【実施例】
【0105】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本実施例により本発明は限定されるものではない。
【0106】
本明細書において略称を用いる物質とその略称を以下に示す。
【0107】
以下に、本発明のアレルギー性皮膚炎治療剤、化粧料、健康食品の例を記す。
【0108】
[実施例1]
コーン油50mLに対し、0.03gのアスタキサンチンを懸濁し、窒素雰囲気下60℃にて撹拌し溶解させた後、常温(以下、本実施例において常温とは20〜25℃の温度のことをいう。)まで冷却し、皮膚炎治療剤としての赤色のアスタキサンチン・コーン油液50mLを得た。
【0109】
[実施例2]
コーン油50mLに対し、0.03gのアドニキサンチンを懸濁し、窒素雰囲気下60℃にて撹拌し溶解させた後、常温まで冷却し、皮膚炎治療剤としての赤色のアドニキサンチン・コーン油液50mLを得た。
【0110】
[実施例3]
コーン油50mLに対し、0.03gのアドニルビンを懸濁し、窒素雰囲気下60℃にて撹拌し溶解させた後、常温まで冷却し、皮膚炎治療剤としての赤色のアドニルビン・コーン油液50mLを得た。
【0111】
[実施例4]
白色ワセリン50gに対し、0.03gのアドニキサンチンを添加し、均一になるように撹拌し、皮膚炎治療剤としての薄桃色の50gアドニキサンチン含有クリーム剤を作成した。
【0112】
[実施例5]
スクワラン50mLに対し、0.05gのアドニキサンチンを懸濁し、窒素雰囲気下60℃にて撹拌し溶解させた後、常温まで冷却し、皮膚炎治療剤としての赤色のアドニキサンチン・スクワラン液50mLを得た。
【0113】
[実施例6]
無水エタノール10mLに対し、0.03gのアドニキサンチンを添加し、よく混ぜ合わせた後、蒸留水を40mL加え、皮膚炎治療剤としての赤色のアドニキサンチン含有ローション50mLを得た。ただし完全に溶解しないため、毎回よく振って成分を均一化してから使用する。
【0114】
[実施例7]
蜜蝋11g、スクワラン50gを混ぜ、60℃で湯煎し溶解させた後、均一になるように撹拌する。均一になった後、常温で固化させる。固化した後0.04gの皮膚炎治療剤としてのアドニキサンチンを加え充分に均一化するまで混ぜた後、4℃にて24時間置くことで、薄桃色のアドニキサンチン含有軟膏60gを得た。
【0115】
[実施例8]
蜜蝋6g、オリーブ油24gを混ぜ、60℃で湯煎し溶解させた後、均一になるように撹拌する。均一になった後、湯煎から下ろし蜜蝋・オリーブ油混合物が固まり始めた際に、蒸留水4mLを加えて乳化するまで混ぜる。均一化した後0.04gのアドニキサンチンを加え充分に均一化するまで混ぜ、皮膚炎治療剤としての薄桃色のアドニキサンチン含有クリーム30gを得た。
【0116】
[実施例9]
オリーブ油50mLに対し、0.15gのアドニキサンチンを懸濁し、窒素雰囲気下60℃にて撹拌し溶解させた後、常温まで冷却し、皮膚炎治療剤としての赤色のアドニキサンチン含有オリーブ油50mLを得た。
【0117】
[実施例10]
グリセリン50mLに対し、0.03gのアドニキサンチンを添加し、よく混ぜ合わせた後、蒸留水を40mL加え、皮膚炎治療剤としての赤色のアドニキサンチン含有ローション90mLを得た。
【0118】
[実施例11]
白色ワセリン50gに対し、0.03gのβ−クリプトキサンチンを添加し、均一になるように撹拌し、薄桃色の50gの化粧料としてのβ−クリプトキサンチン含有クリーム剤を作成した。
【0119】
[実施例12−1]
スクワラン50mLに対し、0.05gのルテインを懸濁し、窒素雰囲気下60℃にて撹拌し溶解させた後、常温まで冷却し、化粧料としての赤色のルテイン・スクワラン液50mLを得た。
【0120】
[実施例12−2]
無水エタノール10mLに対し、0.03gのゼアキサンチンを添加し、よく混ぜ合わせた後、蒸留水を40mL加え、化粧料としての赤黄土色のゼアキサンチン含有ローション50mLを得た。ただし完全に溶解しないため、毎回よく振って成分を均一化してから使用する。
【0121】
[実施例13]
蜜蝋11g、スクワラン50gを混ぜ、60℃で湯煎し溶解させた後、均一になるように撹拌する。均一になった後、常温で固化させる。固化した後0.04gのα−クリプトキサンチンを加え充分に均一化するまで混ぜた後、4℃にて24時間置くことで、化粧料としての薄桃色のα−クリプトキサンチン含有軟膏60gを得た。
【0122】
[実施例14]
オリーブ油50mLに対し、0.15gのアドニキサンチンを懸濁し、窒素雰囲気下60℃にて撹拌し溶解させた後、常温まで冷却し、健康食品としての赤色のアドニキサンチン含有オリーブ油50mLを得た。
【0123】
[実施例15]
コーン油50mLに対し、0.03gのアドニルビンを懸濁し、窒素雰囲気下60℃にて撹拌し溶解させた後、常温まで冷却し、健康食品としての赤色のアドニルビン・コーン油液50mLを得た。
【0124】
[実施例16]
乳酸カルシウム175mg、グリセロリン酸カルシウム175mg、重炭酸ナトリウム250mg、アスパラギン酸カルシウム0.5mg、コロイド状二酸化ケイ素12mg、コーンスターチ15mg、デキストロース10mg、マルトデキストリン3mg、マンニトール6mg、プレゼラチン化デンプン3mg、アドニキサンチン6mgを完全に混和させた後、打錠し、健康食品用錠剤として10mgの錠剤を得た。
【0125】
[実施例17]
アドニキサンチン、アドニルビン、アスタキサンチン、α−クリプトキサンチン、β−クリプトキサンチン、ゼアキサンチンおよびルテインの製造方法を以下に示す。
<Paracoccus中のキサントフィル化合物の分離方法>
(1)Paracoccus生菌体からの濃縮乾固品の製造
キサントフィル化合物産生細菌を定法に従い培養した。培養が終了した培養物から遠心操作によってある程度上清を除いた生菌体100gを抽出工程に用いた。生菌体100gにアセトン500mLを添加し、室温に6時間おいた後、抽出液(i)と菌体(i)とに分離した。菌体(i)にさらにアセトン500mLを添加し、室温に6時間おいた後、抽出液(ii)と菌体(ii)とに分離した。さらに、菌体(ii)に同様の操作に行い、抽出液(iii)と菌体(iii)を得た。抽出液(i)〜(iii)を混合し、全抽出液約1.5Lを得た。得られた全抽出液を水と油分が分離するまでエバポレーター濃縮した後、ヘキサン・クロロホルム1:1溶液100mLを添加し、分液操作により有機溶媒層と水層とに分離した。有機溶媒層を40℃以下でエバポレーター濃縮し、濃縮乾固品を得た。エバポレーター濃縮の際、水分が残存するようであれば、エタノールを少量加え、50℃で共沸させて取り除いた。
【0126】
(2)Paracoccus乾燥菌体からの濃縮乾固品の製造
上記(1)と同様に培養が終了した培養物から培地成分のみを取り除いた後、菌体を乾燥させて乾燥菌体を得た。得られた乾燥菌体に菌体が湿る程度の水分を添加したものを抽出工程に用いた(100g)。アセトン500mLを添加し、室温に6時間おいた後、抽出液(iv)と菌体(iv)とに分離した。菌体(iv)にさらにアセトン500mLを添加し、室温に6時間おいた後、抽出液(v)と菌体(v)とに分離した。抽出液(iv)〜(v)を混合し、全抽出液を得た。全抽出液から上記(1)と同様の方法により、濃縮乾固品を得た。
