【実施例1】
【0016】
図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図であり、
図2は、実施例の第1、第2の圧縮部の上から見た横断面図である。
【0017】
図1に示すように、実施例のロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体10の下部に配置された圧縮部12と、圧縮機筐体10の上部に配置され、回転軸15を介して圧縮部12を駆動するモータ11と、を備えている。
【0018】
モータ11のステータ111は、円筒状に形成され、圧縮機筐体10の内周面に焼きばめされて固定されている。モータ11のロータ112は、円筒状のステータ111の内部に配置され、モータ11と圧縮部12とを機械的に接続する回転軸15に焼きばめされて固定されている。
【0019】
圧縮部12は、第1の圧縮部12Sと、第1の圧縮部12Sと並列に配置され第1の圧縮部12Sの上側に積層された第2の圧縮部12Tと、を備えている。
図2に示すように、第1、第2の圧縮部12S、12Tは、第1、第2側方張出し部122S、122Tに、放射状に第1、第2吸入孔135S、135T、第1、第2ベーン溝128S、128Tが設けられた環状の第1、第2シリンダ121S、121Tを備えている。
【0020】
図2に示すように、第1、第2シリンダ121S、121Tには、モータ11の回転軸15と同心に、円形の第1、第2シリンダ内壁123S、123Tが形成されている。第1、第2シリンダ内壁123S、123T内には、シリンダ内径よりも小さい外径の第1、第2環状ピストン125S、125Tが夫々配置され、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tと、第1、第2環状ピストン125S、125Tとの間に、冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する第1、第2作動室130S、130Tが形成される。
【0021】
第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tから径方向に、シリンダ高さ全域に亘る第1、第2ベーン溝128S、128Tが形成され、第1、第2ベーン溝128S、128T内に、夫々平板状の第1、第2ベーン127S、127Tが、摺動自在に嵌合されている。
【0022】
図2に示すように、第1、第2ベーン溝128S、128Tの奥部には、第1、第2シリンダ121S、121Tの外周部から第1、第2ベーン溝128S、128Tに連通するように第1、第2スプリング穴124S、124Tが形成されている。第1、第2スプリング穴124S、124Tには、第1、第2ベーン127S、127Tの背面を押圧するベーンスプリング(図示せず)が挿入されている。ロータリ圧縮機1の起動時は、このベーンスプリングの反発力により、第1、第2ベーン127S、127Tが、第1、第2ベーン溝128S、128T内から第1、第2作動室130S、130T内に突出し、その先端が、第1、第2環状ピストン125S、125Tの外周面に当接し、第1、第2ベーン127S、127Tにより、第1、第2作動室130S、130Tが、第1、第2吸入室131S、131Tと、第1、第2圧縮室133S、133Tとに区画される。
【0023】
また、第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2ベーン溝128S、128Tの奥部と圧縮機筐体10内とを、
図1に示す開口部Rで連通して圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒ガスを導入し、第1、第2ベーン127S、127Tに、冷媒ガスの圧力により背圧をかける第1、第2圧力導入路129S、129Tが形成されている。
【0024】
第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2吸入室131S、131Tに外部から冷媒を吸入するために、第1、第2吸入室131S、131Tと外部とを連通させる第1、第2吸入孔135S、135Tが設けられている。
【0025】
また、
図1に示すように、第1シリンダ121Sと第2シリンダ121Tの間には、中間仕切板140が配置され、第1シリンダ121Sの第1作動室130Sと第2シリンダ121Tの第2作動室130Tとを区画、閉塞している。第1シリンダ121Sの下端部には、下端板160Sが配置され、第1シリンダ121Sの第1作動室130Sを閉塞している。また、第2シリンダ121Tの上端部には、上端板160Tが配置され、第2シリンダ121Tの第2作動室130Tを閉塞している。
【0026】
下端板160Sには、副軸受部161Sが形成され、副軸受部161Sに、回転軸15の副軸部151が回転自在に支持されている。上端板160Tには、主軸受部161Tが形成され、主軸受部161Tに、回転軸15の主軸部153が回転自在に支持されている。
【0027】
回転軸15は、互いに180°位相をずらして偏心させた第1偏心部152Sと第2偏心部152Tとを備え、第1偏心部152Sは、第1の圧縮部12Sの第1環状ピストン125Sに回転自在に嵌合し、第2偏心部152Tは、第2の圧縮部12Tの第2環状ピストン125Tに回転自在に嵌合している。
【0028】
回転軸15が回転すると、第1、第2環状ピストン125S、125Tが、第1、第2シリンダ内壁123S、123Tに沿って第1、第2シリンダ121S、121T内を
