特許第6074522号(P6074522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6074522-樹脂組成物及びその硬化物 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074522
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/04 20060101AFI20170123BHJP
   C08L 39/04 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/375 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G02B1/04
   C08L39/04
   C08K5/375
【請求項の数】7
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-2429(P2016-2429)
(22)【出願日】2016年1月8日
(62)【分割の表示】特願2015-535453(P2015-535453)の分割
【原出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-155998(P2016-155998A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2016年2月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-184332(P2013-184332)
(32)【優先日】2013年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-47153(P2014-47153)
(32)【優先日】2014年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江川 智哉
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−003387(JP,A)
【文献】 特開2006−003388(JP,A)
【文献】 特開2001−282082(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0096172(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/04
C08L 1/00 − 101/16
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(a)で表される化合物(A)と、カルバゾール骨格を含有するモノマー単位を含む線状重合体(B)と、重合開始剤(C)を含み、レンズ材料として使用するための樹脂組成物。
【化1】
(式中、Raは反応性官能基を示す。Rbはハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。Rcは単結合又は連結基を示す。mは0〜4の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。尚、2つのRaは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。また、Rb及びmが複数ある場合は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい)
【請求項2】
線状重合体(B)におけるカルバゾール骨格を含有するモノマー単位が下記式(b)で表されるモノマー単位である請求項1に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式中、A、R1〜R8は同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す。Yは単結合又は連結基を示す)
【請求項3】
式(a)中のRaが、ビニル基又はアリル基である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
化合物(A)の含有量が、樹脂組成物全量の30〜98重量%である請求項1〜の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
線状重合体(B)の含有量が、樹脂組成物全量の1〜50重量%である請求項1〜の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂組成物に含まれる全重合性化合物に占める前記化合物(A)の割合が70重量%以上である請求項1〜の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなるレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用途に応じて粘度と硬化収縮率を調整することができ、且つ高屈折率を有する硬化物を形成することができる樹脂組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)、発光ダイオード装置(LED装置)、ディスプレイ(液晶表示装置やタッチパネル等)等の電子デバイスやレンズを構成する部材としては、耐衝撃性や柔軟性に優れ、軽量であること等から樹脂組成物の硬化物が多く用いられている。そして、上記電子デバイスには、有機EL装置における電極やパッシベーション膜のように、屈折率の高い部材(高屈折率部材)が多く使用されている。このため、これらの電子デバイスに使用する封止材には、上記高屈折率部材に接するように配置された場合であっても、該高屈折率部材との界面で光の反射を生じにくくするため、高い屈折率を有することが求められている。また、レンズ材料には、レンズの薄膜化、軽量化を実現する為に高屈折率を有する樹脂組成物が求められている。
【0003】
前記高屈折率を有する硬化物を形成する樹脂組成物としては、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド由来のモノマー単位を有するオリゴマーを含む樹脂組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−183816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド由来のモノマー単位を有するオリゴマーを含む樹脂組成物は粘度が低く、特にダム・フィル封止のフィル材として使用した場合にダムから流出しやすいことが問題であった。すなわち、前記樹脂組成物は、用途に応じて粘度を調整することが求められていた。
その他、例えば、金型を用いて成形する場合には、硬化時に適度に収縮することが離型性に優れる点で好ましい。そのため、用途に応じて硬化収縮率を調整することが求められていた。
しかし、得られる硬化物の屈折率を高く維持しつつ、用途に応じて粘度や硬化収縮率をコントロールすることは非常に困難であった。
【0006】
従って、本発明の目的は、封止材、レンズ材料、又は接着剤として使用する樹脂組成物であって、前記用途に応じて粘度と硬化収縮率を容易に調整することができ、高屈折率を有する硬化物(樹脂硬化物)を形成することができる樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記樹脂組成物の硬化物によって素子が封止された構成を有する電子デバイスを提供することにある。
本発明の他の目的は、前記樹脂組成物の硬化物からなるレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、分子内に2つの反応性官能基、2以上の芳香環、及び3以上の硫黄原子を有する特定の化合物(A)と、カルバゾール骨格を含有するモノマー単位を含む線状重合体(B)と、重合開始剤(C)とを含有する樹脂組成物は、前記(A)と(B)が共に高屈折率を有する硬化物を形成することができる樹脂であり、且つ前記(A)と(B)が相溶性に優れるため、前記(B)の分子量や配合割合を変更することにより、得られる硬化物の屈折率を高く維持しつつ容易に粘度及び硬化収縮率を用途に応じた値に調整することができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(a)で表される化合物(A)と、カルバゾール骨格を含有するモノマー単位を含む線状重合体(B)と、重合開始剤(C)を含み、封止材、レンズ材料、又は接着剤として使用するための樹脂組成物を提供する。
【化1】
(式中、Raは反応性官能基を示す。Rbはハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。Rcは単結合又は連結基を示す。mは0〜4の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。尚、2つのRaは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。また、Rb及びmが複数ある場合は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい)
【0009】
本発明は、また、線状重合体(B)におけるカルバゾール骨格を含有するモノマー単位が下記式(b)で表されるモノマー単位である前記の樹脂組成物を提供する。
【化2】
(式中、A、R1〜R8は同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す。Yは単結合又は連結基を示す)
【0010】
本発明は、また、式(a)中のRaが、ビニル基又はアリル基である前記の樹脂組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、化合物(A)の含有量が、樹脂組成物全量の30〜98重量%である前記の樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明は、また、線状重合体(B)の含有量が、樹脂組成物全量の1〜50重量%である前記の樹脂組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、樹脂組成物に含まれる全重合性化合物に占める前記化合物(A)の割合が70重量%以上である前記の樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記の樹脂組成物の硬化物によって素子が封止された構成を有する電子デバイスを提供する。
【0015】
本発明は、また、前記の樹脂組成物の硬化物からなるレンズを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂組成物は上記構成を有するため、用途に応じて粘度と硬化収縮率を容易に調整することができ、高屈折率を有する硬化物(樹脂硬化物)を形成することができる。このため、本発明の樹脂組成物や本発明の樹脂組成物を成形して得られる硬化性樹脂フィルムは、特に、有機EL装置、LED装置、ディスプレイ等の電子デバイスに使用する封止材若しくはシール剤として、又はレンズ材料として好ましく使用できる。