【0127】
(3)濃縮乾固品からのキサントフィル化合物の分離
濃縮乾固品を、定法(JP2009−019935)に従い、テトラヒドロフランにて溶解した後、高速液体クロマト装置(HPLC)を用いてキサントフィル化合物の分取を行った。
【0128】
カラムはWakosil−II 5 SIL−100(和光純薬製)を2本連結して使用した。移動相はn−ヘキサン:テトラヒドロフラン:メタノール混合液(40:20:1)を用い室温付近一定の温度にて、毎分4mL流した。
【0129】
事前にキサントフィル化合物のピーク位置を確認し、必要とするピーク分離を行い、キサントフィル化合物の分取を行った。分取したキサントフィル化合物は、それぞれ同条件にてさらにHPLCによる分取を行った。
【0130】
精製度の確認は、
1H−NMRおよび
13C−NMRにて行い、精製されたアドニキサンチン、アドニルビン、アスタキサンチン、α−クリプトキサンチン、β−クリプトキサンチン、ゼアキサンチンおよびルテインを得た。
【0131】
以下に本発明のアドニキサンチン修飾体の製造方法を示す。
【0132】
[実施例18]:Di-Pal-ADXの製造方法
5mL反応器にADX(50mg, 0.0857mmol, 1.0 等量(eq.))、ジクロロメタン(以下、「CH
2Cl
2」と略す。)中に1.0Mに調製したトリエチルアミン(0.429mL, 0.429mmol, 5.0 eq.)、無水ジクロロメタン(0.5mL)を加えた。この溶液を室温(以下、本発明でいうキサントフィル化合物の製造方法において、室温とは15〜25℃の温度のことをいう。)下、CH
2Cl
2中に1.0Mに調製したパルミトイル酸クロライド(0.257mL, 0.257 mmol, 3.0 eq.)を加えた。この溶液を2時間撹拌後、薄層クロマトグラフィー(以下、「TLC」と略す。)にて分析すると原料が消失し、モノ置換体、ジ置換体が生成していた。この混合液をそのまま14時間撹拌した後、この懸濁液に水(2mL)、ジクロロメタン(2mL)を加え2層に分けた。水層をジクロロメタン(2mL)にて抽出し、有機層を合わせ、水(2mL×2)、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(以下、「Na
2SO
4」と略す。)で乾燥した後、この溶液を濃縮し赤色のアモルファス体を得た。これをカラム精製(シリカゲル(以下、「SiO
2」と略す。)カラム 15g、トルエン/酢酸エチルが10/1から5/1へのグラジエント)し、赤色のアモルファス体(55mg)を得た。これに無水エタノール(ca. 1mL)を加え超音波洗浄し、濾別した結晶を真空乾燥し、赤褐色の粉末であるDi-Pal-ADX (36mg、0.0558mmol, 65% 高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」と略す。) 97.8%)、およびMono-Pal-ADX (6mg、純度測定不可)を得た。
【0133】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3) δ: 0.88(t, 6H, Alkyl-CH
3), 1.08(s, 3H, CH
3), 1.11(s, 3H, CH
3), 1.22(s,3H, CH
3), 1.26(bs, 56H, Alkyl), 1.35(s, 3H, CH
3), 1.57-1.79(m, 2H, Cyc), 1.76(s, 3H, CH
3), 1.90(s,3H, CH
3), 1.97 (s, 3H, CH
3),1.98(s, 6H, CH
3), 2.00(s, 3H, CH
3),2.02-2.10(m, 1H, Cyc),2.27-2.30(m, 1H, Cyc), 2.40-2.47(m, 2H, Cyc), 5.01-5.13(m, 1H, H
31C
15C(O)OC(H)), 5.53(dd, J =5.9 Hz, 13.7Hz, 1H, H
31C
15C(O)OC(H)), 6.06-6.72(m, 14H, olefin)
【0134】
[実施例19]:Di-CbZ-ADXの製造方法
5mL反応器にADX(60mg, 0.103mmol, 1.0 eq.)、CH
2Cl
2中に1.0Mに調製したピリジン/N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(以下、「DMAP」と略す。)(5%mol)(0.515mL, 0.515mmol, 5.0 eq.)、無水ジクロロメタン(0.6mL)を加えた。この溶液を室温下、CH
2Cl
2中に1.0Mに調製したベンジロキシカルボニルクロリド(0.309mL, 0.309mmol, 3.0eq.)を加えた。この溶液を2時間撹拌後TLCにて分析すると原料が消失し、モノ置換体、ジ置換体が生成していた。この混合物をそのまま14時間撹拌した後、この混合物を濃縮し赤色のアモルファス体(119mg)を得た。これをカラム精製(SiO
2:20g, ヘキサン/酢酸エチル=3/1から2/1へのグラジエント)し、赤色のアモルファス体(35mg)を得た。これに無水エタノール(ca. 1mL)を加え超音波洗浄後、−30℃に冷却、溶液をデカンテーションで除き、残渣を少量のジエチルエーテルにて洗浄し、真空乾燥を行い、赤褐色のアモルファスである、Di-Cbz-ADX(22mg, 0.0258mmol, 25%, HPLC 97.0%)を得た。
【0135】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3) δ: 1.08(s, 3H, CH
3), 1.11(s, 3H, CH
3), 1.21(s, 3H, CH
3), 1.25(s, 3H,CH
3), 1.32(s, 3H, CH
3), 1.59-1.71(m, 2H, Cyc), 1.73(s, 3H, CH
3), 1.74-1.89(m, 3H, Cyc), 1.94(s,3H, CH
3), 1.67(s, 3H, CH
3), 1.98(s, 3H, CH
3), 2.00(s, 3H, CH
3), 2.13-2.26(m, 1H, Cyc), 4.32(ddd,J = 2.2 Hz, 5.5 Hz, 13.9 Hz, 1H, CbzOC(H)), 4.89-4.99(m, 1H, CbzOC(H)), 5.17(bs, 4H, PhCH
2O),6.03-6.72(m, 14H, olefin), 7.32-7.44(m, 10H, Ph)
【0136】
[実施例20]:Mono-PETO2-ADXの製造方法
5mL反応器にADX(50mg, 0.0857mmol, 1.0 eq.)、CH
2Cl
