特許第6074891号(P6074891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074891
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】工作機械、及び工作機械起動制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/416 20060101AFI20170130BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   G05B19/416 Z
   B23Q15/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-34256(P2012-34256)
(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公開番号】特開2013-171398(P2013-171398A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】303024138
【氏名又は名称】株式会社ニイガタマシンテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 幸夫
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−293532(JP,A)
【文献】 国際公開第03/067345(WO,A1)
【文献】 特開平10−031509(JP,A)
【文献】 特開2001−037080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18−19/416
19/42−19/46
B23Q 15/00−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークテーブル上のワークを加工する工具が主軸に取り付けられた工作機械であって、
前記主軸と前記ワークテーブルの各駆動部における指令速度、指令位置に達するまでに要する到達時間を算出する到達時間算出部と、
前記到達時間算出部により算出された、前記主軸の駆動部の到達時間と、前記ワークテーブルの個々の駆動部の到達時間とに基づいて、前記主軸の駆動部への駆動電流が増加して極大値を経て減少していく変化の時間帯を示す前記駆動電流のピークの時間帯と、前記ワークテーブルの個々の駆動部への駆動電流の前記ピークの時間帯とが重ならないように、かつ前記ワークテーブルの個々の駆動部の前記到達時間に差がある場合に当該到達時間の中で最も長い前記到達時間内に前記ワークテーブルの全ての前記駆動部の動作を完了させつつ前記ワークテーブルの個々の駆動部の起動タイミングを分散させる制御部とを備え
前記主軸モータの主軸回転起動に先だって、全ての前記送りモータの駆動を開始するようにしたことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記工作機械は、
前記各駆動部として、前記工具が取り付けられる主軸を回転駆動する主軸モータと、当該主軸と前記ワークテーブルとをワーク加工のための所定の位置まで移動させる複数の送りモータとを備え、
前記到達時間算出部は、
前記主軸モータの主軸回転到達時間と、前記複数の送りモータの各々による軸移動完了時間とを算出する主軸回転到達時間&軸移動完了時間算出部を備え、
前記制御部は、
前記複数の送りモータによる軸移動完了時間よりも前記主軸モータの主軸回転到達時間の方が大である場合、あるいは、前記複数の送りモータによる軸移動完了時間が同じである場合に、前記主軸モータの主軸回転起動に先だって、前記複数の送りモータの全てを駆動開始する一方、前記主軸モータの主軸回転到達時間よりも前記複数の送りモータによる軸移動完了時間の方が大であり、かつ、前記複数の送りモータによる軸移動完了時間に差がある場合に、前記複数の送りモータのうち、前記軸移動完了時間が最長時間となる送りモータを駆動開始した後、その他の送りモータを駆動開始する軸速度制御部と、
前記軸速度制御部による前記複数の送りモータの駆動開始後、前記主軸モータの主軸回転を起動する主軸回転制御部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記軸速度制御部は、
先に駆動開始した送りモータへの駆動電流の前記ピークの時間帯が経過した後、前記その他の送りモータを駆動開始する
ことを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記主軸回転制御部は、
先に駆動開始した前記複数の送りモータへの駆動電流の前記ピークの時間帯が経過した後、前記主軸モータの主軸回転を起動する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の工作機械。
【請求項5】
ワークテーブル上のワークを加工する工具が主軸に取り付けられた工作機械による工作機械起動制御方法であって、
前記主軸と前記ワークテーブルの各駆動部における指令値に達するまでに要する到達時間を算出するステップと、
