(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配管で発生する流水音が前記配管外へ伝達されることを抑制する遮音カバーを、前記配管の外周面に巻かれる帯状の本体部を備えた吊下げ金具を用いて、前記配管のうちの一部である配管部を覆うように、該配管部に取付ける取付け方法であって、
前記本体部の延長方向途中に少なくとも一個設けられた第一係止片に前記遮音カバーを挿通させることで、前記遮音カバーを前記吊下げ金具に吊持させた組品とする組付工程と、
前記組品における前記吊下げ金具の前記本体部を、前記配管部の外周面に沿わすよう外嵌させる外装工程と、
を備えたことを特徴とする遮音カバーの取付け方法。
前記本体部の延長方向両側端部に配置される第二係止片どうしを重ねて固定することで、前記組品のうちの前記吊下げ金具を前記配管部の外周面に固定する保持工程を備えた請求項1に記載の遮音カバーの取付け方法。
前記外装工程において前記配管部の外周面を覆った前記遮音カバーの、前記本体部の延長方向に沿う延長方向両側端部を、前記第二係止片に挿通させて、該延長方向両側端部を前記第二係止片に係止する係止工程を備えた請求項2に記載の遮音カバーの取付け方法。
前記組付工程では、前記遮音カバーにおいて前記本体部の延長方向に沿う延長方向に互いに離間して形成された第一係止孔部を、前記本体部の延長方向に互いに離間して形成された前記第一係止片にそれぞれ挿通させる請求項1に記載の遮音カバーの取付け方法。
前記組付工程では、前記第一係止孔部を前記第一係止片に挿通させた後に、該第一係止片のうちの先端側を前記遮音カバーの表面に沿わすように折曲する請求項4に記載の遮音カバーの取付け方法。
前記保持工程では、前記第二係止片に形成されたボルト挿通孔にボルトを挿通して、該ボルトにナットを締付けることで、前記吊下げ金具を前記配管部の外周面に固定する請求項2に記載の遮音カバーの取付け方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の遮音カバーでは、排水管部を覆うように円筒状とし、取付位置において円筒状を保持しつつ、別の作業としてバンドを用いて遮音カバーを締付けるという作業が必要であり、作業者の両手がとられるため、一人での作業は困難である。その上、高所での作業となるため、危険が伴うことがある。このような問題は、排水管に遮音カバーを取付ける場合に限らず、排水管以外の配管に遮音カバーを取付ける場合にも同様であった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、遮音カバーを配管へ容易に取付け可能な取付け方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、配管で発生する流水音が前記配管外へ伝達されることを抑制する遮音カバーを、前記配管の外周面に巻かれる帯状の本体部を備えた吊下げ金具を用いて、前記配管のうちの一部である配管部を覆うように、該配管部に取付ける取付け方法であって、前記本体部の延長方向途中に少なくとも一個設けられた第一係止片に前記遮音カバーを挿通させることで、前記遮音カバーを前記吊下げ金具に吊持させた組品とする組付工程と、前記組品における前記吊下げ金具の前記本体部を、前記配管部の外周面に沿わすよう外嵌させる外装工程とを備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明の上記取付け方法によれば、組付工程において、本体部に設けられた第一係止片を遮音カバーに挿通させることで、吊下げ金具と遮音カバーとを組品とさせられるから、外装工程において、吊下げ金具の本体部を配管部の外周面に沿わすよう外嵌させることで、遮音カバーを吊下げ金具の変形に応じた形状に沿わせることができる。
【0009】
本発明の取付け方法では、前記本体部の延長方向両側端部に配置される第二係止片どうしを重ねて固定することで、前記組品のうちの前記吊下げ金具を前記配管部の外周面に固定する保持工程を備えることができる。
【0010】
上記取付け方法によれば、保持工程において、本体部の延長方向両側端部に配置された第二係止片どうしを重ねて固定することで、本体部を縮径させることができるから、吊下げ金具を配管部に確実に固定させられる。