2中に1.0Mに調製したピリジン/DMAP(5%mol)(0.343mL, 0.343mmol, 5.0 eq.)、無水ジクロロメタン(0.6mL)を加えた。この溶液を室温下、CH
2Cl
2中に1.0Mに調製した(C
2H
5O)
2P(O)Cl (0.309mL、0.309mmol, 3.0eq.)を加えた。この溶液を2時間撹拌後TLCにて分析すると原料が消失し、モノ置換体、ジ置換体が生成していた。この混合液を濃縮し残渣をカラム精製(SiO
2:15g, トルエン/酢酸エチル=2/1から1/1を経て酢酸エチルのみへのグラジエント)し、赤色アモルファスを得た。これにジエチルエーテル(ca. 1mL)を加え超音波洗浄し、溶液をデカンテーションで除き、残渣を少量のジエチルエーテルにて洗浄し、真空乾燥を行い赤褐色のアモルファスであるMono-PETO2-ADX (10mg, 0.0116mmol, 13%, HPLC 96.9%)を得た。
【0137】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3) δ: 1.08(s, 3H, CH
3), 1.10(s, 3H, CH
3), 1.21(s, 3H, CH
3), 1.32(s, 3H,CH
3), 1.36(t, J = 7.3 Hz, 6H, P(O)(OCH
2CH
3)
2), 1.61-1.71(m, 1H, Cyc), 1.73(s, 3H, CH
3),1.75-1.86(m, 1H, Cyc), 1.88-1.95(m, 1H, Cyc), 1.91(s, 3H, CH
3), 1.96(s, 3H, CH
3), 1.98(s, 6H,CH
3), 2.00(s, 3H, CH
3), 2.10-2.20(m, 1H, Cyc), 2.21-2.32(m, 1H, Cyc), 2.46-2.57(m, 1H, Cyc),3.69(bs, 1H, OH), 4.12(q, J = 7.3 Hz, 4H, P(O)(OCH
2CH
3)
2), 4.32(dd, J = 5.4 Hz, 14.1 Hz, 1H,HOC(H)), 4.63-4.67(m, (EtO)
2P(O)OC(H)), 6.09-6.71(m, 14H, olefin)
【0138】
[実施例21]:Mono-Piv-ADXの製造方法
5mL反応器にADX(30mg, 0.0514mmol, 1.0 eq.)、CH
2Cl
2中に1.0Mに調製したトリエチルアミン(0.257mL, 0.257mmol, 5.0 eq.)、無水ジクロロメタン(0.1mL)を加えた。この溶液を室温下、CH
2Cl
2中に1.0Mに調製したピバロイルクロライド(0.154mL、0.154mmol, 3.0eq.)を加えた。この溶液を2時間撹拌後TLCにて分析すると原料が消失し、モノ置換体が主に生成していた。この懸濁液を水(3mL)、ジクロロメタン(2mL)に加え2層に分けた。水層をジクロロメタン(3mL)にて抽出し、有機層を合わせ水(3mL×2)、飽和食塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥した後、この溶液を濃縮し赤色のアモルファス体(42mg)を得た。これをカラム精製(SiO
2: 15g、トルエン/酢酸エチル=10/1から5/1へのグラジエント)し、赤色のアモルファス体(25mg)を得た。これに無水エタノール(ca. 1mL)を加え超音波洗浄し、濾別した結晶を真空乾燥し、赤褐色の粉末であるMono-Piv-ADX(18mg, 0.0269mmol, 52%, HPLC99.3%)を得た。
【0139】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3) δ: 1.08(s, 3H, CH
3), 1.11(s, 3H, CH
3), 1.20(s, C(O)C(CH
3)
3), 1.21(s,3H, CH
3), 1.25(s, 3H, CH
3), 1.32(s, 3H, CH
3), 1.55-1.60(m, 1H, Cyc), 1.95(s, 3H, CH
3), 1.97(s, 3H,CH
3), 1.98(s, 3H, CH
3), 2.00(s, 3H, CH
3), 2.06-2.18(m, Cyc), 2.39-2.46(m, Cyc), 3.69(d, J = 1.7 Hz,1H, OH), 4.32(ddd, J = 1.8 Hz, 5.7Hz, 13.8Hz, 1H, HOC(H)), 4.99-5.10(m, 1H, tBuC(O)O-C(H)),6.12-6.71(m, 14H, olefin)
【0140】
[実施例22]:Di-TBS-ADXの製造方法
5mL反応器にADX(70mg, 0.120mmol, 1.0 eq.)、イミダゾール(33mg,0.480mmol, 4.0 eq.)、無水N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略す。)(1mL)を加えた。この溶液を氷浴で5℃に冷却し、tert−ブチルジメチルシリルクロライド(54mg, 0.360mmol, 3.0 eq.)を加えた。同温で1時間撹拌後TLCにて分析すると原料が消失していた。この懸濁液に水(2mL)、トルエン(3mL)を加え2層に分けた。有機層を水(2mL×2)、飽和食塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥した後、この溶液を濃縮し赤色のアモルファス体(121mg)を得た。これをカラム精製(SiO
2: 15g、トルエン/酢酸エチル=10/1)し、赤色のアモルファス体(99mg)を得た。これに無水エタノール(ca.2mL)を加え超音波洗浄し、濾別した結晶を真空乾燥し、赤褐色の粉末であるDi-TBS-ADXを得た。
【0141】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3) δ: 0.09(s, 6H, Si(CH
3)
2tBu),0.10(s, 3H, Si(CH
3)
2tBu),0.19(s, 3H,Si(CH
3)
2tBu),0.91(s, 9H, Si(Me)
2C(CH
3)
3), 0.93(s, 9H, Si(Me)
2C(CH
3)
3), 1.05(s, 3H, CH
3), 1.06(s,3H, CH
3), 1.19(s, 3H, CH
3), 1.28(s, 3H, CH
3), 1.45-1.56(m, 1H, Cyc), 1.63-1.70(m, 1H, Cyc),1.71(s, 3H, CH
3), 1.89(s, 3H, CH
3), 1.91-2.01(m, 1H, Cyc), 1.97(s, 3H, CH
3), 1.98(s, 6H, CH
3),1.99(s, 3H, CH
3), 2.03-2.13(m, 1H, Cyc), 2.20-2.28(m, 1H, Cyc), 3.90-4.33(m, 1H, TBSOC(H)),4.33(dd, J = 6.1 Hz, 12.4 Hz, 1H, TBSOC(H)), 6.09-6.72(m, 14H, olefin)
