(54)【発明の名称】線材の超音波たわみ振動装置、超音波切断装置、超音波洗浄装置、超音波分離装置、超音波付着物除去装置、超音波たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、線材を線材の軸方向に超音波振動させてパン、ケーキ、チーズ、カステラ、羊かん等の食品を切断するフードカッターや、人体や動物の臓器の一部を切り取る手術装置などの超音波振動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図31に、線材の超音波振動によって、組織の切除,乳化や結石の破砕等を行う超音波医療装置を示した。超音波医療装置は、
図31のように、超音波振動子9bにワイヤホルダ(線材支持部)10aが取り付けられていて、ワイヤホルダ10aで支持されたワイヤ(線材)7aがワイヤ7aの軸方向に振動するようなっている。超音波振動子9bは図面左右方向に振動し、ワイヤ7aも図面左右方向に振動する。ワイヤ7aの振動によって組織の切除,乳化や結石の破砕等の治療が行われる。
【0004】
図32に、超音波医療装置の先端の拡大図を示した。超音波治療装置のワイヤホルダの先端10bは、弓のような円弧状をしていて、ワイヤ7aが弦のように張られている。ワイヤ7aに対向したワイヤホルダ先端10bの面には、断面が尖った刃10cが形成されている。この超音波治療装置では、ワイヤ7aとワイヤホルダ10bとで囲まれた半月の空間に、切断対象の半月板や腫瘍等の組織を挟み、ワイヤ7aを超音波振動させて切断している。また、必要により、ワイヤホルダ先端10bの刃10cを利用して切断している。
【0005】
この線材を線材の軸方向に超音波振動させて食品等の表面をこする摺動タイプのものは、以下に示すような利点がある。すなわち、食品の表面に垂直に縦振動するカッターホーンの刃先を押し付ける押し付けタイプと違って、チタンなどの高価なカッターホーンを必要とせず、高価なカッターホーンを交換しなくて済む。そのため装置が安価である。また、カッターホーンの刃こぼれが無く安全である。
【0006】
しかし、線材の超音波振動方向が線材の軸方向であるため、食品を切断するには、表面を超音波振動する線材の外周面でこすると同時に、食品の表面に向かって線材を押し付けて押し切っている。食品の表面を超音波振動する線材でこすると、線材と食品の表面の摩擦により熱が発生し、斯かる食品が溶けたりする。そのため、手で線材を食品に押し付ければ食品は切れるので、線材を往復動しない分だけ切れやすい。だが、線材の外周面を食品の表面に押し付けて切るため、食品の表面に尖った刃を垂直に縦振動させて押し付けるカッターホーンの切れ味には及ばない。
【0007】
そこで、線材の超音波振動方向を線材の軸方向に直交する方向で、食品の表面に垂直な方向にすれば、線材を食品の表面に垂直な方向に超音波振動させて切り込んでいくことになる。線材が食品の表面をこするのでなく叩きつける振動は、食品の表面を叩きつけ、叩き切ることになるため大幅な切れ味の向上が期待できる。また、超音波たわみ振動させる線材の長さを長くすれば、寸法の大きな食品等の表面を叩きつけ、叩き切ることも可能になる。
【0008】
特にパン切りナイフの刃はパンの表面で刃が滑らない山谷のある波型刃形状であることが従来から求められている(例えば、特許文献2参照)。線材を超音波たわみ振動させると、定常波(定在波)の波形で振動するため、パンの表面にくい込む刃形は山谷のある波型刃形状になる。そして、パンの表面で滑らない波型刃形状パン切りナイフの実現が期待される。しかし、そのような試みはされていない。
【0009】
また、金属部品等を薬液中で洗浄する装置の一例として、線材コイルを酸洗するときに、酸液に入れた線材コイルを線材の軸方向に超音波振動させて、酸洗効率を上げることが知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、線材コイルが振動しても、線材コイルの表面と酸液が滑る方向である。もし、超音波振動の振動方向を線材の軸方向に直交する方向にできれば、線材コイルが酸液にくい込む、あるいは叩きつけることになるので酸洗効率を大幅にあげることが期待される。しかし、そのような試みはされていない。
【0010】
また、空気などの気体や少量の細かい粒子が混入した飲料水や食品やその他の液体から、気体や少量の細かい粒子を取り出す方法として、液体を円筒容器に入れ、円筒容器内の一端面に振動部材と対面に反射部材を設け、振動部材と反射部材の間に超音波を発生し、液体中に生じた超音波振動の定在波(定常波)により、気体や細かい粒子を分離する超音波分離装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。しかし、液体を全体的に超音波振動させるには、大きなパワーを要している。
【0011】
また、配管等の被洗浄体に超音波振動を与えて、被洗浄体に付着した付着物を除去する装置が提案されているが、配管等の被洗浄体に超音波の縦振動子を固定して超音波振動させ、被洗浄体を励振させるものであった(例えば、特許文献5参照)。
【0012】
また、血管中の狭窄病変部を開くために、断面が三角状に尖った切断用ワイヤ7bとバルーン78bを用いる方法が知られている。この方法は、切断用ワイヤ7bを血管中に入れ、切断用ワイヤ7bの背後でバルーン78bを膨らませて、切断用ワイヤ7bを狭窄病変部に押し付けて治療する(例えば、特許文献6参照)。
【0013】
この方法では、断面の尖った切断用ワイヤ7bを露出したまま、血管や臓器に開けた挿入口から狭窄病変部まで入れることができないため、
図33(a)のバルーン78aとカテーテルチューブ77aを一体にしたバルーン78a付きカテーテルチューブ77aをマンドレル79aで体内に押し込み、バルーン78aが目的の位置に達した時点で、マンドレル79aを引き抜いて、
図33(b)の切断用ワイヤ7b付きマンドレル79bと入れ替え、更にバルーン78aを引き抜いて、代わりのバルーン78bを切断用ワイヤ7bとマンドレル79bの間に入れて、
図33(c)の形にする交換作業を行うと説明している。手術前の事前準備作業としてこのような交換作業をすることは、手術者にも患者にも負担が大きい。そして、切断用ワイヤ7bを押し付けると血管の内壁を損傷する恐れがある。切断用ワイヤ7bを押し付けるのでなく、線材の円筒面を超音波たわみ振動させて叩き付けるようにすれば、切断用ワイヤ7bで治療するより安全が期待されるのであるが、そのような取り組みはされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、所望の長さの線材が超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動をする線材の超音波たわみ振動装置を提供することを第一の課題としている。
【0016】
本発明は、上記線材の超音波たわみ振動装置を用いて、線材を超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動させ、パン、ケーキ、チーズ、カステラ、羊かん等の食品の表面に垂直に、食品の表面に食い込む方向に超音波たわみ振動させ、線材が食品の表面を叩きつけ、叩き切って食品を切断する。そして、線材を食品に押し付ける力を大幅に軽減して切れ味を向上させた超音波切断装置を提供すること、そして線材の長さを長くして、従来切断できなかった長さの食品を切断する超音波切断装置を提供することを第二の課題としている。
【0017】
また、本発明は、上記線材の超音波たわみ振動装置を用いて、金属部品等を薬液中で洗浄する洗浄装置に、超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動をする線材を薬液に入れて、線材のたわみ振動で薬液を撹拌して、洗浄効率を高めた超音波洗浄装置を提供することを第三の課題としている。
