(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属部材の表面に、直径が5nm以上100nm以下、深さが10nm以上500nm以下の超微細凹凸形状が形成されている、請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体。
前記金属部材が、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金から選択される一種または二種以上の金属を含む金属材料からなるものである、請求項1または2に記載の金属/樹脂複合構造体。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0021】
図1は、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を模式的に示した外観図である。
金属/樹脂複合構造体106は、金属部材103と、樹脂部材105とが接合されており、金属部材103と樹脂部材105とを接合することにより得られる。
【0022】
金属部材103の、樹脂部材105との接合表面104は、下記(i)および(ii)の特性を満たす凹凸形状を有する。
(i)輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が150μm以上1500μm以下、最大高さ粗さ(Rz)が170μm以上800μm以下である
(ii)輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が100nm以上10000nm以下、最大高さ粗さ(Rz)が100nm以上10000nm以下である
【0023】
以下、本実施形態にかかる金属/樹脂複合構造体106を構成する各構成要素およびその調製方法、さらに、金属/樹脂複合構造体106の特徴について説明する。
【0024】
<金属部材>
〔金属部材の金属種類〕
本実施形態において、金属部材103を構成する金属の種類としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金から選択される一種または二種以上の金属を含む金属材料からなることが望ましい。これらのうち、金属部材103を構成する金属の種類としては、好ましくは鉄、ステンレス、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金であり、より好ましくはステンレス、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金である。
これらの中でも、軽量かつ高強度の点から、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
アルミニウム合金としては、JIS H4000に規定された合金番号1050、1100、2014、2024、3003、5052、7075などが好ましく用いられる。
【0025】
金属部材103の形状は、樹脂部材105と接合できる形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状などとすることができる。また、これらの組み合わせからなる構造体であってもよい。
また、樹脂部材105と接合する接合部表面104の形状は、特に限定されないが、平面、曲面などが挙げられる。
【0026】
〔金属部材の表面形状〕
本実施形態にかかる金属/樹脂複合構造体106を構成する金属部材103は、樹脂部材105との接合表面104側に、二種以上の異なる特性の凹凸形状を有することを特徴とする。
【0027】
当該特性とは、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)と最大高さ粗さ(Rz)で表されるものであり、当該金属部材103の表面110は、少なくとも、下記(i)および(ii)で表される範囲の輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)および最大高さ粗さ(Rz)を有する。なお、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)、最大高さ粗さ(Rz)は、JIS B 0633−2001で規定された方法により測定されたものである。
(i)輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が150μm以上1500μm以下、最大高さ粗さ(Rz)が170μm以上800μm以下である
(ii)輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が100nm以上10000nm以下、最大高さ粗さ(Rz)が100nm以上10000nm以下である
以下、該凹凸形状の特性としての(i),(ii)の範囲、および、該凹凸形状を形成させる方法について説明する。
【0028】
<(i)の特性について>
本実施形態にかかる金属/樹脂複合構造体106を構成する金属部材103の樹脂部材105との接合表面104側には、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が150μm以上1500μm以下、好ましくは175μm以上1300μm以下、さらに好ましくは600μm以上1000μm以下、最大高さ粗さ(Rz)が170μm以上800μm以下、好ましくは200μm以上600μm以下、さらに好ましくは300μm以上500μm以下の凹凸形状が形成されている。
