特許第6074490号(P6074490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6074490積層造形装置及び積層造形装置のプログラム再開方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6074490
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】積層造形装置及び積層造形装置のプログラム再開方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/105 20060101AFI20170123BHJP
   G05B 19/4067 20060101ALI20170123BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20170123BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20170123BHJP
【FI】
   B22F3/105
   G05B19/4067
   B22F3/16
   B33Y10/00
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-249693(P2015-249693)
(22)【出願日】2015年12月22日
【審査請求日】2016年7月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】金子 幹男
【審査官】 牧 初
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−230328(JP,A)
【文献】 特開昭57−60401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
B22F 1/00− 8/00
C22C 1/04− 1/05
C22C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め作成され且つシーケンス番号をふられた複数のプログラム行を有するメインプログラムに従って所望の積層造形物の形状を所定厚で分割してなる分割層ごとに、上下方向に移動可能な造形テーブル上に前記所定厚の材料粉体層を形成し、続いてレーザ制御装置を作動させて前記材料粉体層の所定箇所にレーザ光を照射することで焼結層を形成することを繰り返して所望の積層造形物を形成するように構成される数値制御装置、を具備する積層造形装置であって、
前記数値制御装置は、
前記メインプログラムを各プログラム行ごとに前記シーケンス番号の順で実行する演算部と、
前記プログラム行のシーケンス番号を記憶する記憶部と、
前記メインプログラムが中断した後、前記メインプログラムを再開する際に、現在の造形テーブルの高さである第1の高さと再開時に適する造形テーブルの高さである第2の高さとを比較するとともに、再開するプログラム行のシーケンス番号である第1の番号と前記記憶部に記憶されたシーケンス番号である第2の番号とを比較する比較部と、を有し、
前記焼結層を形成する各プログラム行は、前記造形テーブルの高さを前記所定厚分降下させ前記造形テーブル上に前記所定厚の前記材料粉体層を形成する指令と、前記材料粉体層上の前記所定箇所に前記レーザ光を照射することで前記焼結層を1層形成する指令と、をそれぞれ含み、
前記数値制御装置は、中断されたプログラム行の冒頭からメインプログラムを再開するように構成される、
積層造形装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記造形テーブルの高さを更に記憶し、
前記第2の高さは、記憶された前記造形テーブルの高さから求められるように構成される、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
前記記憶部は、各プログラム行の完了時において、完了した当該プログラム行のシーケンス番号及び当該プログラム行でのプログラム完了時の造形テーブルの高さを記憶する、請求項2に記載の積層造形装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記焼結層の累積数を更に記憶し、
前記第2の高さは、造形開始時の前記造形テーブルの高さと、前記焼結層の累積数と前記材料粉体層の前記所定厚との積との差から求められるように構成される、
請求項1に記載の層造形装置。
【請求項5】
前記記憶部は、各プログラム行の完了時において、完了した当該プログラム行のシーケンス番号を記憶する、請求項4に記載の積層造形装置。
【請求項6】
前記数値制御装置は、前記メインプログラムが中断した後、再開指示の入力を契機として前記造形テーブルを前記第2の高さとなるように制御し且つ中断されたプログラム行からメインプログラムを再開するように構成される、請求項1〜請求項5の何れか1つ記載の積層造形装置。
【請求項7】
前記数値制御装置は、前記メインプログラムを再開する際に、前記第1の高さと前記第2の高さとが整合しないか、又は前記第1の番号と前記第2の番号とが整合しないときは、所定の警告を発するように構成される、請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の積層造形装置。
【請求項8】
前記数値制御装置は、前記メインプログラムを再開する際に、前記第1の高さと前記第2の高さとが整合し、且つ前記第1の番号と前記第2の番号とが整合するときは、前記メインプログラムの再開を許可するように構成される、請求項1〜請求項7の何れか1つに記載の積層造形装置。
【請求項9】
シーケンス番号をふられた複数のプログラム行を有するメインプログラムを開始する開始工程と、
1層の焼結層を形成する各プログラム行において、
造形テーブルの高さを所望の高さに設定する設定工程と、
レーザ光を照射することで所望の積層造形物の形状を所定厚で分割してなる分割層ごとに前記造形テーブル上に敷布された材料粉体を焼結して焼結層を形成する形成工程と、
前記プログラム行のシーケンス番号を記憶する記憶工程と、
