特許第6074784号(P6074784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074784
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ホログラムデータ作成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/04 20060101AFI20170130BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20170130BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   G03H1/04
   G03B21/14 Z
   G02F1/13 505
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-269483(P2011-269483)
(22)【出願日】2011年12月8日
(65)【公開番号】特開2013-120362(P2013-120362A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年12月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 IDW‘11発行、IDW‘11 Proceedings of The 18th International Display Workshops、平成23年12月7日発行
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】下馬場 朋禄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智義
【審査官】 池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−071078(JP,A)
【文献】 特開2008−164553(JP,A)
【文献】 特開2004−184609(JP,A)
【文献】 Richard P. Muffoletto et.al.,Shifted Fresnel diffraction for computational holography,OPTICS EXPRESS,2007年,Vol.15/No.9,p.5631-p.5640
【文献】 松島恭治,自由空間における光波伝播シミュレーションのためのシフト角スペクトル法,OPTICS Photonics Japan 2009 講演予稿集,2009年,pp.284-pp.285
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/04
G02F 1/13
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
元画像データに下記いずれかの式においてΔxとΔxの値を異ならせて前記元画像データの拡大又は縮小を行うシフトフレネル回折計算処理を施して位相成分及び振幅成分を含むホログラムデータを作成し、
前記ホログラムデータの前記位相成分を用いて前記ホログラムデータに逆シフトフレネル回折計算処理を施し、位相成分及び振幅成分を含む、逆シフトフレネル回折計算処理が施された元画像データを作成し、
さらに、前記逆シフトフレネル回折計算処理が施された元画像データの振幅成分を、前記シフトフレネル回折計算処理を施す前の前記元画像データに置き換えて再びシフトフレネル回折計算処理を施し、位相成分を取り出してホログラムデータを作成させる、ホログラムデータ作成プログラム。
【数1】
【数2】
【請求項2】
表示素子と、
前記表示素子に光を入射させる光源と、
ホログラムデータを作成し前記表示素子に出力する情報処理装置と、を有するプロジェクタ装置であって、
前記情報処理装置は、元画像データに下記いずれかの式においてΔxとΔxの値を異ならせて前記元画像データの拡大又は縮小を行うシフトフレネル回折計算処理を施して位相成分及び振幅成分を含むホログラムデータを作成し、前記ホログラムデータの前記位相成分を用いて前記ホログラムデータに逆シフトフレネル回折計算処理を施し、位相成分及び振幅成分を含む、逆シフトフレネル回折計算処理が施された元画像データを作成し、さらに、前記逆シフトフレネル回折計算処理が施された元画像データの振幅成分を、前記シフトフレネル回折計算処理を施す前の前記元画像データに置き換えて再びシフトフレネル回折計算処理を施し、位相成分を取り出してホログラムデータを作成させる、ホログラムデータ作成プログラムが格納された記録媒体を備えてなる、プロジェクタ装置。
【数3】
【数4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホログラムデータ作成プログラムに関し、より好適には、空間位相変調素子を用いてホログラムを作成し、スクリーンに投影させるプロジェクタ装置に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
空間変調素子を用いてホログラムを作成し、これに光を入射して投影画像を表示させる技術(ホログラフィックプロジェクション技術)は、無収差、高コントラスト、1枚の空間変調素子によってカラー投影を行うことができるなどの利点により今後大きく期待されている。
