(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内包シートが中詰材の全体を露出させずに被覆可能なシートであり、外袋の展開時の平面積より大きな平面積を有することを特徴とする、請求項1に記載の水工用大型土のう。
前記外袋が開口部の網目にそれぞれ挿通した口縛りロープと無端状の吊りロープとを具備し、外袋の開口部の中心に対して前記口縛りロープが吊りロープの内側に位置することを特徴とする、請求項1に記載の水工用大型土のう。
前記外袋と内包シートが透水性および伸縮性を併有する素材からなり、内包シートの伸び率が外袋の伸び率より大きいことを特徴とする、請求項1又は3に記載の水工用大型土のう。
前記複数の結束手段が面ファスナー、Cリンク、カラビナ、結束バンド、結束ロープ、結束ベルトの何れかひとつであることを特徴とする、請求項1又は5に記載の水工用大型土のう。
【背景技術】
【0002】
特許文献1等に開示されているように、巾着状の袋体に中詰材を直接充填した洗掘防止用の大型土のうが広く知られている。
特許文献2には、中詰土砂を充填した内袋と、内袋を収容する巾着状の外袋とを組み合せて袋体を二重にした大型土のうが開示されている。
内袋は中詰土砂の流出を規制できる不織布製の袋体であり、中詰土砂を充填した後に開口部を口縛りロープ等で閉じている。
外袋は目の粗い編地素材で形成した袋体であり、内部に内袋を収容した後に外袋の開口部に口縛りロープを複数回巻き付けて閉じることで大型土のうを製作している。
特許文献2に記載の大型土のうは、内袋と外袋が夫々分離独立した構造となっている。
大型土のうの不陸追従性を確保するために、大型土のうを吊り上げたときに土のうの上方に高さの25%〜80%の未充填空間を形成するように、中詰土砂を充満させないように充填している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示された大型土のうには次のような問題点がある。
<1>内袋と外袋が構造的に分離独立していると共に、中詰土砂が緩い状態で袋詰めされている。
そのため、激流河川の根固め工等に用いると、内袋内の中詰土砂の土粒子が下流側へ移動することに伴い中詰土砂が球状に変形し、球状に変形した内袋が外袋の内部で転動する。
内袋が転動すると外袋もこれに追従するため、大型土のうが下流側へ向けて回転移動を生じ易い。
<2>複数の大型土のうを水流方向に沿って縦列に敷設した場合、上流側の大型土のうが転動して下流側の大型土のうを乗り越える「乗り越え現象」が生じる。この際、上流側の大型土のうが下流側の大型土のうを巻き込んで転動する。
<3>中詰土砂を用いるために土粒子が透過しないように内袋の透水率が低く設定してあり、さらに中詰土砂自体の空隙率が低いために、大型土のう全体の透水性が低いものとなる。
そのため、大型土のうによる洗掘、浸食防止効果を十二分に発揮できていない。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは少なくともつぎのひとつの水工用大型土のうを提供することにある。
<1>大型土のうの構成を簡略化して大型土のうの製作コストを削減すること。
<2>大型土のうの転動防止効果を改善しつつ、大型土のうの安定姿勢を長期間に亘って持続できること。
<3>従来の難透水性構造の大型土のうと比べて洗掘防止及び浸食防止効果を改善できること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部に中詰材を充填して封入する水工用大型土のうであって、透水性を有する素材からなり、巾着袋状を呈する外袋と、前記外袋に収容され、透水性を有する内包シートと、外袋及び内包シートの重合する一部を予め結束して転動不能に一体化する複数の結束手段と、前記内包シートに収容させ、透水性を有する中詰材とを具備し、前記中詰材
の全体が
シートの形態で包み込まれた内包シートを介して外袋が中詰材を抱持して拘束することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記内包シートが中詰材の全体を露出させずに被覆可能なシートであり、外袋の展開時の平面積より大きな平面積を有する。
本発明の他の形態において、前記外袋が開口部の網目にそれぞれ挿通した口縛りロープと無端状の吊りロープとを具備し、外袋の開口部の中心に対して前記口縛りロープが吊りロープの内側に位置する。
本発明の他の形態において、前記外袋と内包シートが透水性および伸縮性を併有する素材からなり、内包シートの伸び率が外袋の伸び率より大きい関係にある。
本発明の他の形態において、前記複数の結束手段が重合する外袋の胴部と内包シートとの間を結束している。