【0029】
上記凹凸形状を形成する方法としては、金属部材103の表面110に対して、例えばブラスト処理やローレット加工のような物理的処理が挙げられ、好ましくはブラスト処理が挙げられる。
【0030】
ここで、ブラスト処理としては、インペラーと呼ばれる羽根車の遠心力を利用してブラスト材を投射するショットブラスト処理と、エアーコンプレッサーを用いて圧縮空気によりブラスト材を投射するエアーブラスト処理があり、どちらも金属部材103の表面110に上記特性の凹凸形状を付与することが可能である。輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)、最大高さ粗さ(Rz)の調整は、ショットブラスト処理の場合はインペラーの回転数を調整することにより達成でき、エアーブラスト処理の場合は圧縮空気の噴射圧力を調整することにより達成することができる。
【0031】
エア―ブラスト処理ではショットブラスト処理と比較してブラスト材の噴射圧力が高いため、より均一な凹凸形状を形成させることができるためブラスト処理の方式としてエア―ブラスト処理が好ましい。
【0032】
上記ブラスト材として、珪砂、アルミナ、アルミカットワイヤー、スチールグリッド、スチールショットなどの材料が挙げられるが、それぞれ目的に応じて使用が可能である。樹脂との接合に関して、より高いアンカー効果、およびコストや効率の観点から珪砂の利用が好ましい。
【0033】
<(ii)の特性について>
本実施形態にかかる金属/樹脂複合構造体106を構成する金属部材103の樹脂部材105との接合表面104側には、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が100nm以上10000nm以下、好ましくは300nm以上5000nm以下、さらに好ましくは600nm以上1000nm以下、最大高さ粗さ(Rz)が100nm以上10000nm以下、好ましくは150nm以上400nm以下、さらに好ましくは200nm以上300nm以下の凹凸形状が形成されている。
【0034】
当該凹凸形状は、上記(i)の特性で示した輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)および最大高さ粗さ(Rz)の凹凸形状が形成された表面110上に、さらに形成されたものであることを特徴とする。
【0035】
上記凹凸形状を形成する方法としては、侵食性水溶液または侵食性懸濁液に金属を浸漬する化学的エッチング方法や、陽極酸化法による方法などが挙げられる。これらの方法は、使用する金属部材103の金属種類や、上記輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)および最大高さ粗さ(Rz)の範囲内において形成する凹凸形状によって使い分けることが可能である。これらの方法の中では、浸食剤としてNaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO
3等の無機酸水溶液に浸漬する化学的エッチング方法が好んで採用される。
【0036】
<その他好ましい特性>
本実施形態にかかる金属/樹脂複合構造体106を構成する金属部材103の樹脂部材105との接合表面104側には、上記(ii)の特性にかかる輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)および最大高さ粗さ(Rz)の凹凸形状を形成する際に行う、侵食性水溶液または侵食性懸濁液に金属を浸漬する方法や陽極酸化法による方法に伴い、超微細孔が形成されていてもよいし、上記特性(ii)の凹凸形状を形成させた後に、例えば国際公開2009/31632号パンフレットに開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、及び水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に浸漬させることによって積極的に超微細孔を形成させてもよい。
【0037】
当該超微細孔の直径は、5nm以上100nm以下であり、好ましくは10nm以上70nm以下であり、より好ましくは15nm以上50nm以下である。また、孔の深さは10nm以上500nm以下であり、好ましくは15nm以上300nm以下であり、より好ましくは20nm以上70nm以下である。
当該超微細孔の直径および孔の深さは、以下のように測定することができる。
まず、直径について、走査型電子顕微鏡(SEM)により、金属部材103の表面110を撮影する。その観察像から、超微細孔を任意に50個選択し、それらの直径を測定する。直径の全てを積算して50で除したものを超微細孔の直径とする。
次いで、孔深さについて、透過型電子顕微鏡(TEM)によって金属部材103の表面近傍の断面を撮影する。その観察像から、超微細孔で形成された孔の深さを任意に10ヶ所選択し、それらの孔の深さを測定する。孔の深さの全てを積算して10で除したものを超微細孔の孔の深さとする。
【0038】
