(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074602
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】コインホッパ
(51)【国際特許分類】
G07D 1/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
G07D1/00GBK
G07D1/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-77353(P2013-77353)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-203180(P2014-203180A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116987
【氏名又は名称】旭精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安部 寛
【審査官】
角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−049671(JP,A)
【文献】
特開2006−235747(JP,A)
【文献】
特開平08−007142(JP,A)
【文献】
実開昭62−081266(JP,U)
【文献】
特開平09−035107(JP,A)
【文献】
特開2002−298184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00−3/16
9/00−9/02
9/04−9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保留ボウルに貯留されたコインを回転ディスクに形成された複数の貫通孔を介してホッパベース上に落下させ、前記回転ディスクの回転に伴って前記回転ディスクの裏面に配置された押動部により前記ホッパベース上のコインを移動させて所定の出口からコインを払い出すコインホッパにおいて、
前記回転ディスクには前記複数の貫通孔のそれぞれに対応して前記回転ディスクの回転軸線と前記貫通孔の前記回転軸線側周壁との間に前記回転軸線側上がりの傾斜面が形成され、
少なくとも2つの前記貫通孔に対応する傾斜面に直接固定されると共に当該傾斜面から前記回転ディスクの外周方向へ向けて斜め上方に延在し、前記回転ディスクと共に回転して、前記回転ディスク付近の前記コインを撹拌する棒状のコイン撹拌部材を有し、
前記コイン撹拌部材の少なくとも1つは、その長さが他の前記コイン撹拌部材より短く形成され、前記回転ディスクの前記回転中心付近の前記コインを撹拌する、
ことを特徴とするコインホッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コインを一枚ずつ連続的に払い出すコインポッパの改良に関するものである。詳しくは、コインジャムやコインブリッジの発生を簡単な装置で防止したコインホッパに関する。なお、本明細書で使用する「コイン」は、通貨、トークン等の円形ディスクの総称である。
【背景技術】
【0002】
保留ボウルの下部に配置した回転ディスクによってコインを一つずつ払い出すコインホッパにおいて、保留ボウル内のコインジャムやコインブリッジを防止する技術が各種提案されている。
【0003】
第1の従来技術として、回転ディスクの回転中心に配置したロッドから斜め上方に延びた複数のアーム部材を設けた撹拌部材が回転ディスクに取り付けられ、回転ディスクの回転によって前記撹拌部材により保留ボウル内のコインを撹拌することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
第2の従来技術として、回転ディスク近傍に断面半球状の振分部材とディスク片が取り付けられ、振分部材により回転軸近傍ではコインが規律状態になることを防止し、さらにディスク片でホッパ下層側のコインを撹拌することが知られている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4468836号公報
【特許文献2】特開平07−006244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多量のコインを保留ボウルに貯留した場合、回転ディスクや該回転ディスク付近のコインへの負荷荷重が増大するため、コイン撹拌の効果が低下してしまう欠点がある。
【0007】
上記第1の従来技術のコインホッパでは、回転ディスク近傍には撹拌部材のアーム部材が存在しないため、回転ディスク上では該回転ディスクの回転による撹拌のみが行われ、回転ディスク上でコインブリッジが形成された場合、コインブリッジを充分に解消することが出来ない問題がある。