を具備する積層造形装置のプログラム再開方法であって、
前記メインプログラムが中断した後、中断されたプログラム行の冒頭から前記メインプログラムを再開する際に、現在の造形テーブルの高さである第1の高さと再開時に適する造形テーブルの高さである第2の高さとを比較するとともに、再開するプログラム行のシーケンス番号である第1の番号と前記記憶工程において記憶されたシーケンス番号である第2の番号とを比較する比較工程と、
更に備える、
積層造形装置のプログラム再開方法。
【請求項10】
前記記憶工程では、前記造形テーブルの高さを更に記憶し、
前記第2の高さは、記憶された前記造形テーブルの高さから求められる、請求項9に記載の積層造形装置のプログラム再開方法。
【請求項11】
各プログラム行の完了時において、完了した当該プログラム行のシーケンス番号及び当該プログラム行でのプログラム完了時の造形テーブルの高さを記憶する、請求項10に記載の積層造形装置のプログラム再開方法。
【請求項12】
前記記憶工程では、前記焼結層の累積数を更に記憶し、
前記第2の高さは、造形開始時の前記造形テーブルの高さと、前記焼結層の累積数と前記材料粉体層の前記所定厚との積との差から求められるように構成される、請求項9に記載の積層造形装置のプログラム再開方法。
【請求項13】
各プログラム行の完了時において、完了した当該プログラム行のシーケンス番号を記憶する、請求項12に記載の積層造形装置のプログラム再開方法。
【請求項14】
前記メインプログラムが中断した後、再開指示の入力を契機として前記造形テーブルを前記第2の高さとなるように制御し且つ中断されたプログラム行からメインプログラムを再開する、請求項9〜請求項13の何れか1つに記載の積層造形装置のプログラム再開方法。
【請求項15】
前記比較工程の結果、前記第1の高さと前記第2の高さとが整合しないか、又は前記第1の番号と前記第2の番号とが整合しないときは、所定の警告を発する、請求項9〜請求項14の何れか1つに記載の積層造形装置のプログラム再開方法。
【請求項16】
前記比較工程の結果、前記第1の高さと前記第2の高さとが整合し、且つ前記第1の番号と前記第2の番号とが整合するときは、前記メインプログラムの再開を許可する、請求項9〜請求項15の何れか1つに記載の積層造形装置のプログラム再開方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層造形装置及び積層造形装置のプログラム再開方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光による金属の積層造形法においては、上下方向に移動可能な造形テーブル上に非常に薄い材料粉体層を形成し、この材料粉体層の所定箇所にレーザ光を照射して照射位置の材料粉体を焼結させることを繰り返すことによって、複数の焼結層を積層して一体となる焼結体からなる所望の三次元形状を造形する。また、水平鉛直に移動可能なエンドミル等の回転切削工具を用いて、造形物の造形途中に、材料粉体を焼結して得られた焼結体の表面や不要部分に対して切削加工を行うことも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5721886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、材料粉体層の形成、材料粉体の焼結、焼結体への切削加工等の各工程を含む積層造形中に意図的に、あるいは装置内におけるモータへの過剰負荷等の予期せぬエラー等により、積層造形に係るプログラム(メインプログラム)が中断される場合がある。非常停止やエラー停止の場合は、造形テーブルの位置制御を行うモータ制御信号が切断され、その結果造形テーブルが非制御状態となり自重や慣性で自然に動いてしまうことがある。また、中断するタイミングによってはリコータヘッドを左右に移動させる必要があり、このとき、リコータヘッドとそれまでに形成された積層造形物との衝突を懸念して造形テーブルを中断時の位置より下げることがある。
【0005】
中断されたメインプログラムを再開するにあたり、中断時の造形テーブル位置と現状の造形テーブル位置が異なっている可能性があるため、作業者は手動で造形テーブルの再開位置を設定しなければならない。同様に、作業者は手動でメインプログラムにおけるプログラム行のシーケンス番号を設定しなければならない。かかる設定を誤ると中断前までの造形工程が無駄になるおそれもあり、作業者は気を使いながらメインプログラムの再開を行うこととなる。
【0006】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、メインプログラムが中断した後当該メインプログラムを再開する際に、現在の造形テーブルの高さと再開時に適する造形テーブルの高さとを比較するとともに、再開するプログラム行のシーケンス番号と再開すべきシーケンス番号とを比較することができる積層造形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、予め作成され且つシーケンス番号をふられた複数のプログラム行を有するメインプログラムに従って所望の積層造形物の形状を所定厚で分割してなる分割層ごとに、上下方向に移動可能な造形テーブル上に前記所定厚の材料粉体層を形成し、続いてレーザ制御装置を作動させて前記材料粉体層の所定箇所にレーザ光を照射することで焼結層を形成することを繰り返して所望の積層造形物を形成するように構成される数値制御装置、を具備する積層造形装置であって、前記数値制御装置は、前記メインプログラムを各プログラム行ごとに前記シーケンス番号の順で実行する演算部と、前記プログラム行のシーケンス番号を記憶する記憶部と、前記メインプログラムが中断した後、前記メインプログラムを再開する際に、現在の造形テーブルの高さである第1の高さと再開時に適する造形テーブルの高さである第2の高さとを比較するとともに、再開するプログラム行のシーケンス番号である第1の番号と前記記憶部に記憶されたシーケンス番号である第2の番号とを比較する比較部と、を有する、積層造形装置が提供される。
【0008】