【0142】
[実施例23]:Di-THPO-ADXおよび[実施例24]:Mono-THPO-ADXの製造方法
5mL反応器にADX(30mg, 0.0514mmol, 1.0 eq.)、 CH
2Cl
2中に1.0Mに調製したジヒドロピラン(以下、「DHP」と略す。)(0.154mL, 0.154mmol, 3.0 eq.)、ピリジウムパラトルエンスルホン酸塩PPTS(3mg, 0.026mmol, 2.0eq.)、無水ジクロロメタン(0.15mL)を加えた。この溶液を室温下、2時間撹拌後TLCにて分析すると原料が消失し、モノ置換体とジ置換体が主に生成した。この混合物を濃縮し、残渣をカラム精製(SiO
2:15g, ヘキサン/酢酸エチル=4/1から3/1へのグラジエント)し、赤色のアモルファスであるDi-THPO-ADX (17mg)、および式(49)、(50)に示されるMono-THPO-ADX (12mg)の混合物であるMono-THPO-ADX(12mg)を得た。
【0143】
[実施例25]:Di-AcCFMePh-ADXの製造方法
5mL反応器にADX(60mg, 0.120mmol, 1.0 eq.)、CH
2Cl
2中に1.0Mに調製したピリジン/DMAP(5% mol)(0.515mL、0.515mmol、 5.0 eq.)、無水ジクロロメタン(0.3mL)を加えた。この溶液を氷浴で0℃に冷却し、α-CH
3O(CF
3) C
6H
5COCl(CH
2Cl
2中1.0M)(0.309 ml、0.309mmol、3.0 eq.)を加えた。同温で1時間撹拌後TLCにて分析すると目的物の生成が確認できたため、この懸濁液を濃縮し、残渣をカラム精製(SiO
2:15g、トルエンのみからトルエン/酢酸エチル=30/1へのグラジエント)し、赤色の粉末(99mg)を得た。この粉末をヘキサンにて分散洗浄濾過、真空乾燥し、Di-AcCFMePh-ADX (41mg、0.0403mmol、39%)を得た。
【0144】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3) δ: 1.04-1.07(m, 3H, CH
3), 1.13-1.16(m, 3H, CH
3),1.21(s, 3H,CH
3),1.37(s, 3H, CH
3),1.57-1.67(m, 1H, Cyc), 1.74(s, 3H, CH
3), 1.76-1.88(m, 2H, Cyc), 1.94(s, 3H,CH
3), 1.97(s, 3H, CH
3), 1.98(s, 3H, CH
3), 2.00(s, 3H, CH
3), 2.00(s, 3H, CH
3), 2.06-2.15(m, 1H,Cyc), 2.21-2.33(m, 1H, Cyc), 2.46-2.59(m, 1H, Cyc), 3.58(s, 3H, O(CH
3)), 3.72 (s, 3H, O(CH
3)),5.28-5.38(m, 1H, RC(O)OC(H)), 5.70-5.78(m, 1H, RC(O)OC(H)), 6.09-6.69(m, 14H, olefin),7.39-7.46(m, 6H, Ar), 7.53-7.58(m, 2H, Ar), 7.72-7.76(m, 2H, Ar)
【0145】
[実施例26]:アドニキサンチン-ジ-アセテートの製造方法
ADX(2mg)をピリジン(2mL)に溶解し、無水酢酸(2mL)を加え、室温で4時間反応させた。反応液にヘキサン:エーテル=1 : 1溶液(10mL)を加えた後、水洗した。この溶液を濃縮して、真空乾燥し、アドニキサンチン-ジ-アセテート1.5mgを得た。
【0146】
UV-vis λ max (ether) nm 460
FAB MS m/z 666
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz) δ 1.08 ( ,3H), 1.11 (s,3H), 1.23 (s,3H), 1.35 (s,3H), 1.58 (dd,1H), 1.72 (s,3H), 1.78 (ddd,1H), 1.90 (s,3H), 1.97 (s,6H), 1.99 (s,3H), 2.01 (s,3H), 2.01 (d,1H), 2.06 (s,3H), 2.07 (dd,1H), 2.11 (dd,1H), 2.19 (s,3H), 2.45 (ddd,1H), 5.06 (m,1H), 5.54 (dd,1H), 6.10 (d,1H), 6.13 (d,1H), 6.16 (d,1H), 6.21 (d,1H), 6.26 (d,1H), 6.30 (d,2H), 6.36 (d,1H), 6.41 (d,1H), 6.45 (d,1H), 6.63 (dd,1H), 6.63 (m,2H), 6.65 (dd,1H)
13C-NMR (CDCl
3, 125MHz) δ 12.6, 12.8, 14.0, 20.8, 21.4, 21.6, 26.3, 28.6, 30.1, 30.5, 37.1, 36.8, 38.6, 42.8, 44.1, 68.5, 71.7, 123.2, 125.3, 124.7, 125.5, 126.3, 128.4, 130.8, 131.2, 131.5, 132.4, 133.9, 134.4, 135.2, 135.9, 136.1, 136.8, 137.4, 138.0, 138.7, 139.8, 142.2, 160.4, 170.2, 170.6, 194.0
【0147】
<試験例1>NCマウスを用いるアドニルビン、アドニキサンチンの抗アトピー性皮膚炎作用試験
試験例1は、キサントフィル化合物の有効性に関する非臨床試験の一環として、アスタキサンチン、アドニキサンチン及びアドニルビンをNCマウスに28日間経皮投与し、期間中の皮膚病変観察、投与期間終了後の血中IgE測定結果より、これらカロテノイドの抗皮膚炎作用、特に抗アトピー性皮膚炎作用を確認することを目的として実施した。なお、血中IgE(免疫グロブリン)については、アレルギー反応が起きるとIgEが増加することから、アレルギー反応が起きているかどうかの指標になっている。
【0148】
(方法)
(1)投与液
アスタキサンチン、アドニキサンチン及びアドニルビンは、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3にある0.06%コーン油懸濁液を用いた(0.06%投与液)。陰性対照としてはコーン油を用いた。
【0149】
(2)試験系
試験には、9週齢の雄Slc:NCマウス32匹を用い、完全無作為抽出法により各群の平均体重及び皮膚炎スコアが可能な限り等しくなるよう4群に割り当てた。
【0150】
(3)群構成と投与量
各実験群および投与量を以下の表6に示す。投与は、フィンピペット及びチップを用いて頚背部投与(経皮投与)により、28日間(投与開始日を1日目と起算)行った。
【表6】
【0151】
(4)観察および検査項目
