特許第6074421号(P6074421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074421
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】波エネルギー吸収体ユニット
(51)【国際特許分類】
   E02B 9/08 20060101AFI20170123BHJP
   F03B 13/16 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   E02B9/08
   F03B13/16
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-519427(P2014-519427)
(86)(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公表番号】特表2014-520982(P2014-520982A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】DK2012050249
(87)【国際公開番号】WO2013007261
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年1月26日
(31)【優先権主張番号】11173842.3
(32)【優先日】2011年7月13日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514011217
【氏名又は名称】フローティング パワー プラント エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(72)【発明者】
【氏名】クーラー,アナス
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05405250(US,A)
【文献】 特表昭60−501119(JP,A)
【文献】 特開昭57−062969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/08
E02B 3/06
F03B 13/16−13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域(99)から波エネルギーを吸収する吸収体ユニット(100)であって、該吸収体ユニット(100)は前方端(101)及び後方端(102)を有し、動作中に、前記前方端(101)は到来波(103)に向かって面し、前記後方端(102)は前記到来波(103)から離れて面し、該吸収体ユニット(100)は、
前方旋回タイプの吸収体要素(110)であって、該吸収体要素は、動作中に該吸収体要素(110)がその回りで下側方向転換位置と上側方向転換位置との間で往復運動する前方旋回軸(113)を備える前端(111)と、下側後縁(114)から上側後縁(115)まで延在する後端(112)とを有し、動作中に、前記前端(111)は前記到来波(103)に向かって面し、前記後端(112)は前記到来波(103)から離れて面し、前記下側後縁(114)は第1の径方向(116)において前記旋回軸(113)から第1の距離に位置し、前記上側後縁(115)は第2の径方向(117)において前記旋回軸(113)から第2の距離に位置し、前記第1の径方向(116)及び前記第2の径方向(117)は、該吸収体要素(110)の鋭角の先端角(α)を規定し、前記第1の距離によって吸収体要素長Flが決まり、該吸収体要素(110)は後側(118)と、上側(119)と、前側(120)とを有する、吸収体要素を備え、
該吸収体ユニット(100)は、
吸収体チャンバ(122)を画定し、前記水域(99)に対して基本的に静止しているように構成されるフレーム構造(121)であって、該フレーム構造(121)は、前記水域(99)の平均表面レベルS上方の軸高Faにある基本的に水平な前方旋回軸(113)から前記吸収体チャンバ(122)内の前記吸収体要素(110)を旋回可能に支持し、静水条件下でアイドル時位置にある前記吸収体要素(110)は部分的に沈水され、前記吸収体要素(110)のアイドル時喫水Fdは前記平均表面レベルS下方の前記下側後縁(114)の沈水深さによって決まり、該フレーム構造(121)は底板(130)を備え、該底板(130)の前部(131)は前記前方旋回軸(113)のレベルからの最小距離及び最大距離を有し、前記最小距離は前記旋回軸高Fa及び前記吸収体要素(110)の前記アイドル時喫水Fdの和に対応し、前記最大距離は前記吸収体要素長Flを超えず、前記底板(130)は、前記前部(131)の後端から上方に突出する後部(132)を更に備え、前記前方旋回軸(113)と、前記底板(130)の前記後部(132)との間の最小径方向距離は前記吸収体要素長Flよりも長い、フレーム構造を更に備える、水域から波エネルギーを吸収する吸収体ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収体ユニットであって、
前記吸収体ユニット(100)は前記吸収体要素(110)の前記アイドル時喫水Fdの所与の値に対して構成され、前記フレーム構造(121)は前記平均表面レベルS下方の深さにあるレベルFbにおいて前記底板(130)の前記前部(131)を支持し、前記深さは前記アイドル時喫水Fdの前記所与の値の1.1倍〜1.7倍の範囲にある、請求項1に記載の吸収体ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収体ユニットであって、