【0018】
また、本発明は、上記線材の超音波たわみ振動装置を用いて、超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動させ、液体食品や化学薬品などに直接、超音波振動を与えて気体や少量の細かい異物を分離させて除去する超音波分離装置を提供することを第四の課題としている。
【0019】
また、本発明は、上記線材の超音波たわみ振動装置を用いて、超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動させ、配管等の被洗浄体に付着した付着物に直接、超音波振動を与えて、付着物を配管等の被洗浄体から分離、除去する超音波付着物除去装置を提供することを第五の課題としている。
【0020】
また、本発明は、上記線材の超音波たわみ振動装置を用いて、超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で線材を超音波たわみ振動させ、血管中の狭窄病変部に直接、線材の超音波振動エネルギーを与えて、狭窄病変部の付着物を効果的に除去する超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置を提供することを第六の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、超音波振動子からの超音波縦振動を線材の超音波たわみ振動に変換する線材の超音波たわみ振動装置を提供するために、線材の超音波たわみ振動装置を、超音波振動子と、
超音波振動子と一体に取り付けられ、超音波振動子が発生させる縦振動を、
超音波振動子の縦振動の軸芯から半径方向に離れた位置にある線材取付端面を揺動させるたわみ振動にする超音波たわみホーン本体と、超音波たわみホーン本体の線材取付端面に
、一端を一体に取り付けられた線材と、線材
の他端を支持する支持手段と、超音波振動子を駆動する超音波振動用の電源と、超音波振動子の振動を制御する超音波振動制御手段と
で構成し、超音波振動用の電源及び超音波振動制御手段で超音波振動子を縦振動させ、超音波たわみホーン本体で縦振動を
、前記線材取付端面を揺動するたわみ振動にして、線材
に、線材が当該線材の軸方向と直交する方向に定常波で波打つ超音波たわみ振動
をさせている。このことにより、
線材が超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動をする。そして、所望の長さの線材の超音波たわみ振動装置を実現している。
【0022】
特に本発明では、超音波たわみホーン本
体を、超音波振動子の超音波縦振動を受けて縦振動する円柱部分と、この
円柱部分の先端で軸芯と直交する方向にT字状に設けられ、円柱部分の直径より短い短辺と円柱部分の直径より長い長辺と所
要の厚さを持つ角柱部分
と、角柱部分の短辺側端面
の、円柱部分
側軸芯方向から視て表側と裏側とになる
端辺部分のそれぞれに設けられ、角柱部分の厚さを薄くするように切り欠かれた切欠き部
とで構成し、前記線材
の一端を角柱部分の一方の短辺側端面
に一体に取り付けて、線材
に、線材が
当該線材の軸方向と直交する方向に定常波で波打つ超音波たわみ振動をさせている。
このことにより、線材が超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動をする。また、超音波たわみ振動させる線材の長さを長くすることにより、所望の長さの線材の超音波たわみ振動装置を供給可能にしている。
【0023】
本発明の超音波切断装置では、上記線材の超音波たわみ振動装置を装置フレームに対して上下動ならびに水平方向に移動可能に支持する移動手段を設け、切断対象物を載置するアンビルを装置フレームに設けている。
【0024】
本発明の超音波切断装置では、線材が超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動をする。超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面とは、パン、ケーキ、チーズ、カステラ、羊かん等の食品の表面に垂直な面である。そのため、線材のたわみ振動により、線材は食品の表面を叩きつけ、叩き切って食品を切断する。
【0025】
特に、パン切りナイフの刃はパンの表面で刃が滑らない山谷のある波型刃形状であることが従来から求められているが、本発明の超音波切断装置では、線材が超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で定常波(定在波)の超音波たわみ振動して、瞬間的に見れば、瞬間毎にパンの表面で滑らない山谷のある波型刃形状を形成している。
【0026】
また、本発明の超音波洗浄装置では、前記線材の超音波たわみ振動装置を装置フレームに取り付け、洗浄対象物と薬液を入れる容器を装置フレームに設け、前記超音波たわみ振動装置の線材を前記容器内に配置している。
【0027】
本発明の超音波洗浄装置では線材が超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動をするので、線材コイルの表面が薬液の表面を叩きつけるように攪拌している状態で金属部品等の洗浄が効果的に行われる。
【0028】
また、本発明の超音波分離装置では、前記線材の超音波たわみ振動装置を装置フレームに取り付け、分離対象物を入れる容器を装置フレームに設け、前記超音波たわみ振動装置の線材を前記容器内に配置している。
【0029】
本発明の超音波分離装置では、線材が超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動をするので、分離容器内の液体食品や化学薬品などに直接、超音波振動が与えられ、気体や少量の細かい異物が効果的に分離されて除去される。
【0030】
また、本発明の超音波付着物除去装置では、前記線材の超音波たわみ振動装置を装置フレームに取り付け、前記超音波たわみ振動装置で超音波たわみ振動している線材を付着物に押し当てて除去するようにしている。
【0031】
本発明の超音波付着物除去装置では、線材が超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動をするので、配管等の被洗浄体に付着した付着物に直接、超音波振動が与えられ、付着物が効果的に除去される。
【0032】
また、本発明の超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置では、カテーテルの先端部で線材が超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動をするので血管中の狭窄病変部の付着物に直接、超音波振動エネルギーを与えるので、狭窄病変部の付着物が効果的に除去される。
【発明の効果】
【0033】
本発明の線材の超音波たわみ振動装置によれば、線材が超音波振動子の超音波縦振動方向と平行な面上で超音波たわみ振動させることができるようになった。また、線材の長さを長くすることで容易に所望の長さの線材の超音波たわみ振動装置を供給できるようになった。
【0034】
本発明の超音波切断装置では、線材の超音波振動方向をパン、ケーキ、チーズ、カステラや、羊かん等の食品の表面に垂直な、食品の表面に食い込む方向にしているので、線材のたわみ振動により、線材は食品の表面を叩きつけ、叩き切って食品を切断する。これにより、線材を食品に押し付ける力が大幅に軽減され、切れ味が向上した超音波切断装置が得られる。線材の外周面は、カッターホーンの刃先のように尖っていない細い線材を用いているので、切れ味を大幅に向上させ、安価で、刃こぼれのない超音波切断装置を供給できるようになった。特に、線材の長さを長くした超音波切断装置では、従来切断が困難であった長尺な長さの食品を容易に切断することが可能となった。
