特許第6074559号(P6074559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6074559流動接触分解においてプロピレンを増強させるための触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074559
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】流動接触分解においてプロピレンを増強させるための触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/80 20060101AFI20170130BHJP
   C10G 11/05 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B01J29/80 M
   C10G11/05
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-514179(P2015-514179)
(86)(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公表番号】特表2015-518782(P2015-518782A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】US2013042413
(87)【国際公開番号】WO2013177388
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2015年1月14日
(31)【優先権主張番号】61/652,019
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100157680
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 潤一
(73)【特許権者】
【識別番号】514250632
【氏名又は名称】キング ファハド ユニバーシティ オブ ペトロリアム アンド ミネラルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】アル−グラミ,ムサエド サレム
(72)【発明者】
【氏名】エルカン,セマル
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−517255(JP,A)
【文献】 特開平11−192431(JP,A)
【文献】 特開2008−055416(JP,A)
【文献】 特表2012−503065(JP,A)
【文献】 特開2004−261628(JP,A)
【文献】 特表2002−534555(JP,A)
【文献】 特表2003−514667(JP,A)
【文献】 特表2009−500153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重炭化水素供給原料からエチレンおよびプロピレンの生成を増加させるためのFCC触媒であり、その触媒は、
0重量%の超安定Y型ゼオライトと、
30重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5触媒であり、前記リン修飾サブミクロンZSM−5触媒は、50nm〜400nmの間の平均粒径を有し、1:2〜1:4の範囲のシリカ対アルミナモル比を有することを特徴とする、リン修飾サブミクロンZSM−5触媒と、
0重量%の擬ベーマイトアルミナと、
0重量%のカオリンと、を含む触媒。
【請求項2】
前記リン修飾サブミクロンZSM−5触媒が、5〜10重量%のとして存在する全体のリン濃度を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記擬ベーマイトアルミナが、解膠される、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
重炭化水素供給原料からガソリンの生成を増強させるためのFCC触媒であり、その触媒は、
0重量%の超安定Y型ゼオライトと、
30重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5触媒であり、前記リン修飾サブミクロンZSM−5触媒は、50nm〜400nmの間の平均粒径を有し、1:2〜1:4の範囲のシリカ対アルミナモル比を有することを特徴とする、リン修飾サブミクロンZSM−5触媒と、
0重量%の擬ベーマイトアルミナと、
0重量%のカオリンと、を含む触媒。
【請求項5】
請求項1に記載のFCC触媒を製造するための方法であって、その触媒は、