図2の反時計回りに公転し、これに追随して第1、第2ベーン127S、127Tが往復運動する。この第1、第2環状ピストン125S、125T及び第1、第2ベーン127S、127Tの運動により、第1、第2吸入室131S、131T及び第1、第2圧縮室133S、133Tの容積が連続的に変化し、圧縮部12は、連続的に冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する。
【0029】
図1に示すように、下端板160Sの下側には、下マフラーカバー170Sが配置され、下端板160Sとの間に下マフラー室180Sを形成している。そして、第1の圧縮部12Sは、下マフラー室180Sに開口している。すなわち、下端板160Sの第1ベーン127S近傍には、第1シリンダ121Sの第1圧縮室133Sと下マフラー室180Sとを連通する第1吐出孔190S(
図2参照)が設けられ、第1吐出孔190Sには、圧縮された冷媒ガスの逆流を防止するリード弁型の第1吐出弁200Sが配置されている。
【0030】
下マフラー室180Sは、環状に形成された1つの室であり、第1の圧縮部12Sの吐出側を、下端板160S、第1シリンダ121S、中間仕切板140、第2シリンダ121T及び上端板160Tを貫通する冷媒通路136(
図2参照)を通して上マフラー室180T内に連通させる連通路の一部である。下マフラー室180Sは、吐出冷媒ガスの圧力脈動を低減させる。また、第1吐出弁200Sに重ねて、第1吐出弁200Sの撓み開弁量を制限するための第1吐出弁押さえ201Sが、第1吐出弁200Sとともにリベットにより固定されている。第1吐出孔190S、第1吐出弁200S及び第1吐出弁押さえ201Sは、下端板160Sの第1吐出弁部を構成している。
【0031】
図1に示すように、上端板160Tの上側には、上マフラーカバー170Tが配置され、上端板160Tとの間に上マフラー室180Tを形成している。上端板160Tの第2ベーン127T近傍には、第2シリンダ121Tの第2圧縮室133Tと上マフラー室180Tとを連通する第2吐出孔190T(
図2参照)が設けられ、第2吐出孔190Tには、圧縮された冷媒ガスの逆流を防止するリード弁型の第2吐出弁200Tが配置されている。また、第2吐出弁200Tに重ねて、第2吐出弁200Tの撓み開弁量を制限するための第2吐出弁押さえ201Tが、第2吐出弁200Tとともにリベットにより固定されている。上マフラー室180Tは、吐出冷媒の圧力脈動を低減させる。第2吐出孔190T、第2吐出弁200T及び第2吐出弁押さえ201Tは、上端板160Tの第2吐出弁部を構成している。第1、第2吐出弁部の詳細については、後述する。
【0032】
第1シリンダ121S、下端板160S、下マフラーカバー170S、第2シリンダ121T、上端板160T、上マフラーカバー170T及び中間仕切板140は、複数の通しボルト175等により一体に締結されている。通しボルト175等により一体に締結された圧縮部12のうち、上端板160Tの外周部が、圧縮機筐体10にスポット溶接により固着され、圧縮部12を圧縮機筐体10に固定している。
【0033】
円筒状の圧縮機筐体10の外周壁には、軸方向に離間して下部から順に、第1、第2貫通孔101、102が、第1、第2吸入管104、105を通すために設けられている。また、圧縮機筐体10の外側部には、独立した円筒状の密閉容器からなるアキュムレータ25が、アキュムホルダー252及びアキュムバンド253により保持されている。
【0034】
アキュムレータ25の天部中心には、冷凍サイクルの蒸発器に接続するシステム接続管255が接続され、アキュムレータ25の底部に設けられた底部貫通孔257には、一端がアキュムレータ25の内部上方まで延設され、他端が、第1、第2吸入管104、105の他端に接続される第1、第2低圧連絡管31S、31Tが接続されている。
【0035】
冷凍サイクルの低圧冷媒をアキュムレータ25を介して第1、第2の圧縮部12S、12Tに導く第1、第2低圧連絡管31S、31Tは、吸入部としての第1、第2吸入管104、105を介して第1、第2シリンダ121S、121Tの第1、第2吸入孔135S、135T(
図2参照)に接続されている。すなわち、第1、第2吸入孔135S、135Tは、冷凍サイクルの蒸発器に並列に接続されている。
【0036】
圧縮機筐体10の天部には、冷凍サイクルと接続し高圧冷媒ガスを冷凍サイクルの凝縮器側に吐出する吐出部としての吐出管107が接続されている。すなわち、第1、第2吐出孔190S、190Tは、冷凍サイクルの凝縮器に接続されている。
【0037】
圧縮機筐体10内には、およそ第2シリンダ121Tの高さまで潤滑油が封入されている。また、潤滑油は、回転軸15の下部に挿入された羽根ポンプ(図示せず)により、回転軸15の下端部に取付けられた給油パイプ16から吸上げられ、圧縮部12を循環し、摺動部品の潤滑を行なうと共に、圧縮部12の微小隙間のシールをしている。
【0038】
次に、
図3〜
図6を参照して実施例のロータリ圧縮機1の特徴的な構成である第1、第2吐出弁部について説明する。
図3は、実施例の第1、第2吐出弁及び第1、第2吐出弁押さえを取付けた上、下端板の部分平面図であり、
図4は、
図3のA−A線に沿う部分断面図であり、
図5は、
図3のB−B線に沿う部分断面図であり、
図6は、カシメにより第1、第2吐出弁押さえが歪んだ状態を示す
図5と同様の図である。
【0039】
図3〜
図6に示すように、ロータリ圧縮機1の圧縮部12(
図1参照)の下端板160S及び上端板160Tには、第1、第2吐出孔190S、190T(
図4参照)を開閉するリード弁型の第1、第2吐出弁200S、200T及び第1、第2吐出弁押さえ201S、201Tを収容し、底部に第1、第2リベット203S、203Tにより取付けるための、第1、第2溝部163S、163Tが形成されている。
【0040】