【0008】
上記第2の従来技術のコインホッパでは、該回転ディスクの近傍にコイン撹拌用のディスク片が設けられているが、該ディスク片付近でコインブリッジが形成された場合、上記と同じ理由によりコインブリッジを充分に解消することが出来ない問題がある。
【0009】
本発明は、このような実情を鑑みてなされたもので、保留ボウルに多量のコインが貯留された場合、すなわち回転ディスクへの貯留コインによる負荷荷重が増大した場合であっても、回転ディスクの付近でのコインブリッジを防止し、コインの払い出しをより円滑に行うことができるコイン撹拌手段を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、保留ボウルに貯留されたコインを回転ディスクに形成された複数の貫通孔を介してホッパベース上に落下させ、前記回転ディスクの回転に伴って前記回転ディスクの裏面に配置された押動部により前記ホッパベース上のコインを移動させて所定の出口からコインを払い出すコインホッパにおいて、前記回転ディスクには前記複数の貫通孔のそれぞれに対応して前記回転ディスクの回転軸線と前記貫通孔の前記回転軸線側周壁との間に前記回転軸線側上がりの傾斜面が形成され、少なくとも2つの前記貫通孔に対応する傾斜面
に直接固定されると共に当該傾斜面から前記回転ディスクの外周方向へ向けて斜め上方に延在
し、前記回転ディスクと共に回転して、前記回転ディスクの上面付近の前記コインを撹拌する棒状のコイン撹拌部材を有
し、
前記コイン撹拌部材の少なくとも1つは、その長さが他の前記コイン撹拌部材より短く形成され、前記回転ディスクの前記回転中心付近の前記コインを撹拌する、ことを特徴とするコインホッパである。
【0011】
このコインホッパにおいて、回転ディスク近傍に回転ディスクと共に回転移動するコイン撹拌手段が設けられている。これにより、貯留ボウルに貯留されたコインによる回転ディスクへの負荷荷重が増大しても、回転ディスク付近のコインを効率的に撹拌することができ、コインブリッジを解消できる。
【0012】
本発明は、撹拌部材の複数の棒状部材が長さが異なる棒状部材によって構成されていることが好ましい。1つの回転軸線でコイン撹拌部材が回転移動しても、複数の棒状部材の長さを異ならせることで、一方の棒状部材で回転中心付近の内周側を撹拌し、他方の棒状部材で外周側を撹拌させ、棒状部材にかかる負荷が分散、軽減される。
【0013】
本発明は、撹拌部材の複数の棒状部材が弾性部材で構成されていることが好ましい。棒状部材を弾性部材で構成することで、コイン撹拌時のコインへの衝撃が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明のコインホッパの保留ボウルを外した状態の斜視図である。
【
図3】本発明のコインホッパの保留ボウルを外した状態の側面図である。
【
図4】本発明のコインホッパの回転ディスクの上面側の斜視図である。
【
図5】本発明のコインホッパの回転ディスクの裏面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至5を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1乃至3は本発明の第1の実施の形態におけるコインホッパ100を示す斜視図である。
図4は回転ディスクの上面側の斜視図であり、
図5は回転ディスク部の裏面側からの斜視図である。
【0016】
図1乃至3および
図5に示すように、本発明の実施の形態のコインホッパ100は、架台101と、払い出す前の複数個のコイン(図示せず)を貯留する保留ボウル102と、架台101上のホッパベース103と保留ボウル102の底部開口部との間に配置された回転ディスク110と、コインを払い出すコイン払い出し部104と、を備えている。該回転ディスク110は、コインを1枚ずつ受け入れる貫通孔111と、貫通孔111からホッパベース103に落下したコインを押動する押動部113と、回転ディスク110の回転軸線L1と貫通孔111の回転軸線側周壁との間に形成された回転軸線L1側上がりの傾斜面112と、を有している。
【0017】
図4乃至5に示すように、本発明の実施の形態のコイン撹拌手段120は、複数本の棒状部材121a、121b(本実施の形態では2本)の下端部が回転ディスク110に固定され、上端部が回転ディスク110の外周方向斜め上方に延在する状態で構成されている。
【0018】
本実施の形態では、棒状部材121a、121bの下端部は回転ディスク110の傾斜面112に形成された取付穴122a、122bにそれぞれ挿入され、回転ディスク110の裏面側に形成された固定穴124a、124bに挿入されたネジなどの固定具123a、123bで固定されている。
【0019】