【0003】
このホログラムの作成技術に関する公知の技術として、例えば下記非特許文献1には、反復フーリエアルゴリズムを用いた技術が開示されている。
【0004】
また下記特許文献1には、変調素子とレンズとを組み合わせたプロジェクタ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】R.W.Gerchberg and W.O.Saxton、“A practical algorithm for the determination of the phase from image and diffraction plane pictures”、Optik 35、237−246(1972)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−197916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のように、画像の拡大縮小を行おうとする場合、一般には、表示素子とスクリーンとの間にズームレンズ等の光学素子が必要となる。この結果、コスト増、装置の大型化を招く。また、ズームレンズを用いずに投影画像を拡大したいと考える場合、投影画像を求めるために元画像自体を大きくしなければならず、例えば画像のサイズをm倍に拡大する場合、計算に必要となる時間及びメモリはm倍に比例して大幅に増加することとなる。
【0008】
以上、本発明は、ズームレンズ等の画像拡大のための光学素子の数を減らすことが可能となり、しかも拡大縮小における回折計算処理の負担をより軽減できる投影画像表示装置システム用のホログラムデータ作成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点に係るホログラムデータ作成プログラムは、コンピュータに、元画像データにシフトフレネル回折計算処理を施してホログラムデータを作成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によると、ズームレンズ等の画像拡大のための光学素子の数を減らすことが可能となり、しかも拡大縮小における回折計算処理の負担をより軽減できるプロジェクタ装置用のホログラムデータ作成プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態にかかるプロジェクタ装置の概略を示す図である。
図2】実施形態にかかるホログラムデータ作成プログラムの処理の概略を示す図である。
図3】実施形態にかかるホログラムデータ作成プログラムの処理のイメージを示す図である。
図4】実施例にかかる結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態の例にのみ限定されるわけではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るホログラムデータ作成プログラム(以下「本プログラム」という。)を用いるプロジェクタ装置(以下「本装置」という。)1の概略を示す図である。
【0014】
本図で示すように、本装置1は、表示素子2と、この表示素子2に光を入射させる光源3と、この表示素子2によって変調された光を表示させるスクリーン4と、ホログラムデータを作成し表示素子2に出力する情報処理装置5と、を有して構成されている。
【0015】
本装置1において表示素子2は、情報処理装置5によって作成されたホログラムデータを表示するものであり、具体的には電極が形成された一対の基板と、この一対の基盤の間に挟持される液晶層と、を有し、表示素子2は位相変調を行うことのできる液晶表示装置であることが好ましい一例である。なお本実施形態では、ホログラムデータが表示された状態の表示素子2をホログラムともいう。
【0016】
本装置1において光源3は、上記のとおり表示素子2に光を入射させるものであり、上記表示素子2による位相変調を受けやすくするためコヒーレントな光であることが好ましく、例えばレーザ光を発生させるレーザ装置であることは好ましい一例である。
【0017】
本装置1においてスクリーン4は、上記のとおり表示素子2を透過し、位相変調を受けた光を投影することができるものである。
【0018】
また本装置1において、情報処理装置5は、上記のとおり表示素子2にホログラムデータを出力する装置であって、より具体的には、元画像データに基づき回折計算処理を行いホログラムデータを作成することができるものである。情報処理装置5の具体的な構成としては、特に限定されるわけではないが、いわゆるパーソナルコンピュータを例示することができ、例えばパーソナルコンピュータのハードディスクやメモリ等の記録媒体にホログラムデータ作成プログラム及び必要な元画像データを格納し、これを実行することでホログラムデータを作成することができる。
【0019】
なお本装置1において、拡大又は縮小を行うためのズームレンズは不要となっており、配置されていない。これは後述する情報処理装置5の処理から明らかであるが、ホログラムデータ作成プログラムによって拡大又は縮小された画像を作成することができるためである。つまり、表示させる投影画像の拡大を行いたい場合は情報処理装置5によって拡大された画像を作成して表示素子2に出力し、縮小を行いたい場合は情報処理装置5によって縮小された画像を作成して表示装置2に出力することで、拡大又は縮小された投影画像を表示させることができるため、ズームレンズが不要となる。
