLAは、上述のように、キラル高分子であり、その主鎖の螺旋構造が
図1に示されている。このPLLAシートを一軸延伸し分子を配向させると圧電性を示すことが知られている。圧電定数は高分子の中でも非常に大きい部類に属する。PLLA結晶の点群はD
2であるので、圧電テンソルとして、
図2(A)に示すように、d
14、d
25、d
36の成分があり、いわゆるずり圧電性を示す。延伸されたシート(フィルム)では、d
25=−d
14、d
36=0となることが知られており、圧電テンソルは、
図2(B)に示すようになる。
【0025】
PLLAは延伸による分子の配向、および熱処理による配向分子の結晶化処理を経ることにより大きな圧電性が発現し、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような他のポリマーや圧電セラミック(たとえばPZT)の場合とは異なり、ポーリング処理の必要がない。すなわち、PLLAにおいては、その圧電性は、PVDFやPZTなどの強誘電体のようにイオンの分極により発現するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来して発現する。一般的な強誘電体からなる圧電体は焦電性を示すが、PLLAは焦電性を示さない。さらに、PVDFなどは経時的に圧電定数が小さくなるという現象が見られるが、PLLAは非常に安定して圧電性を保つことができる。
【0026】
ポリマーは、良く知られているように、柔軟であり、大きな変位に対してもセラミックのように破損することが極めて少ない。このため、たとえばPVDFを用いた変位センサー、圧力センサー、振動センサーなどが商品化されている。しかしながら、PVDFは前述のように焦電性を示すため、PVDFを用いたセンサーでは、焦電効果により温度の変化に応じて電圧が発生することになり、このことが不具合をもたらす可能性がある。
【0027】
一方、PLLAで同じようなセンサーを作る場合、PLLAは焦電性を持たないため、温度に依存しないセンシングを可能とする。また、PLLAは、誘電率がおよそ2.5と非常に低いため、圧電出力定数(=圧電g定数: g=d/ε
T)が大きな値になり、センシングには有利である。
【0028】
因みに、ε
33=13×ε
0(ε
0は真空の誘電率)、d
31=25pC/N であるPVDFの場合には、その圧電g定数は、 g
31=d
31/ε
33 より、
g
31=0.2172Vm/N
となる。
【0029】
一方、圧電定数d
14=10pC/N であるPLLAの場合には、その圧電g定数をg
31に換算して求めると、d
14=2d
31 より、d
31=5pC/Nとなり、同様の計算式により、
g
31=0.2258Vm/N
となり、圧電定数d
14=10pC/NであるPLLAであっても、PVDFに匹敵するセンサー感度が得られることがわかる。発明者らは、d
14=15〜20pC/N前後のPLLAを実験により得ており、PVDFをしのぐセンサー感度を持つPLLAセンサーを作製することを可能にしている。
【0030】
次に、PLLAフィルムに電圧をかけたときの変形について、
図3を参照しながら説明する。なお、以下には、PLLAについて説明するが、PLLAの鏡像異性体であるPDLA(D型ポリ乳酸)の場合は変形の方向が逆になるだけで、PLLAとPDLAとは基本的な性能は同等である。
【0031】
図3を参照して、PLLAフィルム21の両主面には、図示を省略するが、電極が形成されている。シンボル22は電場の方向を示し、紙面手前から奥に向かって電場ベクトルが向いていることを示している。矢印23は、フィルム作製過程において実施された延伸の方向を示している。
【0032】
たとえば破線で示す状態にあるフィルム21に電場を印加すると、d
14の効果により、フィルム21は実線で示された状態となるように変形する。なお、この変形は誇張して図示されている。
【0033】
このような変形はずり圧電の基本である。たとえば
図3に示すフィルム21を、
図4に示すように固定する。すなわち、フィルム21の第1の辺24を固定基部26に固定し、ここに、フィルム21の固定部27を構成し、他方、第1の辺24に対向する第2の辺25に沿う部分を可動部28とする。この状態で、可動部28に対して、矢印29で示すような力、たとえば摩擦力を加えれば、フィルム21は、
図3に示したずり圧電の結果による変形と良く似た変形を示す。