【0035】
また、本発明の超音波洗浄装置では、洗浄力、洗浄効果を高めることが出来るようになった。
【0036】
また、本発明の超音波分離装置では、気体や粒子を効果的に分離できるようになった。
【0037】
また、本発明の超音波付着物除去装置では、付着物を効果的に除去できるようになった。
【0038】
また、本発明の超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置では、狭窄病変部の付着物が効果的に除去されるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る線材の超音波たわみ振動装置、超音波切断装置、超音波洗浄装置、超音波分離装置、超音波付着物除去装置、及び超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置について、図面とともに説明する。
【0041】
図1に本発明の第一実施形態に係る超音波たわみ装置の概略構成図を示した。
図1において、9は超音波振動子であり、90は超音波振動子の縦振動をたわみ振動に変換する超音波たわみホーン本体であり、7は超音波たわみホーン本体90の一端面(以下、線材取付端面という。)Aに一体に取り付けられた線材である。8は線材7を線材7の自由端にあるたわみ振動の節で支持する支持部である。支持部8は、支持フレーム10の先端に取り付けてあり、支持フレーム10は、L字型をなしていて
図1の水平部分に超音波振動子9を入れ、超音波振動子のフランジ9aを挟持して固定している。そして、超音波振動子9と超音波たわみホーン本体90と線材7と支持フレーム10は、一体に組み立てられている。
【0042】
35は超音波振動用の電源であり、36は超音波振動制御手段である。電源35と超音波振動制御手段36と超音波振動子9はケーブル33により電気的に接続されている。なお、32は液晶表示手段であり、超音波振動条件、振動パターン、振動作業状況などを表示する。電源35と超音波振動制御手段36を作動させると、超音波振動子9は超音波縦振動を行い、超音波たわみホーン本体90の線材取付端面Aに一体に取り付けられている線材7は超音波たわみ振動を行う。
【0043】
ここで発明理解のために、
図2(a)に、本発明の第一実施形態に係る超音波たわみ装置の要部の基本的な構成を示し、
図2(b)に本発明の第一実施形態に係る超音波たわみ装置の要部の実際的な構成を示した。
【0044】
図2(a)に示したように、超音波たわみホーン本体90は、超音波振動子9の縦振動を受ける大径の円柱部分1と、小径の円柱部分2と、角柱部分3とから構成されている。円柱部分1は、超音波振動子9の縦振動を受けて、斯かる縦振動を円柱部分2に伝える。円柱部分2は、円柱部分2の直径(ΦD)より短い短辺(B)と円柱部分2の直径(ΦD)より長い長辺(C)と所定の厚さを持つ角柱部分3に縦振動を伝える。角柱部分3は円柱部分2の直径(ΦD)より短い短辺(B)と円柱部分2の直径(ΦD)より長い長辺(C)と所定の厚さを持つ角柱部分であり、円柱部分2からの縦振動を受けてたわみ振動をする。そして角柱部分3の線材取付端面Aにつけた線材7を定常波でたわみ振動させる。
【0045】
しかし、円柱部分1と円柱部分2との段差部、円柱部分2と角柱部分3との段差部では、超音波たわみホーン本体90の形状が急変するため、超音波振動エネルギーがうまく伝わらない。この形状の急変部分では、超音波たわみホーン本体90が割れたり、ひびが入ったり、折れたりすることもある。そこで、
図2(b)に実際的な構成を示したように、円柱部分1と円柱部分2との段差部、及び、円柱部分2と角柱部分3との段差部には曲面R
1、R
2を設けて、形状をなだらかに変化させている。このことで、超音波振動エネルギーの損失を防ぎ、超音波たわみホーン本体90の折損を予防している。
【0046】
図3に、本発明の第一実施形態に係る超音波たわみ振動装置の超音波たわみホーン本体90に線材7を一体に取り付けた超音波たわみホーンを斜め下方から見た外観斜視図を示した。
図3では、線材7以外は全て超音波たわみホーン本体90である。
【0047】
縦振動する部分を直径の大きい円柱部分1と直径の小さい円柱部分2とをつないだ段付き円柱にして、円柱部分1の横断面の断面積を、円柱部分2の横断面の断面積へと小さくすることにより、図示しない振動子から直径の大きい円柱部分1に伝わってくる超音波振動エネルギーの単位面積当たりの大きさを、直径の小さい円柱部分2で大きくし、円柱部分2の端面での振幅を増幅している。なお、円柱部分1と円柱部分2の段差部分はR
1で示した曲面でつないでいる。
【0048】
図3では、超音波たわみホーン本体90の先端の形状を、縦振動する円柱部分2と、円柱部分2の直径(ΦD)より短い短辺(B)と円柱部分2の直径より長い長辺(C)と所定の厚さを持つ角柱部分3を、当該円柱部分2の先端で軸芯と直交する方向にT字状に設けたものとしている。そして、円柱部分2と角柱部分3との段差部分はR
2で示した曲面でつないでいる。
【0049】
T字状に伸びる角柱部分3の先端の角部における、円柱部分2の軸芯方向に対して表側と裏側とになる部分に、角柱部分の厚さを薄くするように切り欠かれた切欠き部5、6をそれぞれ設け、角柱部分3の一方の端面(線材取付端面A)から角柱部分3の軸芯方向の外側に伸びた線材7を設けている。
【0050】
このことで、超音波振動子9の縦振動を超音波たわみホーン本体90の円柱部分1で受け、斯かる縦振動を円柱部分1より断面積の小さい円柱部分2に伝えて超音波エネルギーを凝縮し、振幅を増大させ、縦振動する円柱部分2と、円柱部分2の直径(ΦD)より短い短辺(B)と円柱部分2の直径(ΦD)より長い長辺(C)と所定の厚さを持つ角柱部分3を当該円柱部分2の先端で軸芯と直交する方向にT字状に設け、円柱部分2の縦振動を角柱部分3のたわみ振動にしている。そして、角柱部分3の線材取付端面Aに線材7を一体に付け、線材7を超音波たわみ振動させている。線材7は定常波(定在波)の超音波たわみ振動をする。
【0051】
図4(a)に、本発明の第一実施形態に係る超音波たわみホーンの要部の正面図を示し、
図4(b)に、超音波たわみホーンの要部の底面図を示した。
【0052】
図4(a)の、本発明の第一実施形態に係る超音波たわみホーンの要部の正面図では、円柱部分2(直径ΦD)の外側に、アーム長さ(L)だけ両側に張り出した角柱部分3がついている。そして、円柱部分2の軸芯方向に対して表側と裏側となる部分に、切欠き部5、6を設けて、線材取付端面Aに線材7を取り付けている。
【0053】
切欠き部5、6の形は、それぞれ
図4において、(E)で示した幅と、(h
1)あるいは(h
3)で示した厚さで区切られる空間である。(h
1)と(h
3)の厚さは、実際には、試行錯誤、つまり切欠きを削ってみて振動状態を見て、超音波振動状況が定常波となるような厚さに決められる。
【0054】
図4(a)で、円柱部分2と角柱部分3がT字状に直交する隅部は角R
2のような曲面でつないでいる。このことにより、超音波振動子9から、円柱部分1、円柱部分2へと伝わってきた超音波エネルギーを角R
2で囲んだ曲面部分から効率よく角柱部分3に伝えている。
【0055】
また、
図4(a)の参照符号4は角柱部分3の側面である。本発明では、角柱部分3の側面4を角柱部分3の真横の厚さ(H)だけでなく、角柱部分3の真横から円柱部分2の直径がまだ曲面R
2によって広がっていない直径がΦDである端面2aの位置までをT字状の平面として形成している。このことにより、超音波振動子9から、円柱部分1、円柱部分2へと伝わってきた超音波エネルギーを効率よく角柱部分3に伝えている。
【0056】
