特許第6074540号(P6074540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6074540水酸化リチウム無水和物の製造方法及びこれに用いるロータリーキルン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6074540
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】水酸化リチウム無水和物の製造方法及びこれに用いるロータリーキルン
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/02 20060101AFI20170123BHJP
   F27B 7/08 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C01D15/02
   F27B7/08
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-214053(P2016-214053)
(22)【出願日】2016年11月1日
【審査請求日】2016年11月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516054106
【氏名又は名称】BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000217583
【氏名又は名称】株式会社タナベ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】山本 学武
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 修
(72)【発明者】
【氏名】木村 倫康
(72)【発明者】
【氏名】西村 研一
(72)【発明者】
【氏名】小柳 渉
(72)【発明者】
【氏名】桑原 亨
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−265023(JP,A)
【文献】 特開2011−178584(JP,A)
【文献】 特開2014−212103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 1/00 − 17/00
F27B 5/00 − 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉芯管と、該炉芯管の軸方向の所定範囲を囲う加熱炉とを有するロータリーキルンを用いて、水酸化リチウム水和物から水酸化リチウム無水和物を製造する方法であって、
前記水酸化リチウム水和物を、前記炉芯管の前記加熱炉に覆われた部分である加熱部と前記炉芯管の一端との間の領域に供給する供給工程、
前記供給された水酸化リチウム水和物を前記炉芯管の他端側に向けて送る水酸化リチウム送り工程、
前記水酸化リチウム水和物が供給されているときに、100℃以上の乾燥ガスを前記炉芯管内の前記一端と前記加熱部との間の領域に送出する乾燥ガス送出工程、及び
前記水酸化リチウム送り工程の間に、230〜450℃に設定された前記加熱炉により前記水酸化リチウム水和物を加熱・脱水し、水酸化リチウム無水和物を生成させる加熱工程、
を含むことを特徴とする水酸化リチウム無水和物の製造方法。
【請求項2】
前記炉芯管内の容積を基準として、前記供給される水酸化リチウム水和物の量が、5〜15体積%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記炉芯管の加熱部において水酸化リチウムが加熱されている時間が、30分〜2時間である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記炉芯管の前記一端と前記加熱部との間の領域の外周上に断熱材が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ロータリーキルンは、前記加熱により加熱された乾燥ガスを前記炉心管の外部に排出するための排気管を有し、
前記排気管を介して、前記加熱された乾燥ガスを前記炉心管の外部に排出する排気工程を更に有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
炉芯管と、該炉芯管の軸方向の所定範囲を囲う加熱炉とを有し、水酸化リチウム水和物から水酸化リチウム無水和物を製造するために使用されるロータリーキルンであって、