また、本発明の樹脂組成物や硬化性樹脂フィルムの硬化物は高屈折率を有するため、上記電子デバイスを製造する工程で本発明の樹脂組成物を封止材として使用すると、封止材と高屈折率部材との界面における光の反射を抑制することができ、光の取り出し効率を向上することができ、高効率、高輝度、長寿命を有する電子デバイスが得られる。また、本発明の樹脂組成物や硬化性樹脂フィルムにより形成されたレンズは高屈折率を有するため、薄膜化、軽量化が可能であり、該レンズを含む電子機器のデザイン性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】導電性繊維被覆粒子の一例の走査型電子顕微鏡像(SEM像)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[化合物(A)]
本発明の樹脂組成物を構成する化合物(A)は、上記式(a)で表される重合性化合物である。上記式(a)中の2つのRaは、同一又は異なって、反応性官能基(重合性官能基)を示し、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基等を挙げることができる。本発明においては、なかでもビニル基、アリル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基から選択される基が好ましい。
【0019】
上記式(a)中のRbは、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。また、mが2〜4の整数である場合、同一の芳香環に結合した2〜4個のRbが互いに結合して、芳香環を構成する炭素原子とともに環を形成していてもよい。更に、式(a)中の複数のRbはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0020】
上記Rbにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。上記Rbにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のC1-10(好ましくはC1-5)アルキル基等を挙げることができる。上記Rbにおけるハロアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等のC1-10(好ましくはC1-5)ハロアルキル基等を挙げることができる。上記Rbにおけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。尚、上記アリール基の芳香環は、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、メチル基等のC1-4アルキル基、トリフルオロメチル基等のC1-5ハロアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基等のC1-4アルコキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基等のC1-4アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アセチル基等のアシル基(特に、C1-6脂肪族アシル基)等の置換基を有していてもよい。
【0021】
上記Rbにおけるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基等の、C1-10アルキル基が有する水素原子の少なくとも1つがヒドロキシル基で置換されたC1-10(好ましくはC1-5)ヒドロキシアルキル基等を挙げることができる。上記Rbにおけるヒドロキシル基の保護基、ヒドロキシアルキル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、t−ブチル基等のC1-4アルキル基等);アルケニル基(例えば、アリル基等);シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基等);アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基等);アラルキル基(例えば、ベンジル基等);置換メチル基(例えば、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、ベンジルオキシメチル基、t−ブトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基等)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル基等)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル基等)等のヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基等のC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基等);アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等のC1-4アルコキシ−カルボニル基等);アラルキルオキシカルボニル基;置換又は無置換カルバモイル基;置換シリル基(例えば、トリメチルシリル基等);分子内にヒドロキシル基やヒドロキシメチル基が2以上存在するときには置換基を有していてもよい二価の炭化水素基(例えば、メチリデン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、ベンジリデン基等)等]を挙げることができる。
【0022】
上記Rbにおけるアミノ基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基(例えば、上記ヒドロキシル基の保護基として例示したアルキル基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基等)を挙げることができる。
【0023】
上記Rbにおけるカルボキシル基の保護基、スルホ基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基[例えば、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のC1-6アルコキシ基等)、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、トリアルキルシリルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、ヒドラジノ基、アルコキシカルボニルヒドラジノ基、アラルキルカルボニルヒドラジノ基等]を挙げることができる。
【0024】
上記Rbにおけるアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基等のC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基等を挙げることができる。上記アシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。上記アシル基が保護された形態としては、例えば、アセタール(ヘミアセタールを含む)等を挙げることができる。
【0025】
上記Rbが芳香環1つあたりに2つ以上結合している場合(即ち、式(a)中のmが2〜4の場合)において、2つ以上のRbが互いに結合して式(a)中の芳香環を構成する炭素原子と共に形成する環としては、例えば、5員の脂環式炭素環、6員の脂環式炭素環、2以上の脂環式炭素環(単環)の縮合環等の脂環式炭素環;5員のラクトン環、6員のラクトン環等のラクトン環等を挙げることができる。
【0026】
上記式(a)中のRcは、単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。前記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、カルボニル基(−CO−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びこれらが複数個連結した基等を挙げることができる。上記連結基は、水酸基、カルボキシル基等の置換基を有していてもよく、このような連結基としては、例えば、1以上の水酸基を有する二価の炭化水素基等を挙げることができる。
【0027】
上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0028】
化合物(A)の分子量は特に限定されないが、線状重合体(B)との溶解性に優れる点で300〜10000が好ましく、特に好ましくは300〜1000、最も好ましくは300〜500である。
【0029】
上記式(a)中の複数のmは、同一又は異なって、0〜4の整数を示す。また、n(nが付された括弧内の構造単位の繰り返し数)は、0〜10の整数を示す。
【0030】
上記式(a)中のnは、なかでも、樹脂組成物の粘度を広い範囲で調整することができる点で0〜3が好ましく、特に好ましくは0である。即ち、化合物(A)としては、特に、下記式(a’)で表される化合物が好ましい。
【化3】
(式中、Ra、Rb、mは、前記に同じ)
【0031】
本発明の樹脂組成物における化合物(A)としては、下記式で示される化合物等を挙げることができる。尚、下記式におけるRは、水素原子又はメチル基である。
【化4】
【0032】
【化5】
【0033】
化合物(A)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の樹脂組成物全量(100重量%)における化合物(A)の含有量(配合量)は、例えば30〜99重量%程度であり、好ましくは50〜98重量%、特に好ましくは60〜98重量%である。化合物(A)の含有量が上記範囲を下回ると、樹脂組成物が室温(25℃)で固体となる傾向がある。一方、化合物(A)の含有量が上記範囲を上回ると、樹脂組成物を高粘度化することが困難となる傾向がある。
【0034】
化合物(A)は、公知乃至慣用の方法によって製造することができる。例えば、式(a)中のRaが水素原子である化合物(例えば、4,4’−チオビスベンゼンチオール等)を原料とし、これに塩基の存在下でハロゲン化ビニル、ハロゲン化アリル、(メタ)アクリル酸のハロゲン化物、エピハロヒドリン等を反応させる方法等を挙げることができる。また、式(a)中のRaがビニル基である化合物は、式(a)中のRaが水素原子である化合物(例えば、4,4’−チオビスベンゼンチオール等)とジハロエタンとを反応させ、続いて、脱ハロゲン化水素する方法によっても製造することができる。
【0035】
[線状重合体(B)]
本発明の樹脂組成物を構成する線状重合体(B)は、カルバゾール骨格を含有するモノマー単位(繰り返し単位)を含む線状重合体である。前記モノマー単位は1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0036】
前記カルバゾール骨格を含有するモノマー単位としては、例えば、下記式(b)で表されるモノマー単位を挙げることができる。式(b)中、A、R1〜R8は同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す。Yは単結合又は連結基を示す。
【化6】
【0037】
