(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074936
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物においてコンクリートの圧縮強度が低下している範囲を推定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20170130BHJP
G01N 3/40 20060101ALI20170130BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
G01N3/00 M
G01N3/40 B
G01N33/38
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-162928(P2012-162928)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-21068(P2014-21068A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】香川 敦
(72)【発明者】
【氏名】屋代 勉
(72)【発明者】
【氏名】富井 孝喜
(72)【発明者】
【氏名】川西 貴士
【審査官】
渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−111461(JP,A)
【文献】
特開2002−267583(JP,A)
【文献】
特開平11−051933(JP,A)
【文献】
特表2010−539495(JP,A)
【文献】
米国特許第5311764(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N3/00−3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物から深さ方向に向って反発硬度測定用のコアを抜き取る第一のコア採取工程と、
前記反発硬度測定用のコアの深さ方向の位置毎にエコーチップ硬さ試験により反発硬度を測定する反発硬度測定工程と、
測定した前記反発硬度の分布から、該反発硬度が一定となっている範囲を前記コンクリート構造物の健全部とみなし、該健全部の反発硬度に基づいて前記コンクリート構造物の健全部以浅における圧縮強度が低下している範囲を推定する推定工程と、を備え、
前記推定工程は、
前記コンクリート構造物の健全部以浅においてコアの深さ方向の測定点毎の前記反発硬度の平均値の、前記健全部の反発硬度の平均値に対する割合を算定し、
該割合が、補修が必要な範囲を決定するために予め設定した所定値未満であるか否かを判定し、
前記割合が所定値未満であれば、前記測定点の圧縮強度が基準値未満であると認定し、基準値未満となった測定点が含まれる範囲を、補修が必要である範囲と認定することを特徴とするコンクリート構造物においてコンクリートの圧縮強度が低下している範囲を推定する方法。
【請求項2】
コンクリート構造物から深さ方向に向って反発硬度測定用のコアを抜き取る第一のコア採取工程と、
前記反発硬度測定用のコアの深さ方向の位置毎にエコーチップ硬さ試験により反発硬度を測定する反発硬度測定工程と、
測定した前記反発硬度の分布から、該反発硬度が一定となっている範囲を前記コンクリート構造物の健全部とみなし、該健全部の反発硬度に基づいて前記コンクリート構造物の健全部以浅における圧縮強度が低下している範囲を推定する推定工程と、
前記コンクリート構造物から深さ方向に向って圧縮強度試験用のコアを抜き取る第二のコア採取工程と、
前記圧縮強度試験用のコアにおける前記健全部について圧縮強度試験を実施する圧縮強度試験工程と、を備え、
前記推定工程では、
前記健全部の前記圧縮強度の測定値と、前記健全部の反発硬度および前記健全部以浅における各測定点の反発硬度に基づいて、前記健全部以浅における各測定点の圧縮強度を算出し、
該健全部以浅の各測定点の圧縮強度が、補修が必要な範囲を決定するために予め設定した所定値未満であるか否かを判定し、