円柱部分2の端面では、全面が軸芯と平行に縦振動している。円柱部分2の端面の縦振動の詳しい状況について、円柱部分2の端面の中心部近辺の内側の振幅と外側の振幅を比べると、内側の振幅が小さく、外側の振幅が大きい。
図4(b)の底面図で説明すると、円柱部分2の端面では、中央の白点(WP)での振幅が小さく、外側の4つの黒点(BP
1、BP
2、BP
3、BP
4)での振幅が大きい。
【0057】
そのため、本発明では、円柱部分2の端面2aに、
図4(a)(b)のように、円柱部分2の直径(ΦD)より短い短辺(B)と円柱部分2の直径(ΦD)より長い長辺(C)を持つ角柱部分3を取り付けている。円柱部分2の直径(ΦD)より短い短辺(B)としたことにより、円柱部分2の端面2aの
図4(b)における上下外側の2つの黒点(BP
1、BP
3)での振動は円柱部分2の端面2aまで伝わるが、円柱部分2がカットされているので角柱部分3には伝わらない。つまり、円柱部分2の端面2aの
図4(b)における上下外側の2つの黒点(BP
1、BP
3)での振動はカットされる。
【0058】
角柱部分3には、角柱部分3と重なる円柱部分2の端面2aの
図4(b)における左側の黒点(BP
4)の振動、中央の白点(WP)の振動、
図4(b)における右側の黒点(BP
2)の振動が伝わる。角柱部分3と重なる円柱部分2の端面2aの
図4(b)における左側の黒点(BP
4)の振動、中央の白点(WP)の振動、
図4(b)の右側の黒点(BP
2)の振動が、角柱部分3に伝わると、この3点の振動により、角柱部分3は軸芯方向に対して直交する方向にたわむ動きを繰り返す。そして、角柱部分3の線材取付端面Aに一体に取り付けられた線材7は、超音波たわみ振動する。
【0059】
本発明は、超音波たわみホーン本体90を、上記形状・構造としたことにより、超音波振動子9の超音波縦振動を超音波たわみ振動に変換しており、更に超音波たわみホーン本体90の角柱部分3の一方の端面(線材取付端面A)に一体に取り付けた線材7を定常波(定在波)で超音波たわみ振動させている。
【0060】
図5(a)〜(c)に、本発明の第一実施形態に係る超音波たわみホーンの構造を説明する図を示した。
図5の(a)(b)は、本発明の超音波たわみホーンを説明するための図で、
図5(c)が本発明の超音波たわみホーンの態様を示した図である。
【0061】
本発明者は、
図5の(a)に示すように、超音波たわみホーンの円柱部分2の端面の内側より外側で振幅が大きくなることに着目した。ただし、この時点で、線材7を円柱部分2の端面にとりつけても、線材7は、わずかに振動する程度であった。
【0062】
そこで、本発明者は、
図5(b)に示すように、超音波たわみホーンの形状を、縦振動する円柱部分2の先に、円柱部分2の直径(ΦD)より短い短辺(B)と円柱部分2の直径(ΦD)より長い長辺(C)を持つ角柱部分3を、当該円柱部分の軸芯と直交する方向にT字状に延びる角柱部分3として一体に設け、一方の角柱部分3の線材取付端面Aから角柱部分3の軸芯方向で外側に伸びた線材7を設けてみた。すると、角柱部分3の先端は、超音波たわみホーンの円柱部分2の外周部の動きの変動を拡大するように動き、線材7は角柱部分3に取り付けた根元部分で大きく振動した。ただし、振動の振幅は線材7の先端に行くに従って小さくなっていた。
【0063】
そこで、本発明者は、
図5(c)のように、T字状に延びる角柱部分3の先端の角部において、円柱部分2の軸芯方向に対して表側に位置付けられる部分の厚さを薄くして切欠き部5を設け、角柱部分3の先端の角部において、円柱部分2の軸芯方向に対して裏側に位置付けられる部分の厚さを薄くして切欠き部6を設け、一方の角柱部分3の線材取付端面Aから角柱部分3の軸芯方向の外側に延びる線材7を設けてみた。すると、線材7は角柱部分3に取り付けられた根元部分の大きい振動は小さくなり、線材7の先端に向かって、定常波が発生していた。そしてT字状に延びる角柱部分3の大きさと、角柱部分3の先端の角部における円柱部分2の軸芯方向に対して表側と裏側とに位置付けられる部分の切欠き部5、6の厚さ寸法とを調整していくと、線材7の角柱部分3に取り付けた根元部分から先端に向かって、定常波を発生させることができることを確認した。
【0064】
図6(a)〜(c)に、本発明の第一実施形態に係る超音波たわみホーンの振動状態を説明する図を示した。
図6(a)では、超音波たわみホーンが縦振動して、円柱部分2が矢印のように上方に動いたときの状態を示している。円柱部分2が上方に動くと、T字状に伸びる角柱部分3の中央は円柱部分2とともに上方に動く。角柱部分3の先端は、
図6(a)の下方に向けて動く。動きが超音波振動であり速いため、線材7は角柱部分3の端面Aの動きに伴ってたわむ。
【0065】
図6(b)では、超音波たわみホーンが縦振動に伴い、円柱部分2が
図6(a)の矢印と反対側に動いて元の位置に戻ったときの状態を示している。円柱部分2が元の位置に戻れば、円柱部分2の端面2aは、内部と外周部で一つの平面に戻る。そして、T字状に伸びる角柱部分3の先端も、元の位置に戻る。
【0066】
図6(c)では、超音波たわみホーンが縦振動して、円柱部分2が矢印のように下方に動いたときの状態を示している。円柱部分2が下方に動くと、T字状に伸びる角柱部分3の中央は円柱部分2とともに下方に動く。角柱部分3の先端は、
図6(c)の上方に向けて動く。動きが超音波振動であり速いため、線材7は角柱部分3の線材取付端面Aの動きに伴ってたわむ。
【0067】
このように、超音波たわみホーンが縦振動すると、円柱部分2が上下に振動し、T字状に延びる角柱部分3の先端の線材取付端面Aは、上向き、下向きというように搖動する。そして、角柱部分3の先端の線材取付端面Aに一体に付けられた線材7の根元部分は、上向き、下向きの動きを繰り返すようにしてたわむ。この線材7の動きが、線材7の定常波を生み出す。線材7の各部分は、同じ位置で上下振動を繰り返す。
【0068】
本発明の第一実施形態に係る超音波たわみホーンの振動状態は、今説明した
図6(a)、(b)、(c)の次は、
図6(c)、(b)、(a)と、その次は再び
図6(a)、(b)、(c)というように循環する。循環の振動数は、20kHz以上の超音波振動であり、線材7の軸方向に節と腹を繰り返すたわみ振動が続く。
図6(a)〜(c)では、線材7の長さ全てに定常波が生じている。そして、線材7の長さを短くしても、長くしても線材7に定常波が生じる。
【0069】
ちなみに、超音波たわみホーン本体90の材料は、ジュラルミン、チタンなどの合金が用いられており、線材の材料としてはロウ付けできるもの例えば、インコネル、ハステロイ、チタンなどが用いられる。角柱部分3の一方の端面(線材取付端面A)に線材7を設ける方法としては、ロウ付けなどの溶接や、先端に雄ネジを切った線材7を角柱部分3の一方の端面(線材取付端面A)にネジ結合する方法や、圧入、カシメなどが用いられる。
【0070】
線材7の下にパン、ケーキ、チーズ、カステラ、羊かん等の食品の表面を当てると、線材7の各部分は、同じ位置で上下振動を繰り返す定常波として、食品の表面を叩きつけ、食品を少しずつ叩き切って切断する。
【0071】
線材7を洗浄装置の薬液の中に入れれば、線材7の各部分は、同じ位置で上下振動を繰り返す定常波として、薬液を撹拌する。
【0072】
図7(a)、(b)に、本発明の第一実施形態に係る超音波たわみホーンの振動状態を説明する図を示した。
図6(a)〜(c)では、振動の瞬間ごとに状態を図示したが、
図7(a)では、一つの図に、3つの振動状態を重ねて描いている。
図7(b)は、角柱部分3付近の拡大図である。
【0073】
