【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。また実施例等で用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
ITO:インジウム錫酸化物
PEDOT:ポリエチレンジオキシチオフェン
PSS:ポリスチレンスルホネート
PC
70BM:フェニル C71 ブチリックアシッドメチルエステル
Eg:バンドギャップ
HOMO:最高被占分子軌道
Isc:短絡電流密度
Voc:開放電圧
FF:フィルファクター
η:光電変換効率
なお、
1H−NMR測定にはFT−NMR装置((株)日本電子製JEOL JNM−EX270)を用いた。
【0075】
また、平均分子量(数平均分子量、重量平均分子量)はGPC装置(クロロホルムを送液したTOSOH社製、高速GPC装置HLC−8320GPC)を用い、絶対検量線法によって算出した。重合度nは以下の式で算出した。
重合度n=[(重量平均分子量)/(繰り返しユニットの分子量)]
また、光吸収端波長は、ガラス上に約60nmの厚さに形成した薄膜について、日立製作所(株)製のU−3010型分光光度計を用いて測定した薄膜の紫外可視吸収スペクトル(測定波長範囲:300〜900nm)から得た。
【0076】
バンドギャップ(Eg)は下式により、光吸収端波長から算出した。なお、薄膜はクロロホルムを溶媒に用いてスピンコート法により形成した。
Eg(eV)=1240/薄膜の光吸収端波長(nm)
また、最高被占分子軌道(HOMO)準位は、ITOガラス上に約60nmの厚さに形成した薄膜について、表面分析装置(大気中紫外線光電子分光装置AC−2型、理研機器(株)製)を用いて測定した。なお、薄膜はクロロホルムを溶媒に用いてスピンコート法により形成した。
【0077】
合成例1
化合物A−1を式1に示す方法で合成した。なお、合成例1記載の化合物(1−c)はアドバンスドマテリアルズ(Advanced Materials)、2010年、22巻、5240−5244頁に記載されている方法を、化合物(1−g)はジャーナルオブザアメリカンケミカルソサエティ(Journal of the American Chemical Society)、2009年、131巻、7792−7799頁に記載されている方法を参考にして合成した。
【0078】
【化8】
【0079】
化合物(1−a)(アルドリッチ社製)20.0g(68mmol)をエタノール750mlにけん濁させ、メカニカルスターラーを用いて撹拌しているところに、テトラヒドロホウ酸ナトリウム37.8g(1mol)を5回にわけ、1時間かけて0℃で加えた。反応溶混合物を0℃で5時間撹拌した後、室温で12時間放置した。エタノールをおよそ250mlになるまで減圧留去した後、水100mlを0℃でゆっくり加えた。クロロホルム200mlを加えた後、水層および有機層に不溶の固体をろ別した。水層をクロロホルム100mlで3回抽出した後、集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。クロロホルムを減圧留去し、化合物(1−b)を薄橙色固体(10.2g、収率56%)として得た。化合物(1−b)はこれ以上精製することなく、以下の反応に用いた。
【0080】
上記化合物(1−b)1.08g(4.07mmol)および化合物(1−c)1.9g(4.07mmol)のエタノール溶液50mlにメタンスルホン酸(東京化成工業(株))1滴を加え、6時間還流した。反応溶液を室温まで冷却した後、炭酸ナトリウムを加えて中和し、溶液をろ過、ついで減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより化合物(1−d)を黄色オイル(2.1g、収率73%)として得た。化合物(1−d)の
1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3):7.90(s,2H),7.27−7.19(m,6H),6.95−6.88(m,2H),3.69(d,J=5.9Hz,4H),1.67−1.27(m,18H),0.97−0.86(m,12H)ppm。
【0081】
上記化合物(1−d)1.3g(1.85mmol)および2−(tributylstannyl)thiophene(アルドリッチ社製)2.1g(5.5mmol)のトルエン溶液60mlを窒素でバブリングした後、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム触媒(東京化成工業(株)製)100mgを加え、8時間還流した。反応溶液を室温まで冷却した後、水50mlを加え、有機層を水で2回、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで溶媒を乾燥させた後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製することにより化合物(1−e)を黄色固体(1.2g、収率92%)として得た。化合物(1−e)の
1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3):8.15(s,2H),7.88(d,J=4.1Hz,2H),7.49(d,J=5.1Hz,2H),7.40(m,2H),7.28−7.24(m,4H),7.17(m,2H),6.93(m,2H),3.78(d,J=5.9Hz,4H),1.71(m,2H),1.61−1.29(m,6H),0.92(t,J=7.0Hz,12H)ppm。
