(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074456
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 9/04 20060101AFI20170123BHJP
F04B 43/02 20060101ALI20170123BHJP
F04B 43/04 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
F04B9/04 B
F04B43/02 M
F04B43/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-101054(P2015-101054)
(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2016-217212(P2016-217212A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 東暉
(72)【発明者】
【氏名】臼井 弘明
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−297744(JP,A)
【文献】
特開2003−214104(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0202893(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 9/04
F04B 43/02
F04B 43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と当該電動機によって駆動されるクランク機構がポンプに隣接するケース本体内に一体に組み付けられた電動ポンプであって、
前記ケース本体内で前記電動機側から前記クランク機構側へ延設された回転子軸に、開口部を前記電動機側軸端に向けて一体に組み付けられると共に前記開口部内に配置された中間軸受部に回転可能に支持されたカップ状に形成された回転子と、
前記回転子の天面部と一体に設けられ前記回転子軸の軸心より偏心した偏心カムと、
前記偏心カムにカム軸受を介して一端側が組み付けられ、他端側が前記ポンプ側に連なるクランク軸と、を具備し、
前記電動機を回転駆動することで前記回転子軸を中心とする前記偏心カムの回転運動を前記クランク軸の往復運動に変換して前記ポンプを駆動することを特徴とする電動ポンプ。
【請求項2】
前記偏心カムには、前記カム軸受を介して組み付けられる前記クランク軸の前記回転子軸の軸心に対する偏心量を打ち消すバランスウェイトが一体に形成されている請求項1記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記電動機の回転子軸の前記偏心カムより前記クランク機構側に延設された軸端は、前記ケース本体に組み付けられたクランク側軸受部により回転可能に支持されている請求項1又は請求項2記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記クランク側軸受部は弾性体を介して前記ケース本体に組み付けられている請求項3記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記回転子の開口部内に当該回転子の天面部に近接して前記中間軸受部が組み付けられている請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記中間軸受部は複数の軸受部が軸方向に近接して組み付けられている請求項5記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記回転子は、筒状に形成された前記回転子ヨークの端面を閉止して組み付けられる回転子ハブと前記回転子軸が一体に組み付けられ、前記回転子ハブと固定子ハウジングとの間に組み付けられた前記中間軸受部を介して前記回転子が回転可能に支持されている請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の電動ポンプ。
【請求項8】
前記クランク軸の他端はポンプ室に臨むダイアフラムに連結されているダイアフラムポンプである請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばOA機器、家電製品、産業機器、医療機器などに用いられる電動機でポンプを駆動する電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ室に臨むダイアフラム(diaphragm pump)を、電動機の駆動をクランク機構によりコネクティングロッドの往復運動に変えてポンプを駆動する電動ポンプとして以下の技術が提案されている。
【0003】