金属部材103の表面110上に上記のような超微細孔が存在していると、当該孔内に後述する樹脂部材105を構成する樹脂組成物が入り込むことが可能となり、金属部材103と樹脂部材105との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が発現するため、接合強度が向上することが期待できる。
【0039】
本実施形態においては、金属部材103の表面110にブラスト処理などの物理的処理によって、特性(i)の凹凸形状を形成させ、次いで、無機塩基水溶液および/または無機酸水溶液に浸漬する化学的エッチング方法によって特性(ii)の凹凸形状を形成させ、次いで、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上を含有する水溶液による超微細凹凸形状を形成させる方法が好んで用いられる。
【0040】
〔金属部材の調製方法〕
本実施形態において、金属部材103の樹脂部材105との接合表面104側に形成される二種以上の異なる特性の凹凸形状は、上述の(i)、(ii)の各々の特性を形成する方法により形成させることが可能である。なお、当該凹凸形状を形成させるに当たっては、上記の通り、まず、(i)の特性を形成する方法により該当する凹凸形状を形成させる、次いで、(ii)の特性を形成する方法により該当する凹凸形状を形成させる。仮に、(i)と(ii)の特性を形成する方法を上記と逆の順番で行ってしまうと、初めに形成した、相対的に凹凸形状が細かいものが、後の処理によって破壊されてしまい、所望の形状が形成しないおそれがある。
【0041】
したがって、本実施形態においては、上記の通り、(i)の特性を形成する方法に引き続き、(ii)の特性を形成する方法を金属部材103に施すことによって、相対的に大きな凹凸形状の中に、相対的に小さな凹凸形状が形成することになる。そのため、後述する樹脂部材105との接合において、従来技術と比べて、より高いアンカー効果が発現し、その結果として、金属部材103と樹脂部材105との接合強度を高めることができるものと考えられる。
【0042】
なお、金属部材103は、金属を切断、プレスなどによる塑性加工、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工などの除肉加工によって上述した所定の形状に加工された後に、上記方法による処理がなされたものが好ましい。要するに、種々の加工法により、必要な形状に加工されたものを用いることが好ましい。必要な形状に加工された金属部材103は、後述する樹脂部材105と接合する面が酸化や水酸化されていないことが好ましく、長期間の自然放置で表面110に酸化被膜である錆の存在が明らかなものは研磨、化学処理などでこれを取り除くことが好ましい。
【0043】
なお、上記方法による処理がなされた金属部材103の表面110にはプライマー層を形成させてもよい。本実施形態においては、上記方法によって金属部材103の表面110に特定の凹凸形状を形成すれば、後述する樹脂部材105との間の接合が高い強度で形成される。しかし、より強固な接合強度を求める場合には、プライマー層を形成させることも可能である。特に、樹脂部材105がポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなる場合には、金属部材103の表面110にプライマー層を形成することで、接合強度がより一層高い金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。
【0044】
プライマー層を構成する材料は特に限定されないが、通常は樹脂成分を含むプライマー樹脂材料からなる。プライマー樹脂材料は特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、公知のポリオレフィン系プライマー、エポキシ系プライマー、ウレタン系プライマーなどを挙げることができる。プライマー層の形成方法は特に限定されないが、例えば上記のプライマー樹脂材料の溶液や、上記のプライマー樹脂材料のエマルジョンを、上記表面処理を行った金属部材103に塗工して形成することができる。溶液とする際に用いる溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)ジメチルホルムアミド(DMF)などが挙げられる。エマルジョン用の媒体としては、脂肪族炭化水素媒体や、水などが挙げられる。
【0045】
<樹脂部材>
本実施形態にかかる金属/樹脂複合構造体106を構成する樹脂部材105は、(A)熱可塑性樹脂と、必要に応じて(B)充填材を含む樹脂組成物からなる。さらに、該樹脂組成物は必要に応じてその他の配合剤を含む。なお、便宜上、樹脂部材105が(A)熱可塑性樹脂のみからなる場合であっても、樹脂部材105は樹脂組成物からなると記載する。
【0046】
以下、(A)熱可塑性樹脂、(B)充填材、その他の配合剤について説明し、さらに樹脂組成物の調製方法を説明する。
〔(A)熱可塑性樹脂〕
本実施形態における樹脂部材105の原料としての(A)熱可塑性樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、芳香族ポリアミド樹脂などのポリアミド系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリブチレンテレフタラート樹脂などのポリエステル系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などの非晶性樹脂;その他、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂や、これら2種類以上を組み合わせたものなどを挙げることができる。