本発明の他の側面によれば、シーケンス番号をふられた複数のプログラム行を有するメインプログラムを開始する開始工程と、各プログラム行において、造形テーブルの高さを所望の高さに設定する設定工程と、レーザ光を照射することで前記造形テーブル上に敷布された材料粉体を焼結して焼結層を形成する形成工程と、前記プログラム行のシーケンス番号を記憶する記憶工程と、を具備する積層造形装置のプログラム再開方法であって、前記メインプログラムが中断した後、前記メインプログラムを再開する際に、現在の造形テーブルの高さである第1の高さと再開時に適する造形テーブルの高さである第2の高さとを比較するとともに、再開するプログラム行のシーケンス番号である第1の番号と前記記憶工程において記憶されたシーケンス番号である第2の番号とを比較する比較工程と、を更に具備する、積層造形装置のプログラム再開方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メインプログラムが中断した場合であっても、容易にメインプログラムを再開することができる。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記憶部は、前記造形テーブルの高さを更に記憶し、前記第2の高さは、記憶された前記造形テーブルの高さから求められるように構成される。
好ましくは、前記記憶部は、各プログラム行の完了時において、完了した当該プログラム行のシーケンス番号及び当該プログラム行でのプログラム完了時の造形テーブルの高さを記憶する。
好ましくは、前記記憶部は、前記焼結層の累積数を更に記憶し、前記第2の高さは、造形開始時の前記造形テーブルの高さと、前記焼結層の累積数と前記材料粉体層の前記所定厚との積との差から求められるように構成される。
好ましくは、前記記憶部は、各プログラム行の完了時において、完了した当該プログラム行のシーケンス番号を記憶する。
好ましくは、前記数値制御装置は、前記メインプログラムが中断した後、再開指示の入力を契機として前記造形テーブルを前記第2の高さとなるように制御し且つ中断されたプログラム行からメインプログラムを再開するように構成される。
好ましくは、前記数値制御装置は、前記メインプログラムを再開する際に、前記第1の高さと前記第2の高さとが整合しないか、又は前記第1の番号と前記第2の番号とが整合しないときは、所定の警告を発するように構成される。
好ましくは、前記数値制御装置は、前記メインプログラムを再開する際に、前記第1の高さと前記第2の高さとが整合し、且つ前記第1の番号と前記第2の番号とが整合するときは、前記メインプログラムの再開を許可するように構成される。
好ましくは、前記記憶工程では、前記造形テーブルの高さを更に記憶し、前記第2の高さは、記憶された前記造形テーブルの高さから求められる。
好ましくは、各プログラム行の完了時において、完了した当該プログラム行のシーケンス番号及び当該プログラム行でのプログラム完了時の造形テーブルの高さを記憶する。
好ましくは、前記記憶工程では、前記焼結層の累積数を更に記憶し、前記第2の高さは、造形開始時の前記造形テーブルの高さと、前記焼結層の累積数と前記材料粉体層の前記所定厚との積との差から求められるように構成される。
好ましくは、各プログラム行の完了時において、完了した当該プログラム行のシーケンス番号を記憶する。
好ましくは、前記メインプログラムが中断した後、再開指示の入力を契機として前記造形テーブルを前記第2の高さとなるように制御し且つ中断されたプログラム行からメインプログラムを再開する。
好ましくは、前記比較工程の結果、前記第1の高さと前記第2の高さとが整合しないか、又は前記第1の番号と前記第2の番号とが整合しないときは、所定の警告を発する。
好ましくは、前記比較工程の結果、前記第1の高さと前記第2の高さとが整合し、且つ前記第1の番号と前記第2の番号とが整合するときは、前記メインプログラムの再開を許可する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る積層造形装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る粉体層形成装置3及びレーザ光照射部13の斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るリコータヘッド11の斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るリコータヘッド11の別の角度から見た斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る積層造形装置を用いた積層造形方法の説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る積層造形装置を用いた積層造形方法の説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係る積層造形装置を用いた積層造形方法の説明図である。
図8】本発明の一実施形態に係る積層造形装置の制御系を示すブロック図である。
図9】本発明の一実施形態に係る積層造形装置のメインプログラムの実行フローを示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施形態に係る積層造形装置のメインプログラムの一例である。
図11】本発明の一実施形態に係る積層造形装置における中断時からの再開フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
図1図2に示すように、本発明の一実施形態に係る積層造形装置は、チャンバ1とレーザ光照射部13とを有する。
【0013】
チャンバ1は積層造形物を形成する造形室1dを有する前チャンバと、回転切削工具が装着されるスピンドルヘッドを造形室1dの任意の位置に移動させるための駆動装置の大部分が収容される駆動室を有する後チャンバとからなる。造形室1dと駆動室は伸縮可能な蛇腹で仕切られるが、造形室1dと駆動室の間には不活性ガスが通過できるようわずかな隙間である連通部が設けられている。なお、図1は前チャンバを正面から図示しており、後チャンバは図示省略されている。チャンバ1は、所要の造形領域Rを覆い且つ所定濃度の不活性ガスで充満される。チャンバ1には、内部に粉体層形成装置3が設けられ、上面部にヒューム拡散装置17が設けられる。
