特許第6074974号(P6074974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074974
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/28 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   B60K17/28 C
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-209732(P2012-209732)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-65323(P2014-65323A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 友明
(72)【発明者】
【氏名】楫野 豊
(72)【発明者】
【氏名】石田 智之
(72)【発明者】
【氏名】近本 正幸
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 実公平06−016820(JP,Y2)
【文献】 特開2008−063969(JP,A)
【文献】 特開2008−094245(JP,A)
【文献】 実開昭63−043830(JP,U)
【文献】 特開昭58−141723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体後部の作業機を駆動する駆動状態と当該作業機の駆動を停止した非駆動状態とに切り替え可能であるPTO駆動機構と、
車内に設けられ、前記PTO駆動機構を前記非駆動状態から前記駆動状態に切り替えるオン操作と、前記PTO駆動機構を前記駆動状態から前記非駆動状態に切り替えるオフ操作とを行う車内操作部と、
車外の前記機体後部に設けられ、前記PTO駆動機構を前記非駆動状態から前記駆動状態に切り替えるオン操作と、前記PTO駆動機構を前記駆動状態から前記非駆動状態に切り替えるオフ操作とを行う車外操作部と
車速を検出する車速検出装置と、
前記車速検出装置が検出した車速が予め設定される所定車速以上である場合に、前記車外操作部による前記オン操作を禁止し、前記車外操作部による前記オフ操作を許可する第1制御装置とを備えることを特徴とする、
作業車両。
【請求項2】
車内に設けられ、前記車内操作部による操作より前記車外操作部による操作を優先させる車外優先操作を行う優先操作部と、
前記優先操作部による前記車外優先操作が行われた場合に、前記車内操作部によるオン操作を禁止する第2制御装置とを備える、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
車内に設けられ、操縦席からの離席を検出する離席検出装置と、
前記離席検出装置が前記操縦席からの離席を検出した場合に、前記PTO駆動機構を前記非駆動状態とする停止制御を実行可能であると共に、当該停止制御にかかわらず、前記車外操作部による前記オン操作、及び、前記車外操作部による前記オフ操作を許可する第3制御装置とを備える、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業車両として、例えば、特許文献1には、トラクタの操作パネル装置の基段操作部にオン操作信号およびオフ操作信号に応じてPTO装置の稼動と停止を独立して制御するPTO入切スイッチを設け、左右の後輪を覆う左右のフェンダのいずれか一方にPTO装置の稼動中にオフ操作信号によりPTO装置を強制的に停止制御する停止専用のPTO切り車外スイッチを設けたトラクタ用PTO制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4961935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載のトラクタ用PTO制御装置は、上記構成により、2人での作業時に後側で作業している作業者の意思に反してPTO装置が稼動状態となった際にPTO切り車外スイッチを操作することでPTO装置を緊急停止することができるが、例えば、作業性の向上の点で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、作業性を向上することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る作業車両は、例えば、機体後部(1R)の作業機を駆動する駆動状態と当該作業機の駆動を停止した非駆動状態とに切り替え可能であるPTO駆動機構(20)と、車内に設けられ、前記PTO駆動機構(20)を前記非駆動状態から前記駆動状態に切り替えるオン操作と、前記PTO駆動機構(20)を前記駆動状態から前記非駆動状態に切り替えるオフ操作とを行う車内操作部(50)と、車外の前記機体後部(1R)に設けられ、前記PTO駆動機構(20)を前記非駆動状態から前記駆動状態に切り替えるオン操作と、前記PTO駆動機構(20)を前記駆動状態から前記非駆動状態に切り替えるオフ操作とを行う車外操作部(51)と、車速を検出する車速検出装置(52)と、前記車速検出装置(52)が検出した車速が予め設定される所定車速以上である場合に、前記車外操作部(51)による前記オン操作を禁止し、前記車外操作部(51)による前記オフ操作を許可する第1制御装置(100)とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記作業車両では、例えば、車内に設けられ、前記車内操作部(50)による操作より前記車外操作部(51)による操作を優先させる車外優先操作を行う優先操作部(53)と、前記優先操作部(53)による前記車外優先操作が行われた場合に、前記車内操作部(50)によるオン操作を禁止する第2制御装置(100)とを備えるものとすることができる。
【0009】
また、上記作業車両では、例えば、車内に設けられ、操縦席(8)からの離席を検出する離席検出装置(54)と、前記離席検出装置(54)が前記操縦席(8)からの離席を検出した場合に、前記PTO駆動機構(20)を前記非駆動状態とする停止制御を実行可能であると共に、当該停止制御にかかわらず、前記車外操作部(51)による前記オン操作、及び、前記車外操作部(51)による前記オフ操作を許可する第3制御装置(100)とを備えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る作業車両は、作業性を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係るトラクタの概略図である。
図2図2は、図1のA矢視図(機体前部を視た図)である。
図3図3は、図1のB矢視図(機体後部を視た図)である。
図4図4は、図1のC矢視図(機体上部を視た図)である。
図5図5は、実施形態に係るトラクタの変速装置の伝動機構を示す線図である。
図6図6は、実施形態に係るトラクタのキャビン内を含む概略平面図である。
図7図7は、実施形態に係るトラクタのコントローラを含む概略構成を表すブロック図である。
図8図8は、実施形態に係るトラクタのコントローラによる制御の一例を説明するフローチャートである。
図9図9は、実施形態に係るトラクタのコントローラによる制御の一例を説明するフローチャートである。
図10図10は、実施形態に係るトラクタのコントローラによる制御の一例を説明するフローチャートである。
図11図11は、実施形態に係るトラクタのコントローラによる制御の一例を説明するフローチャートである。
図12図12は、実施形態に係るトラクタのコントローラによる制御の一例を説明するフローチャートである。
図13図13は、実施形態に係るトラクタのコントローラによる制御の一例を説明するフローチャートである。
図14図14は、実施形態に係るトラクタのコントローラによる制御の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るトラクタの概略図である。図2は、図1のA矢視図(機体前部を視た図)である。図3は、図1のB矢視図(機体後部を視た図)である。図4は、図1のC矢視図(機体上部を視た図)である。図5は、実施形態に係るトラクタの変速装置の伝動機構を示す線図である。図6は、実施形態に係るトラクタのキャビン内を含む概略平面図である。図7は、実施形態に係るトラクタのコントローラを含む概略構成を表すブロック図である。図8図14は、実施形態に係るトラクタのコントローラによる制御の一例を説明するフローチャートである。
【0014】