電動機としてモータケーシング内に回転子及び固定子と、モータケーシングからポンプ本体側に延設された回転子軸と、モータ駆動回路基板を備えている。またポンプ本体側に延設された回転子軸には、1対のコネクティングロッドの一端が一対の軸受部を介して各々組み付けられている。一対のコネクティングロッドは180°位相がずれた位置に各々組み付けられている。1対のコネクティングロッドの他端はリテーナを介してダイアフラムに各々連結されている。ポンプ本体には、ダイアフラムとバルブシートとポンプヘッド部が組み付けられている。ポンプ本体側に延設された回転子軸の軸端近傍には、1対のコネクティングロッドの偏心量を相殺するための筒状の偏心軸が組み付けられ、この偏心軸に対して軸受部を介してコネクティングロッドが組み付けられる。
【0004】
モータケーシング内の電動機を回転させると、ポンプ本体側に延設された回転子軸に取り付けられた偏心軸も回転し、これによりコネクティングロッドが往復動する。このとき、ダイアフラムが変形してポンプ室内の流体がバルブ、流体通路を通じて吐出吸入される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−297744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に示す電動ポンプは、電動機の回転子がカップ状に形成されたアウターロータ型のモータであり、ロータヨークの天面部を軸端に向けて組み付けられ、ロータヨークの軸方向の両側でモータケーシングに設けられた一対の軸受部によって回転子軸の両端が回転可能に支持されている。また、モータケーシングとポンプ本体との界面部には、モータ駆動回路基板や固定子ハウジングが重ねて組み付けられているため、回転子軸の軸長が長くなるうえに、モータ側の軸受部(支点)からコネクティングロッド(作用点)までの距離が長くなり、装置が軸方向に大型化すると共に回転子軸が振動しやすくなりひいては騒音の要因となる。
【0007】
また、ポンプ本体側に延設された回転子軸に筒状の偏心軸を組み付けてから軸受部を介してコネクティングロッドが組み付けられるため、回転子軸、偏心軸、軸受部、コネクティングロッドなどの多くの組付部品間の芯出しのずれによりがたつきや振動が発生しやすくなる。
また、電動機の回転安定性を考慮すると、モータ側に設けられる軸受部を小型化することは、回転子の回転安定性を低下させるため現実的ではない。
【0008】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、装置を軸方向に小型化し低振動かつ低騒音で回転安定性の高い電動ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
電動機と当該電動機によって駆動されるクランク機構がポンプに隣接するケース本体内に一体に組み付けられた電動ポンプであって、前記ケース本体内で前記電動機側から前記クランク機構側へ延設された回転子軸に、開口部を前記電動機側軸端に向けて一体に組み付けられると共に前記開口部内に配置された中間軸受部に回転可能に支持されたカップ状に形成された回転子と、前記回転子の天面部と一体に設けられ前記回転子軸の軸心より偏心した偏心カムと、前記偏心カムにカム軸受を介して一端側が組み付けられ、他端側が前記ポンプ側に連なるクランク軸と、を具備し、前記電動機を回転駆動することで前記回転子軸を中心とする前記偏心カムの回転運動を前記クランク軸の往復運動に変換して前記ポンプを駆動することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、カップ状に形成された回転子の開口部を電動機側軸端に向けて回転子軸に一体に組み付けられるので、回転子の開口部内の空スペースを利用して回転子の天面部に近づけて中間軸受部を配置できると共に回転子の天面部と偏心カムが一体に設けられているため、中間軸受部からクランク軸が連繋する偏心カムまでの距離を可及的に短くして、振動の発生や騒音の発生を抑えることができ、回転子軸の軸長を短縮して装置を軸方向に小型化することができる。また、回転子ヨークの開口部内に比較的大径の中間軸受部を用いることで、回転子の回転安定性が向上する。
また、回転子ヨークと偏心カムを一体に組み付けられることにより、回転子の慣性モーメントが増大し、クランク軸が往復動する際の推力を向上させることができる。
【0011】
前記偏心カムには、前記カム軸受を介して組み付けられる前記クランク軸の偏心量を打ち消すバランスウェイト部が一体に形成されていることが好ましい。この場合には、回転子ヨーク、偏心カム及びバランスウェイト部が一体化して設けられているので、部品間の芯出しが行われかつ偏心量も相殺されているので振動が少なく、部品点数が少なく組み付け工数も減り組立性が向上する。
【0012】
前記電動機の回転子軸の前記偏心カムより前記クランク機構側に延設された軸端は、前記ケース本体に組み付けられたクランク側軸受部により回転可能に支持されているのが好ましい。
