(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環状のヨーク部の内周側から中心に向かって放射状に突出する複数のティース部毎にそれぞれ巻線が巻回される固定子と、前記固定子の内周側に所定間隔を隔てて回転可能に配置された回転子とを有する電動機の組み立てに用いられるギャップゲージであって、
前記各ティース部の内周側先端面は、前記回転子の外周面と径方向に対向し、
前記回転子は、複数の磁石を埋め込む磁石埋め込み型の回転子であって、磁石の外径側を磁極部とし、磁石と磁石の間の外径側を極間部としたときに、
前記磁極部の外周に半径Rの円弧を備え、
前記極間部の外周に切り欠き部と、該切欠き部から外径側に延びる突起部とを備え、該突起部の頂点と前記回転子の中心との距離がRであり、
前記円弧の周方向端部と、前記突起部との周方向長さLRが、前記ティース部の内周側先端面の周方向長さLSよりも小さく構成され、
前記固定子の前記ティース部の数が3nの時、前記回転子の磁極数が2nの関係にあって、(nは1以上の整数)
前記ギャップゲージは、
複数のゲージ片が前記固定子の前記ティース部の内周に沿って円弧状に配置可能に構成され、各ゲージ片の周方向長さは、前記電動機の前記固定子の前記ティース部の内周側先端面の周方向長さLSに相当する長さを有し、
前記ティース部の内周側先端面毎に前記ゲージ片をそれぞれ配置した状態で、前記電動機の前記固定子の中へ前記回転子を組み込むことにより、前記固定子と前記回転子との間隙を調整することを特徴とする電動機の組み立てに用いられるギャップゲージ。
環状のヨーク部の内周側から中心に向かって放射状に突出する複数のティース部毎にそれぞれ巻線が巻回される固定子と、前記固定子の内周側に所定間隔を隔てて回転可能に配置された回転子とを有する電動機の製造方法であって、
前記電動機は、
前記各ティース部の内周側先端面は、前記回転子の外周面と径方向に対向し、
前記回転子は、複数の磁石を埋め込む磁石埋め込み型の回転子であって、磁石の外径側を磁極部とし、磁石と磁石の間の外径側を極間部としたときに、
前記磁極部の外周に半径Rの円弧を備え、
前記極間部の外周に切り欠き部と、該切欠き部から外径側に延びる突起部とを備え、該突起部の頂点と前記回転子の中心との距離がRであり、
前記円弧の周方向端部と、前記突起部との周方向長さLRが、前記ティース部の内周側先端面の周方向長さLSよりも小さく構成されると共に、前記円弧の周方向長さが、前記ティース部の内周側先端面の周方向長さLSよりも小さく構成され、
前記固定子の前記ティース部の数が3nの時、前記回転子の磁極数が2nの関係にあって、(nは1以上の整数)
前記ティース部の数と同数のギャップゲージのゲージ片を前記ティース部の内周側に配置する配置ステップと、
前記ゲージ片の一部が前記回転子の前記磁極部の円弧と対向し、前記ゲージ片のうちの残りのゲージ片が前記円弧の周方向端部と前記突起部の両方に対向するように、前記ギャップゲージに対して前記回転子の位置を決める位置決めステップと、
前記固定子に対して前記ギャップゲージを介して位置決めした前記回転子を挿入する挿入ステップと、
前記ギャップゲージを介して前記固定子と前記回転子との間隔を均一化し、前記回転子の位置を固定する固定ステップと、
前記固定子と前記回転子との間に挿入されている前記ギャップゲージを前記電動機から抜いて取り外す取り外しステップと
を含んだことを特徴とする電動機の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる電動機の組み立てに用いられるギャップゲージおよび電動機
の製造方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明にかかる電動機の回転子の外周形状を示す断面図であり、
図2は、本発明にかかる電動機の固定子の内周側にギャップゲージを介して
図1の回転子を挿入した状態を示す断面図であり、
図3は、
図2のギャップゲージが固定子と回転子の両方に接触している箇所を示す断面図であり、
図4は、
図1の回転子の極間部に形成される突起部の外周形状を示す拡大断面図である。
【0015】
図1に示すように、実施例1の電動機の回転子20は、薄い珪素鋼板(磁性体)を多数積層して円柱状に形成され、外周寄りの位置に60°間隔で配置された6箇所のリベット31により一体化されている。回転子20の中心には、回転軸21が挿通され固定されている。
【0016】