前記底板(130)の前記前部(131)は基本的に平坦である、請求項1又は2に記載の吸収体ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収体ユニットであって、
前記底板(130)の前記前部(131)は基本的に水平に配置される、請求項3に記載の吸収体ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収体ユニットであって、
前記底板(130)の前記後部(132)は、前記底板(130)の前記前部(131)の前記後端における底縁(134)レベルFbから、前記底縁レベルFb上方かつ前記平均表面レベルS下方の上縁(135)レベルFcまで、前記上縁(135)上方の前記吸収体チャンバ(122)が前記吸収体ユニット(100)の後方の前記水域(99)と流体連通するように延在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収体ユニット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体ユニットであって、
鉛直方向において測定されるときに前記底板(130)の前記後部(132)の高さは、前記平均表面レベルSから前記底縁レベルFbの距離の少なくとも10%であり、かつ前記平均表面レベルSから前記底縁レベルFbの距離の最大でも80%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体ユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収体ユニットであって、
前記前方旋回軸(113)と前記底板(130)の前記後部(132)との間の前記最小径方向距離は、少なくとも0.5%だけ前記吸収体要素長Flを超え、かつ最大でも20%しか前記吸収体要素長Flを超えない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収体ユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収体ユニットであって、
前記底板(130)の前記後部(132)は、後方側において水平レベルに対して鋭角の傾斜角を形成するように、前記前部(131)の前記後端から後方に突出する平板である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収体ユニット。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収体ユニットであって、
前記底板(130)の前記後部(132)の位置及び/又は前記底板(130)の前記後部(132)によって覆われる面積は調整可能である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収体ユニット。
【請求項10】
請求項に記載の吸収体ユニットであって、
前記底板(130)の前記後部(132)は、前記到来波内に含まれるエネルギーを表すしきい値が超えられるときに自動的に起動される解放手段によって調整可能である、請求項に記載の吸収体ユニット。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の吸収体ユニットであって、
前記フレーム構造(121)は前記前方旋回軸(113)に対して平行な軸方向において前記吸収体チャンバ(122)を画定する側壁を備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の吸収体ユニット。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸収体ユニットであって、
該吸収体ユニットは着脱可能モジュールとして構成され、前記フレーム構造には、前記フレーム構造をドッキング構造上の協調収容手段に取り付ける解放可能取付手段が設けられる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸収体ユニット。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の1つ又は複数の吸収体ユニットを備える波力発電所。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の1つ又は複数の吸収体ユニットを備える砕波体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水域から波エネルギーを吸収する吸収体ユニットに関し、その吸収体ユニットは、前方旋回タイプの吸収体要素と、水域に対して基本的に静止しているように構成されるフレーム構造とを備える。吸収体要素は、動作中の吸収体要素がその回りで下側方向転換位置と上側方向転換位置との間で往復運動する前方旋回軸を備える前端と、下側後縁から上側後縁まで延在する後端とを有し、動作中に前端は到来波に向かって面し、後端は到来波から離れて面し、下側後縁は第1の径方向において旋回軸から第1の距離に位置し、上側後縁は第2の径方向において旋回軸から第2の距離に位置し、第1の径方向及び第2の径方向は吸収体要素の鋭角の先端角を規定し、第1の距離は吸収体要素長を規定する。フレーム構造は、水域の平均表面レベルS上方の軸高Faにある基本的に水平の前方旋回軸から吸収体要素を旋回可能に支持し、静水条件下でアイドル時位置にある吸収体要素は部分的に沈水され、吸収体要素のアイドル時喫水Fdは静水下方の下側後縁の沈水深さによって決まる。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年、再生可能エネルギー源の利用に対して次第に関心が高まっている。波エネルギーは、沖合数百キロメートルにおいて大きな暴風によって引き起こされる再生可能エネルギー源であり、それらの暴風は大量のエネルギーを生成及び伝搬し、それらのエネルギーは(うねりを介して)長距離を移動し、局所的な作用(海水)と混合して、海岸に達する。それは純粋に再生可能なエネルギー源であり、潮汐エネルギーとは異なる。再生可能エネルギー源としての波エネルギーは、幾つかの利点を有する。1つの利点は、波エネルギーの高い電力密度であり、それは波エネルギーが最も低いコストの再生可能エネルギー源になる能力を有することを示唆する。更なる利点は波エネルギーの予測可能性である。太陽光及び風とは異なり、波エネルギーレベルは、何日も前から予測することができ、波エネルギーを国家的な電力供給と融合させるのは難しくない。
