(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074517
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】スランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20170123BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20170123BHJP
C08F 2/38 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
C04B24/26 B
C08F290/06
C08F2/38
C04B24/26 E
C04B24/26 F
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-545622(P2015-545622)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公表番号】特表2016-505489(P2016-505489A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】CN2012085909
(87)【国際公開番号】WO2014085996
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】515150391
【氏名又は名称】江蘇蘇博特新材料股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SOBUTE NEW MATERIALS CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】515150405
【氏名又は名称】博特建材(天津)有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOTE BUILDING MATERIALS(TIANJIN)CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】劉 加平
(72)【発明者】
【氏名】周 棟梁
(72)【発明者】
【氏名】冉 千平
(72)【発明者】
【氏名】楊 勇
(72)【発明者】
【氏名】劉 金芝
【審査官】
伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第101708973(CN,A)
【文献】
特開2011−084459(JP,A)
【文献】
特開2009−096672(JP,A)
【文献】
特開平11−157897(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/029117(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00− 32/02
C04B 40/00− 40/06
C04B 103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤
を製造する方法であって、この高性能流動化剤は重量平均分子量が20,000〜80,000であり、モノマーA、モノマーB、モノマーC及びモノマーDが水溶液で、酸化還元反応開始剤を使って重合反応によって得られたものであり、(モノマーA+モノマーB):モノマーC:モノマーDのモル比が1:3〜8:4〜12であり、その中のモノマーA及びモノマーBのモル比が1:1〜4であり、
上記のモノマーAは式(1)で表され、
【化1】
(式中、R
1はH又はCH
3を示す;XはO、CH
2O又はCH
2CH
2Oを示す;pは110〜350の整数を示す)
上記のモノマーBは式(2)で表され、
【化2】
(式中、R
2はH又はCH
3を示す;R
3は炭素原子数1〜4のアルキルを示す;nは20〜90の整数を示す)
上記のモノマーCは式(3)で表され、
【化3】
(式中、R
4はH又はCH
3を示す;Mは水素原子、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属
イオン、アンモニウムイオン又は有機アミン基を示す)
上記のモノマーDは式(4)で表される
【化4】
(式中、R
5はH又はCH
3を示す;x=0もしくは1、y=0もしくは1、且つx,yは同時に0又は1としない)
ことを特徴とするスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤
の製造方法。
【請求項2】
上記の化学式(1)では、pが135〜230の整数である
請求項1に記載のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の製造方法。
【請求項3】
上記のモノマーAが、ポリエチレングリコールビニルエーテル、アリルポリエチレングリコールエーテル、3-ブテン-1-オールポリグリコールエーテル、エチレングリコールモノメタリルエーテルもしくは3-メチル-3-ブテン-1-オールポリグリコールエーテルの何れか1項又は二種類以上から任意の割合で混じり合う混合物である
請求項1に記載のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の製造方法。
【請求項4】