図7(a)、(b)を見ると、超音波たわみホーンが縦振動して、円柱部分2が上下に振動し、T字状に延びる角柱部分3の先端の線材取付端面Aが、上向き、下向きというように搖動する。そして、角柱部分3の先端の線材取付端面Aに一体に取り付けられた線材7の根元部分は、上向き、下向きというようにたわむ。この線材7の動きが、線材7の定常波を生み出し、線材7の各部分は、同じ位置で上下振動を繰り返すことが、理解される。
【0074】
なお、
図8(a)、(b)に本発明の第一実施形態に係る超音波たわみホーン本体90の変形例を下方から見た外観斜視図を二つ示した。
図8(a)、(b)は、それぞれ円柱部分2と角柱部分3の側面4とをつなぐ部分の形状をなだらかな曲面の形状に変えたものを示している。
図3と対比して見れば、円柱部分2と角柱部分3の側面4とをよりなだらかにつないでいることが理解される。これ以外にも円柱部分2と角柱部分3の側面4をなだらかにつなぐ形状はあるので、適宜用いればよい。
【0075】
以上、本発明の、超音波たわみホーンの円柱部分2の縦振動を、任意の長さの線材7の軸方向と直交する面内の超音波たわみ振動に変換させる、線材の超音波たわみ振動装置の原理を説明した。
(本発明の第二実施形態)
【0076】
本発明の第二実施形態では、上記説明した線材の超音波たわみ振動装置を超音波切断装置に用いた例を説明する。
図9に、本発明の第二実施形態に係る超音波切断装置の構造を説明する要部断面図を示した。
図9で、70は水平移動フレームである。
図9の水平移動フレーム70の左には、超音波振動子9のフランジ9aを取り付け、超音波振動子9の下方に、
図1及び
図2で説明した超音波たわみホーンを取り付けている。超音波たわみホーンの角柱部分3の線材取付端面Aから出ている線材7の先端は、線材7の定常振動の節の位置で、水平移動フレーム70の下方に伸びた第一の垂直アーム部70aの先端に設けられた節の支持部8で支持されている。
【0077】
水平移動フレーム70の上方に伸びた第二の垂直アーム部70bには、ラックを切ったスライド部70cが、垂直移動フレーム11にスライド自在に支持されている。スライド部70cのラックにはピニオン(小歯車)12がかみ合っていて、搖動モータ13の搖動運動により、超音波たわみホーンと線材7を取り付けた水平移動フレーム70を水平方向に往復動させるようにしている。
【0078】
14は、略L字状の断面を有する装置フレームである。ここで、略L字状の断面形状とは、
図9に示すように、下側に位置する下側水平部分、この下側水平部分の左端から上方へ延びる垂直部分、及び、この垂直部分の上端から右側に延びる前記下側水平部分より短い上側水平部分を有する断面形状をいうものとする。本実施形態においては、前記下側水平部分は装置フレーム14の底部14aとして用いられ、前記垂直部分は装置フレーム14の支持部14bとして用いられ、前記上側水平部分は装置フレーム14のエアーシリンダー取付け部14cとして用いられている。
【0079】
底部14aの上には、パン、ケーキ、チーズ、カステラ、羊かん等の食品の被切断物16を載置するアンビル15が乗せられている。エアーシリンダー取付け部14cには、上下動するエアーシリンダー17が取り付けてあり、エアーシリンダー17の下方先端には、先に説明した垂直移動フレーム11が吊り下げられている。垂直移動フレーム11は、装置フレームの支柱部14bにより、上下動自在に案内されていて、エアーシリンダー17の伸縮動作で上下動する。
【0080】
図9において、図示しない電源と超音波振動制御手段により、超音波振動子9に20kHz以上の超音波駆動信号が供給されると、超音波振動子9は数μm程度の振幅で、縦方向の超音波振動を行う。超音波振動子9の超音波振動は、超音波たわみホーンにより、縦振動から、線材7のたわみ振動に変換される。これにより、線材7は定常波で超音波振動する。
図9では、エアーシリンダー17が縮んでいるため、線材7は、被切断物16から離れているが、エアーシリンダー17が伸びると、線材7は被切断物16に接近する。この時点で、搖動モータ13を動作させ、線材7が定常波で超音波振動するとともに、水平移動フレーム70全体として水平方向に往復動させる。
【0081】
図10に、本発明の第二実施形態に係る超音波切断装置で食品(被切断物)16を切断している状態を示す要部断面図を示した。
図10では、エアーシリンダー17が伸び、線材7は被切断物16の表面を叩き、線材7がパン、ケーキ、チーズ、カステラ、羊かん等の食品の被切断物16を切断している。
【0082】
図11(a)〜(d)と
図12(a)〜(d)に、本発明の第二実施形態に係る超音波切断装置で、線材7を定常波振動させて食品を切断するときの状態を説明する要部断面図を示した。ここでは、動きのイメージが把握しやすいように、線材7の定常波の動きだけを示した。また、動きのイメージが把握しやすいように誇張して示してある。
【0083】
線材7には、振動波が線材7の軸芯方向のどちらの方向にも進行せず、その場で振動する定常波が起きている。
図11(a)において、超音波たわみホーンの円柱部分1の縦振動に伴い、円柱部部分2が上昇すると、T字型をなす角柱部分3の両先端が下方に下がる。角柱部分3の両先端が下方に下がる動きは、角柱部分3の一方の先端の線材取付端面Aについている線材7の根元部分を下方に振り下ろす。線材7の各部分は、その場で上下振動する定常波として振動する。線材7は、
図11(b)〜(d)のように、波の振幅が順次大きくなっていく。線材7の下に凸となった部分が、切断対象物16の表面を叩き切っていく。線材7の振動は、
図11(a)、(b)、(c)、(d)、
図11(d)、(c)、(b)、(a)、
図12(a)、(b)、(c)、(d)、
図12(d)、(c)、(b)、(a)、
図11(a)、(b)、(c)、(d)のように循環する。実際には、定常波振動と搖動モータ13の搖動運動を組み合わせた動きをするため、定常波の腹と節の部分が移動して、線材が食品を全体として平均的に切断する。
【0084】
本発明の第二実施形態に係る超音波切断装置は、上記のように、定常波で振動する線材7で、パン、ケーキ、チーズ、羊かん、カステラ等の食品の表面を叩き切っていく。線材7の外周面は円柱であるため、手で触れても切れない。作業者の身体を傷つけない。線材7が食品の表面を叩き切っても、線材7の外周面は円柱であるため刃こぼれしない。よって、本発明に係る超音波切断装置は、安全である。
【0085】
また、線材として断面が丸い線材ではなく、断面をひし形、長方形、三角形などの線材にしてもよい。ひし形、長方形、三角形などを線材の尖った角部をパン、ケーキ、羊かん、カステラ等の食品などの被切断部材の表面に向けて、定常波で振動する線材7で、パン、ケーキ、チーズ、羊かん、カステラ等の食品の表面を叩き切っていくと、切れ味が良くなる。
(本発明の第三実施形態)
【0086】
本発明の線材の超音波たわみ振動装置では、線材7において、角柱部分3に取り付けた根元部分から先端に向かって、定常波を発生させることができる。線材7の太さと長さは任意に選んでも、定常波が発生するので、食品の大きさに合わせて線材7を長くすることで、任意の大きさの食品を切断することができる。
【0087】
そこで、
図9と
図10で説明した超音波切断装置の線材7の長さを長くした場合を
図13(a)、(b)に示した。本発明の線材の超音波たわみ振動を用いた超音波切断装置では、一辺が15cm程度のパンを切断するときと、一辺が50cmから60cmのカステラなどを切断するときとでは、超音波たわみ振動装置の部分を共通に使い、線材7の長さを変えたものを用いることで対応できる利点がある。
【0088】
図13(a)では、本発明の第三実施形態に係る超音波切断装置の構造を説明する要部断面図を示した。
図13(a)では、水平移動フレーム70の長さを第二実施形態の水平移動フレーム70の長さよりも長くして、第二実施形態の線材7よりも長い線材7の一端を水平移動フレーム70の下方に伸びた第一の垂直アーム部70aの先端に設けられた節の支持部8で支持している
【0089】