これらのうち、好ましくは、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、非晶性樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂である。より好ましくは、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂である。ポリオレフィン系樹脂については、ポリプロピレン樹脂が好ましく用いられる。これらの(A)熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0047】
上記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンを重合して得られる重合体を特に限定なく使用することができる。
上記ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンとしては、例えば、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィンなどが挙げられる。
【0048】
上記α−オレフィンとしては、炭素原子数3〜30、好ましくは炭素原子数3〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられる。より具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。
【0049】
上記環状オレフィンとしては、炭素原子数3〜30の環状オレフィンが挙げられ、好ましくは炭素原子数3〜20である。より具体的には、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0050】
上記ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンとして好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。これらのうち、より好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンであり、さらに好ましくはエチレンまたはプロピレンである。
【0051】
上記ポリオレフィン系樹脂は、上述したオレフィンを一種単独で重合して得られたもの、または二種以上を組み合わせてランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合して得られたものであってもよい。
【0052】
また、上記ポリオレフィン系樹脂としては、直鎖状のものであっても、分岐構造を導入したものであってもよい。
【0053】
本実施形態においては、樹脂部材105が上述した(A)熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物からなる場合、金属部材103との接合が強固に形成される。それらの中でも特に、樹脂部材105がポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなるものについては、従来行われてきた金属表面粗化処理後の金属部材では接合が困難であったところ、本実施形態では、このようなポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂部材105であっても、金属部材103との接合強度が飛躍的に向上しているため、産業における利用価値は非常に高いものと言える。したがって、(A)熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を選択するのは好ましい態様の一つである。
【0054】
(A)熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)や密度については、金属/樹脂複合構造体106として求められる性能によって適宜選択して使用することができる。例えば、(A)熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂を用いる場合、ポリプロピレン樹脂のASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRは、好ましくは0.1g/10分以上800g/10分以下であり、より好ましくは0.5g/10分以上100g/10分以下であり、さらに好ましくは1.0g/10分以上20g/10分以下である。
また、(A)熱可塑性樹脂として、ポリアミド6、ポリアミド66などのポリアミド樹脂を用いる場合、ポリアミド樹脂の260℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRは、好ましくは1g/10分以上200g/10分以下、より好ましくは1g/10分以上150g/10分以下、さらに好ましくは1g/10分以上100g/10分以下である。
【0055】