【0003】
波エネルギーの利用の主な課題は、エネルギー吸収の効率を高めること、変動する波条件下でエネルギーを取り込むこと、波力発電所の生産可能時間を最大化すること、及びエネルギー生産コストを最小化することを含め、年間を通してエネルギー生産を最適化することである。
【0004】
前方旋回タイプの吸収体を使用する波力発電所が特許文献1に開示されており、複数の前方旋回吸収体要素が沈水したプラットフォームに旋回可能に取り付けられ、吸収体要素の前方に配置される水平旋回軸の回りを揺動する。動作中に、到来波が吸収体要素の前端から後端に向かって進行し、吸収体要素と相互作用して、波から運動エネルギー及び位置エネルギーの両方を吸収する。プラットフォームフレームに対する吸収体要素の結果的な運動が水圧動力取出装置によって利用される。開示される吸収体要素は、閉じた先端及び開いた底部を有する浮体を備え、有孔壁を用いて複数のセルに更に分割することができ、有孔壁は水が浮体に流入及び流出する場合の流動抵抗として作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】デンマーク国特許第174463号
【発明の概要】
【0006】
本発明の一目的は前方旋回タイプの吸収体要素を備える波吸収体ユニットを提供することであり、その吸収体ユニットは、変動する波条件下で波エネルギーを効率的に吸収できるようにする。
【0007】
本発明の更なる目的は、波力発電所において使用する波吸収体ユニットを提供することである。
【0008】
一態様によれば、本発明の目的は、水域から波エネルギーを吸収する吸収体ユニットによって達成され、前記吸収体ユニットは、
前方旋回タイプの吸収体要素であって、該吸収体要素は、動作中に該吸収体要素がその回りで下側方向転換位置と上側方向転換位置との間で往復運動する前方旋回軸を備える前端と、下側後縁から上側後縁まで延在する後端とを有し、動作中に、前記前端は前記到来波に向かって面し、前記後端は前記到来波から離れて面し、前記下側後縁は第1の径方向において前記旋回軸から第1の距離に位置し、前記上側後縁は第2の径方向において前記旋回軸から第2の距離に位置し、前記第1の径方向及び前記第2の径方向は、該吸収体要素の鋭角の先端角を規定し、前記第1の距離によって吸収体要素長が決まる、吸収体要素と、
吸収体チャンバを画定し、前記水域に対して基本的に静止しているように構成されるフレーム構造であって、該フレーム構造は、前記水域の平均表面レベルS上方の軸高Faにある基本的に水平な前方旋回軸から前記吸収体チャンバ内の前記吸収体要素を旋回可能に支持し、静水条件下でアイドル時位置にある前記吸収体要素は部分的に沈水され、前記吸収体要素のアイドル時喫水Fdは前記平均表面レベルS下方の前記下側後縁の沈水深さによって決まり、該フレーム構造は前記前方旋回軸に平行する軸方向において前記吸収体チャンバを画定する側壁と、基本的に側壁間で軸方向に延在する底板とを備え、該底板の前部は前記前方旋回軸のレベルからの最小距離及び最大距離を有し、前記最小距離は前記旋回軸高Fa及び前記吸収体要素の前記アイドル時喫水Fdの和に対応し、前記最大距離は前記吸収体要素長Flを超えない、フレーム構造とを備える。
【0009】
上記の吸収体ユニットのより広範な態様によれば、フレーム構造は、吸収体チャンバを画定し、水域に対して基本的に静止しているように構成され、フレーム構造は、水域の平均表面レベルS上方の軸高Faにある基本的に水平な前方旋回軸から吸収体チャンバ内の吸収体要素を旋回可能に支持し、静水条件下でアイドル時位置にある吸収体要素は部分的に沈水され、吸収体要素のアイドル時喫水Fdは平均表面レベルS下方の下側後縁の沈水深さによって決まり、フレーム構造は前縁から後縁まで延在する吸収体要素の真下に配置される底板を備え、後縁は、吸収体ユニットの前方端から後方端へ縦方向に見るときに前縁の後方に配置され、静水条件下で、前縁は吸収体要素のアイドル時喫水下方のレベルに配置され、後縁はアイドル時喫水上方、かつ水の平均表面レベル下方のレベルに配置され、前方旋回軸から後縁の距離は吸収体要素長より長い。
【0010】
水域の平均表面レベルSは、例えば、風浪から生じる水面上昇の変動を平均することによって得られる平坦なレベルである。平均表面レベルは、水域の静水レベル、すなわち、静水条件下の表面レベルに対応する。良好な近似のために、平均表面レベルSの基準は、吸収体ユニットのフレーム構造上のレベルに位置付けることができ、それゆえ、フレーム構造レベルは、吸収体ユニットの構成及び/又は動作のための等価基準と見なすことができる。浮遊構造の場合、波エネルギー取込みの動作方式を超える時間スケールでの平均海水面の低速の変化、例えば、海水面の潮汐変化は、浮遊構造が平均海水面のそのような低速の変化に追従するので、平均表面レベルSの基準に影響を及ぼさない。それゆえ、フレーム構造は、取り込まれる波の波周期に対応する時間スケールにおける水域の平均表面レベルに対して静止していると見なすことができる。また、固定された土台に取り付けられるフレーム構造も、波エネルギー取り込みの動作方式を超える時間スケールにおいて海水面の変化に追従する手段を備えることができる。