なお、以下の説明では、前後方向とは、トラクタ1の前後方向である。さらに言えば、前後方向とは、このトラクタ1が直進する際の進行方向であり、進行方向前方側を前後方向前側、後方側を前後方向後側という。トラクタ1の進行方向とは、トラクタ1の直進時において、トラクタ1の操縦席8からステアリングハンドル11に向かう方向であり、ステアリングハンドル11側が前側、操縦席8が後側となる。また、車幅方向とは、当該前後方向に対して水平に直交する方向である。ここでは、前後方向前側を視た状態で右側を車幅方向右側、前後方向前側を視た状態で左側を車幅方向左側という。さらに、鉛直方向とは、前後方向と車幅方向とに直交する方向である。これら前後方向、車幅方向及び鉛直方向は、互いに直交する。
【0015】
図1図4に示す本実施形態の作業車両としてのトラクタ1は、動力源が発生する動力によって、自走しながら圃場等での作業を行う農用トラクタ等の作業車両である。トラクタ1は、前輪2と、後輪3と、動力源としてのエンジン4と、変速装置(トランスミッション)5とを備えている。このうち、前輪2は、主に操舵用の車輪、すなわち、操舵輪として設けられる。後輪3は、主に駆動用の車輪、すなわち、駆動輪として設けられる。後輪3には、機体前部1Fのボンネット6内に搭載されるエンジン4で発生した回転動力を、変速装置(トランスミッション)5で適宜減速して伝達可能になっており、後輪3は、この回転動力によって駆動力を発生する。また、この変速装置5は、エンジン4で発生した回転動力を、必要に応じて前輪2にも伝達可能になっており、この場合は、前輪2と後輪3との四輪が駆動輪となり駆動力を発生する。すなわち、変速装置5は、二輪駆動と四輪駆動との切り替えが可能になっており、エンジン4の回転動力を減速し、減速された回転動力を前輪2、後輪3に伝達可能である。また、トラクタ1は、機体後部1Rに、ロータリ(図示省略)等の作業機を装着可能な連結装置7が配設されている。連結装置7は、例えば、左右のロアリンクや中央のトップリンク等によってトラクタ1の機体後部1Rに作業機を連結する。トラクタ1は、例えば、左右のリフトアームを油圧で回動することで、リフトロッド、このリフトロッドと連結しているロアリンク等を介して作業機を昇降させることができる。トラクタ1は、機体上の操縦席8の周りはキャビン9で覆われている。トラクタ1は、キャビン9の内部において、操縦席8前側のダッシュボード10からステアリングハンドル11が立設されると共に、操縦席8の周りにクラッチペダル、ブレーキペダル、アクセルペダル等の各種操作ペダルや前後進レバー、変速レバー等の各種操作レバーが配置されている。
【0016】
図5は、変速装置5のミッションケース12内の伝動機構13を示す線図である。変速装置5は、ミッションケース12(図1参照)と、このミッションケース12内に配置されエンジン4から後輪3等へ回転動力を伝達する伝動機構13とを含んで構成される。伝動機構13は、エンジン4からの回転動力を前輪2、後輪3、及び、機体に装着した作業機に伝達し、これらをエンジン4からの回転動力によって駆動するものである。
【0017】
具体的には、伝動機構13は、入力軸14、前後進切替機構15、高低変速機構としてのHi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18、2WD/4WD切替機構19、PTO(Power take−off)駆動機構20等を含んで構成される。伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18を順に介して後輪3に伝達することができる。また、伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18、2WD/4WD切替機構19を順に介して前輪2に伝達することができる。さらに、伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、PTO駆動機構20を順に介して作業機に伝達することができる。
【0018】
入力軸14は、エンジン4の出力軸に結合されており、エンジン4からの回転動力が伝達(入力)される。
【0019】
前後進切替機構15は、エンジン4から伝達された回転動力を、前進方向回転又は後進方向回転に切り替え可能なものである。前後進切替機構15は、前進側ギヤ段15a、後進側ギヤ段15b、油圧多板クラッチ(前進クラッチ)C1、油圧多板クラッチ(後進クラッチ)C2を含んで構成される。油圧多板クラッチC1、C2は、係合/解放状態を切り替えることで前後進切替機構15における動力の伝達経路を切り替え可能である。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1、C2の係合/解放状態に応じて入力軸14に伝達された回転動力を、伝達経路を変えてカウンタ軸21に伝達する。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1が係合状態、油圧多板クラッチC2が解放状態である場合に、入力軸14に伝達された回転動力を、前進側ギヤ段15a、油圧多板クラッチC1を介して前進方向回転でカウンタ軸21に伝達する。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1が解放状態、油圧多板クラッチC2が係合状態である場合に、入力軸14に伝達された回転動力を後進側ギヤ段15b、油圧多板クラッチC2を介して後進方向回転で、カウンタ軸21に伝達する。これにより、前後進切替機構15は、トラクタ1の前後進を切り替えることができる。また、前後進切替機構15は、メインクラッチとしても機能し、油圧多板クラッチC1、C2を共に解放状態とすることで、ニュートラル状態となり、前輪2、後輪3側への動力伝達を遮断することができる。前後進切替機構15は、例えば、作業員によって前後進切替レバー43(図6参照)が操作されることで油圧制御によって前進、後進、ニュートラルを切り替えることができる。また、クラッチペダルを踏み込み操作することで油圧多板クラッチC1、C2を共に解放状態にできる。
【0020】
Hi−Lo変速機構16は、エンジン4から伝達された回転動力を、高速段又は低速段で変速可能なものである。Hi−Lo変速機構16は、Hi(高速)側ギヤ段16a、Lo(低速)側ギヤ段16b、油圧多板クラッチ(Hi(高速)側クラッチ)C3、油圧多板クラッチ(Lo(低速)側クラッチ)C4を含んで構成される。油圧多板クラッチC3、C4は、係合/解放状態を切り替えることでHi−Lo変速機構16における動力の伝達経路を切り替え可能である。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3、C4の係合/解放状態に応じて、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、伝達経路を変えて変速軸22に伝達する。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3が係合状態、油圧多板クラッチC4が解放状態である場合に、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC3、Hi側ギヤ段16aを介して変速して変速軸22に伝達する。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3が解放状態、油圧多板クラッチC4が係合状態である場合に、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC4、Lo側ギヤ段16bを介して変速して変速軸22に伝達する。これにより、Hi−Lo変速機構16は、エンジン4からの回転動力をHi側ギヤ段16aの変速比、あるいは、Lo(低速)側ギヤ段16bの変速比で変速して後段に伝達することができる。Hi−Lo変速機構16は、例えば、作業員によってHi−Lo切替スイッチ(高低変速操作スイッチ)44(図6参照)がオン/オフされることで油圧制御によってHi(高速)側、Lo(低速)側を切り替えることができ、高速と低速の2段のうちのいずれかで変速することができる。また、Hi−Lo変速機構16は、上記の構成によりトラクタ1の走行中に変速可能である。
【0021】