これにより、回転子軸に外力が作用するクランク機構側の軸端をケース本体に組み付けられたクランク側軸受部により回転可能に支持することで、回転子軸の振れを抑えることができる。
【0013】
特に前記クランク側軸受部は弾性体を介して前記ケース本体に組み付けられていると、回転子軸とクランク側軸受部の芯出しのずれ量を弾性体の変形によって吸収し、かつ回転子軸の軸端の振動を低減することもできる。
【0014】
前記回転子の開口部内に当該回転子の天面部に近接して前記中間軸受部が組み付けられていると、偏心カムに連繋するクランク軸から中間軸受部までの距離を可及的に短くすることができるので、電動機の回転駆動によって往復動するクランク軸の振動が抑えられ、騒音の発生も抑えられる。
【0015】
前記中間軸受部は複数の軸受部が軸方向に近接して組み付けられていてもよい。これにより、小型の軸受部を用いても回転子の回転安定性が向上する。
【0016】
前記回転子は、筒状に形成された前記回転子ヨークの端面を閉止して組み付けられる回転子ハブと前記回転子軸が一体に組み付けられ、前記回転子ハブと固定子ハウジングとの間に組み付けられた前記中間軸受部を介して前記回転子が回転可能に支持されていてもよい。
これにより、回転子を構成する回転子ヨークと回転子ハブを分けて製造することで回転子ハブと偏心カムを芯出しして一体に形成しやすくなる。また、回転子ハブと回転子ヨークとの組み付け、回転子ハブ及び偏心カムと回転子軸の組み付けも容易に行える。
また、固定子ハウジングと回転子ハブとの間に組み付けられた中間軸受部を介して回転子が回転可能に支持されるので、回転子の開口部内に設けられる中間軸受部を偏心カムに可及的に近づけて配置できるため、支点−作用点間の距離が短くなり、回転子の回転安定性が向上する。
【0017】
前記クランク軸の他端はポンプ室に臨むダイアフラムに連結されているダイアフラムポンプであってもよい。これにより、小型で振動の少ない電動ダイアフラムポンプを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
上述した電動ポンプを用いれば、装置を軸方向に小型化し低振動かつ低騒音で回転安定性の高い電動ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】
図2の電動ポンプの矢印A−A方向断面図である。
【
図4】
図2の電動ポンプの矢印B−B方向断面図である。
【
図5】
図2の電動ポンプの矢印C−C方向断面図である。
【
図6】他例に係る電動ポンプの応用例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電動ポンプの実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、電動ポンプPは、電動機と当該電動機によって駆動されるクランク機構がポンプケース1に隣接するケース本体2内に一体に組み付けられている。電動機の一例としてアウターロータ型DCブラシレスモータ3が用いられ、ポンプの一例としてダイアフラムポンプ4が用いられる。尚、ダイアフラムポンプ4に変えてケース本体2にシリンダ及びピストンを設けたピストンポンプなどの他のポンプであってもよい。
【0021】
まず、アウターロータ型DCブラシレスモータ3の構造について
図3を参照して説明する。アウターロータ型DCブラシレスモータ3は固定子5と回転子6を備えている。固定子5は、ケース本体2に固定された筒状の固定子ハウジング7にモータ基板8が組み付けられ、固定子コア9が各々組み付けられている。モータ基板8は、固定子ハウジング7に形成された鍔部7aに重ねて組み付けられている。モータ基板8としては、ホール素子等を搭載したセンサ基板やモータコイルへの給電端子等が設けられる。モータ基板8に接続するフレキシブルケーブル8aがケース本体2より外側に引き出される(
図1,
図2参照)。固定子コア9に放射状に形成された極歯9aには、図示しないモータコイルが巻き付けられている。
【0022】
回転子6は、軸方向一端が開口したカップ状に形成されている。具体的には、筒状に形成された回転子ヨーク6aの一端面を閉止して組み付けられる回転子ハブ6bに回転子軸10が一体に組み付けられている。即ち、回転子6は、回転子ヨーク6aの開口部を電動機側軸端に向けて天面部に設けた回転子ハブ6bに回転子軸10が圧入されて一体に組み付けられている。回転子ヨーク6aの内周面には環状のマグネット6cが設けられている。マグネット6cは、固定子コア9の極歯9aと対向する位置に組み付けられている。また、回転子ハブ6bには偏心カム6dが一体に形成されている。更には、偏心カム6dには、バランスウェイト6e(カウンターウェイト)が一体に形成されている。これは、偏心カム6dにカム軸受11を介して一端側が組み付けられるクランク軸12の偏心量を打ち消すために設けられている。