〔(B)充填材〕
本実施形態における樹脂部材105を構成する樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂を必須の成分とするほか、必要とされる用途などに合わせて、さらに(B)充填材を含んでいてもよい。
【0056】
(B)充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。
【0057】
(B)充填材の形状は繊維状、粒子状、板状などどのような形状であってもよい。
【0058】
なお、樹脂組成物が(B)充填材を含む場合、その含有量は、上記(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上90質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以上80質量部以下である。
【0059】
これらの(B)充填材は、樹脂部材105の剛性を高める効果の他、樹脂部材105の線膨張係数を低減、制御できる効果がある。特に、本実施形態の金属部材103と樹脂部材105との複合体の場合は、金属部材103と樹脂部材105との形状安定性の温度依存性が大きく異なることが多いので、大きな温度変化が起こると複合体に歪みが掛かりやすい。樹脂部材105が上記(B)充填材を含有することにより、この歪みを低減することができる。また、(B)充填材の含有量が上記範囲内であることにより、靱性の低減を抑制することができる。
【0060】
〔その他配合剤〕
本実施形態において、樹脂部材105には、個々の機能を付与する目的で配合剤を含んでもよい。
【0061】
上記配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0062】
〔樹脂組成物の調製〕
上記樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂と、必要に応じて(B)充填材と、さらに必要に応じてその他配合剤とを、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより得ることができる。
【0063】
<金属/樹脂複合構造体>
本実施形態にかかる金属/樹脂複合構造体106は、金属部材103と、樹脂部材105から構成される。
【0064】
より詳細には、本実施形態における金属/樹脂複合構造体106は、樹脂部材105を構成する樹脂組成物が、金属部材103の表面110に形成された二種以上の異なる特性の凹凸形状部に侵入して金属と樹脂が接合し、金属―樹脂界面を形成することにより得られる。
【0065】
本実施形態において、金属部材103の表面110に上述した二種以上の異なる特性の凹凸形状を形成することによって、樹脂部材105との高い接合強度が発現した理由は明らかではないが、(ii)の特性に基づく凹凸形状および超微多孔がベント効果として作用し、エア抜けが起こることによると考えられる。すなわち、(i)の特性に基づく凹凸形状のみでは、樹脂部材を構成する樹脂組成物を後述する金属/樹脂複合構造体の製造方法に基づいて接合させようとした場合に、金属部材と樹脂部材の間の空気層の存在により、樹脂組成物が凹部深部まで侵入することができないことが想定される。しかし、(ii)の特性に基づく凹凸形状および超微多孔を(i)の特性に基づく凹凸形状と組み合わせることで、上記(ii)の特性に基づく凹凸形状および超微多孔に空気が侵入し、樹脂組成物が(i)の特性に基づく凹部深部まで侵入することができるようになると考えられる。このような事象により、(i)と(ii)の特性を金属部材103の表面110に形成することにより、金属部材103と樹脂部材105が高い接合強度を発現すると考えられる。
【0066】
<金属/樹脂複合構造体の製造方法>
本実施形態の金属/樹脂複合構造体106の製造方法は特に限定されず、上記特徴を有する金属部材103に対して、上記樹脂組成物を所望の樹脂部材105の形状になるように成形しながら接合させることにより得られる。
【0067】
樹脂部材105の成形方法としては、射出成形、押出成形、加熱プレス成形、圧縮成形、トランスファーモールド成形、注型成形、レーザー溶着成形、反応射出成形(RIM成形)、リム成形(LIM成形)、溶射成形などの樹脂成形方法が採用できる。
【0068】
これらの中でも、射出成形法が好ましく、具体的には、金属部材103を射出成形金型のキャビティ部にインサートし、樹脂組成物を金型に射出する射出成形法により製造するのが好ましい。具体的には、以下の(1)〜(3)の工程を含んでいる。
(1)樹脂組成物を調製する工程
(2)金属部材103を射出成形用の金型内に設置する工程
(3)樹脂組成物を、金属部材103の少なくとも一部と接するように、上記金型内に射出成形する工程
以下、各工程について説明する。
【0069】
(1)樹脂組成物を調製する工程については、上述の通り、上記した(A)熱可塑性樹脂と、必要に応じて(B)充填材と、さらに必要に応じてその他配合剤とを、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置により、混合または溶融混合することにより得ることができる。
【0070】
次いで、(2)、(3)の工程による射出成形方法について説明する。
【0071】