主変速機構17は、エンジン4から伝達された回転動力を、複数の変速段のいずれかで変速可能である。主変速機構17は、シンクロメッシュ式の変速機構であり、ここでは、エンジン4から前後進切替機構15、及び、Hi−Lo変速機構16を介して伝達される回転動力を変速可能である。主変速機構17は、複数の変速段として第1速ギヤ段17a、第2速ギヤ段17b、第3速ギヤ段17c、第4速ギヤ段17d、第5速ギヤ段17e、第6速ギヤ段17fを含んで構成される。主変速機構17は、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの変速軸22との結合状態に応じて、変速軸22に伝達された回転動力を、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fのいずれかを介して変速して変速軸23に伝達する。これにより、主変速機構17は、エンジン4からの回転動力を第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fのいずれかの変速比で変速して後段に伝達することができる。主変速機構17は、例えば、作業員によって主変速操作レバー45(図6参照)が操作されることで複数の変速段のうちの1つを選択し切り替えることができ、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれかで変速することができる。また、主変速機構17は、上記の構成によりトラクタ1の走行中に変速可能である。
【0022】
副変速機構18は、エンジン4から前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、及び、主変速機構17を順に介して伝達される回転動力を変速可能である。副変速機構18は、第1副変速機24、第2副変速機25等を含んで構成され、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24、第2副変速機25等を介して変速して変速軸26に伝達する。第1副変速機24は、エンジン4から伝達され主変速機構17等で変速された回転動力を高速段又は低速段で変速して駆動輪である後輪3側に伝達可能である。第2副変速機25は、エンジン4から伝達され主変速機構17等で変速された回転動力を第1副変速機24よりもさらに低速の極低速段で変速して駆動輪である後輪3側に伝達可能である。
【0023】
副変速機構18の第1副変速機24は、第1ギヤ24a、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、シフタ24eを含んで構成される。第1ギヤ24aは、変速軸23からの回転動力が伝達(入力)される。第2ギヤ24bは、第1ギヤ24aと噛み合っている。第3ギヤ24cは、第2ギヤ24bと一体回転可能に結合されている。第4ギヤ24dは、第3ギヤ24cと噛み合っている。シフタ24eは、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dと変速軸26との結合状態を切り替えるものである。シフタ24eは、第1ギヤ24aと変速軸26とを一体回転可能に結合するHi(高速)側位置、第4ギヤ24dと変速軸26とを一体回転可能に結合するLo(低速)側位置、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dのいずれもが変速軸26と結合せず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。第1副変速機24は、シフタ24eの位置に応じて、変速軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を切り替えて変速軸26に伝達する。第1副変速機24は、シフタ24eがHi側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1ギヤ24aから、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介さずに、変速軸26に伝達する(変速軸23→第1ギヤ24a→変速軸26と伝達される)。第1副変速機24は、シフタ24eがLo側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1ギヤ24aから第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、シフタ24eを介して順次減速して変速軸26に伝達する。これにより、第1副変速機24は、エンジン4からの回転動力を、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介さないHi(高速)側の変速比、あるいは、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介したLo(低速)側の変速比で変速して後段に伝達することができる。また、第1副変速機24は、シフタ24eが中立位置にある場合、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dのいずれもが変速軸26に対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。第1副変速機24は、例えば、作業員によって第1副変速操作レバー46(図6参照)が操作されることで、シフタ24eの位置が切り替えられてHi(高速)側、Lo(低速)側、ニュートラルを切り替えることができる。
【0024】
副変速機構18の第2副変速機25は、第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25d、シフタ25eを含んで構成される。第1ギヤ25aは、第4ギヤ24dと一体回転可能に結合されている。第2ギヤ25bは、第1ギヤ25aと噛み合っている。第3ギヤ25cは、第2ギヤ25bと一体回転可能に結合されている。第4ギヤ25dは、第3ギヤ25cと噛み合っている。シフタ25eは、第4ギヤ25dと変速軸26との結合状態を切り替えるものである。シフタ25eは、第4ギヤ25dと変速軸26とを一体回転可能に結合する極Lo(極低速)側位置、第4ギヤ25dと変速軸26とが結合されず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。第2副変速機25は、シフタ25eの位置に応じて、変速軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を切り替えて変速軸26に伝達する。第2副変速機25は、第1副変速機24がニュートラルの状態で、シフタ25eが極Lo側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24の第1ギヤ24aから、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、第2副変速機25の第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25d、シフタ25eを介して順次減速して変速軸26に伝達する。これにより、第2副変速機25は、エンジン4からの回転動力を、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25dを介した極Lo(極低速)側の変速比で変速して後段に伝達することができる。また、第2副変速機25は、シフタ25eが中立位置にある場合、第4ギヤ25dが変速軸26に対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。第2副変速機25は、上記第1副変速機24がHi(高速)側、又は、Lo(低速)側となっている場合には、ニュートラルの状態とされる。第2副変速機25は、例えば、作業員によって第2副変速操作レバー47(図6参照)が操作されることで、シフタ25eの位置が切り替えられて極Lo(極低速)側、ニュートラルを切り替えることができる。
【0025】
したがって、副変速機構18は、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24と第2副変速機25とを組み合わせることで、高速と低速と極低速の3段のうちのいずれかで変速して変速軸26に伝達することができる。すなわち、副変速機構18は、第1副変速機24がHi(高速)側、第2副変速機25がニュートラルの状態となっている場合には、Hi(高速)段で変速することができる。副変速機構18は、第1副変速機24がLo(低速)側、第2副変速機25がニュートラルの状態となっている場合には、Lo(低速)段で変速することができる。副変速機構18は、第1副変速機24がニュートラルの状態、第2副変速機25が極Lo(極低速)側となっている場合には、極Lo(極低速)段で変速することができる。副変速機構18は、トラクタ1が停車している状態で高速、低速、極低速が切り替えられる。
【0026】
そして、変速装置5の伝動機構13は、変速軸26に伝達された回転動力を、後輪デフ27、車軸(ドライブシャフト)28、遊星歯車機構29等を介して後輪3に伝達する。この結果、トラクタ1は、後輪3がエンジン4からの回転動力により駆動輪として回転駆動する。