粉体層形成装置3は、ベース台4とリコータヘッド11と細長部材9r、9lとを有する。
【0014】
ベース台4は、積層造形物が形成される造形領域Rを有する。造形領域Rには、造形テーブル5が設けられる。造形テーブル5は、駆動機構31によって駆動されて上下方向(図1の矢印A方向)に移動することができる。積層造形装置の使用時には、造形テーブル5上に造形プレート7が配置され、その上に材料粉体層8が形成される。また、所定の照射領域は、造形領域R内に存在し、所望の三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。
【0015】
造形テーブル5の周りには、粉体保持壁26が設けられる。粉体保持壁26と造形テーブル5とによって囲まれる粉体保持空間には、未焼結の材料粉体が保持される。図1においては不図示であるが、粉体保持壁26の下側には、粉体保持空間内の材料粉体を排出可能な粉体排出部が設けられてもよい。かかる場合、積層造形の完了後に造形テーブル5を降下させることによって、未焼結の材料粉体が粉体排出部から排出される。排出された材料粉体は、シューターガイドによってシューターに案内され、シューターを通じてバケットに収容されることになる。
【0016】
リコータヘッド11は、図2図4に示すように、材料収容部11aと材料供給部11bと材料排出部11cとを有する。
【0017】
材料収容部11aは材料粉体を収容する。なお、材料粉体は、例えば金属粉(例:鉄粉)であり、例えば平均粒径20μmの球形である。材料供給部11bは、材料収容部11aの上面に設けられ、材料供給装置32から材料収容部11aに供給される材料粉体の受口となる。材料排出部11cは、材料収容部11aの底面に設けられ、材料収容部11a内の材料粉体を排出する。なお、材料排出部11cは、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に延びるスリット形状である。
【0018】
また、リコータヘッド11の両側面には、ブレード11fb、11rbと第1供給口33aと第2排出口34bとが設けられる。ブレード11fb、11rbは、材料粉体を敷布する。換言するとブレード11fb、11rbは、材料排出部11cから排出された材料粉体を平坦化して材料粉体層8を形成する。第1供給口33a及び第2排出口34bは、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に沿ってそれぞれ設けられ、不活性ガスの供給及び排出を行う(詳細は後述)。本明細書において、「不活性ガス」とは、材料粉体と実質的に反応しないガスであり、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が例示される。
【0019】
細長部材9r、9lには、それぞれリコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に沿って第3排出口34c及び第4排出口34dがそれぞれ設けられる。第3排出口34c及び第4排出口34dにより、ヒュームをより効率よく排出することができる(詳細は後述)。
【0020】
チャンバ1の上面には、ウィンドウ1aを覆うようにヒューム拡散装置17が設けられる。ヒューム拡散装置17は、円筒状の筐体17aと、筐体17a内に配置された円筒状の拡散部材17cを備える。筐体17aと拡散部材17cの間に不活性ガス供給空間17dが設けられる。また、筐体17aの底面には、拡散部材17cの内側に開口部17bが設けられる。拡散部材17cには多数の細孔17eが設けられており、不活性ガス供給空間17dに供給された清浄な不活性ガスは細孔17eを通じて清浄室17fに充満される。そして、清浄室17fに充満された清浄な不活性ガスは、開口部17bを通じてヒューム拡散装置17の下方に向かって噴出される。
【0021】
レーザ光照射部13は、チャンバ1の上方に設けられる。レーザ光照射部13は、造形領域R上に形成される材料粉体層8の所定箇所にレーザ光Lを照射して照射位置の材料粉体を焼結させる。具体的には、レーザ光照射部13は、レーザ光源42と2軸のガルバノミラー43a、43bと集光レンズ44とを有する。なお、各ガルバノミラー43a、43bは、それぞれガルバノミラー43a、43bを回転させるアクチュエータを備えている。
【0022】
レーザ光源42はレーザ光Lを照射する。ここで、レーザ光Lは、材料粉体を焼結可能なレーザであって、例えば、COレーザ、ファイバーレーザ、YAGレーザ等である。
【0023】
2軸のガルバノミラー43a、43bは、レーザ光源42より出力されたレーザ光Lを制御可能に2次元走査する。特にガルバノミラー43aは、レーザ光Lを矢印B方向(X軸方向)に走査し、ガルバノミラー43bは、レーザ光Lを矢印C方向(Y軸方向)に走査する。ガルバノスキャナ43a、43bは、それぞれ、不図示の制御装置から入力される回転角度制御信号の大きさに応じて回転角度が制御される。かかる特徴により、ガルバノミラー43a、43bの各アクチュエータに入力する回転角度制御信号の大きさを変化させることによって、所望の位置にレーザ光Lを照射することができる。
【0024】
集光レンズ44は、例えばfθレンズであり、レーザ光源42より出力されたレーザ光Lを集光する。なお、集光レンズ44は、レーザ光Lに沿ってレーザ光源42とガルバノミラー43a、43bとの間に位置するように配置されていてもよい。
【0025】
ガルバノミラー43a、43b及び集光レンズ44を通過したレーザ光Lは、チャンバ1に設けられたウィンドウ1aを透過して造形領域Rに形成された材料粉体層8に照射される。ウィンドウ1aは、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。例えば、レーザ光Lがファイバーレーザ又はYAGレーザの場合、ウィンドウ1aは石英ガラスで構成可能である。
【0026】
