特許第6074816号(P6074816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6074816改良された接合型電界効果トランジスタおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074816
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】改良された接合型電界効果トランジスタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/337 20060101AFI20170130BHJP
   H01L 27/098 20060101ALI20170130BHJP
   H01L 29/808 20060101ALI20170130BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H01L29/80 C
   H01L29/06 301F
   H01L29/06 301G
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-169086(P2014-169086)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-79940(P2015-79940A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2014年8月22日
(31)【優先権主張番号】14/055,738
(32)【優先日】2013年10月16日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515028746
【氏名又は名称】アナログ デバイシス グローバル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ジョン コイン
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0065896(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0145410(US,A1)
【文献】 特開昭56−098876(JP,A)
【文献】 特開昭57−128069(JP,A)
【文献】 特開2008−153445(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0269660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/337
H01L 27/098
H01L 29/06
H01L 29/808
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合型電界効果トランジスタを設計する方法であって
前記トランジスタは、
バックゲートと、
チャネルと、
上部ゲートと、
前記チャネルと電流流れ接触するドレインおよびソースと
を備え、
前記方法は、前記チャネルの幅W2chを選択することを含み、
前記チャネルの幅W2chは、
【数1】

によって、前記上部ゲートと前記ソースとの間の距離Ldに関連付けられ、βは、2.5よりも大きい、方法。
【請求項2】
前記上部ゲートと前記バックゲートとの間の第1のチャネル領域中の電流流路が前記上部ゲートと前記ドレインとの間の第2のチャネル領域中の電流流路と実質的に整列するように、チャネル寸法が選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上部ゲートからの電界が前記上部ゲートと前記ソースとの間の前記チャネルの領域中の底部ゲートからの電界と実質的に釣り合うように、チャネル寸法が選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
βは、3≦β≦4の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
最大の設計作動電圧が半導体絶縁破壊しきい値未満であるように、Ldが選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
最大の設計作動電圧が3×10Vcm−1未満であるように、Ldが選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
電流流れの深さdiは、
【数2】
によって表され、
Wtgは、前記上部ゲートの幅を表し、
Wchは、前記上部ゲートと前記バックゲートとの間の前記チャネルの幅を表す、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記チャネル中の電流流路と前記上部ゲートとの間の距離が前記上部ゲートの角の周りの電界強度の領域の広がりよりも大きくなるように、前記上部ゲートと前記バックゲートとの間の前記チャネルの幅が選択され、前記上部ゲートの角の周りでは、前記電界強度が衝撃イオン化を引き起こすことを期待されるしきい値を上回る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ドレインの近傍におけるデバイス電流を前記ドレインの周りの最高の電界の領域から分離するのに十分な深さを持つ前記ドレイン領域を設計することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ドレインの深さは、0.5μmを超える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バックゲート中に段差を設計することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
接合型電界効果トランジスタであって、
チャネルと、
上部ゲートと、
バックゲートと、
ドレインおよびソースと
を備え、
前記ドレインおよびソースは、前記チャネルを介して制御可能な電流流れ連通状態にあり、
前記上部ゲートと前記ドレインとの間の分離Ldは、
【数3】

によって、前記上部ゲートと前記ドレインとの間の前記チャネルの深さに関連付けられ、