10重量%の超安定Y型ゼオライトと、30重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5触媒であり、前記リン修飾サブミクロンZSM−5触媒は、50nm〜400nmの間の平均粒径を有し、1:2〜1:4の範囲のシリカ対アルミナモル比を有することを特徴とする、リン修飾サブミクロンZSM−5触媒と、20重量%の擬ベーマイトアルミナと、40重量%のカオリンと、蒸留水と、を混合し、スラリーを生成することと、
前記スラリーを125℃の温度で乾燥し、顆粒を生成することと、
前記顆粒を、18メッシュ(1000ミクロン)の孔を含む第一の篩を用いて篩にかけることと、
前記篩にかけられた前記顆粒を20メッシュ(841ミクロン)の孔を含む第二の篩を用いて収集することと、
収集された前記顆粒をか焼することと、
か焼された前記顆粒を810℃の温度で6時間、100%の蒸気中で蒸気処理することと、により調整される、方法。
【請求項6】
請求項4に記載のFCC触媒を製造するための方法であって、その触媒は、
20重量%の超安定Y型ゼオライトと、30重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5触媒であり、前記リン修飾サブミクロンZSM−5触媒は、50nm〜400nmの間の平均粒径を有し、1:2〜1:4の範囲のシリカ対アルミナモル比を有することを特徴とする、リン修飾サブミクロンZSM−5触媒と、20重量%の擬ベーマイトアルミナと、30重量%のカオリンと、蒸留水と、を混合し、スラリーを生成することと、
前記スラリーを125℃の温度で乾燥し、顆粒を生成することと、
前記顆粒を、18メッシュ(1000ミクロン)の孔を含む第一の篩を用いて篩にかけることと、
前記篩にかけられた前記顆粒を20メッシュ(841ミクロン)の孔を含む第二の篩を用いて収集することと、
収集された前記顆粒をか焼することと、
か焼された前記顆粒を810℃の温度で6時間、100%の蒸気中で蒸気処理することと、により調整される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽オレフィンの生成を改良するための触媒組成物に関する。より具体的には、本発明は、軽オレフィン、特にプロピレンの生成を増強させるためのFCCプロセスで使用するための触媒組成物、およびその触媒を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慣習的に、有用な化学物質を生成するために、減圧軽油(VGO)等の重炭化水素留分が、流動分解プロセスにおいて触媒を用いて接触分解される。このプロセスの間、触媒は典型的に、触媒反応塔と再生塔との間を循環する。触媒反応塔では、炭化水素が再生塔から供給された高温の触媒と接触し、その炭化水素が分解されて、ガソリン、LPG、および乾性ガスを生成する。このプロセスの間、コークスもまた生成され、触媒上に堆積する。次いで、分解された生成物が、典型的に、サイクロン分離器内でコークス化触媒から分離される。揮発性物質が蒸気によって取り除かれ、次いで、コークス化触媒は再生塔に送られる。次いで、再生された触媒粒子が反応塔に再循環される。
【0003】
従来のFCCプロセスからの生成物予定品目は、軽オレフィン、乾性ガス、およびLPGに加えて、主にガソリンから成る。軽オレフィン、特にプロピレンは、これらの生成物がその高い価値によって精油所の利益率を増大することができるため、精油業者にとってますます重要になっている。種々の合成材料、特に食品包装業において使用される材料および熱可塑性プラスチックの製造において使用されるプロピレンには、大きな需要がある。オレフィンを含有するFCCガソリンおよび芳香族化合物を含有する接触改質ガソリンの使用によって引き起こされる環境懸念のため、高オクタン価ガソリンに対する添加剤としてますます使用されているアルキレート生成の分野において、プロピレンに対するさらなる需要が存在する。プロピレンおよびブチレンは、アルキレート添加剤の原材料である。
【0004】
FCC工程における触媒として、以前はZSM−5等のペンタシルゼオライトファミリーからの小孔のゼオライトが使用されていた。さらに、ペンタシルゼオライトは、従来のFCC触媒の軽オレフィン収率を上昇させるための添加剤として使用されていた。しかしながら、当該技術分野の以前の方法は、有用で需要のある軽オレフィンの低い収率の生成に悩まされていた。このようにして、プロピレン等の軽オレフィンの種々の用途のため、プロピレン生成において生成を増加させる、および/または効率を改善させる必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
概して、重炭化水素の流動接触分解によって、増強された軽オレフィン収率をもたらすための触媒が提供される。
【0006】
