特許第6074567号(P6074567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074567
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】パルス発電機及び発電機群
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/08 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   H02N1/08
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-544336(P2015-544336)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公表番号】特表2016-500248(P2016-500248A)
(43)【公表日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】CN2013087820
(87)【国際公開番号】WO2014082561
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年5月28日
(31)【優先権主張番号】201210506295.0
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516044129
【氏名又は名称】北京納米能源与系統研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149766
【弁理士】
【氏名又は名称】京村 順二
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジョンリン
(72)【発明者】
【氏名】ジュウ,グワン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ゾンホン
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−010564(JP,A)
【文献】 特開昭60−032061(JP,A)
【文献】 特開平03−179364(JP,A)
【文献】 特開2001−125221(JP,A)
【文献】 特開2011−172366(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102684546(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102710166(CN,A)
【文献】 特開平10−225145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00− 1/12
H02N11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板上における第1の導電薄膜層と、
前記第1の導電薄膜層上における絶縁薄膜層と、
第2の基板と、
前記第2の基板上における第2の導電薄膜層と、
前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とを対向させるように、前記第1の基板と前記第2の基板とを接続するための弾性接続体と、
を備え、
前記第1の基板または前記第2の基板に外力を加えていない場合、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とは離間しており、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層との距離は、前記絶縁薄膜層の厚さよりも1桁以上大きく、
前記第1の基板または前記第2の基板に外力を加えている場合、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とは接触し、その間に表面電荷の移動を発生させることを特徴とするパルス発電機。
【請求項2】
前記第2の導電薄膜層及び/又は絶縁薄膜層の表面に対する化学変性により、極性が正である材料の表面に電子が奪われやすい官能基を導入する、または、極性が負である材料の表面に電子を奪われにくい官能基を導入することを特徴とする請求項に記載のパルス発電機。
【請求項3】
第1の基板と、
前記第1の基板上における第1の導電薄膜層と、
前記第1の導電薄膜層上における絶縁薄膜層と、
第2の基板と、
前記第2の基板上における第2の導電薄膜層と、
前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とを対向させるように、前記第1の基板と前記第2の基板とを接続するための弾性接続体と、