A、R1〜R8における有機基としては、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、複素環式基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基等)、カルボキシル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、アシル基(アセチル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等のC1-6アルコキシ基等)、N,N−ジ置換アミノ基(N,N−ジメチルアミノ基、ピペリジノ基等)等、及びこれらが2以上結合した基等を挙げることができる。前記カルボキシル基等は有機合成の分野で公知乃至慣用の保護基で保護されていてもよい。
【0038】
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素原子を挙げることができる。
【0039】
前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基等を挙げることができる。
【0040】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基等の橋かけ環式炭化水素基等を挙げることができる。
【0041】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基を挙げることができる。
【0042】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基等のシクロアルキル置換アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル置換C1-4アルキル基等)等が含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基等)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基等)等が含まれる。
【0043】
上記炭化水素基は、種々の置換基[例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基等)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基等)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基等]を有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0044】
前記複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン環、テトラヒドロフラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、γ−ブチロラクトン環等の5員環;4−オキソ−4H−ピラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環等の6員環;ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、4−オキソ−4H−クロメン環、クロマン環、イソクロマン環等の縮合環;3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環等の橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環等の5員環;4−オキソ−4H−チオピラン環等の6員環;ベンゾチオフェン環等の縮合環等)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環等の5員環;ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の6員環;インドール環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、プリン環等の縮合環等)等を挙げることができる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等のC1-4アルキル基等)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)等の置換基を有していてもよい。
【0045】
Yは単結合又は連結基を示す。前記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、カルボニル基(−CO−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びこれらが複数個連結した基等を挙げることができる。前記二価の炭化水素基としては、前記式(a)中のRcにおける例と同様の例を挙げることができる。
【0046】
本発明の線状重合体(B)は上記カルバゾール骨格を含有するモノマー単位に対応する重合性単量体(例えば、N−ビニルカルバゾール、N−アクリロイルカルバゾール、N−(ビニルベンジル)カルバゾール等)を重合に付すことにより得ることができる。尚、重合の方式は、特に限定されず、溶液重合、溶融重合等の公知の方法を採用できる。
【0047】
また、本発明の線状重合体(B)は、上記カルバゾール骨格を含有するモノマー単位以外にも他のモノマー単位を有する共重合体(例えば、グラフト共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体等)であってもよい。前記共重合体は、前記上記カルバゾール骨格を含有するモノマー単位に対応する重合性単量体と、他のモノマー単位に対応する重合性単量体を重合に付すことにより製造することができる。
【0048】
前記他のモノマー単位に対応する重合性単量体としては、例えば、オレフィン[例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン等の鎖状オレフィン(特に、C2-12アルケン);シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン等の環状オレフィン]、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、1−プロペニルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−ビニルピリジン、3−ビニルフラン、3−ビニルチオフェン、3−ビニルキノリン等のC6-14芳香族ビニル化合物)、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等のアクリル酸C1-10アルキルエステル、及びこれらに対応するメタクリル酸エステル等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプロン酸ビニル等のC1-16脂肪酸ビニルエステル等)、マレイン酸エステル又はフマル酸エステル(例えば、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジ(2−エチルへキシル)等のマレイン酸ジC1-10アルキルエステル、及びこれらに対応するフマル酸エステル等)、カルボキシル基含有単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のモノカルボン酸;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸又はその酸無水物;前記多価カルボン酸のモノアルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル、ラウリルエステル等のC1-16アルキルエステル)、インデン類(例えば、インデン、メチルインデン、エチルインデン、ジメチルインデン等のアルキルインデン;クロロインデン、ブロモインデン等のハロゲン化インデン等)等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
本発明においては、なかでも高屈折率を有する硬化物を安価に形成することができる点で、芳香族ビニル化合物(特に、スチレン類)及びインデン類から選択される少なくとも1種の重合性単量体由来のモノマー単位を有することが好ましい。
【0050】
線状重合体(B)を構成する全モノマー単位に占めるカルバゾール骨格を含有するモノマー単位の割合としては、例えば30重量%以上、好ましくは30〜95重量%、特に好ましくは50〜90重量%である。カルバゾール骨格を含有するモノマー単位を上記範囲で含有する線状重合体は、化合物(A)に対する溶解性に優れる点で好ましい。一方、カルバゾール骨格を含有するモノマー単位の割合が上記範囲を下回ると、得られる硬化物が白濁する傾向がある。
【0051】
線状重合体(B)の重量平均分子量は、化合物(A)との相溶性に優れる点で、例えば500〜1000000程度が好ましく、特に好ましくは3000〜500000である。尚、上記重量平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の分子量より算出できる。線状重合体(B)の重量平均分子量が上記範囲を外れると、得られる硬化物の屈折率を高く維持しつつ、所望の粘度及び硬化収縮率を有する樹脂組成物を形成することが困難となる傾向がある。
【0052】
本発明の線状重合体(B)としては、商品名「PVCZ 8K」、「PVCZ」、(以上、ポリ−N−ビニルカルバゾール、丸善石油化学(株)製)、「P0656」(ポリ−N−ビニルカルバゾール、東京化成(株)製)等の市販品を使用してもよい。
【0053】
線状重合体(B)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の樹脂組成物全量(100重量%)における線状重合体(B)の含有量(配合量)は例えば1〜70重量%程度であり、この範囲内において用途に応じて適宜調整することができる。例えば、本発明の樹脂組成物をレンズ材料や液状の封止材として使用する場合は、樹脂組成物の粘度は適度に低いことが好ましく、線状重合体(B)の含有量は1〜50重量%が好ましく、特に好ましくは1〜30重量%、最も好ましくは1重量%以上、30重量%未満である。また、本発明の樹脂組成物からフィルム状の封止材として使用可能な硬化性樹脂フィルムを形成する場合は、樹脂組成物の粘度は適度に高いことが好ましく、線状重合体(B)の含有量は30〜70重量%が好ましい。線状重合体(B)の含有量が上記範囲を外れると、得られる硬化物の屈折率を高く維持しつつ、所望の粘度及び硬化収縮率を有する樹脂組成物を形成することが困難となる傾向がある。
【0054】
線状重合体(B)の重量平均分子量及び含有量を上記範囲で調整することにより、得られる硬化物の屈折率を高く維持しつつ、所望の粘度及び硬化収縮率を有する樹脂組成物を形成することができる。例えば、重量平均分子量が小さい線状重合体(B)を少量含有すると、低粘度の樹脂組成物が得られる。一方、重量平均分子量が大きい線状重合体(B)を多量に含有すると、高粘度の樹脂組成物が得られる。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、上記化合物(A)に加えて線状重合体(B)を必須成分として含有するため、得られる硬化物の屈折率を高く保持しつつ、所望の粘度及び硬化収縮率を付与することができる。
【0056】
[重合開始剤(C)]