【0034】
なお、フィルム21中に記入された矢印30aおよび30bは、
図3に示した矢印23に相当するもので、延伸の方向を示している。すなわち、
図4に示したフィルム21では、延伸は矢印30aの方向であっても、矢印30bの方向であってもよい。もっとも、出力効率の点を考慮しないならば、延伸の方向は、矢印30aの方向、もしくは矢印30bの方向と一致させる必要はなく、これらの中間にある方向であってもよい。
【0035】
前述したように、矢印29で示す摩擦力をフィルム21の可動部28に加えると、電極には圧電効果により電圧が生じる。摩擦力の方向を逆にすれば、変位の方向が逆になるので、発生する電圧の極性が変わる。また、摩擦力が強くなれば、変位が大きくなり、大きな信号が得られる。ここでいう摩擦力とは、操作者の指でこすられる程度の摩擦力と理解すればよい。なお、
図3の場合と同様、
図4においても、フィルム21の両面に互いに対向するように形成される電極の図示が省略されている。
【0036】
上述のPLLAフィルム21のような圧電性フィルムからの信号は、変位に対する微分値であり、定常的な変位量は出力されない。定常的な変位を検出する場合には、圧電性フィルムからの信号をチャージアンプ回路で受けた後、積分回路で積分すればよい。
【0037】
摩擦による操作などをセンシングする場合には、微分値だけの検出でも十分な用途がある。摩擦力が加えられている間は、摩擦力の方向に圧電性フィルムが変形し、変形が一定以上を越えると少し戻り、また摩擦力の方向に変形するという動作を繰り返す。このような変形の繰り返しは圧電の信号として検出可能である。
【0038】
以下、上述した原理に従って実現されるセンサーデバイスのいくつかの実施形態について説明する。
【0039】
図5を参照して、第1の実施形態によるセンサーデバイス31について説明する。
【0040】
センサーデバイス31は、たとえばPLLAからなる矩形の圧電性フィルム32を備える。
図5では図示を省略するが、圧電性フィルム32の両主面上には、
図6に示すように、圧電性フィルム32を挟んで互いに対向する状態で、ずり変形検出用電極33および34が形成されている。なお、第2以降の実施形態を説明するために用いる多くの図面においても、電極の図示が省略されている。
【0041】
圧電性フィルム32は、所定の厚みの2枚の板からなる保持部材35によって挟まれ、それによって、平面状態で保持される。矩形の圧電性フィルム32の第1の辺36に沿う領域、すなわち
図5(B)において網掛けを施した領域は、保持部材35に対して接着剤または他の機械的手段によってリジッドに固定された領域であり、ここに固定部38が与えられる。圧電性フィルム32の固定部38以外の部分は、保持部材35に対する変位が許容されている。その結果、矩形の圧電性フィルム32の第1の辺36に対向する第2の辺37が自由端となり、ここに沿って可動部39が与えられる。可動部39は、
図5(B)および(C)からわかるように、保持部材35から突出した状態で位置している。
【0042】
上述した可動部39を指などで擦って、圧電性フィルム32の主面に対して平行な方向に向く摩擦力を与えると、圧電性フィルム32にはずり変形が生じる。これによって、圧電性フィルム32の両主面に形成された電極33および34(
図6参照)には電荷が発生し、電圧として検出することができる。
【0043】
図5に示したセンサーデバイス31では、圧電性フィルム32の延伸方向(キラル分子の配向方向)は、上述した摩擦力を与える方向に沿っていることが最も好ましい。したがって、最も好ましくは、圧電性フィルム32は、延伸方向に対して平行に延びる辺を有する矩形状に切り出されたものであり、固定部38は、矩形状の圧電性フィルム32のいずれかの辺である第1の辺36に沿うように位置される。
【0044】
図6に示した電極33および34は、圧電性フィルム32の主面の全域にわたって形成されても、一部にのみ形成されてもよい。電極33および34の面積は、これを小さくすると、発生電荷量が小さくなり、変位に対する感度も低下する場合があるが、用いられる圧電性フィルム32の大きさ、与える変位、使用する検出回路の種類等に応じて設計事項として決定されるべきものである。
【0045】
次に、
図7および
図8を参照して、第2の実施形態によるセンサーデバイス31aについて説明する。
図7および
図8において、