算出した前記主軸の駆動部の到達時間と、前記ワークテーブルの個々の駆動部の到達時間とに基づいて、前記主軸の駆動部への駆動電流が増加して極大値を経て減少していく変化の時間帯を示す前記駆動電流のピークの時間帯と、前記ワークテーブルの個々の駆動部への駆動電流の前記ピークの時間帯とが重ならないように、かつ前記ワークテーブルの個々の駆動部の前記到達時間に差がある場合に当該到達時間の中で最も長い前記到達時間内に前記ワークテーブルの全ての前記駆動部の動作を完了させつつ前記ワークテーブルの個々の駆動部の起動タイミングを分散させるステップとを含み、
前記主軸の回転起動に先だって、前記ワークテーブルの全ての前記駆動部の駆動を開始するようにしたことを特徴とする工作機械起動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、及び工作機械起動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用の工作機械では、起動時に、工具(刃具)を取り付けた主軸を回転させつつ、その主軸とワークテーブルをxyz方向に移動させる送りモータを駆動することで、工具をワークの指令位置に移動させた後、所定のプログラムに従ってワークを切削加工する。起動時の所要電力は、主軸モータや、各軸の送りモータ、油圧ポンプモータなど、同時起動する可能性のあるモータ出力を加算することで決まる。また、他より性能を上げるため、出力の高いモータを搭載した場合には、機械本体の電源容量も、その分増加することになる。そこで、工作機械加工の起動時における所要電力を低減することが望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、工作機械加工システムにおいて、主軸が目標回転速度に達するまでの時間が、主軸が目標位置に達するまでの時間よりも長い場合に、主軸が目標位置に達するまでの時間が、算出された目標位置に達する時間より長く、かつ算出された目標回転速度に達するまでの時間以下の時間となるように、主軸の駆動を制御する技術が提案されている。すなわち、主軸の移動速度を低下することで消費電力の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−145825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、工作機械では、工具を交換した後、主軸回転と軸移動とが同時に起動し、他にも工具返却動作を行う油圧ポンプの負荷増大、クーラントポンプの起動等が行われるため、それぞれの駆動電流のピークが重なり、瞬間的であっても、それらの負荷電力は積算されてしまう。特に、上述したように、他より性能を上げるため、出力の高いモータを搭載した場合には、機械本体の電源容量も、その分増加することになる。
【0006】
このため、従来技術であっても、主軸回転と軸移動とを同時に起動した場合には、駆動直後に駆動電流のピークが重なって最も高くなるので(消費電力が大となるので)、起動時における消費電力を十分に低減することができず、ランニングコストの増加を招くという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、起動時における消費電力を低減することができる工作機械、及び工作機械起動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、ワークテーブル上のワークを加工する工具が主軸に取り付けられた工作機械であって、前記主軸と前記ワークテーブルの各駆動部における指令速度、指令位置に達するまでに要する到達時間を算出する到達時間算出部と、前記到達時間算出部により算出された、前記主軸の駆動部の到達時間と、前記ワークテーブルの個々の駆動部の到達時間とに基づいて、前記主軸の駆動部への駆動電流が増加して極大値を経て減少していく変化の時間帯を示す前記駆動電流のピークの時間帯と、前記ワークテーブルの個々の駆動部への駆動電流の前記ピークの時間帯とが重ならないように、かつ前記ワークテーブルの個々の駆動部の前記到達時間に差がある場合に当該到達時間の中で最も長い前記到達時間内に前記ワークテーブルの全ての前記駆動部の動作を完了させつつ前記ワークテーブルの個々の駆動部の起動タイミングを分散させる制御部とを備え、前記主軸モータの主軸回転起動に先だって、全ての前記送りモータの駆動を開始するようにしたことを特徴とする工作機械である。
【0009】
本発明は、上記の発明において、前記工作機械は、前記各駆動部として、前記工具が取り付けられる主軸を回転駆動する主軸モータと、当該主軸と前記ワークテーブルとをワーク加工のための所定の位置まで移動させる複数の送りモータとを備え、前記到達時間算出部は、前記主軸モータの主軸回転到達時間と前記複数の送りモータの各々による軸移動完了時間とを算出する主軸回転到達時間&軸移動完了時間算出部を備え、前記制御部は、前記複数の送りモータによる軸移動完了時間よりも前記主軸モータの主軸回転到達時間の方が大である場合、あるいは、前記複数の送りモータによる軸移動完了時間が同じである場合に、前記主軸モータの主軸回転起動に先だって、前記複数の送りモータの全てを駆動開始する一方、前記主軸モータの主軸回転到達時間よりも前記複数の送りモータによる軸移動完了時間の方が大であり、かつ、前記複数の送りモータによる軸移動完了時間に差がある場合に、前記複数の送りモータのうち、前記軸移動完了時間が最長時間となる送りモータを駆動開始した後、その他の送りモータを駆動開始する軸速度制御部と、前記軸速度制御部による前記複数の送りモータの駆動開始後、前記主軸モータの主軸回転を起動する主軸回転制御部とを備えることが好ましい。