【0011】
本発明の取付け方法では、前記外装工程において前記配管部の外周面を覆った前記遮音カバーの、前記本体部の延長方向に沿う延長方向両側端部を、前記第二係止片に挿通させて、該延長方向両側端部を前記第二係止片に係止する係止工程を備えることができる。
【0012】
上記取付け方法によれば、係止工程において、配管部の外周面を覆った遮音カバーの延長方向両側端部を第二係止片に挿通させて係止することで、遮音カバーが吊下げ金具に固定された状態となって、広がらない。
【0013】
本発明の取付け方法は、前記組付工程では、前記遮音カバーにおいて前記本体部の延長方向に沿う延長方向に互いに離間して形成された第一係止孔部を、前記本体部の延長方向に互いに離間して形成された前記第一係止片にそれぞれ挿通させることができる。
【0014】
上記取付け方法によれば、組付工程において、第一係止孔部が遮音カバーに形成されていることで、第一係止片を容易に遮音カバーに挿通させられ、しかも第一係止孔部、および第一係止片はそれぞれ複数設けられていることから、遮音カバーが吊下げ金具に確実に吊下げられる。
【0015】
本発明の取付け方法は、前記組付工程では、前記第一係止孔部を前記第一係止片に挿通させた後に、該第一係止片のうちの先端側を前記遮音カバーの表面に沿わすように折曲させることができる。
【0016】
上記取付け方法によれば、組付工程において、第一係止片のうちの先端側を前記遮音カバーの表面に沿わすように折曲させることで、遮音カバーを吊下げ金具に確実に一体化させられる。
【0017】
本発明の取付け方法は、前記係止工程では、前記遮音カバーの延長方向両側端部に形成された第二係止孔部を、前記第二係止片に挿通させることができる。
【0018】
上記取付け方法によれば、第二係止孔部が遮音カバーに形成されていることで、第二係止片を容易に遮音カバーの延長方向両側端部に挿通させられることから、遮音カバーが吊下げ金具の形状に沿った形状に確実に保持される。
【0019】
本発明の取付け方法は、前記保持工程では、前記第二係止片に形成されたボルト挿通孔にボルトを挿通して、該ボルトにナットを締付けることで、前記吊下げ金具を前記配管部の外周面に固定することができる。
【0020】
上記取付け方法によれば、ボルト挿通孔にボルトを挿通して、ボルトにナットを締付けるという簡単な作業で、吊下げ金具を配管部の外周面に固定させられる。
【0021】
本発明の取付け方法は、前記係止工程では、前記第二係止片に形成された返し部に前記第二係止孔部を係止させることができる。
【0022】
上記取付け方法によれば、係止工程において、第二係止片を第二係止孔部に挿通すると、第二係止片に形成された返し部に第二係止孔部が係止して、遮音カバーの延長方向両側端部が第二係止片から離脱せず、したがって、遮音カバーが広がらない。
【発明の効果】
【0023】
本発明の遮音カバーの取付け方法によれば、本体部に設けられた第一係止片を遮音カバーに挿通させることで吊下げ金具と遮音カバーとを組品とさせられることで、吊下げ金具の本体部を配管部の外周面に沿わすよう外嵌させると、遮音カバーを吊下げ金具の変形に応じた形状に沿わせられるから、配管部への遮音カバーの取付けが容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る遮音カバーの取付け方法について、図面を参照しつつ説明する。
図1および
図2に示すように、本発明の取付け方法に係る遮音カバー2は、排水管Pに取付けられる延焼防止機構Aの構成部品である。よって、はじめに排水管Pの構成を説明する。排水管Pは、不燃性材料(例えば鋳鉄製)で形成された集合排水管P1と、可燃性材料(例えば塩化ビニル樹脂)で形成された立て管P2とを備える。集合排水管P1と立て管P2とは、建築物の各階に対応して上下方向に交互に配置されており、内部に一連の排水流路が形成されている。
【0026】
集合排水管P1は、多層階建築物における床スラブSを貫通して設置されている。集合排水管P1は一般的な構成であり、床スラブSの上の部屋における排水を集約して下階に落下させることのできる管である。集合排水管P1は、床スラブSに沿って水平方向に延びる枝管(図示せず)を接続できるよう構成されている。