図13(b)では、本発明の第三実施形態に係る超音波切断装置で食品を切断している状態を示す要部断面図を示した。
図13(b)では、長い線材7がパン、ケーキ、チーズ、カステラ、羊かん等の食品の被切断物16を切断している。
(本発明の第四実施形態)
【0090】
図14に、本発明の超音波たわみ振動装置を用いた超音波切断装置の他の実施形態の要部断面図を示した。
図14では、本発明の第三実施形態に係る超音波切断装置の水平移動フレーム70の代わりに、途中で折れ曲がった屈曲フレーム71を用いている。線材7は定常波のたわみ振動をするため、屈曲フレーム71内の振動の節の部分を複数の支持部材8で支持している。節の部分で線材7の方向を変えても、定常波のたわみ振動はその先に伝わる。
途中で折れ曲がった屈曲フレーム71であると、例えば
図14のように、シート72に比較的小さい孔をあけ、超音波切断装置の屈曲フレームの先端71bをシート72の下の空間に入れることが出来る。超音波切断装置の屈曲フレームの先端71bの支持部材8で支持された線材7は、超音波たわみ振動して、切断対象物の表面を叩き、叩き切る。シート72にあける孔の大きさは、超音波切断装置の屈曲フレームの先端71bが入る大きさですむ。
【0091】
図15(a)、(b)は、切断対象物73の表面を、超音波たわみ振動している線材7が叩き、叩き切る様子を示している。線材7は、想像線で示した波形の定常波で振動する。
図15では、説明のために誇張して描いているが、波の振幅は数μmから数十μmである。
【0092】
なお、
図16(a)、(b)に示したように、超音波切断装置の屈曲フレーム71の先端71bの線材7に対向する面の断面を尖らせて刃71cを形成したものは、線材7と刃71cの間の三日月状空間に切断対象物73を入れて、線材7と刃71cで切断対象物73を切断することが出来る。
【0093】
以上、本発明の超音波たわみ振動装置を用いた超音波切断装置について説明した。
(本発明の第五実施形態)
【0094】
本発明の第五実施形態では、本発明の線材の超音波たわみ振動装置を超音波洗浄装置に用いた例を説明する。
【0095】
図17に、本発明の超音波たわみ振動装置を用いた超音波洗浄装置の要部断面図を示した。
図17では、線材7が超音波洗浄装置の容器20内の上方から下方に、つるまき線状のループを描きながら収納されている。線材7の一端は、超音波たわみホーンの角柱部分3の先端に一体に取り付けられていて、他端は、容器20内の下方に設けた節の支持部8として機能するピン20aに取り付けられている。容器20の側壁には、線材7を通す貫通孔が設けられており、この貫通孔にはシール手段21が嵌め込まれている。
【0096】
線材7は、超音波たわみホーンの縦振動の面と同じ振動面で振動するため、
図17のように、線材7は容器20内で線材の軸方向に対して垂直に振動する。そして、容器20内に入っている薬液22を撹拌する。金属部品23を線材7のつるまき線状のループ内に入れると、撹拌された薬液22で金属部品23の表面が洗浄される。超音波振動する線材7の表面は、薬液と滑るのでなく、薬液に叩き付けられる方向に振動しているため、薬液はよく撹拌され、従来よりも洗浄効率が高くなっている。
【0097】
以上、本発明の超音波たわみ振動装置を用いた超音波洗浄装置について説明した。
(本発明の第六実施形態)
【0098】
本発明の第六実施形態では、上記第一実施形態で説明した線材の超音波たわみ振動装置を超音波分離装置に用いた例を説明する。
図18に、本発明の第六実施形態に係る超音波分離装置の構造を説明する要部断面図を示した。
【0099】
図18で、30は、空気などの気体や少量の細かい粒子が混入した液体食品や化学薬品などを通す分離用容器である。分離用容器30は、
図18の左下に、液体食品や化学薬品などを入れる挿入口30aがあり、分離用容器30の右下に気体や少量の細かい粒子を取り除いた後の液体食品や化学薬品などを排出する第一の排出口30bがある。分離用容器30の中央上部には、気体や少量の細かい粒子を多く含んだ液体食品や化学薬品などを排出する第二の排出口30cがある。空気などの気体や少量の細かい粒子が混入した液体食品や化学薬品などは、図示しないポンプなどにより、挿入口30aから分離用容器30内に押し込まれる。
【0100】
図18で7は、たわみ振動する線材である。線材7は、超音波のたわみ振動をして、直接、液体食品や化学薬品などに超音波振動を伝える。線材7の超音波のたわみ振動は、第一実施形態で説明したように定常波で振動する。液体食品や化学薬品などは分離用容器30を
図18の左側から右側に移動するので、線材の定常波により何度も繰り返して攪拌され、超音波振動のエネルギーを受けて、混入していた空気などの気体や少量の細かい粒子を放出する。空気などの気体は気泡を作り、気泡や細かい粒子の濃度が高くなった液体食品や化学薬品が、第二の排出口30cから排出される。
【0101】
図18の超音波分離装置では、気体や少量の細かい粒子と液体食品や化学薬品とが一度では完全に分離できないため、超音波分離装置を
図16のように多段階に組立てて分離作業を行うようにしている。
【0102】
図19は、
図18に示した超音波分離装置を3台接続して多段式の超音波分離装置としたものの概念図である。一つの超音波分離装置の各構成部分は同じで、単純に、第一段目の超音波分離装置の第二の排出口30cを第二段目の超音波分離装置の挿入口30aにつなぎ、第二段目の超音波分離装置の第二の排出口30cを第三段目の超音波分離装置の挿入口30aにつないでいる。それぞれの超音波分離装置の分離用容器30の中では線材7が超音波たわみ振動するようにしている。
【0103】
第一段目の超音波分離装置の挿入口30aから、空気などの気体や少量の細かい粒子が混入した液体食品や化学薬品などを図示しないポンプで押し込むと、それぞれの超音波分離装置の分離用容器30の中では線材7の超音波たわみ振動で線材7の定常波により何度も繰り返して攪拌され、超音波振動のエネルギーを受けて、混入していた空気などの気体や少量の細かい粒子を放出する。気体や少量の細かい粒子を取り除いた後の液体食品や化学薬品などは排出口30bから排出される。それぞれの排出口30bから排出された液体食品や化学薬品などは、ガイド部材42により回収容器40に集められる。気泡や細かい粒子の濃度が高くなった液体食品や化学薬品は、最終段の第二の排出口3cから、容器41に集められる。
仮に、一つの超音波分離装置で、空気などの気体や少量の細かい粒子が2/3ずつ除去され、空気などの気体や少量の細かい粒子が1/3だけ残るとすると、
図19のように超音波分離装置を三段につないで、混入していた空気などの気体や少量の細かい粒子を除去すると、空気などの気体や少量の細かい粒子の混じっている割合は、単純計算で(1/3)
3=1/27=0.037(=約4%)となることが期待される。
(本発明の第七実施形態)
【0104】
本発明の第七実施形態では、上記説明した線材の超音波たわみ振動装置を超音波付着物除去装置に用いた例を説明する。
【0105】
図20に、本発明の第七実施形態に係る超音波付着物除去装置の構造を説明する要部断面図を示した。
図20では、銅パイプ、鉄パイプ、合成樹脂パイプ等のパイプの内部に付着した、食品のカスや水垢、砂やその他の付着物を、超音波たわみ振動する線材7で除去する一例を示している。
【0106】
第七実施形態に係る超音波たわみホーンの構造は、第一実施形態に係る超音波たわみホーンの構造と基本的に同じであり、同じ機能要素には同じ番号を付している。すなわち、
