(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の天然ゴムシートは、シート状であるため、一般に重量が大きく硬い傾向にある。このため、所定箇所へ設置する際の移動が容易でなく、取り扱いが容易ではなかった。同時に、放射線遮断性能を維持するためには、例えば硫酸バリウムの混合率を大きくすれば良いが、伸び率[%]や引張強度[MPa]が低下してしまい取り扱いが容易ではなくなってしまうという問題を有している。
【0005】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、放射線遮蔽性能を維持しつつ、取り扱いが容易な放射線遮蔽
材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、放射線を遮蔽するチップ状の放射線遮蔽材であって、硫酸バリウムと、基材と
、加硫剤とを含有し、前記硫酸バリウムの含有率が、40%以上80%以下で
、前記基材は、ゴムで、前記ゴムは、発泡化されていることを特徴としている放射線遮蔽材である。
【0007】
このように構成した本発明は、硫酸バリウムと基材とを含有し、硫酸バリウムの含有率を40%以上80%以下としたチップ状の放射線遮蔽材とすることにより、放射線遮蔽性能を維持しつつ、取り扱いが容易な放射線遮蔽材とすることができる。
また、加硫剤を含有し基材をゴムとすることにより、加硫することができるから、弾性を向上でき、より取り扱い性を向上することができる。さらに、ゴムを発泡化させることにより、放射線遮蔽材を軽量化することができる。
【0008】
また本発明は、上記発明において、前記ゴムは、天然ゴムおよび合成ゴムのいずれかであることを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、基材となるゴムが天然ゴムおよび合成ゴムのいずれかであるため、使用する用途に応じて基材となるゴムを選択することにより、使用する用途に応じた放射線遮蔽材とすることができる。
【0010】
また本発明は、上記発明において、1mm以上15mm以下のチップ状であることを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、1mm以上15mm以下のチップ状の放射線遮蔽材とし、このチップ状の放射線遮蔽材を、例えば土嚢袋等の袋体に充填することにより、その袋体を、放射線を遮蔽したい箇所に設置するだけで、放射線の遮蔽が可能になるから、取り扱い性に優れた放射線遮蔽材とすることができる。
【0012】
また本発明は、上記発明において、γ線の遮蔽率が60%以上であることを特徴とする放射線遮蔽材である。
【0013】
また本発明は、平均粒径4mmのチップ状であることを特徴とする放射線遮蔽材である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、放射線遮蔽性能を維持しつつ、取り扱いが容易な放射線遮蔽材とすることができる。なお、前述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明より明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る放射線遮蔽材は、平均粒径を、例えば1mm以上15mm以下、好ましくは4mm程度としたチップ状となっている。放射線遮蔽材は、主原料として基材を含有しており、副原料として硫酸バリウムおよび配合油を含油し、その他加硫剤、および必要に応じて増粘剤を含有している。基材は、耐候性合成ゴム、例えばEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)である再生ゴム等の合成ゴムが用いられる。この合成ゴムとしては、例えば商品名:UTM−EP(東洋ゴムチップ株式会社製)が用いられる。このUTM−EPは、EPDMを35%以上含有しており、JIS規格:K6313C1およびC2に準じたものである。
【0018】
なお、基材としては、表1に示すように、エラストマー関連として天然ゴムまたは合成ゴムを用いることができる。また、基材としては、エラストマー関連以外に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることもできる。
【表1】
【0019】