次に、不活性ガス給排系統について説明する。不活性ガス給排系統は、ヒューム拡散装置17と、不活性ガス供給装置15と、ヒュームコレクタ19と、ダクトボックス21、23とを含む。不活性ガス給排系統では、チャンバ1が常時所定濃度以上の不活性ガスで充満されているように不活性ガスを供給するとともに、レーザ光Lの照射によって発生したヒュームによって汚染された不活性ガスをチャンバ1の外に排出する。
【0027】
不活性ガス給排系統は、チャンバ1に設けられる複数の不活性ガスの供給口及び排出口と、各供給口及び各排出口と不活性ガス供給装置15及びヒュームコレクタ19とを接続する配管を含む。本実施形態の供給口は、第1供給口33aと、第2供給口33bと、副供給口33eと、ヒューム拡散装置供給口33dと、駆動室供給口(不図示)とからなる。本実施形態の排出口は、第1排出口34aと、第2排出口34bと、第3排出口34cと、第4排出口34dと、副排出口34eとからなる。
【0028】
第1供給口33aは、第1排出口34aの設置位置に対応して第1排出口34aに対面するように設けられる。望ましくは、第1供給口33aは、リコータヘッド11が材料供給装置32の設置位置に対して所定の照射領域を挟んで反対側に位置しているときに第1排出口34aと対面するように、矢印C方向に沿ってリコータヘッド11の片面に設けられる。
【0029】
第1排出口34aは、チャンバ1の側板に第1供給口33aに対面するように所定の照射領域から所定距離離れて設けられる。また、第1排出口34aに接続するように吸引装置35が設けられる。吸引装置35は、レーザ光Lの照射経路からヒュームを効率よく排除することを助ける。また、吸引装置35によって、第1排出口34aにおいて、より多くの量のヒュームを排出することができ、造形室1d内にヒュームが拡散しにくくなる。
【0030】
第2供給口33bは、ベース台4の端上に所定の照射領域を間に置いて第1排出口34aに対面するように設けられる。第2供給口33bは、リコータヘッド11が所定の照射領域を通過して第1供給口33aが所定の照射領域を間に置かずに第1排出口34aに直面する位置にあるとき、第1供給口33aから第2供給口33bに選択的に切り換えられて開放される。そのため、第2供給口33bは、第1供給口33aから供給される不活性ガスと同じ所定の圧力と流量の不活性ガスを第1排出口34aに向けて供給するので、常に同じ方向に不活性ガスの流れを作り出し、安定した焼結を行なえる点で有利である。
【0031】
第2排出口34bは、リコータヘッド11の第1供給口33aが設けられている片面に対して反対側の側面に、矢印C方向に沿って設けられる。第1供給口33aから不活性ガスを供給できないとき、換言すれば、第2供給口33bから不活性ガスを供給するときに、所定の照射領域のより近くで不活性ガスの流れを作り出していくらかのヒュームを排出するので、ヒュームをより効率よくレーザ光Lの照射経路から排除することができる。
【0032】
不活性ガス給排系統の不活性ガスの最大供給量を超えない範囲で、細長部材9r、9lにそれぞれ第3排出口34c及び第4排出口34dが矢印B方向に沿って設けられる。所定の照射領域がより広く造形領域Rの前側又は奥側の端にレーザ光Lの照射スポットがある場合は、第1供給口33a又は第2供給口33bから第1排出口34aまでの間に形成される不活性ガスの流れにヒュームが乗り切れずに漂流するおそれがある。第3排出口34c及び第4排出口34dにより、ヒュームをより効率よく排出することができる。
【0033】
また、本実施形態の不活性ガス給排系統は、第1排出口34aに対面するようにチャンバ1の側板に設けられヒュームコレクタ19から送給されるヒュームが除去された清浄な不活性ガスを造形室1dに供給する副供給口33eと、チャンバ1の上面に設けられヒューム拡散装置17へ不活性ガスを供給するヒューム拡散装置供給口33dと、チャンバ1の後チャンバに設けられ駆動室(不図示)へ不活性ガスを供給する不図示の駆動室供給口と、第1排出口34aの上側に設けられチャンバ1の上側に残留するヒュームを多く含む不活性ガスを排出する副排出口34eとを備える。
【0034】
チャンバ1の上面には、ウィンドウ1aを覆うようにヒューム拡散装置17が設けられる。ヒューム拡散装置17は、円筒状の筐体17aと、筐体17a内に配置された円筒状の拡散部材17cを備える。筐体17aと拡散部材17cの間に不活性ガス供給空間17dが設けられる。また、筐体17aの底面には、拡散部材17cの内側に開口部17bが設けられる。拡散部材17cには多数の細孔17eが設けられており、ヒューム拡散装置供給口33dを通じて不活性ガス供給空間17dに供給された清浄な不活性ガスは細孔17eを通じて清浄室17fに充満される。そして、清浄室17fに充満された清浄な不活性ガスは、開口部17bを通じてヒューム拡散装置17の下方に向かって噴出される。この噴出された清浄な不活性ガスは、レーザ光Lの照射経路に沿って流れ出てレーザ光Lの照射経路からヒュームを排除し、ウィンドウ1aがヒュームによって汚れることを防止する。
【0035】
チャンバ1への不活性ガス供給系統には、不活性ガス供給装置15と、ヒュームコレクタ19が接続されている。不活性ガス供給装置15は、不活性ガスを供給する機能を有し、例えば、周囲の空気から窒素ガスを取り出す膜式窒素セパレータを備える装置である。本実施形態の不活性ガス供給装置15は、第1供給口33a及び第2供給口33bを通じて不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給装置15aと、ヒューム拡散装置供給口33d及び不図示の駆動室供給口を通じて不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給装置15bとからなる。第1不活性ガス供給装置15aとしては、不活性ガスの濃度を管理可能なものが好ましい。第2不活性ガス供給装置15bは、第1不活性ガス供給装置15aと同様の構成の装置であってもよいが、造形領域Rから比較的離れた位置にある供給口と接続され比較的不活性ガス濃度管理の重要性が低いので、不活性ガスの濃度を管理する機能を有していなくてもよい。ヒュームコレクタ19は、その上流側及び下流側にそれぞれダクトボックス21、23を有する。チャンバ1から排出されたヒュームを含む不活性ガスは、ダクトボックス21を通じてヒュームコレクタ19に送られ、ヒュームコレクタ19においてヒュームが除去された清浄な不活性ガスがダクトボックス23を通じてチャンバ1の副供給口33eへ送られる。このような構成により、不活性ガスの再利用が可能になっている。