本発明の樹脂組成物を構成する重合開始剤(C)としては、特に限定されず、周知慣用の重合開始剤を使用することができる。具体的には、重合開始剤(C)として、光カチオン重合開始剤若しくは熱カチオン重合開始剤、又は光ラジカル重合開始剤若しくは熱ラジカル重合開始剤を好ましく使用できる。尚、重合開始剤(C)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
(光カチオン重合開始剤)
光カチオン重合開始剤は、光の照射によってカチオン種を発生してカチオン硬化性化合物の硬化反応を開始させる光カチオン重合開始剤である。光カチオン重合開始剤は、光を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。
【0058】
本発明の光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等を挙げることができる。
【0059】
なかでも、スルホニウム塩系化合物を使用することが、硬化性に優れた硬化物を形成することができる点で好ましい。スルホニウム塩系化合物のカチオン部としては、例えば、(4−ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムイオン、トリ−p−トリルスルホニウムイオン等のアリールスルホニウムイオン(特に、トリアリールスルホニウムイオン)を挙げることができる。
【0060】
光カチオン重合開始剤のアニオン部としては、例えば、BF4-、B(C654-、PF6-、[(Rf)kPF6-k-(Rf:水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基、k:1〜5の整数)、AsF6-、SbF6-、SbF5OH-等を挙げることができる。
【0061】
本発明の光カチオン重合開始剤としては、例えば、(4−ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル−4−ビフェニリルフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファート、4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル−4−ビフェニリルフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、商品名「サイラキュアUVI−6970」、「サイラキュアUVI−6974」、「サイラキュアUVI−6990」、「サイラキュアUVI−950」(以上、米国ユニオンカーバイド社製)、「イルガキュア250」、「イルガキュア261」、「イルガキュア264」(以上、BASF社製)、「アデカオプトマーSP−150」、「アデカオプトマーSP−151」、「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーSP−171」(以上、(株)ADEKA製)、「CG−24−61」(BASF社製)、「DAICAT II」((株)ダイセル製)、「UVAC1590」、「UVAC1591」(以上、ダイセル・サイテック(株)製)、「CI−2064」、「CI−2639」、「CI−2624」、「CI−2481」、「CI−2734」、「CI−2855」、「CI−2823」、「CI−2758」、「CIT−1682」(以上、日本曹達(株)製)、「PI−2074」(ローディア社製、テトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)トルイルクミルヨードニウム塩)、「FFC509」(3M社製)、「BBI−102」、「BBI−101」、「BBI−103」、「MPI−103」、「TPS−103」、「MDS−103」、「DTS−103」、「NAT−103」、「NDS−103」(以上、ミドリ化学(株)製)、「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(米国、Sartomer社製)、「CPI−100P」、「CPI−101A」(以上、サンアプロ(株)製)等の市販品を使用できる。
【0062】
(熱カチオン重合開始剤)
熱カチオン重合開始剤は加熱によってカチオン種を発生して、カチオン重合性化合物の硬化反応を開始させる化合物であり、例えば、商品名「サンエイドSI−45」、「サンエイドSI−47」、「サンエイドSI−60」、「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80」、「サンエイドSI−80L」、「サンエイドSI−100」、「サンエイドSI−100L」、「サンエイドSI−110L」、「サンエイドSI−145」、「サンエイドSI−150」、「サンエイドSI−160」、「サンエイドSI−180L」(以上、三新化学工業(株)製品)、「CI−2921」、「CI−2920」、「CI−2946」、「CI−3128」、「CI−2624」、「CI−2639」、「CI−2064」(以上、日本曹達(株)社製)、「PP−33」、「CP−66」、「CP−77」(以上、(株)ADEKA製)、「FC−509」、「FC−520」(以上、3M社製)等に代表されるジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等を使用できる。さらに、アルミニウムやチタン等の金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタン等の金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物であってもよい。
【0063】
光若しくは熱カチオン重合開始剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができ、その使用量(配合量)は本発明の樹脂組成物(100重量%)において、0.01〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.1〜3重量%である。また、本発明の樹脂組成物に含まれる重合性化合物100重量部に対して、例えば0.01〜15重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜10重量部、特に好ましくは0.05〜5重量部、最も好ましくは0.1〜3重量部である。
【0064】
(硬化促進剤)
本発明の樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。上記硬化促進剤とは、本発明の樹脂組成物中の重合性化合物が光若しくは熱カチオン重合開始剤により硬化する際に、硬化速度を促進する機能を有する化合物であり、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等の第3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール;リン酸エステル、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレート等のホスホニウム化合物;オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛等の有機金属塩;金属キレート等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
上記硬化促進剤としては、商品名「U−CAT SA 506」、「U−CAT SA 102」、「U−CAT 5003」、「U−CAT 18X」、「12XD」(開発品)(以上、サンアプロ(株)製)、「TPP−K」、「TPP−MK」(以上、北興化学工業(株)製)、「PX−4ET」(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0066】
本発明の樹脂組成物(100重量%)における硬化促進剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、0.05〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.2〜3重量%、最も好ましくは0.25〜2.5重量%である。硬化促進剤の含有量が上記範囲を下回ると、硬化促進効果が不十分となる場合がある。一方、硬化促進剤の含有量が上記範囲を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0067】
(光ラジカル重合開始剤)
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト、オルトベンゾイル安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬(株)製、商品名「カヤキュアEPA」等)、2,4−ジエチルチオキサンソン(日本化薬(株)製、商品名「カヤキュアDETX」等)、2−メチル−1−[4−(メチル)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1(チバガイギ−(株)製、商品名「イルガキュア907」等)、2−ジメチルアミノ−2−(4−モルホリノ)ベンゾイル−1−フェニルプロパン等の2−アミノ−2−ベンゾイル−1−フェニルアルカン化合物、テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゼン誘導体、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾ−ル(保土谷化学(株)製、商品名「B−CIM」等)等のイミダゾール化合物、2,6−ビス(トリクロロメチル)−4−(4−メトキシナフタレン−1−イル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル化トリアジン化合物、2−トリクロロメチル−5−(2−ベンゾフラン2−イル−エテニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記光ラジカル重合開始剤としては、感度及び耐薬品性等の観点から、イミダゾール化合物とアミノベンゼン誘導体の組合せ、2−アミノ−2−ベンゾイル−1−フェニルアルカン化合物、ハロメチル化トリアジン化合物、ハロメチルオキサジアゾール化合物等が好ましい。また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、光増感剤を加えることができる。
【0068】
(熱ラジカル重合開始剤)
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物類を挙げることができる。上記有機過酸化物類としては、例えば、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル等を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキサン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシジ−イソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。
【0069】
さらに、上記熱ラジカル重合開始剤とともに、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸亜鉛、オクテン酸コバルト等のナフテン酸やオクテン酸のコバルト、マンガン、鉛、亜鉛、バナジウム等の金属塩を併用することができる。同様に、ジメチルアニリン等の第3級アミンも使用することができる。
【0070】