該健全部以浅の各測定点の圧縮強度が所定値未満であれば、前記測定点の圧縮強度が基準値未満であると認定し、該健全部以浅の、圧縮強度が基準値未満となった測定点が含まれる範囲を、補修が必要である範囲と認定することを特徴とするコンクリート構造物においてコンクリートの圧縮強度が低下している範囲を推定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物においてコンクリートの圧縮強度が低下している範囲を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物におけるコンクリートの圧縮強度を推定する方法として、シュミットハンマーなるテストハンマーを用いた方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このシュミットハンマーを用いたコンクリートの圧縮強度の推定方法は、シュミットハンマーによりコンクリートの表面に打撃を与え、その際の反発硬度に基づいてコンクリートの圧縮強度を推定するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−160654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、火災により火害を受けたコンクリート構造物の表面をはつって補修や補強を行う場合等、はつり深さを判定するためにコンクリート構造物の深さ方向についてコンクリートの圧縮強度が低下している範囲を調査する必要がある場合がある。この場合、直接的にコンクリートの圧縮強度を測定することも考えられるが、コンクリート構造物から多数のコアを採取し、採取したコアから深さの異なる多数の供試体を切り出して圧縮強度試験を行う必要があり、コンクリート構造物に多数の穴が残るという問題がある。
【0005】
また、上述のシュミットハンマーを用いたコンクリートの圧縮強度の推定方法では、コンクリート構造物の表面の反発硬度を測定してコンクリート構造物の表面の圧縮強度を推定できるのみであり、当該推定方法は、コンクリート構造物の深さ方向の位置毎に反発硬度を測定してその位置毎にコンクリートの圧縮強度を推定できるというものではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コンクリート構造物からの多数のコアの採取を要することなく、コンクリート構造物の深さ方向についてコンクリートの圧縮強度が低下している範囲を精度よく推定することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るコンクリート構造物においてコンクリートの圧縮強度が低下している範囲を推定する方法は、コンクリート構造物から深さ方向に向って反発硬度測定用のコアを抜き取る第一のコア採取工程と、前記反発硬度測定用のコアの深さ方向の位置毎にエコーチップ硬さ試験により反発硬度を測定する反発硬度測定工程と、測定した前記反発硬度の分布から、該反発硬度が一定となっている範囲を前記コンクリート構造物の健全部とみなし、該健全部の反発硬度に基づいて前記コンクリート構造物の健全部以浅における圧縮強度が低下している範囲を推定する推定工程と、を備え、
前記推定工程は、前記コンクリート構造物の健全部以浅においてコアの深さ方向の測定点毎の前記反発硬度の平均値の、前記健全部の反発硬度の平均値に対する割合を算定し、該割合が、補修が必要な範囲を決定するために予め設定した所定値未満であるか否かを判定し、前記割合が所定値未満であれば、前記測定点の圧縮強度が基準値未満であると認定し、基準値未満となった測定点が含まれる範囲を、補修が必要である範囲と認定することを特徴とする。
【0008】
また、コンクリート構造物から深さ方向に向って反発硬度測定用のコアを抜き取る第一のコア採取工程と、前記反発硬度測定用のコアの深さ方向の位置毎にエコーチップ硬さ試験により反発硬度を測定する反発硬度測定工程と、測定した前記反発硬度の分布から、該反発硬度が一定となっている範囲を前記コンクリート構造物の健全部とみなし、該健全部の反発硬度に基づいて前記コンクリート構造物の健全部以浅における圧縮強度が低下している範囲を推定する推定工程と、前記コンクリート構造物から深さ方向に向って圧縮強度試験用のコアを抜き取る第二のコア採取工程と、前記圧縮強度試験用のコアにおける前記健全部について圧縮強度試験を実施する圧縮強度試験工程と、を備え、前記推定工程では、前記健全部の前記圧縮強度の測定値と、前記健全部の反発硬度および前記健全部以浅における各測定点の反発硬度に基づいて、前記健全部以浅における各測定点の圧縮強度を算出し、該健全部以浅の各測定点の圧縮強度