を備え、
前記第1の基板または前記第2の基板に外力を加えていない場合、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とは離間しており、
前記第1の基板または前記第2の基板に外力を加えている場合、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とは接触し、その間に表面電荷の移動を発生させ、
前記第2の導電薄膜層及び/又は絶縁薄膜層の表面に対する化学変性により、極性が正である材料の表面に電子が奪われやすい官能基を導入する、または、極性が負である材料の表面に電子を奪われにくい官能基を導入することを特徴とするパルス発電機。
【請求項4】
前記第2の導電薄膜層および/または絶縁薄膜層の表面に対する化学変性により、極性が正である材料の表面に正電荷を導入し、極性が負である材料の表面に負電荷を導入することを特徴とする請求項に記載のパルス発電機。
【請求項5】
第1の基板と、
前記第1の基板上における第1の導電薄膜層と、
前記第1の導電薄膜層上における絶縁薄膜層と、
第2の基板と、
前記第2の基板上における第2の導電薄膜層と、
前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とを対向させるように、前記第1の基板と前記第2の基板とを接続するための弾性接続体と、
を備え、
前記第1の基板または前記第2の基板に外力を加えていない場合、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とは離間しており、
前記第1の基板または前記第2の基板に外力を加えている場合、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とは接触し、その間に表面電荷の移動を発生させ、
前記第2の導電薄膜層および/または絶縁薄膜層の表面に対する化学変性により、極性が正である材料の表面に正電荷を導入し、極性が負である材料の表面に負電荷を導入することを特徴とするパルス発電機。
【請求項6】
前記第2の導電薄膜層及び/又は絶縁薄膜層の表面に、ミクロン又はサブミクロンレベルの微小構造を持つアレイが配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のパルス発電機。
【請求項7】
前記第2の導電薄膜層と絶縁薄膜層とは、形状が同じであり、前記第1の基板または前記第2の基板に外力を加えると、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とは完全に接触することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のパルス発電機。
【請求項8】
前記弾性接続体は、前記絶縁薄膜層の周囲に配置されている一つ又は複数のバネを備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のパルス発電機。
【請求項9】
前記第1の基板及び/又は前記第2の基板は、有機ガラス材、PE材又はPVC材からなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のパルス発電機。
【請求項10】
前記第2の導電薄膜層は、表面が水平で平滑なアルミニウム薄膜層又は銅薄膜層であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のパルス発電機。
【請求項11】
前記絶縁薄膜層は、ポリテトラフルオロエチレン薄膜またはポリジメチルシロキサン薄膜からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のパルス発電機。
【請求項12】
前記第1の導電薄膜層は、アルミニウム薄膜層または銅薄膜層であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のパルス発電機。
【請求項13】
前記絶縁薄膜層は、ポリジメチルシロキサンからなり、前記第2の導電薄膜層は、アルミニウム薄膜からなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のパルス発電機。
【請求項14】
前記弾性接続体は、前記第2の基板に貼り付けられるように前記第2の導電薄膜層の周囲を囲む弾性材料であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のパルス発電機。
【請求項15】
上下方向に積層される請求項1〜のいずれか1項に記載のパルス発電機を複数備え、
上下方向に隣接する2つの前記パルス発電機において、第1のパルス発電機は第2のパルス発電機の上に位置し、第1のパルス発電機の前記第2の基板は第2のパルス発電機の前記第1の基板になり、