図5に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0046】
図7および
図8に示したセンサーデバイス31aは、
図5に示したセンサーデバイス31と比較して、操作部材40をさらに備えることを特徴としている。操作部材40は、圧電性フィルム32の第2の辺37に沿って取り付けられている。操作部材40は、圧電性フィルム32と接着剤などによりリジッドに固定されているが、保持部材35とは固定されておらず、保持部材35の上端面に沿ってスライド可能とされている。
【0047】
また、操作部材40は、圧電性フィルム32の厚みより大きい幅方向寸法を有している。この実施形態では、
図7(B)からわかるように、操作部材40は、保持部材35の全厚み方向寸法と同等の幅方向寸法を有している。
【0048】
操作部材40は、圧電性フィルム32の可動部39を操作者の指によって変位させるように操作する際に、この指を接触させる面を与えるためのものである。
図8には、操作部材40に矢印41方向の摩擦力をかけたときの変位の状態が誇張されて示されている。たとえばPLLAからなる圧電性フィルム32のセンサー感度は極めて優れているため、わずかな変位でも、これを検出することができる。
【0049】
上記のように、操作部材40を備えていると、操作がより容易かつ快適になるとともに、圧電性フィルム32の可動部39が操作者の指等によって直接こすられることがないため、圧電性フィルム32そのものが磨滅せず、圧電性フィルム32の耐久性を向上させることができる。
【0050】
なお、
図7および
図8においても、圧電性フィルム32の両主面上に形成されるずり変形検出用電極の図示が省略されているが、これら電極は、圧電性フィルム32の主面の全域にわたって形成されても、一部にのみ形成されてもよい。
【0051】
次に、
図9および
図10を参照して、第3の実施形態によるセンサーデバイス31bについて説明する。
図9および
図10において、
図5、
図7または
図8に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0052】
図9および
図10に示したセンサーデバイス31bでは、保持部材35が下半部35aと上半部35bとに分割されている。圧電性フィルム32の互いに対向する第1の辺36に沿う領域と第2の辺37に沿う領域とは、それぞれ、保持部材35の下半部35aと上半部35bとに固定されている。
【0053】
このセンサーデバイス31bにおいては、圧電性フィルム32における固定部と可動部とは相対的に決まるもので、たとえば、
図9に示すように、第1の辺36が固定部38を与える場合には、第2の辺37が可動部39を与える。この場合、保持部材35の上半部35bが操作部材として機能し、たとえば、
図10に示すように、矢印41方向の摩擦力をかけたとき、圧電性フィルム32にずり変形が生じ、このずり変形がセンシングされる。逆に、第1の辺36が可動部を与え、第2の辺37が固定部を与えるような態様とし、保持部材35の下半部35aに対して摩擦力をかけるように操作してもよい。
【0054】
なお、
図9および
図10においても、圧電性フィルム32の両主面上に形成されるずり変形検出用電極の図示が省略されているが、これら電極は、圧電性フィルム32の主面の全域にわたって形成されても、一部にのみ形成されてもよい。
【0055】
以上説明したセンサーデバイス31、31aおよび31bにおける保持部材35やセンサーデバイス31aにおける操作部材40は、たとえば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、等の一般的な樹脂材料から構成される。あるいは、ウレタンやシリコーン系樹脂などのエラストマーから構成されてもよい。また、圧電性フィルム32に形成された電極33および34と電気的に絶縁された状態であれば、保持部材35および操作部材40は、金属から構成されてもよい。
【0056】
次に、
図11を参照して、第4の実施形態によるセンサーデバイス31cについて説明する。
図11において、
図5に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0057】