上記のモノマーBが、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、プロポキシポリエチレングリコールアクリレート、ブトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、プロポキシポリエチレングリコールメタクリレート、ブトキシポリエチレングリコールメタクリレートから選出されたものである
請求項1に記載のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の製造方法。
【請求項5】
上記のモノマーCは、アクリル酸又はメタクリル酸である
請求項1に記載のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の製造方法。
【請求項6】
上記のモノマーDが、アクリル酸 2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル又はメタクリル酸ヒドロキシプロピルから選出されたものである
請求項1に記載のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の製造方法。
【請求項7】
上記の酸化還元反応開始剤で、酸化剤は質量濃度≦30%の過酸化水素であり、還元剤は亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、モール塩、L-アスコルビン酸、イソアスコルビン又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物の何れか一種類であり、酸化剤の使用量はモノマーA、モノマーB、モノマーC及びモノマーDの総モル数の0.5〜5%を占める
請求項1に記載のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の製造方法。
【請求項8】
上記の酸化還元反応開始剤の還元剤は、L-アスコルビン酸又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物である
請求項7に記載のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の製造方法。
【請求項9】
上記の重合反応の温度は30〜60℃であり、反応時間が5〜10hである
請求項1に記載のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の製造方法。
【請求項10】
連鎖移動剤を加えることで高性能流動化剤の重量平均分子量を調整でき、前記の連鎖移動剤がメルカプトエタノール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸もくしは3-メルカプトプロピオン酸の何れか一種類又は二種類以上から任意の割合で混じり合う混合物であり、その連鎖移動剤の使用量がモノマーA、モノマーB、モノマーC及びモノマーDの総モル数の0.5〜5%を占める
請求項1ないし9のいずれかに記載のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間の変化に伴ってコンクリートの流動性を三重調整できる能力を有すポリカルボン酸塩系セメント分散剤に関するものであり、コンクリート混和剤の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
国家のインフラ整備事業が盛んに行われているとともに、高性能コンクリートへのよりよい性能の実現が提唱されており、また大きな課題をもたらす。構築物の構造上の複雑化や工事方式の自動化に従い、高性能コンクリートの長時間流動性の保持を求めるが、高性能コンクリートは大量のミネラル混合剤及び多機能添加剤が使われているため、その流動性の保持が困難である。なお、中国は領土面積が広く、四季が顕著ではっきりと区別できるため、コンクリートの原材料の品質や性質に大きな違いがあり、コンクリートを攪拌、作製や運送する際、調製した新規コンクリートの流動性の早期低下問題がよく見られる。コンクリートのスランプ能力不足によって工事やコンクリートの品質に多くの影響を与え、特に夏の高温時期、コンクリートのスランプが低い又は長時間のスランプを必要とする場合はこの現象が顕著に現れる。根本的な原因として、夏の高温によるスランプの加速低下はセメント水和や水分の蒸発に起因する;スランプが低いコンクリートはシステムの自由水が少ないため、短期間内でも流動度の低下が発生しやすい;コンクリートの施工時間が長くなるとセメントの水和生成物を増やし、その場合余分な分散剤がないと、生成した水和生成物を分散できない結果、流動度の低下現象が徐々に現れてくる。従って、複数の要因による流動度の低下はその性質が違うため、分散剤の追加所要時間も違う。
【0003】
ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤はブリーディング量が低い、減水率が高い、スランプ能力がナフタレン系減水剤より良い、コンクリートの収縮低減及び調製工程における汚染が発生しないというメリットを示し、既に高性能コンクリートの調製に欠かせない重要な構成部分となり、国内外で関連研究も盛んになってくる。最近の何年間の急速な発展に伴い、ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の減水能力が大いに増加したため、間接的にコンクリート系でポリカルボン酸塩系高性能流動化剤のブリーディング量が徐々に低下してくることをもたらし、またコンクリート系でポリカルボン酸塩系高性能流動化剤を加えたコンクリートはスランプ能力が不足している要因を明らかにする。
ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤を加えたコンクリートの流動度の加速低下問題を効果的に解決するために、国内外の関連分野の研究者は多くの研究が行われた。伝統的な凝結遅延方法以外、現在コンクリートの流動度の低下を抑える最も有効な方法はスランプ成分を別途追加することであり、多くの特許文献にスランプ能力を有するポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の調製方法が開示された。
【0004】
特許文献1は、徐放型ポリカルボン酸塩系減水剤の調製方法を提供することを目的とするものである。当該方法は不飽和二重結合を有するポリオキシエチレン構造マクロモノマー、(メタ)アクリル酸、不飽和スルホン酸又はその塩のモノマー、モノオレフィン酸誘導体、ジエンカルボン酸誘導体を水性媒体中においてラジカル共重合反応させ、アルカリ溶液で中和させるのである。本方法の調製したポリカルボン酸塩系高性能流動化剤は長時間運送による流動度の低下を低減させる効果を有するが、初期分散効果がないと一般ポリカルボン酸塩系減水剤と混合して使用する時、高いブリーディング量という問題が見られ、夏の高温時期でセメントの水和加速によるコンクリートの流動度の加速低下問題を解消できないため、制限されていることが明らかである。
特許文献2は、スランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤を提供することを目的とするものである。当該方法は一部のエーテル系不飽和モノマーをエステル系不飽和マクロモノマーの代わりにすることで、セメントの強アルカリの環境におけるポリマーの分子構造の安定性を向上させ、そのスランプ保持能力を強化する。同時にポリマー分子にイタコン酸を導入し、吸着性基としてそのスランプ保持能力を改善する。当該方法の調製したポリカルボン酸塩系高性能流動化剤は強い分散能力を示すが、分子に徐放性基剤がなく、後期のコンクリート体系の分散要求特性を満たされないため、改善の余地はかなりあると考えられる。
特許文献3は、ポリカルボン酸塩系高スランプ保持剤の調製方法を提供することを目的とするものである。当該方法はアリルポリエチレングリコールエーテル、無水マレイン酸、無水マレイン酸・ポリエチレングリコールジエステル及びアクリル酸を共重合させた後、アルカリをを加えて中和する。当該方法は無水物・エステル化反応を利用する場合、水運搬剤がいらなく、汚染低減というメリットを示すが、アリルエーテルや無水マレイン酸及びその誘導体に重合活性が低く、重合反応が困難な場合もあるため、改善の余地はかなりあると考えられる。
【0005】
上記の内容から、既存技術に分子構造の制限があり、長時間スランプ保持のポリマーに減水量が低い、短期間でスランプ保持効果が現れないなどコンクリートの使用上の具体的な問題を全面的に解決できなため、あるコンクリートの短期間スランプ保持要求特性を満足できなく、そして短期間要求を満たすスランプ保持剤にスランプ保持時間が足りないという問題があると明らかにした。従って、現代の高性能コンクリートの流動度の低下を防止するために、スランプ保持効果が早く現れ、持続的に作用効果を発揮できる総合的なスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤が必要なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許CN101786824A
【特許文献2】特許CN101357833A
【特許文献3】特許CN102093521A
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は既存技術の不足点に対し、効果が良いスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤を提供することを目的とするものである。特殊の分子設計によってこの流動化剤はポリマー分子にコンクリートの流動度をマルチ調整できる能力を持たせ、コンクリート攪拌、作製後に短期間内流動度低下失加速問題を効果的に解決でき、そして長時間工事の待ち期間でもコンクリートの流動性が徐徐に低下してくることを抑え、更にコンクリートの流動度不足のため、現場での水もしくは添加剤追加によるコンクリートの性能低下、経済性低下及び施工難易度の増加などの欠点を避ける。
多くの試験が行われた結果、エステル類物質がセメントのアルカリ性の環境で加水分解を行い、徐徐にカルボン酸基(−COO−)を生成する;また性質によってエステル類物質の加水分解速度が異なるため、分子にカルボン酸基を生成する速度も違うと明らかにした。本発明は分子に二種類の放出速度を持つ異なるエステル基ユニットのスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤を提供し、コンクリート体系においてコンクリートの流動度をマルチ調整できる能力を持たせる。
【0008】
本発明の高性能流動化剤は重量平均分子量が20,000〜80,000であり、モノマーA、モノマーB、モノマーC及びモノマーDが水溶液で酸化還元反応開始剤を使って重合反応によって得られたものであり、(モノマーA+モノマーB):モノマーC:モノマーDのモル比が1:3〜8:4〜12であり、その中のモノマーA及びモノマーBのモル比1:1〜4である。