6枚の板状の永久磁石22は、回転軸21を中心とする6角形の各辺を成すように、回転子20の外周寄りに、環状に所定間隔で形成された磁石埋め込み孔32に埋め込まれている。回転子20の磁石埋め込み孔32(永久磁石22)の外周側は、外周部鉄心23が形成され、ここを磁極部26と称する。また、回転子20の磁石埋め込み孔32の周方向両端部には、磁束の短絡を防止するための非磁性部として、回転子20の外周に向かって延びるフラックスバリア(空隙)24が形成され、ここを極間部25と称する。
【0017】
回転子20に形成された隣り合う2つのフラックスバリア24の間には、補強リブ部33が構成されている。回転子20に形成されたフラックスバリア24の外周側(後述する切欠き部30とフラックスバリア24との間に挟まれた)には、外周部鉄心23と補強リブ部33とを繋ぐブリッジ部34(
図4参照)が形成されている。ブリッジ部34は、磁気飽和して磁束が通過し難くなるように、加工に支障のない範囲で可能な限り狭い幅(例えば、積層される鋼板の板厚程度)に形成されている。
【0018】
ここで、実施例1の電動機の回転子20の外周形状の特徴は、
図1に示すように、磁極部26の外周に半径Rの円弧28と、極間部25の外周に頂点と回転子20の中心との距離がRである突起部27とを備えており、円弧28と突起部27との間には切欠き部30が設けられている。この切欠き部30の底面と回転子20の中心との距離はRsである。なお、実施例1では、円弧28と突起部27との間に2つの切欠き部30を備えており、さらにその間に頂点と回転子20
の中心との距離がRよりも小さい補助突起部29を備えている。この補助突起部29は、電動機のコギングトルクを低減し、かつ、振動騒音(トルクリップル)を低減させるために形成されることが望ましい。
【0019】
半径Rからなる円弧28の両端と回転子20の中心とを結ぶ2本の仮想線分が成す角(磁極角θ
M)は、本実施例では28〜34°の範囲で形成している。また、円弧28を挟んで隣り合う補助突起29と回転子20の中心とを結ぶ2本の仮想線分が成す角(補助突起角θs)は、38.6〜46.6°の範囲で形成している。また、突起部27から隣り合う円弧28の周方向端部までの周方向長さをここではL
Rとする。
【0020】
実施例1の電動機の固定子10は、
図2に示すように、環状のヨーク部11の内周側から中心に向かって放射状に突出する9極のティース部12が40°間隔で形成されており、それぞれのティース部12に3相の固定子巻線(図示せず)を集中巻きして構成されている。
【0021】
図2に示す固定子10と対向する回転子20との間隔を均一にするために介在させるギャップゲージのゲージ片40の周方向長さWgは、固定子10の9極のティース部12の内周側先端面の周方向長さL
Sに相当する幅を有している。これは、
図2に示す固定子10の9極のティース部12の内周側先端面の周方向長さをL
Sとした場合に、
図1の突起部27から隣り合う円弧28の周方向端部までの周方向長さL
Rとの関係をL
R<L
Sとなるように構成することと関連している。つまり、各ティース部12の内周側先端面に配置するギャップゲージのゲージ片40に対して、
図2に示すように、円弧28の全面で当接する場合と、突起部27と円弧28の周方向端部の2点で当接する場合とがあり、2点で当接して固定子10と回転子20との間隔を均一に保つためには、ギャップゲージの各ゲージ片40の周方向長さWgがティース部12の内周側先端面の周方向長さL
Sに相当する長さを持っている必要があるからである。
【0022】
また、隣り合うティース部12同士の間に設けられる間口の周方向幅(スロットオープニング開口部幅)は、
図2に示すように、Wsで表され、ギャップゲージのゲージ片40の周方向幅Wgとの関係がWg≧Wsとなるように構成されている。
【0023】
また、ティース部12に3相の固定子巻線を集中巻きしたヨーク部11で構成されている電動機において、上記した
図2の各ティース部12の内周側先端面に配置するギャップゲージのゲージ片40に対して、回転子20の円弧28の全面で当接する場合と、突起部27と円弧28の周方向端部の2点で当接する場合の位置関係を作り出すには、固定子10のティース部12の数が3nの時、回転子20の磁極数が2nの関係にあることを要する(nは1以上の任意の整数である)。
【0024】
また、実施例1の突起部27の外周形状は、
図4に示すように、突起
部27の先端部の周方向幅をaとし、突起部27の両脇に形成された切欠き部30の周方向幅をbとした場合、1≦b/a≦3.4となるように形成されている。