W2chは、前記チャネルの深さ(前記バックゲートの頂部までの距離)であり、
βは、2.5よりも大きい係数である、接合型電界効果トランジスタ。
【請求項13】
前記上部ゲートの下の第1のチャネル領域の前記チャネルの幅Wchは、
【数4】
によって、前記上部ゲートと前記ドレインとの間の領域におけるチャネル幅W2chに関連付けられ、
Wtgは、前記上部ゲートの深さであり、
αは、0.5と1との間の係数である、請求項12に記載の接合型電界効果トランジスタ。
【請求項14】
前記ドレインは、前記上部ゲートの深さWtgより大きい深さを有する、請求項12に記載の接合型電界効果トランジスタ。
【請求項15】
任意の最大設計電圧に対して、前記上部ゲートと前記ソースとの間の前記距離Ldが、前記上部ゲートと前記ソースとの間の水平電界を実質的に3×10Vcm−1のしきい値強度未満に設定するための距離より少なくとも1.3倍大きい、請求項12に記載の接合型電界効果トランジスタ。
【請求項16】
使用中かつ最大設計動作電圧において、ゲート電流のドレイン電流に対する比が10−7未満である、請求項12に記載の接合型電界効果トランジスタ。
【請求項17】
請求項12に記載の少なくとも1つのトランジスタを備える、集積回路。
【請求項18】
請求項1に記載の方法に従って設計された少なくとも1つのトランジスタを備える、集積回路。
【請求項19】
電流流れの深さdiは、
【数5】
によって表され、
Wtgは、前記上部ゲートの幅を表し、
Wchは、前記上部ゲートと前記バックゲートとの間の前記チャネルの幅を表す、請求項12に記載の接合型電界効果トランジスタ。
【請求項20】
前記チャネルにおける大多数の電流流路が、電界強度が衝撃イオン化が無視可能となるしきい値未満である領域において発生するように、第1のチャネル寸法が選択される、請求項12に記載の接合型電界効果トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改良された接合型電界効果トランジスタおよびそのようなトランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接合型電界効果トランジスタは、半導体の第1のドープ領域を介して一緒に接続されたソースおよびドレインを備える。接合型電界効果トランジスタ中の電流流れは、第1のドープ領域内の半導体の第2のドープ領域によって形成されたゲートによって提供される。便宜上、ドレインとソースとの間のスペースは、しばしばチャネルと呼ばれるが、この用語は不正確な場合がある。本明細書中では、以下の用語を用いる。
1) ゲートとバックゲートとの間の第1のドープ領域の部分を、第1のチャネル領域と呼ぶ。
2) ゲートとドレインとの間の第1のドープ領域の部分を、第2のチャネル領域と呼ぶ。
3) ゲートとソースとの間の第1のドープ領域の部分を、第3のチャネル領域と呼ぶ。
【0003】
第1のドープ領域と第2のドープ領域とは互いに逆にドープされていて、したがって、Pドープゲートは、Nタイプチャネル中に形成され得る。
【0004】
デバイス内部では、「電流流れ」は、多数担体の運動の結果として発生する。多数担体は、Nタイプ半導体中では電子であり、Pタイプ半導体中ではホールである。電流流路という用語は、トランジスタ中に電流流れを生成するための多数担体の運動に関連する。接合型電界効果トランジスタは、ゲートとチャネルとの間に絶縁領域を有しない。これは、デバイスがそのドレインとソースとの間に電流を通しているときに、ゲート電流が流れ得ることを意味する。ゲート電流は低い値を有するのが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示するのは、デバイスに印加される任意のドレイン−ソース電圧に対してデバイスからのゲート電流を減少させるように接合型電界効果トランジスタを設計する方法である。
【0006】
この開示の第1の態様によれば、接合型電界効果トランジスタのレイアウトを形成するまたは設計する方法が提供され、このトランジスタは、バックゲートと、チャネルと、上部ゲートと、チャネルと電流流れ連通状態にあるドレインおよびソースと、を備え、本方法は、チャネル中のかなりの電流流路が、比較的低い電界の領域中で発生するように、第1のチャネル寸法を選択することを含む。
【0007】
上部ゲートとバックゲートとの間のスペース(第1のチャネル領域)中での長所となる電流流れは、主として低い電界の領域中にある。バックゲートは、底部ゲートとも呼ばれ得る。
【0008】
第1のチャネル領域の内部における電流流路での低い電界は、上部ゲート−チャネル電界と、対向する底部ゲート−チャネル電界との間の均衡の結果として達成することが可能である。上部ゲートと底部(バック)ゲートとの間の電界中和流路に沿って電流が流れるデバイスの寸法の適切な選択により。しかしながら、従来技術によるデバイスでは、電流が第1のチャネル領域から発するに連れて、それは、上部ゲートおよび底部ゲートからの電界がもはや均衡しない領域中に移動し、高電流密度に高電界が組み合わさった結果、衝撃イオン化および高ゲート電流がもたらされる。
【0009】
本文書に開示されるデバイスは、この問題を解決するまたは軽減する。本発明者は、第1のチャネル領域を超える電界は、上部ゲートとバック/底部ゲートとの間の2D問題であると考えることが可能であり、また、デバイスの相対的な形状を適切に整えることによって、底部ゲートとドレインとの間および上部ゲートとドレインとの間での均衡した電界の経路に沿って電流を伝達することが可能であることを認識した。
【0010】
デバイスの底部ゲートを画定する拡散は、一般的に、JFET製造の過程で早期に実施される。この結果、これらの拡散は段階状の輪郭を有することになる。したがって、バックゲート−チャネル接合は、線形の段階状接合によって近似することが可能である。デバイスの表面に存在する上部ゲートは、低い熱量を有し、雑音軽減という目的のため低いゲート抵抗を生成するために、一般的により高度にドープされる。したがって、上部ゲート−チャネル接合は、片側PN接合によってかなり近似することが可能である。線形の段階状接合と片側PN接合との間の相違は、同じ電位であれば、上部ゲートからの電界は、底部ゲートからのそれの倍であることを意味する。第1のチャネル領域中では、互いに逆の上部ゲートと底部ゲートの電界間にあり、電流経路を画定する中和経路は、電流幅を横切って1:2という比によって近似される。