【0082】
上記化合物(1−e)1.2g(1.7mmol)のクロロホルム溶液50mlにN−ブロモスクシンイミド(東京化成工業(株)製)600mg(3.4mmol)を加え、3時間室温で撹拌した。水50mlを加えた後、有機層を水で2回、次いで飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、ヘキサン:クロロホルム=3:1)で精製することにより化合物(1−f)を黄色固体(1.1g、収率75%)として得た。化合物(1−f)の
1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3):8.06(s,2H),7.54(d,J=4.1Hz,2H),7.49(s,2H),7.21(d,J=8.0Hz,2H),7.13−7.10(m,4H),6.97(d,J=8.0Hz,2H),3.88(d,J=5.1Hz,4H),1.73(m,2H),1.52−1.30(m,16H),0.94(t,J=7.3Hz,12H),ppm。
【0083】
上記化合物(1−f)129mg(0.15mmol)および化合物(1−g)116mg(0.15mmol)をトルエン(和光純薬工業(株)製)10mlに溶解させたところに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業(株)製)8mg、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(東京化成工業(株)製)を13mg加え、窒素雰囲気下、110℃で12時間撹拌した。次いで、ブロモベンゼン(東京化成工業(株)製)10mgを加え、110℃にて1時間撹拌した。次いで、2−(tributylstannyl)thiophene(アルドリッチ社製)40mgを加え、110℃にてさらに1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール100mlに注いだ。析出した固体をろ取し、メタノール、水、アセトンの順に洗浄した。次いでソックスレー抽出器を用いてアセトン、ヘキサンの順で洗浄した。次に、得られた固体をクロロホルムに溶解させ、セライト(ナカライテスク(株)製)を通して濾過した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を再びクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(溶離液:クロロホルム)を通した後に濃縮し、メタノールに再沈澱させ、化合物A−1(40mg)を得た。重量平均分子量は8,800、数平均分子量は6,200、重合度nは7.7であった。また、光吸収端波長は695nm、バンドギャップ(Eg)は1.78eV、最高被占分子軌道(HOMO)準位は−5.03eVであった。
【0084】
合成例2
化合物A−2を式2に示す方法で合成した。なお、合成例2記載の化合物(2−b)はジャーナルオブポリマーサイエンス:パートA(Journal of PolymerScience:PartA)、2010年、48巻、4823−4834頁に記載されている方法を参考にして合成した。
【0085】
【化9】
【0086】
上記化合物(1−b)4.0g(15mmol)およびベンジル(東京化成工業(株)製)3.16g(15mmol)のクロロホルム溶液120mlに濃硫酸1滴を室温で加え、反応溶液を5時間還流した。反応溶液を室温まで冷やした後、5%炭酸ナトリウム水溶液50mlを加え、有機層を水100ml、ついで飽和食塩水100mlで洗浄した。溶媒を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧留去した。粗成生成物をメタノールで洗浄し、化合物(2−a)を薄黄色固体(5.2g、収率79%)として得た。化合物(2−a)の
1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3):7.91(s,2H),7.65(m,4H),7.38(m,6H)ppm。
【0087】
上記化合物(2−a)1.0g(2.26mmol)、化合物(2−b)(2.2g,6.79mmol)、りん酸三カリウム1.44g(6.79mmol)およびジメチルホルムアミド(ナカライテスク(株)製)30mlに[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(アルドリッチ社製)100mgを加え100℃で5時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル50mlおよび水50mlを加えた後、セライト(ナカライテスク(株)を通してろ過し、有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、ヘキサン:クロロホルム=1:1)で精製することにより化合物(2−c)を橙色固体(1.2g、収率64%)として得た。化合物(2−c)の
1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3):8.10(s,2H),7.75(m,6H),7.38(m,6H),7.11(s,2H),2.68(t,J=7.6Hz,4H),1.71(m,4H),1.39−1.29(m,20H),0.88(t,J=7.0Hz,6H)ppm。
【0088】
