(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074461
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】自動車輌のカバーのためのパイピング
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
B60N2/58
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-119256(P2015-119256)
(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-8045(P2016-8045A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】1455703
(32)【優先日】2014年6月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507391306
【氏名又は名称】フォレシア シエージュ ドートモービル
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ルマーチャンド ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ラフステッド ポリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】キャラバン セドリック
【審査官】
永安 真
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−098699(JP,U)
【文献】
実開昭60−176700(JP,U)
【文献】
特開昭58−163312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車輌の座席カバーであって、
第1カバー部分及び第2カバー部分間に、該第1カバー部分及び第2カバー部分に組み立てられて、前記座席カバーの上側にその一部が位置する少なくとも1つの第1部及び前記座席カバーにより覆われた少なくとも1つの第2部を有するパイピングを備えており、
前記第1カバー部分及び第2カバー部分は縫い合わせられており、
前記パイピングは、断面が直線状の直線状部分に連なった断面が環状の環状部分を有しており、
前記第1カバー部分及び第2カバー部分の縫い目が、前記第1部及び前記第2部の境界で前記パイピングの環状部分と交差していることを特徴とする座席カバー。
【請求項2】
前記第1部では、前記第1カバー部分及び第2カバー部分の縁部が、前記パイピングの直線状部分に縫い合わせられていることを特徴とする請求項1に記載の座席カバー。
【請求項3】
前記パイピングは前記第2部を2つ有しており、該第2部は前記第1部の端部に夫々設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の座席カバー。
【請求項4】
前記パイピングは、プラスチックから形成された芯であるか、又は該芯を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の座席カバー。
【請求項5】
前記芯は、前記第1カバー部分及び第2カバー部分とは異なる第3部分に囲まれていることを特徴とする請求項4に記載の座席カバー。
【請求項6】
前記第3部分の縁部が、前記座席カバーの表面の下側で組み立てられていることを特徴とする請求項5に記載の座席カバー。
【請求項7】
前記第3部分の2つの縁部は、前記芯の、断面が直線状の直線状部分に組み立てられていることを特徴とする請求項6に記載の座席カバー。
【請求項8】
前記第3部分は、発泡層、及び/又は透明フィルム、及び/又は革、皮、織物若しくは合成材料の層を有していることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の座席カバー。
【請求項9】
前記パイピングを形成する一又は複数の材料は、縫い合わせられ得るように選択されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の座席カバー。
【請求項10】
前記第1カバー部分及び第2カバー部分は革、皮、織物又は合成材料から形成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の座席カバー。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の座席カバーを備えていることを特徴とする自動車輌の座席要素。
【請求項12】