【0011】
使用中、電流は、第1のチャネル領域を超えて走行する。本発明者は、上部ゲートおよび底部ゲートの電界は、低い電界領域を生成するためにさらに均衡させることが可能であることを認識した。これは、上部ゲートからの距離が、底部ゲートからの距離の実質的に倍であれば達成することが可能である。デバイス中では、上部ゲートからドレイン拡散層までの横方向距離「dc]は、デバイスがその完全動作電圧(すなわち、その意図する最大動作電圧)に到達する前に、デバイスが逆バイアスされた電界によって絶縁破壊しないような最小距離であると一般的には定義される。したがって、ドレインコンタクトに向かう全てのポイントにおいて電界を実質的に均衡させるためには、バックゲート拡散層までの垂直深さ「W2ch」が、 上部ゲートからの横方向距離「dc」の実質的に半分であるのが望ましい。これは、望ましい性能を達成するための妥当な第1近似である。
【0012】
本発明者は、ドレインのオーム接触のための拡散がバックゲートの垂直電界に影響を与え、これにより電界間の1:2という均衡がもはや有効でなくなることを認識した。電流経路のためのこの電界均衡を維持し続けるためには、上部ゲートとドレインとの間の余分の横方向分離を提供して、総分離Ldを生じさせることが望ましい。すると、幅「Ld」とバックゲート深さ「W2ch」との間の実効的な比は、
【化1】
によって記述される。
【0013】
拡散の許容範囲の結果として、この同じ条件を、チャネル−ドレイン領域の約3〜4という横方向対垂直方向比の範囲内に維持することが可能である。
【化2】
【0014】
この条件は、衝撃イオン化を軽減または最小化するために、第1のチャネル領域からドレインへの電流の電界平衡経路を維持する。しかしながら、この設計を利用するためには、チャネル電流が経路のそれと整列することが望ましい。すでに、第1のチャネル領域中の電流は、底部ゲートと上部ゲートとの間の距離の1:2の比に位置付けられると設定された。測定されたまたは任意の上部ゲート深さ「Wtg」と、測定されたまたは任意のチャネル幅「Wch」の場合、電流経路の垂直方向位置「di]は、
【化3】
によって近似することが可能である。
【0015】
これらの寸法は、図2に模式的に示されている。
【0016】
この電流を電界のチャネル−ドレイン領域の中和経路に注入するためには、この電流を、チャネルを超えた底部ゲートと上部ゲートとの間の1:2の距離に沿って位置付けることが望ましい。
【化4】
【0017】
したがって、チャネル深さ(Wch+Wtg)が、第1のチャネル領域境界を超えたバックゲート深さ「W2ch」に実質的に等しければ長所となる。これは、同じ底部ゲート深さをデバイス全体にわたって提供することによって達成することが可能である。しかしながら、制御を向上させるには、第1のチャネル領域中の底部ゲート深さをチャネル−ドレイン底部ゲート深さ「W2ch」とは異なるようにすればよい。
【0018】
これは、チャネルで画定された底部ゲート接合が、使用中に2つの方向、すなわちチャネルから垂直方向に、およびチャネル−ドレイン領域から横方向に広がる空乏領域を有するから可能である。これが、底部ゲートチャネルの電界を弱めるが、これは、チャネル電流がチャネル底部ゲートにより近いことを意味し、その結果、それをチャネル−ドレイン領域の電界中和経路に注入することが可能であることを意味する。我々は、垂直方向位置diを、次式で等化することが可能である。
【化5】
【0019】
一般に、双方のデバイスアーキテクチャの場合、この許容範囲は、次式で表現することが可能である。
【化6】
【0020】
チャネル深さの適当な選択はまた、第1のチャネル領域の電流経路を上部ゲートの角から離れて位置付けることを容易化する。処理上の制約の結果、上部ゲートはより小さい曲率半径を有し、当業者には周知なように、これがより強い電界を生じる。第1のチャネル領域中でのチャネル幅Wchの選択は、かなりの電流経路を高い電界強度のエリア、すなわち、電界強度が、チャネル領域の終端部で衝撃イオン化を開始させ得る最大の許容電界値を超えるエリアから離れて移動させるために用いることが可能である。
【0021】
より小さい角電界もまた、ドレインのコンタクトに存在するが、この場合、従来技術のデバイスでは、デバイスからドレインに向かう表面に沿った比較的高い電流密度もまた、ドレインの角の高電界の領域内に存在する。本発明者は、この問題を軽減化するためには、ドレインの角を表面の電流経路から離すドレイン拡散を用いるのが望ましいことを認識した。これは、比較的深いドレインを形成することによって達成することが可能である。ドレインのコンタクトの周りの垂直方向に深いドレイン拡散は、ドレインからバックゲートの電界(特にドレイン角電界)を、電流がドレインコンタクトに向かって流れてデバイスから脱出するデバイスの表面から離れるように移動させる。ドレイン深さ「Wd」は少なくとも0.5μmであることが長所となる。この余分のドレイン拡散は、電界を階段状にする必要はないが、第2のチャネル領域中のデバイス電流をドレインでの最高電界から垂直方向に分離する働きをするのみである。
【0022】
既存のデバイスアーキテクチャは、電流を実質的に電界中和である経路に沿って、さらに、ゲート電流を生成するように衝撃イオン化を開始するまたは高める角電界から離れるように位置付けすることを容易化することが可能である。しかしながら、ゲート領域内の欠陥はまた、少数担体を漏洩電流およびデバイス雑音という形態で生成しかねない。これらの副作用を双方とも軽減するために、多結晶シリコンから「外方拡散」を用いて上部ゲートを形成することが可能である。この過程戦略は、上部ゲート領域中のデバイスの表面上に多結晶シリコンを堆積させて、多結晶シリコンを埋め込む、または、別様に高ドープ層を表面に提供することを伴う。次に、熱拡散を実施して、ドーパントを高ドープ層の下のシリコンに打ち込み、上部ゲートを形成することが可能である。この方式は、デバイスの性能を制限し得る埋め込み損傷に起因する欠陥の生成を防止する。
【0023】