【0010】
本発明は、上記の発明において、前記軸速度制御部は、先に駆動開始した送りモータへの駆動電流の前記ピークの時間帯が経過した後、前記その他の送りモータを駆動開始することが好ましい。
【0011】
本発明は、上記の発明において、前記主軸回転制御部は、先に駆動開始した前記複数の送りモータへの駆動電流の前記ピークの時間帯が経過した後、前記主軸モータの主軸回転を起動することが好ましい。
【0012】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、ワークテーブル上のワークを加工する工具が主軸に取り付けられた工作機械による工作機械起動制御方法であって、前記主軸と前記ワークテーブルの各駆動部における指令値に達するまでに要する到達時間を算出するステップと、算出した前記主軸の駆動部の到達時間と、前記ワークテーブルの個々の駆動部の到達時間とに基づいて、前記主軸の駆動部への駆動電流が増加して極大値を経て減少していく変化の時間帯を示す前記駆動電流のピークの時間帯と、前記ワークテーブルの個々の駆動部への駆動電流の前記ピークの時間帯とが重ならないように、かつ前記ワークテーブルの個々の駆動部の前記到達時間に差がある場合に当該到達時間の中で最も長い前記到達時間内に前記ワークテーブルの全ての前記駆動部の動作を完了させつつ前記ワークテーブルの個々の駆動部の起動タイミングを分散させるステップとを含み、前記主軸の回転起動に先だって、前記ワークテーブルの全ての前記駆動部の駆動を開始するようにしたことを特徴とする工作機械起動制御方法である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、起動時における消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による工作機械の概略構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態による、主軸20とワークテーブル4の移動距離の一例を説明するための概念図である。
図3】本実施形態による管理制御部10の機能構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態において、送りモータ31〜33の送り軸移動完了時間の算出方法の一例を説明するための概念図である。
図5】本実施形態において、主軸モータ30の主軸回転到達時間の算出方法の一例を説明するための概念図である。
図6】本実施形態による、工作機械起動制御方法を説明するためのフローチャートである。
図7】本実施形態による、工作機械起動制御動作を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態による工作機械の概略構成を示すブロック図である。図1において、工作機械7は、ワークテーブル4、主軸20、管理制御部10、及びNCプログラム格納部11を備えている。
【0017】
工作機械7には、工具を取り付ける主軸20が設けられている。その主軸20に対向する位置には、ワークテーブル4が配置されている。また、工作機械7には、主軸20を回転させる主軸モータ30、主軸20、ワークテーブル4をxyz方向に移動させる送りモータ31、32、33が設けられている。主軸20に装着される工具は、図示しない工具保持ポット、または、工具棚に収納されたいずれかの工具がATC装置によって、着脱交換可能に装着されるようになっている。
【0018】
工作機械7には、NCプログラム格納部11と、格納されているNCプログラムを読み込み、該NCプログラムに従って、工作機械7における主軸モータ30の回転制御、主軸20、ワークテーブル4をxyz方向へ移動させるための送りモータ31、32、33の駆動制御などを行う管理制御部10があり、ワークテーブル4上のワークWを切削加工する。
【0019】
特に、本実施形態では、管理制御部10は、切削加工の前の起動時に、NCプログラム格納部11に格納されているNCプログラムを先読みし、主軸20、ワークテーブル4のxyz方向への移動や、主軸モータ30の主軸回転駆動等の個々の動作の開始タイミングを、全体としての動作時間が長引かない範囲で分散させるように制御する。これにより、各部の駆動電流のピークが重ならなくなり、より効果的に消費電力を低減することができる。その結果、電源容量を低く抑えることができる。
【0020】
図2は、本実施形態による、主軸20、ワークテーブル4の移動距離の一例を説明するための概念図である。図2において、主軸20、ワークテーブル4は、ATC位置からX軸(水平)方向へ765mm(X軸移動量)、Y軸(垂直)方向へ587.5mm、Z軸(前後)方向へ764mm移動して、切削加工開始位置に達する。主軸20には、重量10kg、工具長260mmの工具が装着される。また、主軸モータ30の主軸の到達回転速度は、1000回転/minである。