図4は、b/a≒2.4の場合である。ここで、切欠き部30の周方向幅bを、先端部の周方向幅aよりも大きく形成した理由は、電動機をロータリ圧縮機等に組み込んで使用する場合に、高速回転域で、回転子20が潤滑油に強い遠心力を与え、潤滑油を固定子10の隙間や巻線の内部に押込んで滞留させ、潤滑油の油面が下がってロータリ圧縮機が潤滑不良となるのを防ぎ、強い遠心力を与えないようにするためである。突起部27から切欠き部30を介して補助突起部29から次の切欠き部30に至るまでの隅部と先端部の角部は、ここでは曲線的に形成しているため、回転子20の回転時に突起部27により潤滑油が攪拌され難くなり、潤滑油に強い遠心力を与えないようにすることができる。
【0025】
上記のように構成された実施例1の電動機を組み立てる場合は、
図2に示すように、固定子10の各ティース部12の内周側先端面と略同じ周方向幅からなるギャップゲージのゲージ片40をティース部12毎に配置し、ゲージ片の一部が回転子20の磁極部26の円弧28と対向し、残りのゲージ片が円弧28の周方向端部と突起部27の両方に対向するように回転子20の位置を決め、ギャップゲージのゲージ片40を介して回転子20を回転軸21の軸方向から挿入する。
【0026】
固定子10にギャップゲージのゲージ片40を介して回転子20を挿入した後の断面図が
図2である。実施例1では、回転子20の外周形状に凹凸が設けられているため、固定子10と回転子20の双方に接触するゲージ片40の接触面積は、ゲージ片40自体の面積よりも小さくなる。これを固定子10と回転子20の両方に挟まれているゲージ片40の箇所を黒ベタで示した
図3を見ると、9極のティース部12に配置されたゲージ片40のうち、3つのゲージ片40については、ゲージ片全体が固定子10と回転子20に挟まれているが、それ以外の6つのゲージ片40については、円弧28の周方向端部と突起部27の2点で挟まれているが、その間は挟まれていない。
【0027】
このように、実施例1の電動機によれば、固定子10の各ティース部12の内周側先端面に対し略同じ周方向長さを持ったギャップゲージのゲージ片40を配置し、そのゲージ片40を介して固定子10の内径側に回転子20を挿入することにより、各ゲージ片40に対して、常に回転子20の半径Rからなる円弧28か、あるいは円弧28の周方向端部と突起部27の2点で接触することが可能となる。このため、固定子10と回転子20との間隔を均一化して、精度の良い組み付けを行うことができ、回転子20の偏心による唸り等が発生し難い電動機を得ることができる。
【0028】
また、実施例1の電動機によれば、ギャップゲージ41の周方向長さWgが長いとしても、ゲージ片40の接触面積は、ゲージ片40自体の面積よりも小さいため(
図3参照)、ゲージ片40を抜く際の摩擦抵抗はそれほど大きく増加することはなく、ゲージ片40を破損させることなく電動機から引き抜くことができる。
【0029】
また、実施例1の電動機によれば、回転子20の外周形状として半径Rからなる円弧28と突起部27とを形成し、その周囲に切欠き部30を設け、さらに隣り合う切欠き部30の間に補助突起29を設けることで、電動機の回転トルクの低下を防止すると共に、コギングトルクおよびトルクリップルの低減効果を得ることができる。
【実施例2】
【0030】
図5は、本発明にかかる電動機の組立に用いられるギャップゲージの平面図であり、
図6は、本発明にかかる電動機の組立に用いられるギャップゲージの正面図であり、
図7は、本発明にかかる電動機の組立に用いられるギャップゲージの斜視図である。
【0031】
実施例2の電動機の組立には、
図5〜
図7に示すように、回転子外周部と固定子内周部との間に均一な間隔を確保するための複数のゲージ片40で構成されたギャップゲージ41を用いる。ギャップゲージ41は、複数の細長く矩形状に形成されたゲージ片40の片側端部を円筒状の台の側面に一定間隔置きに周方向にずらしながら固定することで形成されている。ギャップゲージ41の各ゲージ片40は、
図6および
図7に示すように、先端に行くに従って外側に開くように一定の角度が付けられている。これにより、
図2に示す固定子10の内周側に挿入されたギャップゲージ41は、各ティース部12の内周側先端面に各ゲージ片40が来るように位置を調整し、外側に開いているゲージ片40の先端側から回転子20を挿入することにより、固定子10と回転子20との間がゲージ片40の厚さに相当する間隔で均一に保たれた状態で回転子20を固定子10の中に組み込むことができる。