本開示の第2の態様によれば、また、チャネルと、ゲートと、ドレインおよびソースとを備え、ドレインおよびソースがチャネルを介して制御可能な電流流れ連通状態にあり、第1のチャネル寸法が、チャネル中でのかなりの電流流路が、電界強度がしきい値未満である領域において発生するように選択される接合型電界効果トランジスタが提供される。
【0024】
このしきい値は、衝撃イオン化が、任意のドレイン−ソース電圧に対して好ましくないゲート電流を惹起させると予測される値であり得る。
【0025】
したがって、JFETのソースとドレインとの間に形成された第1のタイプの半導体のチャネルを備えるJFETを提供することが可能であり、このチャネルはその第1の側において、第2のタイプの半導体の第1の領域が境界となっており、かつ第1のゲート領域がチャネルの第2の側部からチャネルの第1側部に向かって延在して、厚さが減少したチャネル領域を形成しており、第1のゲート領域と、ゲートとドレインとの分離との相対的寸法が、作動中のデバイスで、チャネル中を流れる電流が高電界強度の領域から離れるように方向付けされるように選択される。
【0026】
ゲート、ドレイン、およびチャネルの寸法が、チャネル電流の大部分が減少した、好ましくは実質的にゼロの電界に沿って流れるように構成されれば長所となる。
【0027】
JFETは、水平デバイスとして形成され得る。したがって、このような水平デバイスでは、ソースおよびドレインは、半導体の表面から互いに実質的に同じ深さに形成される。ドレインおよびソースは、互いから横方向に分離される線形構造であり得る。代替的には、ドレインがソースによって囲まれ得る、またはその逆であり得る。これは、トランジスタが3次元物体であるからである。
【0028】
チャネルの第1の側に置かれた第2のタイプの半導体の第1の領域は、チャネルの下に置かれたバックゲートであり得る。第1のゲート領域は、このようなデバイスの上部ゲートを形成する。
【0029】
好ましくは、上部ゲートに隣接するチャネルの領域中の電流は、上部ゲートからの電界が、底部ゲートからの電界によって実質的に対抗される経路に沿って流れる。したがって、上部ゲートの下のチャネル領域にはほとんど、そして実際上実質的に衝撃イオン化がないが、それは、重要な電流電導経路に沿って電界がほとんどまたはまったく存在しないからである。電流は、中和経路に沿って流れるものとみなすことが可能である。
【0030】
本開示に従って製造されるデバイスでは、デバイスの形状および、オプションとしてドープ濃度は、上部ゲートの下の中和経路に沿って存在する電流が、低電界領域が成立しているゲート−ドレイン領域とほぼ整列しており、そのため、電流が、比較的低い電界の領域で流れ続けることが可能となるように、選択される。
【0031】
デバイスの輪郭付けは、上部ゲートの深さもしくは長さの修正、および/またはチャネルの深さもしくは長さの修正、および/または上部ゲートでのもしくはこれに沿ったチャネルの輪郭の修正、および/またはドレインの深さの修正を含み得る。物理的寸法におけるこれらの要求に加えて、ドープ濃度もまた修正され得る。
【0032】
本開示のさらなる態様によれば、内部のトランジスタが本明細書に開示される方法に従って設計される、または本文書の教示に従って製造される集積回路が提供される。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
接合型電界効果トランジスタを形成する方法であって、上記トランジスタが、
バックゲートと、
チャネルと、
上部ゲートと、
上記チャネルと電流流れ接触するドレインおよびソースと、を備え、
上記方法が、上記チャネルにおけるかなりの電流流路が、比較的低い電界強度の領域で発生するように、第1のチャネル寸法を選択することを含む、方法。
(項目2)
上記上部ゲートと上記バックゲートとの間の第1のチャネル領域中の電流流路が、上記上部ゲートと上記ドレインとの間の第2のチャネル領域中の電流流路と実質的に整列するように、チャネル寸法が選択される、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記上部ゲートからの電界が、上記上部ゲートと上記ソースとの間の上記チャネルの領域中の底部ゲートからの電界と実質的に釣り合うように、上記第1のチャネル寸法が選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目4)
上記チャネルの幅W2chが、
【数1】
によって、上記上部ゲートと上記ソースとの間の距離Ldに関連付けられ、式中、βは2.5を超える、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
βが、3≦β≦4の範囲にある、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
最大の設計作動電圧Ld/βが、半導体絶縁破壊しきい値未満であるように、Ldが選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
最大の設計作動電圧Ld/βが、3×10Vcm−1未満であるように、Ldが選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
電流流れの深さdiが、
【数2】
によって表され、式中、Wtgは、上記上部ゲートの幅を表し、
Wchは、上記上部ゲートと上記バックゲートとの間の上記チャネルの幅を表す、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
上記チャネル中の電流流路と上記上部ゲートとの間の距離が、電界強度が衝撃イオン化を惹起させると期待されるしきい値を上回る、上記上部ゲートの角の周りの上記電界強度の領域の広がりを超えるように、上記上部ゲートと上記バックゲートとの間のチャネルの幅が選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
上記ドレインの近傍におけるデバイス電流を上記ドレインの周りの最高の電界の領域から分離するのに十分な深さを持つ上記ドレイン領域を形成することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
上記ドレインの深さが、0.5μmを超える、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