次いで、硫酸バリウム(BaSO4)は、放射線遮蔽作用を有する放射線遮蔽材であり、例えば商品名:バライトパウダーFBA(太平タルク株式会社製)が用いられる。このバライトパウダーFBAは、沈降性硫酸バリウム(バライト)を87%含有しており、JIS規格:K5115に準じたものである。また、配合油は、加工用の油展剤であり、例えば商品名:ダイアナプロセスオイルPS−90(出光興産株式会社製)が用いられる。このダイアナプロセスオイルPS−90は、JIS規格:K6220−2およびK6200に準じたものである。
【0020】
加硫剤としては、無機加硫促進剤、有機加硫促進剤および加硫主剤が用いられ、無機加硫促進剤としては、亜鉛華である酸化亜鉛(ZnO)、例えば商品名:META−Z L40(井上石灰工業株式会社製)が用いられる。このMETA−Z L40は、JIS規格:K1410に準じたものである。有機加硫促進剤としては、チラウム系(TS)およびチアゾール系(DM)のそれぞれが用いられ、チラウム系の有機加硫促進剤は、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)を含有し、例えば商品名:ノクセラーTS(大内新興化学工業株式会社製)が用いられる。一方、チアゾール系の有機加硫促進剤は、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)を含有し、例えば商品名:ノクセラーDM−P(大内新興化学工業株式会社製)が用いられる。これらノクセラーTSおよびノクセラーDM−Pは、JIS規格:K6206に準じたものである。加硫主剤としては、硫黄、例えば商品名:微粉硫黄(細井化学工業株式会社製)が用いられる。この微粉硫黄は、JIS規格:K6222に準じたものである。増粘剤としては、例えばクラウンクレー(サウスハーステルス社、USA.「1517」)が用いられる。
【0021】
具体的に、放射線遮蔽材の配合量としては、表2に示す配合量が好ましい。
【表2】
【0022】
次に、上記第1実施形態に係る放射線遮蔽材の製造方法について、
図1を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、まず、基材であるEPDM原料の受け入れ検査を行う(ステップS1)。ステップS1では、台秤(KL−100 株式会社クボタ製)を用いてEPDM原料の数量、すなわち質量を計測したり、目視にて外観を確認したり等する。なお、ステップS1の受け入れ検査にて、予め定めた所定の基準に該当しないEPDM原料は廃棄する。
【0024】
次いで、EPDM原料の性状検査を行う(ステップS2)。ステップS2では、テストロール機(6吋テストロール 株式会社東洋精機製作所製)を用いてEPDM原料を混練り・圧延・シーティングしてスコーチの状態を確認するとともに、ムーニー粘度計(MVM11 エムアンドケー株式会社製)を用いてEPDM原料のムーニー粘度を計測して硬度の検査を行う。なお、ステップS2の性状検査にて、予め定めた所定の基準に適合しないEPDM原料は廃棄する。
【0025】
この後、EPDM原料の前処理を行う(ステップS3)。ステップS3では、切断機(GCT−100 小野谷機工株式会社製)および粉砕機(UO−3096F 株式会社ホーライ製)を用いてEPDM原料を切断および粉砕し、予め定めた所定の大きさのチップ状にするとともに、このチップ状としたEPDM原料の質量を、自動計量機(有限会社城北精機工業所製)を用いて計測する。
【0026】
一方、配合油等の油脂類や、硫酸バリウムおよび加硫剤等のフィラー薬品類は、それぞれについて受け入れ検査(ステップS4)を行った後、計量(ステップS5)される。ステップS4では、台秤(KL−100 株式会社クボタ製)を用いて、油脂類およびフィラー薬品類のそれぞれの質量を計測したり、目視にて外観を確認したり、性状を確認したりする。なお、ステップS4の受け入れ検査にて、予め定めた所定の基準に該当しない油脂類およびフィラー薬品類は廃棄する。ステップS5では、台秤(KL−100 株式会社クボタ製)、電子秤量器(KE−610 株式会社エーアンドデイ製)、自動計測機(有限会社城北精機工業所製)を用いて、予め定めた配合量となるように、各油脂類およびフィラー薬品類それぞれの配合量を測定する。
【0027】