【0011】
用語「鉛直な」は重力に対して平行な方向を指しており、用語「水平な」は鉛直方向に対して垂直な方向を指している。鉛直方向は、水域の平均表面に対して基本的に垂直である。吸収体の用語である「上部」及び「底部」は、使用中の、又は少なくとも水域に配置されるときの吸収体の位置に対して規定され、底部から上部に向かう「上向き」方向は水面から出る方向を指しており、上部から底部に向かう「下向き」方向は水中に入る方向を指している。用語「レベル」は、水平面の鉛直位置を指している。平均表面レベルS上方のレベルを用いて、静水上方の高さを指定することができる。平均表面レベルS下方のレベルを用いて、静水下方の深さを指定することができる。水域の平均表面レベルに対して平行な方向として2つの水平方向を定義することができ、そのうち、軸方向は前方旋回軸に対して平行であり、縦方向は軸方向及び鉛直方向の両方に対して垂直である。縦方向は、吸収体要素の前端から後端の方向、及び吸収体ユニットの前方から後方の方向に進む。用語「前」及び「後」並びに「前方」及び「後方」は吸収体が構成される通常の使用条件下の吸収体の位置から導出され、波の伝搬方向は、到来波に向かって面する前方端/前端から、到来波から離れて面する後方端/後端への方向である。
【0012】
前方旋回タイプの吸収体要素は、前端に配置される旋回軸の回りを回転運動するために旋回可能に支持されるように構成される要素である。
【0013】
吸収体のアイドル時位置は、静水条件下の水域に対して規定することができる。そのアイドル時位置において、吸収体要素は、静水上方の所定の軸高にある前方旋回軸から懸吊されるように構成され、部分的に沈水される。吸収体要素のアイドル時喫水は、吸収体要素の沈水された下側後縁の静水下方の深さによって決まる。通常、吸収体要素の主要部分は水中にあり、吸収体要素の上部のわずかな部分のみが水面から突出している。吸収体要素の前側は、吸収体要素の前端から後端の底部まで延在する。その前面は到来波に向かって面し、それゆえ、吸収体要素の圧力側を形成する。アイドル条件下の前側傾斜は、静水面に対する第1の径方向の角度であり、吸収体要素の動作角と呼ぶことができる。
【0014】
前方旋回軸は基本的に水平な方向に配置され、前方旋回タイプ吸収体要素本体がその前方旋回軸の回りを回転運動する際に、その吸収体要素が上下に往復運動することができ、それにより、その運動を駆動する波から運動エネルギー及び位置エネルギーを吸収できるようになる。吸収体要素本体の往復運動は、アイドル時位置に対する前方旋回軸の後方で実行され、それにより、上側方向転換位置と下側方向転換位置との間の行程容積に及ぶことができる。通常、吸収体要素の前方旋回軸は、吸収体ユニットの前方端に近接して位置する。吸収体要素の後端は吸収体ユニットの後方端の方向に面し、吸収体要素の主要本体は、前方旋回軸の後方で浮遊する。
【0015】
吸収体要素は吸収体ユニット内で動作し、吸収体ユニットは、水域の平均表面上方の所与の旋回軸高にある前方旋回軸から吸収体要素を旋回可能に支持するフレームを備える。吸収体要素の沈水された部分は、吸収体要素に対して浮力をもたらす。浮力は、上向き方向に持ち上げる力を与え、その力は、波の上昇段階において吸収体要素を持ち上げ、前方旋回軸の回りで上向き方向に揺動させる。さらに、前側の沈水された部分は、旋回軸から水中に下方に延在する吸収体要素の圧力面を与え、その面において吸収体要素は入射波と相互作用し、波の運動エネルギーを吸収する。それゆえ、上昇する波は、上側方向転換位置まで吸収体要素を上向き方向に加速し、それにより、波から位置エネルギー及び運動エネルギーの両方を吸収する。波が再び降下するにつれて、吸収体要素は主に重力の影響下で上側方向転換位置から下側方向転換位置まで戻り、その動きは後退する水域への吸収体要素外面の接着のような、更に下方に作用する力によって支援される。後続の波によって駆動されると、吸収体要素は再び下側方向転換位置から上側方向転換位置まで上昇する。それにより、入射波場は吸収体ユニットのフレームに対する吸収体要素の往復運動を駆動することによって、そのエネルギーのかなりの部分を吸収体に伝達する。このエネルギーは、電力取出手段によって動力化することができ、電力取出手段は吸収体運動を有用な電気エネルギーに変換する発電機手段を駆動する。電力取出手段は、例えば、吸収体要素と吸収体ユニットフレームとの間に取り付けられるポンプを備える水圧システムとすることができ、そのシステムでは、ポンプを用いて、水力タービンを駆動する圧力を生成する。代替的には、電力取出手段は、直接エネルギー変換システムとすることができ、吸収体要素の機械的運動が機械的に変換され、連結されて、発電機の入力シャフトを直接駆動する。吸収体要素の運動を電気エネルギーのような有用なエネルギーに変換することの代わりに、又はそれに加えて、その吸収体を防波堤システムにおいて用いることもできる。広いスペクトル範囲にわたって到来波のエネルギーのかなりの部分を吸収することによって、吸収体要素は、吸収体の後方に位置する水を穏やかにする/保護する効率的な防波堤としての役割を果たす。
【0016】
吸収体ユニットは、吸収体チャンバ内に到来波を取り込むために前方端において開いており、後方端は吸収チャンバと吸収体ユニットの後方の水域との流体連通のために少なくとも部分的に開いている。吸収体要素の往復運動は、吸収体チャンバ内で圧力上昇及び圧力解放を繰り返すことによって駆動される。吸収体ユニットは、吸収体チャンバの底部領域において底板を備える。底板の前部は吸収体要素の真下に配置され、底板の前部は前方旋回軸のレベルから最小距離及び最大距離を有する。底板は、下向き方向における吸収体要素の運動に対する最大行程容積を制限する最低方向転換位置に近接して配置される。それにより、入射波の鉛直方向への制限は改善され、圧力の更に大きな上昇が達成され、その圧力が吸収体ユニットのフレームに対する吸収体要素の動きを駆動する。結果として、改善された吸収効率が達成される。吸収体要素の最低限の下方への運動を可能にするために、最小距離は、吸収体要素の少なくとも後端において、旋回軸高Faとアイドル時喫水Fdとの和を超えるべきである。最小距離は、吸収体要素長Flを超えないことが好ましい。最大距離は、吸収体要素の行程容積が前方旋回軸の縦方向位置の後方に配置されることが好都合であることを反映する。