上記バックゲート中に段差を形成することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
接合型電界効果トランジスタであって、
チャネルと、
ゲートと、
ドレインおよびソースと、を備え、
上記ドレインおよびソースは、上記チャネルを介して制御可能な電流流れ連通状態にあり、上記チャネルにおけるかなりの電流流路が、電界強度がしきい値未満である領域において発生するように、第1のチャネル寸法が選択される、接合型電界効果トランジスタ。
(項目14)
上記上部ゲートと上記ドレインとの間の分離Ldが、
【数3】
によって、上記上部ゲートと上記ドレインとの間の上記チャネルの深さに関連付けられ、式中、W2chは、上記チャネル深さ(上記バックゲートの頂部までの距離)であり、
βは、2.5を超える係数である、上記項目のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
(項目15)
上記上部ゲートの下の第1のチャネル領域の上記チャネルの幅Wchが、
【数4】
によって、上記上部ゲートと上記ドレインとの間の領域におけるチャネル幅W2chに関連付けられ、式中、Wtgは上記上部ゲートの深さであり、αは0.5と1との間の係数である、上記項目のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
(項目16)
上記ドレインが、少なくとも0.5μmの深さを有する、上記項目のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
(項目17)
任意の最大設計電圧に対して、上記上部ゲートと上記ソースとの間の上記距離Ldが、上記上部ゲートと上記ソースとの間の水平電界を実質的に3×10−5Vcm−1のしきい値強度未満に設定する距離より少なくとも1.3倍大きい、上記項目のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
(項目18)
使用中かつ最大設計動作電圧において、ゲート電流のドレイン電流に対する比が、10−7未満である、上記項目のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
(項目19)
上記項目のいずれかに記載の少なくとも1つのトランジスタを備える、集積回路。
(項目20)
上記項目のいずれかに記載の方法に従って指定された少なくとも1つのトランジスタを備える、集積回路。
(摘要)
接合型電界効果トランジスタを形成する方法であって、本トランジスタは、バックゲートと、チャネルと、上部ゲートと、チャネルと電流流れにあるドレインおよびソースと、を備え、本方法は、チャネルにおけるかなりの電流流路が、比較的低い電界強度の領域で発生するように、上部ゲートとバックゲートとの間の第1のチャネルの寸法を選択することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
電界効果トランジスタの実施形態と、このようなトランジスタに関連する設計上の考慮とを、以下に、次の添付図面を参照し、非制限的な例を介して説明する。
【0034】
図1図1は、本文書の教示による向上した接合型電界効果トランジスタの実施形態の略断面図である。
図2図2は、図1のデバイス中の寸法の一部を示す。
図3a図3aおよび3bは、それぞれ従来技術によるデバイスと、本開示の教示に従って形成されたデバイスと、におけるソースと底部ゲートとの間の電界方向を模式的に示す。
図3b図3aおよび3bは、それぞれ従来技術によるデバイスと、本開示の教示に従って形成されたデバイスと、におけるソースと底部ゲートとの間の電界方向を模式的に示す。
図4図4は、本開示の教示に従って決定されたデバイス中のソースとゲートとの間の電界方向を模式的に示す。
図5図5は、本開示の教示に従って形成されたデバイスのドレインからゲート領域にわたる略断面図であり、また、トランジスタ内の電界の領域に対する重要な電流流路の相対的な位置を示す。
図6図6は、デバイスの形状を略式に示す。
図7図7は、本開示の教示に従って形成されたデバイス中の電流流路のシミュレーションを示す。
図8図8は、空乏領域および高電界強度のエリアを模式的に示す。
図9図9は、バックゲートの輪郭に対する修正を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書に与えられる説明においては、上記のような、下記のような、それ以外などのような用語は、これらが言及する図面に関連して解釈され、かつ、本文書の開示に従って形成されたデバイスに関連して制限されることはないと解釈されるべきである。
【0036】
加えて、簡潔にするため、デバイス内のドープされた領域は、険しいエッジを持つ矩形形状を有するものとして示されている。当業者は、ドープ領域のエッジは、デバイスの製造中での不純物の拡散のために、空間的に拡散され、丸められていることを理解するであろう。
【0037】
図1は、改良された接合型電界効果トランジスタの実施形態を模式的に示す。図1では10で総称して示す接合型電界効果トランジスタは、第1のタイプの半導体、例えば、ソース14とドレイン16との間に形成されたNタイプの半導体のチャネル12を備える。ドレインおよびソースもまた、第1のタイプの半導体で形成されているが、チャネルよりも重くドープされている。チャネル12は、第2のタイプの半導体の第1の領域20の上に形成されている。図1に示す配置ではチャネルの下にあるこの領域20は、しばしば接合型電界効果トランジスタのバックゲートと呼ばれる。上部ゲートは、チャネル12に埋め込まれた第2のタイプの半導体の第2の領域22によって形成される。完成されたデバイス中のチャネル12は、3つの領域に分割されているものと見なすことが可能である:
1) 上部ゲート22の下の第1のチャネル領域12.1、
2) 上部ゲート22とドレイン16との間の第2のチャネル領域12.2、
3) 上部ゲート22とソース14との間の第3のチャネル領域12.3。
【0038】