前記水酸化リチウム水和物を、前記炉芯管の前記加熱炉に覆われた部分である加熱部と前記炉芯管の一端との間の領域に供給する供給手段、
前記供給された水酸化リチウム水和物を前記炉芯管の他端側に向けて送る水酸化リチウム送り手段、
水酸化リチウム水和物が供給されているときに、100℃以上の乾燥ガスを前記炉芯管内の前記一端と前記加熱部との間の領域に送出する乾燥ガス送出手段、及び
前記水酸化リチウム送り工程の間に、230〜450℃に設定された前記加熱炉により前記水酸化リチウム水和物を加熱・脱水し、水酸化リチウム無水和物を生成させる加熱手段、
を有することを特徴とするロータリーキルン。
【請求項7】
前記炉芯管の前記一端と前記加熱部との間の領域の外周上に断熱材が設けられている、請求項6に記載のロータリーキルン。
【請求項8】
前記加熱により加熱された乾燥ガスを前記炉心管の外部に排出するための排気管が設けられている、請求項6又は7に記載のロータリーキルン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化リチウム無水和物の製造方法に関し、特に、ロータリーキルンを用いて、水酸化リチウム水和物から水酸化リチウム無水和物を製造する方法、及びこの方法に使用するロータリーキルンに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の正極材料などの原料として従来から用いられている水酸化リチウムは、吸湿性が高く、通常は水酸化リチウム水和物(LiOH・nHO)として存在しているのが一般的である。水酸化リチウムを原料として何らかの製品を作製する場合には、処理の過程において多量の水が発生する水酸化リチウム水和物を原料として用いるよりも、水が発生しない水酸化リチウム無水和物を原料として用いることが有利となる場合がある。この場合には、事前処理として、水酸化リチウム水和物を加熱して無水化する処理が行われる。
【0003】
特許文献1には、水酸化リチウム一水和塩をロータリーキルンを用いて、炉心管内温度150℃以上に加熱することにより無水化する水酸化リチウム一水和塩の無水化方法が記載されている。この方法では、塊状の大粒径の粒子を含まない、小粒径で粒径がそろった水酸化リチウム無水和物が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−265023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなロータリーキルンによる水酸化リチウムの無水化処理においては、炉芯管内に供給された水酸化リチウムの一部が炉心管やその内部機器に固着するなどにより炉芯管内で滞留するため、十分な生産効率が得られないという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ロータリーキルンを用いて水酸化リチウム水和物から水酸化リチウム無水和物を製造する方法において、水酸化リチウム無水和物の生産効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、炉芯管と、該炉芯管の軸方向の所定範囲を囲う加熱炉とを有するロータリーキルンを用いて、水酸化リチウム水和物から水酸化リチウム無水和物を製造する方法であって、
前記水酸化リチウム水和物を、前記炉芯管の前記加熱炉に覆われた部分である加熱部と前記炉芯管の一端との間の領域に供給する供給工程、
前記供給された水酸化リチウム水和物を前記炉芯管の他端側に向けて送る水酸化リチウム送り工程、
前記水酸化リチウム水和物が供給されているときに、100℃以上の乾燥ガスを前記炉芯管内の前記一端と前記加熱部との間の領域に送出する乾燥ガス送出工程、及び
前記水酸化リチウム送り工程の間に、230〜450℃に設定された前記加熱炉により前記水酸化リチウム水和物を加熱・脱水し、水酸化リチウム無水和物を生成させる加熱工程、
を含むことを特徴とする水酸化リチウム無水和物の製造方法により達成される。
【0008】
水酸化リチウムの炉芯管内部における固着による滞留は、炉芯管内部において出口側から入口側へ逆流する水蒸気を含むガスが原因と考えられた。本発明の上記構成によれば、100℃以上の乾燥ガスを炉芯管の供給側の一端と加熱部との間の領域に送出して炉芯管自体が暖められることにより、逆流し得る水蒸気を含むガスの水蒸気の凝結を防止でき、また、そのガスの逆流自体を抑止することができるので、水酸化リチウムが炉芯管内部で固着して滞留することを防止することが可能となる。
【0009】
本発明の方法の好ましい態様は以下のとおりである。