皮膚病変の観察は、被験物質投与開始1日前、被験物質投与開始後28日目に耳介部、顔部、背部の各部位について、症状の程度を軽度1点、中度2点、重度3点でスコア化し、合計のスコアで評価した。
【0152】
血液検査および剖検は、以下のように行った。まず投与期間終了日の翌日に全例について、ハロセン麻酔下でマウスの腹部大動脈より全採血した。採取した血液は4℃、1,500×gで15分間遠心して血清を採取した。採取した血清は、マウスIgE測定キット「ヤマサ」EIA(ヤマサ醤油株式会社)を用いて、ELISA法により測定した。全採血終了後、耳介部より頸背部の皮膚を変形防止策を施して摘出した。採取した皮膚は10%中性緩衝ホルマリン液に固定及び凍結切片を作製した。
【0153】
(結果)
(1)皮膚病変スコア
コーン油、アスタキサンチン、アドニキサンチンおよびアドニルビンのそれぞれについて、皮膚病変スコアの平均値および平均値の変化量を示す(表7)。
【表7】
【0154】
その結果、アドニキサンチン投与群は対照群と比較して皮膚病変スコアが有意な低値を示した(p<0.05)。一方、アスタキサンチン投与群およびアドニルビン投与群では有意な差は観察されなかった。
【0155】
(2)IgE
各群における投与期間終了後の血中IgE値を、コーン油を100とした相対値で表8に示す。
【表8】
【0156】
投与期間終了後の血中IgE濃度測定において、対照群と比較していずれの被験物質投与群も有意な変化は認められなかったが、アドニキサンチンでは、アスタキサンチンよりも優れた血中IgE濃度の低値傾向を示した。これにより、アドニキサンチンは、アレルギー反応を抑える働きがあることが判明した。アドニルビンに関しては、若干のIgE産生抑制効果が観察された。
【0157】
以上の結果より、試験例1の条件下においてアドニキサンチンは経皮投与によりNCマウスの皮膚炎悪化に対し抑制または改善効果を有することが示された。
また、キサントフィル類に含まれる物質であっても、アスタキサンチンやアドニルビンは、アレルギー反応を抑える効果を示さない、またはほとんど示さなかった。
【0158】
<試験例2>NCマウスを用いるアドニキサンチンの抗アトピー性皮膚炎作用比較検討試験
試験例2は、試験例1と同様にNCマウスにアドニキサンチンおよび比較対照物質(プレドニゾロン、クロタミトン、フエナゾール軟膏)を28日間経皮投与し、期間中の皮膚病変観察、投与期間終了後の血中IgE測定結果より、これら被験物質の皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎に対する薬効評価を検討することを目的として実施した。
【0159】
(方法)
(1)投与液
アドニキサンチンは、実施例2にあるように0.06%コーン油懸濁液を用いた。(0.06%投与液)。アドニキサンチン0.03%投与液、0.006%投与液は、0.06%投与液をコーン油で希釈して調製した。陰性対照としてはコーン油を用いた。
【0160】
プレドニゾロン投与液は、ステロイド薬であるプレドニゾロンの原末をコーン油に懸濁し、10 mL中にプレドニゾロンが6 mg含まれるように調製した。クロタミトン投与液はクロタミトンの原末をコーン油に懸濁し、10 mL中にクロタミトンが6 mg含まれるように調製した。フエナゾール軟膏投与液はフエナゾール5%軟膏をコーン油に懸濁し、10 mL中に有効成分ウフェナマートが6 mg含まれるように調製した。
なお、プレドニゾロンおよびクロタミトンは和光純薬工業株式会社製の試薬を用い、フエナゾール軟膏はアボットジャパン株式会社製の製品を用いた。
【0161】
(2)試験系
試験系2は試験系1と同様の方法にて試験を実施し、観察、検査項目及びIgE測定方法も同様とした。また、マウスの体重を各被験物質の投与前および被験物質投与開始後4週目に測定した。
【0162】
(3)群構成と投与量
各実験群および投与量を以下の表9に示す。投与は、フィンピペット及びチップを用いて経皮投与により、28日間(投与開始日を1日目と起算)行った。
【表9】
【0163】
(結果)
(1)皮膚病変スコア
各投与群についての皮膚病変スコアについて投与開始日からのΔ値の平均値を示す(表10)。
【表10】
【0164】
その結果、皮膚病変スコアは対照群と比較して、アドニキサンチン0.06%投与群は有意に低い皮膚病スコアを示した。この結果により、試験例1におけるアドニキサンチンの抗アトピー性皮膚炎作用の再現性が確認された。
一方、プレドニゾロン投与群および止痒作用を有するクロタミトン投与群と比較してもアドニキサンチン0.06%投与群は有意に低い値を示すことから、試験例2の条件下において市販薬よりも有効であることを明らかにした。
【0165】
(2)血中IgE濃度
血中IgE濃度の測定結果を、コーン油の値を100とした相対値で表11に示す。
【表11】
【0166】
対照群と比較して、アドニキサンチン0.006%、0.03%及び0.06%投与群、及びプレドニゾロン投与群は有意な低値を示した。
【0167】
(3)体重
各被験物質の副作用判定として、被験物質の投与前および投与開始後4週目の体重を測定した。結果を表12に示す。
【表12】
【0168】
対照群(コーン油投与群)と比較して、プレドニゾロン投与群において有意な低値を示した。試験例2で用いたプレドニゾロンは比較的低濃度であるために抗アトピー性皮膚炎作用は確認できなかったが、副作用である体重減少は顕著に現れた。他の物質に関しては、副作用としての体重減少は確認されなかった。
【0169】
試験例2の結果から、アドニキサンチンは経皮投与によりNCマウスのアトピー性皮膚炎症状を、用量依存的に抑制または改善する効果を有することが確認された。このことから、試験例1で示されたアドニキサンチンによる抗皮膚炎効果、抗アトピー効果は再現性を有することが示された。試験例2の条件下では、0.03%以上の濃度においてステロイド以外の市販の薬剤よりも高い抗皮膚炎作用を示すことが観察された。また、アドニキサンチン投与群では血中IgE濃度も低下したことから、炎症を抑える効果が確認できた。さらに、ステロイドで見られるような体重減少といった副作用は、アドニキサンチン投与群では生じなかった。これらのことから、アドニキサンチン等の抗皮膚炎作用を有するキサントフィル化合物は、抗皮膚炎治療剤、特に抗アトピー薬として利用できると考えられる。
【0170】
<試験例3>NCマウスを用いるアトピー性皮膚炎試験および皮膚組織病理検査
試験例3は、試験例1および2で採取した対照群(コーン油投与群)およびアドニキサンチン投与群の皮膚組織について、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)、ギムザ染色、各種免疫染色下での病理組織検査を行い、その結果より、病理組織学的にアドニキサンチンの抗皮膚炎効果を検討することを目的として実施した。
【0171】
本実施例では以下の項目について検討した。各項目の詳細については後述する。
・頭部〜耳介皮膚採取、凍結切片作製:3枚×16匹
(a) CD4免疫組織化学:CD4陽性ヘルパーT細胞カウント