このデバイスは、一般的には、デバイスを汚染から保護するために、二酸化シリコンまたは窒化シリコンなどのパッシベーション材料24の層によって被覆される。デバイスに対して電気的に接触するように、金属製の「ビア」26が、金属製のコンタクト28をソース14と相互接続するために、パッシベーション24を通って延在する。強化ドープの領域30が、接触抵抗を減らすために、ソースと金属製ビアとの間の接合のところに形成され得る。ビア32、金属製コンタクト34、および強化ドープ領域36を備える類似の構造がまた、ドレイン16中に形成される。ビアは金属製である必要はない。
【0039】
ゲート接続部がゲートドープ22に作成されている。このゲート接続部は、ゲート領域22をゲート端末42に接続するために、パッシベーション材料24を通って延在するビア40を備え得る。加えて、図示するように、多結晶シリコンの領域という形態での「リサーフ」構造44が、ビア40とゲートドープ22との間に接続部を形成し得る。リサーフ領域44は、張り出しフィールドプレート44aおよび44bを形成するように輪郭付けされ得る。
【0040】
トランジスタ10は、自身を下層の基板から絶縁するために、逆バイアスされたウエル内に形成され得る。このような配置は、当業者には周知である。代替的には、また図1に示すように、トランジスタは、絶縁されたウエル内に形成され得る。したがって、バックゲート20は、ハンドルウエハ52上に担持される二酸化シリコンの層50が境界となり得る。同様に、トランジスタは、側壁54および56が境界となり得る。トランジスタは3次元デバイスであることから、トランジスタ10が形成される箱型構造を形成するために、他の絶縁壁がパッシベーション材料24から図1の平面の前部および背部で絶縁領域50に向かって延在している。相対的な位置および、特に、上部ゲート領域22およびドレイン16の深さならびにチャネル12の深さは、ドレインとソースとの間で電流を運ぶこれらの領域から分離される、デバイス内の比較的強力な電界の領域になるように選択され、輪郭付けされる。ドレイン、ソース、およびチャネル、ならびにパッシベーション材料24を形成するドープされた半導体領域間の境界は、デバイスの上側表面70を画定するものと見なすことが可能である。
【0041】
図2は、図1のデバイスの半分を模式図で詳細に示す。したがって、上部ゲート22の中間点からドレイン16を通る断面形状が、線図形態で示されている。チャネル22は、上部ゲート22と底部ゲート20との間の領域中に第1のチャネル寸法を有する。この寸法は、Wchとして模式的に示されており、第1のチャネル領域12.1の「幅」(垂直寸法で)に対応している。上部ゲート22とドレイン16との間および上部ゲート22とソース12との間のチャネル12の第2および第3の領域12.2および12.3は、図2ではW2chとして支援されるより大きい空間的な広がり、すなわち幅を有する。ドレイン16は、デバイスを形成する半導体の上部表面70から下方に距離Wdだけ延在する。ドレイン16の底部からバックゲート20の頂部までの概念的な間隙は、Xdとして示される。上部ゲート22とドレイン16との間の間隔は、Ldとして識別される。
【0042】
バックゲートは、濃度Nbgでドープされ、上部ゲート22は、濃度Ntgでドープされる。これらのドープ濃度は、上部ゲート22とチャネル12との間および底部ゲート20とチャネル12との間の接合の周りに欠乏領域が形成される範囲に影響する。相対的なドープ部分および、したがって、任意のゲートソース電圧に対する欠乏領域の空間的な範囲を制御することによって、デバイス内でどの程度に深く、通常ドレイン電流と呼ばれる電流の大多数が上部ゲート22の下のチャネル領域内を流れるかを決定することが可能となる。使用にあたっては、上部ゲートのドープ濃度Ntgは、電流が上部ゲート22の下の領域での深さdiのところを流れる傾向があるように底部ゲートドープ濃度Nbgよりも大きい。チャネル領域では、電流の位置diは、上部ゲートと底部ゲートという2つの対向するフィールド間の中和点によって決定される。しかしながら、この電流が第1のチャネル領域12.1を離れるとき、それがまた、上部ゲートおよび底部ゲートからドレインに至る類似のフィールド中和経路に注入されることが長所となる。底部ゲート−チャネル接合は線形階段状接合によって近似させ、上部ゲートは段差接合によって近似させることが可能であるため、diは、上部ゲート22からの距離の約2倍であることを意味するが、これは、底部ゲート20の場合には、これらが、デバイスの両端では電位が等しいため、打ち消し合うためである。図2を検討すると、次式になる。
【化7】
【0043】
電流流路とバックゲート20との間の公称の距離は、XBCH(=Wch/3)と名付けられ、公称の電流流路と上部ゲートの底部との間の対応する距離はXTCH(=2Wch/3)と名付けられる。
【0044】
ある実施形態では、寸法Wchは、約0.7ミクロンを超える。したがって、ドープレベルの選択と相まって、上部ゲート22の下の電流流れが、深刻なフリンジ電界が上部ゲート22の角のところで発生することを回避するのに十分な深さのところに存在することが保証される。
【0045】
加えて、ドレインの深さWdは、適度に深いように選択される。ある実施形態では、ドレインの深さWdは、約0.5μmに少なくとも等しいかまたはこれを超える。
【0046】
これらの選択の各々は、異なる仕方でデバイスに影響する。
【0047】
図3aおよび3bは、2つの電界効果トランジスタのドレイン領域16の周りの電界ベクトルを模式的に示す。
【0048】
図3aおよび3bでは、デバイスの全体深さは、概念上は、パッシベーション(図示せず)から基板20を支えるハンドルウエハ52までと同じである。しかしながら、図3bのデバイスは、図3aに示すデバイスのチャネル深さよりも大きい深さW2chを有するチャネル12を有する。各々の場合において、デバイスの採用する電位差は同じであると想定され、これで、図3aのデバイスのドレインは、図3bのデバイスのドレインと同じ電圧であり、また、デバイスの各々のバックゲート20に印加されるバックゲート電圧もまた同じである。ドレイン16の直下に位置する図3aでは60a、図3bでは60bと総称される第1の領域では、電界は、バックゲート20とチャネル12との間の境界に対して実質的に垂直に延在する。したがって、各々の場合において、電界方向は実質的に同じであるが、その結果としては、図3bの電圧差が図3aのそれと同じであるがより大きい物理的距離にわたって作用するため、領域60bの電界強度は、領域60aでの対応する電荷強度より小さくなる。