図20では、まず、水平移動フレーム80の一端に、超音波振動子9に超音波たわみホーン本体90を取り付けている。次に、超音波たわみホーン本体90の形状を、縦振動する円柱部分2と、円柱部分2の直径(ΦD)より短い短辺と円柱部分2の直径(ΦD)より長い長辺と所定の厚さを持つ角柱部分3とを、当該円柱部分2の先端で軸芯と直交する方向にT字状に設けたものとしている。更に、T字状に延びる角柱部分3の先端の角部における円柱部分2の軸芯方向に対して表側と裏側とに位置付けられる部分に、角柱部分3の厚さを薄くするように切り欠かれた切欠き部がそれぞれ設けられている。そして、角柱部分3の一方の端面(線材取付端面A)から角柱部分3の軸芯方向の外側に延びた線材7を設け、線材7の他端を振動の節で支持している。
図20の超音波振動子9が縦振動すると、水平移動フレーム80に取り付けた線材7は線材7の軸方向と直交する面上でたわみ振動する。
【0107】
水平移動フレーム80の下には、移動ローラ80dが取り付けてあり、超音波たわみホーンで超音波たわみ振動をする線材7を上面に向けた状態で、ベース部50の上を白抜き矢印92のように紙面左側へ水平移動するようにしている。
【0108】
図20のベース部50の左側では、パイプを乗せるための支持ローラ51が回転自在に支持されている。この支持ローラ51は、歯車52を介して回転モータ53の回転力により、回転駆動可能となっている。支持ローラ51の上には、パイプ60が乗せられる。支持ローラ51が回転するとパイプ60は回転する。なお、パイプ60は、食品のカスや水垢、砂やその他の付着物61が内面に付着したパイプ60である。
【0109】
図20のベース部50の中央には、ポンプ54がありノズル55からパイプ60の中に空気や水を流入させるようにしている。空気や水を流入させるのは、パイプ60内から除去した付着物61をパイプ60左側の開口から排出するためであり、超音波たわみ振動により線材7に発生する熱を冷すためでもある。
【0110】
図20(a)では、回転モータ53の回転力により、支持ローラ51が回転し、支持ローラ51の回転にともないパイプ60が回転している。そして、ポンプ54により、空気または水がノズル55からパイプ60の中に流入している。しかし、
図20(a)は、パイプ60と超音波たわみ振動をする線材7が離れている状態を示している。
【0111】
図20(b)のように、超音波たわみ振動をする線材7がパイプ60の中に入ると、超音波たわみ振動をする線材7は、パイプ60の内面に付着した食品のカスや水垢、砂やその他の付着物61の表面を毎秒2万回以上叩く。叩かれた付着物61はパイプ60の内面から脱落し、ノズル55から流入する空気または水の流れに乗って、パイプ60の左側から排出される。線材7が、回転しているパイプ60の中を左側に向けて進むと、線材7の超音波たわみ振動により、パイプ60の内面に付着していた付着物61が次々と脱落して、ノズル55から流入する空気または水の流れに乗って、パイプ60の左側から排出される。そして、線材7の先端部が、パイプ60の中を突き抜けて、
図20(c)の状態になる。このことにより、パイプ60の内面に付着していた食品のカスや水垢、砂やその他の付着物61がパイプ60から除去される。
【0112】
本発明では、特別な形状をした長尺の刃を作らなくても、予め丸、あるいは四角い断面などの均一の断面形状と太さに作られた線材7を用いて、長さを必要な長さまで長くすれば、必要な長さの線材の超音波たわみ振動を利用した超音波付着物除去装置をつくることが出来る。つまり、本発明に係る超音波付着物除去装置では、特別な形状をした長尺の刃を作らなくてもよい。
【0113】
なお
図20では、ベース部50を水平な面として示したが、紙面左側が下がった傾斜面とすれば、パイプ60の内面から除去された付着物61が自重によりパイプ60の中を左側に移動しやすくなる。このことにより、ポンプ54により送り出す空気または水の流量を減らせる効果がある。
(本発明の第八実施形態)
【0114】
本発明の第八実施形態では、上記説明した線材の超音波たわみ振動装置を超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置に用いた例を説明する。
【0115】
図21に、本発明の第八実施形態に係る超音波たわみ振動
手段付きバルーンカテーテル装置の要部断面図を示した。
図21では、超音波たわみ振動
手段付きバルーンカテーテル装置が屈曲できることを示すために屈曲した姿を描いているが、本来は直線状のストレートな形をしていて、必要により、内部の中心にあるマンドレルを操作して屈曲させる。
【0116】
本発明の超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置は、線材の超音波たわみ振動装置を超音波
たわみ振動手段としてバルーンカテーテル装置に取り付け、前記超音波たわみ振動装置で超音波たわみ振動している線材を付着物に押し当てて除去するように構成したものである。
【0117】
図21では、マンドレル79と、振動用線材7cと、支持用線材85と、バルーン78付きカテーテルチューブ77と、超音波振動子9と超音波たわみホーン本体90のある超音波たわみ振動手段と、バルーン拡大収縮手段84と、保護チューブ76がある。
【0118】
マンドレル79の先端の一方の表面に振動用線材7cを結合し、マンドレル79の先端の前記一方の表面と反対側の他方の表面に支持用線材85を結合して、線材結合部86を作っている。マンドレル79に振動用線材7cと支持用線材85を結合した線材結合部86には、合成樹脂や金属を被せて結合が取れないように、また挿入しやすくするために表面を滑らかに仕上げている。
【0119】
マンドレル79の先端には、バルーン78付きカテーテルチューブ77を被せ、振動用線材7cと支持用線材85を線材結合部86からバルーン78付きカテーテルチューブ77のバルーン78の表面に被せ、マンドレル79の後端に至るまで、マンドレル79に沿って配置している。そして、保護チューブ76でマンドレル79と、バルーン78付きカテーテルチューブ77のバルーン78の無いカテーテルチューブ77と、支持用線材85と、振動用線材7cとを覆っている。保護チューブ76内では、振動用線材7cが超音波たわみ振動できる空間を設けている。
図21では、説明のために誇張して描いているが、波の振幅は数μmから数十μmであるので、図面に示したほど大きくなくてよい。
【0120】
振動用線材7cの他端は、超音波たわみ振動手段のたわみホーン本体の角柱部分の端面(線材取付端面A)と一体にし、バルーン78付きカテーテルチューブ77の他端をバルーン拡大収縮手段84と結合している。バルーン拡大収縮手段84は、バルーン78付きカテーテルチューブ77の中に生理食塩水などの液体を送り込んだり、吸引したりしてバルーン78のか大きさを任意に変化させるようにしている。
【0121】
そして、支持用線材85の他端と、振動用線材7cの他端を結合した超音波たわみ振動手段と、バルーン78付きカテーテルチューブ77の他端を、マンドレル79の後端近傍にまとめて配置している。
【0122】
超音波たわみ振動手段の超音波振動子9を起動して、振動用線材7cを超音波たわみ振動させ、マンドレル79の先端にあるバルーン78付きカテーテルチューブ77のバルーン78の表面近傍で超音波たわみ振動している振動用線材7cを除去対象物に押し当てるよう構成している。
【0123】
なお、マンドレル79と、支持用線材85と、振動用線材7cの剛性は、マンドレル79が一番大きく、マンドレル79の動きに追従して支持用線材85と、振動用線材7cが姿勢を変えるようにしている。
【0124】