【0027】
立て管P2は、上下方向に延びる直管である。立て管P2は、その上端部に継手P21を備える。継手P21は筒状に形成されており、継手本体部P210と、集合排水管P1の受口部となる部分であって、継手本体部P210に対して拡径された円筒状の拡径部である鍔部P211とを一体的に備えている。継手P21は、鍔部P211を上にし、鍔部P211に比べて小径の継手本体部P210を下にして、集合排水管P1と立て管P2の本体P20とを接続する。
【0028】
継手P21は立て管P2の本体P20に対して別部材とされており、本体P20に接着により一体化されている。立て管P2の本体P20の上端部は、継手P21を介して集合排水管P1の下端P12に連通接続されている。
【0029】
次に、延焼防止機構Aを説明する。
図1および
図2に示すように、延焼防止機構Aは、前記遮音カバー2と、膨張材1と、吊下げ金具3とを備える。遮音カバー2は、
図3に示すように、内側層200および外側層201で構成されるカバー本体20を備える。内側層200は、可撓性を有するとともに吸音性を有する耐火素材で形成されており、例えば、グラスウールをフェルト状に成形してなる。外側層201は、可撓性を有するとともに遮音性を有する材料で形成されている。例えば、外側層201は、アスファルトシートで形成されている。外側層201の更に外側には、図示しない表面保護用のカバーが貼付されている。
図4に示すように、遮音カバー2は、展開させた状態では略矩形状であり、その可撓性から筒状に変形させることが可能である。
【0030】
遮音カバー2は、矩形形状の短手方向を上下方向として用いられる。カバー本体20のうち、後述する縮径用部材21によって一部の領域が縮径されて用いられ、該一部の領域は、カバー本体20の上下方向途中部分である。カバー本体20は、前記一部の領域よりも上方部に、カバー本体20の長手方向(周方向に相当し、延長方向に相当する)に所定の間隔をおいて(間欠的に)、複数の第一係止孔部2aが形成されている。第一係止孔部2aは、カバー本体20の長手方向に長いスリット状に形成されている。カバー本体20において、第一係止孔部2aと同じ高さ位置で、長手方向の両側端部に、第二係止孔部2bが形成されている。各第二係止孔部2bは、上下方向に沿うスリット状に形成されている。
【0031】
カバー本体20において、これら第一係止孔部2a、および第二係止孔部2bを含む一定の上下方向領域部分で、且つ長手方向全域に亘る部分が、後に詳述するように、集合排水管P1に吊下げ金具3の本体部30を介して外装されるよう係止する係止部に相当し、また、各第一係止孔部2aには、吊下げ金具3の支持片31が挿通され、各第二係止孔部2bには、吊下げ金具3の接続片32,32が挿通される。
【0032】
カバー本体20の上端部2Hにおいて、第一係止孔部2aどうしの間、および第一係止孔部2aと第二係止孔部2bとの間に、上下方向に延びるV字形状の小切り込み2cが形成されている。カバー本体20の下端部2Lには、カバー本体20の上下方向に延びるV字形状の大切り込み2dが、長手方向に等間隔に離間して形成されている。切り込み2c、2dにおいて、切り込み2dの上下方向長さが、切り込み2cの上下方向長さに比べて長く形成されている。また、切り込み2c、2dどうしは、カバー本体20の長手方向で位置ずれして配置されている。
【0033】
遮音カバー2は、カバー本体20を筒状にした際に、その周方向(長手方向に相当する)の一部の領域部を他の領域部に比べて縮径させることが可能であって、不燃性材料から形成された前記縮径用部材21を、さらに備える。本実施形態では、縮径用部材21は、鋼材からなって塑性変形可能な線状部と、該線状部を覆う不燃性材料の被覆材とで構成された、一本の索体である。
【0034】
縮径用部材21は、本実施形態では、
図3および