【0010】
(1)前記炉芯管内の容積を基準として、前記供給される水酸化リチウム水和物の量が、5〜15体積%である。
【0011】
(2)前記炉芯管の加熱部において水酸化リチウムが加熱されている時間が、30分〜2時間である。
【0012】
(3)前記炉芯管の前記一端と前記加熱部との間の領域の外周上に断熱材が設けられている。
【0013】
(4)前記ロータリーキルンは、前記加熱により加熱された乾燥ガスを前記炉心管の外部に排出するための排気管を有し、前記排気管を介して、前記加熱された乾燥ガスを前記炉心管の外部に排出する排気工程を更に有する。
【0014】
また、本発明は、炉芯管と、該炉芯管の軸方向の所定範囲を囲う加熱炉とを有し、水酸化リチウム水和物から水酸化リチウム無水和物を製造するために使用されるロータリーキルンであって、
前記水酸化リチウム水和物を、前記炉芯管の前記加熱炉に覆われた部分である加熱部と前記炉芯管の一端との間の領域に供給する供給手段、
前記供給された水酸化リチウム水和物を前記炉芯管の他端側に向けて送る水酸化リチウム送り手段、
水酸化リチウム水和物が供給されているときに、100℃以上の乾燥ガスを前記炉芯管内の前記一端と前記加熱部との間の領域に送出する乾燥ガス送出手段、及び
前記水酸化リチウム送り工程の間に、230〜450℃に設定された前記加熱炉により前記水酸化リチウム水和物を加熱・脱水し、水酸化リチウム無水和物を生成させる加熱手段、
を有することを特徴とするロータリーキルンを提供する。
【0015】
本発明のロータリーキルンの好ましい態様は以下のとおりである。
【0016】
(1)前記炉芯管の前記一端と前記加熱部との間の領域の外周上に断熱材が設けられている。
【0017】
(2)前記加熱により加熱された乾燥ガスを前記炉心管の外部に排出するための排気管が設けられている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水酸化リチウムがロータリーキルンの炉芯管内部で固着して滞留することを防止することができるので、水酸化リチウム無水和物の生産効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のロータリーキルンの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の水酸化リチウム無水和物の製造方法を詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の水酸化リチウム無水和物の製造方法に使用することができる本発明のロータリーキルンの一例を示す概略断面図である。図示のように、ロータリーキルン10は、基本的な構成として、炉芯管12と炉芯管12の軸方向の所定範囲を囲う加熱炉14を有する。炉芯管12の一端12a側には入口フード22、他端12b側には出口フード24が設置されている。
【0022】
炉芯管12の一端12a側には、供給機16が接続されており、供給機16はホッパー16aと供給管16bとを有している。ホッパー16aに供給された水酸化リチウム水和物は供給管16bを介して炉芯管12内の炉芯管の一端12aと加熱部12cとの間の領域に供給される(供給工程)。供給管16b内には水酸化リチウム水和物を炉芯管12内に送り込むためのスクリュー(図示せず)が適宜設置される。
【0023】
供給機16から炉芯管12内に水酸化リチウム水和物を供給する場合には、必要に応じて乾燥ガス(窒素、脱炭酸ガス(二酸化炭素炭素含有量0.1〜100ppm、好ましくは1ppm以下)、アルゴンなど)が供給管16bを介して水酸化リチウム水和物と共に送り込まれる。水酸化リチウム水和物の供給量(充填率)は、炉芯管12の容積を基準として、5〜15体積%、好ましくは5〜12体積%である。この範囲であれば炉芯管12内において滞りや逆流を更に防止でき、水酸化リチウム水和物の無水化処理を行うことができる。水酸化リチウム水和物は粉末として供給され、その平均粒径は、例えば10〜1000μmである。
【0024】
炉芯管12は回転可能に構成されているとともに、他端12b側(出口側)の位置が一端12a(入口側)よりも低くなるように若干傾斜させて設置されている。これにより、炉芯管12内部において水酸化リチウム水和物が一端12a側から他端12b側に向けて送られる(水酸化リチウム送り工程)。傾斜は特に限定されず、所望とする加熱時間などの諸条件に合わせて適宜設定されるが、一般に1/100〜3/100である。
【0025】