図11に示したセンサーデバイス31cでは、圧電性フィルム32は、保持部材42上に置かれることによって平面状態に保持される。圧電性フィルム32の第1の辺36に沿う領域が保持部材42に固定され、ここに固定部38が与えられる。第1の辺36とは対向する第2の辺37に沿う位置に、可動部39が与えられる。可動部39に対して、たとえば矢印43方向の摩擦力を加えると、圧電性フィルム32にずり変形が生じ、このずり変形がセンシングされる。
【0058】
図11に示したセンサーデバイス31cにおいて、圧電性フィルム32の少なくとも可動部39のように、手で触れる部分には、図示しないが、電極を保護するための保護フィルムが貼り付けられてもよい。保護フィルムは、たとえば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、またはPP(ポリプロピレン)から構成される。
【0059】
なお、
図11においても、圧電性フィルム32の両主面上に形成されるずり変形検出用電極の図示が省略されているが、これら電極は、圧電性フィルム32の主面の全域にわたって形成されても、一部にのみ形成されてもよい。
【0060】
次に、
図12を参照して、第5の実施形態によるセンサーデバイス31dについて説明する。
図12に示したセンサーデバイス31dは、たとえば、フリック動作専用の簡易的なタッチパネルとしての用途に適している。
図12において、
図5または
図11に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0061】
図12に示したセンサーデバイス31dでは、
図11に示したセンサーデバイス31cの場合と同様、圧電性フィルム32は、保持部材42上に置かれることによって平面状態に保持される。圧電性フィルム32は、互いに対向する第1および第2の辺36および37にそれぞれ沿う領域が保持部材42に固定され、それによって、これら第1および第2の辺36および37に沿って、それぞれ、第1および第2の固定部38aおよび38bが与えられる。可動部39は、圧電性フィルム32における第1および第2の辺36および37の中間部に位置される。可動部39に対して、たとえば矢印44方向の摩擦力を加えると、圧電性フィルム32に比較的微小なずり変形が生じる。
【0062】
図12では、上述のずり変形をセンシングするために圧電性フィルム32上に形成される第1および第2のずり変形検出用電極45および46が図示されている。第1および第2の電極45および46のいずれについても、
図12では、圧電性フィルム32の上面側に位置されたもののみが図示されているが、圧電性フィルム32を挟んで厚み方向に互いに対向する状態で形成されている。
【0063】
圧電性フィルム32にずり変形が生じると、電極45および46に電荷が発生する。このとき、第1の電極45に発生する電荷と第2の電極46に発生する電荷とは互いに逆符号となる。また、矢印44方向の摩擦力を加えた場合と矢印44とは逆向きの摩擦力を加えた場合とでは、電極45および46に生じる電荷の極性は逆転する。
【0064】
また、たとえば矢印44方向の摩擦力を加える場合、摩擦力を加える位置を
図12において右側にずらしたり左側にずらしたりすることにより、第1の電極45に発生する電荷量と第2の電極46に発生する電荷量との比率が変わる。このことから、摩擦力を加えた位置の検出も可能となる。なお、このような検出を特に望まないならば、電極45および46のいずれか一方を省略してもよい。
【0065】
図12に示したセンサーデバイス31dにおいて、圧電性フィルム32の少なくとも可動部39のように、手で触れる部分には、
図11に示したセンサーデバイス31cの場合と同様、電極45および46を保護するための保護フィルムが貼り付けられてもよい。
【0066】
また、電極45および46は、透明とされることが好ましい。この場合、電極45および46の材料として、たとえば、ITO、ZnOなどの無機系透明導電材料、またはポリアニリンまたはポリチオフェンを主成分とする有機系透明導電材料を用いることができる。なお、電極45および46に透明性が要求されない場合には、電極45および46は、アルミニウムなどの金属系材料のスパッタや蒸着によって形成されたり、銀ペーストなどの印刷によって形成されたりすることができる。
【0067】
なお、上述した電極45および46に関する説明は、
図12に示したセンサーデバイス31d以外のセンサーデバイスにおいても当てはまる。
【0068】
次に、
図13および