図4に示すように、カバー本体20の上下方向の中心線上に配置される。縮径用部材21は、カバー本体20の表側と裏側とに交互に現れるよう、カバー本体20を、長手方向の間欠位置において厚み方向で貫いている。換言すれば、カバー本体20には、縮径用部材21を貫通させるための貫通孔(符合省略)が、長手方向で離間して形成されている。縮径用部材21の端部側は、カバー本体20を裏側から表側へ貫くことで、カバー本体20の長手方向端部側(周方向端部側)において、裏側から表側へ向けて導出されている。
【0035】
膨張材1は、継手P21の継手本体部P210の外周面に巻き付けて取り付けられる。すなわち膨張材1は、
図1に示すように、集合排水管P1の下端P12よりも下方の位置に配置される。膨張材1は、熱を受けると膨張する熱膨張性樹脂化合物から構成されている。膨張材1は、あらかじめ帯状に成形されており、継手P21の継手本体部P210の外周面に貼り付けられている。膨張材1は柔軟性を有しており、湾曲した継手P21の外周面に追従させることができるため、継手P21に容易に取り付け可能である。
【0036】
前述の吊下げ金具3は金属製であって、集合排水管P1において、階下へ延長された部分(排水管部に相当する部分であり、以下、縮径部P11と称する)の、上下方向途中に巻かれて集合排水管P1に固定される。吊下げ金具3は、遮音カバー2を吊持するよう組付けるための構成を有する。すなわち吊下げ金具3は、
図5に示すように、本体部30と、第一係止片に相当する支持片31と、第二係止片に相当する接続片32,32とを備える。本体部30は、可撓性を有し、縮径部P11の周方向長さに対してわずかに小さい周方向長さに設定されている。本体部30は、集合排水管P1の外周面に巻かれることで環状となる帯状に形成されるか、可撓性を有して予め環状に形成されている。本実施形態では、本体部30は、予め環状に形成されている形態として説明する。
【0037】
支持片31は平板状に形成されており、本体部30の下端にあって、本体部30の長手方向である周方向途中部分に一体的に形成されている。支持片31は、本体部30の長手方向に間欠的に形成されることで複数個設けられている。支持片31どうしの周方向での離間距離は、カバー本体20に形成された第一係止孔部2aどうしの離間距離に等しく設定されている。各支持片31は、本体部30の下端に、本体部30の高さ方向に直交する方向で、径外方向へ向けて折曲されている。
【0038】
前述したように、これら支持片31は、カバー本体20に形成された第一係止孔部2aに貫通させる部分である。したがって、支持片31の周方向における幅寸法は、第一係止孔部2aの幅寸法に比べてわずかに小さく設定されている。各支持片31は、本体部30に対する突出方向(排水管Pの径外方向である)の途中部分に、折曲部31aを備える。折曲部31aは、支持片31の他の部分に比べて幅狭に形成された脆弱部とされて、支持片31における本体部30側の基端部31bに対し、先端部31cを折曲可能とする部分である。なお、先端部31cの先端は、円弧状に形成されている。
【0039】
接続片32,32は、本体部30の延長方向両側の端部を折曲することで、本体部30に対する径外方向に突出するよう、一体的に形成されている。接続片32,32は本体部30の高さ方向寸法と同寸法を有する平板状に形成されている。接続片32,32は、前述したように、カバー本体20に形成された第二係止孔部2bに貫通させる部分である。したがって、接続片32,32の上下方向寸法は、第二係止孔部2bの上下方向寸法に比べてわずかに小さく設定されている。接続片32,32の、本体部30に対する径外方向への突出量は、遮音カバー2の厚みの2倍以上に設定されている。
【0040】
接続片32,32において、本体部30と連続する基端側には、締結ボルト35が挿通する挿通孔32aが形成されている。接続片32,32において、径外方向先端側には、返し部32bが形成されている。返し部32bは、各接続片32,32において、接続片32,32の板面の一部を切り起こして形成されている。各接続片32,32における返し部32bは、基端側ほど板面から離れる方向に傾斜している。すなわち各接続片32,32は、基端側ほど互いに離れる方向に傾斜するよう形成されている。挿通孔32aと返し部32bとの離間距離は、遮音カバー2の厚みの略2倍に設定されている。
【0041】
ここで、上記各構成部品を備えた延焼防止機構Aが、排水管Pに取付けられた状態を説明する。