まず、射出成形用の金型を用意し、その金型を開いてその一部に金属部材103を設置する。
その後、金型を閉じ、樹脂組成物の少なくとも一部が金属部材103の凹部形状を形成した面に接するように、上記金型内に(1)の工程で得られた樹脂組成物を射出して固化する。その後、金型を開き、離型することにより、金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。
【0072】
また、上記(1)〜(3)の工程による射出成形と、射出発泡成形や、金型を急速に加熱冷却する高速ヒートサイクル成形(RHCM,ヒート&クール成形)とを併用してもよい。
射出発泡成形の方法としては、化学発泡剤を樹脂に添加する方法、射出成形機のシリンダー部に直接、窒素ガスや炭酸ガスを注入する方法、窒素ガスや炭酸ガスを超臨界状態で射出成形機のシリンダー部に注入するMuCell射出発泡成形法などが挙げられる。
【0073】
いずれの方法でも樹脂部材105が発泡体である金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。また、いずれの方法でも、金型の制御方法として、カウンタープレッシャーを使用したり、成形品の形状によってはコアバックを利用したりすることも可能である。
高速ヒートサイクル成形は、急速加熱冷却装置を金型に接続することにより、実施することができる。急速加熱冷却装置は、一般的に使用されている方式で構わない。加熱方法として、蒸気式、加圧熱水式、熱水式、熱油式、電気ヒータ式、電磁誘導過熱式のいずれか1方式またはそれらを複数組み合わせた方式でよい。
【0074】
冷却方法としては、冷水式、冷油式のいずれか1方式またはそれらを組み合わせた方式でよい。高速ヒートサイクル成形法の条件としては、例えば、射出成形金型を100℃以上250℃以下の温度に加熱し、上記樹脂組成物の射出が完了した後、上記射出成形金型を冷却することが望ましい。金型を加熱する温度は、樹脂組成物を構成する(A)熱可塑性樹脂によって好ましい範囲が異なり、結晶性樹脂で融点が200℃未満の樹脂であれば、100℃以上150℃以下が好ましく、結晶性樹脂で融点が200℃以上の樹脂であれば、140℃以上250℃以下が望ましい。非晶性樹脂については、100℃以上180℃以下が望ましい。
【0075】
<金属/樹脂複合構造体の用途>
本実施形態の金属/樹脂複合構造体106は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
【0076】
例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品などの家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品などが挙げられる。
【0077】
より具体的には、樹脂だけでは強度が足りない部分を金属がサポートする様にデザインされた次のような部品である。車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ラジエータ、オイルパン、ステアリングホイール、ECUボックス、電装部品などが挙げられる。また、建材や家具類として、ガラス窓枠、手すり、カーテンレール、たんす、引き出し、クローゼット、書棚、机、椅子などが挙げられる。また、精密電子部品類として、コネクタ、リレー、ギヤなどが挙げられる。また、輸送容器として、輸送コンテナ、スーツケース、トランクなどが挙げられる。
【0078】
また、各種家電にも用いることができる。例えば、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカーなどの家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池など電子情報機器などが挙げられる。
【0079】
その他の用途として、玩具、スポーツ用具、靴、サンダル、鞄、フォークやナイフ、スプーン、皿などの食器類、ボールペンやシャープペン、ファイル、バインダーなどの文具類、フライパンや鍋、やかん、フライ返し、おたま、穴杓子、泡だて器、トングなどの調理器具、リチウムイオン2次電池用部品やロボットなどが挙げられる。
【0080】
以上、本発明の金属/樹脂複合構造体106の用途について述べたが、これらは本発明の用途の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0082】
以下に、本発明の実施形態を実施例により説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0083】
なお、
図1、2は各実施例の共通の図として使用する。
図1は、金属部材103と樹脂部材105との金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を模式的に示した外観図である。
図2は、金属部材103と樹脂部材105との金属/樹脂複合構造体106を製造する過程の一例を模式的に示した構成図である。具体的には所定形状に加工され、表面110に微細凹凸面を有する表面処理領域(接合表面104)が形成された金属部材103を射出成形用の金型102内に設置し、射出成形機101により、樹脂組成物をゲート/ランナー107を通して射出し、微細凹凸面が形成された金属部材103と一体化された金属/樹脂複合構造体106を製造する過程を模式的に示している。
