特許第6074841号(P6074841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074841
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】白血球抗原マーカーを用いた検査方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20170130BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   C12Q1/68 A
   !C12N15/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-246480(P2012-246480)
(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-93962(P2014-93962A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年10月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年8月10に日本組織適合性学会誌(MHC)第19巻第2号第149頁に公開し、その後、第21回日本組織適合性学会大会にて公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年8月11日にhttp://ard.bmj.com/content/early/2012/08/23/annrheumdis−2012−201944.full.htmlで公開されているAnnals of the Rheumatic Diseasesのウェブサイトにて公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年8月31日に日本臨床免疫学会会誌第35巻第4号第300頁に公開し、その後、第40回日本臨床免疫学会総会にて公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年10月24日に日本人類遺伝学会第57回大会プログラム第132頁に公開し、その後、日本人類遺伝学会第57回大会にて公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】803000056
【氏名又は名称】公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】當間 重人
(72)【発明者】
【氏名】古川 宏
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 Pharmacogenet Genomics. 2012 Jun.22(6):441-446
【文献】 當間 重人,生物学的製剤大規模試験のエビデンス−我が国における試験を中心に−,日本臨床(増刊), 2010, vol.68, suppl.5, 343-345
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト白血球抗原であるHLA-A*31:01を検出することを特徴とする、薬剤誘発性間質性肺病変発症を予測するための検査方法。
【請求項2】
薬剤誘発性に起因する薬剤が、メトトレキサートまたは金チオリンゴ酸ナトリウムである、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
間質性肺病変が、関節リウマチに伴う間質性肺病変である、請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
HLA-A*31:01からなる薬剤誘発性間質性肺病変の予測検査用ヒト白血球抗原マーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤性間質性肺病変発症を予測するための検査方法に関する。より具体的には、薬剤性間質性肺病変発症の予測検査のためのマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA:rheumatoid arthritis)に合併し、生命予後に重大な影響を及ぼしうる間質性肺病変(ILD:interstitial lung diseases)を発症するケースが近年しばしば認められる。ILDの発症機序の解明や治療法の確立に関しては未だ不十分である。ILDの例としては、原因を特定できない特発性間質性肺炎(IIP:idiopathic interstitial pneumonias)、膠原病関連間質性肺病変(CVD-ILD:collagen vascular disease (CVD) with ILD)、塵肺、薬剤性間質性肺病変(DI-ILD:drug-induced ILD)が挙げられる。日本では、薬剤性間質性肺病変(以下、「DI-ILD」という場合もある。)の発症頻度が他国と比して著しく高いとの報告もあることから、RAに関連するILD発症機序の解析は極めて重要である。