本発明の他の形態において、前記複数の結束手段が面ファスナー、Cリンク、カラビナ、結束バンド、結束ロープ、結束ベルトの何れかひとつを採用できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は次の効果の少なくともひとつを得ることができる。
<1>中詰材を内包シートに包み込むようにしたので、口縛りロープを有する巾着状の内袋が不要となる。
そのため、水工用大型土のうの製作が容易であると共に、製作コストを削減できる。
<2>複数の結束手段を介して内包シートと外袋体とを転動不能に一体化してあるので、水工用大型土のうの転動防止効果が格段に向上するだけでなく、土のうの乗り越え現象を抑制して水工用大型土のうの安定姿勢を長期間に亘って持続できる。
<3>水工用大型土のうを構成する外袋、内包シート及び中詰材が良好な透水性を有しているので、水工用大型土のう全体の透水性が高くなる。
そのため、従来の難透水性構造の大型土のうと比べて洗掘防止及び浸食防止効果が格段に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照しながら本発明について説明する。
【0010】
<1>水工用大型土のう(
図1)
水工用大型土のう10は、透水性を有する素材からなり、巾着袋状を呈する外袋20と、外袋20に収容され、透水性を有する素材からなる単数又は複数の内包シート30と、外袋20及び内包シート30の重合部を結束して一体化する複数の結束手段50と、内包シート30に収容して抱持させる空隙率の高い中詰材40とを具備する。
内包シート20は中詰材40を単独で拘束するものではなく、外袋30が内包シート20を介して中詰材40を抱持して拘束する構造となっている。
【0011】
<2>外袋
外袋20は透水性と伸縮性を有する編地素材を用いて製作した巾着袋状の有底袋体であり、その開口部に沿って網目に挿通して無端の口縛りロープ21と吊りロープ22が取り付けてある。
外袋20は内包シート20を介して中詰材40を拘束する袋体である。
外袋20の容積は使途に応じて適宜選択するが、実用上は1m
3〜5m
3の範囲が好適である。
【0012】
<2.1>外袋の素材例
外袋20の編地素材としては、例えば網糸を一重又は二重以上に編成した無結節編地(無結節網、ラッセル網)を使用でき、格子状の網目を有する。
また、編地を編成する編糸としては、例えばポリエステル繊維糸、ポリアミド繊維糸、ポリアクリル繊維糸等の合繊繊維糸、又は綿糸、麻糸等の天然繊維糸等を単独又は混繊して使用できる。
実用上はポリエチレン(400d/90本、強度140kgf/2脚)等の合成繊維糸を二重に編成したラッセル網を使用できる。
外袋20の網目は中詰材40を漏出しない寸法に設定してあり、実用上は37.5mm×37.5mmに形成してある。
【0013】
<2.2>ロープ類
図3を参照して説明すると、外袋20は開口部の網目にそれぞれ挿通した口縛りロープ21と無端状の吊りロープ22とを具備する。
口縛りロープ21は外袋20の開口部の端部の網目に挿通して、その両端を結んで無端状となっている。
吊りロープ22は、外袋20の開口部に対して口縛りロープ21の下方位置の網目に挿通して、その両端を結んで無端状となっている。
口縛りロープ21は外袋20の開口部の中心に対して吊りロープ22の内方側(開口端部側)に位置する。
口縛りロープ21を吊りロープ22の内方側に位置させたのは、吊りロープ22の影響を受けずに外袋20の開口部を閉鎖するためと、開口部の封鎖箇所が出っ張りとなることを回避するためである。
吊りロープ22は吊り上げ時に開口部の複数箇所をループ状に引き出して使用する。
【0014】
<3>内包シート
内包シート30は透水性と伸縮性を有する編地素材からなる布状物又はシート状物である。
本例では一枚の内包シート30を使用する形態を示すが、帯状を呈する内包シート30の中央を交差させて複数の内包シート30を重合させて使用することも可能である。
【0015】
<3.1>内包シートのサイズと形状
内包シート30は中詰材40の全体を露出させずに包み込みが可能なシートであり、外袋20の展開時の平面積より大きな平面積を有していればよい。
内包シート30の平面形状は特に制限はなく、例えば正方形等の多角形や星形、円形、楕円形等であってもよい。
【0016】
<3.2>内包シートの素材例
内包シート30は例えば、編地、織物、不織布、樹脂成形素材等を使用できる。
編地素材を使用する場合、ナイロン(1260d/90本、強度45kgf/2脚)合成繊維糸で一重又は二重以上に編成した無結節編地(無結節網、ラッセル網)が実用的である。
内包シート30の網目は中詰材40を漏出しない寸法に設定してある。実用的には中詰材40に40mmの骨材を用いた場合、内包シート30の網目は例えば37.5mm×37.5mmに形成してある。