前記複数のパルス発電機間に、直列及び/又は並列の接続が形成されていることを特徴とするパルス発電機群。
【請求項16】
前記複数のパルス発電機において、各前記パルス発電機の第1の導電薄膜層は、導電構造によって接続され、各前記パルス発電機の第2の導電薄膜層は、導電構造によって接続されていることを特徴とする請求項15に記載のパルス発電機群。
【請求項17】
上下方向に隣接する2つの前記パルス発電機において、前記第1のパルス発電機の第2の導電薄膜層と前記第2のパルス発電機の第1の導電薄膜層とは、導電構造によって接続されていることを特徴とする請求項15に記載のパルス発電機群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機に係り、特に、外力を加えた場合、力学的エネルギーを電気エネルギーに変換するパルス発電機及び発電機群に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロエレクトロニクス及び材料の技術が高速に発展し、複数の機能を有するとともに高度に集積化された新しいマイクロ電子機器が、多く開発され、人間の生活の各分野で、とても重要な応用に使用されている。しかしながら、これらのマイクロ電子機器と整合する電源システムの研究は、相対的に遅れており、普通、これらのマイクロ電子機器の電源は、直接又は間接に電池から供給されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、電池は、体積が大きいだけでなく、重くて、含有される有毒化学物質が環境及び人体に対して、潜在的な危害があるため、動きや振動などの自然に存在する力学的エネルギーを電気エネルギーに変換する技術の開発は、きわめて重要な意義がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、パルス発電機に加えられる外力の力学的エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、マイクロ電子機器に電源を提供することができるパルス発電機及び発電機群を提供することである。
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、パルス発電機であって、
第1の基板と、
前記第1の基板上における第1の導電薄膜層と、
前記第1の導電薄膜層上における絶縁薄膜層と、
第2の基板と、
前記第2の基板上における第2の導電薄膜層と、
前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とを対向させるように、前記第1の基板と前記第2の基板とを接続するための弾性接続体と、
を備え、
前記第1の基板または前記第2の基板に外力を加えていない場合、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とは離間しており、
前記第1の基板または前記第2の基板に外力を加えている場合、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とは接触し、その間に表面電荷の移動を発生させる。
【0006】
好ましくは、前記第1の基板または前記第2の基板上に外力を加えていない場合、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層との距離は、絶縁薄膜層の厚さよりも1桁以上大きい。
【0007】
好ましくは、前記第2の導電薄膜層及び/又は絶縁薄膜層の表面に、ミクロン又はサブミクロンレベルの微小構造を持つアレイが配置されている。
【0008】
好ましくは、前記第2の導電薄膜層及び/又は絶縁薄膜層の表面に対する化学変性により、極性が正である材料の表面に電子が奪われやすい官能基を導入する、または、極性が負である材料の表面に電子を奪われにくい官能基を導入する。
【0009】
好ましくは、前記第2の導電薄膜層および/または絶縁薄膜層の表面に対する化学変性により、極性が正である材料の表面に正電荷を導入し、極性が負である材料の表面に負電荷を導入する。
【0010】
好ましくは、前記第2の導電薄膜層と絶縁薄膜層とは、形状が同じであり、前記第1の基板または前記第2の基板に外力を加えると、前記絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層とは完全に接触する。
【0011】
好ましくは、前記弾性接続体は、前記絶縁薄膜層の周囲に配置されている一つ又は複数のバネを備える。
【0012】
好ましくは、前記第1の基板及び/又は前記第2の基板は、有機ガラス材、PE材又はPVC材からなる。
【0013】
好ましくは、前記第2の導電薄膜層は、表面が水平で平滑なアルミニウム薄膜層又は銅薄膜層である。
【0014】