同様に、ドレイン16からある距離に位置する領域62aおよび62bでは、電界は、これまたバックゲート20とチャネル12との間の境界に対して実質的に直角(または垂直)である。しかしながら、この場合も、実際の電界強度は、図3bのデバイスにおいては、同じ電圧差がより大きい距離にわたって降下するおかげで、図3aのデバイスにおけるそれと比較して小さい。ドレイン16のエッジに隣接する図3aに図示するデバイスでは64aで示し、図3bに図示するデバイスでは64bで示す領域では、電界は、横方向と下方の双方に延在する。しかしながら、ドレインはチャネルと比較してはるかに強力にドープされているため、その結果として、ドレインはより導電性となり、したがって、チャネルとしてよりも等電位の表面として動作することになる。これは、電界ベクトルはドレイン16のベースから発しやすいことを意味する傾向がある。図3bに示すように、ドレインが深いところでは、領域66bで総称するように、ドレインの頂部の近くには低い電界の領域が存在することを意味する。図3a中での対応する領域66aは、空間的により広範囲に渡らない、すなわちあまり展開していないため、その結果、より大きい電界強度が、図3aに示すデバイスの上部表面の近くには、図3bに示すデバイスのそれと比較して、より大きい電界強度が存在することになる。
【0049】
デバイスの動作に影響する別のパラメータは、上部ゲートの周りの電界勾配である。図4は、比較的深いチャネルを有するデバイスの上部ゲート22とドレイン16との間の電界を模式的に示す。図4に示すように、上部ゲート22のそれに類似した深さを有する70で総称される上部領域での電界ベクトルは、一般に、デバイスの表面に対して水平または平行である。
【0050】
電界が湾曲した形態をとるデバイス中のより深いところでは、上部ゲート22の角領域72での電界ベクトルは、水平方向と垂直方向双方の成分を示す。上部ゲートのエッジとドレイン16の隣接するエッジとの間の距離Ldは、横方向の電界が、デバイスの望ましい最大絶縁破壊電圧の臨界値未満に降下するように選択される。一般的に、30ボルトを超える絶縁破壊電圧を有するデバイスの場合、Ldは、約6.5ミクロン程度である。それを超える距離は所望次第で用いることが可能であるが、そうすると、半導体ウエハ上でのデバイスの占有面積が増し、また、オン抵抗を増加させる結果となりかねない。試験デバイスでは、距離Ldは、約3×10Vcm−1というしきい値強度未満の水平方向電界を設定する距離「dc」として示す最小距離よりも約1.3倍大きくなるように選択された。
【0051】
先行する設計上の選択と組み合わされて用いることが可能なさらなる設計上の選択とは、ドレイン深さWdを約0.5μmより大きくすることである。これは、底部ゲート電界をドレインの下のエリアに閉じ込めることによって電流がデバイスの表面に殺到することを回避する効果を有する。
【0052】
例えば図4のそれらと一緒に図3bに示すように、電界ベクトルの重ねあわせを考えると、デバイスの一部の領域では、図3bの電界ベクトルの垂直成分は、図4の、特に上部ゲート22の角72の近傍における電界ベクトルの垂直成分の逆の符号を有することが明らかになる。これは、デバイス形状を適当に選択することによって利用して、比較的低い電界を生成することが可能であり、さらにその上、デバイス内の電流経路を、主として、低い、または少なくとも減少した電界の領域内で流れるように配置することが可能である。このような配置を図5に模式的に示す。図5は、完成されたデバイス中での電界ベクトルを模式的に示す、また、「一点鎖」線80であらわすように、ドレイン領域へのゲート内の電流流れの主経路または重要な電流流れの経路を示す。図5に模式的に示すように、電流80の大部分は、比較的弱い電界強度の領域82を通って流れる。より大きい電流流れの領域をより大きい電界強度の領域から分離することによって、衝撃イオン化の奇形性がかなり軽減される。大規模の衝撃イオン化は、デバイスの絶縁破壊を生じさせかねず、これは明らかに好ましくない。しかしながら、J−FETの文脈では、いかなる衝撃イオン化でも、上部ゲートであろうと底部ゲートであろうと、ゲートに向かって殺到する少数担体が発生する結果となり、結局、ゲート電流が形成されることになる。これは、FETの重要なデバイスパラメータが、ドレイン電流に対するゲート電流の比Ig/Idであり、これは小さく抑えるべきであるため、きわめて望ましくない。Ig/Idの一般的な値は1×10−6であり、目標値の10−7が、全動作電圧にわたって望ましい。
【0053】
実質的に中和である区域での電流の経路を容易化するためには、電界成分を均衡させることが望ましい。
【0054】
図6は、図2を参照してすでに検討したデバイスレイアウトを再現する。図6は電流経路と電界成分とを模式的に示す。電流経路を、デバイスの表面の上部ゲート22の近くにある実質的に水平方向の電界であるより強い電界の領域、すなわち図6で90と総称されるこのような領域から外しておくためには、我々は、上部ゲートからの電界が、底部ゲートからの電界と等しいことを希望する。底部ゲートは一般にトランジスタ過程形成の初期に形成されるため、それは、より大きい熱量を受容し、したがって、チャネル−バックゲート接合は、線形階段状の接合によって近似することが可能である。しかしながら、デバイス性能を向上させるためには、低雑音とするため低上部ゲート抵抗値を有することが望ましく、この上部ゲート22に対するより高いドーピングは、上部ゲート−チャネル接合は、片側段差接合として近似することが可能であることを意味する。片側接合と線形階段状接合との間の電界の差は、上部ゲート22からの電界強度が底部ゲートのそれの2倍であり、したがって、上部ゲート端と底部ゲート端とに等しい電位を持つ均衡した電界を達成するためには、電流経路に沿った全ての点で、上部ゲートからの距離が底部ゲートからの距離の約2倍であるこの経路の中で、電流の大部分が流れるべきであることを意味する。第1近似によれば、これは次式のように寸法を選択することによって達成することが可能である。
【化8】
【0055】
しかしながら、この分析は、ドレインのオーム拡散の影響はバックゲート電界上では無視することが可能であることを前提としている。しかしながら、これが実質的に有効な前提であるためには、ドレインを最小距離「dc」を超えて少なくともさらに1.3倍分離することが望ましい。したがって、これが、垂直方向のバックゲート深さ「W2ch」と、レイアウトの定義された横方向距離「Ld」とを、