【0003】
関節リウマチ(RA)に伴うILDに限定されず、日本人のDI-ILDは問題になっている(非特許文献1、2)。我が国で用いられている医薬品の中で、薬剤性肺障害が「副作用」として記載されているものは多く、例えば小柴胡湯、各種インターフェロン、ゲフィチニブ(Gefitinib) 、アミオダロン(Amiodarone) 、イリノテカン (Irinotecan) 、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ブレオマイシン(Bleomycin)、ペブレオマイシン(PEP)、レフルノミド(Reflunomide)、などが挙げられる。薬剤性肺障害には、肺水腫、びまん性肺胞障害、器質化肺炎、慢性間質性肺炎、好酸球性肺炎、過敏性肺炎、巨細胞性間質性肺炎、肺胞蛋白症、閉塞性細気道炎、気管支喘息、肺石灰化症、異物反応、肺血管領域、肺胞出血、血管炎、肺高血圧、胸膜炎などの障害が挙げられる。
【0004】
RA患者にメトトレキサート(Methotrexate)を使用したときのDI-ILDの危険性が報告されている(非特許文献3)。その他、副作用としてILDが記載されている薬剤は、D-ペニシラミン(Penicillamine)、アクタリット(Actarit、ブシラミン(Bucillamine)、サラゾスルファピリジン(Salazosulfapyridine)、レフルノミド(Leflunomide)、タクロリムス(Tacrolimus)、ミゾリビン(Mizoribine)、金チオリンゴ酸ナトリウム(Sodium Aurothiomalate)、オーラノフィン(Auranofin)、インフリキシマブ(Infliximab)、エタネルセプト(Etanercept)、アダリムマブ(Adalimumab)、トシリズマブ(Tocilizumab)、アバタセプト(Abatacept)、ゴリムマブ(Golimumab)などが挙げられている。
関節リウマチ(RA)患者に関連するILDは、RAの関節外病変の一種であり、RA患者の最大死因の一つで、1975年-2000年において、日本でのRA患者の死因のうち、11.2%がILDであることも報告されている。
【0005】
ILDに用いられる診断マーカーとしては、現在ではKL-6(MUC1)、SP-D、WBC、LDH、CRP、β-D-グルカン、Crocott染色、Pneumocystis jiroveci DNA PCR、サイトメガロウイルス抗原などが挙げられる。しかしながら、これらのマーカーは必ずしもDI-ILDに特異的なマーカーとはいえず、DI-ILD発症の予測もできない。DI-ILD発症の予測マーカーがあれば、DI-ILD発症を予防したり、関節リウマチの治療方針の選択に有効と考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本内科学会雑誌、(2006) 95(6): 82-86
【非特許文献2】Mod Rheumatol., (2010) 20: 280-286
【非特許文献3】Annals of Internal Medicine, (1997) 127(5): 356-364
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、薬剤性間質性肺病変(DI-ILD)発症予測のための検査方法を提供することを課題とする。より具体的には、DI-ILDの発症予測検査のためのマーカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ヒト白血球抗原である特定のHLAアレル、即ちHLA-A*31:01を検出することで、DI-ILD発症可能性が予測可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は以下よりなる。
1.ヒト白血球抗原であるHLA-A*31:01を検出することを特徴とする、薬剤誘発性間質性肺病変発症を予測するための検査方法。
2.薬剤誘発性に起因する薬剤が、メトトレキサート、金チオリンゴ酸ナトリウム、D-ペニシラミン、アクタリット、ブシラミン、サラゾスルファピリジン、レフルノミド、タクロリムス、ミゾリビン、オーラノフィン、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、トシリズマブ、アバタセプト、ゴリムマブから選択されるいずれか1または複数の薬剤である、前項1に記載の検査方法。