【0036】
不活性ガス供給系統として、図1に示すように、第1不活性ガス供給装置15aと、第1供給口33a及び第2供給口33bとがそれぞれ接続され、第2不活性ガス供給装置15bと、ヒューム拡散装置供給口33d及び不図示の駆動室供給口とがそれぞれ接続される。また、ヒュームコレクタ19と副供給口33eとがダクトボックス23を通じて接続される。第1不活性ガス供給装置15a及び第2不活性ガス供給装置15bは、制御装置を通して制御バルブが所定量開放されることによって、所定の圧力と流量の清浄な不活性ガスをチャンバ1へそれぞれ供給する。チャンバ1内に供給された不活性ガスは、造形室1dと不図示の駆動室との間の連通部を通じて造形室1d内に供給される。
【0037】
また、本実施形態の積層造形装置においては、造形室に連通する開口に設けられる作業扉が開かれた場合は、不図示の作業扉の開閉を検出する扉検知器によって制御装置は作業扉が開いていることを検出し、第1不活性ガス供給装置15aを停止するが、第2不活性ガス供給装置15bは、不活性ガスを供給し続けるようにされている。作業扉が開いているときは、造形室1dに不活性ガスを供給しても大気中に拡散してしまうので、作業扉が開いているときに造形室1dへの不活性ガスの供給を停止することによって、不活性ガスの無駄な供給を抑制することができる。
【0038】
ヒューム排出系統として、図1に示すように、第1排出口34a、第2排出口34b、第3排出口34c、第4排出口34d及び副排出口34eとヒュームコレクタ19とがダクトボックス21を通じてそれぞれ接続される。ヒュームコレクタ19においてヒュームが取り除かれた後の清浄な不活性ガスは、チャンバ1へと返送され再利用される。
【0039】
(積層造形方法)
次に、図1及び図5図7を用いて、上記の積層造形装置を用いた積層造形方法について説明する。なお、図5図7では、不活性ガス給排系統は図示を省略している。
【0040】
まず、造形テーブル5上に造形プレート7を載置した状態で造形テーブル5の高さを適切な位置に調整する(図5)。この状態で材料収容部11a内に材料粉体が充填されているリコータヘッド11を図5の矢印B方向に造形領域Rの左側から右側に移動させることによって、造形プレート7上に1層目の材料粉体層8を形成する。
【0041】
次に、材料粉体層8中の所定部位にレーザ光Lを照射することで材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、図6に示すように、積層造形物全体に対して所定厚を有する分割層である1層目の焼結層81fを得る。
【0042】
次に、造形テーブル5の高さを材料粉体層8の所定厚(1層)分下げ、リコータヘッド11を造形領域Rの右側から左側に移動させることによって、焼結層81f上に2層目の材料粉体層8を形成する。
【0043】
次に、材料粉体層8中の所定部位にレーザ光Lを照射することによって材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、図7に示すように、2層目の焼結層82fを得る。
【0044】
以上の工程を繰り返すことによって、3層目の焼結層83f、4層目の焼結層84f、5層目以降の焼結層が形成される。隣接する焼結層は、互いに強く固着される。
【0045】
好ましくは、焼結体の表面精度を高める等の目的で、複数層の焼結層を形成する度に、焼結層に対して、スピンドルヘッドに装着された回転切削工具によって切削加工を行う切削工程を実施する。
【0046】
必要数の焼結層を形成した後、未焼結の材料粉体を除去することによって、造形した焼結体を得ることができる。この焼結体は、例えば樹脂成形用の金型として利用可能である。
【0047】
続いて、図8を用いて、上記の積層造形装置の制御系について説明する。図8に示すように、当該制御系は、計算系統、U軸系統及びレーザ系統を含む。
【0048】
(計算系統)
CAM(Computer Aided Manufacturing)装置60は、所望の積層造形物を形成するためのメインプログラムと、切削プログラムファイルと、造形プログラムファイル(レーザ照射プログラムファイル)とを含むプロジェクトファイルを作成する。なお、メインプログラムはシーケンス番号をふられた複数のプログラム行から構成され、更に各プログラム行は、所定の階層の焼結層の焼結指令や、所定の階層の焼結層への切削指令等からなる。各層における回転切削工具による切削経路やレーザ光Lの照射位置等に係る具体的な指令等は、切削プログラムや造形プログラムファイルに含まれる。
【0049】
数値制御装置70は、詳細は後述するが、予め作成され且つシーケンス番号をふられた複数のプログラム行を有するメインプログラムに従って造形テーブル5の高さを制御し、レーザ制御装置90に照射すべき分割層を指定し照射開始の指令を出力することを含め、積層造形装置の各部の制御を行う。
数値制御装置70は、フラッシュメモリ等のリムーバブル記憶媒体や通信回線等を介してCAM装置60の作成したメインプログラムファイルと、切削プログラムファイルと、造形プログラムファイル(レーザ照射プログラムファイル)とを含むプロジェクトファイルを読み込むように構成される。また、数値制御装置70は、演算部71、比較部72及び記憶部73を有する。
【0050】
演算部71は、数値制御に係る種々の演算を実行する。例えば、演算部71は、メインプログラムファイルと切削プログラムファイルを解析するとともに、メインプログラムを各プログラム行ごとに実行するよう各制御装置に指令信号を出力する。
【0051】
比較部72は、現在の造形テーブル5の高さ(第1の高さ)と記憶部73に記憶された造形テーブル5の高さ(第2の高さ)とを比較するとともに、再開するプログラム行のシーケンス番号(第1の番号)と記憶部73に記憶されたシーケンス番号(第2の番号)とを比較する。なお、かかる内容の詳細については後に中断時再開フロー(図11)として説明する。
【0052】