図1に示すように、膨張材1は、立て管P2の上部(継手P21の継手本体部P210をその上下方向途中部分)において外周面を覆うように、継手本体部P210に貼り付けられている。吊下げ金具3は排水管部に相当する縮径部P11を外嵌するように、縮径部P11に固定されている。遮音カバー2は円筒形状とされた状態にあって吊下げ金具3に吊持され、且つ上下方向途中部分の一部が、縮径用部材21の塑性変形により他の部分に比べて縮径されている。この縮径されている部分は、継手P21の鍔部P211における下面の直下の位置である。
【0042】
カバー本体20の上端部2Hは、小切り込み2cである空間を埋めるように縮径されて(絞られて)縮径部P11を覆っており、カバー本体20の下端部2Lは、大切り込み2dである空間を埋めるように縮径されて(絞られて)、継手P21の下方において、立て管P2の本体P20に接触するようこれを覆っている。カバー本体20の上端部2Hに、小切り込み2cが複数箇所に形成され、カバー本体20の下端部2Lに、大切り込み2dが複数箇所に形成されていることで、カバー本体20の上端部2H、および下端部2Lを容易に縮径させることができる。
【0043】
なお、カバー本体20の下端部2Lは、樹脂バンドB1により締付けられることで、排水管Pに確実に固定されている。このようにして、遮音カバー2は、縮径部P11の途中部分、吊下げ金具3、膨張材1を含む継手P21の全体、立て管P2の本体P20の一部を、外側(排水管Pの径外方向側)で覆っている。
【0044】
次に、吊下げ金具3における遮音カバー2の吊持状態を説明する。
図1、
図2、および
図6に示すように、本体部30が集合排水管P1の縮径部P11に巻かれて環状にされた状態において、支持片31は、本体部30の下辺から径外方向へ突出しており、カバー本体20の第一係止孔部2aに貫通されて、折曲部31aを中心として、支持片31における本体部30側の基端部31bに対し、先端部31cが上方に折曲されている。本体部30が集合排水管P1に巻かれて環状にされた状態において、接続片32,32は径外方向へ突出されており、第二係止孔部2bに貫通され、接続片32,32の返し部32bに、第二係止孔部2bの周辺部分が係止されている。また、
図6に示すように、カバー本体20の周方向両側端部どうしが径内外方向で重ねられた状態で、第二係止孔部2bの周辺部分に接続片32,32が貫通されている。
【0045】
各接続片32,32においては、各接続片32,32どうしは周方向で重ねられ、挿通孔32aに締結ボルト35が挿通され、締結ボルト35にナット36が締結されている。そして、本体部30は、縮径部P11の周方向長さに対してわずかに小さい周方向長さに設定されていることで、締結ボルト35にナット36が締結されると縮径方向の応力が生じる。これにより、吊下げ金具3は、縮径部P11に確実に固定されている。このようにして、円筒状に変形させた状態の遮音カバー2が、集合排水管P1に固定された吊下げ金具3に確実に保持されている。
【0046】
次に、遮音カバー2において、上下方向途中部分の一部が他の部分に比べて縮径されている状態を詳述する。前述したように、縮径用部材21の端部側は、カバー本体20を表側から裏側へ貫くことで、カバー本体20の周方向端部側において、裏側から表側へ向けて導出可能とされている。すなわち縮径用部材21は、カバー本体20の周方向端部側において、重ねて捻り合わせることが可能である。
【0047】
縮径用部材21の両側端部を、カバー本体20の周方向端部側において、裏側から表側へ向けて導出させ、重ねて捻り合わせると、縮径用部材21のうちカバー本体20の表側に現れている部分が、カバー本体20を外側から内側へ向けて引き込む。そして、縮径用部材21のうちカバー本体20の表側に現れている部分は、カバー本体20の長手方向(周方向)において間欠的に配置されているから、カバー本体20の周方向に沿う一部の領域部が、他の領域部に比べて縮径されている。この縮径させた部分を、本実施形態では、継手P21における拡径部分である鍔部P211の直下に配置させている。このため、縮径用部材21によって縮径されたカバー本体20の周方向の一部の領域と、鍔部P211の下面とが、上下方向で係止している。