【0084】
(金属表面分析)
特性(i)における輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)、最大高さ粗さ(Rz)は、レーザー顕微鏡(KEYENCE製VK−X100)により測定した。
【0085】
また、特性(ii)における輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)、最大高さ粗さ(Rz)は、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製SPM−9700)により測定した。
【0086】
(接合強度の評価方法および合否判定)
引っ張り試験機「モデル1323(アイコーエンジニヤリング社製)」を使用し、引張試験機に専用の治具を取り付け、室温(23℃)にて、チャック間距離60mm、引張速度10mm/minの条件にて測定をおこなった。破断荷重(N)を金属/樹脂接合部分の面積で除することにより接合強度(MPa)を得た。
【0087】
(金属の表面処理)
[調製例1]
市販の1.6mm厚のA5052アルミニウム合金板を、18mm×45mmの長方形片に切断し、該板表面上に、厚地鉄工製ACR−1のエアーブラスト装置(圧縮空気の噴射圧力;5.25kg/cm
2)を用い、ブラスト材に珪砂(宇部サンド工業、5号A)を用いて、エアーノズル式ブラスト処理によりRSmを900μm、Rzを400μmの凹凸形状を調製した。次いで、国際公開2009/31632号パンフレットの実験例1の方法に準じて表面処理し、金属部材を得た。
【0088】
金属部材を走査型プローブ顕微鏡(島津製作所社製、型番SPM−9700)で視野4μmにて観察すると、ブラスト処理により形成された凹凸面内にRSmが800nm、Rzが240nmの凹凸形状が形成されていた。さらに走査型電子顕微鏡(JEOL社製、型番JSM−6701F)で拡大倍率300000倍にて観察すると、金属部材表面上に20nm程度の超微細孔が形成されていた。写真を
図3に示す。
【0089】
[調製例2]
市販の1.6mm厚のA5052アルミニウム合金板を、18mm×45mmの長方形片に切断し、該板表面上に、厚地鉄工製ACR−1のエアーブラスト装置(圧縮空気の噴射圧力;3.25kg/cm
2)を用い、ブラスト材に珪砂(宇部サンド工業、5号A)を用いて、エアーノズル式ブラスト処理によりRSmを200μm、Rzを250μmの凹凸形状を調製した。次いで、国際公開2009/31632号パンフレットの実験例1の方法に準じて表面処理し、金属部材を得た。
【0090】
金属部材を走査型プローブ顕微鏡(島津製作所社製、型番SPM−9700)で視野4μmにて観察すると、ブラスト処理により形成された凹凸面内にRSmが800nm、Rzが240nmの凹凸形状が形成されていた。さらに走査型電子顕微鏡(JEOL社製、型番JSM−6701F)で拡大倍率300000倍にて観察すると、金属部材表面上に20nm程度の超微細孔が形成されていた。
【0091】
[調製例3]
市販の1.6mm厚のA5052アルミニウム合金板を、18mm×45mmの長方形片に切断し、該板表面上に、厚地鉄工製ACR−1のエアーブラスト装置(圧縮空気の噴射圧力;5.25kg/cm
2)を用い、ブラスト材に珪砂(宇部サンド工業、5号A)を用いて、エアーノズル式ブラスト処理によりRSmを900μm、Rzを400μmの凹凸形状を調整した。次いで、国際公開2009/31632号パンフレットの実験例1の方法を一部変更(ヒドラジン水溶液への浸漬行わず)して表面処理し、金属部材を得た。
【0092】
金属部材を走査型プローブ顕微鏡(島津製作所社製、型番SPM−9700)で視野4μmにて観察すると、ブラスト処理により形成された凹凸面内にRSmが800nm、Rzが240nmの凹凸形状が形成されていた。さらに走査型電子顕微鏡(JEOL社製、型番JSM−6701F)で拡大倍率300000倍にて観察したが、調製例1で観察された超微細孔は観察されなかった。
【0093】
[調製例4]
市販の1.6mm厚のA5052アルミニウム合金板を、18mm×45mmの長方形片に切断し、該板表面上に、厚地鉄工製ACR−1のエアーブラスト装置(圧縮空気の噴射圧力;5.25kg/cm
2)を用い、ブラスト材に珪砂(宇部サンド工業、5号A)を用いて、エアーノズル式ブラスト処理によりRSmを900μm、Rzを400μmの凹凸形状を調製し、金属部材を得た。
【0094】
金属部材を走査型電子顕微鏡(JEOL社製、型番JSM−6701F)で拡大倍率300000倍にて観察したが、調製例1で観察された凹凸形状および超微細孔は観察されなかった。写真を
図4に示す。
【0095】
[調製例5]
市販の1.6mm厚のA5052アルミニウム合金板を、18mm×45mmの長方形片に切断し、ブラスト処理を施すことなく、国際公開2009/31632号パンフレットの実験例1の方法に準じて表面処理し、金属部材を得た。
【0096】
金属部材を走査型プローブ顕微鏡(島津製作所社製、型番SPM−9700)で視野4μmにて観察すると、RSmが800nm、Rzが240nmの凹凸形状が形成されていた。さらに走査型電子顕微鏡(JEOL社製、型番JSM−6701F)で拡大倍率300000倍にて観察すると、上記凹凸面内に20nm程度の超微細孔が形成されていた。写真を