好ましくは、前記絶縁薄膜層は、ポリテトラフルオロエチレン薄膜またはポリジメチルシロキサン薄膜からなる。
【0015】
好ましくは、前記第1の導電薄膜層は、アルミニウム薄膜層または銅薄膜層である。
【0016】
好ましくは、前記絶縁薄膜層は、ポリジメチルシロキサンからなり、前記第2の導電薄膜層は、アルミニウム薄膜からなる。
【0017】
好ましくは、前記弾性接続体は、前記第2の基板に貼り付けられるように前記第2の導電薄膜層の周囲を囲む弾性材料である。
【0018】
一方、本発明は、パルス発電機群を提供する。当該パルス発電機群は、上下方向に積層される上述したパルス発電機を複数備え、
上下方向に隣接する2つの前記パルス発電機において、第1のパルス発電機は第2のパルス発電機の上に位置し、第1のパルス発電機の前記第2の基板は第2のパルス発電機の前記第1の基板になり、
前記複数のパルス発電機間に、直列及び/又は並列の接続が形成されている。
【0019】
好ましくは、前記複数のパルス発電機において、各前記パルス発電機の第1の導電薄膜層は、導電構造によって接続され、各前記パルス発電機の第2の導電薄膜層は、導電構造によって接続されている。
【0020】
好ましくは、上下方向に隣接する2つの前記パルス発電機において、前記第1のパルス発電機の第2の導電薄膜層と前記第2のパルス発電機の第1の導電薄膜層とは、導電構造によって接続されている。
【0021】
本発明のパルス発電機及び発電機群は、従来技術に比べて、以下の利点を有する。
【0022】
本発明のパルス発電機は、第1の基板と、第1の基板上における第1の導電薄膜層と、第1の導電薄膜層上における絶縁薄膜層と、第2の基板と、第2の基板上における第2の導電薄膜層と、絶縁薄膜層と第2の導電薄膜層とを対向させるように前記第1の基板と第2の基板とを接続するための弾性接続体と、を備える。第1の基板または第2の基板上に外力を加えていない場合、絶縁薄膜層と第2の導電薄膜層は、離間しており、第1の基板または第2の基板上に外力を加えている場合、絶縁薄膜層と前記第2の導電薄膜層は、接触してその間に表面電荷の移動を発生させる。本発明のパルス発電機によれば、帯電列で差異があるため、絶縁薄膜と導電薄膜層は、接触して表面電荷の移動を発生させる。そのため、発電機の基板(第1の基板または第2の基板)に周期性的に外力を加えると、第1の導電薄膜層と第2の導電薄膜層との間に、交流パルス信号の出力が形成され、電源なしに、LED等の小型の電子機器に電源を提供することができる。
【0023】
複数のパルス発電機が上下方向に積層され、隣接する2つのパルス発電機間で基板が共用され、複数のパルス発電機間で、直列または並列の接続を形成して、発電機群を形成する。パルス発電機群に外力を加えると、より高い出力を形成することができる。
【0024】
パルス発電機において、第2の導電薄膜層または絶縁薄膜層の表面に対して物理的変化または化学変性を行うことで、外力により第2の導電薄膜層と絶縁薄膜層が接触するときに発生する接触電荷の量を更に向上させ、発電機の出力能力を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の上述したパルス発電機は、ブリッジ整流回路によって直流電流の出力を提供することができる。本発明のパルス発電機の製造方法は簡単で、製造コストも低いので、適用範囲の広いパルス発電機であり、広場、駅などの人の密度が高い場所に設けられることができる。すると、人が通過するときの踏み込み力により、パルス発電機を発電させて、指示灯を駆動したり蓄電池に電気エネルギーを供給したりすることができる。
【0026】
下記の図面により、本発明の上述の目的及び他の目的、特徴並びに利点は、より明らかになる。図面において、同じ符号は、同じ部分を示す。実際のサイズに基づいて比例に拡大または縮小して描いたものではなく、本発明の主旨を示すのにその目的がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のパルス発電機の構成を示す模式図である。
図2】本発明のパルス発電機に外力を加える時の状況を示す模式図である。
図3】本発明のパルス発電機の発電原理を示す模式図である。
図4】本発明のパルス発電機の断面を示す模式図である。
図5】本発明のパルス発電機の断面を示す模式図である。
図6】本発明の実施例によるパルス発電機が手のひらのインパクトに基づく短絡電流の出力図である。
図7】本発明の実施例によるパルス発電機が、踏み込み力によって、600個の商用LEDランプを点灯する場合のリアルタイム図である。
図8】本発明のパルス発電機群の実施例の構成を示す模式図である。