上述の光若しくは熱ラジカル重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、その使用量(配合量)は、本発明の樹脂組成物(100重量%)において、0.01〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%である。また、本発明の樹脂組成物に含まれる重合性化合物100重量部に対して、例えば0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0071】
[無機フィラー]
本発明の樹脂組成物は、さらに、無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーとしては、可視光線を遮断しないフィラーを使用することが好ましく、例えば、シリカ(ナノシリカ等)、アルミナ、マイカ、合成マイカ、タルク、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム(ナノジルコニア等)、酸化チタン(ナノチタニア等)、チタン酸バリウム、カオリン、ベントナイト、珪藻土、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、ガラスビーズ、ガラス繊維、グラファイト、カーボンナノチューブ、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、セルロース等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
前記無機フィラーは、例えば国際公開第96/31572号に記載されている火炎加水分解法や、火炎熱分解法、プラズマ法等の公知の方法で製造することができる。好ましい無機フィラーとしては、安定化されたコロイド状無機粒子のナノ分散ゾル類等を用いることができ、BAYER社製のシリカゾル、Goldschmidt社製のSnO2ゾル、MERCK社製のTiO2ゾル、Nissan Chemicals社製のSiO2ゾル、ZrO2ゾル、Al23ゾル、及びSb23ゾル、DEGUSSA社製のSiO2分散液(商品名「Aerosil」)等の市販品が入手可能である。
【0073】
無機フィラーは、その表面を改質することにより粘度挙動を変化させることができる。無機フィラーの表面改質は、公知の表面改質剤を用いて行うことができる。このような表面改質剤としては、例えば、無機フィラーの表面に存在する官能基と共有結合や錯形成等の相互作用が可能な化合物や、重合体マトリックスと相互作用可能な化合物を用いることができる。このような表面改質剤としては、例えば、分子内にカルボキシル基、(第1級、第2級、第3級)アミノ基、第4級アンモニウム基、カルボニル基、グリシジル基、ビニル基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基等の官能基を有する化合物等を用いることができる。このような表面改質剤としては、通常、標準温度及び圧力条件下で液体であり、分子内の炭素数が15以下(より好ましくは炭素数が10以下、さらに好ましくは8以下)の低分子有機化合物で構成された表面改質剤が好ましい。上記低分子有機化合物の分子量は、特に限定されないが、500以下が好ましく、より好ましくは350以下、さらに好ましくは200以下である。
【0074】
上記表面改質剤としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クエン酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、シュウ酸、マレイン酸及びフマル酸等のC1-12飽和または不飽和モノ及びポリカルボン酸類(好ましくは、モノカルボン酸類);及びこれらのエステル類(好ましくはメタクリル酸メチル等のC1-4アルキルエステル類);アミド類;アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸及びC1-4アルキルアセト酢酸類等のβ−ジカルボニル化合物、及びシランカップリング剤等を挙げることができる。
【0075】
無機フィラーの粒径は、例えば0.01nm〜1μm程度である。
【0076】
無機フィラーの含有量(配合量)は、樹脂組成物中の化合物(A)及び線状重合体(B)の総量(合計含有量)100重量部に対して、例えば1〜2000重量部程度である。また、樹脂組成物全量(100重量%)における無機フィラーの含有量は、例えば5〜95重量%程度である。
【0077】
[シランカップリング剤]
本発明の樹脂組成物は、基板等の被接着体に対する接着性を向上させるために、さらにシランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシシラン)、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の、水溶液中で比較的安定なものの中から適宜選択して使用することができる。
【0078】
本発明の樹脂組成物(100重量%)におけるシランカップリング剤の含有量(配合量)は、例えば0.1〜20重量%程度である。
【0079】
[他の添加剤]
本発明の樹脂組成物は、更に、必要に応じて、例えば、重合性化合物(化合物(A)を除く)、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、顔料、有機溶剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、蛍光体、離型剤等の慣用の添加剤を含有していてもよい。尚、本発明の樹脂組成物は上記化合物(A)以外にも他の重合性化合物(例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、オレフィン系化合物等)を含有していても良いが、樹脂組成物に含まれる全重合性化合物に占める化合物(A)の割合は、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。
【0080】
また、本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物に導電性が求められる場合は、本発明の樹脂組成物に、上記成分の他に導電性材料を含有することが好ましく、特に、下記導電性繊維被覆粒子を含有することが、導電性と透明性とを兼ね備えた硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0081】
(導電性繊維被覆粒子)
導電性繊維被覆粒子は、粒子状物質と、該粒子状物質を被覆する繊維状の導電性物質(本明細書では「導電性繊維」と称する場合がある)とを含む。尚、導電性繊維被覆粒子において「被覆する」とは、導電性繊維が粒子状物質の表面の一部又は全部を覆った状態を意味する。導電性繊維被覆粒子においては、導電性繊維が粒子状物質の表面の少なくとも一部を被覆していればよく、例えば、被覆した部分よりも被覆していない部分の方が多く存在していてもよい。また、導電性繊維被覆粒子においては、必ずしも粒子状物質と導電性繊維とが接触している必要はないが、通常、導電性繊維の一部は粒子状物質の表面に接触している。
【0082】
図1は、導電性繊維被覆粒子の走査型電子顕微鏡像の一例である。図1に示すように、導電性繊維被覆粒子は、粒子状物質(図1における真球状の物質)の少なくとも一部が導電性繊維(図1における繊維状の物質)により被覆された構成を有する。
【0083】
(粒子状物質)
導電性繊維被覆粒子を構成する粒子状物質は、粒子状の構造体である。
【0084】
上記粒子状物質を構成する材料(素材)は、特に限定されず、例えば、金属、プラスチック、ゴム、セラミック、ガラス、シリカなどの公知乃至慣用の材料が挙げられる。本発明においては、なかでも、透明プラスチック、ガラス、シリカなどの透明な材料を使用することが好ましく、特に、透明プラスチックを使用することが好ましい。
【0085】
上記透明プラスチックには熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂等が含まれる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;エポキシ樹脂;ポリスルホン樹脂;非晶性ポリオレフィン樹脂;ジビニルベンゼン、ヘキサトリエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルカルビノール、アルキレンジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジメタクリレート、アルキレントリアクリレート、アルキレンテトラアクリレート、アルキレントリメタクリレート、アルキレンテトラメタクリレート、アルキレンビスアクリルアミド、アルキレンビスメタクリルアミド、両末端アクリル変性ポリブタジエンオリゴマーなどの多官能性モノマーを単独で重合、又はその他のモノマーと共重合させて得られる網目状ポリマー;フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等を挙げることができる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/不飽和カルボン酸共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/メチルメタクリレート共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アミノアルキルメタクリレート共重合体、エチレン/ビニルシラン共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸メチル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体等を挙げることができる。
【0086】
上記粒子状物質の形状は、特に限定されないが、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状など)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状など)、平板状、りん片状、不定形状等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、導電性繊維被覆粒子を高い生産性で製造でき、樹脂組成物中に均一に分散しやすく、硬化物全体へ容易に導電性を付与することができる点で、球状が好ましく、特に好ましくは真球状である。
【0087】
上記粒子状物質の平均粒子径は、特に限定されないが、0.1〜100μmが好ましく、特に好ましくは1〜50μm、最も好ましくは5〜30μmである。平均粒子径が上記範囲を下回ると、少量の導電性繊維被覆粒子の配合によって優れた導電性を発現させることが困難となる場合がある。平均粒子径が上記範囲を上回ると、有機EL素子の封止層の厚みよりも平均粒子径が大きくなり、均一な厚みの塗膜を形成することが困難となる傾向がある。尚、上記粒子状物質の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によるメディアン径(d50)である。
【0088】