別の態様において、重炭化水素供給原料からのプロピレンおよびガソリンの生成を増加させるためのFCC触媒が提供される。その触媒は、10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、10〜20重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5、20〜30重量%の擬ベーマイトアルミナ、および30〜40重量%のカオリンを含む。
【0007】
ある特定の実施形態において、リン修飾サブミクロンZSM−5は、3ミクロン未満の結晶径を有する。ある特定の実施形態において、リン修飾サブミクロンZSM−5触媒は、1:2〜1:4の範囲のシリカ対アルミナ比を有する。ある特定の実施形態において、リン修飾サブミクロンZSM−5触媒は、5〜10重量%のリンを含む。ある特定の実施形態において、擬ベーマイトアルミナは、解膠されている。
【0008】
1つの態様において、重炭化水素供給原料からの軽オレフィンの生成を増強させるためのFCC触媒が提供される。本触媒は、10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、10〜20重量%のペンタシルゼオライト、20〜30重量%のバインダー材、および30〜40重量%の粘土充填材を含む。
【0009】
ある特定の実施形態において、ペンタシルゼオライトは、リン修飾サブミクロンZSM−5である。ある特定の実施形態において、バインダー材は、擬ベーマイトアルミナである。ある特定の実施形態において、粘土充填材は、カオリンである。
【0010】
別の態様において、重炭化水素供給原料の流動接触分解のためのプロセスが提供される。本プロセスは、重炭化水素供給原料をFCC反応塔の反応区画に供給して、その重炭化水素供給原料を触媒と接触させることを含み、触媒は、10〜20重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5、10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、20〜30重量%の擬ベーマイトアルミナ、および20〜40重量%のカオリンを含む。本プロセスは、反応区画の出口温度が550℃の温度で維持されるように、反応区画を維持するステップをさらに含み、触媒および重炭化水素供給原料は、ガソリンおよびプロピレンを含む排出液を生成するように重炭化水素供給原料を分解するために十分な時間をかけて接触する。
【0011】
ある特定の実施形態において、本プロセスは、少なくとも700℃の温度で触媒を再生させるステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】サブミクロンZSM−5サンプルの粒径分布を示す。
【0013】
図2】ESEMで測定したサブミクロンZSM−5サンプルの形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明は例示のための多くの特定の詳細を含むが、当業者であれば、本明細書に記載の触媒および方法に対する多くの例、変形、および変更が本発明の範囲および趣旨の範囲内であると認識すると理解される。したがって、本明細書に記載の本発明の例示的な実施形態は、請求項に係る発明のいかなる一般性を失うこともなく、またいかなる制限を強いられることもなく、示される。
【0015】
上で述べたように、本発明のある特定の実施形態において、流動接触分解(FCC)プロセスにおいてプロピレンの生成を増強させるための触媒組成物が提供される。ある特定の実施形態において、重炭化水素流からプロピレンおよびガソリンの生成を増加させるための触媒組成物が提供される。
【0016】
1つの態様において、本発明は、有効触媒成分として超安定Y型ゼオライトおよびペンタシルゼオライトの両方を有するFCC触媒を対象とする。これらのFCC触媒は、成形粒子中に超安定Y型ゼオライトおよびペンタシルゼオライトの両方を含有する。これらのFCC触媒は、同じマトリックスを共有する。ある好ましい実施形態において、各粒子は、概して球状を有する、超安定Y型ゼオライトおよびペンタシルゼオライトの両方を含有する。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、重炭化水素供給原料から軽オレフィンの生成を増強させるためのFCC触媒は、超安定Y型ゼオライト、ペンタシルゼオライト、バインダー材、および粘土充填材を含む。ある特定の実施形態において、FCC触媒は、超安定Y型ゼオライト、ペンタシルゼオライト、バインダー材、および粘土充填材を含む。すべての重量パーセントは、全FCC触媒の重量を参照する。
【0018】
