【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示するのは、デバイスに印加される任意のドレイン−ソース電圧に対してデバイスからのゲート電流を減少させるように接合型電界効果トランジスタを設計する方法である。
【0006】
この開示の第1の態様によれば、接合型電界効果トランジスタのレイアウトを形成するまたは設計する方法が提供され、このトランジスタは、バックゲートと、チャネルと、上部ゲートと、チャネルと電流流れ連通状態にあるドレインおよびソースと、を備え、本方法は、チャネル中のかなりの電流流路が、比較的低い電界の領域中で発生するように、第1のチャネル寸法を選択することを含む。
【0007】
上部ゲートとバックゲートとの間のスペース(第1のチャネル領域)中での長所となる電流流れは、主として低い電界の領域中にある。バックゲートは、底部ゲートとも呼ばれ得る。
【0008】
第1のチャネル領域の内部における電流流路での低い電界は、上部ゲート−チャネル電界と、対向する底部ゲート−チャネル電界との間の均衡の結果として達成することが可能である。上部ゲートと底部(バック)ゲートとの間の電界中和流路に沿って電流が流れるデバイスの寸法の適切な選択により。しかしながら、従来技術によるデバイスでは、電流が第1のチャネル領域から発するに連れて、それは、上部ゲートおよび底部ゲートからの電界がもはや均衡しない領域中に移動し、高電流密度に高電界が組み合わさった結果、衝撃イオン化および高ゲート電流がもたらされる。
【0009】
本文書に開示されるデバイスは、この問題を解決するまたは軽減する。本発明者は、第1のチャネル領域を超える電界は、上部ゲートとバック/底部ゲートとの間の2D問題であると考えることが可能であり、また、デバイスの相対的な形状を適切に整えることによって、底部ゲートとドレインとの間および上部ゲートとドレインとの間での均衡した電界の経路に沿って電流を伝達することが可能であることを認識した。
【0010】
デバイスの底部ゲートを画定する拡散は、一般的に、JFET製造の過程で早期に実施される。この結果、これらの拡散は段階状の輪郭を有することになる。したがって、バックゲート−チャネル接合は、線形の段階状接合によって近似することが可能である。デバイスの表面に存在する上部ゲートは、低い熱量を有し、雑音軽減という目的のため低いゲート抵抗を生成するために、一般的により高度にドープされる。したがって、上部ゲート−チャネル接合は、片側PN接合によってかなり近似することが可能である。線形の段階状接合と片側PN接合との間の相違は、同じ電位であれば、上部ゲートからの電界は、底部ゲートからのそれの倍であることを意味する。第1のチャネル領域中では、互いに逆の上部ゲートと底部ゲートの電界間にあり、電流経路を画定する中和経路は、電流幅を横切って1:2という比によって近似される。
【0011】
使用中、電流は、第1のチャネル領域を超えて走行する。本発明者は、上部ゲートおよび底部ゲートの電界は、低い電界領域を生成するためにさらに均衡させることが可能であることを認識した。これは、上部ゲートからの距離が、底部ゲートからの距離の実質的に倍であれば達成することが可能である。デバイス中では、上部ゲートからドレイン拡散層までの横方向距離「dc]は、デバイスがその完全動作電圧(すなわち、その意図する最大動作電圧)に到達する前に、デバイスが逆バイアスされた電界によって絶縁破壊しないような最小距離であると一般的には定義される。したがって、ドレインコンタクトに向かう全てのポイントにおいて電界を実質的に均衡させるためには、バックゲート拡散層までの垂直深さ「W2ch」が、 上部ゲートからの横方向距離「dc」の実質的に半分であるのが望ましい。これは、望ましい性能を達成するための妥当な第1近似である。
【0012】
本発明者は、ドレインのオーム接触のための拡散がバックゲートの垂直電界に影響を与え、これにより電界間の1:2という均衡がもはや有効でなくなることを認識した。電流経路のためのこの電界均衡を維持し続けるためには、上部ゲートとドレインとの間の余分の横方向分離を提供して、総分離Ldを生じさせることが望ましい。すると、幅「Ld」とバックゲート深さ「W2ch」との間の実効的な比は、
【化1】
によって記述される。
【0013】
拡散の許容範囲の結果として、この同じ条件を、チャネル−ドレイン領域の約3〜4という横方向対垂直方向比の範囲内に維持することが可能である。
【化2】
【0014】