図22に、本発明の第八実施形態に係る超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置の超音波たわみ振動装置近傍の分解部分断面図を示した。一体に結合されている超音波振動子9と超音波たわみホーン本体90は、超音波振動子のフランジ9aがフレーム74に固定されている。フレーム74は下部が中空円筒状をしていて、下部の円筒部分をバルーンカテーテルの支持部75の孔に回転自在に支持される。超音波たわみホーン本体90の角柱部分3の一端面から出ている線材7は、フレーム74の中空孔からバルーンカテーテルの支持部75に入る。フレーム74の下部の円筒部分をバルーンカテーテルの支持部75に対して回転させると、振動用線材7cは、振動用線材7cの軸芯の周りに回転する。これは、振動用線材7cが超音波振動子の縦振動と平行な面で振動するため、振動用線材7cの振動面を振動用線材7cの軸芯の周りに所定角度回転して、振動用線材7cが当たる領域を増やすことができる。このことは、後に
図24に図示して説明する。
【0125】
図23(a)、(b)に、本発明の第八実施形態に係る超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置の操作手順を示す軸方向断面図を示した。
図23(a)では、バルーン78を膨らまして、バルーン78の表面にある振動用線材7cと支持用線材85が除去対象物88に当たったところで止めた状況を示している。
【0126】
図23(b)では、バルーン拡大収縮手段84を動かしてバルーン78に入っていた生理食塩水等の液体を減らしてバルーン78の直径を縮めて、バルーン78の上に空間を作って振動用線材7cが振動する空間を作っている。
図24に、本発明の第八実施形態に係る超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置の操作手順を示す半径方向断面図を示した。
図24は、バルーン78のある部分を半径方向に輪切りにした断面図である。ここでは、
図23(b)と同じく、バルーン拡大収縮手段84を動かしてバルーン78に入っていた生理食塩水等の液体を減らしてバルーン78の直径を縮めて、バルーン78の上に振動用線材7cが振動する空間を作っている様子が確認できる。また、
図24では、振動用線材7cの振動面が振動用線材7cの軸芯を中心として所定角度(θ)の範囲内で左右に回転できるようにしていることを示した。先に、
図22で説明したように、超音波振動子9を取り付けているフレーム74をバルーンカテーテルの支持部75に対して回転させると、振動用線材7cは、振動用線材7cの軸芯の周りに回転する。そのため、
図24のように、フレーム74の回転角度に応じて、振動用線材7cの振動面が傾く。このように、振動用線材7cの振動面を変化させると、除去対象物への振動用線材7cの超音波振動エネルギーの伝わる領域が拡大すると同時に、超音波振動エネルギーの伝わり方が変化して、除去作業が効率よく行われることが期待される。
【0127】
なお、
図24では、支持用線材85を2本用いて、超音波たわみ振動をさせるときのバルーン78付きカテーテルチューブ77が安定するようにした例を示したが、支持用線材85は1本でも、0本でもよい。支持用線材85が1本であれば、バルーン78付きカテーテルチューブ77がより柔軟に動く。支持用線材85を0本、つまり支持用線材85を削除した形とすれば更に柔軟に動く。
【0128】
図25に、本発明の第八実施形態に係る超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置の振動用線材7cが超音波たわみ振動しているときの様子を軸方向断面図で示している。振動用線材7cが振動して、除去対象物へ振動用線材7cの超音波振動エネルギーが伝わる。ここで、バルーン78の大きさを大きくすると、線材7の超音波たわみ振動する空間が狭まる。振動用線材7cは除去対象物を強く叩く。バルーン78の大きさを小さくすると、振動用線材7cの超音波たわみ振動する空間が広まる。そのため、振動用線材7cは除去対象物を弱く叩く。バルーン78の大きさを変化させることにより、振動用線材7cが除去対象物を叩く力が強く、あるいは弱く、強弱の変化をつけて叩くことができる。除去対象物を少しずつ除去していくには、微妙な押圧力を与えて振動させることが求められる。
【0129】
除去対象物を振動用線材7cの超音波たわみ振動により除去した後は、
図26に示したように、バルーン78の中の生理食塩水等の液体をカテーテルチューブの孔77aから抜いて、バルーン78の大きさを小さくして、患部から抜き取る。
【0130】
図27に、本発明の第八実施形態に係る超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置の操作手順を示すフロー図を示した。操作手順は、バルーン78付きカテーテル77を患部位置に入れる(ステップST1)、バルーン78の大きさを変化させ、振動用空間をあける(ステップST2)、一定時間の線材超音波たわみ振動で付着物を砕く(ステップST3)、除去作業が完了するまで続ける(ステップST4)、除去作業が完了したらバルーン78を収縮し抜き取る(ステップST5)、そして除去作業が終了する(ステップST6)という手順で行われる。
【0131】
図28に、本発明の第八実施形態に係る超音波
たわみ振動手段付きバルーンカテーテル装置の他の操作手順を示したフロー図を示した。
図27のフロー図では、振動用線材7cの超音波たわみ振動で除去対象物を叩いて除去したが、
図28のフロー図では、振動用線材7cの超音波たわみ振動で除去対象物を叩いた後に、バルーン78の大きさを大きくして、振動用線材7cと支持用線材85を除去対象物88に押し付けた状態で、バルーン付きカテーテルチューブ77をマンドレル79の軸芯の周りに回転して、除去対象物88の表面を振動用線材7cと支持用線材85でこすり取るようにしている。
【0132】
図28のフロー図では、ステップST1からステップST4までは
図27と同じであるが、ステップST3の「一定時間の線材超音波たわみ振動で付着物を砕く」の一定時間が経過して、除去作業が完了していないときに、次の作業を種類の違う作業に選択できるようにしている(ステップST7)。ここで、種類の違う作業を選択すると、バルーン78拡大し、線材(支持用線材85と振動用線材7c)を付着物に当て(ステップST8)、バルーン78と線材を回転して付着物をこすり取る(ステップST9)、除去作業が完了しなければ(ステップST10)、ステップST2にもどるが、除去作業が完了すれば、バルーン78を収縮し抜き取る(ステップST5)、そして除去作業が終了する(ステップST6)ことになる。
【0133】
この、バルーン拡大して線材を付着物に当てるステップST8と、バルーン78と線材(支持用線材85と振動用線材7c)を回転して付着物をこすり取るステップST9の様子を
図29に示した。また、このときのバルーン78付きカテーテルチューブ77の軸方向の断面図を
図30に示した。バルーン78により振動用線材7cと支持用線材85が除去対象物88に押し付けられ、バルーン78と線材(支持用線材85と振動用線材7c)が回転して付着物をこすり取る様子が理解される。
【0134】
この
図28のフロー図の手順によれば、バルーン78付きカテーテルチューブ77を止めた位置で、付着物を叩く作業と、付着物をこすり取る作業を一方だけ、又は両方を組み合わせて行うことが出来るという利点がある。
超音波振動子と、超音波振動子の超音波縦振動を受けて縦振動する円柱部分と、円柱部分の直径より短い短辺と円柱部分の直径より長い長辺と所定の厚さを持つ角柱部分とを、円柱部分の先端で軸芯と直交する方向にT字状に設けた超音波たわみホーン本体と、超音波たわみホーン本体の一端面に一体に取り付けられた線材と、線材を線材の自由端にあるたわみ振動の節で支持する支持手段と、超音波振動用の電源と、超音波振動制御手段とを有し、超音波振動子と超音波たわみホーン本体を一体に接続するとともに、超音波たわみホーン本体に一体に取り付けられている線材の自由端を支持手段で支持し、超音波振動用の電源と超音波振動制御手段で超音波振動子を縦振動させ、超音波たわみホーン本体で縦振動をたわみ振動にして、線材を超音波たわみ振動させている。