超安定Y型ゼオライトは、従来のY型ゼオライトよりも大きいシリコン対アルミニウム比を含む。ある特定の実施形態において、超安定Y型ゼオライトは、分解成分として作用する。ある特定の実施形態において、超安定Y型ゼオライトは、希土類元素を含まない。ある特定の実施形態において、超安定Y型ゼオライトは、0.2重量%未満、あるいは約0.1〜0.2重量%、あるいは約0.05〜0.1重量%の希土類元素を含有する。ある特定の実施形態において、超安定Y型ゼオライトは、大幅に脱アルミネートされる。FCC触媒組成物中に存在する超安定Y型ゼオライトの割合は、例えば、約10〜30重量%、あるいは約10〜20重量%、あるいは約15〜25重量%である。好ましい実施形態において、超安定Y型ゼオライトは、約24.56オングストロームのユニットセルサイズを有する。
【0019】
本発明の少なくとも1つの実施形態によると、FCC触媒は、ペンタシルゼオライトを含む。好ましい実施形態において、FCC触媒は、ペンタシルゼオライトZSM−5を含む。本発明において、ペンタシルゼオライトは、サブミクロンの結晶径を有する。本明細書に使用される場合、「サブミクロン」という用語は、図1に示されるように、4000nm未満(4.0ミクロン未満)の平均粒径分布を有するペンタシルゼオライトの結晶径を指す。ある特定の実施形態において、FCC触媒は、約0.05ミクロン〜3ミクロンのサブミクロンの結晶径を有するペンタシルゼオライトを含む。ある特定の実施形態において、サブミクロンZSM−5の結晶径は、約0.05〜0.4ミクロンの平均粒径分布を有する。サブミクロンZSM−5材料のある標準モルホロジーを図2に示す。ある特定の好ましい実施形態において、ペンタシルゼオライトの大きさは、約2ミクロン未満、あるいは約1ミクロン未満、あるいは約0.40ミクロン未満、あるいは約0.40ミクロン〜約0.05ミクロン、あるいは約0.35ミクロン〜約0.10ミクロンである。サブミクロンサイズのペンタシルゼオライトは、FCC触媒内のペンタシルゼオライトの拡散を増大させる。ある特定の実施形態において、サブミクロンZSM−5は、より大きいZSM−5結晶を有する触媒中に存在する拡散限界を克服する。ある特定の実施形態において、ペンタシルゼオライト、例えばサブミクロンZSM−5は、約1:4、あるいは約1:3、およびあるいは約1:2のシリカ対アルミナモル比を含む。ある特定の実施形態において、シリカ対アルミナモル比は、約1:4〜1:3、あるいは約1:3〜1:2、あるいは約1:4〜1:2であり得る。FCC触媒中のペンタシルゼオライト、例えばサブミクロンZSM−5の濃度は、約10〜30重量%、あるいは約10〜20重量%、あるいは約15〜25重量%であり得る。
【0020】
ある特定の実施形態において、ペンタシルゼオライト、例えばサブミクロンZSM−5は、リン修飾サブミクロンZSM−5を生成するために、リン含有成分、例えば、リン酸またはリン酸モノアンモニウムで処理されてもよい。ある特定の実施形態において、ペンタシルゼオライトのPとして存在する全体のリン濃度は、ZSM−5の約5〜20重量%、あるいはZSM−5の約5〜10重量%、あるいはZSM−5の約10〜20重量%であり得る。リン含有成分は、ZSM−5を安定化するために使用される。促進剤は必要ないか、または使用されない。
【0021】
本発明において有用なFCC触媒は、酸促進剤、固体酸促進剤、粘土促進剤、またはその他を含む任意の促進剤を含まない。FCC触媒は、酸成分を含み得るが、その成分は促進剤として作用しない。これに代えて、それは、触媒の安定化等のいくつかの他の機能を提供する。FCC触媒はまた、酸分散アルミナの不在下で用いられる。
【0022】
ある特定の実施形態において、FCC触媒は、バインダー材を含む。ある特定の実施形態において、バインダー材には、アルミナ材が挙げられる。少なくとも1つの実施形態において、アルミナ材は、擬ベーマイトである。擬ベーマイトは、ベーマイトよりも高い水分濃度を有する水酸化アルミナ酸化物である。ある特定の実施形態において、擬ベーマイトは、「キャタパル(Catapal)」グレードの擬ベーマイトである。ある特定の実施形態において、組成物中のアルミナの割合は、約10〜30重量%、あるいは約15〜25重量%、あるいは約20〜30重量%であり得る。
【0023】
ある特定の実施形態において、バインダー材、例えば、アルミナ材は、一塩基酸、例えば、HNOまたはHClで任意に解膠されてもよい。解膠されたアルミナ材は、強化された物理的強度の触媒粒子を提供すると考えられている。解膠されたアルミナは、その結合を強化し、それによりFCC触媒微細球の物理的強度を改善する。
【0024】
ある特定の実施形態において、FCC触媒は、解膠された擬ベーマイト等のアルミナ含有材料であり得るマトリックスを含み、それは結合剤として作用し得る。
【0025】