(b) F4/80免疫組織化学:F4/80陽性マクロファージカウント
・パラフィン切片作製:2枚×16匹
(c) HE染色:病理所見評価
(d) Giemsa染色:肥満細胞カウント
【0172】
(方法)
A.ヘマトキシリン・エオジン(H.E.)染色、ギムザ染色
(1)対象皮膚組織:実施例1において採取したNCマウス頚背部皮膚を10%中性緩衝ホルマリン固定し、病理組織学的検査に供した。表13は群構成を表す。
【表13】
【0173】
(2)標本作製
頚背部の皮膚を常法に従って切り出し、パラフィン包埋、薄切した後、ヘマトキシリン・エオジン(H.E.)染色またはギムザ染色を行い、病理組織標本を作製した。
【0174】
(3)観察項目
H.E.染色標本について病理組織学的診断を行った。ギムザ染色標本について、1視野(倍率:x400)当たりの肥満細胞を計測した。
【0175】
B.免疫染色
(1)対象皮膚組織
試験例2において採取したNCマウス頚背部皮膚を、病理組織学的検査に供した。表14は群構成を表す。
【表14】
【0176】
(2)標本作製
頚背部皮膚のうち、中央部の半分をOCTコンパウンドに包埋後、凍結保存し、厚さ約6μmの凍結切片を作製した。凍結切片は、Anti-CD4(Rat monoclonal(GK1.5), sc-13573, Santa Cruz Biotechnology inc., x200希釈)、
Anti-F4/80(Rat monoclonal(3H21113), sc-71088, Santa Cruz Biotechnology inc., x200希釈)を用いた免疫組織化学染色を行った。具体的には、Anti-CD4及びAnti-F4/80はABC法(VECTASTAIN ABC Kit Elite, Code No. PK-6104, Vector Laboratories, Inc.)で行った。
【0177】
また、頚背部皮膚のうち、半分を10%中性緩衝ホルマリンで固定後、常法に従ってパラフィン包埋し、厚さ約3μmのパラフィン切片を2枚作製した。パラフィン切片はH.E.染色またはギムザ染色を行った。
【0178】
(3)観察項目
免疫染色標本及びギムザ染色標本について、強拡大5視野の陽性細胞数または肥満細胞数を計測した。
H.E.染色及びギムザ染色標本について、病理組織学的診断を行った。
【0179】
(結果)
A.H.E.染色、ギムザ染色
(1)病理学的所見
対照群においては、軽度ないし中等度の潰瘍が8例中5例で認められた。また、軽微ないし軽度の表皮過形成、軽微ないし中等度の角化、軽微ないし軽度の炎症性細胞浸潤、軽度ないし中等度の毛嚢萎縮が8例中4〜7例に認められた。いずれの変化についてもアトピー性皮膚炎モデルとされているNCマウスで過去に報告されている病変とほぼ一致するものであった。
【0180】
一方、アドニキサンチン群においては、潰瘍が認められず、対照群と比較して有意に低値であった。また、表皮過形成、過角化、炎症性細胞浸潤及び毛嚢萎縮程度についても対照群と比較して有意に低値であった(表15)。
【表15】
【0181】
(2)肥満細胞数計測
対照群と比較して、アドニキサンチン群は有意な低値を示した(表16)。
【表16】
【0182】
HE染色の結果、アトピー性皮膚炎の動物モデルに一般的に認められる病変(潰瘍、表皮過形成、過角化、炎症性細胞浸潤、毛嚢萎縮)が対照群において認められたのに対し、アドニキサンチン投与群は潰瘍形成が認められず、その他の病変程度についても、対照群と比較して有意な低値を示した。このことから、アドニキサンチンの経皮投与によりアトピー性皮膚炎病変が軽減されることが示された。
【0183】
また、ギムザ染色の結果から、真皮及び皮下組織における肥満細胞数は、対照群と比較してADX投与群は有意な低値を示した。肥満細胞は顆粒細胞の一種で、IgEを介したアレルギー反応の主体となるとされている免疫系細胞であることから、アドニキサンチンの経皮投与により肥満細胞が関与するアレルギー反応が低減されることが示された。
【0184】
B.免疫染色
(1)免疫染色陽性細胞、肥満細胞数計測(表17)
表17にコーン油の値を100としたときのCD4陽性ヘルパーT細胞、F4/80陽性マクロファージ、および肥満細胞の計測結果の相対値を示す。
コーン油群と比較してアドニキサンチン群は、CD4陽性ヘルパーT細胞は軽度な低値であった。F4/80陽性細胞数および肥満細胞数は有意な低値が認められた。
【表17】
【0185】
(2)病理組織学的所見
対照群と比較してアドニキサンチン群は、表15に見られるように表皮変化(痂皮形成、潰瘍形成、過角化、顆粒層肥厚、表皮の肥厚)及び真皮細胞浸潤所見の軽減傾向が認められた。
【0186】
免疫染色の結果から、皮膚組織中のCD4陽性細胞数は、対照群と比較してアドニキサンチン投与群は有意な変化ではないものの低値傾向を示した。CD4抗原はヘルパーT細胞で発現し、ヘルパーT細胞の代表的なマーカーである。ヘルパーT細胞(Th2細胞)はB細胞を介したアレルギー反応の機構に関与しており、アドニキサンチンの経皮投与によってTh2亢進が減弱されることが示された。
【0187】
また、皮膚組織中のF4/80陽性細胞数は、対照群と比較してアドニキサンチン投与群は有意な低値を示した。F4/80抗原は成熟マクロファージのほとんどに発現し、成熟マクロファージのマーカーとされている。マクロファージは貪食及びT細胞への抗原提示を行うことから、アドニキサンチンの経皮投与によりこれらの反応が抑えられていることが示された。
【0188】
以上の結果より、皮膚組織の病理組織学的検査においてもアドニキサンチンは経皮投与によりNCマウスのアトピー性皮膚炎症状に対し抑制または改善効果を有することが確認された。
【0189】
<試験例4>ハプテン塗布皮膚炎(慢性皮膚炎)モデルを用いる抗アトピー性皮膚炎作用試験
試験例4では、ハプテン塗布皮膚炎モデルマウスに被験物質を28日間経皮投与し、耳介浮腫および皮膚病変スコアを測定することにより、被験物質のアトピー性皮膚炎に対する薬効を検討した。
【0190】
(方法)
(1)被験物質
被験物質として、コーン油に式(30)に示すゼアキサンチン(0.06%)および式(35)に示すルテイン(0.06%)を溶解させたものを用いた。比較対照物質として、試験例2と同様にステロイド薬のプレドニゾロン(0.3%)を用いた。陰性対照としてはコーン油を用いた。
【0191】
(2)試験系
試験には、10週齢の雌Slc:BALB/cマウスを用い、完全無作為抽出法により各群の平均体重および皮膚炎スコアが可能な限り等しくなるよう群に分けた。各群は8匹である。被験物質は、フィンピペット及びチップを用いて28日間耳介部に経皮投与した。投与液量は、50μL/bodyである。
【0192】
ハプテンとして使用する5%または1%ピクリルクロライド投与液は、ピクリルクロライド原末をアセトン溶液(アセトン:オリーブ油=4:1)に懸濁し、10 mL中にピクリルクロライドが500 mgまたは100 mg含まれるように調製した。初回は5%ピクリルクロライド投与液を腹部に100 μL/body投与し、2回目以降は1%ピクリルクロライド投与液を各耳介部に25 μL/body及び頚背部に50 μL/bodyを投与した。ハプテンを、フィンピペット及びチップを用いて、9日間(初回投与1週間後より、4週間は週2回の頻度)投与した。