上記化合物(2−c)1.01g(1.5mmol)のクロロホルム溶液40mlにN−ブロモスクシンイミド(東京化成工業(株)製)533mg(3.0mmol)を加え、3時間室温で撹拌した。水50mlを加えた後、有機層を水で2回、次いで飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、クロロホルム)で精製することにより化合物(2−d)を黄色固体(930mg、収率75%)として得た。化合物(2−d)の
1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3):8.03(s,2H),7.72−7.68(m,4H),7.52(s,2H),7.42−7.39(m,6H),2.62(t,J=7.3Hz,4H),1.64(m,4H),1.36−1.29(m,20H),0.89(t,J=7.0Hz,6H)ppm。
【0089】
上記化合物(2−d)124mg(0.15mmol)および化合物(1−g)116mg(0.15mmol)をトルエン(和光純薬工業(株)製)8mlに溶解させたところに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業(株)製)8mg、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(東京化成工業(株)製)を13mg加え、窒素雰囲気下、110℃で12時間撹拌した。次いで、ブロモベンゼン(東京化成工業(株)製)10mgを加え、110℃にて1時間撹拌した。次いで、2−(tributylstannyl)thiophene(アルドリッチ社製)40mgを加え、110℃にてさらに1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール100mlに注いだ。析出した固体をろ取し、メタノール、水、アセトンの順に洗浄した。次いでソックスレー抽出器を用いてアセトン、ヘキサンの順で洗浄した。次に、得られた固体をクロロホルムに溶解させ、セライト(ナカライテスク(株)製)を通して濾過した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を再びクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(溶離液:クロロホルム)を通した後に濃縮し、メタノールに再沈澱させ、化合物A−2(110mg)を得た。重量平均分子量は18,600、数平均分子量は13,500、重合度nは16であった。また、光吸収端波長は703nm、バンドギャップ(Eg)は1.76eV、最高被占分子軌道(HOMO)準位は−5.08eVであった。
【0090】
合成例3
化合物A−3を式3に示す方法で合成した。なお、合成例3記載の化合物(3−a)はマクロモレキュルズ(Macromolecules)、2010年、43巻、9779−9786頁に記載されている方法を参考にして合成した。
【0091】
【化10】
【0092】
化合物(2−a)880mg(2.0mmol)および化合物(3−a)1.4g(6.0mmol)のトルエン20ml溶液を窒素でバブリングした後、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム触媒(東京化成工業(株)製)80mgを加え、6時間還流した。反応溶液を室温まで冷却した後、水50mlを加え、有機層を水で2回、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで溶媒を乾燥させた後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、ヘキサン:クロロホルム=1:1)で精製することにより化合物(3−b)を黄色固体(1.2g、収率84%)として得た。化合物(3−b)の
1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3):8.10(s,2H),7.75(m,6H),7.38(m,6H),7.08(s,2H),2.62(d,J=7.0Hz,4H),1.63(m,1H),1.4−1.2(m,16H),0.92(m,6H)ppm。
【0093】
上記化合物(3−b)1.01g(1.5mmol)のクロロホルム溶液40mlにN−ブロモスクシンイミド(東京化成工業(株)製)533mg(3.0mmol)を加え、3時間室温で撹拌した。水50mlを加えた後、有機層を水で2回、次いで飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液、クロロホルム)で精製することにより化合物(3−c)を黄色固体(890mg、収率72%)として得た。化合物(3−c)の
1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3):8.06(s,2H),7.71(m,4H),7.53(s,2H),7.40(m,6H),2.56(d,J=7.0Hz,4H),1.69(m,2H),1.4−1.3(m,16H),0.9−0.8(m,12H)ppm。
【0094】