この条件は、衝撃イオン化を軽減または最小化するために、第1のチャネル領域からドレインへの電流の電界平衡経路を維持する。しかしながら、この設計を利用するためには、チャネル電流が経路のそれと整列することが望ましい。すでに、第1のチャネル領域中の電流は、底部ゲートと上部ゲートとの間の距離の1:2の比に位置付けられると設定された。測定されたまたは任意の上部ゲート深さ「Wtg」と、測定されたまたは任意のチャネル幅「Wch」の場合、電流経路の垂直方向位置「di]は、
【化3】
によって近似することが可能である。
【0015】
これらの寸法は、
図2に模式的に示されている。
【0016】
この電流を電界のチャネル−ドレイン領域の中和経路に注入するためには、この電流を、チャネルを超えた底部ゲートと上部ゲートとの間の1:2の距離に沿って位置付けることが望ましい。
【化4】
【0017】
したがって、チャネル深さ(Wch+Wtg)が、第1のチャネル領域境界を超えたバックゲート深さ「W2ch」に実質的に等しければ長所となる。これは、同じ底部ゲート深さをデバイス全体にわたって提供することによって達成することが可能である。しかしながら、制御を向上させるには、第1のチャネル領域中の底部ゲート深さをチャネル−ドレイン底部ゲート深さ「W2ch」とは異なるようにすればよい。
【0018】
これは、チャネルで画定された底部ゲート接合が、使用中に2つの方向、すなわちチャネルから垂直方向に、およびチャネル−ドレイン領域から横方向に広がる空乏領域を有するから可能である。これが、底部ゲートチャネルの電界を弱めるが、これは、チャネル電流がチャネル底部ゲートにより近いことを意味し、その結果、それをチャネル−ドレイン領域の電界中和経路に注入することが可能であることを意味する。我々は、垂直方向位置diを、次式で等化することが可能である。
【化5】
【0019】
一般に、双方のデバイスアーキテクチャの場合、この許容範囲は、次式で表現することが可能である。
【化6】
【0020】
チャネル深さの適当な選択はまた、第1のチャネル領域の電流経路を上部ゲートの角から離れて位置付けることを容易化する。処理上の制約の結果、上部ゲートはより小さい曲率半径を有し、当業者には周知なように、これがより強い電界を生じる。第1のチャネル領域中でのチャネル幅Wchの選択は、かなりの電流経路を高い電界強度のエリア、すなわち、電界強度が、チャネル領域の終端部で衝撃イオン化を開始させ得る最大の許容電界値を超えるエリアから離れて移動させるために用いることが可能である。
【0021】
より小さい角電界もまた、ドレインのコンタクトに存在するが、この場合、従来技術のデバイスでは、デバイスからドレインに向かう表面に沿った比較的高い電流密度もまた、ドレインの角の高電界の領域内に存在する。本発明者は、この問題を軽減化するためには、ドレインの角を表面の電流経路から離すドレイン拡散を用いるのが望ましいことを認識した。これは、比較的深いドレインを形成することによって達成することが可能である。ドレインのコンタクトの周りの垂直方向に深いドレイン拡散は、ドレインからバックゲートの電界(特にドレイン角電界)を、電流がドレインコンタクトに向かって流れてデバイスから脱出するデバイスの表面から離れるように移動させる。ドレイン深さ「Wd」は少なくとも0.5μmであることが長所となる。この余分のドレイン拡散は、電界を階段状にする必要はないが、第2のチャネル領域中のデバイス電流をドレインでの最高電界から垂直方向に分離する働きをするのみである。
【0022】
既存のデバイスアーキテクチャは、電流を実質的に電界中和である経路に沿って、さらに、ゲート電流を生成するように衝撃イオン化を開始するまたは高める角電界から離れるように位置付けすることを容易化することが可能である。しかしながら、ゲート領域内の欠陥はまた、少数担体を漏洩電流およびデバイス雑音という形態で生成しかねない。これらの副作用を双方とも軽減するために、多結晶シリコンから「外方拡散」を用いて上部ゲートを形成することが可能である。この過程戦略は、上部ゲート領域中のデバイスの表面上に多結晶シリコンを堆積させて、多結晶シリコンを埋め込む、または、別様に高ドープ層を表面に提供することを伴う。次に、熱拡散を実施して、ドーパントを高ドープ層の下のシリコンに打ち込み、上部ゲートを形成することが可能である。この方式は、デバイスの性能を制限し得る埋め込み損傷に起因する欠陥の生成を防止する。
【0023】
本開示の第2の態様によれば、また、チャネルと、ゲートと、ドレインおよびソースとを備え、ドレインおよびソースがチャネルを介して制御可能な電流流れ連通状態にあり、第1のチャネル寸法が、チャネル中でのかなりの電流流路が、電界強度がしきい値未満である領域において発生するように選択される接合型電界効果トランジスタが提供される。