図14を参照して、第6の実施形態によるセンサーデバイス31eについて説明する。
図13および
図14において、
図5に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
センサーデバイス31eは以下のような特徴を有する。
【0070】
図13に示すように、圧電性フィルム32は、第1および第2の辺36および37の中間部を湾曲させて折り返した状態とされ、この状態が保持部材47によって保持される。ここで、圧電性フィルム32の互いに対向する第1および第2の辺36および37に沿う領域が固定部38とされ、固定部38は、接着剤等によって保持部材47に固定される。可動部39は、圧電性フィルム32における第1および第2の辺36および37の中間部、すなわち湾曲状折り返し部分に位置される。
【0071】
可動部39に対して、
図13(A)に示すように、たとえば矢印48方向の力を加えると、圧電性フィルム32に比較的微小なずり変形が生じる。
【0072】
図14では、上述のずり変形をセンシングするために圧電性フィルム32上に形成される第1および第2のずり変形検出用電極49および50が図示されている。第1および第2の電極49および50のいずれについても、
図14では、圧電性フィルム32の上面側に位置されたもののみが図示されているが、圧電性フィルム32を挟んで厚み方向に互いに対向する状態で形成されている。
【0073】
圧電性フィルム32にずり変形が生じると、電極49および50に電荷が発生する。このとき、
図12に示したセンサーデバイス31dの場合と同様、第1の電極49に発生する電荷と第2の電極50に発生する電荷とは互いに逆符号となる。また、矢印48方向の摩擦力を加えた場合と矢印48とは逆向きの摩擦力を加えた場合とでは、電極49および50に生じる電荷の極性は逆転する。
【0074】
図13に示すように、圧電性フィルム32の湾曲状折り返し部分の内周側には、弾性体51が配置されることが好ましい。操作部となる可動部39の湾曲形状を維持するためである。
【0075】
また、圧電性フィルム32の外表面上には、保護フィルム52が貼り付けられることが好ましい。電極49および50を保護するためである。
【0076】
このセンサーデバイス31eにおいて、電極49および50のいずれか一方を省略してもよい。
【0077】
以上の
図13および
図14を参照して説明したセンサーデバイス31eによれば、圧電性フィルム32自体の湾曲した中間部によって、比較的幅広の操作面が与えられるので、容易かつ快適な操作を実現するため、特別な操作部材を必要としない、という利点が得られる。
【0078】
図15は、この発明の第7の実施形態を説明するためのもので、
図14に示した電極パターンの変形例を示している。
図15において、
図14に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
図15に示した圧電性フィルム32は、
図13に示した構造を有するセンサーデバイス31eにおいて用いられる。ここで、
図15に示した圧電性フィルム32によれば、
図14に示した圧電性フィルム32の場合と同様、ずり変形検出用電極49および50を形成しているので、
図13および
図14を参照して説明したセンサーデバイス31eの場合と同様、可動部39に対して、
図13(A)に示すような矢印48方向の摩擦力を加えて生じた圧電性フィルム32のずり変形をセンシングすることができる。
【0080】
特に、この実施形態の場合には、圧電性フィルム32の少なくとも折り返し部分の外表面上に貼り付けられた前述の保護フィルム52は、必須である。保護フィルム52は、これと圧電性フィルム32とによるバイモルフ効果により、圧電性フィルム32の折り返し部分を外方から押圧操作したとき、圧電性フィルム32の可動部39において長手方向(
図15において左右方向)に伸長変形を生じさせるように作用する。
【0081】
また、
図13に示した弾性体51は、上述した押圧操作の後、操作部となる可動部39の湾曲形状を復元するように作用する。
【0082】
図15に示すように、圧電性フィルム32の互いに対向する第1および第2の辺36および37の中間部に位置される可動部39には、伸長/圧縮変形検出用電極53が形成される。伸長/圧縮変形検出用電極53は、たとえば、第1部分54、第2部分55、第3部分56および第4部分57というように4分割される。