請求項11に記載の座席要素を備えていることを特徴とする自動車輌の座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に自動車輌の座席に関し、より具体的にはこのような座席に適合するカバーに関する。本開示は、自動車輌の座席カバーのための装飾的なパイピングの形成に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車輌の座席は一般に、内装材で覆われたフレームから形成されている。内装材自体は、織物、皮、革、合成材料などから形成されたカバーで覆われた発泡パッドから形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−309221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ほとんどの場合、美的な理由で、座席の底部、背もたれ又はヘッドレストの外観が均一ではなく、異なる外観要素を有する。外観要素の内、カバーのある縫い目が、縫い目及び縫い目のパターンを際立たせるパイピングによって更にはっきりと見える。このようなパイピングはカバー要素に囲まれた剛性の芯から形成されており、カバーの2つの部分を繋ぐ縫い目全体に亘って延びている。
【0005】
本実施形態は、外観が改善された自動車輌の座席カバーを提供することを目的とする。
【0006】
本実施形態は、パイピングが部分的に取り付けられた縫い目を有するカバーを提供することを目的とする。
【0007】
本実施形態は、曲線状の縫い目と適合するパイピングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本実施形態は、自動車輌の座席カバーであって、第1カバー部分及び第2カバー部分間に、該第1カバー部分及び第2カバー部分に組み立てられて、前記座席カバーの上側にその一部が位置する少なくとも1つの第1部及び前記座席カバーにより覆われた少なくとも1つの第2部を有するパイピングを備えていることを特徴とする座席カバーを提供する。
【0009】
本実施形態によれば、前記第1カバー部分及び第2カバー部分は縫い合わせられている。
【0010】
本実施形態によれば、前記パイピングは、断面が直線状の直線状部分に連なった断面が環状の環状部分を有している。
【0011】
本実施形態によれば、前記第1カバー部分及び第2カバー部分の縫い目が、前記第1部及び前記第2部の境界で前記パイピングの環状部分と交差している。
【0012】
本実施形態によれば、前記第1部では、前記第1カバー部分及び第2カバー部分の縁部が、前記パイピングの直線状部分に縫い合わせられている。
【0013】
本実施形態によれば、前記パイピングは前記第2部を2つ有しており、該第2部は前記第1部の端部に夫々設けられている。
【0014】
本実施形態によれば、前記パイピングは、プラスチックから形成された芯であるか、又は該芯を有している。
【0015】
本実施形態によれば、前記芯は、前記第1カバー部分及び第2カバー部分とは異なる第3部分に囲まれている。
【0016】
本実施形態によれば、前記第3部分の縁部が、前記座席カバーの表面の下側で組み立てられている。
【0017】
本実施形態によれば、前記第3部分の2つの縁部は、前記芯の、断面が直線状の直線状部分に組み立てられている。
【0018】
本実施形態によれば、前記第3部分は、発泡層、及び/又は透明フィルム、及び/又は革、皮、織物若しくは合成材料の層を有している。
【0019】
本実施形態によれば、前記パイピングを形成する一又は複数の材料は、縫い合わせられ得るように選択されている。
【0020】
本実施形態によれば、前記第1カバー部分及び第2カバー部分は革、皮、織物又は合成材料から形成されている。
【0021】
本実施形態は、上記の座席カバーを備えていることを特徴とする自動車輌の座席要素を提供する。
【0022】
本実施形態は、上記の座席要素を備えていることを特徴とする自動車輌の座席を提供する。
【0023】
前述及び他の特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない特定の実施形態について以下に詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】自動車輌の座席の実施形態を示す簡略図である。
【
図2】パイピングを2つのカバー部分の縫い目に有するカバーの2つのカバー部分を示す平面図である。
【
図3】パイピングにおけるカバーの実施形態を示す側面略図である。
【
図4A】
図3の線Aに沿ったカバーの断面図である。
【
図4B】
図3の線Bに沿ったカバーの断面図である。
【
図4C】
図3の線Cに沿ったカバーの断面図である。
【
図5】パイピングの代替的な実施形態を示す断面図である。
【
図6】パイピングの別の代替的な実施形態を示す断面図である。
【
図7】パイピングの更に別の代替的な実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
明瞭化のために、以下に述べる本実施形態の理解に有用な工程及び要素のみが示され説明されている。特に、他の座席要素、特にフレーム及びパッドの形成が詳述されておらず、述べられている実施形態はこのような要素の通常の形成と適合する。