【0027】
以上の説明を要約すると、入力軸14の回転は、まず前後進切替機構15で正転又は逆転に切り替えられ、Hi−Lo変速機構16で高速と低速の2段のうちのいずれかで変速され、主変速機構17で第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれかで変速され、さらに副変速機構18で高速と低速と極低速の3段のうちのいずれかで変速されて、車軸28に伝達される。すなわち、入力軸14の回転は、変速装置5の伝動機構13によって、2×6×3=36段のいずれかで変速されて車軸28へ伝動される。
【0028】
2WD/4WD切替機構19は、変速軸26に伝達された回転動力を、前輪2側に伝達するか否かを切り替えるものである。2WD/4WD切替機構19は、伝達軸19a、第1ギヤ19b、第2ギヤ19c、伝達軸19d、シフタ19e含んで構成される。伝達軸19aは、変速軸26からの回転動力が、ギヤ30、ギヤ31、伝達軸32、カップリング33等を介して伝達(入力)される。第1ギヤ19bは、伝達軸19aが挿入され、当該伝達軸19aに対して相対回転可能に組み付けられる。第2ギヤ19cは、第1ギヤ19bと噛み合っている。伝達軸19dは、第2ギヤ19cと一体回転可能に結合されている。シフタ19eは、伝達軸19aと第1ギヤ19bとの結合状態を切り替えるものである。シフタ19eは、伝達軸19aと第1ギヤ19bとを一体回転可能に結合する4WD位置、伝達軸19aと第1ギヤ19bとが結合されず、解放される2WD位置(ニュートラル位置)に移動可能である。2WD/4WD切替機構19は、シフタ19eが4WD位置にある場合、伝達軸19aに伝達された回転動力を、第1ギヤ19b、第2ギヤ19cを介して伝達軸19dに伝達する。これにより、2WD/4WD切替機構19は、エンジン4からの回転動力を前輪2側に伝達することができる。変速装置5の伝動機構13は、伝達軸19dに伝達された回転動力を、前輪デフ34、車軸(ドライブシャフト)35、垂直軸36、遊星歯車機構37等を介して前輪2に伝達する。この結果、トラクタ1は、前輪2及び後輪3がエンジン4からの回転動力により駆動輪として回転駆動し、四輪駆動で走行することができる。2WD/4WD切替機構19は、シフタ19eが2WD位置にある場合、伝達軸19aに伝達された回転動力の伝達軸19d側への動力伝達が遮断される。この結果、トラクタ1は、二輪駆動で走行することができる。2WD/4WD切替機構19は、例えば、作業員によって2WD/4WD切替レバー48(図6参照)が操作されることで、シフタ19eの位置が切り替えられて、二輪駆動、四輪駆動を切り替えることができる。
【0029】
PTO駆動機構20は、エンジン4から伝達される回転動力を変速して機体後部1R(図3参照)のPTO軸40(図3参照)から作業機に出力することで、エンジン4からの動力によって作業機を駆動するものである。PTO駆動機構20は、PTOクラッチ機構38、PTO変速機構39、PTO軸40等を含んで構成される。PTO駆動機構20は、PTOクラッチ機構38によって、機体後部1Rの作業機を駆動する駆動状態(以下、「PTO駆動状態」という場合がある。)と、当該作業機の駆動を停止した非駆動状態(以下、「PTO非駆動状態」という場合がある。)とに切り替え可能である。
【0030】
PTOクラッチ機構38は、PTO軸40側への動力の伝達と遮断とを切り替えるものである。PTOクラッチ機構38は、ギヤ38a、油圧多板クラッチC5、伝達軸38bを含んで構成される。ギヤ38aは、入力軸14と一体回転可能に結合されたギヤ41と噛み合っている。油圧多板クラッチC5は、係合/解放状態が切り替わることで、ギヤ38aと伝達軸38bとの間の動力の伝達状態を切り替えるものである。PTOクラッチ機構38は、油圧多板クラッチC5が係合状態となることでPTO軸40側へ動力を伝達するPTO駆動状態となり、入力軸14からギヤ41を介してギヤ38aに伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC5を介して伝達軸38bに伝達する。PTOクラッチ機構38は、油圧多板クラッチC5が解放状態となることでPTO軸40側への動力の伝達が遮断されたPTO非駆動状態(ニュートラル状態)となり、ギヤ38aに伝達された回転動力の伝達軸38b側への伝達が遮断される。PTOクラッチ機構38は、例えば、作業員によって車内PTOオン/オフスイッチ(以下、「車内PTOスイッチ」という場合がある。)50(図6参照)、あるいは、車外PTOオン/オフスイッチ(以下、「車外PTOスイッチ」という場合がある。)51(図6参照)がオン/オフされることで油圧制御によってPTO駆動状態、PTO非駆動状態を切り替えることができる。なお、このトラクタ1は、ギヤ38aと噛み合うギヤ70a、当該ギヤ70aと噛み合うギヤ70b等を介してギヤポンプ70が設けられている。ギヤポンプ70は、伝動機構13等の油圧系統に油圧を付与するものである。
【0031】
PTO変速機構39は、PTO軸40側に動力を伝達する際に変速を行うものである。PTO変速機構39は、Hi(高速)側ギヤ段39a、Lo(低速)側ギヤ段39b、伝達軸39c、シフタ39dを含んで構成さる。PTO変速機構39は、シフタ39dの位置に応じて、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Hi側ギヤ段39a、あるいは、Lo側ギヤ段39bを介して変速して、伝達軸39cに伝達する。シフタ39dは、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bと伝達軸39cとの結合状態を切り替えるものである。シフタ39dは、Hi側ギヤ段39aと伝達軸39cとを結合するHi(高速)側位置、Lo側ギヤ段39bと伝達軸39cとを結合するLo(低速)側位置、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bのいずれもが伝達軸39cと結合せず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。PTO変速機構39は、シフタ39dがHi側位置にある場合、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Hi側ギヤ段39aを介して伝達軸39cに伝達する。PTO変速機構39は、シフタ39dがLo側位置にある場合、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Lo側ギヤ段39bを介して伝達軸39cに伝達する。これにより、PTO変速機構39は、エンジン4からの回転動力を、Hi側ギヤ段39aの変速比、あるいは、Lo側ギヤ段39bの変速比で変速して後段に伝達することができる。また、PTO変速機構39は、シフタ39dが中立位置にある場合、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bのいずれもが伝達軸39cに対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。PTO変速機構39は、例えば、作業員によって後述のPTO変速操作レバー49(図6参照)が操作されることで、シフタ39dの位置が切り替えられてHi(高速)側、Lo(低速)側、ニュートラルを切り替えることができ、高速と低速の2段のうちのいずれかで変速することができる。
【0032】
PTO軸40は、作業機が結合され、エンジン4からの回転動力を作業機に伝達するものである。PTO軸40は、伝達軸39cに伝達された回転動力が第1ギヤ41、第2ギヤ42等を介して伝達されることで回転駆動する。
【0033】
以上の説明を要約すると、入力軸14の回転は、PTOクラッチ機構38を介してPTO変速機構39に伝達され、このPTO変速機構39で高速と低速の2段のうちのいずれかで変速されて、PTO軸40に伝達され、このPTO軸40を回転駆動する。この結果、トラクタ1は、エンジン4から伝達される回転動力を変速してPTO軸40から作業機に出力し、作業機を駆動することができる。
【0034】
