【実施例】
【0030】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
<湿式磁選による白金及びルテニウムの回収方法>
−磁着物回収工程−
ハードディスクの内部部品を、アルミナサンドによりブラスト処理して得られた白金及びルテニウムを含む粉を[ブラスト処理物A]とした。前記[ブラスト処理物A]の成分を表1に示す。なお、前記[ブラスト処理物A]における白金及びルテニウムの含有率は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(SII社製、SPS5100)を用いて測定し、その他の元素の含有率は、蛍光X線分析装置(SHIMADZU社製、製品名「XRF−1700」)を用いて測定した。
【0032】
前記[ブラスト処理物A]120kgに、固液比(固体:液体)が1:1となるように水を添加して、泥状となるように調製し、電磁分離機(日本エリーズマグネチックス株式会社製、商品名「マグネチック・セパレータ」)により湿式磁選を行い[磁着物A1]と[非磁着物A1]とに分離した。前記[磁着物A1]の組成を表1に示し、湿式磁選のフローチャートを
図1に示す。なお、磁着物中の粒度は、100μm以下のものがほとんどであった。
【0033】
−白金及びルテニウム回収工程−
前記[磁着物A1]を、王水で溶解した溶液を白金溶解液として、白金を回収した。また、王水溶解残渣に含まれるルテニウムについては、特開2010−222595号公報等に記載の方法により回収した。
【0034】
(実施例2)
<湿式磁選による白金及びルテニウムの回収方法>
実施例1における[ブラスト処理物A]120kgを、表1に示す成分の[ブラスト処理物B]1,530kgに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、白金及びルテニウムの回収を行った。
【0035】
(実施例3)
<湿式磁選による白金及びルテニウムの回収方法>
実施例1における[ブラスト処理物A]120kgを、ブラスト材を炭化珪素粒とした[ブラスト処理物C]1,650kgに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、白金及びルテニウムの回収を行った。
【0036】
(評価)
<湿式磁選による白金及びルテニウムの回収結果>
実施例1〜3における[ブラスト処理物]、及び[磁着物]の組成を表1に示し、湿式磁選による白金及びルテニウムの回収結果を表2に示す。
ここで、磁着物の質量と非磁着物の質量との合計量が、ブラスト処理物の合計量を上回っているが、非磁着物の乾燥不十分によるものである。
なお、白金及びルテニウムにおける、分配率は、処理済ブラストと磁着物における白金及びルテニウムの含有量から求め、濃縮率は、処理済ブラストと磁着物における白金及びルテニウムの含有率から求めた。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
実施例1において、前記[磁着物A1]における白金含有率は4.88質量%、前記[非磁着物A1]における白金含有率は0.01質量%であった。その結果、前記[ブラスト処理物A]における白金は、磁性側に95.3質量%分配され、濃縮倍率が5.5倍となることがわかった。
また、実施例1において、前記[磁着物A1]におけるルテニウム含有率は18.68質量%、前記[非磁着物A1]におけるルテニウム含有率は0.44質量%であった。その結果、前記[ブラスト処理物A]におけるルテニウムは、磁性側に81.6質量%分配され、濃縮倍率は4.7倍となることがわかった。
実施例1の結果から、白金及びルテニウム含有率の低い[ブラスト処理物A]から、白金及びルテニウムが濃縮されてなる[磁着物A1]を原料として、白金及びルテニウムを回収することができるため、本発明による白金及びルテニウムの回収方法を用いると、処理液の量が抑えられ、低コスト、かつ、高収率で、白金及びルテニウムを回収することができることがわかった。
【0040】
実施例2において、前記[磁着物B1]における白金含有率は2.89質量%、前記[非磁着物B1]における白金含有率は0.01質量%未満であった。その結果、前記[ブラスト処理物B]における白金は、磁性側に95.5質量%分配され、濃縮倍率が26.3倍となることがわかった。
また、実施例2において、前記[磁着物B1]におけるルテニウム含有率は9.09質量%で、前記[非磁着物B1]におけるルテニウム含有率は0.08質量%であった。その結果、前記[ブラスト処理物B]におけるルテニウムは、磁性側に78.6質量%分配され、濃縮倍率は21.6倍ととなることがわかった。
実施例2の結果から、実施例1の[ブラスト処理物A]よりも、鉄やコバルトなどの強磁性体の含有率が低い[ブラスト処理物B]に対しても、本発明は有効であることがわかった。
【0041】
実施例3において、前記[磁着物C1]における白金含有率は3.13質量%、前記[非磁着物C1]における白金含有率は0.01質量%未満であった。その結果、前記[ブラスト処理物C]における白金は、磁性側に94.5質量%分配され、濃縮倍率が31.3倍となることがわかった。