【0024】
このしきい値は、衝撃イオン化が、任意のドレイン−ソース電圧に対して好ましくないゲート電流を惹起させると予測される値であり得る。
【0025】
したがって、JFETのソースとドレインとの間に形成された第1のタイプの半導体のチャネルを備えるJFETを提供することが可能であり、このチャネルはその第1の側において、第2のタイプの半導体の第1の領域が境界となっており、かつ第1のゲート領域がチャネルの第2の側部からチャネルの第1側部に向かって延在して、厚さが減少したチャネル領域を形成しており、第1のゲート領域と、ゲートとドレインとの分離との相対的寸法が、作動中のデバイスで、チャネル中を流れる電流が高電界強度の領域から離れるように方向付けされるように選択される。
【0026】
ゲート、ドレイン、およびチャネルの寸法が、チャネル電流の大部分が減少した、好ましくは実質的にゼロの電界に沿って流れるように構成されれば長所となる。
【0027】
JFETは、水平デバイスとして形成され得る。したがって、このような水平デバイスでは、ソースおよびドレインは、半導体の表面から互いに実質的に同じ深さに形成される。ドレインおよびソースは、互いから横方向に分離される線形構造であり得る。代替的には、ドレインがソースによって囲まれ得る、またはその逆であり得る。これは、トランジスタが3次元物体であるからである。
【0028】
チャネルの第1の側に置かれた第2のタイプの半導体の第1の領域は、チャネルの下に置かれたバックゲートであり得る。第1のゲート領域は、このようなデバイスの上部ゲートを形成する。
【0029】
好ましくは、上部ゲートに隣接するチャネルの領域中の電流は、上部ゲートからの電界が、底部ゲートからの電界によって実質的に対抗される経路に沿って流れる。したがって、上部ゲートの下のチャネル領域にはほとんど、そして実際上実質的に衝撃イオン化がないが、それは、重要な電流電導経路に沿って電界がほとんどまたはまったく存在しないからである。電流は、中和経路に沿って流れるものとみなすことが可能である。
【0030】
本開示に従って製造されるデバイスでは、デバイスの形状および、オプションとしてドープ濃度は、上部ゲートの下の中和経路に沿って存在する電流が、低電界領域が成立しているゲート−ドレイン領域とほぼ整列しており、そのため、電流が、比較的低い電界の領域で流れ続けることが可能となるように、選択される。
【0031】
デバイスの輪郭付けは、上部ゲートの深さもしくは長さの修正、および/またはチャネルの深さもしくは長さの修正、および/または上部ゲートでのもしくはこれに沿ったチャネルの輪郭の修正、および/またはドレインの深さの修正を含み得る。物理的寸法におけるこれらの要求に加えて、ドープ濃度もまた修正され得る。
【0032】
本開示のさらなる態様によれば、内部のトランジスタが本明細書に開示される方法に従って設計される、または本文書の教示に従って製造される集積回路が提供される。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
接合型電界効果トランジスタを形成する方法であって、上記トランジスタが、
バックゲートと、
チャネルと、
上部ゲートと、
上記チャネルと電流流れ接触するドレインおよびソースと、を備え、
上記方法が、上記チャネルにおけるかなりの電流流路が、比較的低い電界強度の領域で発生するように、第1のチャネル寸法を選択することを含む、方法。
(項目2)
上記上部ゲートと上記バックゲートとの間の第1のチャネル領域中の電流流路が、上記上部ゲートと上記ドレインとの間の第2のチャネル領域中の電流流路と実質的に整列するように、チャネル寸法が選択される、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記上部ゲートからの電界が、上記上部ゲートと上記ソースとの間の上記チャネルの領域中の底部ゲートからの電界と実質的に釣り合うように、上記第1のチャネル寸法が選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目4)
上記チャネルの幅W2chが、
【数1】
によって、上記上部ゲートと上記ソースとの間の距離Ldに関連付けられ、式中、βは2.5を超える、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
βが、3≦β≦4の範囲にある、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