【化9】
として再定義するが、式中、KはLdとdcとの比である。Kは一般的に約1.3を超える。
【0056】
ドープ拡散によって許される許容範囲によって、バックゲートまでの深さを次のように書き直すことが可能である:
【化10】
【0057】
図7は、
【化11】
であるデバイス中での上部ゲート22の下からドレイン16への電流経路を示すシミュレーションである。
したがって、この例では、β=3である。
【0058】
破線102および104が境界となっている領域100であらわされるように、電流流れが上部ゲート22のエッジのところで角106から離れていることが分かる。
【0059】
図8は、図7のデバイスを示すが、一点鎖線110、112、および114で示されるように、空乏領域境界の推定位置を含む。加えて、「鎖」線120および122は、電界強度が6×10V/cmを超える、図8でハッチングされていることで識別される領域124および126の空間的広がりを表す。
【0060】
いままで示した配置では、チャネルの下部境界は平坦であった。しかしながら、これはそうである必要はなく、本明細書に説明するデバイスは、平坦でないチャネルからゲートへの境界を含むように修正し得る。このような配置を図9に示す。図9に示すように、段差130は、バックゲート20中に形成された。この段差は、バックゲート20と同じ半導体材料/ドープタイプのものである。段差20を形成する様々な方法が、当業者には明らかである。1つの方法は、バックゲートをマスクし、段差が発生する開口部を暴露することであり得る。次に、この領域を、バックゲートの残余よりも高い濃度でドープすることが可能である。次にこのマスクを取り外すと、トランジスタは、バックゲート上に形成されたエピタキシャル層を有する。これらの層はチャネルとなるようにドープされる。焼きなまし中、領域20での増大したドーピングが拡散して、チャネル中に延在する段差領域(丸まったエッジを有する)を作成する。代替的には、複数のエピタキシャル成長段階を実施し、チャネル形成の残余を完了する前にチャネルの底部に段差を形成するようにドーピングを実施することによって、この段差を形成することが可能である。
【0061】
段差130は、チャネルの足部から高さSだけ延在することが可能である。さらにその上、段差130のエッジは、図9に示すように、上部ゲート22のエッジから、距離Eだけ相殺することが可能である。距離Eは、正の数でも負の数でもよい。したがって、図9は、上部ゲート22よりも横方向範囲が大きい段差130を示しているが、段差130は、より小さい横方向範囲のものでもあり得る。
【0062】
この段差は、第1のチャネル領域12.1が、チャネル−ドレイン領域中での電界均衡のために選ばれた垂直方向と横方向との比とは無関係に画定されることを許容する。電界中和チャネル領域からの電流はそれでも、電界中和チャネル−ドレイン領域に注入することが可能であるが、それは、段差130が、段差がないときの垂直方向だけとは対照的に、垂直方向と横方向の双方に延在する空乏領域の源であるからである。2つの方向からのこの空乏が、チャネル領域中の上部ゲートに対する底部ゲートの電界を弱め、XBCHを0に近づけさせる。したがって、衝撃イオン化を最小にするためには、寸法WchおよびW2chは
【化12】
によって関係付けられる。
【0063】
段差130を持つまたは持たないJFETのより一般的な条件では、構造の範囲は、
【化13】
と表すことが可能である。
【0064】
係数αは、ドープ領域の位置の許容範囲を考慮するものであり、ある程度の不整合は受け入れ可能である。
【0065】
したがって、以下のことを観察することが可能である。
【0066】
ドレイン(Id)に対してゲート電流(Ig)が少ないのは、高電流密度の領域が高電界強度の領域(例えば、電界強度が、衝撃イオン化が無視不能となるしきい値を超える領域)で発生する結果である。これは特に、電界の作用が電流流れの方向と整列して、衝撃イオン化の危険性が増し、したがって、ゲート電流として出現する少数担体が生成される場合には当てはまる。
【0067】
JFETのドレイン電流は、競合する空乏領域の2つの寸法均衡によって抑制される。
【0068】
最も深刻な空乏領域は、上部ゲートから横方向で、底部ゲートから垂直方向にある。
【0069】
上部ゲートからドレインへの距離Ldを増加させることによって、横方向の電界強度が減少する。電界は、距離に対して線形には減少しないが、それは、半導体材料内部で作用しているが、これは誘電体でないからである。
【0070】
チャネルへのドレインのコンタクトの深さを増すことによって、垂直方向の電界強度が減少する。
【0071】
バックゲートからの高電界強度がドレインからの電界と競合することを回避するために、チャネルからドレインへの領域の近くのバックゲートが強くドープされることを回避すると、長所となる。
【0072】
デバイス形状の配置およびドーピングを適切にすることによって、非常に高い電界の領域を電流密度の大きい領域から離し、それにより、動作条件の任意の集合に対して衝撃イオン化の発生を軽減することが可能となる。
【0073】
高ドープドレイン領域は、垂直方向電界から表面伝導電流経路を保護するために、デバイスの表面から十分な距離のところに形成すべきである。
【0074】
チャネル深さは、伝導経路を上部ゲートの角の所の高電界強度の領域から分離するために十分な大きさであるべきである。
【0075】
したがって、これらの規制を用いて、Ig/Idを減少させるために、JFET内のドープ領域の相対的な寸法および位置の設計を支援することが可能である。
【0076】
本明細書に記載する技法は、NチャネルデバイスとPチャネルデバイスの双方に対して等しく応用することが可能である。
【0077】
クレームは、USPTOへの提示に適切な単独従属形式で提示されている。しかしながら、いかなるクレームも、明瞭に実行不可能である場合を除き、同じカテゴリの任意の先行するクレームに従属し得ることを理解すべきである。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9