炉芯管12の回転速度は、所望とする加熱時間などの諸条件に合わせて適宜設定され、一般に0.1〜30rpmである。炉芯管12の材質としては、耐熱性及び熱伝導性に優れ、水酸化リチウムに対して不活性のものが使用される。例えば、ニッケル、ステンレス鋼、セラミックスが挙げられ、好ましくはニッケルが使用される。炉芯管12のサイズは水酸化リチウムの処理量によって適宜設定される。炉芯管12の管厚は一般に4〜12mmである。炉芯管12の加熱部12cより一端12a側には、水酸化リチウム水和物がスムーズに送られるように送り羽根やノッカーを配置してもよい。
【0026】
ロータリーキルン10には、炉芯管12内部に乾燥ガスを送り込むための乾燥ガス供給管18が設けられている。乾燥ガス供給管18は、その送出口18aが炉芯管12の一端12aと加熱部12cとの間の領域に位置するように設置されている。水酸化リチウム水和物が炉芯管12内に供給されているときに、乾燥ガス供給管18を介して乾燥ガスが炉芯管12内部の炉芯管一端12aと加熱部12cとの間の領域に送出される(乾燥ガス送出工程)。乾燥ガスの送出は、連続的又は断続的、好ましくは連続的に行うことが有利である。乾燥ガス供給管18の送出口18aは、炉芯管12内における水酸化リチウム水和物の供給箇所及びその近傍であることが好ましい。これにより、確実に水酸化リチウムの固着・滞留を防止することができる。
【0027】
使用する乾燥ガスとしては、水酸化リチウムに対して不活性のものが好ましく、特に好ましくは脱炭酸ガス(二酸化炭素含有量が通常0.1〜100ppm、好ましくは1ppm以下のガス)窒素、アルゴンである。
【0028】
本発明では、乾燥ガス供給管18を介して送られる乾燥ガスは100℃以上であり、上限は例えば460℃である。特に好ましくは170〜250℃のものが使用される。この温度とすることにより炉芯管12内部における水酸化リチウムの固着を防止することが可能となる。
【0029】
乾燥ガスの供給量は、所望とする目的が達成されればよいが、例えば、10〜500Nl/min、好ましくは100〜400Nl/min、更に好ましくは200〜400Nl/minである。
【0030】
炉芯管12の乾燥ガスが送出される箇所を含む外周面上には断熱材30が設けられていることが好ましい。乾燥ガスにより加熱された炉芯管12及びその内部の温度低下を防止することができる。断熱材の材質としては、ポリウレタンフォーム、グラスウール、セラミックファイバーボードなどを使用することができる。
【0031】
炉芯管12軸方向全体のうち所定部分についてはその周囲が加熱炉14に囲われている。加熱炉14の幅は炉芯管12の軸方向の長さより短く、加熱炉14は炉芯管12の一端12a及び他端12bから間隔を空けて中央部分に配置されている。炉芯管12内に供給された水酸化リチウム水和物は、一端12a側から他端12bに送られる過程において、加熱炉14により加熱される(加熱工程)。
【0032】
本発明において、加熱炉14の設定温度は230〜450℃、好ましくは250〜350℃である。この範囲より低いと十分に水酸化リチウム水和物の脱水を行うことができない場合があり、この範囲より高いと水酸化リチウムが溶融する場合がある。
【0033】
加熱炉14は、全体を一つの温度調整可能な領域として構成してもよいし、炉芯管12軸方向に分割された複数領域でそれぞれが独立して温度調節可能な構成としてもよい。通常は単独(1つ)、若しくは2〜10個の複数領域にて温度調節可能な領域を有している。複数領域でそれぞれが独立して温度調節可能な加熱炉を使用する場合、それぞれの領域が平均して上記設定温度範囲内の温度とされていればよく、好ましくはすべての領域で上記設定温度範囲内の温度とされていることが好ましい。加熱工程においては、加熱炉14による加熱により、炉芯管12の加熱部12cの温度が140〜400℃とされていることが好ましい。
【0034】
炉芯管12の加熱部12cの領域において水酸化リチウムが加熱されている時間(加熱滞留時間)は通常、設定される温度などの諸条件によるが、通常は30分〜2時間である。なお、ロータリーキルン36には、加熱より加熱された乾燥ガスを炉心管12の外部に排出するための排気管36が設けられており、排気管36から炉芯管12内の乾燥ガスを含む気体を排出する排気工程が必要に応じて行われる。炉芯管12の加熱部12cと他端12bとの間の領域の外周面上には図示のように断熱材32が設けられていることが好ましい。これにより炉芯管12内の温度低下を防止して生成した水酸化リチウム無水和物の吸湿を防止することができる。
【0035】