次いで、ステップS3後のEPDM原料と、ステップS5にて配合量が測定された油脂類およびフィラー薬品類とが混合されて配合され混合体とされる(ステップS6)。ステップS6では、混練温度を100℃〜110℃程度に設定し、加圧型ニーダー(DX−75−150MWA−S 株式会社森山製作所製)を用いて、EPDM原料と油脂類およびフィラー薬品類との混合体を混練して混練体とする。
【0028】
この後、例えばスクリュ回転数を55rpm〜60rpm、寄席板幅を28〜30cm、およびロール間隔を12mm〜15mmと設定しSPM(PKC−75 株式会社森山製作所製)を用いて、混練体の分出しを行う(ステップS7)。このステップS7の後、分出しされた混練体を、牛刀を用いて予め定めた所定の長さに裁断してから、裁断後の混練体をハンガーへハンガー掛けする(ステップS8)。ステップS8では、ハンガー掛けした混練体の練り状態や色を目視にて確認する。
【0029】
ステップS8の後、裁断後の混練体の中間検査を行う(ステップS9)。ステップ9では、例えばプレス圧を14MPaおよびプレス時間を20minと設定しテストプレス機(50トンプレス 株式会社ショージ製)を用いて、裁断後の混練体の品質を計測するとともに、裁断後の混練体の硬度を、硬度計(デュロメータ 株式会社島津製作所製)を用いて計測する。なお、ステップS9の中間検査にて、予め定めた所定の基準、例えば硬度が45〜75に該当しない混練体は、その混練体の状態に応じて再加工される。
【0030】
ステップS9の中間検査にて、予め定めた所定の基準を有する裁断後の混練体の加硫を行いシート状の加硫体とする(ステップS10)。ステップS10では、例えば蒸気圧を0.5MPa、加硫時間を60mimとし加硫缶(11m3 オートクレープ 株式会社神垣鉄工所製)を用いて行なう。加硫条件としては、加硫されていること、および発泡していないことを目視にて確認し、確認後の加硫体を、牛刀にて所定の大きさに裁断する。
【0031】
その後、所定の大きさに裁断されたシート状の加硫体を、一時保管(ステップS11)してから、ギロチンカッター(GCT−100 小野谷機工株式会社製)を用いて小口に裁断する(ステップS12)。ステップS12の後、紛体定量供給機(OSD25−M1S 大阪精密機械株式会社製)を用いて、所定量、例えば加硫体に対する質量%が0.1%〜0.2%となるようにタルクを配合しながら、カッター粉砕機(UO−3096F 株式会社ホーライ製)を用いて、加硫体を粉砕する(ステップS13)。
【0032】
ステップS13にて粉砕した加硫体を、振動篩(2.5m2 20メッシュ鋼目 自社製)を用いて篩分けする(ステップS14)。ステップS14では、予め定めた指定サイズの加硫体のみを篩分けにて分別してチップ状の放射線遮蔽材とする。ステップS14の後、篩分け後のチップ状の放射線遮蔽材の中間検査を行う(ステップS15)。ステップS15では、チップ状の放射線遮蔽材における異物の混入、色目等を目視にて確認する。
【0033】
ステップS15の中間検査にて、予め定めた色目であり異物の混入が確認できなかった放射線遮蔽材を、台秤(KL−100 株式会社クボタ製)および自動計測機(有限会社城北精機工業所製)を用いて計量し、予め定めた所定量の放射線遮蔽材に分別する(ステップS16)。ステップS16では、所定量毎に分別された放射線遮蔽材が、予め定めた包装材、例えば袋体に入れられる。このとき、包装材の汚れ、破損が目視にて確認される。
【0034】
さらに、ステップS16にて包装材に入れられた所定量の放射線遮蔽材の製品検査を行う(ステップS17)。ステップS17では、目視にて異物の混入を確認し、標準篩(JIS規格)および篩震盪機(ロータップ型 株式会社東洋精機製作所製)を用いて粒度分布を計測し、カサ密度測定装置(JIS−K−6316)を用いてカサ密度を測定し、色差計(CR41 コニカミノルタ株式会社製)を用いて色度を計測する。そして、ステップS17の製品検査の結果、予め定めた基準に適合した放射線遮蔽材は、倉庫に保管され、出荷待ちとなる(ステップS18)。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る放射線遮蔽材の製造方法について、
図2を参照して説明する。上記第1実施形態に係る放射線遮蔽材の基材をエラストマー関連としているのに対し、本第2実施形態に係る放射線遮蔽材は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を基材として用いている。