ところで、本実施形態のトラクタ1に装着される作業機としては、上述したロータリ等の他にも、例えば、河川等から水をくみ上げるポンプや根菜類等を収穫する根菜類収穫機等が挙げられる。例えば、トラクタ1は、作業機としてポンプが使用される場合には、河川近傍の所定の位置で定置状態(所定の定位置で停止、駐車された状態)とされた上で、作業者によってPTO駆動機構20のPTO非駆動状態とPTO駆動状態とが切り替えられる。この場合、トラクタ1は、例えば、1人の作業者でもこれらの作業を円滑に行うことができることが望まれる。一方、トラクタ1は、例えば、作業機として根菜類収穫機が使用される場合、第1の作業者(運転者)の運転によって低速で走行しながら、作業機近傍の補助席に着座する第2の作業者(補助者)が根菜類収穫機によって収穫された根菜類から不良品を選別、除去する作業をあわせて行う場合がある。この場合、トラクタ1は、2人の作業者が作業に従事している状態でも、例えば、第2の作業者(補助者)が作業をするにあたって適切に安全性を確保することができることが望まれる。このため、トラクタ1は、これらの作業状況等に応じて作業性を向上するため、状況に応じて容易に確実にPTO駆動機構20のPTO非駆動状態とPTO駆動状態とを切り替えることができることが望まれる。
【0035】
そこで、本実施形態のトラクタ1は、このトラクタ1の車内に設けられる車内操作部としての車内PTOスイッチ50と、このトラクタ1の車外に設けられる車外操作部としての車外PTOスイッチ51とを備えることで、作業性の向上を図っている。
【0036】
具体的には、トラクタ1は、図6に示すように、キャビン9(図1参照)内や機体後部1Rに各種操作レバーが配置されている。トラクタ1は、キャビン9内に、前後進切替レバー43、Hi−Lo切替スイッチ44、主変速操作レバー45、第1副変速操作レバー46、第2副変速操作レバー47、2WD/4WD切替レバー48が設けられる。また、トラクタ1は、車外の機体後部1RにPTO変速操作レバー49が設けられる。前後進切替レバー43は、前後進切替機構15の前後進切替操作を行うものであり、作業員がこの前後進切替レバー43を操作することで、前後進切替機構15を前進、後進、ニュートラルに切り替えることができる。Hi−Lo切替スイッチ44は、Hi−Lo変速機構16のHi−Lo変速操作(高低変速操作)を行うものであり、作業員がこのHi−Lo切替スイッチ44を操作することで、Hi−Lo変速機構16を高速、低速に切り替えることができる。主変速操作レバー45は、主変速機構17の主変速操作を行うものであり、作業員がこの主変速操作レバー45を操作することで、主変速機構17を第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれか、あるいは、ニュートラルに切り替えることができる。第1副変速操作レバー46は、副変速機構18の第1副変速機24の第1副変速操作を行うものであり、作業員がこの第1副変速操作レバー46を操作することで、第1副変速機24を高速、低速、ニュートラルに切り替えることができる。第2副変速操作レバー47は、副変速機構18の第2副変速機25の第2副変速操作を行うものであり、作業員がこの第2副変速操作レバー47を操作することで、第2副変速機25を極低速、ニュートラルに切り替えることができる。2WD/4WD切替レバー48は、2WD/4WD切替機構19の2WD/4WD切替操作を行うものであり、作業員がこの2WD/4WD切替レバー48を操作することで、2WD/4WD切替機構19を二輪駆動、四輪駆動に切り替えることができる。PTO変速操作レバー49は、PTO変速機構39のPTO変速操作を行うものであり、作業員がこのPTO変速操作レバー49を操作することで、PTO変速機構39を高速、低速、ニュートラルに切り替えることができる。
【0037】
そして、本実施形態の車内PTOスイッチ50は、トラクタ1の車内、典型的には、キャビン9内の操作盤に設けられる。一方、車外PTOスイッチ51は、車外の機体後部1R、典型的には、左右の後輪3を覆う左右のフェンダ3aのいずれか一方、ここでは、車幅方向右側のフェンダ3aに設けられる(図3図4等も参照)。
【0038】
車内PTOスイッチ50は、トラクタ1の車内においてPTO駆動機構20のオン操作とオフ操作とを行うものである。一方、車外PTOスイッチ51は、トラクタ1の車外においてPTO駆動機構20のオン操作とオフ操作とを行うものである。ここで、PTO駆動機構20のオン操作とは、PTO駆動機構20をPTO非駆動状態からPTO駆動状態に切り替える操作である。一方、PTO駆動機構20のオフ操作とは、PTO駆動機構20をPTO駆動状態からPTO非駆動状態に切り替える操作である。つまり、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51は、オン操作、オフ操作に応じて、PTO駆動機構20のPTO駆動状態とPTO非駆動状態とを切り替え可能である。
【0039】
なお、PTO駆動状態とは、上述したように、PTO駆動機構20により機体後部1Rの作業機を駆動する状態であり、PTOクラッチ機構38が係合状態となり、エンジン4からの回転動力によってPTO軸40が回転駆動する状態である。一方、PTO非駆動状態とは、PTO駆動機構20による作業機の駆動を停止した状態であり、PTOクラッチ機構38が解放状態となり、エンジン4からの回転動力がPTOクラッチ機構38にて遮断されPTO軸40の回転駆動が停止した状態である。
【0040】
本実施形態のトラクタ1は、図7に示すように、第1制御装置、第2制御装置、第3制御装置として兼用されるコントローラ100を備え、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51は、このコントローラ100に電気的に接続されている。
【0041】
コントローラ100は、トラクタ1の各部の駆動を制御するものであり、エンジン4の出力制御、変速装置5の変速制御等を電子制御によって行うことができる。コントローラ100は、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。コントローラ100は、例えば、各部の情報を取得するセンサ類やスイッチ類が電気的に接続され、検出結果に対応した電気信号が入力される。また、コントローラ100は、エンジン4や変速装置5において、実際に動作をするソレノイド等のアクチュエータ類が電気的に接続されている。そして、コントローラ100は、各種センサ類やスイッチ類等から入力された各種入力信号や記憶部に記憶されている各種マップ等に基づいて、格納されている制御プログラムを実行することにより、エンジン4や変速装置5等のトラクタ1の各部に駆動信号を出力しこれらの駆動を制御する。
【0042】
車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51は、それぞれ上記PTO駆動機構20のオン操作がなされた際(例えば、PTO非駆動状態で車内PTOスイッチ50、又は、車外PTOスイッチ51が押下操作された際)に、コントローラ100へPTOスイッチオン信号を出力する。また、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51は、それぞれ上記PTO駆動機構20のオフ操作がなされた際(例えば、PTO駆動状態で車内PTOスイッチ50、又は、車外PTOスイッチ51が押下操作された際)に、コントローラ100へPTOスイッチオフ信号を出力する。
【0043】
コントローラ100は、アクチュエータ類として、例えば、PTOクラッチ機構38の油圧多板クラッチC5を作動させるPTO昇圧ソレノイド101が電気的に接続されている。コントローラ100は、車内PTOスイッチ50、あるいは、車外PTOスイッチ51からPTOスイッチオン信号が入力されると、PTO昇圧ソレノイド101にクラッチオン駆動信号を出力しこのPTO昇圧ソレノイド101を制御する。これにより、コントローラ100は、PTOクラッチ機構38の油圧多板クラッチC5を係合状態とし、PTO駆動機構20をPTO駆動状態に制御する。一方、コントローラ100は、車内PTOスイッチ50、あるいは、車外PTOスイッチ51からPTOスイッチオフ信号が入力されると、PTO昇圧ソレノイド101にクラッチオフ駆動信号を出力しこのPTO昇圧ソレノイド101を制御する。これにより、コントローラ100は、PTOクラッチ機構38の油圧多板クラッチC5を解放状態とし、PTO駆動機構20をPTO非駆動状態に制御する。
【0044】
次に、図8図9のフローチャートを参照して、コントローラ100による制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される(以下で説明する制御についても同様である。)。
【0045】
図8の制御では、コントローラ100は、PTO駆動機構20がPTO非駆動状態であり、PTO駆動を停止中か否かを判定する(ステップST1)。
【0046】