最大の設計作動電圧Ld/βが、半導体絶縁破壊しきい値未満であるように、Ldが選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
最大の設計作動電圧Ld/βが、3×10
5Vcm
−1未満であるように、Ldが選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
電流流れの深さdiが、
【数2】
によって表され、式中、Wtgは、上記上部ゲートの幅を表し、
Wchは、上記上部ゲートと上記バックゲートとの間の上記チャネルの幅を表す、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
上記チャネル中の電流流路と上記上部ゲートとの間の距離が、電界強度が衝撃イオン化を惹起させると期待されるしきい値を上回る、上記上部ゲートの角の周りの上記電界強度の領域の広がりを超えるように、上記上部ゲートと上記バックゲートとの間のチャネルの幅が選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
上記ドレインの近傍におけるデバイス電流を上記ドレインの周りの最高の電界の領域から分離するのに十分な深さを持つ上記ドレイン領域を形成することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
上記ドレインの深さが、0.5μmを超える、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
上記バックゲート中に段差を形成することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
接合型電界効果トランジスタであって、
チャネルと、
ゲートと、
ドレインおよびソースと、を備え、
上記ドレインおよびソースは、上記チャネルを介して制御可能な電流流れ連通状態にあり、上記チャネルにおけるかなりの電流流路が、電界強度がしきい値未満である領域において発生するように、第1のチャネル寸法が選択される、接合型電界効果トランジスタ。
(項目14)
上記上部ゲートと上記ドレインとの間の分離Ldが、
【数3】
によって、上記上部ゲートと上記ドレインとの間の上記チャネルの深さに関連付けられ、式中、W2chは、上記チャネル深さ(上記バックゲートの頂部までの距離)であり、
βは、2.5を超える係数である、上記項目のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
(項目15)
上記上部ゲートの下の第1のチャネル領域の上記チャネルの幅Wchが、
【数4】
によって、上記上部ゲートと上記ドレインとの間の領域におけるチャネル幅W2chに関連付けられ、式中、Wtgは上記上部ゲートの深さであり、αは0.5と1との間の係数である、上記項目のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
(項目16)
上記ドレインが、少なくとも0.5μmの深さを有する、上記項目のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
(項目17)
任意の最大設計電圧に対して、上記上部ゲートと上記ソースとの間の上記距離Ldが、上記上部ゲートと上記ソースとの間の水平電界を実質的に3×10
−5Vcm
−1のしきい値強度未満に設定する距離より少なくとも1.3倍大きい、上記項目のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
(項目18)
使用中かつ最大設計動作電圧において、ゲート電流のドレイン電流に対する比が、10
−7未満である、上記項目のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
(項目19)
上記項目のいずれかに記載の少なくとも1つのトランジスタを備える、集積回路。
(項目20)
上記項目のいずれかに記載の方法に従って指定された少なくとも1つのトランジスタを備える、集積回路。
(摘要)
接合型電界効果トランジスタを形成する方法であって、本トランジスタは、バックゲートと、チャネルと、上部ゲートと、チャネルと電流流れにあるドレインおよびソースと、を備え、本方法は、チャネルにおけるかなりの電流流路が、比較的低い電界強度の領域で発生するように、上部ゲートとバックゲートとの間の第1のチャネルの寸法を選択することを含む。