ある特定の実施形態において、FCC触媒は、粘土充填材を含む。ある特定の実施形態において、粘土充填材は、粘土鉱物を含む。少なくとも1つの実施形態において、粘土充填材は、カオリンを含む。FCC触媒は、柱状粘土を含まない粘土充填材を含む。本発明のFCC触媒での使用に適した粘土充填材は、促進剤として作用しない。ある特定の実施形態において、粘土充填材の割合には、約30〜50重量%、あるいは約30〜40重量%、あるいは約35〜45重量%、あるいは約40〜50重量%が挙げられる。
【0026】
他の実施形態において、FCC触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、粘土、結合剤等の、典型的にそのような組成物に利用される成分を含む。FCC触媒は、コロイダルシリカなしで調製され、用いられる。代替の実施形態において、触媒組成物は、金属酸化物、シリコン酸化物、またはアルミニウム酸化物、金属水酸化物等の他の金属化合物を含み得る。ある特定の実施形態において、FCC触媒は有利に結合し、微細球等の成形粒子を形成する。ある特定の実施形態において、触媒組成物は、微細球等の成形粒子に成形され、FCCプロセスにおいて使用されてもよく、それは増加したプロピレン収率をもたらす。
【0027】
1つの実施形態において、重炭化水素供給原料から軽オレフィンの生成を増強させるためのFCC触媒が提供される。FCC触媒は、約10〜30重量%の超安定Y型ゼオライト、約10〜30重量%のペンタシルゼオライト、約10〜30重量%のバインダー材、および約30〜50重量%の粘土充填材を含む。本配合の触媒において、2つのゼオライトが、同じ触媒粒子内に存在してもよく、同じマトリックスを共有してもよい。
【0028】
別の実施形態において、重炭化水素供給原料から軽オレフィンの生成を増強させるためのFCC触媒が提供される。その触媒は、約10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、約10〜20重量%のペンタシルゼオライト、約20〜30重量%のバインダー材、および約30〜40重量%の粘土充填材を含む。本配合の触媒において、2つのゼオライトが、同じ触媒粒子内に存在してもよく、同じマトリックスを共有してもよい。
【0029】
別の実施形態において、重炭化水素供給原料から軽オレフィンの生成を増強させるためのFCC触媒が提供される。その触媒は、約10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、約10〜20重量%のペンタシルゼオライト、約20〜30重量%のバインダー材、および約30〜40重量%の粘土充填材を含む。本配合の触媒において、2つのゼオライトが、同じ触媒粒子内に存在してもよく、同じマトリックスを共有してもよい。
【0030】
別の実施形態において、重炭化水素供給原料から軽オレフィンの生成を増強させるFCC触媒が提供される。その触媒は、約10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、約10〜20重量%のサブミクロンZSM−5、約20〜30重量%のバインダー材、および約30〜40重量%の粘土充填材を含む。本配合の触媒において、2つのゼオライトが、同じ触媒粒子内に存在してもよく、同じマトリックスを共有してもよい。
【0031】
別の実施形態において、重炭化水素供給原料から軽オレフィンの生成を増強させるためのFCC触媒が提供される。その触媒は、約10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、約10〜20重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5、約20〜30重量%のバインダー材、および約30〜40重量%の粘土充填材を含む。本配合の触媒において、2つのゼオライトが、同じ触媒粒子内に存在してもよく、同じマトリックスを共有してもよい。
【0032】
別の実施形態において、重炭化水素供給原料から軽オレフィンの生成を増強させるためのFCC触媒が提供される。その触媒は、約10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、約10〜20重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5、約20〜30重量%の擬ベーマイトアルミナ材、および約30〜40重量%の粘土充填材を含む。本配合の触媒において、2つのゼオライトが、同じ触媒粒子内に存在してもよく、同じマトリックスを共有してもよい。
【0033】