【0009】
モノマーAは式(1)で表される。
式(1)中、R1はH又はCH3を示す;X=O、CH2O、CH2CH2O;pはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、これが110〜350の整数であり、135〜230の整数を優先的に選択する。
【0010】
【化1】
【0011】
モノマーBは式(2)で表される。
式(2)中、R2はH又はCH3を示す;R3は炭素原子数1〜4のアルキルを示す;nはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、20〜90の整数である。
【0012】
【化2】
【0013】
モノマーCは式(3)で表される。
式中、R4はH又はCH3を示す;Mは水素原子、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アミン基を示す。
【0014】
【化3】
【0015】
モノマーDは式(4)で表される。
式(4)中、R5はH又はCH3を示す;x、yはそれぞれエチレンオキシド、プロピレンオキシドの付加数モルを示し、その中x=0又は1、y=0又は1、且つx、yは同時に0又は1としない。
【0016】
【化4】
【0017】
本発明の式1のモノマーAは不飽和エーテルポリエーテルマクロモノマーを示し、式(1)中、R1がHである場合、その不飽和マクロマーはポリエチレングリコールビニルエーテル、アリルポリエチレングリコールエーテル、3−ブテン−1−オールポリグリコールエーテルを含む;R1がH3である場合、その不飽和マクロマーはエチレングリコールモノメタリルエーテル、3−メチル−3−ブテン−1−オールポリグリコールエーテルを含む。上記のこれらのモノマーは単独使用もしくは二種類以上による任意の割合の混合物形式で使用することができる。発明者は、くし形構造ポリマー分子に長い分子側鎖があり、ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤が優れたスランプ保持能力を有することを発見した。
【0018】
本発明の式(2)のモノマーBは(メタ)アクリレートポリグリコールエーテルマクロモノマーを示し、そのエステルマクロモノマーはメトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、プロポキシポリエチレングリコールアクリレート、ブトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、プロポキシポリエチレングリコールメタクリレート、ブトキシポリエチレングリコールメタクリレートを含む。
本発明のポリマーモノマーBはポリマー分子の1段徐放性スランプ能力を調整する重要な構成部分である。最初、モノマーBはポリマー分子の側鎖の一部として、強い立体障害で優れた分散効果を有する;次に、モノマーBのエステル結合を徐々に加水分解してカルボン酸基を生成し、分子の既存カルボン酸基への被覆程度を減少し、ポリマー分子に短期間内で吸着力を向上させ、コンクリートの流動度の早期低下に対して加速補償を提供する。
本発明のポリマーモノマーBは分子量がポリマー分子の1段徐放速度を調整する重要な構成部分である。分子量が大きいほどセグメントが長く、被覆した既存カルボン酸基が多くなり、加水分解後露出した吸着性基も多くなる。従って、実際の需要によってモノマーBの分子量を変更することでポリマーの分散能力の放出速度を調整することができる。
本発明のポリマーモノマーBの使用量もポリマー分子の1段徐放速度を影響する重要な構成要素であり、モノマーBの使用量によって早期分散補償機能の柔軟な調整を実現することができる。
【0019】
本発明の式(3)中のモノマーCはカルボン酸モノマー又はその塩を示し、式(3)中、R4はH又はCH3を示し、代表するカルボン酸モノマーはアクリル酸、メタクリル酸又はその塩を示す。モノマーCはポリマーで初期の吸着性基を提供するものとして、スランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤に一定の初期分散能力及びポリマー分子の極性を持たせ、良好な減水率や減水剤の互換性を確保してきた。
【0020】
本発明の式(4)中のモノマーDはヒドロキシエステル類不飽和小分子である。式(4)中、R5がHである場合、その不飽和小分子モノマーDはアクリル酸 2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルである;R3がCH3である場合、その飽和小分子モノマーDはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル 、メタクリル酸ヒドロキシプロピルである。
本発明のモノマーDはポリマー分子の2段徐放性スランプ能力を調整する重要な構成部分である。最初、モノマーDは分子主鎖の吸着性基の密度を希釈し、ある程度ポリマー分子の吸着動力を低減させ、本発明のポリマー分子がセメント体系に加える初期段階においてセメント粒子に吸着されることを防止し、セメント系の溶液に長時間留置させ、後期の分散補償に有利である;次に、モノマーDのエステル結合が徐々に加水分解され、カルボン酸基を生成し、主鎖の吸着基含有量を増加させ、ポリマー分子の吸着力を高め、ポリマーにもっと強い動力を持たせ、セメント粒子もしくは調製した新規セメント水和物の表面への持続的な吸着を促進し、セメントペーストに対する持続的な分散効果を実現する。