コントローラ100は、PTO駆動を停止中でない、すなわち、PTO駆動機構20がPTO駆動状態であり、PTO駆動中であると判定した場合(ステップST1:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0047】
コントローラ100は、PTO駆動を停止中であると判定した場合(ステップST1:Yes)、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51からのPTOスイッチオン信号に基づいて、車内PTOスイッチ50、あるいは、車外PTOスイッチ51によってオン操作がなされたか否かを判定する(ステップST2)。この場合のオン操作には、例えば、PTO非駆動状態で車内PTOスイッチ50、あるいは、車外PTOスイッチ51を押下する操作、後述の図9のように車外PTOスイッチ51によるオフ操作によってPTO停止された場合や後述の図13のように自動でPTO停止された場合に、車内PTOスイッチ50、あるいは、車外PTOスイッチ51を一旦押下する操作をした後(オンからオフに戻した後)、再度押下する操作(再度オンにする操作)等を含んでもよい。
【0048】
コントローラ100は、車外PTOスイッチ51によってオン操作がなされたと判定した場合(ステップST2:Yes)、PTO駆動機構20をPTO非駆動状態からPTO駆動状態に切り替えて、PTO駆動を開始し(ステップST3)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0049】
コントローラ100は、車外PTOスイッチ51によってオン操作がなされていないと判定した場合(ステップST2:No)、PTO駆動機構20をPTO非駆動状態で維持し、PTO駆動の停止を継続し(ステップST4)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0050】
図9の制御では、コントローラ100は、車内PTOスイッチ50、あるいは、車外PTOスイッチ51によるオン操作によって、PTO駆動機構20がPTO駆動状態であり、PTO駆動中か否かを判定する(ステップST21)。
【0051】
コントローラ100は、PTO駆動中でない、すなわち、PTO駆動機構20がPTO非駆動状態であり、PTO駆動を停止中であると判定した場合(ステップST21:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0052】
コントローラ100は、PTO駆動中であると判定した場合(ステップST21:Yes)、車外PTOスイッチ51からのPTOスイッチオフ信号に基づいて、車外PTOスイッチ51によってオフ操作がなされたか否か(例えば、PTO駆動状態で車外PTOスイッチ51が押下操作されたか否か)を判定する(ステップST22)。
【0053】
コントローラ100は、車外PTOスイッチ51によってオフ操作がなされたと判定した場合(ステップST22:Yes)、PTO駆動機構20をPTO駆動状態からPTO非駆動状態に切り替えて、PTO駆動を停止し(ステップST23)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0054】
コントローラ100は、車外PTOスイッチ51によってオフ操作がなされていないと判定した場合(ステップST22:No)、PTO駆動機構20をPTO駆動状態で維持し、PTO駆動を継続し(ステップST24)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0055】
上記のように構成されるトラクタ1は、例えば、作業者が操縦席8から離席した状態でも、機体後部1Rの車外PTOスイッチ51によってオン操作、オフ操作を行うことで、PTO駆動機構20のPTO非駆動状態とPTO駆動状態とを切り替えて、作業機の駆動をオン、オフ(入り切り)することができる。これにより、トラクタ1は、例えば、作業者が1人の場合であっても、所定の位置で定置状態とされた上で、作業者が作業機近傍で車外PTOスイッチ51を介して円滑に作業機の駆動のオン、オフを切り替えることができる。この結果、トラクタ1は、作業効率を向上し、作業性を向上することができる。また、トラクタ1は、例えば、操縦席8に着座した第1の作業者(運転者)の運転によって低速で走行しながら、作業機近傍の補助席に着座した第2の作業者(補助者)が補助作業を行うような場合であっても、第2の作業者自身が自己の作業状況を確認しながら車外PTOスイッチ51を介して容易に作業機の駆動のオン、オフを切り替えることができる。この結果、トラクタ1は、安全性を向上し、作業性を向上することができる。
【0056】
なお、本実施形態のコントローラ100は、各種センサ類やスイッチ類等から入力された各種入力信号に応じて、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51の有効、無効を自動で制御するようにしてもよい。
【0057】
例えば、図7に示す本実施形態のコントローラ100は、さらに、車速検出装置としての車速センサ52、優先操作部としての優先スイッチ53、離席検出装置としてのシートスイッチ54、パーキングスイッチ55、リニアレバーセンサ56等が電気的に接続されている。
【0058】
車速センサ52は、トラクタ1の走行速度である車速を検出するものである。車速センサ52は、コントローラ100へ車速に応じた車速検出信号を出力する。優先スイッチ53は、車内PTOスイッチ50による操作より車外PTOスイッチ51による操作を優先させる車外優先操作を行うものである。優先スイッチ53は、車内に設けられ、典型的には、キャビン9内の操作盤に設けられる(図6参照)。優先スイッチ53は、車外PTOスイッチ51による操作を優先していない状態で押下操作されることで、コントローラ100へ車外PTOスイッチ51による操作を優先する優先スイッチオン信号を出力する。優先スイッチ53は、車外PTOスイッチ51による操作を優先している状態で押下操作されることで、コントローラ100へ車外PTOスイッチ51による操作を優先する状態を解除する優先スイッチオフ信号を出力する。シートスイッチ54は、操縦席8からの作業者の離席を検出する。ここでは、シートスイッチ54は、例えば、操縦席8に対する荷重等に基づいて操縦席8に対する作業者の着座の有無、すなわち、操縦席8に作業者が着座しているか否かを検出する。シートスイッチ54は、車内、典型的には、操縦席8の下側に設けられる。シートスイッチ54は、操縦席8に作業者が着座している場合には、コントローラ100へシートスイッチオン信号を出力する。シートスイッチ54は、操縦席8に作業者が着座していない場合、すなわち、作業者が操縦席8から離席している場合には、コントローラ100へシートスイッチオフ信号を出力する。パーキングスイッチ55は、トラクタ1のパーキングブレーキ(以下、「パーキング」という場合がある。)が作動している場合にコントローラ100へパーキングオン信号を出力し、パーキングが解除されている場合にコントローラ100へパーキングオフ信号を出力するものである。リニアレバーセンサ56は、前後進切替レバー43のシフトポジションを検出するものである。リニアレバーセンサ56は、前後進切替レバー43により前後進切替機構15が前進に切り替えられている場合にコントローラ100へ前進信号を出力する。リニアレバーセンサ56は、前後進切替レバー43により前後進切替機構15が後進に切り替えられている場合にコントローラ100へ後進信号を出力する。リニアレバーセンサ56は、前後進切替レバー43により前後進切替機構15がニュートラルに切り替えられている場合にコントローラ100へニュートラル信号を出力する。
【0059】
そして、コントローラ100は、車速センサ52からの車速検出信号に基づいて、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51の有効、無効を自動で制御するようにしてもよい。例えば、コントローラ100は、車速センサ52からの車速検出信号に基づいて、車速センサ52が検出した車速が予め設定される所定車速以上である場合に、車外PTOスイッチ51によるオン操作を禁止し、車外PTOスイッチ51によるオフ操作を許可する。この場合、コントローラ100は、車外PTOスイッチ51からPTOスイッチオン信号が入力されてもこのオン操作を無効とし、PTO駆動機構20のPTO非駆動状態からPTO駆動状態への切り替えを規制し、当該切り替えを行わない。そして、コントローラ100は、車外PTOスイッチ51からPTOスイッチオフ信号が入力された場合にはこのオフ操作を有効とし、PTO駆動機構20のPTO駆動状態からPTO非駆動状態への切り替えを受け付けて、当該切り替えを行う。なおこの場合、コントローラ100は、車内PTOスイッチ50によるオン操作、及び、オフ操作については通常通り許可するようにしてもよい。また、上記所定車速は、例えば、実車評価等に基づいて、トラクタ1が定置状態にある状態での車速(=0)、第2の作業者(補助者)が適正に補助作業を行うことができる車速等に応じて予め設定され記憶部に記憶されている。