【0048】
このように、遮音カバー2は吊下げ金具3に吊持され、遮音カバー2のカバー本体20の上下方向途中部分において縮径された部分は、継手P21における拡径部分である鍔部P211の直下にあって、カバー本体20において縮径された部分と鍔部P211の下面とが上下方向で係止していることで、膨張材1を備えた継手P21が確実にその場で保持されている。
【0049】
ここで、延焼防止機構Aとして、上記のような状態で遮音カバー2を排水管Pに取付けるための取付け方法を説明する。この取付け方法は、組付工程と、外装工程と、保持工程と、係止工程とを備える。組付工程、外装工程、保持工程、および係止工程はこの順で行われる。
【0050】
組付工程は、吊下げ金具3の本体部30に形成された支持片31を、カバー本体20に形成された第一係止孔部2aに挿通させる(あるいは、第一係止孔部2aを支持片31に挿通させる)ことで、遮音カバー2を吊下げ金具3に吊持させるよう組付ける工程である。また、組付工程においては、支持片31における本体部30側の基端部31bに対し、折曲部31aを介して先端部31cを折曲する。このようにすることで、先端部31cがカバー本体20の外周面にその径外方向で係止可能となる。このため、カバー本体20の弾性に伴う広がりを阻止し、カバー本体20と吊下げ金具3とを一体化させられる。この組付工程により、遮音カバー2と吊下げ金具3は組品とされるから、以後の作業において、遮音カバー2および吊下げ金具3を一体物として、容易に扱うことができる。なお、第一係止孔部2aは、カバー本体20の長手方向に長いスリット状に形成されている。このため、遮音カバー2の自重を分散させられるから、第一係止孔部2aの損傷が抑えられる。
【0051】
外装工程は、前記組品における吊下げ金具3の本体部30を一旦開く(拡径させる)ようにして、縮径部P11の外周面に沿わすよう外嵌させる工程である。遮音カバー2と吊下げ金具3は組品とされ、遮音カバー2は吊下げ金具3に吊持されているから、外装工程においては、特に遮音カバー2を縮径部P11に沿わす作業をすることなく、吊下げ金具3を縮径部P11に外嵌させれば、遮音カバー2も吊下げ金具3の変形に応じて変形させられる。吊下げ金具3の本体部30を、縮径部P11の外周面に沿わすよう外嵌させると、遮音カバー2は、本体部30の径外方向に位置する。
【0052】
保持工程は、接続片32,32どうしを周方向で対面するように重ね、挿通孔32aに締結ボルト35を挿通し、締結ボルト35にナット36を締結することで、本体部30を縮径させて、吊下げ金具3を縮径部P11の外周面に固定する工程である。遮音カバー2は吊下げ金具3に吊持されているから、保持工程においては、遮音カバー2の落下を懸念することなく、挿通孔32aに締結ボルト35を挿通し、締結ボルト35にナット36を締結することができる。
【0053】
係止工程は、外装工程において円筒状とされている遮音カバー2の、周方向両側端部どうしを径内外方向で重ね、周方向両側端部に形成された第二係止孔部2bに、重ね合わせた接続片32,32を挿通させて、第二係止孔部2bを返し部32bに係止する工程である。締結ボルト35が挿通されている挿通孔32aと、返し部32bとの離間距離は、遮音カバー2の厚みの略2倍に設定されているから、挿通孔32aと返し部32bとの間で遮音カバー2の周方向両側端部どうしを径内外方向で重ねて、接続片32,32を第二係止孔部2bに挿通させることができる。そして、挿通させた後は、カバー本体20の弾性復元力(カバー本体20が広がる方向に復元する力)により、周方向両側端部の一方側が返し部32bに係止した状態が保持される。
【0054】
このように、本実施形態に係る取付け方法によれば、組付工程において吊下げ金具3と遮音カバー2とを組品としたうえで、外装工程において吊下げ金具3を縮径部P11に外嵌させるから、組品としての遮音カバー2を扱い易い。保持工程においては、吊下げ金具3を縮径部P11に固定し、係止工程において接続片32,32を第二係止孔部2bに挿通させることで遮音カバー2の周方向両側端部の一方側が返し部32bに係止される。このため、縮径部P11を覆うように遮音カバー2を巻付け、その巻付け状態を保持させながらバンドを用いてこれを遮音カバー2に締結して、遮音カバー2を縮径部P11に固定する作業に比べて、遮音カバー2の取付け作業がし易い。