記憶部73は、数値制御装置70に係るデータや演算部71の演算に係る一時的な変数の値等を記憶する。例えば、記憶部73は、造形テーブル5の高さとシーケンス番号とを記憶する。具体的には、例えばU軸モータ78の変位量は造形テーブル5の高さに影響するため、かかる変位量を検出して記憶し、変位量を比較することで間接的に造形テーブル5の高さを比較してもよい。
【0053】
表示装置74は、数値制御装置70に接続され、数値制御装置70に係るデータや、現在の造形テーブル5の高さが適切でない旨のエラーメッセージ等を画面に表示する。後者の詳細については後に中断時再開フロー(図11)として説明する。
【0054】
(U軸系統)
モータ制御装置76は、数値制御装置70に接続され、メインプログラムの各プログラム行に記載される造形テーブル5の高さを受信するように構成される。
【0055】
モータ制御装置76は、メインプログラムに基づいて所望の指令信号をドライバ77に送信し、ドライバ77は、当該指令信号に対応する大きさの駆動電流をU軸モータ78に送信する。駆動電流によりU軸モータ78が駆動し、その結果、造形テーブル5が上下方向に移動される。
【0056】
また、U軸モータ78にはU軸エンコーダ79が接続され、U軸モータ78の位置情報がモータ制御装置76にフィードバックされるように構成される。上記の数値制御装置70は、モータ制御装置76に接続されているため、U軸モータ78の位置情報を読み出すことができる。
【0057】
(レーザ系統)
レーザ制御装置90は、数値制御装置70に接続され、数値制御装置70から造形プログラムファイルを受信し、解析してレーザ光照射データの生成を行う。
【0058】
レーザ制御装置90は、レーザ光照射データに基づいて所望の指令信号をドライバ91a、91bに送信し、ドライバ91a、91bは、当該指令信号それぞれに対応する大きさの駆動電流をガルバノミラー43a、43bの各アクチュエータに送信する。駆動電流によりガルバノミラー43a、43bは所望の回転角を成し、その結果、造形テーブル5上でのレーザ光Lの照射位置が決定される。
【0059】
また、レーザ制御装置90は、他の指令信号をレーザ光源42に送信し、レーザ光源42より出力されるレーザ光Lのオン/オフ及びその出力を制御する。
【0060】
[メインプログラムの実行フロー]
続いて、図9〜10を用いてメインプログラムの実行フローを概説する。図10にはメインプログラムの一例を抜粋して示してある。
【0061】
(ステップS1−1)
数値制御装置70は、CAM装置60によって作成された、所望の積層造形物を形成するためのメインプログラムファイルと、切削プログラムファイルと、造形プログラムファイルとを含むプロジェクトファイルを読み込む。メインプログラムと切削プログラムファイルは演算部71によって解析され、記憶部73に記憶される。
【0062】
(ステップS1−2)
数値制御装置70は、造形プログラムファイルをレーザ制御装置90に送信する。レーザ制御装置90は造形プログラムファイルを解析し、レーザ光照射データを生成する。
【0063】
(ステップS1−3〜S1−4)
続いて、演算部71によって、記憶部73に記憶されたメインプログラムが読み出されるとともに、シーケンス番号がkのプログラム行が実行される。図10に示す一例のプログラム行のように、シーケンス番号は、実行するプログラム順にN00001、N00002、・・・というようにふられている。当該プログラム行には、所定の階層の焼結層の焼結指令や、所定の階層の焼結層への切削指令等が含まれる。かかる指令に基づき、数値制御装置70やレーザ制御装置90は切削プログラムやレーザ光照射データを基に各部に具体的な指令を出す。例えば、図10におけるN00010は5層目の焼結層の形成を指示するプログラムであり、本プログラムが実行されると、造形テーブル5の高さを各分割層の所定厚分降下させ、粉体層形成装置3のリコータヘッド11により所定厚の材料粉体層8を形成し、レーザ光照射部13によって材料粉体層8上の所定の照射位置に所要のエネルギーのレーザ光Lを照射して焼結層を形成するよう指令が出される。
【0064】
(ステップS1−5〜S1−6)
当該実行中のプログラム行が完了した際には、そのシーケンス番号と当該プログラム行における焼結時の造形テーブル5の高さが、記憶部73に記憶される。例えば図10においてk=N00006のプログラム行が完了されたときは、記憶部73にN00006が記憶される。なおメインプログラムにおいて、最初の段落から所定の段落までは造形を行うにあたっての初期設定の指令である。例えば、図10に示すプログラムにおいてはN00001からN00005まではマクロの呼び出しや位置決め等の指令であり、実際の積層造形の指令はN00006以降に記述されている。ゆえに、実際の積層造形の指令、すなわち1層目の焼結指令が完了した時点(図10においてはk=N00006の完了時点)からシーケンス番号と造形テーブル5の高さの記憶を開始するよう構成してもよい。
【0065】
(ステップS1−7〜S1−8)
最後のプログラム行が完了するまで、演算部71によって、各プログラム行がシーケンス番号の順に実行され続ける。最後のプログラム行にはプログラムエンドの指令が記述されている。
【0066】
上述の通り、材料粉体層8の形成、材料粉体の焼結、焼結体への切削加工等の各工程を含む積層造形中に意図的に、あるいは装置内におけるモータへの過剰負荷等の予期せぬエラー等により、上記のメインプログラムが中断される場合がある。
【0067】
[中断時の再開フロー]
以下、図11に示す各ステップに沿って、中断されたメインプログラムを再開するフロー(プログラム再開方法)を説明する。
【0068】
(ステップS2−1)
作業者によって、中断の要因の排除と再開のための準備が行われる。例えば、焼結層の形成途中で中断した場合、再開時は当該階層の材料粉体層8の形成からやり直すため、再開前に当該階層の未完成の焼結層を切削除去する必要がある。
【0069】
(ステップS2−2)
作業者によって、造形テーブル5の高さと再開するプログラム行のシーケンス番号とが設定され、造形テーブル5の位置が造形再開に適する位置に移動される。また作業者によって、再開指示が入力される。
【0070】
(ステップS2−3〜S2−4)