図9】本発明のパルス発電機群の実施例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施例の図面を参照しながら、本発明の実施例における技術案に対して詳しく説明する。以下の実施例は、本発明の一部の実施形態に過ぎず、全ての実施例を示してはいない。当業者が、本発明における実施例に基づいて、進歩性に値する労働を要することなく取得した他の実施例も、本発明の保護範囲に属することは勿論である。
【0029】
なお、本発明に関して、模式図を参照しながら詳細に説明する。本発明の実施例を詳細に説明するときの説明の便利のために上記模式図を例示しただけであり、本発明の保護範囲を限定するものと理解してはいけない。
【0030】
近年、マイクロエレクトロニクス及び材料の技術が高速に発展し、複数の機能を有するとともに高度に集積化された新しいマイクロ電子機器が、多く開発され、人間の生活の各分野において、とても重要な応用に使用されている。動きや振動などの自然に存在する力学的エネルギーを電気エネルギーに変換することで外部電源なしのマイクロデバイスの実現を図る技術の開発は、きわめて重要な意義がある。本発明は、動きや振動などの自然に存在する力学的エネルギーを電気エネルギーに変換する、構成が簡単なパルス発電機を提供して、マイクロ電子機器に適当な電源を提供することができる。本発明のパルス発電機は、帯電列において極性に大きな差異がある材料が接触するときに表面電荷が移動する現象を利用して、外力の力学的エネルギーを電気エネルギーに変換して、LEDなどの小型電子機器に直接に給電することができる。
【0031】
本発明のパルス発電機の基本的な構成は、図1を参照すると、第1の基板10と、第1の基板上における第1の導電薄膜層11と、第1の導電薄膜層11上における絶縁薄膜層12と、第2の基板20と、第2の基板20上における第2の導電薄膜層21と、弾性接続体30と、を含む。ただし、弾性接続体30は、絶縁薄膜層12と第2の導電薄膜層21とを対向させるように、第1の基板10と第2の基板20とを接続するためのものである。前記第1の基板10または第2の基板20に外力を加えていない場合、前記絶縁薄膜層12と前記第2の導電薄膜層21とは、離間している。即ち、絶縁薄膜層12と前記第2の導電薄膜層21とは、隙間を介して離間している。図2を参照すると、前記第1の基板10または第2の基板20上に外力Fを加えた場合、前記絶縁薄膜層12と前記第2の導電薄膜層21とは接触し、その間に表面電荷の移動が生じる。
【0032】
本発明のパルス発電機において、好ましくは、絶縁薄膜層12と前記第2の導電薄膜層21とが、同じ形状を取り、図2に示すように、第1の基板10または第2の基板20に外力を加えた場合、絶縁薄膜層12と前記第2の導電薄膜層21とは、互いに完全に接触することになる。
【0033】
具体的に、「絶縁薄膜層12と前記第2の導電薄膜層21との間に、表面電荷の移動が生じる」ということは、絶縁薄膜層12と第2の導電薄膜層21との材料について、帯電列での順位に差異があることを意味する。ここで、「帯電列」とは、材料の電荷に対する吸引の程度に応じて並べた序列であり、2種類の材料が互いに接触すると、接触面において、正電荷が、帯電列における極性が比較的に負になる材料の表面から、帯電列における極性が比較的に正になる材料の表面に移動することを意味する。今まで、まだ電荷の移動の仕組みを完全に解釈できる統一の理論がなかった。一般的に、このような電荷の移動は、材料の表面の仕事関数に関係し、電子またはイオンの接触面での移動により電荷の移動を実現する。また、電荷の移動は、2種類の材料間の相対摩擦を必要とせず、相互の接触のみで十分である。
【0034】
本発明のパルス発電機の動作原理は、図3を参照すると以下のとおりである。第1の基板または第2の基板に外力を加えていない場合、図3のaに示すように、絶縁薄膜層12と第2の導電薄膜層21とは分離している。外力(矢印で示す)を加えた場合、第2の導電薄膜層21と絶縁薄膜層12とは、外力の作用で互いに接触し、図3のbに示すように、接触の瞬間に表面電荷の移動が発生し、表面接触電荷を形成する。絶縁薄膜層12及び第2の導電薄膜層21を構成する材料の帯電列での順位が異なるため、絶縁薄膜層12の表面に負電荷が発生され、第2の導電薄膜層21の表面に正電荷が発生されるが、これらの電荷の電気量は同じである。外力が消えると、弾性接続体30の回復作用により、絶縁薄膜層12と第2の導電薄膜層21とは、離間され、その間に隙間が発生する。隙間が存在するため、第2の導電薄膜層21の表面の正電荷の第1の導電薄膜層12上での電子に対する引力よりも、絶縁薄膜層12の表面の負電荷の第1の導電薄膜層12での電子に対する反発力の方が大きい。このため、図3のcにおける矢印に示すように、電子は、第1の導電薄膜層12から外部回路を介して第2の導電薄膜層21に向かって移動し、第1の導電薄膜層12上に正電荷が発生される。当該過程で、外部回路/負荷を流す瞬間的なパルス電流が発生する。図3のdにおける矢印に示すように、外力を再度加えると、絶縁薄膜層12の表面の負電荷の反発力の作用で、第2の導電薄膜層21上の電子は、第1の導電薄膜層12に移動し、逆方向の瞬間電流を形成する。このような過程を繰り返すことで、交流のパルス電流が形成される。