【0032】
実施例2にかかるギャップゲージ41のゲージ片40の特徴は、各ゲージ片の幅が組み立てを行う電動機の固定子10のティース部12の内周側先端面の周方向幅L
Sに略相当する幅Wgを有し、ティース部12の数と位置に対応するよう構成されている点にある。これは、実施例1で説明したように、固定子10に組み込む回転子20の外周形状として、
図1の磁極部26と極間部25に半径Rの円弧28と突起部27とが形成され、両者の間に切欠き部30が形成されている。そして、固定子10のティース部12の数が3nの時に、回転子20の磁極数が2nの関係となる場合である。これにより、固定子10の任意のティース部12に回転子20の円弧28の位置を合わせると、
図2に示すように、一定周期毎にティース部12のゲージ片40を介して、円弧28とのみ接する箇所があるが、その途中のティース部12では、ゲージ片40を介して突起部27と円弧28の周方向端部との2点で接触する箇所がある。その場合の条件としては、実施例1で述べたように、さらに固定子10のティース部12の内周側先端面の周方向幅L
S(
図2参照)と、回転子20の突起部27から隣り合う円弧28の周方向端部までの周方向距離L
R(
図1参照)との関係がL
R<L
Sであることを要する。
【0033】
このように、固定子10と回転子20とを実施例1の条件で構成した場合は、固定子10のティース部12の内周側先端面の周方向幅L
Sに略相当する周方向幅Wgを有するゲージ片40からなるギャップゲージ41を用いる必要がある。
【0034】
実施例2のギャップゲージ41によれば、実施例1の電動機の組み立てに用いることにより、各ゲージ片40に対して、常に回転子20の半径Rからなる円弧28か、あるいは円弧28の周方向端部と突起部27の2点で接触することが可能となる。このため、固定子10と回転子20との間隔を均一化して、精度の良い組み付けを行うことができることから、回転子20の偏心による唸り等の生じ難い電動機を得ることができる。
【0035】
なお、実施例2のギャップゲージ41の周方向長さWgが長いとしても、ゲージ片40の接触面積は、ゲージ片40自体の面積よりも小さいため(
図3参照)、ゲージ片40を抜く際の摩擦抵抗はそれほど大きく増加することはなく、ゲージ片40を破損させることなく電動機から引き抜くことができる。
【実施例3】
【0036】
図8は、本発明にかかる電動機の組立方法の流れを示すフローチャートである。この実施例3の電動機の組立方法について
図8を用いて説明する。
図8に示すように、電動機の固定子10のティース数と同数のギャップゲージ41のゲージ片40を各ティース部12の内周側に配置する(ステップS100)。ここでは、
図2に示すように、固定子10のティース数が9極(3n)で、磁石埋め込み型の回転子20の極数が6極(2n)のとき、これに用いるギャップゲージ41のゲージ片40は、ティース数と同数の9本のものを用いる(
図5〜
図7参照)。ギャップゲージ41のゲージ片40の配置は、
図5に示すように、
図2の固定子10のティース部12の周方向位置に対応している。また、ゲージ片40の周方向幅Wgは、
図2に示すように、固定子10のティース部12の内周側先端面の周方向幅L
Sに相当する幅を有している。このギャップゲージ41を
図2の固定子10のティース部12の内周側に挿入し、各ティース部12の内周側先端面に各ゲージ片41が来るように配置する。
【0037】
続いて、ゲージ片40の一部が回転子20の磁極部26の円弧28と対向し、残りのゲージ片40が円弧28の周方向端部と突起部27の両方に対向するように、ギャップゲージ41に対して組み付けを行う回転子20の位置を決める(ステップS101)。つまり、
図2に示すように、ティース部12の内周側先端面に配置されたギャップゲージ41のあるゲージ片40に対して、回転子20の磁極部26の円弧28と対向するように回転子20の位置を決めると、残りのゲージ片40に対向する回転子20の位置も決まる。
【0038】
続いて、固定子10に対してギャップゲージ41を介して位置決めした回転子20を挿入する(ステップS102)。具体的には、
図2に示すように、固定子10の12時方向に位置するティース部12のゲージ片40に対して、回転子20の磁極部26の円弧28が来るように位置合わせしたため、時計回りに次のゲージ片40では、突起部27と円弧28の周方向端部が対向し、その次のゲージ片40は、円弧28の周方向端部と突起部27が対向し、さらにその次のゲージ片40は、回転子20の磁極部26の円弧28のみが対向する。その後のゲージ片40については、この順序で繰り返される。