3.間質性肺病変が、関節リウマチに伴う間質性肺病変である、前項1または2に記載の検査方法。
4.HLA-A*31:01からなる薬剤誘発性間質性肺病変の予測検査用ヒト白血球抗原マーカー。
【発明の効果】
【0010】
本発明の検査方法で特定のHLAアレル、即ちHLA-A*31:01をマーカーとして検出すれば、間質性肺病変(ILD)を誘発しうる薬剤を投与すべき患者について、薬剤性間質性肺病変(DI-ILD)発症可能性が高い患者を特定することができる。このことから、DI-ILDを引き起こす可能性高いと特定された患者には、ILDを誘発しにくい薬剤の投与や治療方針を選択し、決定する機会を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ヒトMHC(主要組織適合性複合体または主要組織適合抗原)分子であるヒト白血球抗原(HLA分子)の一種であるHLA-A*31:01を検出することを特徴とする、DI-ILD発症可能性予測のための検査方法に関する。本明細書において、ILDを誘発しうる薬剤は、例えばメトトレキサート、金チオリンゴ酸ナトリウム、D-ペニシラミン、アクタリット、ブシラミン、サラゾスルファピリジン、レフルノミド、タクロリムス、ミゾリビン、オーラノフィン、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、トシリズマブ、アバタセプト、ゴリムマブから選択されるいずれか1または複数の薬剤が挙げられる。特に好ましくは、メトトレキサートおよび/または金チオリンゴ酸ナトリウムが挙げられる。
【0012】
本明細書において、DI-ILDとは、薬剤により誘発されるILDであればよく特に限定されないが、特に好ましくは、関節リウマチ(RA)患者における、薬剤により誘発されるILDである。さらに本発明は、LA-A*31:01からなるDI-ILDの予測検査用ヒト白血球抗原マーカーに関する。
【0013】
ヒトMHC分子であるHLA分子は、第6染色体短腕部の6p21.3の約4,000kbp内に存在するMHC領域によりコードされた遺伝子群に支配される遺伝子産物である。このMHC領域は、殆どの真核細胞膜表面上に表現されるHLA-A,B,C抗原系を支配するクラスI遺伝子領域と、B細胞やマクロファージ等の限定された組織あるいは細胞にしか表現されていない細胞特異的なHLA-DP,DQ,DR抗原系を支配するクラスII 遺伝子領域、および補体成分と21-ヒドロキシラーゼ等を支配するクラスIII遺伝子領域より構成されている。HLAクラスI分子は、MHCクラスI遺伝子領域にコードされる44kDaの膜結合型蛋白α鎖と、第15染色体の支配を受ける分子量11kDaのβ2-ミクログロブリン(β鎖)とによって構成されている。クラスI分子は、遺伝的多型性に富むことが知られている。
【0014】
本発明は、HLAクラスI分子アレルのうち、HLA-A*31:01を検出することで、ILDを誘発しうる薬剤について、DI-ILDの発症リスクを予測しうることを見出したことによるDI-ILD発症を予測するための検査方法に関する。本発明において、DI-ILDと特定のHLAアレルとの間に相関性が存在することを初めて見出した。HLA-A遺伝子、HLA-B遺伝子、HLA-C遺伝子、HLA-DRB1遺伝子、HLA-DQB1遺伝子、HLA-DPB1遺伝子の各アレルを含め配列情報はその殆どが公知になっており、各ハプロタイプについても公知になっている。当業者は、各遺伝子の塩基配列情報および/ またはアミノ酸配列情報をもとにさらなる特定のHLA遺伝子型のアレルおよび/ または特定ハプロタイプの検出法の設計が可能である。
【0015】
本発明の検査方法で特定されたHLAアレル、即ちHLA-A*31:01をマーカーとして検出すれば、ILDを誘発しうる薬剤を投与すべき患者のうち、DI-ILDを引き起こす可能性高い患者を特定することができる。このことから、DI-ILDを引き起こす可能性高いと特定された患者には、ILDを誘発しにくい薬剤の投与や治療方針を選択し、決定する機会を得ることができる。
【0016】