尚、回転子6は、金属磁性体(例えば亜鉛めっき鋼板)を絞り加工してカップ状に一体成形した回転子ヨーク6aを用いて、この回転子ヨーク6aの天面部に偏心カム6dが一体に組み付けられていてもよい。
【0023】
固定子ハウジング7と回転子ハブ6bとの間には、中間軸受部13が組み付けられている、即ち、中間軸受部13は、回転子6の開口部内に天面部(回転子ハブ6b)に近接して設けられている。中間軸受部13は、回転子6を回転可能に支持している。これにより、中間軸受部13からクランク軸12が連繋する偏心カム6dまでの距離を可及的に短くして、振動の発生や騒音の発生を抑えることができ、回転子軸10の軸長を短縮して装置を軸方向に小型化することができる。また、回転子6(回転子ハブ6b)の開口部内に中間軸受部12を設けることで、回転子6の回転安定性が向上する。尚、中間軸受部13としては、複数の軸受部が軸方向に近接して組み付けられていてもよい。
【0024】
回転子軸10は、一端側を固定子ハウジング7の端部に組み付けられた電動機側軸受部14によって回転可能に支持されている。電動機側軸受部14は軸方向外側に向かって予圧をかけかつEリング等に抜け止めされて固定子ハウジング7に組み付けられている。また、回転子軸10は固定子ハウジング7を挿通して他端側はケース本体1のクランク機構側に延設されている。回転子軸10の他端は、ケース本体1に組み付けられたクランク側軸受部15に回転可能に支持されている。回転子軸10は、ケース本体1に対してEリング等に抜け止めされて組み付けられている。また、クランク側軸受部15は、弾性体16(Oリング、環状ゴム等)を介してケース本体1に組み付けられている。
【0025】
これにより、回転子軸10に外力が作用するクランク機構側の軸端をクランク側軸受部15により回転可能に支持することで、回転子軸10の振れを抑えることができる。特にクランク側軸受部15は弾性体16を介してケース本体1に組み付けられていると、回転子軸10とクランク側軸受部15の芯出しのずれ量を弾性体16の変形によって吸収し、かつ回転子軸10の軸端の振動を低減することもできる。
【0026】
回転子6の天面部(回転子ハブ6b)と一体に組み付けられた偏心カム6dの外周には、カム軸受11が組み付けられている。このカム軸受11を介してクランク軸12の一端が組み付けられている。クランク軸12の他端はダイアフラムポンプ4側のポンプ室18に臨むダイアフラム17に連結されている。
【0027】
ダイアフラム17は、ケース本体2とポンプ室18が形成されたポンプケース1に挟み込まれて組み付けられている。ポンプケース1には、ポンプヘッド19がシール材20を介して一体に組み付けられている。ポンプヘッド19は4隅においてボルト21によりポンプケース1に固定されている。ポンプヘッド19には、流体(気体、液体等)の吸込み口19aと吐出口19bが形成されている。
【0028】
図4に示すように、ポンプヘッド19には吸込み口19aに連なる吸込通路19cが形成されている。ポンプケース1には、吸込通路19cに連なる吸込通路1aが形成されている。吸込通路1aは、ポンプ室18に連通している。また、ポンプヘッド19とポンプケース1との界面部には吸込側逆止弁22aが設けられている。吸込側逆止弁22aは、吸込み通路19aとこれに連なる吸込通路1aとを仕切る位置に設けられている。吸込側逆止弁22aは、ポンプ室18内の流体圧が負圧になると開弁し、流体圧が平衡若しくは正圧になると閉弁する。
【0029】
図5に示すように、ポンプヘッド19には吐出口19bに連なる吐出通路19dが形成されている。ポンプケース1には、吐出通路19dに連なる吐出通路1bが形成されている。吐出通路1bは、ポンプ室18に連通している。また、ポンプヘッド19とポンプケース1との界面部には吐出側逆止弁22bが設けられている。吐出側逆止弁22bは、吐出通路19bとこれに連なる吐出通路1bとを仕切る位置に設けられている。吐出側逆止弁22bは、ポンプ室18内の流体圧が正圧になると開弁し、流体圧が平衡若しくは負圧になると閉弁する。
【0030】
図3において、電動機(アウターロータ型DCブラシレスモータ3)を回転駆動することで、回転子軸10を中心とする偏心カム6dの回転運動をクランク軸12の往復運動に変換してダイアフラム17を変形させてポンプ室18内の流体を吐出口19bから吐出し若しくは吸込み口19aから吸引する動作を繰り返す。
【0031】
以上説明したように、カップ状に形成された回転子6が開口部を電動機側軸端に向けて回転子軸10に一体に組み付けられるので、回転子6の開口部内の空スペースを利用して回転子6の天面部に近づけて中間軸受部13を配置できると共に回転子6の天面部と偏心カム6dが一体に設けられているため、中間軸受部13からクランク軸12が連繋する偏心カム6dまでの距離を可及的に短くして、振動の発生や騒音の発生を抑えることができ、回転子軸10の軸長を短縮して装置を軸方向に小型化することができる。また、回転子6の開口部内に比較的大径の中間軸受部13を用いることで、回転子6の回転安定性が向上する。