【0017】
底板は軸方向において基本的に水平であることが好ましい。
【0018】
縦方向では、底板は吸収体ユニットの前方端と後方端との間に配置される。底板の後部は、吸収体要素の後端を越えて後方に延在することができ、その後部は吸収体チャンバの後端を規定する。
【0019】
吸収体ユニットを通り抜ける波の全体的な伝搬方向に対して、底板の前縁が上流に位置し、底板の後縁が下流に位置する。前縁は通常、側壁によって画定されるような吸収体チャンバの前端にある。一実施形態では、底板の前縁は、縦方向において、前方旋回軸の鉛直に突出した縦方向位置に概ね位置する。底板の前縁は、縦方向において、吸収体要素長の10%以内、代替的には20%以内、代替的には30%以内で前方旋回軸の鉛直に突出した縦方向位置に位置することが好ましい。
【0020】
吸収体要素は、前端から下側後縁まで延在する前側と、下側後縁から上側後縁まで延在する後側と、上側後縁から前端まで延在する上側とを有する基本的に楔形であることが好ましい。前側は到来波と相互作用する圧力面を形成する。有利には、前側は前端から後端の方向において見られるときに凹形をなす。前側は、前端から下側後縁への第1の方向に沿って延在する直線に対して内側に膨らむことが好ましい。後側表面は到来波から離れて面し、それゆえ、吸収体要素の伴流側を形成する。それゆえ、後側表面の形状は、吸収体ユニットの伴流の波生成に影響を及ぼす。有利には、吸収体要素の後端は、前方旋回軸に対して垂直な断面において見られるときに、下側後縁から上側後縁まで延在する前方旋回軸の回りの円弧に従う形状をなし、その円弧の半径は吸収体要素長に等しい。それにより、吸収体ユニットの伴流における損失を引き起こす波の望ましくない発生が回避される。更に有利には、吸収体要素の先端角は10度〜70度、代替的には20度〜60度、好ましくは25度〜50度である。先端角に対する有利な値、したがって、関連する長さと高さとの比に対する有利な値は、吸収体要素が主に動作する波条件に従って決定されることが好ましい。例えば、浅水域における長周期の浅水波は小さな先端角を必要とする場合があるのに対して、高い周波数で到来する高振幅の波は、大きな先端角を有する相対的に短い波吸収体を必要とする場合がある。有利には、一実施形態によれば、吸収体要素は、約30度の先端角αと、約2の長さ対高さ比とを有する。
【0021】
さらに、一実施形態によれば、前記吸収体ユニットは前記吸収体要素の前記アイドル時喫水Fdの所与の値に対して構成され、前記フレーム構造は前記平均表面レベルS下方にあるレベルにおいて前記底板の前記前部を支持し、前記深さは前記アイドル時喫水Fdの前記所与の値の1.1倍〜1.7倍の範囲にあり、代替的には前記アイドル時喫水Fdの前記所与の値の1.2倍〜1.5倍の範囲にあり、又は前記アイドル時喫水Fdの前記所与の値の約1.3倍である。底板前部が配置される静水下方の深さに対する所与の範囲は、吸収効率に関して吸収体要素の行程容積範囲が及ぶべきである都合の良い値を反映する。
【0022】
さらに、一実施形態によれば、前記底板の前記前部は基本的に平坦である。底板の前縁が前方旋回軸に対して基本的に平行であるように、底板は軸方向において基本的に水平に配置されることが好ましい。底板の前部は、底板の距離に対する上記の限度内で、前方旋回軸のレベルから、及び/又は水域の平均表面レベルから縦方向に傾けることができる。
【0023】
さらに、一実施形態によれば、前記底板の前記前部は基本的に水平に配置される。この実施形態によれば、底板は軸方向において基本的に水平に配置される。さらに、底板の前部は数度の範囲内で縦方向においても基本的に水平である。底板の基本的に水平で平坦な前部は、変動する波場の影響下において水域に対するフレーム構造の安定性を改善する。
【0024】
さらに、好ましい実施形態によれば、前記底板は、前記前部の後端から上方に突出する後部を更に備え、前記前方旋回軸と、前記底板の前記後部との間の最小径方向距離は前記吸収体要素よりも長い。底板の後部は吸収体要素の後方に、かつ吸収体要素の往復運動によって画定される行程容積に近接して配置される。底板の上方に突出する後部は、後方において吸収体チャンバの下側部分を閉じ、それにより、上方への行程中の吸収体チャンバ内の圧力上昇を改善する。
【0025】
さらに、好ましい実施形態によれば、前記前部の前記後端における底縁レベルから、前記底縁レベル上方かつ前記平均表面レベルS下方の上縁レベルまで、前記上縁上方の前記吸収体チャンバが前記吸収体ユニットの後方の前記水域の部分と流体連通するように延在する。吸収体チャンバの後端は、底板の後部によって画定される後面を横切って流体連通できるようにするために、部分的にのみ閉じられる。それにより、下方への「復帰」行程中の圧力解放が改善され、それにより、吸収体要素内に蓄積されたエネルギーが、吸収体チャンバから水を除去するために水域において実行される仕事によって消費される代わりに、電力取出システムによって抽出することができる。
【0026】