内包シート30を袋加工せずにそのまま使用するのは、面倒な縫製による袋加工をなくしてコストを削減するためと、中詰材40の投入作業と封入作業を容易に行うためである。
【0017】
<3.3>外袋と内包シートの伸び率の関係
前記した外袋20と内包シート30はラッセル編地で形成することから適度の伸縮性を有する。
内包シート30の伸び率を外袋20の伸び率より大きい関係にしておくと、外袋20に対する内包シート30の変形追従性が高くなる。
【0018】
<4>中詰材
中詰材40は土砂と比べて空隙率の大きな硬質粒塊体が使用可能であり、例えば砂利、砕石、玉石等の自然骨材、コンクリートガラ、各種廃棄物の焼成体等の使途に応じて適宜選択する。
【0019】
<5>結束手段
外袋20と内包シート30は複数の結束手段50を介して一体に連結してある。
外袋20と内包シート30を一体化したのは、外袋20内で中詰材40と共に内包シート30が転動するのを拘束するためである。
ここで「一体化」とは、外袋20と内包シート30とを面接触させて固定することを指すのではなく、重合させた外袋20と内包シート30の複数箇所をルーズな状態(外袋20と内包シート30の自由な変位を許容する状態)で部分的に固定することを意味する。
結束手段50をルーズに結束するのは、結束手段50に過大な応力を作用させないためである。
【0020】
<5.1>結束手段の設置位置
本例では水工用大型土のう10の胴部中央の水平位置に間隔を隔てて複数の結束手段50を設置した形態を示すが、水工用大型土のう10の胴部に多段的に設置してもよい。
水工用大型土のう10を吊り上げたときに、結束手段50に過大な応力が作用しない位置に設置することが肝要である。
【0021】
<5.2>結束手段の例
結束手段50としては、例えば面ファスナー、Cリンク、カラビナ、結束バンド(インシュロック)、結束ロープ、結束ベルト等の公知の結束資材を用いることができる。
外袋20と内包シート30が共に編地素材からなるため、重合させた編地素材の網目に結束手段50を挿通して巻き掛けるだけの簡単な作業で結束できる。
【0022】
[水工用大型土のうの製作方法]
つぎに
図4を参照しながら型枠60を用いた水工用大型土のう10の製作方法について説明する。
【0023】
<1>外袋と内包シートの組立
以下の要領で外袋20と内包シート30を一体に組み立てる。
【0024】
<1.1>外袋のセット(
図4(a))
上下を開放し、逆円錐台形(すり鉢形)を呈する型枠60を準備する。
型枠60の内部に外袋20を収容する。大きく口開きした外袋20の開口部近くを外方へ折り返して型枠60の上口へ被せる。
【0025】
<1.2>内包シートのセット(
図4(b))
つぎに外袋20内へ挿入した内包シート30を型枠60の内面形状に沿うように展開して上口を開放したすり鉢形状に形成する。
内包シート30を型枠60の形状に合わせて展開する際、内包シート30の一部を重合する等して湾曲させる。
内包シート30の湾曲部は、連結ピン、ロープや紐、接着剤等を用いて暫定的に固定してもよい。
すり鉢形状に形成した内包シート30の各隅部は型枠60の外方へ花びら状に飛び出ていて、型枠60から飛び出した内包シート30の部位が残余シート部31として形成される。
【0026】
<1.3>結束手段の取り付け(
図4(b))
つぎに外袋20と内包シート30の間に複数の締結手段50を取り付けて外袋20と内包シート30とを一体化する。
尚、本例では型枠60内で外袋20と内包シート30の組み立てを行う場合について説明したが、外袋20と内包シート30とを予め一体に組み立てたものを型枠60内にセットすることも可能である。
【0027】
<2>中詰材の封入
以下の要領で内包シート30内に所定量の中詰材40を投入して封入する。
【0028】
<2.1>中詰材の投入(
図4(b))
花弁状に外方へ向けて広がった内包シート30の上口を通じて中詰材40を投入する。
内包シート30の開口部にはロープ類が設けられていないので、内包シート30の上口の開口作業を簡単に行える。
さらに複数の結束手段50が内包シート30を外袋20に一体化しているので、中詰材40の投入時における内包シート30の引き込みを効果的に防止できる。
【0029】
<2.2>内包シートによる被覆封止(
図4(c))
中詰材40の投入後、複数の残余シート部31を内方へ折り畳んで中詰材40を被覆することで、短時間のうちに中詰材40を投入して封止できる。
複数の残余シート部31は中詰材40の全体を被覆可能な寸法になっているので、複数の残余シート部31を互いに重ね合せるだけの簡単な作業で中詰材40を封止できる。