が、補修が必要な範囲を決定するために予め設定した所定値未満であるか否かを判定し、該健全部以浅の各測定点の圧縮強度が所定値未満であれば、前記測定点の圧縮強度が基準値未満であると認定し、該健全部以浅の、圧縮強度が基準値未満となった測定点が含まれる範囲を、補修が必要である範囲と認定することにより、前記健全部以浅における圧縮強度を算出してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンクリート構造物からの多数のコアの採取を要することなく、コンクリート構造物の深さ方向についてコンクリートの圧縮強度が低下している範囲を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】加熱によりコンクリートの圧縮強度が低下した範囲を推定する方法について、実験的に検証する手順を示すフローチャートである。
【
図2】コンクリートの加熱面からの深さ方向についての最高温度の分布を示すグラフである。
【
図3】エコーチップ硬さ試験装置を用いて供試体の平面の反発硬度を測定している状態を示す図である。
【
図4】圧縮強度試験用の供試体の作製方法を説明するための図である。
【
図5】反発硬度と圧縮強度との測定結果を示す表である。
【
図6】20℃のコンクリートの圧縮強度に対する各温度でのコンクリートの圧縮強度の比をまとめたグラフである。
【
図7】コンクリートの残存圧縮強度分布の推定値と、反発硬度及び圧縮強度の健全部に対する割合とを示すグラフである。
【
図8】火災により火害を受けたトンネルの覆工コンクリートの深さ方向について圧縮強度が低下している範囲を推定する手順を示すフローチャートである。
【
図9】他の実施例に係る、火災により火害を受けたトンネルの覆工コンクリートの深さ方向について圧縮強度が低下している範囲を推定する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、加熱によりコンクリートの圧縮強度が低下した範囲を推定する方法について、実験的に検証する手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示すように、まず、RABT(ドイツ交通省、道路・トンネルの設備と運用に関する指針)で規定された曲線(以下、RABT曲線)による加熱条件(1200℃、60分)でコンクリートの試験体を加熱する(ステップ1)。この試験体は厚さ500mmであり、この試験体の幅900mm、高さ1300mmの範囲を加熱した。試験体に用いたコンクリートの種類、水セメント比は、高炉セメントB種、35%とした。
【0012】
試験体の加熱時には、コンクリート内部の温度履歴を測定し、コンクリートの加熱面からの深さ方向についての最高温度の分布を得た(
図2参照)。なお、試験体にポリプロピレン短繊維を混入することにより、加熱による試験体の爆裂を防止した。
【0013】
次に、1本の反発硬度測定用の円柱形状のコアと、複数本の圧縮強度試験用の円柱形状のコアとを、試験体からその深さ方向に抜き取る(ステップ2)。そして、コアを断面半円形状に切断することにより、反発硬度測定用の供試体1(
図3参照)を作製し、複数本のコアから、加熱面からの深さが異なる複数種類の圧縮強度試験用の供試体2を切り出す(ステップ3)。反発硬度測定用のコアの直径はφ100mmであり、圧縮強度試験用のコアの直径はφ68mmである。また、
図4に示すように、供試体2は、コアの加熱面から30、50、70、100、150、200および300mmの位置から所定の長さ(例えば、直径の2倍程度であり、今回は130mm)だけ切り出すことにより作製する。
【0014】
次に、
図3に示すように、小型の反発硬度測定器であるエコーチップ硬さ試験装置3を用いて供試体1の平面1Aの反発硬度を測定してその分布を求める(ステップ4)。エコーチップ硬さ試験装置3は、EQUO原理を応用した試験装置であり、タングステンカーバイト製の球状テストチップが先端についたインパクトボディを、一定のバネの力で材料の表面に打ち付けて硬さの指標L値を求めるものである。このエコーチップ硬さ試験装置3は、測定方向に制約が無い、水平面のみならず曲面を有する供試体もアタッチメントを使うことなく測定できる、等の特徴を有しており、シュミットハンマー試験装置を用いては測定できない、コアの側面である供試体1の平面1Aに対しても容易に適用できる。