【0055】
特に、新築の多層階建築物において、遮音カバー2を取付けるべき排水管Pが多数ある場合では、一つの遮音カバー2の取付けがし易くなれば、その分だけ取付け作業全体に要する時間や労力を大幅に削減することが可能になる。
【0056】
上記構成の延焼防止機構Aが設置された多層階建築物では、遮音カバー2が、排水管Pを覆った範囲において、排水管Pの内部に通水されることで生じる排水音が排水管P外に伝達されることを抑制できる。具体的には、遮音カバー2におけるグラスウールからなる内側層200が排水音を吸収し、アスファルトからなる外側層201が排水音の透過を遮断する。なお、遮音カバー2は音以外に、振動の伝達も抑制できる。
【0057】
上記構成の延焼防止機構Aが設置された多層階建築物において、床スラブSに対する階下で火災が発生した場合を想定する。縮径部P11の途中部分、吊下げ金具3、膨張材1を含む継手P21の全体、立て管P2の本体P20の一部は、耐火素材を用いた遮音カバー2で覆われている。このため火災の発生によって、仮に可燃材料製の立て管P2のうち、遮音カバー2で覆われている位置より下の部分が焼失することが充分に考えられる。
【0058】
しかしながら、遮音カバー2は、不燃性材料製の集合排水管P1の縮径部P11に吊下げ金具3を介して吊持され、継手P21を覆っており、しかも遮音カバー2のうちの一部が縮径されて、縮径された部分と継手P21の鍔部P211の下面とが、上下方向で係止している。このため、立て管P2のうち、遮音カバー2で覆われている位置より下の部分が焼失したとしても、その消失とともに継手P21が落下するといった状況を回避することができる。
【0059】
継手P21の落下を回避することができれば、膨張材1は継手P21に取付けられていることから、膨張材1の落下を回避することができる。そして、縮径用部材21は、カバー本体20の表側と裏側とに交互に現れるよう、カバー本体20を、長手方向の間欠位置において厚み方向で貫いている。このため、縮径用部材21がカバー本体20に保持されて、カバー本体20から脱落することがない。
【0060】
膨張材1は、熱を受けると膨張する樹脂から構成されている。よって、この膨張材1は、火災時に、可燃性である塩化ビニル樹脂により形成された継手P21が焼損(完全に焼失する場合と、一部が燃え残る場合とを含む)した場合、火災の熱により径内方向へと膨張して排水管Pの排水流路が塞がれる(完全に塞がれないことがあっても、少なくとも排水流路の一部は塞がれる)。この塞がれた部分で炎または高熱の空気や煙が食い止められるため、下階からの集合排水管P1を介した上階の延焼が抑制される。なお、膨張材1は遮音カバー2で覆われているから、遮音カバー2の内面との当接により径外方向への膨張が抑制され、その反力によって径内方向への膨張が大きくなって、排水管Pの排水流路を塞ぐことができる。
【0061】
火災時における膨張材1は、径外方向への膨張によって遮音カバー2の内面に当接する。このため膨張材1は、この接触した状態で位置保持される。また、火災時に遮音カバー2における内側層200のグラスウールは硬化する。このため、火災時であっても遮音カバー2の形状は保たれる。換言すれば、縮径用部材21の塑性変形により、遮音カバー2の一部の領域部を縮径させて遮音カバー2を設置させておけば、グラスウールは一部の領域部が縮径した状態で硬化する。このため、継手P21はいっそう確実に位置保持される。
【0062】
なお、カバー本体20の下端部2Lを排水管Pに締付けるバンドは樹脂である。このため、樹脂バンドB1は火災時に溶けて消失してしまう。しかしながら、火災時に遮音カバー2における内側層200のグラスウールは硬化する。このため、火災時でも遮音カバー2は、樹脂バンドB1に締付けられた形状を保たれる。但し、樹脂バンドB1が消失してしまい、立て管P2の本体P20が消失してしまうと、遮音カバー2のうち、樹脂バンドB1に締付けられた部分が、その形状を保持していたとしても継手P21の下方は空間になる。そうであっても、遮音カバー2のうちの一部が縮径用部材21によって縮径されて、縮径された部分と継手P21の鍔部P211の下面とが、上下方向で係止している。このため、立て管P2のうち、遮音カバー2で覆われている位置より下の部分が焼失したとしても、その焼失とともに継手P21および縮径用部材21が落下するといった状況を回避することができる。