比較部72によって、作業者によって設定された造形テーブル5の高さ(すなわち現在の造形テーブル5の高さ)と中断時に記憶部73に記憶されている造形テーブル5の高さとが比較される。もし、これらの造形テーブル5の高さが不整合であれば、表示装置74によって、現在の造形テーブル5の高さが適切でない旨のエラーメッセージが表示される。なお、ここで造形テーブル5の高さが整合するとは、中断時に記憶部73に記憶されている造形テーブル5の高さと、作業者によって設定された造形テーブル5との高さとが一致する場合を表すものとする。
【0071】
(ステップS2−5〜S2−6)
比較部72によって、作業者によって設定された再開するプログラム行のシーケンス番号と中断時に記憶部73に記憶されているシーケンス番号とが比較される。もし、これらのシーケンス番号が不整合であれば、表示装置74によって、設定された再開するプログラム行のシーケンス番号が適切でない旨のエラーメッセージが表示される。なお、ここでシーケンス番号が整合するとは、中断時に記憶部73に記憶されているシーケンス番号に1を加算したシーケンス番号と、作業者によって設定されたシーケンス番号とが一致する場合を表すものとする。例えば、N00010を実行している途中に中断した場合、記憶部73にはシーケンス番号としてN00009が記憶されているから、再開時に実行するプログラム行としてN00010が設定されていればシーケンス番号が整合することになる。ここで、意図的に造形テーブル5の高さや再開するプログラム行を変更してメインプログラム行が実行できるよう、エラーメッセージを表示した後そのまま再開できるよう構成してもよい。
【0072】
かかる再開フローにより、数値制御装置70によってメインプログラムの再開が許可される。その結果、再開指示時に作業者による設定ミスがあったとしても、実行前に設定ミスを認識し修正することができる。そのため、従来に比して造形失敗による材料粉体や時間の無駄を低減することができる。
【0073】
本発明は、以下の態様でも実施可能である。
第1に、図11に示すステップS2−2において、作業者による再開するプログラム行及び造形テーブル5の高さの設定を不要としてもよい。かかる場合ステップS2−3〜2−6に代えて、作業者による再開指示の入力を契機として、積層造形装置が、記憶部73に記憶された造形テーブル5の高さとなるように造形テーブル5を移動させ、記憶部73に記憶されたシーケンス番号に1を加算したシーケンス番号のプログラム行からメインプログラムが再開される。
第2に、上述の実施形態ではレーザ光Lの走査手段として一対のガルバノミラー43a、43bを用いたが、レーザ光Lは別の手段によって走査させてもよい。
第3に、表示装置74によるエラーメッセージの表示は、不適切である旨を警告する他の方法(例えば所定の警告音が発せられる等)に代えてもよいし、その組み合わせであってもよい。
第4に、記憶された造形テーブル5の高さに代えて、造形開始時の造形テーブル5の高さと、焼結層の累積数と材料粉体層8の所定厚との積との差から造形テーブル5の高さを算出するように構成されてもよい。
第5に、図11に示すステップS2−3〜S2−4とステップS2−5〜S2−6との実行順序を逆にしてもよい。
第6に、上述の実施形態では造形テーブル5の高さとシーケンス番号を各プログラム行の完了時に行ったが、造形テーブル5の高さとシーケンス番号の両方、又は一方を記憶するタイミングを変更してもよい。例えば、各プログラム行の完了時に代えて、各プログラム行の開始時に造形テーブル5の高さとシーケンス番号とを記憶するように構成されてもよい。かかる場合、シーケンス番号が整合するとは、中断時に記憶部73に記憶されているシーケンス番号そのものと、作業者によって設定されたシーケンス番号とが一致する場合を表すものとする。
【符号の説明】
【0074】
1:チャンバ、1a:ウィンドウ、1d:造形室、3:粉体層形成装置、4:ベース台、5:造形テーブル、7:造形プレート、8:材料粉体層、9l:細長部材、9r:細長部材、11:リコータヘッド、11a:材料収容部、11b:材料供給部、11c:材料排出部、11fb、11rb:ブレード、13:レーザ光照射部、15:不活性ガス供給装置、15a:第1不活性ガス供給装置、15b:第2不活性ガス供給装置、17:ヒューム拡散装置、17a:筐体、17b:開口部、17c:拡散部材、17d:不活性ガス供給空間、17e:細孔、17f:清浄室、19:ヒュームコレクタ、21、23:ダクトボックス、26:粉体保持壁、31:駆動機構、32:材料供給装置、33a:第1供給口、33b:第2供給口、33d:ヒューム拡散装置供給口、33e:副供給口、34a:第1排出口、34b:第2排出口、34c:第3排出口、34d:第4排出口、34e:副排出口、35:吸引装置、42:レーザ光源、43a、43b:ガルバノミラー、44:集光レンズ、60:CAM装置、70:数値制御装置、71:演算部、72:比較部、73:記憶部、74:表示装置、76:モータ制御装置、77:ドライバ、78:U軸モータ、79:U軸エンコーダ、81f、82f、83f、84f:焼結層、90:レーザ制御装置、91a、91b:ドライバ、L:レーザ光、R:造形領域。
【要約】      (修正有)
【課題】メインプログラムが中断した場合も容易に再開できる積層造形装置の提供。
【解決手段】予め作成されシーケンス番号をふられた複数のプログラム行を有するメインプログラムに従って所望の積層造形物の形状を所定厚で分割してなる分割層ごとに上下移動可能な造形テーブル5上に前記所定厚の材料粉体層8を形成し、続いてレーザ制御装置を作動させ材料粉体層8の所定箇所にレーザ光Lを照射して焼結層を形成することを繰り返して所望の積層造形物を形成する数値制御装置を具備し、前記数値制御装置は前記メインプログラムを各プログラム行ごとに前記シーケンス番号の順で実行する演算部と、前記プログラム行のシーケンス番号を記憶する記憶部と、前記メインプログラムを中断後再開する際に、現在と再開時に適する造形テーブル5の高さを比較しかつ再開プログラム行のシーケンス番号と記憶されたシーケンス番号とを比較する比較部とを有する積層造形装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11