さらに、一実施形態によれば、鉛直方向において測定されるときの前記底板の前記後部の高さは、前記平均表面レベルSから前記底縁レベルの距離の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%であり、かつ前記平均表面レベルSから前記底縁レベルの距離の最大でも80%、好ましくは最大でも60%、最も好ましくは最大でも40%である。最小高に対する制限は、吸収体要素の上方への行程中に圧力上昇を高めるという目標を反映する。これは、最大高に対する制限によって反映されるような吸収体要素の下方への行程中の圧力解放を容易にするという目標とバランスを取られる。
【0027】
さらに、一実施形態によれば、前記前方旋回軸と前記底板の前記後部との間の前記最小径方向距離は、少なくとも0.5%だけ、好ましくは少なくとも1%だけ、最も好ましくは少なくとも約2%だけ前記吸収体要素長を超え、かつ最大でも20%、好ましくは最大でも15%、最も好ましくは最大でも10%しか前記吸収体要素長を超えない。これらの値は、底板の上方に延在する後部と、吸収体要素の往復運動が及ぶ行程容積の後端との間の最小距離に対する上限及び下限を指定する。最小距離に対する上限は、吸収体要素の上方への行程中の圧力上昇を高めるという目標を反映する。これは、最小距離の下限によって反映されるような吸収体要素の下方への行程中の圧力解放を容易にするという目標とバランスを取られる。後部の最小径方向距離の最適化は、後部の高さの最適化とともに実行されることが好ましい。
【0028】
さらに、一実施形態によれば、前記底板の前記後部は、後方側において水平レベルに対して鋭角の傾斜角を形成するように、前記底板の前記前部の前記後端から後方に突出する平板である。底板の上方に突出する後部は後方に傾けられる。底板の後部によって画定される平面は、吸収体要素の往復運動によって画定される角度範囲内で円弧に接することが好ましい。
【0029】
有利には、底板の後部の後側において、水平に対して測定される傾斜角は、約30度の先端角を有する吸収体を使用するときに、50度〜80度、好ましくは60度〜70度である。
【0030】
さらに、一実施形態によれば、前記底板の前記後部の位置及び/又は前記底板の前記後部によって覆われる面積は調整可能である。吸収体チャンバの後端を通り抜ける流れを調整することによって、より広範な海面状態での生産に対処するように吸収体ユニットを調整できるようになる。例えば、吸収体チャンバの後端において遮断されるエリアを小さくすることによって、又は吸収体要素と底板の後部との間の距離を長くすることによって、圧力上昇を低減することができ、それにより、より大きな波での生産を可能にする。さらに、底板の調整可能な後部は、吸収体ユニットの暴風保護に寄与することができる。
【0031】
さらに、一実施形態によれば、前記底板の前記後部は、前記到来波内に含まれるエネルギーを表すしきい値が超えられるときに自動的に起動される解放手段によって調整可能である。しきい値が超えられたか否かを判断するために監視される量は、後部にかけられる圧力、吸収体チャンバ内で測定される圧力、測定又は予測される波データ(例えば、著しい波高)等とすることができる。圧力上昇を最小値まで低減するために、解放手段をトリガーして、吸収体チャンバの後端を開くことができる。また、トリガーは、上側方向転換位置に対する上限が超えられるときに吸収体要素を暴風保護位置に捕捉することのような、別の安全関連イベントによって起動される場合もある。それにより、例えば、暴風中に、過剰負荷から吸収体ユニットを物理的に保護するために、安全装置が設けられる。安全装置は、過酷な波条件下で吸収体ユニットの信頼性及び存続性を高める。
【0032】
さらに、一実施形態によれば、前記フレーム構造は前記前方旋回軸に対して平行な軸方向において前記吸収体チャンバを画定する側壁を備える。底板は基本的に側壁間で軸方向に延在することが好ましい。吸収体チャンバの側壁は、軸方向において波伝搬を吸収体チャンバに閉じ込めることができ、到来波を吸収体要素上に誘導することに寄与することができる。吸収体チャンバの側壁は、軸方向における到来波の閉じ込めの効果を高め、吸収体チャンバ内部の圧力上昇を高め、かつ入射波と吸収体要素との相互作用を強めて吸収効率を高めるように、吸収体要素の側壁に極めて隣接して配置することができる。
【0033】
有利には、一実施形態によれば、吸収体ユニットは吸収体要素の運動を上限位置及び/又は下限位置に制限する制限係止機構を備えており、制限係止機構には、衝撃吸収手段が設けられることが好ましい。有利には、アイドル時位置に対する吸収体要素の最大角度振幅は、吸収体ユニットが動作することになる波条件に応じて、±30/±20/±15度である。そのような動作角度が超えられるときに、吸収体要素及び/又は吸収体ユニットの構造に対する任意の損傷を軽減するために制限係止機構が設けられる。
【0034】
有利には、一実施形態によれば、フレーム構造は浮遊プラットフォームに取り付けられるか、又はその一部である。浮遊プラットフォームは沖合運用の場合に特に有用である。通常、吸収体ユニットは沖合浮遊プラットフォームの一部であり、そのプラットフォームは、吸収体要素の前端が到来波に向かって面するように、プラットフォームが「波向体」になる、すなわち、入射波の支配的な方向に追従できるようにする回転式係留システムを用いて係留される。さらに、浮遊プラットフォームは通常、所与の波候を仮定するときに、水域内に静止するように構成され、寸法決めされる。そのために、プラットフォーム上に能動及び受動安定化手段が設けられる場合がある。有利には、それぞれが前方旋回吸収体要素を備える複数の吸収体ユニットを同じプラットフォーム内で組み合わせることができる。
【0035】
有利には、一実施形態によれば、フレーム構造は海底に固定される土台によって支持される。固定された土台は、浅瀬において海岸の近くに配置するために役に立つ場合がある。さらに、固定された土台間に係留された浮遊モジュールの組み合わせを思いつくことができる。