別の実施形態において、重炭化水素供給原料から軽オレフィンの生成を増強させるためのFCC触媒が提供される。その触媒は、約10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、約10〜20重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5、約20〜30重量%の解膠された擬ベーマイトアルミナ材、および約30〜40重量%の粘土充填材を含む。本配合の触媒において、2つのゼオライトが、同じ触媒粒子内に存在してもよく、同じマトリックスを共有してもよい。
【0034】
別の実施形態において、重炭化水素供給原料から軽オレフィンの生成を増強させるためのFCC触媒が提供される。その触媒は、約10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、約10〜20重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5、約20〜30重量%の解膠された擬ベーマイトアルミナ材、および約30〜40重量%のカオリンを含む。本配合の触媒において、2つのゼオライトが、同じ触媒粒子内に存在してもよく、同じマトリックスを共有してもよい。
【0035】
別の実施形態において、重炭化水素供給原料から軽オレフィンの生成を増強させるためのFCC触媒が提供される。その触媒は、約10〜20重量%の超安定Y型ゼオライト、約10〜20重量%のリン修飾サブミクロンZSM−5、約20〜30重量%の解膠された擬ベーマイトアルミナ材、および約30〜50重量%のカオリンを含む。本配合の触媒において、2つのゼオライトが、同じ触媒粒子内に存在してもよく、同じマトリックスを共有してもよい。
【0036】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の触媒は、FCCプロセスのライザー反応槽またはダウナー反応槽において有利に使用され得る。本明細書に記載の触媒は、高温で高過酷なFCCプロセスにおいて使用されてもよい。高温で高過酷なFCCプロセスにおける本明細書に記載の触媒の使用は、炭化水素を分解する間の接触時間を有利に最小化し、炭化水素の飽和を防ぐ。本明細書に使用される場合、高過酷とは、高い触媒の対供給比率を示す。高温で高過酷なFCCプロセスの利点は、プロピレンへの変換を最大化することである。当業者であれば、記載の触媒粒子を様々な種類の反応槽に適合させることができることを理解されたい。
【0037】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載のFCC触媒は、高過酷なダウナー型のFCC装置において使用されてもよい。
【0038】
[実施例]
【0039】
FCCプロセスは、多数の変数および競争反応を含む。多数の変数が、任意の1つの変数の変化に基づいて結果を予測する能力に影響し、プロセスの変数を他と切り離して考えることはできないことを意味する。加えて、多くの様々な構成要素間だけではなく、分解および飽和反応等の経路間にも競争反応が存在するため、混合炭化水素の接触分解の反応を他と切り離して考えることはできない。要するに、未知数の程度が、そのようなプロセスの正確なシミュレーションを不可能にし、プロセスに対して提案される変化の影響を予測不可能にする。本明細書に記載のFCC触媒を用いるFCCプロセスの反応生成混合物を正確にシミュレーションする試みは、構成要素中の多数の変数および競争反応を説明することはできなかった。以下の実施例が、本明細書に記載のFCC触媒を使用する影響を理解するために必要であった。
【0040】
FCCプロセスにおいて、分解および飽和は、競争反応経路である。拡散および水素転移反応の程度は、種々の反応成分の接触時間、および反応が飽和反応生成物に対してであるか、または不飽和反応生成物に対してであるかにある程度左右される。
【0041】
触媒調製例:Cormaら(Journal of Catalysis,237(2006)267−277)によって記載されるように、ZSM−5ゼオライトをリン酸モノアンモニウムの溶液に含浸した。ZSM−5ゼオライトの乾燥重量に基づいて、スラリー中の固体の割合がおよそ10重量%であり、かつ溶液中のリンの量がおよそ10重量%であるように、ZSM−5粉末をリン酸モノアンモニウムの溶液中でスラリー状にした。スラリーを約85℃で撹拌しながら加熱し、蒸発乾燥した。結果として生じた材料を2時間かけて約100℃でさらに乾燥し、次いで約500℃で1時間かけてか焼し、P−ZSM−5と称されるリン修飾ZSM−5ゼオライトを生成した。
【0042】
60g(乾量基準)のP−ZSM−5および30g(乾量基準)の超安定Y型ゼオライト(USY)を410gの蒸留水と2分間混ぜることによりFCC触媒を調製し、ゼオライトスラリーを生成した。このゼオライトスラリーに150g(乾量基準)のカオリン粘土粉末を添加し、結果として生じたスラリーを5分間混ぜた。
【0043】