上記粒子状物質は透明であることが好ましい。具体的には、上記粒子状物質の可視光波長領域における全光線透過率(波長:450nm)は、特に限定されないが、70%以上が好ましく、特に好ましくは75%以上である。全光線透過率が上記範囲を下回ると、導電性繊維被覆粒子を含む硬化物の透明性が低下する場合がある。尚、上記粒子状物質の可視光波長領域における全光線透過率は、該粒子状物質の原料であるモノマーをガラス間で80〜150℃の温度領域で重合させて厚さ1mmの平板を得、当該平板の可視光波長領域における全光線透過率をJIS K7361−1に準拠して測定することにより求められる値であって、ガラスを測定した値を100%とし、それをブランクとして算出した値である。
【0089】
また、上記粒子状物質は柔軟性を有することが好ましく、各粒子の10%圧縮強度は例えば10kgf/mm2以下、好ましくは5kgf/mm2以下、特に好ましくは3kgf/mm2以下である。10%圧縮強度が上記範囲である粒子状物質を含む導電性繊維被覆粒子は加圧することにより微細な凹凸構造に追従して変形することができる。そのため、該導電性繊維被覆粒子を含有する樹脂組成物を微細な凹凸構造を有する形状に硬化した場合、該粒子状物質を細部にまで行き渡らせることができ、導電性が不良となる部分が発生することを防止することができる。
【0090】
上記粒子状物質の屈折率は、特に限定されないが、1.4〜2.7が好ましく、特に好ましくは1.5〜1.8である。尚、上記粒子状物質の屈折率は、該粒子状物質がプラスチック粒子の場合には、粒子状物質の原料であるモノマーをガラス間で80〜150℃の温度領域で重合させ、縦20mm×横6mmの試験片を切り出し、中間液としてモノブロモナフタレンを使用してプリズムと該試験片とを密着させた状態で、多波長アッベ屈折計(商品名「DR−M2」、(株)アタゴ製)を使用し、25℃、ナトリウムD線での屈折率を測定することにより求めることができる。
【0091】
また、上記粒子状物質は、樹脂組成物の硬化物との屈折率(25℃、波長589.3nmにおける)の差が小さいことが好ましく、導電性繊維被覆粒子を構成する粒子状物質と樹脂組成物の硬化物の屈折率差の絶対値は、例えば0.1以下(好ましくは0.05以下、特に好ましくは0.02以下)である。
すなわち、本発明の樹脂組成物と導電性繊維被覆粒子を構成する粒子状物質とは、下記式を満たすことが好ましい。
|粒子状物質の屈折率−樹脂組成物の硬化物の屈折率|≦0.1
【0092】
導電性繊維被覆粒子を構成する粒子状物質と樹脂組成物の硬化物の屈折率差を上記範囲にすることにより、透明性に優れ、ヘイズが例えば10%以下(好ましくは6%以下、さらに好ましくは3%以下)、全光線透過率が90%以上(好ましくは93%以上)の硬化物を得ることができる。尚、本発明の硬化物のヘイズは、JIS K7136に準拠して測定することができる。また、本発明の硬化物の可視光波長領域における全光線透過率(厚さ:10μm、波長:450nm)は、上記粒子状物質の全光線透過率の測定方法と同様に、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0093】
さらに、導電性繊維被覆粒子を構成する粒子状物質は、シャープな粒度分布を有すること(=粒子径のバラツキが少ないこと)が、より少ない使用量で優れた導電性を付与することができる点で好ましく、変動係数(CV値)が50以下であることが好ましい。尚、変動係数とは、標準偏差を平均粒径で除した値であり、粒子サイズの均一性の指標となる値である。
【0094】
上記粒子状物質は、公知乃至慣用の方法により製造でき、その製造方法は特に限定されない。例えば、金属粒子の場合には、CVD法や噴霧熱分解法等の気相法や、化学的還元反応による湿式法などにより製造できる。また、プラスチック粒子の場合には、例えば、上記で例示した樹脂(ポリマー)を構成するモノマーを懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法、分散重合法等の公知の方法により重合することにより製造できる。
【0095】
本発明においては市販品を使用することもできる。熱硬化性樹脂から成る粒子状物質としては、例えば、商品名「テクポリマー MBXシリーズ」、「テクポリマー BMXシリーズ」、「テクポリマー ABXシリーズ」、「テクポリマー ARXシリーズ」、「テクポリマー AFXシリーズ」(以上、積水化成品工業(株)製)、商品名「ミクロパールSP」、「ミクロパールSI」(以上、積水化学工業(株)製);熱可塑性樹脂から成る粒子状物質としては、例えば、商品名「ソフトビーズ」(住友精化(株)製)、商品名「デュオマスター」(積水化成品工業(株)製)等を使用することができる。
【0096】
(繊維状の導電性物質(導電性繊維))
導電性繊維被覆粒子を構成する導電性繊維は、導電性を有する繊維状の構造体(線状構造体)である。上記導電性繊維の形状は繊維状(ファイバー状)であればよく、特に限定されないが、その平均アスペクト比は、10以上(例えば、20〜5000)が好ましく、特に好ましくは50〜3000、最も好ましくは100〜1000である。平均アスペクト比が上記範囲を下回ると、少量の導電性繊維被覆粒子の配合によって優れた導電性を発現させることが困難となる場合がある。上記導電性繊維の平均アスペクト比は、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて十分な数(例えば、100個以上、好ましくは300個以上;特に、100個、又は300個)の導電性繊維について電子顕微鏡像を撮影し、これらの導電性繊維のアスペクト比を計測し、算術平均することにより求められる。尚、上記導電性繊維における「繊維状」の概念には、「ワイヤー状」、「ロッド状」等の各種の線状構造体の形状も含まれる。また、本明細書においては、平均太さが1000nm以下の繊維を「ナノワイヤ」と称する場合がある。
【0097】
上記導電性繊維の平均太さ(平均直径)は、特に限定されないが、1〜400nmが好ましく、特に好ましくは10〜200nm、最も好ましくは50〜150nmである。平均太さが上記範囲を下回ると、導電性繊維同士が凝集しやすく、導電性繊維被覆粒子の製造が困難となる場合がある。一方、平均太さが上記範囲を上回ると、粒子状物質を被覆することが困難となり、効率的に導電性繊維被覆粒子を得ることが困難となる場合がある。上記導電性繊維の平均太さは、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて十分な数(例えば、100個以上、好ましくは300個以上;特に、100個、又は300個)の導電性繊維について電子顕微鏡像を撮影し、これらの導電性繊維の太さ(直径)を計測し、算術平均することにより求められる。
【0098】
上記導電性繊維の平均長さは、特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、特に好ましくは5〜80μm、最も好ましくは10〜50μmである。平均長さが上記範囲を下回ると、粒子状物質を被覆することが困難となり、効率的に導電性繊維被覆粒子を得ることができなくなる場合がある。一方、平均長さが上記範囲を上回ると、導電性繊維同士がからまりやすくなる。上記導電性繊維の平均長さは、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて十分な数(例えば、100個以上、好ましくは300個以上;特に、100個、又は300個)の導電性繊維について電子顕微鏡像を撮影し、これらの導電性繊維の長さを計測し、算術平均することにより求められる。尚、導電性繊維の長さについては、直線状に伸ばした状態で計測すべきであるが、現実には屈曲しているものが多いため、電子顕微鏡像から画像解析装置を用いて導電性繊維の投影径及び投影面積を算出し、円柱体を仮定して下記式から算出するものとする。
長さ=投影面積/投影径
【0099】
上記導電性繊維を構成する材料(素材)は、導電性を有する素材であればよく、例えば、金属、半導体、炭素材料、導電性高分子等を挙げることができる。
【0100】
上記金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、コバルト、錫、及びこれらの合金等の公知乃至慣用の金属を挙げることができる。本発明においては、なかでも、導電性に優れる点で銀が好ましい。
【0101】
上記半導体としては、例えば、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等の公知乃至慣用の半導体を挙げることができる。
【0102】
上記炭素材料としては、例えば、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の公知乃至慣用の炭素材料を挙げることができる。
【0103】
上記導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びこれらの誘導体(例えば、共通するポリマー骨格にアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エチレンジオキシ基等の置換基を有するもの;具体的には、ポリエチレンジオキシチオフェン等)等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、ポリアセチレン、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が好ましい。尚、上記導電性高分子には、公知乃至慣用のドーパント(例えば、ハロゲン、ハロゲン化物、ルイス酸等のアクセプター;アルカリ金属、アルカリ土類金属等のドナー等)が含まれていてもよい。
【0104】
本発明の導電性繊維としては導電性ナノワイヤが好ましく、特に、金属ナノワイヤ、半導体ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ、及び導電性高分子ナノワイヤからなる群より選択される少なくとも一種の導電性ナノワイヤが好ましく、特に導電性に優れる点で銀ナノワイヤが最も好ましい。
【0105】
上記導電性繊維は、公知乃至慣用の製造方法により製造することができる。例えば、上記金属ナノワイヤは、液相法や気相法等により製造することができる。より具体的には、銀ナノワイヤは、例えば、Mater.Chem.Phys.2009,114,p333−338や、Adv.Mater.2002,14,p833−837、Chem.Mater.2002,14,p4736−4745、特表2009−505358号公報に記載の方法により製造することができる。また、金ナノワイヤは、例えば、特開2006−233252号公報に記載の方法により製造することができる。また、銅ナノワイヤは、例えば、特開2002−266007号公報に記載の方法により製造することができる。また、コバルトナノワイヤは、例えば、特開2004−149871号公報に記載の方法により製造することができる。更に、半導体ナノワイヤは、例えば、特開2010−208925号公報に記載の方法により製造することができる。上記炭素繊維は、例えば、特開平06−081223号公報に記載の方法により製造することができる。上記カーボンナノチューブは、例えば、特開平06−157016号公報に記載の方法により製造することができる。上記導電性高分子ナノワイヤは、例えば、特開2006−241334号公報、特開2010−76044号公報に記載の方法により製造することができる。上記導電性繊維としては、市販品を使用することも可能である。
【0106】
導電性繊維被覆粒子は、上述の粒子状物質と導電性繊維とを溶媒中で混合することにより製造することができる。導電性繊維被覆粒子の製造方法として、具体的には、下記の(1)〜(4)の方法等を挙げることができる。