【0193】
(3)実験手順
耳介浮腫は、被験物質投与期間中、ダイヤルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて測定した。
【0194】
皮膚病変は、被験物質投与開始前および29日目に観察した。観察は耳介部、頭部、頸背部の各部位について、症状の程度を軽度1点、中度2点、重度3点でスコア化し、合計のスコアで評価した。
【0195】
(結果)
(1)耳介浮腫
耳介浮腫の測定結果を、表18に示す。ゼアキサンチンとルテインにおいて、耳介浮腫の低減効果が確認された。
【表18】
【0196】
(2)病変スコア測定
病変スコア測定の結果を、表19に示す。ハプテン塗布試験において、ルテイン投与群で病変スコアの低減効果が確認された。
【表19】
【0197】
したがって、慢性皮膚炎モデルであるハプテン塗布試験において、ゼアキサンチンおよびルテインの抗アトピー性皮膚炎作用が確認された。
【0198】
<試験例5>NCマウスを用いる抗アトピー性皮膚炎作用試験
試験例5は、試験例1と同様の方法によりNCマウスに被験物質を経皮投与し、NCマウス急性皮膚炎モデルでの皮膚病変スコアおよびIgE値を測定した。
【0199】
(1)皮膚病変スコア
被験物質として、式(31)に示すα-クリプトキサンチン(0.06%)、式(51)に示すアドニキサンチン-ジ-アセテート(0.06%)および式(35)に示すルテイン(0.06%)をそれぞれの濃度となるようにコーン油に溶解した液を用いた。
【0200】
コーン油(対照)、α-クリプトキサンチン、アドニキサンチン-ジ-アセテートおよびルテインそれぞれについて、投与15日目における皮膚病変スコアの平均値の変化量を、表20に示す。
【表20】
【0201】
その結果、NCマウスにおける急性皮膚炎モデルにおいて、α-クリプトキサンチン、アドニキサンチン-ジ-アセテートおよびルテイン投与群は、皮膚病変スコアの低減効果を示した。
【0202】
(2)IgE
被験物質として、式(31)に示すα-クリプトキサンチン(0.06%)、式(32)に示すβ-クリプトキサンチン(0.06%)、式(51)に示すアドニキサンチン-ジ-アセテート(0.06%)および式(30)に示すゼアキサンチン(0.06%)をそれぞれの濃度となるようにコーン油に溶解した液を用いた。
【0203】
コーン油(対照)、α-クリプトキサンチン、β-クリプトキサンチン、アドニキサンチン-ジ-アセテートおよびゼアキサンチン投与前および投与15日目の血中IgEの変化量を表21に示す。
【表21】
【0204】
その結果、NCマウスにおける急性皮膚炎モデルにおいて、α-クリプトキサンチン、β-クリプトキサンチン、アドニキサンチン-ジ-アセテートおよびゼアキサンチン投与群は、IgEの低減効果を示した。
【0205】
以上の結果より、α-クリプトキサンチン、アドニキサンチン-ジ-アセテート、ルテイン、β-クリプトキサンチン、およびゼアキサンチンは、NCマウスにおける急性皮膚炎に対し、改善効果を有することが示された。
【0206】
<試験例6>アドニキサンチン光学異性体の経皮投与における抗アトピー性皮膚炎作用確認試験
アドニキサンチンには4種の光学異性体が存在することが知られているが、パラコッカス菌由来のアドニキサンチンには、3S,3’R-アドニキサンチンのみ存在が確認されるが、化学合成を行うと4種の光学異性体がすべて等しい比率で合成されてくる。本試験例では、3S,3’R以外のアドニキサンチン光学異性体の効果効能を確認した。本試験例では、アトピー性皮膚炎モデルであるNCマウスにアドニキサンチンの光学異性体4種類を14日間経皮投与し、期間中の皮膚病変観察および投与期間中の組織重量測定結果より、これら被験物質の経皮投与条件下でのアトピー性皮膚炎に対する薬効を検討した。
【0207】
(方法)
(1)被験物質
被験物質(式(36)に示す3S, 3’R -アドニキサンチン(3S,3’R-ADX)、式(39)に示す3S,3’S-ADX、式(37)に示す3R,3’S-ADXおよび式(38)に示す3R,3’R-ADX)を以下に示す方法により製造した。被験物質はそれぞれコーン油を加えて、0.06%の濃度となるように調製した(0.06%投与液)。陰性対照としてはコーン油を用いた。
【0208】
<3S,3’S-ADXの作製方法>
3S,3’R-ADXの3’R側の水酸基を光延反応(3’R→3’S)でパラニトロベンゾイル(以下、「pNB」と略す。)化し、ADX-1-pNB体を合成した。合成したADX-1-pNB体をHPLC(C18カラム)、液体クロマトグラフィー質量分析法(以下、「LCMS」と略す。)で分析を行い、ADX-1-pNB体と思われるピークを確認し分取精製を行った後、加水分解を行い、3S,3’S-ADXを得た。
【0209】
<3R,3’S-ADXの作製方法>
3S,3’S-ADXを作製する際に合成したADX-1-pNB体をエステル化剤で3S側を反転(3S→3R)させてpNBを付加させたADX-2-ジpNB体を合成し、加水分解・精製作業を行い3R,3’S-ADXを得た。
【0210】
<3R,3’R-ADXの作製方法>
3S,3’R-ADXの3’R側の水酸基を反転を伴わない手法でpNB化し、ADX-0-pNB体を合成した。ADX-1-pNB体との比較から目的物と判断した。その後、エステル化剤を用い3位を反転(3S→3R)させ、pNB体であるADX-3-ジpNB体を合成し、加水分解した。精製作業を行い、3R,3’R-ADXを得た。
【0211】
(2)試験系
試験には、11週齢の雌NCマウスを用い、完全無作為抽出法により各群の平均体重、皮膚炎スコアおよび血中総IgEが可能な限り等しくなるよう群に分けた。各群は6匹である。被験物質は、フィンピペット及びチップを用いて14日間経皮投与した。投与液量は、50μL/bodyである。
【0212】
(3)実験手順
マウスの背部及び耳介部を除毛した後、ビオスタAD(株式会社ビオスタ)を背部及び耳介部に均一に塗布した。ビオスタAD初回投与後は、週2回の頻度で4%SDS及びビオスタAD投与を背部及び耳介部に計6回(初回投与を含む)行った。被験物質投与前に、体重測定、皮膚病変の観察及び血中総IgE量測定を行い、A1〜A10群に群分けを行った。群分け後、被験物質の経皮投与を14日間行った。被験物質投与期間中は、週に1回体重測定、皮膚病変の観察及び写真撮影を行った。被験物質投与15日目の採血終了後に脾臓を摘出し、重量を測定した。
【0213】
皮膚病変の観察は、ビオスタAD投与前、ビオスタAD投与8日目、被験物質投与前(ビオスタAD投与15日目)、被験物質投与8及び15日目に皮膚病変の観察を行った。観察は耳介部、頭部、頸背部の各部位について、症状の程度を軽度1点、中度2点、重度3点でスコア化し、合計のスコアで評価した。
【0214】