【0036】
図2に示すように、まず、基材である樹脂原料、具体的には熱硬化性樹脂(2液性エポキシ樹脂 コニシ株式会社製)または熱可塑性樹脂(アクリル樹脂、製品名:ダイヤナールBR−106 三菱レーヨン株式会社製)の受け入れ検査を行う(ステップS21)。ステップ21では、上記ステップ1と同様に、樹脂原料の質量を計測したり、目視にて外観を確認したり等する。
【0037】
次いで、樹脂原料の性状検査を行う(ステップS22)。ステップS22では、B型粘度計(BL2型 東機産業株式会社製)による粘度検査や、樹脂原料の嵩密度(JIS K 6316 嵩密度)検査を行う。
【0038】
この後、樹脂原料の前処理を行う(ステップS23)。ステップS23では、切断機(GCT−100 小野谷機工株式会社製)および粉砕機(UO−3096F 株式会社ホーライ製)を用いて樹脂原料を切断および粉砕し、予め定めた所定の大きさのチップ状にするとともに、予め定められた使用量のチップ状とした樹脂原料を、自動計量機(有限会社城北精機工業所製)もしくは台秤(KL−100 株式会社クボタ製)を用いて計測する。
【0039】
一方、配合有機溶剤や、硫酸バリウム(簸性硫酸バリウム 中外タルク株式会社製)、樹脂原料が熱可塑性樹脂の場合は有機溶剤、および加硫剤等のフィラー薬品類は、それぞれについて受け入れ検査(ステップS24)を行った後、計量(ステップS25)される。ステップS24では、台秤(KL−100 株式会社クボタ製)を用いて、有機溶剤類およびフィラー薬品類のそれぞれの質量を計測したり、目視にて外観を確認したり、性状を確認したりする。次いで、ステップS25では、台秤(KL−100 株式会社クボタ製)、電子秤量器(KE−610 株式会社エーアンドデイ製)、自動計測機(有限会社城北精機工業所製)を用いて、予め定めた配合量となるように、有機溶剤、フィラー薬品類それぞれの配合量を測定する。
【0040】
その後、ステップS23後の樹脂原料と、ステップS25にて配合量が測定された油脂類およびフィラー薬品類とが混合されて配合され混合体とされる(ステップS26)。ステップS26では、撹拌ミキサー(自社製ミキサー 50L)を用いて、樹脂原料と油脂類およびフィラー薬品類とが混合される。
【0041】
この後、皿金型(自社製皿金型0.5m3)を用いて、混合体の型注入を行う(ステップS27)。このステップS27では、型注入された混合体を加熱および乾燥して所定の形状の樹脂体とし、その後、皿金型から樹脂体を脱型する。
認する。
【0042】
ステップS27の後、所定の形状の樹脂体を、一時保管(ステップS28)してから、ギロチンカッター(GCT−100 小野谷機工株式会社製)を用いて小口に裁断する(ステップS29)。ステップS29の後、紛体定量供給機(OSD25−M1S 大阪精密機械株式会社製)を用いて、所定量、例えば樹脂体に対する質量%が0.1%〜0.2%となるようにタルクを配合しながら、カッター粉砕機(UO−3096F 株式会社ホーライ製)を用いて、樹脂体を、例えば平均粒径5mm程度に粉砕する(ステップS29)。
【0043】
さらに、ステップS30にて粉砕した加硫体を、振動篩(2.5m2 20メッシュ鋼目 自社製)を用いて篩分けしてチップ状の放射線遮蔽材とする(ステップ31)。ステップS31の後、篩分け後のチップ状の放射線遮蔽材の中間検査を行う(ステップS32)。
【0044】
ステップS32の中間検査にて、予め定めた色目であり異物の混入が確認できなかった放射線遮蔽材を、台秤(KL−100 株式会社クボタ製)および自動計測機(有限会社城北精機工業所製)を用いて計量し、予め定めた所定量の放射線遮蔽材に分別する(ステップS33)。
【0045】
次いで、ステップS33にて分別された所定量の放射線遮蔽材の製品検査を行う(ステップS34)。そして、ステップS34の製品検査の結果、予め定めた基準に適合した放射線遮蔽材は、倉庫に保管され、出荷待ちとなる(ステップS35)。
【実施例1】
【0046】
(実施例1)
次に、上記第1実施形態に係る放射線遮蔽材の実施例1について説明する。本実施例1では、放射線遮蔽材全体に対する硫酸バリウムの含有率(質量%)を、10%から80%までに亘って10%ずつ変化させたチップ状の放射線遮蔽材をそれぞれ用意し、これら各放射線遮蔽材の放射線遮蔽率を計測した。このとき、ブランク線量73.1Gy/hの放射線、すなわちコバルト60によるγ線を用いた。