本発明において具体的には、HLAアレルとして、HLA-A*31:01が挙げられる。ILDを誘発しうる薬剤としては、例えばメトトレキサート、金チオリンゴ酸ナトリウム、D-ペニシラミン、アクタリット、ブシラミン、サラゾスルファピリジン、レフルノミド、タクロリムス、ミゾリビン、オーラノフィン、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、トシリズマブ、アバタセプト、ゴリムマブから選択されるいずれか1または複数の薬剤が挙げられ、特に好ましくは、メトトレキサートおよび/または金チオリンゴ酸ナトリウムが挙げられる。ILDを誘発しうる薬剤を投与すべき疾患としては、特に好ましくは関節リウマチ(RA)が挙げられる。
【0017】
HLA-A*31:01のアレル頻度には人種差が報告されている。DI-ILDは欧米人に比べ日本人で特に報告数が多いことから、薬剤反応性遺伝子の多型頻度における人種差との関連が想定される。日本人のA*31:01アレルの頻度は8.7%であり、ヨーロッパ系が3.9%であるのに対して更に高い。このような観点から、日本人RA患者の中でDI-ILDの発症リスクがより高いことが考えられる。
【0018】
本明細書において、HLA-A*31:01アレルの検出方法は、自体公知の方法または今後開発されるあらゆる方法を適用することができ。例えば、A*31:01アレルを判別しうるDNA断片(特定DNA断片)をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅し、得られたPCR産物を直接的に同定することで、検出することができる。このような方法による検出は、自体公知の市販の検出用キットを利用して行うことができる。
【0019】
本発明の検査方法が適用される検体は、ヒト由来の血液、髄液、気管支肺胞洗浄液、痰、または他の体液、あるいは口腔粘膜等の組織等それ自体のいずれであってもよい。特に、口腔粘膜検体、採取される被検対象の負担が少ないこと、および採取が簡便であることから、被検検体として好ましく使用される。これら検体は、本発明の検査方法に適用されるとき、適当な緩衝液等で適宜希釈して使用することができる。例えば、PCR法を実施する場合、口腔粘膜を検体としてPCRを阻害する物質の影響を避けたり、低減化させることを目的として、適当な緩衝液で口腔粘膜検体を適宜希釈して試料とすることが好ましい。ここにおいて、被検者より採取したものを検体といい、検査に供するために前処理したものを便宜上試料といい、それぞれ区別して用いられる。本発明の検査方法が適用される試料として、また、上記試料から調製した核酸試料を使用することもできる。核酸試料の調製は、自体公知の核酸調製法により実施することができる。核酸試料として、好ましくはゲノムDNAを用いる。調製した核酸は直接検出に使用してもよく、あるいは分析前に所望の領域をPCRまたはその他の増幅法を用いることにより酵素的に増幅してもよい。
【0020】
本発明は、DI-ILDを予測するための検査方法に使用する試薬、または試薬キットにも及ぶ。本発明の試薬としては、HLA-A*31:01アレル検出用のプライマー試薬やプローブが挙げられる。試薬キットとしては、HLA-A*31:01アレル検出用のプライマーセットやプローブ、緩衝液などを含むキットが挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。本実施例の試験は、独立行政法人国立病院機構相模原病院の倫理委員会の承認を得て同院において遺伝子情報を扱う臨床研究「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」および「臨床研究に関する倫理指針」として行ったものである。以下の実施例および参考例において、関節リウマチ患者を「RA患者」ということとする。
なお、本発明は下記の実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0022】
(実施例1)
本実施例ではRA患者について、メトトレキサートにより誘導された間質性肺炎(以下、「DI-ILD」という。)と、HLAクラスIとの関連について調べた。DI-ILD症状を有する55人の日本人RA患者とDI-ILD症状のないRA患者709名の日本人RA患者について、調べた。
DI-ILD症状を有する55人の日本人RA患者は、平均年齢±SDが69.3±8.5歳であり、男性15名であった。メトトレキサートの平均服用量±SD、6.7±2.6 mg/週、メトトレキサート投与の平均投与期間±SD:3.0±4.4年であった。DI-ILD症状のないRA患者709名の日本人RA患者は、平均年齢±SDが63.6±11.5歳であり、男性146名であった。
【0023】
白血球の抗原型は、WAKFlow(R) HLAタイピング試薬(Wakunaga)を用いて測定した。具体的には、RA患者より末梢静脈血約7 mlを採取し、ゲノムDNAを抽出し、抽出したゲノムDNAからPCR-SSO法によりHLAをタイピングし、関連解析を行なった。RA患者におけるILDの合併の有無は、胸部CT[可能な範囲で高分解能(HR)CT]に基づいて評価した。