【0026】
図面には、様々な実施形態に共通の構造的要素及び/又は機能的要素が同一の参照番号で示されてもよく、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有してもよいことに留意すべきである。
【0027】
以下の記載では、絶対位置を修飾する用語、例えば「前」、「後」、「最上」、「底」、「左」、「右」などの用語、相対位置を修飾する用語、例えば「上側」、「下側」、「上方」、「下方」などの用語、又は方向を修飾する用語を参照するとき、特に示されていない限り、図面の向き又は通常の使用位置における座席を参照する。
【0028】
図1は、自動車輌の座席1 を概略的且つ部分的に示す。このような座席は、背もたれ14が蝶番で連結されている座席底部12から一般に形成されており、場合によってはヘッドレスト16が背もたれ14の最上部に設けられている。座席底部12のフレームが、例えば摺動機構又は折畳式の座席底部のための蝶番によって車輌フロア(不図示)に固定されている。
【0029】
図1は、座席の目に見える外観、つまり、座席のカバーの外観を基本的に示す。
【0030】
通常、カバーは共に縫い合わせられた複数の部分から形成されている。複数の部分は、革、皮、織布、不織布又は合成材料などから形成されてもよい。
【0031】
複数の部分間の縫い目線が、カバーの外側のパターンを形成し、カバーにスタイルを与える。複数の部分は異なる色であってもよく、又は異なる材料から形成されてもよい。
【0032】
図示されている実施形態では、背もたれ14及びヘッドレスト16は、縫い目にカバーの表面から突出するパイピング2 を夫々有している。例えば背もたれでは、パイピング2 は、カバーの上方部分142 と背もたれの中央部分を画定する中央部分144 との間の縫い目に設けられている。ヘッドレスト16では、パイピング2 はカバーの前側部分162 と上方部分164 との間に設けられている。これらは例であり、パイピングは、座席要素の側面又は後面に含まれるあらゆる縫い目に設けられてもよい。
【0033】
縫い目全体に亘って延びる現在のパイピングとは異なり、述べられている実施形態により提供されるパイピングは、パイピングが設けられるクッションの縁部まで延びていないことが好ましい。
【0034】
図2は、2つのカバー部分32,34 間のパイピング2 の実施形態を示す平面図である。
図2に示されているように、2つのカバー部分32,34 を組み立てる縫い目3 はパイピング2 の上側及び下側にある。言い換えれば、パイピングの少なくとも1つの第1部22の一部がカバーの上側にあり、(
図2に示されていない)少なくとも1つの第2部がカバーによって覆われている。パイピングの中央部分である第1部22の一部のみがカバーから出ており、パイピングの2つの端部がカバーの内側にあることが好ましい。
【0035】
図3は、
図2のパイピング2 を示す側面図である。
【0036】
上述したように、パイピング2 は、カバーの外側に、つまりカバーの面又は一般的な見掛け上の表面の上側に第1部22の一部を有しており、本例では、2つの第2部24が第1部22の両側にある。
【0037】
図3に示されている実施形態では、パイピング2 は、断面が環状の環状部分41、及び断面が直線状の直線状部分43を有している。断面が直線状又は垂直の部分は、カバーの下側に、つまり縫い目3 の下側に少なくとも部分的に存在している。
【0038】
図4A,4B及び4Cは、
図3の線A,B及びCに夫々沿ったパイピング2aの実施形態を示す断面図である。
【0039】
パイピング2aは、例えばプラスチックから形成された芯5 を有している。芯5 は例えば、(例えば必ずというわけではないが、その中心が中空で)断面が環状の環状部分51と、断面が直線状の直線状部分、つまり基部53とを有している。発泡層25がプラスチックの芯5 を囲んでおり、被覆材料から形成された被覆層27がこの発泡層25を覆っているか、又は発泡層無しで芯5 を直接覆っている。被覆材料は(例えば、ロゴ、パターンなどで印が付けられた)簡素で透明なプラスティックフィルムであってもよく、一部が、所望の外観に応じて革、皮、織物、合成材料などから形成されてもよい。
【0040】
パイピング2aは予め組み立てられており、つまり、被覆層27及び場合によっては発泡層25を有する第3部分が、例えば第3部分の縁部が芯5 の基部53で(縫い目29により)縫い合わせられることにより組み立てられる。従って、芯5 を被覆する部分は細長い形状を有しており、カバーのカバー部分32,34 から独立している。
【0041】
図4A〜4Cには、パイピング2aを形成する様々な要素5,25,27 を強調するために、これらの要素は異なる寸法で示されている。しかしながら、これは必ずしも必要ではない。
【0042】