本発明のモノマーDの使用量はポリマー分子の2段徐放時間を調整する重要な構成要素としてり、モノマーDの使用量によって異なるスランプ時間を調整することで、工程の実際の需要によって分子構成への適合的な設計を実現することができる。
【0021】
本発明の酸化還元反応開始剤で、酸化剤は質量濃度≦30%の過酸化水素を示し、還元剤は亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、モール塩、L−アスコルビン酸、イソアスコルビン、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物の何れか1項を示し、本発明のラジカル重合の最適な開始速度によって優先的に選出する還元剤がL−アスコルビン酸もしくはヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物 である。
【0022】
製品の品質を高めるために、本発明の酸化剤の使用量はモノマーA、モノマーB、モノマーC及びモノマーDの総モル数の2〜10%を占め、還元剤の使用量はモノマーの総モル数の0.5〜5%を占める。反応開始前、前記の酸化還元系の酸化剤を反応容器に入れ、還元剤の水溶液を反応開始後に反応容器に滴定する。
【0023】
本発明におけるくし型共重合体コンクリート流動化剤の重量平均分子量の上下限は必ず20,000〜80,000であること。分子量が高すぎるもしくは低すぎると、コンクリートの分散性能やスランプ保持性能に悪い影響を与える。ラジカル重合において分子量の制御方法はたくさんある。例えば重合防止剤の使用、連鎖移動機能を有する不飽和モノマーでの重合又は連鎖移動剤の使用などがある。本発明は連鎖移動剤を優先的に選択使用してポリマーの分子量を制御する。本発明の適用可能な連鎖移動剤はメルカプトエタノール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸の何れかの1項又は二種類以上から任意の割合で混じり合う混合物を選択することができる。重合の連鎖移動剤の使用量はモノマー(A+B+C+D)の総モル数の0.5〜5%である。
【0024】
上記の酸化剤、還元剤及び連鎖移動剤の使用量は全て有効成分の使用量を意味する。溶液を使用した場合、その使用量は溶剤を除去した後の有効成分の使用量である。
本発明を実施する時、反応開始前にモノマーA及び酸化剤を反応器に加え、モノマーAの転換率及び共重合活性を向上させる;モノマーB、モノマーC、モノマーD及び連鎖移動剤や酸化剤の水溶液を反応開始後に反応容器に滴定する。
本発明を実施する時、高い重合濃度30〜60wt%及び低い重合温度30〜60℃で行われ、モノマー及び還元剤溶液の滴定時間の制限は2〜6hであること。重合反応時間は5〜10hであること。重合反応終了後、反応物に塩基性化合物を入れてpHを6〜〜8に調整し、前記の塩基性化合物はアンモニア、有機アミン一価金属もしくは二価金属の水酸化物又はその炭酸塩から選択する。
【0025】
本発明方法の調製したスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤はアルカリ性セメントの環境の下で分子構造の変化が生じ、コンクリート系加入後の各期間において優れた分散性能を発揮し、当該ポリマー特有の三重分散調整によってコンクリートへの持続的な分散を実現することができる。最初、分子の側鎖としてポリマー構造に長鎖エーテル類不飽和ポリエーテルエステルモノマーを導入する。分子の側鎖の長さを延長してポリマー分子がセメント水和物に覆われる時間を延ばし、持続的な分散効果の実現を図り、コンクリートの早期流動度低下を抑える;次に、ポリマー構造にアルカリ加水分解可能な高分子のエステル側鎖を導入する。このような側鎖は二つの役割がある:(1)加水分解露出前に立体障害効果を発揮し、ポリマーに優れた分散能力を持たせることができる;(2)加水分解によって側鎖が露出し、カルボン酸基を生成するとともに、側鎖に覆われるカルボン酸基をも露出させたため、ポリマー分子の既存カルボン酸基の密度を大幅に向上させ、スランプ保持剤の分子に短期間内でもよりよい吸着力を持たせ、コンクリートへの分散能力を加速補充する;第三、ポリマーの低分子エステル類物質がアルカリ性環境で徐々に加水分解し、分子のカルボン酸基含有量を次第に増加させ、ポリマー分子の吸着力を高めて持続的に吸着させることによって、長時間のスランプ保持効果を実現する。
【0026】
本発明のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤は一般ブリーディング量がセメントコンクリート材の総質量の0.02%以上を占め、その最適使用量が工程の実際の需要によってコンクリート攪拌・調製試験を行い、検証を行うものとする。添加量<0.02%の場合、そのスランプ保持効果があまりよくないと考えられる。逆に、添加量が多すぎると、スランプ保持効果の過分によってコンクリートの後期流動度の逆増加をもたらし、更にコンクリートの分離や出水などのコンクリートの劣化原因となる。