図5に示す。
【0097】
[調製例6]
市販の1.6mm厚のA5052アルミニウム合金板を、18mm×45mmの長方形片に切断し、該板表面上に、厚地鉄工製ACR−1のエアーブラスト装置(圧縮空気の噴射圧力;3.25kg/cm
2)を用い、ブラスト材に珪砂(宇部サンド工業、6号A)を用いて、エアーノズル式ブラスト処理によりRSmを120μm、Rzを150μmの凹凸形状を調製した。次いで、国際公開2009/31632号パンフレットの実験例1の方法に準じて表面処理し、金属部材を得た。
【0098】
金属部材を走査型プローブ顕微鏡(島津製作所社製、型番SPM−9700)で視野4μmにて観察すると、ブラスト処理により形成された凹凸面内にRSmが800nm、Rzが240nmの凹凸形状が形成されていた。さらに走査型電子顕微鏡(JEOL社製、型番JSM−6701F)で拡大倍率300000倍にて観察すると、上記凹凸面内に20nm程度の超微細孔が形成されていた。
【0099】
[実施例1]
日本製鋼所社製のJSW J85ADに小型ダンベル金属インサート金型102を装着し、金型102内に調製例1によって調製されたアルミニウム片(金属部材103)を設置した。次いで、その金型102内に樹脂組成物として、ガラス繊維強化ポリプロピレン(プライムポリマー製V7100、ポリプロピレン(MFR(230℃、2.16kg荷重):18g/10min)80質量部、ガラス繊維20質量部)を、シリンダー温度250℃、金型温度120℃、射出速度25mm/sec、保圧80MPa、保圧時間10秒の条件にて射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体を得た。接合強度の評価結果を表1に示す。
【0100】
[実施例2]
使用したアルミニウム片を調製例2で調製したものに変更した以外は実施例1と同様の方法により金属/樹脂複合構造体を得た。接合強度の評価結果を表1に示す。
【0101】
[実施例3]
使用したアルミニウム片を調製例3で調整したものに変更した以外は実施例1と同様の
方法により金属/樹脂複合構造体を得た。接合強度の評価結果を表1に示す。
【0102】
[比較例1]
使用したアルミニウム片を調製例4で調製したものに変更した以外は実施例1と同様の方法により金属/樹脂複合構造体を得た。接合強度の評価結果を表1に示す。
【0103】
[比較例2]
使用したアルミニウム片を調製例5で調製したものに変更した以外は実施例1と同様の方法により金属/樹脂複合構造体を得た。接合強度の評価結果を表1に示す。
【0104】
[比較例3]
使用したアルミニウム片を調製例6で調製したものに変更した以外は実施例1と同様の方法により金属/樹脂複合構造体を得た。接合強度の評価結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
実施例1で用いたアルミニウム片は、特性(i)に相当するブラスト処理により形成されたRSm、Rz、特性(ii)に相当するエッチングにより形成されたRSm、Rz、共に上述した範囲を満たし、且つ、上記凹凸面内に形成された超微細凹凸が存在するため、樹脂部材との接合強度が非常に高いものが得られた。金属/樹脂接合部材の金属側を5%の硝酸水溶液で溶解させ、樹脂側の表面構造を走査型電子顕微鏡(JEOL社製、型番JSM−6701F)で拡大倍率100000倍にて観察すると、20nm程度の超微細凸形状が観察され、金属部材表面に形成された超微細孔に樹脂部材が侵入していることが判明した。写真を
図6に示す。
【0107】
一方、比較例1では、特性(i)に相当するブラスト処理により形成されたRSmが900μm、Rzが400μmであり、共に上述した範囲を満たしているが、特性(ii)を形成させるためのエッチング処理を施していないため、本発明の特徴を満たさない。
また、比較例2では、特性(ii)に相当するエッチング処理により形成されたRSmが800nm、Rzが240nmであり、共に上述した範囲を満たし、且つ、上記凹凸面内に形成された超微細凹凸が存在するが、特性(i)を形成させるためのブラスト処理を施していないため、本発明の特徴を満たさない。
比較例1の金属/樹脂接合部材の金属側を5%の硝酸水溶液で溶解させ、樹脂側の表面構造を走査型電子顕微鏡(JEOL社製、型番JSM−6701F)で拡大倍率100000倍にて観察した。しかし、ナノメートルオーダーの超微細凸形状は観察されなかった。写真を
図7に示す。
比較例2では射出一体成形直後に金属部材と樹脂部材が剥離したため、金属/樹脂接合部材の樹脂側の表面構造を観察することはしていない。しかし、金属部材表面に形成された超微細孔に樹脂部材が侵入していないと考えられる。それに伴い、比較例1および2では、樹脂部材との接合強度も低いものとなっている。
さらに比較例3については、樹脂部材との接合強度を向上させる目的で金属部材表面に異なるオーダーの凹凸形状を形成して樹脂部材との接合面積を増やすことを企図したが、所望の効果得られなかった。これは、ブラスト処理により形成されたRSm、Rzが、共に本発明の特徴を満たさないことに起因すると考えられる。
【0108】
この出願は、2013年9月13日に出願された日本出願特願2013−190607号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。