【0021】
図3は、本実施形態による管理制御部10の機能構成を示すブロック図である。管理制御部10は、主軸回転&送り軸移動指令抽出部101、主軸回転到達時間&軸移動完了時間算出部102(指令値到達時間算出部)、主軸回転到達時間&軸移動完了時間比較部103、軸移動完了時間比較部104、軸速度制御部105(制御部)、及び主軸回転制御部106(制御部)からなる。
【0022】
主軸回転&送り軸移動指令抽出部101は、起動時に、NCプログラム格納部11に格納されているNCプログラムを先読みし、主軸モータ30の主軸回転、送りモータ31〜33の送り軸移動指令を抽出する。主軸回転到達時間&軸移動完了時間算出部102は、各駆動部における指令値に達するまでに要する到達時間を算出する。例えば、主軸回転到達時間&軸移動完了時間算出部102は、主軸回転到達時間と軸移動完了時間とを算出する。各駆動部とは、例えば、主軸モータ30、送りモータ31、32、33等である。
【0023】
主軸回転到達時間&軸移動完了時間比較部103は、主軸回転到達時間と軸移動完了時間とを比較し、比較結果を軸移動完了時間比較部104、及び軸速度制御部105に供給する。軸移動完了時間比較部104は、上記主軸回転到達時間&軸移動完了時間比較部103の比較結果が、軸移動完了時間の方が大であると判定された場合、各軸の移動完了時間を比較し、比較結果を軸速度制御部105に供給する。
【0024】
軸速度制御部105は、上記主軸回転到達時間&軸移動完了時間比較部103の比較結果が、主軸回転到達時間の方が大であると判定された場合、あるいは、上記軸移動完了時間比較部104の比較結果が、軸移動完了時間が同じであると判定された場合に、主軸モータ30の主軸回転起動に先だって、送りモータ31〜33の全てを駆動開始して主軸20、ワークテーブル4をxyz方向に移動させる。
【0025】
また、軸速度制御部105は、上記主軸回転到達時間&軸移動完了時間比較部103の比較結果が、軸移動完了時間の方が大であると判定され、かつ、上記軸移動完了時間比較部104の比較結果が、軸移動完了時間に差があると判定された場合に、最長時間となる送りモータを駆動開始した後、その他の送りモータを駆動開始して主軸20、ワークテーブル4をxyz方向に移動させる。
主軸回転制御部106は、上記軸速度制御部105による送りモータ31〜33の駆動開始後、主軸モータ30の主軸回転を起動する。
【0026】
図4は、本実施形態において、送りモータ31〜33の送り軸移動完了時間の算出方法の一例を説明するための概念図である。図4には、横軸に時間、縦軸に送り軸の速度を示している。各送り軸は、駆動開始から徐々に速度を上げ(加速期間t+t)、速度V=30m/min(500mm/s)で一定(駆動目標値)となり、その後、徐々に減速する(原則期間t1+t2)。図示の例では、V=30m/min、t=02s、t=0.044s、t+t=0.244sである。
各軸の移動時間Tは、移動量Lに応じて、次式(1)、(2)で求められる。
【0027】
【数1】
【0028】
【数2】
【0029】
一例として、各軸の移動量Lは、各々、X軸で765mm、Y軸で587.5mm、Z軸で784mmとなる。ゆえに、各軸の移動時間Tは、各々、X軸で1.774s、Y軸で1.419s、Z軸で1.772sとなる。該各軸の移動時間Tが送りモータ31〜33の送り軸移動完了時間に相当する。
【0030】
図5は、本実施形態において、主軸モータ30の主軸回転到達時間の算出方法の一例を説明するための概念図である。図5には、横軸にモータ速度、縦軸に出力を示している。モータ軸換算負荷イナーシャ(工具:10kg、L=260付)をJL、モータイナーシャをJm、S2またはS3定格出力の120%(定出力領域)をPf、S2またはS3定格出力の120%(出力低減領域)をPm、モータ速度(定トルク領域)をNb、モータ速度(定出力領域)をNf、モータ速度(出力低減領域)をNmとする。なお、S2、S3は、連続定格値に対し、時間制限内での最大出力値である。例えば、30分定格であるとか、50%ED(サイクル時間10分の内、ON時間5分、OFF時間5分)などがある。
【0031】
定トルク領域(0〜Nb)までの加速時間t01は、次式(3)から求められる。
【0032】
【数3】
【0033】
定出力領域(Nb〜Nf)までの加速時間t02は、次式(4)から求められる。
【0034】
【数4】
【0035】
そして、出力低減領域(Nf〜Nm)までの加速時間t03は、次式(5)から求められる。
【0036】
【数5】
【0037】
図6は、本実施形態による、工作機械起動制御方法を説明するためのフローチャートである。また、図7は、本実施形態による、工作機械起動制御動作を説明するための概念図である。主軸回転&送り軸移動指令抽出部101は、起動時に、NCプログラム格納部11に格納されているNCプログラムを先読みし(ステップST1)、主軸モータ30の主軸回転、送りモータ31〜33の送り軸移動指令を抽出する(ステップST2)。
【0038】