別に、60g(乾量基準)のキャタパル(Catapal)アルミナを320gの蒸留水と混合することにより、キャタパル(Catapal)アルミナのスラリーを調製した。7.6gの濃硝酸(70重量%)を添加することでスラリーを解膠し、30分間撹拌した。次いで、結果として生じた解膠したキャタパル(Catapal)スラリーをゼオライト−カオリンスラリーに添加し、10分間混合し、その個々の触媒粒子が溶液中に懸濁したままである粘性スラリーを生成した。
【0044】
結果として生じた粘性スラリーを約125℃で乾燥し、次いで顆粒化し、篩にかけた。18メッシュスクリーン(1000ミクロン)を通過し、20メッシュスクリーン(841ミクロン)上で留まった顆粒をか焼し、蒸気で不活性化し、マイクロ活性(MAT)試験で試験した。触媒生成物は、およそ20重量%のプロピレンを生成した。次いで、篩にかけた触媒を810℃でおよそ6時間、100%の蒸気中で蒸気処理した。次いで、結果として生じた蒸気処理後の触媒をASTM法に従ってMATで試験した。
【0045】
[実施例1]
大結晶(LC)、小結晶(SC)、および本発明のサブミクロン結晶(SMC)の異なるZSM−5の結晶径を使用して、上記手順に従って3つのサンプルを調製した。次いで、575℃で2:5の炭素対酸素(C/O)比の水素化処理減圧軽油(VGO)を用いて、固定床マイクロ活性試験ユニットでこれらの触媒を試験した。表1は、各触媒の組成を示す。表2は、75%の一定した変換において決定したこれらの触媒に対して得られた生成収率を示す。この結果は、SMC型ZSM−5を含有する触媒が、最大量のC2−C4オレフィン、特にプロピレンおよびエチレンを生じさせることを示す。このシステムにおける多数の要因および競争反応を考えると、本発明の触媒が以前の触媒よりも優れた結果を提供するであろうことは、驚くべきものであった。本明細書に記載のFCC触媒を用いてFCCプロセスの反応生成混合物を正確にシミュレーションする試みは、構成要素中の多数の変数および競争反応を説明することはできなかった。表2の結果は、本発明が、ブテンを減少させるが、プロピレン生成を有利に最適化することを示す。
【表1】
【表2】
【0046】
[実施例2]
【0047】
SMC ZSM−5ゼオライトを用いて、上記手順に従って3つのサンプルを調製した。SMC ZSM−5ゼオライトを異なるレベルのリン(P)で処理した。次いで、結果として生じた触媒を、575℃で2:5のC/O比の水素化処理VGOを用いて、固定床MATユニットで試験した。表3は、これらの触媒の組成を示す。表4は、75%の一定の変換において決定されたこれらの触媒に対して得られた生成収率を示す。本明細書に記載のFCC触媒を用いてFCCプロセスの反応生成混合物を正確にシミュレーションする試みは、構成要素中の多数の変数および競争反応を説明することはできなかった。結果は概して、最大プロピレンおよびエチレン収率が低レベルのリン処理によって実現され、これはまた減少した量のコークスを有利に生成することを実証した。
【表3】
【表4】
【0048】
[実施例3]
【0049】
超安定Y型(USY)ゼオライト濃度の効果を判定するために、上記手順に従って2つのサンプルを調製した。このサンプルは、SMC ZSM−5と共に10重量%および20重量%のUSYゼオライトを含んだ。次いで、結果として生じた触媒を、575℃で2:5のC/O比の水素化処理VGOを用いて、固定床MATユニットで試験した。表5は、これらの触媒の組成を提供する。表6は、75%の一定の変換において決定したこれらの触媒に対して得られた生成収率を示す。本明細書に記載のFCC触媒を用いてFCCプロセスの反応生成混合物を正確にシミュレーションする試みは、構成要素中の多数の変数および競争反応を説明することはできなかった。この結果は、より低いUSYゼオライト濃度が、増加したプロピレンおよびエチレン収率を提供することを例示する。
【表5】
【表6】
【0050】
[実施例4]
【0051】
本実施例では、擬ベーマイトアルミナが触媒の活性結合剤として作用する高固体、高粘度プロセスである「アルミナゾル」プロセスを用いて、触媒を調製した。これは、FCC触媒を生成するために用いられる経路である。本実施例の触媒を、575℃の温度で、ダウナー反応塔を有する循環触媒パイロットプラント(CCPP)で試験した。供給原料として水素化処理VGOを供給した。使用された触媒の量は約5kgであり、給油速度は約500g/時間であり、反応塔の出口温度を約575℃で維持し、反応圧力は1kg/cmGであり、再生温度を約720℃で維持し、10重量%の分散蒸気を用いた。表7は、CCPP反応塔で得られた変換および生成収率を示す。本明細書に記載のFCC触媒を用いてFCCプロセスの反応生成混合物を正確にシミュレーションする試みは、構成要素中の多数の変数および競争反応を説明することはできなかった。これらの結果は、本発明の触媒が、41.0のC/O比で最大約21重量%のプロピレン収率、ならびに最大約34重量%のガソリン収率をもたらすことを示す。