【表3】
【0047】
この結果、表3に示す結果となり、硫酸バリウムの含有率が40%以上の場合に、放射線の遮蔽率が60%を超えることが分かった。
【0048】
(実施例2)
次に、上記第1実施形態に係る放射線遮蔽材の実施例2について説明する。本実施例2では、上記実施例1における、硫酸バリウム含有率50%のチップ状の放射線遮蔽材を、最大容量の50%ほどを、耐候性合成土嚢袋に詰め、この土嚢袋に詰めた状態の放射線遮蔽材の遮蔽率を測定した。その結果、土嚢袋1袋の場合は、29.1Gy/hとなり、放射線遮蔽率が60%ほどであったが、土嚢袋を二重にした場合は、16.4Gy/hとなり、放射線遮蔽率が78%となった。
【0049】
(実施例3)
次に、上記第1実施形態に係る放射線遮蔽材の実施例3について説明する。本実施例3では、上記実施例1における、硫酸バリウム含有率を0%から80%までに亘って10%ずつ変化させたチップ状の放射線遮蔽材のそれぞれについて、伸び率(%)、引っ張り強度(MPa)および比重(YANG)を計測した。
【表4】
【0050】
この結果、表
4に示すように、硫酸バリウムの含有率が50%以上となると、伸び率が
150%以下となり、引っ張り強度が5MPa以下となることが分かった。比重については、硫酸バリウムの含有率に応じて増加していくことが分かった。
【0051】
上記実施例1から実施例3によれば、硫酸バリウムの含有率が40%以上の放射線遮蔽材とすることにより、放射線遮蔽性能を維持しつつ、取り扱いが容易な放射線遮蔽材とすることができる。特に、放射線遮蔽材における硫酸バリウムの含有率を50%以上とすることにより、放射線の遮蔽率に優れつつ、ゴム本来の伸び、引っ張り強さを有した放射線遮蔽材となる。また、硫酸バリウムの精製品を用いることにより、遮蔽性能の経年劣化を少なくすることができる。一方、硫酸バリウムの含有量が80%を超えると、含有率の高い硫酸バリウムによって、放射線遮蔽材を製造する際の製造ラインが汚染される可能性が高く、好ましくない。
【0052】
また、高い放射線遮蔽性能を有する放射線遮蔽材であることから、原子炉建屋内炉心の遮蔽材として用いることができる。その他、原子炉関係施設、被災地、復興作業現場、放射線管理施設、除染処理施設、中間処理施設、放射線取扱い事業所、放射線医療関係機器等における放射線の遮蔽材料として、本放射線遮蔽材を用いることができる。
【0053】
また、取り扱い性が容易な1mm以上15mm以下、好ましく4mm程度の平均粒径のチップ状の放射線遮蔽材としているため、所定量を耐候性合成土嚢袋に充填して土嚢袋型の放射線遮蔽材とすることができる。よって、保管、遮蔽体構築、解体を迅速に行うことができ、変形可能であることから様々な遮蔽状況に対応することができる。特に、耐候性合成土嚢袋に10kgの放射線遮蔽材を充填したものを3重にすることにより、コバルト60からのγ線を10分の1程度まで弱める(1/10価層)ことが可能である。
【0054】
また、放射線遮蔽材の基材をEPDMとすることにより、ハロゲン物質、RoHS指令対象物質を含まず、難燃性を備えた放射線遮蔽材にすることができる。そして、放射線遮蔽材の基材としてゴムを用いることにより、弾性に優れ、発泡化させることで軽量化を図ることができ、放射線遮蔽材の取扱い性を向上することができる。また、基材として種々の天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を選択することができるから、使用する用途に応じて基材を選択することにより、使用する用途に応じた放射線遮蔽材とすることができる。
【0055】
さらに、チップ状の放射線遮蔽材を、例えば合成樹脂バインダーを用いて固めることにより、例えばマット状の放射線遮蔽材とすることもでき、また現場施工等の様々な厚さや形での施行が可能であるので、使用用途を大幅に拡大することができる。
【解決手段】本発明は、放射線を遮蔽するチップ状の放射線遮蔽材であって、硫酸バリウムと、基材とを含有し、硫酸バリウムの含有率が40%以上80%以下である。特に、硫酸バリウムの含有率を50%以上とすることにより、放射線の遮蔽率に優れつつ、ゴム本来の伸び、引っ張り強さを有した放射線遮蔽材となる。また、硫酸バリウムの精製品を用いることにより、遮蔽性能の経年劣化を少なくすることができる。