【0036】
さらに、一実施形態によれば、前記吸収体ユニットは着脱可能モジュールとして構成され、前記フレーム構造には、前記フレーム構造をドッキング構造上の協調収容手段に取り付ける解放可能取付手段が設けられる。この実施形態によれば、モジュールを迅速に交換できるようになり、それにより、サービス/メンテナンスを容易にし、所与の設備/プラットフォームのダウンタイムを短縮することができる。
【0037】
有利には、一実施形態によれば、着脱可能モジュールは電力取出及びエネルギー変換手段を備えており、そのモジュールは自己完結的であり、及び/又は機械的締結具及び電力コネクタを備える容易に着脱可能なインターフェースを有する。
【0038】
本発明の更なる態様によれば、波力発電所は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の1つ又は複数の吸収体ユニットを備える。波力発電所内で上記のタイプの吸収体ユニットを使用するとき、吸収体ユニットのフレームに対する吸収体要素の往復運動が電力取出システムによって動力化され、電力取出システムは、発電機のような、動力化されたエネルギーを所望の形の有用なエネルギーに変換する変換手段を備える。波力発電所では、通常、複数の吸収体が互いに隣り合って並列に配置される。
【0039】
本発明の更なる態様によれば、砕波体は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の1つ又は複数の吸収体ユニットを備える。有利には、上記の実施形態のいずれかによる吸収体要素/ユニットは、開放砕波体として使用することができる。本発明による吸収体要素/ユニットは、最大で70%、更にはそれ以上の驚くほど高い吸収効率を有することができる。それゆえ、吸収体要素/ユニットの後方の出射波に含まれるエネルギーは、到来波に比べて実質的に低減することができる。同時に、そのような砕波体システムは、流体連通及び海洋生物の行き来のために開放されており、一方、波下側では、例えば、沿岸保護を提供し、ウインドファーム又は養魚場のような海洋構造物/設備を保護し、産卵域を保護する。それにより、波からの効率的な保護を提供しながら、その砕波体の環境への影響は最小化される。さらに、有利には、複数の吸収体要素/ユニットが、保護ラインに沿って並行、かつ互いに隣り合わせに配置される。さらに、波の全吸収量を増やし、かつ保護を改善するために、複数の吸収体要素/ユニットを順次、縦続接続することができる。縦続接続構成では、上流の吸収体要素/ユニットの後方の波の大きさが小さいことを考慮に入れるために、下流の吸収体要素は、上流の吸収体要素よりも寸法を小さくすべきである。さらに、有利には、開放砕波体の吸収体要素/ユニットは、吸収体要素を支持するフレーム構造に対する吸収体要素の運動から有用なエネルギーを生成する電力取出手段を駆動するために用いられる。
【0040】
本発明は、図面が示す例示的な実施形態を参照しながら以下に更に論じられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1a】吸収体ユニットの概略断面図である。
図1b図1aの吸収体ユニットの幾何学的形状を示す概略断面図である。
図2A】異なる底板外形の例を示す図である。
図2B】異なる底板外形の例を示す図である。
図2C】異なる底板外形の例を示す図である。
図3図2A図2Cの異なる底板外形の効率を比較するグラフである。
図4】ウインドファームの保護のための砕波体配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、水域99から波エネルギーを吸収する吸収体ユニット100の一実施形態を示しており、図1aは吸収体ユニットの断面図を示し、図1bは図1aの吸収体ユニットの幾何学的パラメータを示す。
【0043】
吸収体ユニットは、前方端101及び後方端102を有し、動作中に、前方端101は到来波103に向かって面し、後方端102は到来波103から離れ、吸収体ユニット100の伴流における波場104に向かって面する。入射波場103に向かって面する側は波上側と呼ぶことができ、出射波場に向かって面する側は吸収体ユニット100の波下側と呼ぶことができる。
【0044】
吸収体ユニット100は、前端111及び後端112を有する前方旋回タイプの吸収体要素110を備える。前端111は前方旋回軸113を備え、動作中の吸収体要素110は、その軸の回りで下側方向転換位置と上側方向転換位置との間で往復運動する。後端112は下側後縁114及び上側後縁115を有する。下側後縁114は第1の径方向116において旋回軸113から第1の距離Flに位置し、上側後縁115は第2の径方向117において旋回軸113から第2の距離に位置し、第1の径方向及び第2の径方向は吸収体要素100の鋭角の先端角αを規定する。第1の距離Flによって吸収体要素長が決まる。動作中に、前端111は到来波103に向かって面し、後端112は到来波103から離れて、吸収体ユニット100の伴流における出射波104に向かって面する。吸収体要素110は、後端112において下側後縁114から上側後縁115まで延在する後側118と、前端111から上側後縁115まで延在する上側119と、平均表面レベルに対して角度βで到来波に面する前側120とを有する。アイドル時位置では、前側はアイドル時位置角度β0に傾けられる。図1aに示される実施形態では、先端角は約30度であり、前側120は、前方旋回軸113から下側後縁114までの直線に対して内側に膨らんだ凹形(図面では見えない)の形状をなすことが好ましく、吸収体要素110の後側118は、吸収体要素110が水域99において上下に動くときに、後側表面の往復運動の径方向の変位に起因して波が生じるのを避けるように、旋回軸113の回りの円弧に、すなわち、吸収体要素長Flに対応する半径を有する円弧に従うような形状をなす。