【0020】
ここで、本装置1におけるホログラムデータ作成プログラム(以下「本プログラム」という。)の計算処理について以下説明する。図2は、本プログラムの処理の概略を示す図である。
【0021】
本図で示すように、本プログラムは、コンピュータに元画像データにシフトフレネル回折計算処理を施してホログラムデータを作成させることを特徴のひとつとする。
【0022】
本プログラムにおいて「元画像データ」とは、処理前の原画像データであって、いわゆる位置情報とその位置における強度情報を含む二次元の画像データをいい、「ホログラムデータ」とは、位置とその位置における位相情報又は振幅情報を含む画像データをいうが、本実施形態では説明の観点から位相情報を含むものとして説明する。
【0023】
本プログラムは、上記のとおり、元画像データに対してシフトフレネル回折計算処理を施すことが特徴となっている。ここで「シフトフレネル回折計算処理」とは、下記式で示される計算処理であり、この式に従い元画像データに対する処理を行う。なお、この回折計算処理の概略について図3に示しておく。
【数1】
【0024】
特に、本プログラムでは、上記式中のΔx、Δxを調整することで拡大縮小処理を行うことができる。なお図3からも明らかなように、Δxは元画像のサンプル間隔をいい、Δxは投影画像(位相)のサンプリング間隔をいう。例えば、Δx<Δxあれば縮小処理となり、Δx>Δxであれば拡大処理となる。なおΔx=Δxであれば等倍処理となる。
【0025】
なお、本プログラムにおいて、シフトフレネル回折計算処理は上記式をそのまま用いてもよいが、処理時間の短縮を図るため高速フーリエ変換を使用できるよう、上記式を下記のように式変形し、使用することもできる。なお、下式において各パラメータは上記式と同じものを表し、Fはフーリエ変換を、F−1は逆フーリエ変換を意味する。
【数2】
【0026】
そして本プログラムでは、上記いずれかの式によりu(x、y)を求めるが、この値には複素数(位相と振幅)が含まれるため、そのままでは表示素子2では表示できないためいずれか一方を取り出してホログラムデータとする。本実施形態では表示素子2として空間位相変調素子を採用しているため、位相情報を取り出してホログラムデータとする。
【0027】
なお、本プログラムでは、上記処理によってホログラムデータを得ることができるが、図2で示すように、位相又は振幅のうち位相成分を用いて逆シフトフレネル回折計算処理を施し、この振幅成分を元画像データに置き換えて再びシフトフレネル回折計算処理を施すこと、更にはこれらの反復計算を複数回行うことが好ましい。これは、本実施形態におけるホログラムデータは振幅情報が失われているのでこのままではスペックルノイズが大きいため、逆シフトフレネル回折計算処理を施し元画像データを得て振幅成分を元画像データに置き換えることで、上記のノイズを徐々に除去し、ホログラムを投下して表示される投影画像の画質を向上させることができる。
【0028】
以上のとおり、本プログラムによると、拡大又は縮小された投影画像を作成したい場合であっても、元画像データの解像度や画素数等を変更する必要がなくなる。この結果、例え元画像データから拡大投影画像を得たい場合であっても回折計算処理の負担は変わらず、安定した回折計算処理を行うことができるようになる。また、上記のとおり、自由に拡大縮小処理が可能となるため、ズームレンズの拡大縮小性能を考慮しなくてよくなることはもちろん、ズームレンズを設ける必要もなくなり装置の小型化を図ることもできるようになる。
【0029】
以上、本実施形態によると、ズームレンズ等の画像拡大のための光学素子の数を減らすことが可能となり、しかも拡大縮小における回折計算処理の負担をより軽減できるプロジェクタ装置用のホログラムデータ作成プログラムを提供することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、説明の観点から位相成分を抽出する例について説明したが、同様の処理によって振幅成分を抽出し、表示素子2をこれに適宜変更することによっても同様の効果を達成することができることはいうまでもない。
【実施例】
【0031】
ここで、上記プログラムにおいて用いたシフトフレネル回折計算処理についてシミュレーション処理を行い、その効果を確認した。以下説明する。
【0032】
まず、投影画像(スクリーン)とホログラム(表示素子2)の間の距離を0.2m、投影画像(スクリーン)とホログラム(表示素子2)に表示される画像における画像データの画素数をそれぞれ512×512、表示素子2に入射する光の波長を633nm(赤)、ホログラムデータのサンプリング間隔Δx=10μmとし、元画像のサンプリング間隔Δxを10μmから24μmまで2μm間隔で変えてそれぞれ回折計算処理した。この結果を図4(a)〜(h)に示しておく。
【0033】
この結果、処理に大きな変更、負担なく、拡大処理が可能となっていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、投影画像表示装置、及びそれに用いられる投影画像作成プログラムとして産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4