上記加熱工程により水酸化リチウム水和物の脱水が行われ、炉芯管12の加熱部12cの領域を過ぎると、脱水された水酸化リチウム、即ち水酸化リチウム無水和物は炉芯管12の他端12bまで送られた後、排出される。排出された水酸化リチウム無水和物は、出口フード24の下方に設けられた容器38に排出管26を介して溜められる。ロータリーキルン10の稼働中は、製造された水酸化リチウム水和物の吸湿(水和物化)を防ぐため、150〜300℃の乾燥ガス(上述した乾燥ガスと同じものを使用できる)を排出管26に接続された乾燥ガス供給管40を介して連続的又は断続的に供給することが好ましい。排出管26の外周面上には図示のように断熱材34が設けられていることが好ましい。これにより、生成した水酸化リチウム無水和物の吸湿を防止することができる。
【0036】
本発明によれば、100℃以上の乾燥ガスを炉芯管の一端から加熱部の間の領域に送出して炉芯管自体が暖められることにより、逆流し得る水蒸気を含むガスの水蒸気の凝結を防止し、また、そのガスの逆流自体を抑止することができるので、水酸化リチウムが炉芯管内部で固着して滞留することを防止することが可能となる。これにより、生産効率に優れる水酸化リチウム無水和物の製造方法を提供することができる。以下、実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0037】
図1に示すロータリーキルン10を用いて水酸化リチウム無水和物を製造した。具体的には、ホッパー16aに水酸化リチウム水和物の粉末(平均粒径:400μm)を炉芯管12内の一端12a近傍に表1に示す供給量で供給した。乾燥ガス供給管18から表1に示す温度の脱炭酸ガスを炉芯管12の一端12aと加熱部12cの間の領域に送出した。脱炭酸ガスの送り込みは水酸化リチウム水和物の炉芯管12内への供給開始から終了まで連続して行った。
【0038】
また、5つの独立している温度制御可能な領域(ゾーン1〜5(炉心管一端12a側から順に並べられている))を有する加熱炉14を表1に示す温度に設定し、供給された水酸化リチウム水和物を加熱して脱水した。これにより製造された水酸化リチウム無水和物を炉芯管12の他端12bから排出し、容器38に溜めた。なお、ロータリーキルンの稼働中は、製造された水酸化リチウム無水和物の吸湿(水和物化)を防ぐため、200℃の脱炭酸ガスを排出管26に接続された乾燥ガス供給管40を介して供給し続けた。
【0039】
使用したロータリーキルンの炉芯管の軸方向の長さは4830mm、加熱炉の幅(炉芯管軸方向の長さ)は1800mm(ゾーン1〜5の幅がそれぞれ360mm)、炉芯管の直径は300mm、炉芯管の容積は0.341m、炉芯管の傾斜は1/100、炉芯管の材質はLCNi(低炭素ニッケル:ニッケル含量99質量%以上)、炉芯管の管厚は6mmであった。結果を下記表に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表に示されているように、炉芯管内に供給した脱炭酸ガスの温度が室温であった比較例1及び2では、炉芯管内での滞留が認められた。一方、炉芯管内に供給した脱炭酸ガスの温度が200℃であった実施例1〜4では、炉芯管内での滞留が認められなかった。実施例1〜4ではLiOH純度が高いことが認められた。なお、比較例1及び2における加熱滞留時間、充填率及び炉芯管全体の滞留時間は、ロータリーキルンを良好に運転できなかったため測定できなかった。
【符号の説明】
【0042】
10 ロータリーキルン
12 炉芯管
14 加熱炉
16 供給機
16a ホッパー
16b 供給管
18 乾燥ガス供給管
22 入口フード
24 出口フード
26 排出管
30、32、34 断熱材
36 排気管
38 容器
【要約】
【課題】ロータリーキルンを用いて、水酸化リチウム水和物から水酸化リチウム無水和物を製造する方法において、水酸化リチウム無水和物の生産効率を向上させること。
【解決手段】水酸化リチウム水和物を、炉芯管12の一端12aと炉芯管の加熱炉14に覆われた部分である加熱部12cとの間の領域に供給する供給工程、供給された水酸化リチウム水和物を炉芯管12の他端12b側に向けて送る水酸化リチウム送り工程、水酸化リチウム水和物が供給されているときに、100℃以上の乾燥ガスを炉芯管12内の一端12aと加熱部12cとの間の領域に送出する乾燥ガス送出工程、及び水酸化リチウム送り工程の間に、250〜350℃に設定された加熱炉14により水酸化リチウム水和物を加熱・脱水し、水酸化リチウム無水和物を生成させる加熱工程、を含むことを特徴とする水酸化リチウム無水和物の製造方法。
【選択図】図1
図1