(1)上記粒子状物質を溶媒に分散させた分散液(「粒子分散液」と称する)と、上記導電性繊維を溶媒に分散させた分散液(「繊維分散液」と称する)とを混合し、必要に応じて溶媒を除去して、導電性繊維被覆粒子(又は該導電性繊維被覆粒子の分散液)を得る。
(2)上記粒子分散液に上記導電性繊維を配合し、混合した後、必要に応じて溶媒を除去して、導電性繊維被覆粒子(又は該導電性繊維被覆粒子の分散液)を得る。
(3)上記繊維分散液に上記粒子状物質を配合し、混合した後、必要に応じて溶媒を除去して、導電性繊維被覆粒子(又は該導電性繊維被覆粒子の分散液)を得る。
(4)溶媒に上記粒子状物質及び上記導電性繊維を配合し、混合した後、必要に応じて溶媒を除去して、導電性繊維被覆粒子(又は該導電性繊維被覆粒子の分散液)を得る。
【0107】
導電性繊維被覆粒子を製造する際に使用される溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル等を挙げることができる。これらは一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて(即ち、混合溶媒として)使用することができる。本発明においては、なかでも、アルコール、ケトンが好ましい。
【0108】
また、上記樹脂組成物が液状であれば、これを上記溶媒として使用することも可能である。液状の樹脂組成物を溶媒として使用することにより、溶媒を除去する工程を省略することができる。
【0109】
上記溶媒の粘度は、特に限定されないが、導電性繊維被覆粒子を効率的に製造することができる点で、25℃における粘度が10cP以下(例えば、0.1〜10cP)であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜5cPである。尚、溶媒の25℃における粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「VISCONIC」、(株)トキメック製)を用いて測定することができる(ローター:1°34’×R24、回転数:0.5rpm、測定温度:25℃)。
【0110】
上記溶媒の1気圧における沸点は、導電性繊維被覆粒子を効率的に製造することができる点で、200℃以下が好ましく、特に好ましくは150℃以下、最も好ましくは120℃以下である。
【0111】
溶媒中で粒子状物質と導電性繊維とを混合する際の上記粒子状物質の含有量は、溶媒100重量部に対して、例えば0.1〜50重量部程度、好ましくは1〜30重量部である。粒子状物質の含有量を上記範囲に制御することにより、導電性繊維被覆粒子をより効率的に生成することができる。
【0112】
溶媒中で粒子状物質と導電性繊維とを混合する際の上記導電性繊維の含有量は、溶媒100重量部に対して、例えば0.1〜50重量部程度、好ましくは1〜30重量部である。導電性繊維の含有量を上記範囲に制御することにより、導電性繊維被覆粒子をより効率的に生成することができる。
【0113】
溶媒中で粒子状物質と導電性繊維とを混合する際の上記粒子状物質と上記導電性繊維の割合は、粒子状物質の表面積と導電性繊維の投影面積との比[表面積/投影面積]が、例えば100/1〜100/100程度、好ましくは100/10〜100/50となるような割合であることが好ましい。上記範囲で混合することにより、導電性繊維被覆粒子をより効率的に生成することができる。尚、上記粒子状物質の表面積は、BET法(JIS Z8830に準拠)により求めた比表面積に粒子状物質の質量(使用量)を乗ずる方法により求められる。また、上記導電性繊維の投影面積は、上述のように、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて十分な数(例えば、100個以上、好ましくは300個以上;特に、100個、又は300個)の導電性繊維について電子顕微鏡像を撮影し、画像解析装置を用いてこれらの導電性繊維の投影面積を算出し、算術平均することにより求められる。
【0114】
粒子状物質と導電性繊維とを混合後、溶媒を除去することによって、導電性繊維被覆粒子を固体として得ることができる。溶媒の除去は、特に限定されず、例えば、加熱、減圧留去等の公知乃至慣用の方法により実施できる。尚、溶媒は必ずしも除去する必要はなく、例えば、導電性繊維被覆粒子の分散液としてそのまま使用することもできる。
【0115】
導電性繊維被覆粒子は、上述のように、原料(粒子状物質及び導電性繊維)を溶媒中で混合することによって製造することができ、複雑な工程を必要としないため、製造コストの面で有利である。
【0116】
特に、粒子状物質と導電性繊維の組み合わせとして、平均粒子径L[μm]の粒子状物質と平均長さL×0.5[μm]以上(好ましくはL×1.0[μm]以上、最も好ましくはL×1.5[μm]以上)の導電性繊維を使用することによって、より効率的に導電性繊維被覆粒子を製造することができる。特に、真球状又は略真球状の粒子状物質の場合には、平均周長M[μm]の粒子状物質と平均長さ(M×1/6)[μm]以上(好ましくは、M[μm]以上)の導電性繊維を使用することが好ましい。尚、上記粒子状物質の平均周長は、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて十分な数(例えば、100個以上、好ましくは300個以上;特に、100個、又は300個等)の粒子状物質について電子顕微鏡像を撮影し、これらの粒子状物質の周長を計測し、算術平均することにより求められる。
【0117】
導電性繊維被覆粒子を構成する粒子状物質と導電性繊維の割合は、粒子状物質の表面積と導電性繊維の投影面積との比[表面積/投影面積]が、例えば100/1〜100/100程度(特に100/10〜100/50)となるような割合であることが、硬化物の透明性を確保しつつ、より効率的に導電性を付与することができる点で好ましい。尚、上記粒子状物質の表面積及び導電性繊維の投影面積は、それぞれ上述の方法により求められる。
【0118】
導電性繊維被覆粒子は上記構成を有するため、硬化物に少量を添加することで優れた導電性(特に、厚み方向への導電性)を付与することができ、透明性と導電性に優れた硬化物を形成することができる。
【0119】
そして、導電性繊維被覆粒子が柔軟性を有する場合(例えば、10%圧縮強度が3kgf/mm2以下の場合)は、当該導電性繊維被覆粒子を含む樹脂組成物を微細な凹凸を有する形状に成形した際、導電性繊維被覆粒子が前記凹凸構造に追従して変形し細部にまで行き渡るため、導電性が不良となる部分が発生することを防止することができ、導電性能に優れた硬化物を形成することができる。
【0120】
樹脂組成物における粒子状物質(導電性繊維被覆微粒子に含まれる粒子状物質)の含有量(配合量)は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば0.09〜6.0重量部程度、好ましくは0.1〜4.0重量部、より好ましくは0.3〜3.5重量部、さらに好ましくは0.3〜3.0重量部、特に好ましくは0.3〜2.5重量部、最も好ましくは0.5〜2.0重量部である。前記粒子状物質の含有量が上記範囲を下回ると、用途によっては、得られる硬化物の導電性が不十分となる場合がある。一方、前記粒子状物質の含有量が上記範囲を上回ると、用途によっては、得られる硬化物の透明性が不十分となる場合がある。
【0121】
樹脂組成物における前記粒子状物質の含有量は、樹脂組成物の全量(100体積%)に対して、例えば0.02〜7体積%程度、好ましくは0.1〜5体積%、特に好ましくは0.3〜3体積%、最も好ましくは0.4〜2体積%である。
【0122】
樹脂組成物における導電性繊維の含有量(配合量)は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば0.01〜1.0重量部程度、好ましくは0.02〜0.8重量部、より好ましくは0.03〜0.6重量部、特に好ましくは0.03〜0.4重量部、最も好ましくは0.03〜0.2重量部である。前記導電性繊維の含有量が上記範囲を下回ると、用途によっては、得られる硬化物の導電性が不十分となる場合がある。一方、前記導電性繊維の含有量が上記範囲を上回ると、用途によっては、得られる硬化物の透明性が不十分となる場合がある。
【0123】
樹脂組成物における前記導電性繊維の含有量は、樹脂組成物の全量(100体積%)に対して、0.01〜1.1体積%が好ましく、より好ましくは0.02〜0.9体積%、特に好ましくは0.03〜0.7体積%、最も好ましくは0.03〜0.4体積%である。
【0124】
<樹脂組成物、およびその製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上述の化合物(A)、線状重合体(B)、重合開始剤(C)、及び必要に応じてその他の成分(無機フィラー、シランカップリング剤、導電性材料等の添加剤)を、均一に混合することにより製造することができる。本発明の樹脂組成物を得るにあたっては、各成分を自公転式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の一般的に知られる混合用機器を使用してなるべく均一になるように、撹拌、溶解、混合、分散等を行うことが望ましい。尚、各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。
【0125】
本発明の樹脂組成物は、線状重合体(B)の重量平均分子量及び配合量を適宜調整することにより、25℃における粘度を例えば15〜1000000mPa・s(好ましくは15〜100000mPa・s、特に好ましくは30〜15000mPa・s、最も好ましくは30〜10000mPa・s)の範囲で任意にコントロールすることができる。そのため、用途に応じた粘度を有する樹脂組成物を容易に製造することができる。尚、樹脂組成物の粘度はE型粘度計又はレオメーターを使用して測定することができる。
【0126】
また、本発明の樹脂組成物は、線状重合体(B)の重量平均分子量及び配合量を適宜調整することにより、硬化収縮率を例えば3〜8%の範囲で任意に調整することができる。そのため、用途に応じた硬化収縮率を有する樹脂組成物を容易に製造することができる。尚、硬化収縮率は、下記式から算出できる。
硬化収縮率(%)=[(硬化物の比重−硬化前の樹脂液の比重)/硬化物の比重]×100
【0127】
本発明の樹脂組成物は、カチオンをトラップしてカチオン重合の進行を抑制する作用を有する化合物(A)を含有するため、重合開始剤(C)として光カチオン重合開始剤を含有する場合は、光照射によりカチオンを発生させるのみでは硬化反応は開始せず、その後加熱処理を施してトラップされたカチオンを放出することにより硬化を開始させることができる。すなわち、硬化遅延性を発揮することができる。そのため、有機EL素子の封止材として使用する場合に、予め光照射を施した樹脂組成物を有機EL素子に適用し、その後加熱処理を施すことにより、直に光に曝されることによる有機EL素子の劣化を防止しつつ、有機EL素子を封止することができる。
【0128】
<硬化性樹脂フィルム>
本発明の硬化性樹脂フィルムは、上記樹脂組成物(特に、線状重合体(B)の含有量が30〜70重量%程度の樹脂組成物)を成形工程[例えば、上記樹脂組成物を溶媒に溶解し、剥離紙等の上に塗布して乾燥(例えば、50〜150℃程度で1〜10分程度乾燥)]に付して得られる。特に、樹脂組成物が重合開始剤(C)として光カチオン重合開始剤を含有する場合は、成形工程後に、必要に応じて光照射工程を設けることができる。