【0024】
RA患者における各HLA-Aアレル(allele)の検出結果を表1に示した。その結果、HLA-A*31:01ではDI-ILD(+)と(-)との関係は、p=8.06×10-5、オッズ比(OR)(2.97)、補正p[Pc]=1.93×10-3、95% CI(1.80〜4.88)であり、HLA-A*31:01はDI-ILDを予測しうる有用なマーカーということが確認できた。本実施例の条件では、マーカーの特異性は84.8%であり、感度は36.4%であった。また、A19(A*29-*33および*74アレル)では、DI-ILD(+)と(-)との関係は、p=6.47×10-5、OR(2.59)、95% CI(1.67〜4.01)であった。他のHLA-Aアレルは、RA患者においてDI-ILDの有無に関係していなかった(表1参照)。
【0025】
【表1】
【0026】
(実施例2)
本実施例ではRA患者について、メトトレキサートまたは金チオリンゴ酸ナトリウム(GST)により誘導された間質性肺炎(以下、「DI-ILD」という。)と、HLAクラスIとの関連について調べた。DI-ILD症状を有する60人の日本人RA患者とDI-ILD症状のないRA患者709名の日本人RA患者について、調べた。
DI-ILD症状を有する60人の日本人RA患者は、平均年齢±SDが70.1±8.9歳であり、男性15名であった。DI-ILD症状のないRA患者709名については実施例1同様、平均年齢±SDが63.6±11.5歳であり、男性146名であった。白血球の抗原型は、実施例1に記載の方法に基づいて評価した。
【0027】
RA患者における各HLA-Aアレル(allele)の検出結果を表2に示した。その結果、HLA-A*31:01ではDI-ILD(+)と(-)との関係は、p=4.09×10-5、オッズ比(OR)(2.95)、補正p[Pc]=9.81×10-4、95% CI(1.83〜4.77)であり、HLA-A*31:01はDI-ILDを予測しうる有用なマーカーということが確認できた。本実施例の条件では、マーカーの特異性は84.8%であり、感度は36.7%であった。また、A19(A*29-*33および*74アレル)では、DI-ILD(+)と(-)との関係は、p=1.21×10-5、OR(2.70)、95% CI(1.78〜4.11)であった。他のHLA-Aアレルは、RA患者においてDI-ILDの有無に関係していなかった(表2参照)。
【0028】
【表2】
【0029】
(比較例1)
本比較例ではRA患者について、メトトレキサートまたは金チオリンゴ酸ナトリウム(GST)により誘導された間質性肺炎(以下、「DI-ILD」という。)と、HLAクラスIとの関連について調べた。DI-ILD症状を有する60人の日本人RA患者とDI-ILD症状のないRA患者709名の日本人RA患者について、調べた。
DI-ILD症状を有する60人の日本人RA患者は、実施例1及び2に示すように、平均年齢±SDが70.1±8.9歳であり、男性15名であった。DI-ILD症状のないRA患者709名については実施例1同様、平均年齢±SDが63.6±11.5歳であり、男性146名であった。白血球の抗原型は、実施例1に記載の方法に基づいて評価した。
本比較例では、メトトレキサート(methotrexate)または金チオリンゴ酸ナトリウム(GST)を投与したRA患者のうち、DI-ILDの症状のないRA患者709名の日本人RA患者について調べた。DI-ILDの症状のないRA患者709名の日本人RA患者は、平均年齢±SDが63.6±11.5歳であり、男性146名であった。白血球の抗原型は、実施例1に記載の方法に基づいて評価した。
【0030】
HLA-A、HLA-BおよびHLA-Cアレル(allele)の検出結果を表3−5に示した。その結果、HLA-A*31:01を除く他のHLA-A、HLA-BおよびHLA-Cアレルは、RA患者においてDI-ILDの有無に関係していないことが確認された。
【表3】
【表4】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上詳述したように、本発明の検査方法で特定されたHLAアレル、即ちHLA-A*31:01をマーカーとして検出すれば、ILDを誘発しうる薬剤を投与すべき患者について、DI-ILDを発症する可能性の高い患者を特定することができる。このことから、DI-ILD発症可能性の高い患者と特定された患者には、ILDを誘発しにくい薬剤の投与や治療方針を選択し、決定する機会を得ることができる。