内包シート30は袋体の形態ではなくシートの形態であるため、中詰材40の全体を隙間なく被覆することが可能である。
尚、残余シート部31は固定せずに被覆状態のままとしてもよいし、各残余シート部31の寸法が大きい場合は残余シート部31の端部を互いに真結びしてもよい。
【0030】
<3>外袋の口縛り(
図5)
口縛りロープ21による外袋20の開口部の閉鎖方法は公知である。
すなわち、吊りロープ22の複数箇所を引き出したループ部にクレーン等のフックを吊り掛け、外袋20の底部が地面から少し浮上る程度まで吊り上げて外袋20の編地の弛みをなくす。
吊りロープ22に張力を与えた状態で、吊りロープ22の上方に位置する口縛りロープ21を締め付けて外袋20の開口部を閉じる。
フックの吊り上げにより外袋20の開口部が吊りロープ22によって絞り込まれて縮小されるので、その上方近くの弛んだ口縛りロープ21の二箇所を引き出して絞り込み、引き出した口縛りロープ21の余長部同士を結縛して水工用大型土のう10の製作を完了する。
【0031】
<4>脱型(
図4(d))
型枠60から水工用大型土のう10を脱型する。
脱型方法としては、例えば本例のように型枠60が逆円錐台形を呈する場合は、水工用大型土のう10をそのまま吊り上げることで脱型し、型枠60が分解可能な構造であれば、型枠60を分解することで脱型できる。
このようにして製作した水工用大型土のう10は河川や海岸等に敷設する。
水工用大型土のう10では中詰材40を覆う内包シート20が中詰材40を直接拘束するのではなく、外袋30が内包シート20を通じて中詰材40を拘束する構造となる。
また水工用大型土のう10では外袋20を満たすように中詰材40が封入されているため、外袋20を吊り上げたときに外袋20の上部に大きな未充填空間が形成されない。
そのため、水工用大型土のう10を敷設した場合、従来の大型土のうと比べて大型土のうの扁平度合が小さくなる。
また内包シート20を抱持した外袋20が残余シート部31の捲れを防止するので、水工用大型土のう10の使用中に中詰材40が露出することはない。
【0032】
[水工用大型土のうの特性]
つぎに
図6を参照しながら水工用大型土のう10の主な特性について説明する。
【0033】
<1>洗掘防止及び浸食防止
中詰材に土砂を用いた従来の大型土のうは、袋体の透水率が低く設定してあるために大型土のう全体が良好な透水性を得難いものとなり、洗掘防止及び浸食防止効果を十分に発揮することができなかった。
これに対して本発明の水工用大型土のう10では、外袋20及び内包シート30が透水性を有する編地素材からなり、中詰材40も空隙率の大きな硬質粒塊体で構成されている。
そのため、水工用大型土のう10の透水性が高くなって、従来の難透水性構造の大型土のうと比べて洗掘防止及び浸食防止効果が格段に向上する。
【0034】
<2>転動防止
水工用大型土のう10では外袋30の拘束力が内包シート20を通じて中詰材40に伝達し得るように、外袋30内に中詰材40が充満状態で詰め込まれている。
さらに中詰材40を覆う内包シート20が複数の結束手段50を介して外袋30に一体化されている。
そのため、内包シート20内における中詰材40の移動が阻止されると共に、外袋30内における内包シート20の転動も規制されている。
そのため、水工用大型土のう10の移動限界流速(約5.0m/s)が従来の大型土のうの移動限界流速(約4.5m/s)と比べて高くなることが実証実験により確認されている。
殊に、水流方向に沿って複数の水工用大型土のう10を縦列に敷設した場合、下流側の水工用大型土のう10による乗り越え防止効果が従来と比べて高くなることも実証実験により確認されている。
【0035】
<3>外袋と内包シートの一体挙動性
内包シート30は外袋20の内面全域と接触しているたけでなく、その複数箇所が結束手段50を介して一体化されていて、内包シート30及び外袋20が一体に挙動する。
そのため、例えば中詰材40に変位力が生じたときは、内包シート30及び外袋20が一体に挙動するため、内包シート30又は外袋20の一部に過大なテンションがかからず、内包シート30及び外袋20が破れ難い。
【0036】
<4>不陸性
内包シート30の伸び率が外袋20の伸び率より大きく設定しておくと、外袋20に対する内包シート30の変形追従性がよくなる。
そのため、敷設面の凹凸に対する水工用大型土のう10の追従性が良くなる。
【解決手段】透水性を有する外袋20と、透水性を有する内包シート30と、外袋20及び内包シート20の重合する一部を結束して一体化する複数の結束手段50と、内包シート30に収容され、透水性を有する中詰材40とを具備し、中詰材40が包み込まれた内包シート30を介して外袋20が中詰材40を抱持して拘束する。