図2に示すように配置とすることで、固定子10と回転子20は、各ゲージ片40に対して全面で対向するか、少なくとも2点で対向するように構成されるため、固定子10と回転子20の間隔を均一化することができ、固定子10に対して回転子20を精度良く組み付けることが可能となる。
【0039】
このように、ギャップゲージ41を介して固定子10と回転子20の間隔を均一化し、芯出しを行った後、回転子20の位置を固定する(ステップS103)。具体的には、芯出しを行った状態で固定子10および回転子20の図示しない軸受を、電動機のケーシングに固着する。これにより、固定子10と回転子20の位置が決まる。
【0040】
最後に固定子10と回転子20の間に挿入されていたギャップゲージ41を抜いて電動機から取り外す(ステップS104)。これにより、固定子10に対する回転子20の組み付けが完了する。このギャップゲージの引き抜き動作は、従来は
図9に示すように、ギャップゲージのゲージ片70の周方向幅全てにおいて、固定子10と回転子20の間に挟まれていたため、ゲージ片70の強度に対して摩擦抵抗が大きく、無理に引き抜こうとするとギャップゲージが破損する恐れがあった。これに対し、実施例1にかかる固定子10と回転子20の構造を採用し、実施例2にかかるギャップゲージ41を用いることにより、
図2のギャップゲージのゲージ片40の周方向幅に対して、固定子10と回転子20との間に実際に挟まれている箇所が
図3のように少なくなり、ゲージ片40の強度に対して摩擦抵抗を少なくすることができる。その結果、実施例3の電動機の組立方法において、固定子10と回転子20との間に挟まれていたギャップゲージ41を引き抜く際に、ギャップゲージ41が破損するのを防止することができる。
【0041】
以上説明した実施例3の電動機の組立方法によれば、固定子10と回転子20とが均一な間隔となるようにギャップゲージを介して回転子20を組み込み、回転子20の固定後にギャップゲージ41を容易に取り外して組み立てを行うことができる。
【0042】
なお、上記実施例1〜3では、固定子10のティース数が9極(3n)で、磁石埋め込み型の回転子20の極数が6極(2n)の場合(n=3)の例を用いて説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、n=2の電動機の場合は、
図9に示すように、固定子50の環状のヨーク部51の内周側から中心に向かって6極のティース部52が60°間隔で放射状に突出し、それぞれのティース部52に3相の固定子巻線(図示せず)が集中巻きされて構成されている。
【0043】
固定子50のティース部52の内周側に挿入される回転子60は、4枚の板状の永久磁石62が回転軸61を中心とする4角形の各辺を成すように、回転子60の外周寄りに、環状に所定間隔で形成された磁石埋め込み孔に埋め込まれている。回転子60の永久磁石62の外周側には、外周部鉄心63が形成され、ここを磁極部と称し、その磁極部の外周に半径Rの円弧(
図1の円弧28に相当)が形成されている。また、回転子60の永久磁石62の周方向両端部には、磁束の短絡を防止するための非磁性部として、回転子60の外周に向かって延びるフラックスバリア(空隙)64が形成され、ここを極間部と称し、その極間部の外周に頂点と回転子60の中心との距離がRである突起部(
図1の突起部27に相当)が形成されている。そして、円弧と突起部との間に2つの切欠き部(
図1の切欠き部30に相当)が形成され、さらにその間に前記突起部よりも外径が小さい補助突起部(
図1の補助突起部29に相当)が形成されている。
【0044】
このように、n=2の電動機の場合であっても、上記したn=3の場合と全く同様であって、ギャップゲージのゲージ片の周方向長さが6極のティース部52の内周側先端面の周方向長さに相当する幅であれば、
図9に示すように、ティース部52と磁極部の外周の円弧との間にゲージ片が全面で当接する場合と、ティース部52と突起部および円弧の周方向端部との間にゲージ片が2点で当接する場合の何れかのパターンとなる。このことは、n=1、あるいは、n=4以上であっても同様であって、ゲージ片の接触面積は、ゲージ片自体の面積よりも小さいため(
図9参照)、ゲージ片を抜く際の摩擦抵抗はそれほど大きく増加することはなく、ゲージ片を破損させることなく電動機から引き抜くことができる。