【表7】
【0052】
[実施例5]
【0053】
触媒を用いて、550℃から600℃の範囲の温度で、実施例4に記載のCCPP反応塔でVGO分解を実施した。550℃、575℃、および600℃の温度における分解から得られたデータを表8に示す。本明細書に記載のFCC触媒を用いて、FCCプロセスの反応生成混合物を正確にシミュレーションする試みは、構成要素中の多数の変数および競争反応を説明することはできなかった。このデータは、本触媒を使用して、従来のFCCプロセスにおいて現在使用されているものと同様の温度でVGOを分解できることを実証する。
【表8】
【0054】
[実施例6]
【0055】
本発明の触媒の1つの実施形態の性能を、市販のFCC触媒および添加剤を含む混合物と比較した。実施例4に示した条件で、600℃において、CCPPで水素化処理VGOを分解した。この結果を表9に提供し、触媒が、Cオレフィンのより大きい収率およびCオレフィンの同等の収率を提供することを示す。本明細書に記載の触媒を用いたガソリン生成は、市販のFCC触媒および添加剤混合物のものよりも大きいが、コークス生成はほぼ同じである。本明細書に記載のFCC触媒を用いてFCCプロセスの反応生成混合物を正確にシミュレーションする試みは、構成要素中の多数の変数および競争反応を説明することはできなかった。
【表9】
【0056】
[実施例7]
【0057】
パイロットプラント実験から選択されたサンプルのガソリン組成物をGC−PIONA分析によって判定した。表10は、この組成を示す。本明細書に記載のFCC触媒を用いてFCCプロセスの反応生成混合物を正確にシミュレーションする試みは、構成要素中の多数の変数および競争反応を説明することはできなかった。
【表10】
【0058】
本明細書に提供される方法および組成物は、頻繁に直面するいくつかの問題を解決する。
【0059】
本発明を詳細に記載してきたが、種々の変化、代用、および変更が、本発明の原理および範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの適切な法的均等物によって決定されるべきである。
【0060】
単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明らかに指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0061】
任意の(Optional)、または任意に(Optionally)、とは、続いて記載する事象もしくは状況が起こり得るか、または起こり得ないことを意味する。説明は、事象もしくは状況が起こる事例およびそれが起こらない事例を含む。
【0062】
範囲は、本明細書において、大体のある特定の数値から、および/または大体の別の特定の数値までとして示され得る。そのような範囲が示される場合、別の実施形態は、その範囲内のすべての組み合わせと共に、一方の特定の数値から、および/または他の特定の数値までであることを理解されたい。同様に、特定の数値「未満(less than)」として範囲が示される場合、これは、本明細書の文脈において別途指示されない限り、特定の数値未満またはそれと同じ数値を示す。
【0063】
本出願を通して、特許または刊行物を参照する場合、これらの参考文献が本明細書に記載の記述と矛盾する場合を除き、本発明が関連する最先端技術をより完全に説明するために、これらの参考文献のその全体の開示は参照により本明細書に組み込まれることが意図される。
【0064】
本明細書に、および添付の特許請求の範囲に使用される場合、「含む(comprise)」、「有する(has)」、および「含む(include)」という単語、ならびにそれらのすべての文法的変形は、それぞれが、拡大できる非限定的な意味を含むことを意図し、追加の要素またはステップを除外しない。
【0065】
本明細書に使用される場合、「第1の(first)」および「第2の(second)」等の用語は、適宜割り当てられ、単に装置の2つ以上の構成要素の間を区別することが意図される。「第1の(first)」および「第2の(second)」という単語には、他の意図はなく、構成要素の名称または説明の一部ではなく、またそれらは、構成要素の相対的な場所または位置を必ずしも定義するわけではないことを理解されたい。さらに、「第1の(first)」および「第2の(second)」という用語の単なる使用は、その可能性が本発明の範囲内であることが意図されるが、任意の「第3の(third)」構成要素があることを必要としないことを理解されたい。

図1
図2