【0035】
本発明のパルス発電機において、第1の導電薄膜層は、導電材料からなり、発電機の一方の電極として機能する。第1の導電薄膜層を構成する材料には、特に要求がなく、電子ビーム蒸着またはプラズマスパッタリング等の方法により形成されたCu、Al等の金属薄膜を採用してもよい。第2の導電薄膜層は、導電材料からなり、発電機の他方の電極として機能する。第2の導電薄膜層を構成する材料は、特に要求がなく、表面が水平で平滑な金属薄膜であればよい。電子ビーム蒸着またはプラズマスパッタリング等の方法により形成されたCu、Al等の金属薄膜を採用してもよい。絶縁薄膜層は、非導電材料からなり、帯電列での極性が第2の導電薄膜層の極性との差異が比較的に大きいことを要する。選択可能な絶縁薄膜の材料は、ポリテトラフルオロエチレン薄膜、ポリジメチルシロキサン(PDMS)薄膜などを含むが、これらに限られない。
【0036】
本発明のパルス発電機において、第1の基板及び第2の基板は、変形できない鋼性材料を使用する。本発明において、第1の基板および第2の基板の材料について、特に要求がなく、機械的衝撃に耐える材料であればよい。例えば、有機ガラス材、PE材、PVC材などがある。第1の基板と第2の基板とは、弾性接続体により接続されて支持されている。基板に外力を加えていない場合、第2の導電薄膜層と絶縁薄膜層とは、離間したまま、両者の間に隙間が空いている。当該隙間は、第2の導電薄膜層と絶縁薄膜層との距離で、一般的に、絶縁薄膜層の厚さより1桁以上大きい。弾性接続体は、1個または複数個のバネや、弾性有機物などの弾性材料で構成することができる。図1及び図2におけるバネの図面は、弾性接続体の模式図に過ぎず、弾性接続体の形状及び位置は、第1の基板、第1の導電薄膜層、絶縁薄膜層、第2の基板または第2の導電薄膜層の形状に応じて決められる。複数個のバネを用いて絶縁薄膜層の周囲を巻回するという形態を採用することができる。図4及び図5は、図1の点線ABに沿う断面図を示す。図1におけるパルス発電機の上部の断面図は、図4であり、下部の断面図は、図5である。絶縁薄膜層12と第2の導電薄膜層21は、いずれも方形の形状を有し、それぞれ第1の基板10及び第2の基板20の中部に位置する。弾性接続体は、4つのバネを含んでおり、それぞれ絶縁薄膜層12と第2の導電薄膜層21の周囲に位置する。4つのバネにより、第1の基板10と第2の基板20とは、接続されている。4つのバネは、方形の絶縁薄膜層12または第2の導電薄膜層21の頂角に位置することが好ましい。
【0037】
本発明のパルス発電機において、弾性接続体は、第2の基板に貼り付けられるように第2の導電薄膜層の周囲を囲む弾性材料を使用してもよい。例えば、第1の基板と第2の基板とが接続されるように第2の導電薄膜層を囲む弾性ゴム又はバネであってもよい。本発明のパルス発電機において、弾性接続体の形状及び位置は、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【0038】
本発明の好ましい実施例において、第1の導電薄膜層として、厚さが100nm、サイズが5cm×7cmである銅薄膜層を用い、絶縁薄膜層として、厚さが10μm、サイズが5cm×7cmであるPDMS薄膜層を用い、第2の導電薄膜層として、厚さが10nmであるアルミニウム薄膜層を用い、第1の基板と第2の基板とは、バネによって接続される。第1の基板または第2の基板に外力を加えていない場合、アルミニウム薄膜層とPDMS薄膜層は、離間されたまま、その間に1mmの隙間が空いている。即ち、アルミニウム薄膜層とPDMS薄膜層との距離は、1mmである。
【0039】
帯電列において、PDMS材料が負、アルミニウムが正に帯電するので、本実施例の材料の組み合わせは、パルス発電機の出力を向上させることができる。
【0040】
上記パルス発電機のアルミニウム薄膜層及び銅薄膜層から導線を引き出して、フルブリッジの整流回路に接続することで、パルス発電機が発生した交流電流の出力を直流電流の出力に変換させる。図6は、大人の手のひらでパルス発電機の第1の基板または第2の基板をたたくことにより得られた短絡電流の出力を示し、その瞬間的な電流のピーク値が、約2mAになることができる。
【0041】
発明者は、上述のパルス発電機のアルミニウム薄膜層及び銅薄膜層からの引き出し線を、600個の直列の商用LEDランプに接続して試験を行い、図7に示すような結果を得た。図7において、図aは、パルス発電機に外力を加えていないため、LEDランプが点灯されていない結果を示す。同図の図bは、大人の歩き姿勢で発電機を踏んでいる場合、LEDランプが全て点灯された結果を示す。このように、本実施例のパルス発電機によると、外部の電源からの給電なしに、600個程度の商用LEDランプにリアルタイムに電気エネルギーを供給することができる。