【0129】
本発明の硬化性樹脂フィルムは光照射及び/又は加熱処理を施すことにより(例えば、重合開始剤(C)として光カチオン重合開始剤を含有する樹脂組成物を成形して得られた硬化性樹脂フィルムの場合は、光照射及び加熱処理を施すことにより)、フィルム状硬化物を得ることができる。
【0130】
本発明の樹脂組成物は、カチオンをトラップしてカチオン重合の進行を抑制する作用を有する化合物(A)を含有するため、重合開始剤(C)として光カチオン重合開始剤を含有する硬化性樹脂フィルムは、光照射によりカチオンを発生させるのみでは硬化反応は開始せず、その後加熱処理を施してトラップされたカチオンを放出することにより硬化を開始、進行させ、完全に硬化させてフィルム状硬化物を得ることができる。すなわち、遅延硬化性を発揮することができる。そのため、有機EL素子の封止材として使用する場合に、予め光照射を施した硬化性樹脂フィルムを有機EL素子に適用し、その後加熱処理を施すことにより、直に光に曝されることによる有機EL素子の劣化を防止しつつ、有機EL素子を封止することができる。
【0131】
本発明の硬化性樹脂フィルムの厚みは、用途に応じて適宜調整することができ、例えば、封止用シートとして使用する場合は、例えば0.1〜100μm程度(好ましくは1〜50μm)である。また、本発明の硬化性樹脂フィルムの面方向における幅及び長さは特に制限されることがなく、用途に応じて適宜調整することができる。
【0132】
本発明の硬化性樹脂フィルムは、表面の保護やブロッキング防止のために、その表面に剥離ライナーを貼り合わせても良い。剥離ライナーは、本発明の硬化性樹脂フィルムを使用する際に剥がされるものである。
【0133】
剥離ライナーとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン系等の剥離剤により表面処理された紙やプラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂からなるプラスチックフィルム);ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材等を1種又は2種以上使用することができる。
【0134】
<硬化物>
本発明の樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムに光照射及び/又は加熱処理を施すことにより硬化物(樹脂硬化物、硬化性樹脂フィルムを硬化させた場合はフィルム状の樹脂硬化物)を得ることができる。本発明の樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムを光照射により硬化させる場合には、例えば、上記樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムに対して、水銀ランプ等で1000mJ/cm2以上の光を照射することで硬化させることができる。また、本発明の樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムを加熱処理により硬化させる場合には、例えば、上記樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムを、温度50〜200℃(より好ましくは50〜170℃、さらに好ましくは50〜150℃)で、10〜600分間(より好ましくは10〜360分間、さらに好ましくは15〜180分間)加熱することで硬化させることができる。加熱する温度(硬化温度)や時間(硬化時間)が上記範囲を下回ると、樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムの硬化が不十分となる場合がある。一方、硬化温度や硬化時間が上記範囲を上回ると、樹脂成分の分解が起きる場合がある。本発明の樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムの硬化条件は、種々の条件に依存するが、硬化温度が高い場合は硬化時間を短く、硬化温度が低い場合は硬化時間を長くする等により、適宜調整することができる。本発明の樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムを硬化させることにより、高屈折率を有する硬化物を得ることができる。
【0135】
本発明の樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムを硬化して得られる硬化物の、25℃における波長589.3nmの光(ナトリウムD線)に対する屈折率は、例えば1.70以上、好ましくは1.70〜1.74、特に好ましくは1.71〜1.74である。尚、硬化物の屈折率は、例えば、JIS K7142に準拠する方法や、プリズムカプラを用いる方法により測定することができる。
【0136】
本発明の樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムは、用途に応じた硬化収縮率を有し、且つ高屈折率を有する硬化物を形成する。このため、例えば、レンズ(高屈折率レンズ)、液状又はフィルム状封止材(有機EL素子用封止材、LED用封止材、太陽電池用封止材)、各種屈折率調整層、光取り出し層、暗部貼り合わせ接着剤(接着剤、シール材)等として好ましく使用できる。特に、本発明の樹脂組成物又は硬化性樹脂フィルムを、有機EL装置、LED装置、太陽電池等の電子デバイスを製造する工程で封止材として使用すると、封止材と高屈折率部材との界面における光の反射を抑制することができ、光の取り出し効率を向上することができ、高効率、高輝度、長寿命を有する電子デバイスが得られる。
【実施例】
【0137】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0138】
合成例1
線状重合体(b-4)[ポリ(スチレン−N−ビニルカルバゾール)]の合成
スチレン(商品名「S0095」、東京化成(株)製)及びN−ビニルカルバゾール(商品名「V0021」、東京化成(株)製)を各2g秤量し、80℃で10分加熱撹拌してモノマー混合溶液を得た。
得られたモノマー混合溶液を25℃まで冷却し、その後、熱ラジカル重合開始剤(商品名「パーブチルO」、日油(株)製)を0.4g添加して混合溶液を調製し、該混合溶液を窒素雰囲気下、95℃で三つ口フラスコにて撹拌中の蒸留水(40g)に全量滴下し、95℃で2時間重合反応させて重合物を得た。
得られた重合物を濾集し、乳鉢で粉砕し、未反応モノマーをメタノールで洗浄した後に真空乾燥して線状重合体(b-4)を2.4g得た。線状重合体(b-4)の共重合比(重量%)はH1−NMRよりカルバゾール:スチレン=86:14であった。またGPCより重量平均分子量(MW)は56500であった。
【0139】
実施例1
化合物(a-1)89重量部、線状重合体(b-1)10重量部、及び重合開始剤(c-1)1重量部を、自公転式撹拌脱泡装置(型式:AR−250、(株)シンキー製)内に投入して撹拌し、樹脂組成物(1)(25℃における粘度:48mPa・s)を得た。尚、樹脂組成物の粘度はE型粘度計を使用して測定した。
得られた樹脂組成物(1)を金型に注型し、200W/cmの高圧水銀灯で10cmの距離から紫外線を照射(照射量:1600mJ/cm2)し、その後、加熱処理(100℃、60分)を施して硬化物(1)(厚み:100μm)を得た。
【0140】
実施例2〜11、参考例、比較例1〜4
下記表に示す組成に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物及び硬化物を作製した。
尚、実施例9、10及び比較例1、2で得られた樹脂組成物の硬化は、100℃の定温送風オーブンにて1時間加熱することにより行った。
【0141】
<屈折率の測定>
得られた硬化物(厚み:100μm)について、Model 2010プリズムカプラ(メトリコン社製)を使用して、25℃において、589.3nmの光の屈折率を測定した。
【0142】
<硬化収縮率の測定>
樹脂組成物を硬化させて硬化物を形成した際の硬化収縮率を、比重法により算出した。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
上記表より、本発明の樹脂組成物(実施例)は、硬化して得られる硬化物の屈折率を高く維持しつつ、硬化収縮率及び粘度を広い範囲において任意にコントロールすることができることがわかる。そのため、本発明の樹脂組成物は、電子デバイスやレンズ等の様々な用途に好適に使用することができる。
【0146】
実施例及び比較例で用いた化合物は、以下の通りである。
[化合物(A)]
a-1:ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド、分子量:302、住友精化(株)製、商品名「MPV」
[線状重合体(B)]
b-1:ポリ−N−ビニルカルバゾール、重量平均分子量:8500、丸善石油化学(株)製、商品名「PVCZ 8K」
b-2:ポリ−N−ビニルカルバゾール、重量平均分子量:45000、丸善石油化学(株)製、商品名「PVCZ」
b-3:ポリ−N−ビニルカルバゾール、重量平均分子量:400000、東京化成(株)製、商品名「P0656」
b-4:合成例1で得られたポリ(スチレン−N−ビニルカルバゾール)、重量平均分子量:56500
[他の重合性化合物]
d-1:石油樹脂、JX日鉱日石エネルギー(株)製、商品名「ネオポリマー150」
d-2:フルオレンアクリレート、大阪ガスケミカル(株)製、商品名「オグソールEA−0200」
d-3:フルオレン系エポキシ樹脂、大阪ガスケミカル(株)製、商品名「PG−100」
d-4:ビス(4−グリシジルチオフェニル)スルフィド、住友精化(株)製、商品名「MPG」
[重合開始剤(C)]
c-1:光カチオン重合開始剤、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート
c-2:熱カチオン重合開始剤、4−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、三新化学工業(株)製、商品名「SI−B3」
c-3:熱ラジカル重合開始剤、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、日油(株)製、商品名「パーブチルO」
c-4:光ラジカル重合開始剤、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、BASF社製、商品名「イルガキュア819」
【0147】
実施例12
上記化合物(a-1)60重量部、線状重合体(b-3)30重量部、及び重合開始剤(c-1)1重量部を、テトラヒドロフラン100重量部に溶解して樹脂組成物(12)(溶液状)を得た。
前記樹脂組成物(12)をPETフィルム上にアプリケーターを使用して塗工して塗膜を形成し、得られた塗膜を80℃で1時間乾燥して、硬化性樹脂フィルムを得た。
得られた硬化性樹脂フィルムの上に環状オレフィンコポリマー(COC)の離型フィルムを重ね、離形フィルム越しに200W/cmの高圧水銀灯で10cmの距離から紫外線を照射(照射量:1600mJ/cm2)し、その後加熱処理(100℃、60分)を施した。その後、離型フィルムとPETフィルムを剥がして、フィルム状の硬化物(厚み:100μm、屈折率:1.725、性状:均一透明固体)を得た。
図1