【0015】
本測定では、加熱面から200mmまでは1cm間隔で、加熱面から200mm以深は2cm間隔で土木学会基準(JSCE−G504)に準拠して測定する。また、本測定は、同一の点を連続打撃する連打法により行うところ、打撃点数は20点とし、偏差が平均値の±20%以上となる値があれば、その測定値に代わる測定値を補う。
【0016】
次に、JIS A 1107「コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法」に準拠して、複数種類の供試体2の圧縮強度試験を行う(ステップ5)。そして、供試体1の反発硬度と供試体2の圧縮強度の測定結果から、コンクリートの残存圧縮強度分布と反発硬度分布との相関関係を求める(ステップ6)。以下、加熱によるコンクリートの残存圧縮強度分布と反発硬度分布との相関関係を求める方法について説明する。
【0017】
図5は、供試体1の反発硬度と供試体2の圧縮強度の測定結果を示す表である。この表に示すように、供試体1の反発硬度と供試体2の圧縮強度とは共に、加熱面近傍の測定値には多少のばらつきが見られるものの、加熱面近傍では平均すると加熱面からの深さが小さくなるほど、測定値が減少する傾向が認められた。
【0018】
図6は、20℃のコンクリートの圧縮強度に対する各温度でのコンクリートの圧縮強度の比をまとめたグラフである。このグラフは、トンネル構造設計要領(シールド工法編)「第3編 耐火設計」(首都高速道路株式会社発行、p11−12)から抜粋したものである。このグラフで示す20℃のコンクリートの圧縮強度に対する各温度でのコンクリートの圧縮強度の比と、
図2に示すコンクリートの加熱面からの深さ方向についての最高温度分布とから、コンクリートの残存圧縮強度分布を推定し、その推定値を
図7のグラフに示している。
【0019】
図7は、上記推定値と、反発硬度及び圧縮強度の健全部に対する割合とを示すグラフである。ここで、健全部とは、加熱によるコンクリートの圧縮強度に対する影響が小さい加熱面から150mm以深の部位のことを指し、反発硬度及び圧縮強度の健全部に対する割合とは、それぞれの深さでの反発硬度及び圧縮強度を、健全部の測定値の平均値で除して無次元化した値である。
【0020】
図7のグラフに示すように、加熱されたコンクリートの深さ方向に測定した反発硬度の健全部の反発硬度に対する割合の分布と、加熱されたコンクリートの深さ方向に測定した圧縮強度の健全部の圧縮強度に対する割合との分布とはほぼ一致した。
【0021】
以上説明したように、加熱されたコンクリートの深さ方向に測定した反発硬度の健全部の反発硬度に対する割合の分布と、加熱されたコンクリートの深さ方向に測定した圧縮強度の健全部の圧縮強度に対する割合との分布とはほぼ一致するという知見が得られたので、以下説明する実施例では、この知見に基づき、加熱されたコンクリートの深さ方向についてコンクリートの圧縮強度が低下している範囲を推定する。
【0022】
図8は、一実施例に係る、火災により火害を受けたトンネルの覆工コンクリートの深さ方向について圧縮強度が低下している範囲を推定する手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示すように、まず、1本の反発硬度測定用の円柱形状のコアを、覆工コンクリートからその深さ方向に抜き取る(ステップ11)。次に、コアを断面半円形状に切断することにより、反発硬度測定用の供試体1(
図3参照)を作製する(ステップ12)。
【0023】
次に、エコーチップ硬さ試験装置3(
図3参照)を用いて供試体1の平面1Aの反発硬度を測定し、その分布を求める(ステップ13)。本測定では、反発硬度が一定となっている範囲を健全部(加熱面から150mm以深)とみなし、該健全部における一点もしくは深さが異なる複数点で連打法により測定を行って反発硬度の平均値を求め、健全部以浅における深さが異なる複数点で連打法により測定を行って各点の反発硬度の平均値を求める。
【0024】
次に、健全部以浅の各点の反発硬度の平均値を、健全部の測定値の平均値で除して、健全部以浅の各点の反発硬度の、健全部の反発硬度に対する割合を求める(ステップ14)。そして、健全部以浅の各点の反発硬度の、健全部における反発硬度に対する割合が、補修が必要な範囲を決定するために予め設定した所定値(例えば、0.8)未満であるか否かを判定し(ステップ15)、当該割合が所定値未満であれば、当該測定点における残存圧縮強度が基準値未満であると認定し(ステップ16)、当該割合が所定以上であれば、当該測定点における残存圧縮強度が基準値以上であると認定する(ステップ17)。最後に、上記割合が基準値未満となった測定点が含まれる範囲を、補修が必要である範囲と認定する(ステップ18)。