図4Aは第1部22におけるカバーの状態を示す。パイピング2aは、カバー部分32,34 が基部53に達するカバーの表面から突出している。パイピングの断面が環状の環状部分41がカバーの外側に位置する。縫い目3 がカバー部分32,34 の夫々の縁部322,324 を捕らえて、基部53と交差する。従って、カバー部分32,34 は、パイピング2aの断面が環状の環状部分41より下で縫い合わせられる。
【0043】
図4Bは第2部24におけるカバーの状態を示す。ここで再度、
図4Bは、2つのカバー部分32,34 の縁部322,324 を共に直接縫い合わせた状態を示す。
【0044】
図4Cは、第1部22及び第2部24の境界におけるカバーの状態、つまり、断面が環状の環状部分41がカバーの上側からカバーの下側に変わるときのカバーの状態を示す。特徴は、縫い目3 が第1部22及び第2部24間で中断されていないということである。言い換えれば、第1部22及び第2部24の境界で、縫い目3 がパイピングの芯5 の環状部分51と交差する。
【0045】
従って、パイピング2aの芯5 を形成するプラスチック材料は縫い合わせられ得るように選択されている。またプラスチック材料は、縫製中に針の影響で壊れないように硬過ぎない。
【0046】
図5,6及び7は、代替的な実施形態を示すパイピング2b, 2c, 2dを夫々示す断面図である。
【0047】
図5では、パイピング2bは、基部、つまり直線状部分を有さず、断面が環状のプラスチックの芯5bを有している。
図5の例では、第3部分は、
図4A〜4Cに示されているように発泡層25及び被覆層27を有している。第3部分の2つの縁部は、例えば縫い合わせられるか、接着されるか、又は融解されることにより互いに直接組み立てられている。
【0048】
図6では、パイピング2cは、透明フィルム27c で覆われて発泡層を含まないプラスチックの芯5 を有している。
【0049】
図7では、パイピング2dは、縫い合わせられ得る材料、例えばプラスチックから一体に形成されている。例えばパイピング2dは、断面が環状の環状部分41及び断面が直線状の直線状部分43を画定すべく互いに折り重ねられた部分から形成されている。
図7は
図4Aに示されているようにカバー部分32及びカバー部分34を示す。
【0050】
パイピング2 の寸法は所望の効果によって決まる。しかしながら、このような寸法は、基部だけでなく断面が環状の環状部分でも縫い目の形成と適合すべく選択されている。
【0051】
特定の実施形態として、プラスチックの芯5 又はパイピング2dの高さは、断面で1cm未満(例えば、約0.8cm)から数センチメートル(例えば、約3cm)の範囲内である。断面が環状の環状部分51又は環状部分41の直径は、例えば4mm〜1cmの範囲内である。断面が直線状の直線状部分53又は直線状部分43の高さは、例えば4mm〜2cmの範囲内である。
【0052】
述べられている実施形態の利点は、縫い目線全体に亘って延びていないパイピングにより座席カバーに美的外観が与えられ得るということである。
【0053】
別の利点は、形成されたカバーが通常のパッドと適合するということである。特に、カバーが置かれるべき(滑らせられるべき)パッドを調整する必要がない。
【0054】
パイピングの可撓性によりパイピングをカバーの下側に配置できると共に、パイピングが曲線状の縫い目線のパターンをたどることが更に可能になることに注目すべきである。
【0055】
座席の背もたれ又はヘッドレストに適用された例に関して述べられている構成は、言うまでもなく自動車輌のあらゆる座席要素、ひいては座席底部に適用される。更に、カバーを形成すべく組み立てられた複数の部分を形成する材料は座席の領域に応じて異なってもよい。
【0056】
様々な実施形態が述べられている。様々な変更、調整及び改良が当業者に想起される。特に、パイピングの寸法は実施形態に応じて異なってもよい。例えば、カバーの上側及び下側で交互に延びて、複数の第1部及び3以上の第2部を有するパイピングが設けられてもよい。パイピングがカバーの縁部で終わる場合を対象とした別の変形例によれば、パイピングの端部の内の1つがカバーの下側に位置せず、そのため、パイピングは第1部の一端部に1つの第2部のみ有している。更に、縫製による組立が好ましい実施形態であるが、カバー部分の縁部を共に接着することにより、又は(合成材料の場合には)融解によりカバー部分を組み立ててもよい。更に、カバー部分の後面が発泡層で覆われてもよい。最後に、述べられている実施形態の実際の実施は、縫製技術であろうともパイピング形成技術であろうとも、上記に与えられた機能表示に基づく当業者の技能の範囲内である。
【0057】
このような変更、調整及び改良は、本開示の一部であることが意図されており、本発明の趣旨及び範囲内であることが意図されている。従って、上記の記載は単なる一例であり、限定することを意図していない。本発明は、単に以下の特許請求の範囲及びこの均等物に定義されているように限定される。
【0058】
本出願は、2014年6月20日に出願された仏国特許出願第14/55703号の優先権を主張しており、その内容全体が、特許法で許容可能な最大限に至るまで参照により本明細書に組み込まれる。