また、回転子6と偏心カム6dが一体に組み付けられることにより、回転子6の慣性モーメントが増大し、クランク軸12を往復動させる際の推力を向上させることができる。
【0032】
また、回転子6、偏心カム6d及びバランスウェイト6eが一体化して設けられているので、部品間の芯出しが行われかつ偏心量も相殺されているので、部品点数が少なく組み付け工数も減り、しかも振動が少なく回転子5の回転安定性も向上する。
【0033】
また、回転子軸10に外力が作用するクランク機構側の軸端をクランク側軸受部15により回転可能に支持することで、回転子軸10の振れを抑えることができる。特にクランク側軸受部15は弾性体16を介してケース本体1に組み付けられていると、回転子軸10とクランク側軸受部15の芯出しのずれ量を弾性体16の変形によって吸収し、かつ回転子軸10の軸端の振動を低減することもできる。
【0034】
また回転子6の開口部内に当該回転子6の天面部に近接して中間軸受部13が組み付けられていると、偏心カム6dに連繋するクランク軸12から中間軸受部13までの距離を可及的に短くすることができるので、電動機の回転駆動によって往復動するクランク軸12の振動が抑えられ、騒音の発生も抑えられる。
【0035】
上述した電動ポンプPは、クランク軸12が回転子軸10に1カ所で連繋する場合(ポンプ室18は1カ所)について説明したが、回転子軸10にクランク軸12が複数箇所で連繋して複数のポンプ室18が設けられていてもよい。
例えば、回転子軸10に180°位相がずれた位置で一対のクランク軸12がカム軸受11を介して各々設けられており、偏心カム6dには、一対のバランスウェイト6eがクランク軸12と180°位相がずれた位置に各々設けられカウンターバランスを取るようになっていてもよい。
【0036】
電動ポンプPの応用例について
図6乃至
図8に示す。
電動ポンプPの応用例として、電動機の両側にクランク機構を設けてダイアフラムポンプ4を複数設けるようにしてもよい。
図6及び
図7に示すように、ケース本体2にはポンプケース1及びポンプヘッド19が2カ所に設けられている。
図6に示すように、左右一対のダイアフラムポンプ4において、吸込み口19aと吐出口19bは180°反転した位置に設けられている。
【0037】
図8において、電動ポンプ(アウターロータ型DCブラシレスモータ3及びダイアフラムポンプ4)の基本構成(
図8左側)は、
図3と同様であるので異なる構成(
図8右側の増設分)を中心に説明する。尚、
図3と同一部材には同一番号を付いて説明を援用するものとする。回転子軸10は、アウターロータ型DCブラシレスモータ2の電動機側軸受14より延設され、軸端がケース本体1の増設側軸受部23に回転可能に支持されている。回転子軸10は、ケース本体1に対してEリング等に抜け止めされて組み付けられている。また、増設側軸受部23は、弾性体16(Oリング、環状ゴム等)を介してケース本体1に組み付けられていることが望ましい。
【0038】
電動機側に延設された回転子軸10には、増設側偏心カム24が一体に組み付けられている。増設側偏心カム24には、バランスウェイト24a(カウンターウェイト)が一体に形成されている。これは、増設側偏心カム24にカム軸受11を介して一端側が組み付けられる増設側クランク軸12の偏心量を打ち消すために設けられている。尚、振動を抑えるため増設側偏心カム24は可能な限り電動機側軸受14に近づけて配置することが好ましい。
【0039】
上記構成によれば、同一のDCブラシレスモータ3の回転子6の回転を、回転子軸10に連繋する2つのクランク軸12の往復動に変えて2つのダイアフラム4ポンプ4を同時に駆動することができる。
尚、ダイアフラムポンプ4に変えてケース本体2にシリンダ及びピストンを設けたピストンポンプを1対(2気筒)若しくは2対(4気筒)設けてもよい。
【0040】
上記電動ポンプPはOA機器、家電製品、産業機器、医療機器など幅広い機器に用いられる。
【符号の説明】
【0041】
P 電動ポンプ 1 ポンプケース 1a,19c 吸込通路 1b,19d 吐出通路 2 ケース本体 3 アウターロータ型DCブラシレスモータ 4 ダイアフムポンプ 5 固定子 6 回転子 6a 回転子ヨーク 6b 回転子ハブ 6c マグネット 6d 偏心カム 6e,24a バランスウェイト 7 固定子ハウジング 8 モータ基板 8a フレキシブルケーブル 9 固定子コア 9a 極歯 10 回転子軸 11 カム軸受 12 クランク軸 13 中間軸受部 14 電動機側軸受部 15 クランク側軸受部 16 弾性体 17 ダイアフラム 18 ポンプ室 19 ポンプヘッド 19a 吸込み口 19b 吐出口 20 シール材 21 ボルト 22a 吸込側逆止弁 22b 吐出側逆止弁 23 増設側軸受 24 増設側偏心カム