【0042】
本発明のパルス発電機において、また、第2の導電薄膜層及び/又は絶縁薄膜層の表面に対して物理的変化を施すことで、その表面にミクロン(micron)又はサブミクロン(sub−micron)レベルの微小構造を持つアレイが配列するようにして、第2の導電薄膜層と絶縁薄膜層との接触面積を増加させて、接触の電荷量を増やすこともできる。具体的な実施形態として、シリコンシートを第2の基板とし、1層のフォトレジストをスピンコーティングし、フォトリソグラフィー法によって、フォトレジストに、辺の長さがミクロン又はサブミクロンのレベルである正方形のウインドーアレイを形成する。フォトリソグラフィーが終わった第2の基板に対して、熱い水酸化カリウムによる化学エッチングを行うことで、ウインドーにピラミッド形の窪み構成のアレイを形成する。そして、蒸着法またはスパッタリング法により、アルミニウム薄膜を堆積させて、二種の接触材における第2の導電薄膜層とする。絶縁薄膜層は、PDMSを採用する。アルミニウム薄膜とPDMSの二つの材料は、外力の作用で接触して互いに押された場合、PDMSがより良い弾性を有するため、アルミニウム薄膜の表面の窪みに移動してそれを充填することができる。これにより、接触面積が平面による接触よりも大きくなる。他の具体的な実施例として、絶縁薄膜層の表面に、誘導結合プラズマエッチング(inductively coupled plasma etching)法により、ナノワイヤアレイを形成する。たとえば、絶縁薄膜層の表面にスパッタリング装置によって約10ナノメートルの厚みの金を堆積させる。そして、ポリイミドフィルムを、誘導結合プラズマエッチング装置に放置し、金が堆積された面に対してエッチングを行う。それぞれの流量が10sccm、15sccm及び30sccmに、圧力の強さが15mTorrに、温度が55℃に制御されたO2とArとCF4とのガスを供給して、400Wのパワーで、プラズマを生成する。そして、100Wのパワーでプラズマを加速して、約5分のエッチングを行うことで、絶縁薄膜層に大体垂直な約1.5μm長さの高分子ポリイミドナノバーのアレイを取得する。
【0043】
本発明のもう一つの実施例において、第2の導電薄膜層と絶縁薄膜層との表面に、物理的変化を施すことで、その表面にミクロン(micron)又はサブミクロン(sub−micron)レベルの微小構造を持つアレイが配列するようにして、第2の導電薄膜層と絶縁薄膜層との接触面積を増加させて、接触の電荷量を増やすこともできる。
【0044】
本発明のパルス発電機において、互いに接触する第2の導電薄膜層及び/又は絶縁薄膜層の面に対する化学変性によって、接触瞬間での電荷の移動量をさらに向上させることもできる。これによって、接触電荷の密度及び発電機の出力パワーを向上させることができる。化学変性は、以下のように二種類に分けられる。
【0045】
一つは、互いに接触する第2の導電薄膜層及び絶縁薄膜層を構成する材料に対して、正に帯電する材料の表面に、電子が奪われやすい官能基(即ち、強い電子供与基)を導入する、又は、負に帯電する材料の表面に、電子を奪われにくい官能基(即ち、強い電子求引基)を導入することで、接触瞬間での電荷の移動量をさらに向上して、接触電荷の密度及び発電機の出力パワーを向上させる方法である。強い電子供与基は、アミノ基、ハイドロキシ、アルコキシル基などを含む。強い電子求引基は、アシル基、カルボキシル基、ニトロ基などを含む。具体的には、第2の導電薄膜層としてアルミニウム薄膜を、絶縁薄膜層としてPDMSフィルムを使用し、PDMSの表面に強い電子求引基を導入することで、接触電荷の密度を向上させることができる。PDMSの表面に、強い電子求引基として、例えばニトロ基を導入する方法は、プラズマの表面変形による方法を用いて、酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスの雰囲気において、所定のパワーの下でプラズマを生成することにより、アミノ基のポリイミド材料の表面への導入を図るものである。
【0046】
もう一つの方法は、正に帯電する材料の表面に正の電荷を導入し、負に帯電する材料の表面に負の電荷を導入する化学修飾の方法である。具体的な実施形態として、化学結合により、絶縁薄膜層表面に有機分子を修飾して、絶縁薄膜層を帯電させる。例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)電極の表面に、ゾル・ゲル法(sol−gel)により、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を修飾して負の電荷を帯電させる。他の具体的な実施形態として、第2の導電薄膜層の表面に帯電したナノ材料を修飾することができる。即ち、ナノ材料による表面帯電性で、第2の導電薄膜層を帯電させる。例えば、導電薄膜層上において、金−硫の結合により、表面に臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)が含有される金ナノ粒子を修飾する。臭化セチルトリメチルアンモニウムが陽イオンであるため、第2の導電薄膜層全体は正に帯電する。