【0083】
前述したように、圧電性フィルム32の折り返し部分を外方から押圧操作したとき、バイモルフ効果により、圧電性フィルム32の可動部39において長手方向(
図15において左右方向)の伸長変形が生じる。このとき、延伸方向が長手方向に沿っているとすると、伸長/圧縮変形検出用電極53における第1部分54および第4部分57と第2部分55および第3部分56とでは、逆符号の電圧が発生する。
【0084】
この伸長/圧縮変形検出用電極53は、圧電性フィルム32の両主面において4分割されても、いずれか一方の主面において4分割されてもよい。後者のように、いずれか一方の主面において4分割される場合には、他方の主面では、4分割された部分のすべてに共通に対向する一様な電極が形成される。一様な電極とされる場合には、第1部分54および第4部分57と第2部分55および第3部分56とを直列接続するような回路が形成され、第1部分54および第4部分57のいずれか一方と第2部分55および第3部分56のいずれか一方とに引出し導体を接続すれば、電圧を検出することができる。他方、両主面において4分割される場合には、第1ないし第4部分54〜57の各々に引出し導体を接続しておけば、回路上で並列接続や直列接続とすることもできる。
【0085】
このように、
図13に示したセンサーデバイス31eにおいて、
図15に示した電極パターンを有する圧電性フィルム32を用いると、撫でる(さする、擦る)操作と押す操作とを互いに分離して検出することができる。
【0086】
図16には、この発明に係るセンサーデバイス61がラビングセンサーとして適用されたスマートフォン62が示されている。センサーデバイス61に備える圧電性フィルム63は、
図17に示すように、スマートフォン62の筐体64に沿って取り付けられる。詳細な図示は省略するが、圧電性フィルム63は、筐体64の側面に設けられた操作部材65に摩擦力を加えることで操作部材65が筐体64に対してわずかにずれたとき、ずり変形が生じるように取り付けられている。そして、圧電性フィルム63上に形成された電極(図示せず。)を通して、ずり変形によって生じた出力電圧が取り出され、この電圧によって、操作部材65に摩擦力が加わったことが検出される。
【0087】
圧電性フィルム63は、図示しない保護フィルムがこれに貼り付けられる場合であっても、200μm程度の隙間さえがあれば、十分にこれを配置することができるので、筐体64の内部において占有容積をほとんど必要としない。
【0088】
図17では、2枚の圧電性フィルム63の各々が、筐体64の上面壁および下面壁に取り付けられたが、単に1枚の圧電性フィルム63が、筐体64の上面壁および下面壁のいずれか一方にのみ取り付けられてもよい。
【0089】
また、操作部材65は、筐体64の側面以外の場所、たとえば筐体64の下面壁の端縁近傍に設けられてもよい。
【0090】
図18は、スマートフォンへのセンサーデバイスの取り付け構造の変形例を示している。
図18に示したセンサーデバイス71は、たとえば
図17に示した筐体64に取り付けられる。センサーデバイス71に備える圧電性フィルム73はN字状に屈曲され、その一方端は、筐体64に固定される固定部74とされる。圧電性フィルム73の他方端は、可動部75とされ、
図17に示した操作部材65に取り付けられる。操作部材65に摩擦力を加えることで操作部材65が筐体64に対してわずかにずれたとき、圧電性フィルム73にずり変形が生じる。そして、圧電性フィルム73上に形成された電極(図示せず。)を通して、ずり変形によって生じた出力電圧を取り出すことができる。
【0091】
以上説明したセンサーデバイスのスマートフォンへの適用例からわかるように、この発明に係るセンサーデバイスは、HMIとして有利に組み込むことができる。そして、この発明に係るセンサーデバイスは、スマートフォンといった携帯通信機器以外にも、たとえばタブレットPCまたは携帯ゲーム機においても、HMIとして有利に組み込むことができる。
【0092】
また、以上の説明において、ずり圧電性を有する圧電性フィルムの材料として、PLLAを例示したが、PDLAを用いることもできる。また、ずり圧電性を有する圧電性フィルムの材料として、他に、ポリ−γ−メチルグルタメート、ポリ−γ−ベンジルグルタメート、セルロース、コラーゲン、ポリプロピレンオキシドなどを用いることも可能である。