次に、主軸回転到達時間&軸移動完了時間算出部102は、抽出された上記主軸モータ30の主軸回転、送りモータ31〜33の送り軸移動指令に基づいて、主軸モータ30の主軸回転到達時間と送りモータ31〜33の軸移動完了時間とを算出する(ステップST3)。上述した図4図5に示す例では、主軸モータ30の主軸回転到達時間は、0.977sとなり、送りモータ31〜33の軸移動完了時間は、各々、X軸で1.774s、Y軸で1.419s、Z軸で1.772sとなる。
【0039】
次に、主軸回転到達時間&軸移動完了時間比較部103は、主軸回転到達時間と軸移動完了時間とを比較する(ステップST4)。本実施形態では、主軸回転到達時間が0.977sであり、軸移動完了時間がX軸で1.774s、Y軸で1.419s、Z軸で1.772sであるので、軸移動完了時間の方が大となる。このように、軸移動完了時間の方が大となる場合には(ステップST4の「軸移動完了時間大」)、軸移動完了時間比較部104は、各軸の移動完了時間を比較する(ステップST5)。
【0040】
本実施形態では、軸移動完了時間がX軸で1.774s、Y軸で1.419s、Z軸で1.772sであるので、軸移動完了時間に差がある。このように、軸移動完了時間に差がある場合には(ステップST5の「軸移動完了時間に差あり」)、まず、軸速度制御部105が、最長時間となる送りモータを駆動開始した後、その他の送りモータを駆動開始する(ステップST6)。
【0041】
本実施形態では、上述したように、軸移動完了時間がX軸で1.774s、Y軸で1.419s、Z軸で1.772sであるので、最長時間となるX軸の送りモータ31、Z軸の送りモータ33を駆動開始し、時間t1=0.244s経過後、Y軸の送りモータ32を駆動開始する。
【0042】
次に、主軸回転制御部106は、主軸モータ30の主軸回転を起動する(ステップST8)。具体的には、Y軸の送りモータ32を駆動開始してから、時間t1=0.244s経過後、主軸モータ30の主軸回転を起動する。
【0043】
一方、主軸回転到達時間が大である場合(ステップST4の「主軸回転到達時間大」)、または、軸移動完了時間が同じであると判定された場合には(ステップST5の「軸移動完了時間同じ」)、軸速度制御部105は、送りモータ31〜33の全てを駆動開始する(ステップST7)。次に、主軸回転制御部106は、主軸モータ30の主軸回転を起動する(ステップST8)。
【0044】
図7には、ステップST4で、軸移動完了時間が大で、かつ、ステップST5で、軸移動完了時間に差がある場合における、主軸モータ30、及び送りモータ31〜33の動作を示している。図7において、線分L2は、X軸の送りモータ31の電流変化で、線分L1は、同時に起動させるZ軸の送りモータ33の電流変化をそれに加算した電流変化を示し、線分L3は、X軸、Z軸の送りモータ31、33の速度変化を示している。また、線分L4は、Y軸の送りモータ32の電流変化、線分L5は、Y軸の送りモータ32の速度変化を示している。また、線分L6は、主軸モータ30における電流変化、線分L7は、主軸モータ30の回転速度変化を示している。
【0045】
モータの負荷は、加速時に最大となり、その間(時定数の間)に電流がピークになる。本実施形態では、図2に示すように、X軸とZ軸の移動距離がほぼ同じであるので、同時起動することになる。これに対して、Y軸の移動距離は、X軸、Z軸に比べると短く、他の軸が加速し終わってから起動させても、時間のロスは発生しない。
【0046】
そこで、本実施形態では、X軸、Z軸の送りモータ31、33を同時起動し(線分L1、L2、L3参照)、電流のピークがなくなるタイミング(0.244s後)で、Y軸の送りモータ32を起動する(線分L4、L5参照)。そして、Y軸の送りモータ32の起動後、電流のピークがなくなるタイミング(0.244s後)で、主軸モータ30の主軸回転を起動する(線分L6、L7参照)。このように、送りモータ31〜33の起動タイミングや、主軸モータ30の起動タイミングを、全体の動作時間が長引かない範囲で、分散するようにしたので、消費電力を低減することができる。
【0047】
上述した実施形態によれば、軸移動や主軸回転等の個々の動作が、動作時間が長引かない範囲で駆動開始タイミングを分散させるように制御したので、駆動電流ピークが重ならず、起動時における消費電力を低減することができる。その結果、電源容量を低く抑えることができる。
【0048】
なお、減速時、停止時には、回生ブレーキが働き、消費電力を抑えられるので、時間差を与える必要なない。特に、1番大きい主軸モータ30を、他の送りモータ31〜33と同時に起動しないように制御すれば、電源容量は半減する。これにより、ブレーカ容量を縮小することができ、電源トランスのサイズダウンなど、コストダウンのメリットを享受することができる。
【符号の説明】
【0049】
4 ワークテーブル
7 工作機械
10 管理制御部
11 NCプログラム格納部
20 主軸
30 主軸モータ
31〜33 送りモータ
101 主軸回転&送り軸移動指令抽出部
102 主軸回転到達時間&軸移動完了時間算出部
103 主軸回転到達時間&軸移動完了時間比較部
104 軸移動完了時間比較部
105 軸速度制御部
106 主軸回転制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7