固定手段に関し、ネジに限定されることはなく、針状の部材で固定してもかまわないし、接着剤や樹脂などで固定してもかまわない。
【0020】
棒状部材121a、121bは、それぞれ長さが異なるように構成されている。回転ディスク110の回転軸線L1でコイン撹拌
手段120が回転移動しても、棒状部材121a、121bの長さを異ならせることで、一方の棒状部材12
1aまたは12
1bで回転中心付近の内周側を撹拌し、他方の棒状部材12
1aまたは12
1bで外周側を撹拌することで、棒状部材12
1a、12
1bにかかる負荷を分散、軽減することができる。
【0021】
棒状部材121a、121bは弾性部材で構成されている。棒状部材121a、121bを弾性部材で構成することで、コイン撹拌時のコインへの衝撃を緩和することができる。
【0022】
本実施の形態では、それぞれ長さが異なる2本の棒状部材から構成されているが、棒状部材121a、121bの長さは同じ長さでもかまわない。
【0023】
本実施の形態のコイン撹拌手段120は、棒状部材の本数も2本に限定されず、2本以上の複数本使用してもかまわない。
【0024】
前記保留ボウル102、前記架台101、前記ホッパベース103、前記回転ディスク110等の構成や前記回転ディスク110に形成された貫通孔111による捕獲及び捕獲されたコインの押動部113による払い出し部104への押動および払い出し工程などは、本実施の形態のコイン撹拌手段120の作用及び効果に影響を与えるということでもなく、従来技術と同様の構成および機能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0025】
以下、本実施の形態の作用に関して説明する。
【0026】
前記保留ボウル102に複数個のコインがバラ積み状態で保留される。保留されたコインを払い出すために、回転ディスク110が回転され、回転ディスク110の貫通孔111で捕獲され、回転ディスク110の裏面に形成された押動部113で払い出し部104まで移動され、払い出し部104から1枚ずつ払い出される。
【0027】
回転ディスク110が回転された場合、回転ディスク110上に設けられたコイン撹拌手段120は回転ディスク110の回転に伴い移動する。これにより、回転ディスク110付近のコインは回転ディスク110自体の回転により撹拌されるだけでなく、コイン撹拌手段120(換言すれば棒状部材121a、121b)によっても積極的に撹拌される。
【0028】
さらに、本実施の形態のコイン撹拌手段120の棒状部材121a、121bは、各々異なる長さで構成されている。そのため、一方の棒状部材121aまたは121bにより撹拌範囲の内側が撹拌され、他方の棒状部材121aまたは121bで外周側が撹拌される。
【0029】
上記のような撹拌がコイン撹拌手段120によって行われるため、多量のコインが
保留ボウル102に貯留された場合、すなわち回転ディスク1
10への負荷荷重が大きい場合であって、回転ディスク110付近にコインブリッジが形成されても、回転ディスク110自体とコイン撹拌手段120とでコインの一部を強制的に移動されるため、コインブリッジが解消される。
【0030】
また、コインが回転ディスク110上面で回転ディスク110の回転面に対して立ち上がった状態となっても、コイン撹拌手段120の棒状部材121a、121bは回転ディスク1
10に近接して配置されているため、棒状部材121a、121bによりコインは姿勢を変えられ、貫通孔111に落下しやすくなる。
【0031】
上記したように、本発明において、コイン撹拌手段120を回転ディスク110に近接して設けたため、回転ディスク110付近のコインは回転ディスク110とコイン撹拌手段120によっても積極的に撹拌が行われる。したがって、保留ボウル102に多量のコインが貯留された場合、すなわち回転ディスク110への貯留コインによる負荷荷重が増大した場合であっても、コイン撹拌手段120でコインのバランスを崩し、コインブリッジを解消する効果が高められる。
【0032】
また、コイン撹拌手段120が回転ディスク110に近接して配置されているため、コイン撹拌手段120によりコインは姿勢を変えられ、貫通孔111に落下しやすくなる効果がある。
【0033】
したがって、
保留ボウル102内に多量のコインが貯留されていて、回転ディ
スク110付近へのコインの負荷荷重が大きい場合でも、保留ボウル102内のコインを残らず払い出すことができる利点がある。
【符号の説明】
【0034】
100 コインホッパ
101 架台
102 保留ボウル
103 ホッパベース
104 払い出し部
110 回転ディスク
111 貫通孔
112 傾斜面
113 押動部
120 コイン撹拌手段
121a、121b 棒状部材
122a、122b 取付穴
123a、123b 固定具
124a、124b 固定穴
L1 回転軸線
θ 回転軸線と棒状部材がなす角度