組織重量は、ハロセン麻酔下の採血後、脾臓を摘出し重量を測定した。
【0215】
(結果)
(1)皮膚病変スコア
被験物質投与前と投与15日目の皮膚病変スコアの差を示す(表22)。
【表22】
【0216】
皮膚病変スコアでは、光学異性体はいずれも皮膚病変スコアを抑制する効果が確認された。特に、3S,3’S-ADXおよび3R,3’S-ADXが病変スコアとしては良好な数値を示した。
【0217】
(2)組織重量
免疫活性が亢進している場合、脾臓およびリンパ節が肥大する傾向にあり、一方、免疫を抑制している場合は、脾臓およびリンパ節の重量はコントロールほとんど変わらないことが知られている。脾臓重量の測定結果をコーン油の結果を100とした相対値として表23に示す。
【表23】
【0218】
NCマウス急性皮膚炎試験において、アドニキサンチンの光学異性体は脾臓の重量増加を抑制する効果が確認された。特に、光学異性体3S,3’S-ADXと3R,3’S-ADXの組織への影響が大きかった。
【0219】
以上の結果より、アドニキサンチンの光学異性体は抗アトピー作用を有することが確認された。
【0220】
<試験例7>アドニキサンチン修飾体の経皮投与における抗アトピー性皮膚炎作用確認試験−1
本実施例では、アトピー性皮膚炎モデルであるNCマウスにアドニキサンチンの修飾体5種類を14日間経皮投与し、期間中の皮膚病変観察および組織重量測定により、これら被験物質の経皮投与条件下でのアトピー性皮膚炎に対する薬効を検討した。
【0221】
(方法)
試験例7は、試験例6と同様の方法により実施した。
(1)被験物質
以下の被験物質を、実施例17、18、19、20、21および22の製造方法にしたがって製造した。
アドニキサンチン(実施例17:3S, 3’R -ADX)
ジ-パルミチン酸-アドニキサンチン(実施例18:Di-Pal-ADX)
ジ-ベンジルオキシカルボニル-アドニキサンチン(実施例19:Di-Cbz-ADX)
モノ-リン酸ジエチル-アドニキサンチン(実施例20:Mono-PETO2-ADX)
モノ-ピバロイル酸-アドニキサンチン(実施例21:Mono-Piv-ADX)
ジ-tert−ブチルジメチルシリルオキサイド-アドニキサンチン(実施例22:Di-TBS-ADX)
【0222】
それぞれコーン油を加えて、0.06%の濃度となるように調製した(0.06%投与液)。陰性対照としてはコーン油を用いた。投与液量は50μL/bodyである。各群は6匹である。
【0223】
(2)実験手順
マウスの背部及び耳介部を除毛した後、ビオスタAD(株式会社ビオスタ)を背部及び耳介部に均一に塗布した。ビオスタAD初回投与後は、週2回の頻度で4%SDS及びビオスタAD投与を背部及び耳介部に計6回(初回投与を含む)行った。被験物質投与前に、体重測定、皮膚病変の観察及び血中総IgE量測定を行い、A1〜A10群に群分けを行った。群分け後、被験物質の経皮投与を14日間行った。被験物質投与期間中は、週に1回体重測定、皮膚病変の観察及び写真撮影を行った。被験物質投与前及び被験物質投与15日目に採血を行い、血液を遠心分離後に血中総IgE量測定を行った。被験物質投与15日目の採血終了後に脾臓またはリンパ節を摘出し、重量を測定した。
【0224】
皮膚病変スコアは、被験物質Di−Cbz-ADX 0.06%について検討した。
【0225】
血中総IgE量測定は、以下のとおり行った。ビオスタAD投与前および被験物質投与前(ビオスタAD投与12日目)に、無麻酔下でマウスの尾静脈より採血する。被験物質投与15日目はハロセン麻酔下にて腹部大動脈から全採血した。採取した血液は、1000×g、室温、15 minで遠心分離し、血漿を採取した。総IgE量については、捕捉抗体:抗マウスIgE抗体(ラットモノクローナルab99571、アブカム株式会社)、検出抗体:ビオチンラベル抗マウスIgE抗体(ラットモノクローナルab11580、アブカム株式会社)を用いて、ELISA法により測定した。
【0226】
(結果)
(1)皮膚病変スコア
被験物質投与前と投与15日目のΔ皮膚病変スコアを表24に示す。
【表24】
【0227】
NCマウスにおける急性皮膚炎モデルでの病変スコアにおいて、Di-Cbz-ADXに効果が確認された。
【0228】
(2)組織重量
脾臓重量の測定結果をコーン油を100とした相対値として表25に示す。リンパ節重量の測定結果をコーン油を100とした相対値として表26に示す。
【表25】
【表26】
【0229】
NCマウスにおける急性皮膚炎試験での組織変化において、Di-Pal-ADX、Di-Cbz-ADX、Mono-PETO2-ADX、Mono-Piv-ADX、Di-TBS-ADXは脾臓重量増加に対する抑制効果が確認された。また、Di-Pal-ADX、Di-Cbz-ADX、Mono-PETO2-ADXはリンパ節の重量増加を抑制する効果が確認された。
【0230】
<試験例8>アドニキサンチン修飾体の経皮投与における抗アトピー性皮膚炎作用確認試験−2
試験例7と同様の試験を、更なるアドニキサンチン修飾体について実施した。被験物質として、Mono-PETO2-ADX、Di-THPO-ADX、Di-AcCFMePh-ADX、並びに式(49)および(50)にて示される混合物であるMono-THPO-ADXを使用した。
【0231】
上記被験物質は、実施例20、23、25および24の製造方法で製造した。
【0232】
被験物質はそれぞれコーン油を用いて濃度0.06%になるように調製した。
【0233】
(1)皮膚病変スコア
皮膚病変スコアは、Mono-PETO2-ADXについて検討した。被験物質投与前と投与15日目の皮膚病変スコアの比較値をコーン油を100とした相対値で表27に示す。
【表27】
【0234】
NCマウスにおける急性皮膚炎モデルでの病変スコアにおいて、Mono-PETO2-ADXは、皮膚病変の抑制作用を有することが確認された。
【0235】
(2)IgE
IgE濃度は、Mono-PETO2-ADXおよびDi-THPO-ADXについて検討した。IgE濃度の測定結果を、コーン油区を100とした相対値として表28に示す。
【表28】
【0236】
NCマウスにおける急性皮膚炎モデルでのIgEにおいて、Mono-PETO2-ADX、Di-THPO-ADXは、IgEの低減効果を有することが認められた。
【0237】
(3)組織重量
脾臓重量の測定結果をコーン油区を100とした相対値として表29に示す。リンパ節重量の測定結果をコーン油区を100とした相対値として表30に示す。
【表29】
【0238】
NCマウスにおける急性皮膚炎試験での組織変化にて、Mono-PETO2-ADXは、脾臓重量の増加抑制の効果が認められた。
【0239】
【表30】
【0240】
NCマウスにおける急性皮膚炎試験での組織変化にて、Di-AcCFMePh-ADX、Mono-PETO2-ADX、およびMono-THPO-ADXにリンパ節重量増加抑制効果が認められた。
【0241】
以上の結果より、本願発明のキサントフィル化合物は、抗皮膚炎作用を有することが確認され、皮膚炎の治療に有効であることが示された。