第1、第2溝部163S、163Tの第1、第2吐出孔190S、190T側は、径(幅)が拡大されて第1、第2吐出孔側拡径部163Sb、163Tbが形成され、第1、第2リベット203S、203T側も、径(幅)が拡大されて第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taが形成されている。
【0041】
図5に示すように、第1、第2吐出弁200S、200T及び第1、第2吐出弁押さえ201S、201Tは、第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taの第1、第2リベット孔191S、191T及び自身のリベット孔を通した第1、第2リベット203S、203Tにより、第1、第2溝部163S、163Tの底部に取付けられている。
【0042】
第1、第2吐出孔側拡径部163Sb、163Tbの径(幅)が拡大されているのは、第1、第2吐出孔190S、190Tから吐出され、リード弁型の第1、第2吐出弁200S、200Tを押し開いて噴出する圧縮冷媒ガスの流路を形成するためである。第1、第2吐出孔側拡径部163Sb、163Tbの反リベット側は、段部163Sbb、163Tbbが形成され、さらに流路が拡大されている。
【0043】
第1、第2溝部163S、163Tの第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taは、
図5に示すように、底側が狭く、底側以外が広い半円形階段状に形成されている。第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taの底側の径(幅)Hdは、第1、第2吐出弁押さえ201S、201Tの幅より0.2mm程度広くされている。
【0044】
カシメ機により、第1、第2カシメ部203Sa、203Taをカシメるために、ポンチP(
図9参照)に、第1、第2リベット203S、203Tの中心軸Zを中心とするロゼット状軸運動(円錐形の花びら状の軌跡Rを描く運動)を行なわせるときに、ポンチPが、第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taの内壁部に干渉しないように、第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taの底側以外の径(幅)Haを、底側の径(幅)Hdよりも30〜40%大きくしている。
【0045】
第1、第2溝部163S、163T(第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Ta及び第1、第2吐出孔側拡径部163Sb、163Tbを含む)の底部の厚さt
sは、第1、第2吐出孔190S、190T(
図4参照)内に留まった圧縮冷媒ガスが、第1、第2作動室130S、130T(
図2参照)に逆流して冷媒圧縮の体積効率が低下するのを防ぐために、できるだけ薄くしている。
【0046】
また、
図5に示すように、第1、第2溝部163S、163T(第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taを含む)の底部までの深さをh
m、第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taの半円形階段の段部163Saa、163Taaまでの深さをh
z、第1、第2吐出弁200S、200Tの厚さをt
v(
図4参照)、第1、第2吐出弁押さえ201S、201Tの厚さをt
oとするとき、h
m−(t
v+0.4t
o)≧h
z≧h
m−(t
v+0.8t
o)の関係を有するようにしている。すなわち、第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taの底部から段部163Saa、163Taaまでの高さは、第1、第2吐出弁押さえ201S、201Tの厚さt
oの40〜80%の高さとしている(第1、第2吐出弁200S、200Tの厚さt
vは、薄いので無視してもよい)。
【0047】
以上説明した、実施例の第1、第2吐出弁部の構成によれば、第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taの底側の径(幅)Hdを、第1、第2吐出弁押さえ201S、201Tの幅と略同じにして狭くしたので、第1、第2リベット203S、203Tの第1、第2カシメ部203Sa、203TaをポンチPでカシメるとき、カシメ荷重がかかっても、曲げ応力が発生して底部が歪むことはない。
【0048】
また、第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taの底側以外の径(幅)Haを、底側の径(幅)Hdよりも30〜40%大きくしているので、カシメ機により、ポンチのロゼット状軸運動を行なうことができる。
【0049】
また、
図6に示すように、第1、第2リベット203S、203Tの第1、第2カシメ部203Sa、203TaをポンチPでカシメたとき、第1、第2吐出弁押さえ201S、201Tの上部201Sa、Taが潰れて側部に突出しても、上部201Sa、Taが第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taの半円形階段の段部163Saa、163Taaの上側に位置しているので、第1、第2リベット側拡径部163Sa、163Taの内壁を押し広げて下、上端板160S、160Tに歪を発生させることはない。
【0050】
以上、本発明の実施例として、第1、第2の圧縮部12S、12Tを備えるツインロータリ圧縮機1について説明したが、本発明は、圧縮部が1つのシングルロータリ圧縮機、第1の圧縮部の吐出冷媒を第2の圧縮部でさらに圧縮する2段圧縮ロータリ圧縮機などにも適用することができる。