【0047】
なお、本発明は、複数の上述したパルス発電機を含むパルス発電機群を提供する。ここで、前記複数のパルス発電機が上下の方向に積層されて発電機群を構成する。上下で隣接する2つの前記パルス発電機において、第1のパルス発電機は、第2のパルス発電機の上に位置し、第1のパルス発電機の前記第2の基板は、第2のパルス発電機の前記第1の基板になる。前記複数のパルス発電機間に、直列及び/又は並列の接続を形成する。複数のパルス発電機は、上下方向に積層されているとともに、複数のパルス発電機間は直列または並列に接続されている。このような発電機群は、パルス発電機に比べて、装置の出力パワーを向上することができる。
【0048】
パルス発電機群の実施例として、図8を参照すると、パルス発電機群は、パルス発電機M1、M2及びM3を含み、パルス発電機M2は、パルス発電機M3上に位置し、パルス発電機M1は、パルス発電機M2上に位置している。隣接する2つのパルス発電機M1及びM2において、第1のパルス発電機であるM1の第2の基板B1は、第2のパルス発電機であるM2の第1の基板になる。隣接する2つのパルス発電機M2及びM3において、第1のパルス発電機であるM2の第2の基板B2は、第2のパルス発電機であるM3の第1の基板になる。本発明で、上下方向に隣接する2つのパルス発電機間は、一つの基板を共用している。より多いパルス発電機を含む場合でも同様なので、ここでは例示を省略する。複数のパルス発電機M1、M2及びM3において、各パルス発電機の第1の導電薄膜層は、導電構造によって接続され、各前記パルス発電機の第2の導電薄膜層は、導電構造によって接続されるので、このように接続されたパルス発電機群は、電子機器、電池などの負荷に電気エネルギーを供給することができる。本発明における前記導電構造は、ワイヤ、金属薄膜などの普通の導電材料であればよい。
【0049】
パルス発電機群の他の実施例として、図9を参照すると、パルス発電機群は、パルス発電機N1、N2及びN3を含み、パルス発電機N2はパルス発電機N3上に位置し、パルス発電機N1はパルス発電機N2上に位置している。複数のパルス発電機間の積層形態は、図8と同じである。複数のパルス発電機間の接続は、直列的な接続であり、上下方向に隣接する2つのパルス発電機N1及びN2で、第1のパルス発電機であるN1の第2の導電薄膜層と第2のパルス発電機であるN2の第1の導電薄膜層は、導電構造によって接続されている。同様に、パルス発電機N2の第2の導電薄膜層とパルス発電機N3の第1の導電薄膜層は、導電構造によって接続されている。このように接続されたパルス発電機群は、電子機器、電池などの負荷に電気エネルギーを供給することができる。
【0050】
本発明における前記導電構造は、ワイヤ、金属薄膜などの普通の導電材料であればよい。本発明のパルス発電機群におけるパルス発電機の材料及び構造は、同じでもよいし、異なってもよい。
【0051】
本発明に係るパルス発電機群は、水平方向に配列されてもよい。即ち、図8又は図9におけるパルス発電機群を、互いに並列または直列に接続して水平方向に重なることで、出力パワーがより高いパルス発電機群を形成してもよい。
【0052】
本発明のパルス発電機及び発電機群の各部分の製造は、従来の半導体材料の製造技術を用いることができるので、ここでは特に説明しない。
【0053】
本発明のパルス発電機及び発電機群は、人によって踏んだりたたいたりされるとき等の外力を利用して電気エネルギーを発生することができるため、小型の電子機器に、電池などの給電なしに電源を提供することができ、使いやすい発電機である。また、本発明のパルス発電機及び発電機群は、その製造方法が簡単で、コストが低いため、適用範囲の広いパルス発電機及び発電機群である。
【0054】
以上の記載は、本発明の最適的な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。当業者は、本発明の技術範囲を逸脱しない範囲で、上記に開示された方法及び技術内容に基づいて、本発明の技術案に対して、いろいろ可能な変更及び改進を行ってもよいし、また、同等に変化した等価実施例に変更してもよい。したがって、本発明の技術案の内容を逸脱しない限り、本発明の技術に基づいて実質的に以上の実施例に対する簡単な修正、等価変化及び改進は、全て本発明の技術案が保護する範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9