【0025】
以上により、多数のコアを覆工コンクリートから採取することなく、トンネルの覆工コンクリートの深さ方向について圧縮強度が低下している範囲を精度よく推定することができ、補修が必要な範囲を精度よく認定することができる。
【0026】
図9は、他の実施例に係る、火災により火害を受けたトンネルの覆工コンクリートの深さ方向について圧縮強度が低下している範囲を推定する手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示すように、まず、1本の反発硬度測定用の円柱形状のコアと、1本の圧縮強度試験用の円柱形状のコアとを、覆工コンクリートからその深さ方向に抜き取る(ステップ21)。そして、反発硬度測定用のコアを断面半円形状に切断することにより、反発硬度測定用の供試体1(
図3参照)を作製する(ステップ22)。
【0027】
次に、エコーチップ硬さ試験装置3(
図3参照)を用いて供試体1の平面1Aの反発硬度を測定し、その分布を求める工程を、上述の実施例のステップ13と同様に実施する(ステップ23)。そして、反発硬度が一定の範囲を健全部(150mm以深)とみなし、健全部から所定長さ切り出すことにより圧縮強度試験用のコアを作製する(ステップ24)。次に、JIS A 1107「コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法」に準拠して、供試体2の圧縮強度試験を行う(ステップ25)。
【0028】
そして、健全部以浅の各点の反発硬度の平均値を、健全部の測定値の平均値で除して、健全部以浅の各点の反発硬度の、健全部の反発硬度に対する割合を求める(ステップ26)。次に、供試体2の圧縮強度の測定値、即ち健全部の圧縮強度の測定値に対して、健全部以浅の各点の反発硬度の、健全部の反発硬度に対する割合を乗じることにより、健全部以浅の各点の残存圧縮強度を算出する(ステップ27)。そして、健全部以浅の各点の残存圧縮強度が、補修が必要な範囲を決定するために予め設定した所定値未満であるか否かを判定し(ステップ28)、所定値未満であれば、当該測定点における残存圧縮強度が基準値未満であると認定し(ステップ29)、所定値以上であれば、当該測定点における残存圧縮強度が基準値以上であると認定する(ステップ30)。最後に、上記残存圧縮強度が基準値未満となった測定点が含まれる範囲を、補修が必要である範囲と認定する(ステップ31)。
【0029】
以上により、多数のコアを覆工コンクリートから採取することなく、トンネルの覆工コンクリートの深さ方向について圧縮強度が低下している範囲を精度よく推定することができ、補修が必要な範囲を精度よく認定することができる。
【0030】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、加熱されたコンクリート構造物におけるコンクリートの圧縮強度が低下した範囲を推定する方法を例に挙げて本発明を説明したが、コンクリートの圧縮強度が化学的腐食等の要因により低下した場合にも本発明を適用することができる。
【0031】
また、上述の実施形態では、採取したコアを断面半円形状に切断してから反発硬度を測定したが、断面半円形状に限らず、コア外周の一部が平面となるように切断してその平面の反発硬度を測定してもよいし、切断することなしにコア外周の曲面の反発硬度を測定してもよい。
【0032】
さらに、上述の実施形態では、加熱されたコンクリートの深さ方向に測定した反発硬度の分布に基づいて健全部を推定し、その健全部の反発硬度に対する反発硬度の割合の分布に基づいて、コンクリートの圧縮強度が低下している範囲を推定した。しかし、加熱されたコンクリートの深さ方向に測定した反発硬度の分布に基づいて健全部を推定せずに、測定した反発硬度の分布のみに基づいて、コンクリートの圧縮強度が低下している範囲を推定してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1、2 供試体、3 エコーチップ硬さ試験装置