また、実施例3において、前記[磁着物C1]におけるルテニウム含有率は9.34質量%、前記[非磁着物C1]におけるルテニウム含有率は0.06質量%であった。その結果、前記[ブラスト処理物C]におけるルテニウムは、磁性側に85.4質量%分配され、濃縮倍率は28.3倍となることがわかった。
実施例3の結果から、実施例1の[ブラスト材A]であるアルミナだけでなく、実施例3の[ブラスト材C]である炭化珪素鉄に対しても、本発明は有効であることがわかった。
【0042】
(
参考例4)
<乾式磁選による白金及びルテニウムの回収方法>
実施例1における[ブラスト処理物A]120kgを、[ブラスト処理物A]137kgとし、実施例1における[磁着物回収工程]における[湿式磁選]を、電磁分離機(日本エリーズマグネチックス株式会社製、商品名「マグネチック・セパレータ」)による[乾式磁選]に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、白金及びルテニウムの回収を行った。乾式磁選のフローチャートを
図2に示す。
【0043】
(
参考例5)
<乾式磁選による白金及びルテニウムの回収方法>
参考例4における[ブラスト処理物A]137kgを、[ブラスト処理物B]1,410kgに変えたこと以外は、
参考例4と同様にして、白金及びルテニウムの回収を行った。
【0044】
(
参考例6)
<乾式磁選による白金及びルテニウムの回収方法>
参考例4における[ブラスト処理物A]137kgを、[ブラスト処理物C]1,470kgに変えたこと以外は、
参考例4と同様にして、白金及びルテニウムの回収を行った。
【0045】
(評価)
<乾式磁選による白金及びルテニウムの回収結果>
参考例4〜6における乾式磁選による白金及びルテニウムの回収結果を表3に示す。
なお、白金及びルテニウムにおける分配率は、ブラスト処理物と磁着物における白金及びルテニウムの含有量から求め、濃縮率は、ブラスト処理物と磁着物における白金及びルテニウムの含有率から求めた。
【0046】
【表3】
【0047】
参考例4において、前記[磁着物A2]における白金含有率は1.51質量%、前記[非磁着物A2]における白金含有率は0.17質量%であった。その結果、前記[ブラスト処理物A]における白金は、磁性側に91.7質量%分配され、濃縮倍率が1.7倍となることがわかった。
また、
参考例4において、前記[磁着物A2]におけるルテニウム含有率は6.08質量%、前記[非磁着物A2]におけるルテニウム含有率は1.10質量%であった。その結果、前記[ブラスト処理物A]におけるルテニウムは、磁性側に86.8質量%分配され、濃縮倍率は1.6倍となることがわかった。
参考例4の結果から、ある程度の濃縮効果が確認できた。ただし、実施例1の[非磁着物A1]と比較して、
参考例4の[非磁着物A2]は、白金及びルテニウムにおける分配率が高くなり、濃縮率は低くなることがわかった。この原因としては、本来磁着しないはずのアルミナが磁着物に取り込まれたためだと推測される。
【0048】
参考例5において、前記[磁着物B2]における白金含有率は0.34質量%、前記[非磁着物B2]における白金含有率は0.02質量%であった。その結果、前記[ブラスト処理物B]における白金は、磁性側に90.5質量%分配され、濃縮倍率が2.6倍となることがわかった。
また、
参考例5において、前記[磁着物B2]におけるルテニウム含有率は0.92質量%、前記[非磁着物B2]におけるルテニウム含有率は0.1質量%であった。その結果、前記[ブラスト処理物B]におけるルテニウムは、磁性側に81.6質量%分配され、濃縮倍率は2.4倍となることがわかった。
参考例5の結果から、ある程度の濃縮効果が確認できた。ただし、実施例2の[非磁着物B1]と比較して、
参考例5の[非磁着物B2]は、白金及びルテニウムにおける分配率が高くなり、濃縮率は低くなることがわかった。この原因としては、本来磁着しないはずのアルミナが、磁着物に取り込まれたためだと推測される。
【0049】
参考例6において、前記[磁着物C2]における白金含有率は0.40質量%、前記[非磁着物C2]における白金含有率は0.01質量%であった。その結果、前記[ブラスト処理物C]における白金は、磁性側に94.9質量%分配され、濃縮倍率が4.4倍となることがわかった。
また、
参考例6において、前記[磁着物C2]におけるルテニウム含有率は1.34質量%、前記[非磁着物C2]におけるルテニウム含有率は0.06質量%であった。その結果、前記[ブラスト処理物C]におけるルテニウムは磁性側に84.2質量%分配され、濃縮倍率は3.9倍となることがわかった。
参考例6の結果から、ある程度の濃縮効果が確認できた。ただし、実施例3の[非磁着物C1]と比較して、
参考例6の[非磁着物C2]は、白金及びルテニウムにおける分配率が高くなり、濃縮率は低くなることがわかった。この原因としては、本来磁着しないはずのアルミナが、磁着物に取り込まれたためだと推測される。