【0060】
次に、図10のフローチャートを参照して、車速検出信号に基づいた制御の一例を説明する。
【0061】
まず、コントローラ100は、車速センサ52からの車速検出信号に基づいて、車速センサ52が検出した車速が所定車速以上であるか否かを判定する(ステップST31)。
【0062】
コントローラ100は、車速が所定車速以上であると判定した場合(ステップST31:Yes)、車外PTOスイッチ51によるオン操作を禁止し、車外PTOスイッチ51によるオフ操作を許可し(ステップST32)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0063】
コントローラ100は、車速が所定車速未満であると判定した場合(ステップST31:No)、車外PTOスイッチ51によるオン操作、及び、車外PTOスイッチ51によるオフ操作をともに許可し(ステップST33)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0064】
この結果、トラクタ1は、例えば、このトラクタ1が定置状態での作業中に移動してしまった場合や第2の作業者(補助者)の補助作業に適した車速以上になった場合に、意図せず車外PTOスイッチ51が操作されPTO駆動機構20がPTO駆動状態となり作業機の駆動がオンとなることを防止することができる。またこの場合に、トラクタ1は、必要に応じて車外PTOスイッチ51を操作して確実にPTO駆動機構20をPTO非駆動状態とし作業機の駆動をオフにすることができる。この結果、トラクタ1は、安全性を向上し、作業性を向上することができる。
【0065】
また、コントローラ100は、優先スイッチ53からの優先スイッチオン信号、優先スイッチオフ信号に基づいて、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51の有効、無効を自動で制御するようにしてもよい。例えば、コントローラ100は、優先スイッチ53からの優先スイッチオン信号、優先スイッチオフ信号に基づいて、優先スイッチ53がオンである、すなわち、優先スイッチ53による車外優先操作が行われたと判定した場合に車内PTOスイッチ50によるオン操作を禁止する。この場合、コントローラ100は、車内PTOスイッチ50からPTOスイッチオン信号が入力されてもこのオン操作を無効とし、PTO駆動機構20のPTO非駆動状態からPTO駆動状態への切り替えを規制し、当該切り替えを行わない。なおこの場合、コントローラ100は、車外PTOスイッチ51によるオン操作、及び、オフ操作を通常通り許可すると共に、車内PTOスイッチ50によるオフ操作についても通常通り許可するようにしてもよい。
【0066】
次に、図11のフローチャートを参照して、優先スイッチオン信号、優先スイッチオフ信号に基づいた制御の一例を説明する。
【0067】
まず、コントローラ100は、優先スイッチ53からの優先スイッチオン信号、優先スイッチオフ信号に基づいて、優先スイッチ53がオン(ON)であるか否かを判定する(ステップST41)。
【0068】
コントローラ100は、優先スイッチ53がオンであると判定した場合(ステップST41:Yes)、すなわち、優先スイッチ53による車外優先操作が行われたと判定した場合に車内PTOスイッチ50によるオン操作を禁止し(ステップST42)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0069】
コントローラ100は、優先スイッチ53がオフであると判定した場合(ステップST41:No)、すなわち、優先スイッチ53による車外優先操作が行われていないと判定した場合に車内PTOスイッチ50によるオン操作を許可し(ステップST43)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0070】
この結果、トラクタ1は、例えば、第2の作業者(補助者)が補助作業をしている場合に、第2の作業者の意思による作業機の駆動のオン、オフを優先することができ、第1の作業者によって意図せず車内PTOスイッチ50が操作されPTO駆動機構20がPTO駆動状態となり作業機の駆動がオンとなることを防止することができる。この場合であっても、トラクタ1は、車内PTOスイッチ50によるオフ操作については許容されるので、必要に応じて車内PTOスイッチ50を操作することで確実にPTO駆動機構20をPTO非駆動状態とし作業機の駆動をオフにすることができる。この結果、トラクタ1は、安全性を向上し、作業性を向上することができる。
【0071】
また、コントローラ100は、シートスイッチ54からのシートスイッチオン信号、シートスイッチオフ信号に基づいて、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51の有効、無効を自動で制御するようにしてもよい。例えば、コントローラ100は、シートスイッチ54からのシートスイッチオン信号、シートスイッチオフ信号に基づいて、シートスイッチ54が作業者の操縦席8からの離席を検出した場合、すなわち、操縦席8に作業者が着座していないと判定した場合に、PTO駆動機構20を非駆動状態とし作業機の駆動をオフとする停止制御を実行可能である。そして、コントローラ100は、当該停止制御にかかわらず、車外PTOスイッチ51によるオン操作、及び、車外PTOスイッチ51よるオフ操作を許可する。この場合、コントローラ100は、車外PTOスイッチ51からPTOスイッチオン信号が入力された場合にはこのオン操作を有効とし、PTO駆動機構20のPTO非駆動状態からPTO駆動状態への切り替えを受け付けて、当該切り替えを行う。同様に、コントローラ100は、車外PTOスイッチ51からPTOスイッチオフ信号が入力された場合にはこのオフ操作を有効とし、PTO駆動機構20のPTO駆動状態からPTO非駆動状態への切り替えを受け付けて、当該切り替えを行う。なおこの場合、コントローラ100は、車内PTOスイッチ50によるオン操作を禁止し、オフ操作を許可するようにしてもよい。
【0072】
次に、図12のフローチャートを参照して、シートスイッチオン信号、シートスイッチオフ信号に基づいた制御の一例を説明する。
【0073】
まず、コントローラ100は、シートスイッチ54からのシートスイッチオン信号、シートスイッチオフ信号に基づいて、作業者が操縦席8から離席しているか否かを判定する(ステップST51)。
【0074】
コントローラ100は、作業者が操縦席8から離席していると判定した場合(ステップST51:Yes)、すなわち、操縦席8に作業者が着座していないと判定した場合、PTO駆動機構20を非駆動状態とし作業機の駆動をオフとする停止制御を実行する(ステップST52)。
【0075】
そして、コントローラ100は、車外PTOスイッチ51によるオン操作、及び、車外PTOスイッチ51よるオフ操作を許可し(ステップST53)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0076】
コントローラ100は、作業者が操縦席8から離席していないと判定した場合(ステップST51:No)、すなわち、操縦席8に作業者が着座していると判定した場合、車内PTOスイッチ50によるオン操作、車内PTOスイッチ50よるオフ操作を共に許可し(ステップST54)、ステップST53の処理に移行する。
【0077】
この結果、トラクタ1は、例えば、作業者が操縦席8から離席すると、自動的に一旦PTO駆動機構20を非駆動状態とし作業機を停止するので、安全性を向上することができる。その上で、トラクタ1は、停止制御中であっても、車外PTOスイッチ51を介して作業機の駆動のオン、オフを円滑に切り替えることができる。この結果、トラクタ1は、安全性を向上し、作業性を向上することができる。
【0078】
また、コントローラ100は、シートスイッチ54からのシートスイッチオン信号、シートスイッチオフ信号、パーキングスイッチ55からのパーキングオン信号、パーキングオフ信号、リニアレバーセンサ56からの前進信号、後進信号、ニュートラル信号等を組み合わせて車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51の有効、無効を自動で制御するようにしてもよい。