【0063】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。例えば、上記実施形態における取付け方法の組付工程において、支持片31を折曲部31aで折曲して先端部31cを起こし、先端部31cがカバー本体20の外周面にその径外方向で係止させることで、カバー本体20の弾性に伴う広がりを阻止した。しかしながら、例えば、支持片31に折曲部31aを形成する代わりに、接続片32,32に形成した返し部32bと同様の返し部を形成しておき、該返し部の係止力によりカバー本体20の広がりを阻止することもできる。
【0064】
上記実施形態における取付け方法の保持工程において、接続片32,32どうしは締結ボルト35にナット36を締結することで固定させた。しかしながら、接続片32,32に締結ボルト35用の挿通孔32aを形成することなく、接続片32,32どうしをクリップ等による手段を用いて強固に固定することも可能である。
【0065】
上記実施形態における取付け方法の組付工程では、環状に形成された吊下げ金具3の本体部30を用い、その支持片31をカバー本体20に形成された第一係止孔部2aに挿通させた。しかしながら、本体部30は、集合排水管P1の外周面に巻かれることで環状となる帯状のものを用い、支持片31をカバー本体20に挿通させて、吊下げ金具3に遮音カバー2を吊持することもできる。この場合では、本体部30は外装工程において環状に変形させられる。
【0066】
上記実施形態における取付け方法の組付工程では、カバー本体20に第一係止孔部2aが形成された遮音カバー2を用いて、支持片31を第一係止孔部2aに挿通させた。しかしながら、カバー本体20と支持片31との関係が、カバー本体20に挿通させることができることを前提とすれば、必ずしも第一係止孔部2aを形成する必要はない。係止工程も同様で、接続片32,32をカバー本体20に挿通させることができることを前提とすれば、必ずしも第二係止孔部2bを形成する必要はない。
【0067】
上記実施形態における取付け方法の係止工程では、遮音カバー2の周方向両側端部どうしを径内外方向で重ねた。しかしながら、遮音カバー2の周方向両側端部どうしを吊下げ金具3の接続片32,32に挿通させることなく、遮音カバー2の周方向両側端部どうしを周方向で対面するよう重ね、周方向両側端部どうしを固定することもできる。
【0068】
上記各実施形態では、カバー本体20の下端部2Lを樹脂バンドB1により締付けて排水管Pに固定するようにしたが、樹脂バンドB1がなくても、吊下げ金具3に吊り下げられているため、立て管P2のうちの少なくとも膨張材1が設けられている部分(例えば、継手P21)の落下を回避できる。
【0069】
上記各実施形態では、カバー本体20の長手方向に所定の間隔をおいて複数の第一係止孔部2aを形成し、また、第二係止孔部2bを形成し、これらを含む一定の上下方向領域部分で、且つ長手方向全域に亘る部分が、排水管Pへの係止部に相当する場合を例示した。しかしながら、本発明の遮音カバー2として、第一係止孔部2a、第二係止孔部2bを形成せず、前記一定の上下方向領域部分を、吊下げ金具3以外のバンド等により排水管Pに係止される係止部とすることができる。
【0070】
上記実施形態では、遮音カバー2は排水管Pに取付ける方法を例示した。しかしながら、本発明の遮音カバー2の取付け方法は、排水管Pに取付ける場合のみならず、流水音が発生し易い配管への取付けにも適用できる。
【解決手段】 吊下げ金具3の本体部30に設けられた第一係止片31を、遮音カバー2に挿通させることで、吊下げ金具3と遮音カバー2とを組品とする工程を有しているから、吊下げ金具3の本体部30を縮径部P11の外周面に沿わすよう外嵌させることで、遮音カバー2を吊下げ金具3の変形に応じた形状に沿わせられるため、縮径部P11への遮音カバー2の取付けが容易である。