【0045】
吸収体ユニット100は、吸収体チャンバ122を画定するフレーム構造121を更に備える。静止しているフレーム構造121に対する吸収体要素110の運動を動力化して有用なエネルギーを生成できるように、フレーム構造121は水域99に対して基本的に静止しているように構成される。フレーム構造121は、水域99の平均表面レベルSの上方にある軸高Faにある基本的に水平な前方旋回軸113から吸収体チャンバ122内の吸収体要素110を旋回可能に支持する。静水条件下のアイドル時位置では、吸収体要素110は部分的に沈水され、吸収体要素110のアイドル時喫水Fdは、平均表面レベルS下方の下側後縁114の沈水深さによって決まる。フレーム構造121は、前方旋回軸113に対して平行な軸方向において吸収体チャンバ122を画定する側壁と、下方において吸収体チャンバ122を基本的に画定する底板130とを備える。軸方向において、底板130は基本的に側壁間に延在する。底板130の前部131は、任意の上下揺れ、偏揺れ又は横揺れを実行するときに変位されなければならない安定化板130の上方及び下方の水域の部分の付加質量に起因して、任意のそのような運動を減衰させることによって、フレーム構造121に安定性を与える。底板130の後方に延在する水平部分133が安定化効果に更に寄与する。底板130の前部131は水域99の平均表面Sの下方のレベルFbにおいて数度の範囲内で基本的に水平である。第1の部分131を、吸収体要素110の取り得る最も下の方向転換位置にある吸収体要素110の下側後縁114のレベルに近いレベルに配置することは、広範な波条件にわたって吸収効率を高めるという利点を有する。図1に示される実施形態では、平均表面レベルS下方の底板130の前部131のレベルFbの深さは、吸収体要素110のアイドル時喫水Fdの約1.3倍である。底板130の後部132は、吸収体要素110のアイドル時喫水レベルFdに対応するレベルFcまで、又はそれより上まで上方に突出する。底板130の後部132は、底板130の前部131の後端における底縁134のレベルから、底縁レベルの上方かつ平均表面レベルS下方の上縁135のレベルまで、この上縁135の上方にある吸収体チャンバ122が吸収体ユニット100の後方の水域99と流体連通するように延在する。底板130の上方に突出する後部132は、波の下降段階中に効率的に圧力を解放できるようにしながら、波の上昇段階中の圧力上昇を更に高め、それにより、吸収効率を高める。図1に示される実施形態では、後部132は水平に対して65度だけ後方に傾斜して配置される平板であり、底板130の後部132の上縁135のレベルFcは、アイドル時喫水Fdの約40%〜50%だけ、前部131のレベルFbの上方にある。それにより、後部132は、後方断面の面積の約30%〜40%を遮断することによって、吸収体チャンバ122の最も下の部分における後方への流出を阻止する。
【0046】
図2は、吸収体ユニット200のフレーム構造221内に規定される吸収体チャンバ222の底部の3つの構成を示す。図2A及び図2Bの構成は、2つの異なる底板外形230、240を示す。好ましい底板外形230、タイプAは、上記で論じられた図1の構成に類似の水平な前部231及び上方に突出する後部232を有する。底板外形240、タイプBは、上方に突出する後部232を除き、外形タイプAと同等である。図2Cの構成は底板がなく、基準と見なされる。それ以外の条件を同じにして3つ全ての構成に関して試験を実行すると、底板を追加することによって、吸収効率の向上が達成されることが実証された。図2A図2Cの異なる構成に関するそのような試験の代表的な結果が図3において互いに比較されており、それらの結果は構成Cによって、すなわち、いかなる底板も存在しない場合に達成された基準効率に対して正規化される。底板240の追加(タイプB)は、吸収効率を約20%改善するのに対して、底板230の水平な前部231に上方に突出する後部232を更に追加すると(タイプA)、底板を備えない構成(タイプC)に比べて、吸収効率が100%を超えて改善される。
【0047】
図4は、異なる主方向404、406から到達し得る入射波403、405から海岸線402の外側の海に位置するウインドファーム401を保護するための開放砕波体構成400を示しており、砕波体構成の所与のラインは、広範な入射角から到来する波に対処するように構成することができる。その砕波体構成は、保護ライン上に互いに隣り合うように配置される複数の吸収体ユニット407を備える。砕波体構成400の吸収体ユニット407は、海底に係留された浮遊プラットフォームに取り付けることができるか、又はその一部とすることができる。代替的には、又はそれと組み合わせて、砕波体構成400の吸収体ユニット407は、海底に固定された土台によって支持することができる。
【0048】
波下側において海岸保護を提供し、ウインドファームを保護しながら、砕波体400の波上側と波下側との間で海洋生物が行き来できるようにするために、砕波体構成400は、保護ラインを横切って流体連通するように開放されていることが好ましい。それにより、波からの効果的な保護を提供しながら、その砕波体400の環境への影響は最小化される。さらに、開放砕波体の吸収体ユニットは、有用なエネルギーを生成する電力取出手段を駆動するために用いることができ、それにより、ウインドファームのエネルギー生成に追加し、同時に、波を遮断することによってウインドファームの使用可能時間を長くし、サービス/修理を容易にする。一実施形態では、保護ラインは、典型的にはウインドファームの周辺において、風車の隣接する土台間に規定することができる。
図1a
図1b
図2A
図2B
図2C
図3
図4