【0079】
以下、図13図14のフローチャートを参照して、コントローラ100による上記各種信号に基づいた制御の一例を説明する。
【0080】
図13の制御では、コントローラ100は、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51からのPTOスイッチオン信号に基づいて、車内PTOスイッチ50、あるいは、車外PTOスイッチ51によりオン操作(ON)がなされ、これにより、PTO駆動機構20がPTO駆動状態であるか否かを判定する(ステップST61)。
【0081】
コントローラ100は、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51によりオン操作(ON)がなされていないと判定した場合(ステップST61:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0082】
コントローラ100は、車内PTOスイッチ50、あるいは、車外PTOスイッチ51によりオン操作(ON)がなされたと判定した場合(ステップST61:Yes)、下記のような判定を行う。すなわち、コントローラ100は、リニアレバーセンサ56からのニュートラル信号、シートスイッチ54からのシートスイッチオフ信号、パーキングスイッチ55からのパーキングオフ信号に基づいて、前後進切替機構15がニュートラルであり(リニアシフトN)、かつ、作業者が操縦席8から離席しており(シートスイッチOFF)、かつ、パーキングが解除されている(パーキングOFF)か否かを判定する(ステップST62)。
【0083】
コントローラ100は、前後進切替機構15がニュートラルであり、かつ、作業者が操縦席8から離席しており、かつ、パーキングが解除されていると判定した場合(ステップST62:Yes)、所定時間経過後、例えば、8秒後にPTO駆動機構20をPTO駆動状態からPTO非駆動状態に切り替えて、PTO駆動を停止し(ステップST63)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0084】
これにより、トラクタ1は、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51によりオン操作がなされ、PTO駆動を開始した場合であっても、例えば、作業者が操縦席8から離席し、前後進切替機構15がニュートラルであり、かつ、パーキングが解除されている状態である場合には、所定時間経過後に自動的にPTO駆動を停止することができるので、安全性を向上することができる。
【0085】
コントローラ100は、前後進切替機構15がニュートラルでない場合、作業者が操縦席8に着座している場合、あるいは、パーキングが作動していると判定した場合(ステップST72:No)、PTO駆動機構20をPTO駆動状態で維持し、PTO駆動を継続し(ステップST74)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0086】
図14の制御では、コントローラ100は、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51からのPTOスイッチオン信号に基づいて、車内PTOスイッチ50、あるいは、車外PTOスイッチ51によりオン操作(ON)がなされ、これにより、PTO駆動機構20がPTO駆動状態であるか否かを判定する(ステップST71)。
【0087】
コントローラ100は、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51によりオン操作(ON)がなされていないと判定した場合(ステップST71:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0088】
コントローラ100は、車内PTOスイッチ50、あるいは、車外PTOスイッチ51によりオン操作(ON)がなされたと判定した場合(ステップST71:Yes)、下記のような判定を行う。すなわち、コントローラ100は、リニアレバーセンサ56からのニュートラル信号、シートスイッチ54からのシートスイッチオフ信号、パーキングスイッチ55からのパーキングオフ信号に基づいて、前後進切替機構15がニュートラルであり(リニアシフトN)、かつ、作業者が操縦席8から離席しており(シートスイッチOFF)、かつ、パーキングが作動している(パーキングON)か否かを判定する(ステップST72)。
【0089】
コントローラ100は、前後進切替機構15がニュートラルであり、かつ、作業者が操縦席8から離席しており、かつ、パーキングが作動していると判定した場合(ステップST72:Yes)、例えば、警報のためのブザー102(図7参照)を吹鳴し、その後も、PTO駆動機構20をPTO駆動状態で維持し、PTO駆動を継続し(ステップST73)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0090】
これにより、トラクタ1は、車内PTOスイッチ50、車外PTOスイッチ51によりオン操作がなされ、PTO駆動を開始した場合であっても、例えば、作業者が操縦席8から離席し、前後進切替機構15がニュートラルであり、かつ、パーキングが作動している状態である場合には、PTO駆動を継続した上で、ブザー102により所定時間、警報を発報することで、安全性を向上することができる。
【0091】
コントローラ100は、前後進切替機構15がニュートラルでない場合、作業者が操縦席8に着座している場合、あるいは、パーキングが解除されていると判定した場合(ステップST72:No)、警報のためのブザー102(図7参照)を吹鳴せず、PTO駆動機構20をPTO駆動状態で維持し、PTO駆動を継続し(ステップST74)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。なおこの場合、コントローラ100は、前後進切替機構15がニュートラルであり、かつ、作業者が操縦席8から離席しており、かつ、パーキングが解除されていると判定した場合には、上述の図14のステップST73の処理によりPTO駆動を停止する。
【0092】
以上で説明した実施形態に係るトラクタ1によれば、機体後部1Rの作業機を駆動する駆動状態と当該作業機の駆動を停止した非駆動状態とに切り替え可能であるPTO駆動機構20と、車内に設けられ、PTO駆動機構20を非駆動状態から駆動状態に切り替えるオン操作と、PTO駆動機構20を駆動状態から非駆動状態に切り替えるオフ操作とを行う車内PTOスイッチ50と、車外の機体後部1Rに設けられ、PTO駆動機構20を非駆動状態から駆動状態に切り替えるオン操作と、PTO駆動機構20を駆動状態から非駆動状態に切り替えるオフ操作とを行う車外PTOスイッチ51とを備える。したがって、トラクタ1は、例えば、作業者が車外の機体後部1Rに設けられた車外PTOスイッチ51によってオン操作、オフ操作を行うことで、PTO駆動機構20のPTO非駆動状態とPTO駆動状態とを切り替えることができるので、作業性を向上することができる。
【0093】
なお、上述した本発明の実施形態に係る作業車両は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0094】
以上の説明では、第1制御装置、第2制御装置、第3制御装置は、コントローラ100によって兼用されるものとして説明したが、これに限らず、それぞれコントローラ100とは別個に設けられ、コントローラ100と相互に検出信号や駆動信号、制御指令等の情報の授受を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 トラクタ(作業車両)
1R 機体後部
1F 機体前部
3a フェンダ
4 エンジン
5 変速装置
8 操縦席
9 キャビン
20 PTO駆動機構
38 PTOクラッチ機構
39 PTO変速機構
40 PTO軸
43 前後進切替レバー
44 Hi−Lo切替スイッチ
45 主変速操作レバー
46 第1副変速操作レバー
47 第2副変速操作レバー
48 2WD/4WD切替レバー
49 PTO変速操作レバー
50 車内PTOスイッチ(車内操作部)
51 車外PTOスイッチ(車外操作部)
52 車速センサ(車速検出装置)
53 優先スイッチ(優先操作部)
54 シートスイッチ(離席検出装置)
55 パーキングスイッチ
56 リニアレバーセンサ
100 コントローラ(第1制御装置、第2制御装置、第3制御装置)
101 PTO昇圧ソレノイド
102 ブザー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14