本発明のスランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤は単独で使用でき、そして少なくとも一種類の既存技術から選出された既知のスルファミン酸系減水剤、リグニン系一般減水剤及び既存のポリカルボキシレート流動化剤と混合して使用することで、既存技術の減水剤製品のスランプ保持能力を強化する。なお、上記の既存コンクリート減水剤以外、実際の需要によって連行剤、膨張剤、凝結遅延剤、早強剤、粘着剤、収縮低減剤、消泡剤などの機能性添加剤を加えることができる。
本発明の方法によって調製した高性能流動化剤はブリーディング量が低い場合でも、優れたスランプ保持性能を有し、高性能コンクリートの早期分散に対する加速補足のニーズを満たすとともに、長期間のスランプ保持要求をも満足でき、スランプ保持型ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤の作用効果と適応性を効果的に高めた。同時に、既存のスランプ保持技術によってコンクリートのスランプ保持のある要求だけしか満たされないことを避けるために、一回添加して各要素によってコンクリート流動性への異なる影響問題を解決するのは既存のスランプ保持技術に対する重要な補充内容であり、スランプ保持型添加剤の開発や調製が重要な技術進歩と考えれらる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
下記の実施例は本発明方法によるポリマー生成物の調製過程を詳しく論述し、これらの実施例を説明した。その目的として、当該項技術に熟知している者に発明の内容を把握のうえ、これらを実施させるが、これらの実施例は本発明の範囲に限られないものとする。本発明の趣旨に基づく同等の変更や修正は全て本発明の保証範囲のものと見なされる。
【0028】
本発明の実施例におけるポリマーの数平均分子量はWyatt technology corporationゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定する。(ゲルカラム:Shodex SB806+803 コラム2本
直列接続;溶離液:0.1M NaNO3溶液;移動相の速度:0.8ml/min;注射:20μl0.5%水溶液;検出器:ShodexRI−71型示差屈折率検出器;標準物質:ポリエチレングリコールGPC標準物質(Sigma−Aldrich、分子量1010000、478000、263000、118000、44700、18600、6690、1960、628、232)。
特記事項外、本発明の応用実施例の採用するセメントは全て小野田52.5R.P.IIセメントであり、砂は粗粒率Mx=2.6の中粒砂であり、小石は粒径5〜20mmの連続粒度の砂利である。セメントペーストの流動性試験はGB/T8077−2000規定によって行われ、加水量が87gとし、3min攪拌してから、板ガラスの上でセメントペーストの流動性を測定する。ガス含有量、減水率試験方法はGB8076−2008『コンクリート添加剤』の関連規定による。スランプ及びスランプ低下はJC473−2001『ポンピング剤』の関連方法による。
本発明の合成実施例の使用する表1の化合物コードは以下の通りである。
【0030】
実施例1:
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えたガラス製反応器に脱イオン水160gを加え、同時にA−1(0.04mol)240gを加入し、攪拌しながら反応器内を窒素でパージし、30℃まで加温してから溶解し、過酸化水素(質量濃度30%)1.45gを入れてから均等にかき混ぜる。それから、B−2(0.04mol)80g、C−1(0.24mol)17.28g、D−3(0.32mol)41.6g、チオグリコール酸1.2g、水40gを混合攪拌し、均一なモノマー液を作製した後、反応器に2h滴下し、そしてL−アスコルビン酸1gを含有する水溶液40gを2h滴下し、滴下終了後保温して2h反応させ、また反応器にL−アスコルビン酸0.11gを含有する水溶液10gを追加滴下し、引き続き1h保温し、室温まで冷却し、アルカリ剤でpHを6.8まで中和反応させた後、固形分60.4%の黄色の透明液体を得た。その分子量は50,000である。
【0031】
実施例2:
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えたガラス製反応器に脱イオン水320gを加え、同時にA−2(0.04mol)320gを加入し、攪拌しながら反応器内を窒素でパージし、45℃まで加温してから溶解し、過酸化水素(質量濃度30%)15.2gを入れてから均等にかき混ぜる。それから、B−3(0.08mol)240g、C−1(0.6mol)51.6g、D−1(0.96mol)111.4g、2−メルカプトプロピオン酸0.45g、チオグリコール酸0.39g、水220gを混合攪拌し、均一なモノマー液を作製した後、反応器に6h滴下し、そしてヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物11.6gを含有する水溶液140gを6h滴下し、滴下終了後保温して2h反応させ、また反応器にヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物1.3gを含有する水溶液30gを追加滴下し、引き続き1h保温し、室温まで冷却し、アルカリ剤でpHを7.2に中和反応させた後、固形分49.6%の黄色の透明液体を得た。その分子量は42,000である。
【0032】
実施例3:
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えたガラス製反応器に脱イオン水320gを加え、同時にA−1(0.01mol)60g、A−3(0.02mol)200gを加入し、攪拌しながら反応器内を窒素でパージし、50℃まで加温してから溶解し、過酸化水素(質量濃度30%)10.7gを入れてから均等にかき混ぜる。それから、B−4(0.075mol)300g、C−1(0.63mol)45.4g、D−2(0.84mol)109.2g、チオグリコール酸4.3g、水300gを混合攪拌し、均一なモノマー液を作製した後、反応器に4h滴下し、そしてL−アスコルビン酸9.9gを含有する水溶液200gを4h滴下し、滴下終了後保温して2h反応させ、また反応器にL−アスコルビン酸1.1gを含有する水溶液50gを追加滴下し、引き続き1h保温し、室温まで冷却し、アルカリ剤でpHを7.0に中和反応させた後、固形分45.2%の黄色の透明液体を得た。その分子量は64,000である。
【0033】
実施例4:
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えたガラス製反応器に脱イオン水450gを加え、同時にA−4(0.025mol)300gを加入し、攪拌しながら反応器内を窒素でパージし、60℃まで加温してから溶解し、過酸化水素(質量濃度30%)11.9gを入れてから均等にかき混ぜる。それから、B−1(0.1mol)100g、C−2(1mol)86g、D−4(1.5mol)216g、3−メルカプトプロピオン酸13.9g、水300gを混合攪拌し、均一なモノマー液を作製した後、反応器に5h滴下し、そしてヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物7.3gを含有する水溶液200gを5h滴下し、滴下終了後保温して2h反応させ、また反応器にヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物0.81 g を含有する水溶液50gを追加滴下し、引き続き1h保温し、室温まで冷却し、アルカリ剤でpHを6.5に中和反応させた後、固形分39.6%の黄色の透明液体を得た。その分子量は34,000である。
【0034】
実施例5:
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えたガラス製反応器に脱イオン水560gを加え、同時にA−1(0.04mol)240gを加入し、攪拌しながら反応器内を窒素でパージし、40℃まで加温してから溶解し、過酸化水素(質量濃度30%)10gを入れてから均等にかき混ぜる。それから、B−3(0.12mol)360g、C−2(0.64mol)55g、D−4(0.96mol)138.3g 、2−ルカプトプロピオン酸1.9g、水700gを混合攪拌し、均一なモノマー液を作製した後、反応器に3h滴下し、そしてL−アスコルビン酸8.4gを含有る水溶液440gを3h滴下し、滴下終了後保温して2h反応させ、また反応器にL−アスコルビン酸0.93gを含有す水溶液100gを追加滴下し、引き続き1h保温し、室温まで冷却し、アルカリ剤でpHを7.4に中和反応させた後、固形分29.8%の黄色の透明液体を得た。その分子量は75,000である。
【0035】
実施例6:
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えたガラス製反応器に脱イオン水300gを加え、同時にA−2(0.03mol)240gを加入し、攪拌しながら反応器内を窒素でパージし、60℃まで加温してから溶解し、過酸化水素(質量濃度30%)5.6gを入れてから均等にかき混ぜる。それから、B−1(0.12mol)120g、C−1(0.9mol)64.8g、D−3(1.5mol)195g、チオグリコール酸6.1g、水200gを混合攪拌し、均一なモノマー液を作製した後、反応器に4h滴下し、そしてヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物3.4 gを含有する水溶液200gを4h滴下し、滴下終了後保温して2h反応させ、また反応器にヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物0.38gを含有する水溶液50gを追加滴下し、引き続き1h保温し、室温まで冷却し、アルカリ剤でpHを7.1に中和反応させた後、固形分44.9%の黄色の透明液体を得た。その分子量は28,000である。
【0036】
実施例7:
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えたガラス製反応器に脱イオン水240gを加え、同時にA−4(0.03mol)360gを加入し、攪拌しながら反応器内を窒素でパージし、40℃まで加温してから溶解し、過酸化水素(質量濃度30%)27.2gを入れてから均等にかき混ぜる。それから、B−4(0.09mol)360g、C−2(0.84mol)72.3g、D−1(1.44mol)167g、3−メルカプトプロピオン酸7.6g、水200gを混合攪拌し、均一なモノマー液を作製した後、反応器に5h滴下し、そしてL−アスコルビン酸15.2gを含有する水溶液150gを5h滴下し、滴下終了後保温して2h反応させ、また反応器にL−アスコルビン酸1.7gを含有する水溶液40gを追加滴下し、引き続き1h保温し、室温まで冷却し、アルカリ剤でpHを7.5に中和反応させた後、固形分59.1%の黄色の透明液体を得た。その分子量は59,000である。
【0037】
比較例1:
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えたガラス製反応器に脱イオン水120gを加え、同時に分子量2400であるアリルポリエチレングリコールエーテル (0.04mol)96gを加入し、攪拌しながら反応器内を窒素でパージし、50℃まで加温してから溶解し、過酸化水素(質量濃度30%) 15.2gを入れてから均等にかき混ぜる。それから、B−3 (0.08mol)240g 、C−2(0.6mol)51.6g 、D−1(0.96mol)111.4g、2−メルカプトプロピオン酸0.9g、水460gを混合攪拌し、均一なモノマー液を作製した後、反応器に6h滴下し、そしてヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物11.6gを含有する水溶液100gを6h滴下し、滴下終了後保温して2h反応させ、また反応器にヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物1.3 g を含有する水溶液20gを追加滴下し、引き続き1h保温し、室温まで冷却し、アルカリ剤でpHを7.2に中和反応させた後、固形分41.8%の黄色の透明液体を得た。その分子量は53,000である。
【0038】
比較例2:
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えたガラス製反応器に脱イオン水200gを加え、同時にA−3(0.03mol)300gを加入し、攪拌しながら反応器内を窒素でパージし、60℃まで加温してから溶解し、過酸化水素(質量濃度30%)2.9gを入れてから均等にかき混ぜる。それから、C−1(0.24mol)17.3g、D−2(0.24mol)31.2g、チオグリコール酸1.4g、水100gを混合攪拌し、均一なモノマー液を作製した後、反応器に4h滴下し、そしてL−アスコルビン酸2.4gを含有する水溶液120gを4h滴下し、滴下終了後保温して2h反応させ、また反応器にL−アスコルビン酸0.27gを含有する水溶液20gを追加滴下し、引き続き1h保温し、室温まで冷却し、アルカリ剤でpHを7.3に中和反応させた後、固形分50.1%の黄色の透明液体を得た。その分子量は48,000である。
【0039】
比較例3:
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えたガラス製反応器に脱イオン水500gを加え、同時にA−1(0.04mol)240gを加入し、攪拌しながら反応器内を窒素でパージし、30℃まで加温してから溶解し、過酸化水素(質量濃度30%)4.4gを入れてから均等にかき混ぜる。それから、B−3(0.12mol)360g、C−2(0.48mol)41.3g、3−メルカプトプロピオン酸2.7g、水500gを混合攪拌し、均一なモノマー液を作製した後、反応器に3h滴下し、そしてL−アスコルビン酸4.1gを含有する水溶液400gを3h滴下し、滴下終了後保温して2h反応させ、また反応器にL−アスコルビン酸0.45gを含有する水溶液50gを追加滴下し、引き続き1h保温し、室温まで冷却し、アルカリ剤でpHを6.8に中和反応させた後、固形分30.4%の黄色の透明液体を得た。その分子量は49,000である。
【0040】
応用実施例1:
セメントペーストの流動性試験:GB/T8077−2000によって小野田525R.P.IIセメント300gを使用し、加水量が87gとし、詳細な試験データを表2に示す。
【0042】
表2から、本発明のポリカルボン酸塩系高性能流動化剤はブリーディング量が低い場合でも、セメントを持続的に分散させることができ、比較例のポリマーは分散能力の増加程度が低い、前期放出力不足や後期分散能力不足などの問題があると明らかにした。
【0043】
応用実施例2:
凝結時間、ガス含有量及びスランプ試験:GB8076−2008『コンクリート混和剤』の関連試験方法によってガス含有量を測定する;JC473−2001『ポンピング剤』の関連方法によって本発明製品と二種類の市販高性能スランプ保持剤で調製した新規コンクリートのスランプ及び60min、120min、180minの経過スランプの変化を測定し、ポリカルボン酸塩系高性能流動化剤のブリーディング量をセメント使用量の0.12%に指定し、また用水量を調整することで調製した新規コンクリートの初期スランプを15±1cmにし、その試験結果を表3に示す。
【0045】
上記の試験から、本発明のコンクリート高性能流動化剤はブリーディング量が低い場合でも、優れたスランプ保持性能を有し、市販同類製品に比べてスランプ保持時間が長い、且つコンクリートの凝結時間への影響も小さいと明らかにした。
【0046】
応用実施例3:
本発明の方法で調製したポリカルボン酸塩系高性能流動化剤のスランプ保持能力をよりよい証明するために、実施例1、実施例4及び有名な海外会社のスランプ保持系製品RXと市販されているポリカルボン酸塩系減水剤PC−1と混合して調製し、三者の一般ポリカルボン酸塩系減水剤に対するスランプ保持能力の向上を比較した。JC473−2001『ポンピング剤』の関連方法によって試験を行い、従来型減水剤のブリーディング量はコンクリートセメント系材料の重量の0.1%であり、用水量の調整によって新調製コンクリートの初期スランプを21±1cmにし、試験の結果を表4に示す。
【0048】
なお、本発明の各原材料及びその上限値・下限値は全て本発明で実現可能なものであるため、ここで実施例をいちいち挙げない。