上記化合物(3−c)124mg(0.15mmol)および化合物(1−g)116mg(0.15mmol)をトルエン(和光純薬工業(株)製)8mlに溶解させたところに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業(株)製)8mg、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(東京化成工業(株)製)を13mg加え、窒素雰囲気下、110℃で12時間撹拌した。次いで、ブロモベンゼン(東京化成工業(株)製)10mgを加え、110℃にて1時間撹拌した。次いで、2−(tributylstannyl)thiophene(アルドリッチ社製)40mgを加え、110℃にてさらに1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール100mlに注いだ。析出した固体をろ取し、メタノール、水、アセトンの順に洗浄した。次いでソックスレー抽出器を用いてアセトン、ヘキサンの順で洗浄した。次に、得られた固体をクロロホルムに溶解させ、セライト(ナカライテスク(株)製)を通して濾過した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を再びクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(溶離液:クロロホルム)を通した後に濃縮し、メタノールに再沈澱させ、化合物A−3(110mg)を得た。重量平均分子量は42,000、数平均分子量は23,000、重合度nは37であった。また、光吸収端波長は678nm、バンドギャップ(Eg)は1.83eV、最高被占分子軌道(HOMO)準位は−5.15eVであった。
【0095】
合成例4
化合物A−4を式4に示す方法で合成した。なお、合成例4記載の化合物(4−a)はアンゲバンテケミ インターナショナルエディション(Angewandte Chem Internatioal Edition)、2011年、50巻、9697−9702頁に記載されている方法を参考にして合成した。
【0096】
【化11】
【0097】
上記化合物(1−f)129mg(0.15mmol)および化合物(4−a)136mg(0.15mmol)をトルエン(和光純薬工業(株)製)8mlに溶解させたところに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業(株)製)8mg、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(東京化成工業(株)製)を13mg加え、窒素雰囲気下、110℃で12時間撹拌した。次いで、ブロモベンゼン(東京化成工業(株)製)10mgを加え、110℃にて1時間撹拌した。次いで、2−(tributylstannyl)thiophene(アルドリッチ社製)40mgを加え、110℃にてさらに1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール100mlに注いだ。析出した固体をろ取し、メタノール、水、アセトンの順に洗浄した。次いでソックスレー抽出器を用いてアセトン、ヘキサンの順で洗浄した。得られた固体をクロロベンゼンに溶解させ、メタノールより再沈澱することで、化合物A−4(112mg)を得た。重量平均分子量は18,000、数平均分子量は11,000、重合度nは14であった。また、光吸収端波長は725nm、バンドギャップ(Eg)は1.71eV、最高被占分子軌道(HOMO)準位は−4.92eVであった。
【0098】
合成例5
化合物A−5を式5に示す方法で合成した。
【0099】
【化12】
【0100】
上記化合物(3−c)124mg(0.15mmol)および化合物(4−a)136mg(0.15mmol)をトルエン(和光純薬工業(株)製)8mlに溶解させたところに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業(株)製)8mg、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(東京化成工業(株)製)を13mg加え、窒素雰囲気下、110℃で12時間撹拌した。次いで、ブロモベンゼン(東京化成工業(株)製)10mgを加え、110℃にて1時間撹拌した。次いで、2−(tributylstannyl)thiophene(アルドリッチ社製)40mgを加え、110℃にてさらに1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール100mlに注いだ。析出した固体をろ取し、メタノール、水、アセトンの順に洗浄した。次いでソックスレー抽出器を用いてアセトン、ヘキサンの順で洗浄した。得られた固体をクロロベンゼンに溶解させ、メタノールより再沈澱することで、化合物A−5(105mg)を得た。重量平均分子量は22,000、数平均分子量は15,000、重合度nは18であった。また、光吸収端波長は708nm、バンドギャップ(Eg)は1.75eV、最高被占分子軌道(HOMO)準位は−5.07eVであった。
【0101】
合成例6
化合物B−1を式6に示す方法で合成した。
【0102】
【化13】
【0103】
化合物(2−a)66mg(0.15mmol)および化合物(1−g)116mg(0.15mmol)をトルエン(和光純薬工業(株)製)8mlに溶解させたところに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業(株)製)8mg、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(東京化成工業(株)製)を13mg加え、窒素雰囲気下、110℃で12時間撹拌した。次いで、ブロモベンゼン(東京化成工業(株)製)10mgを加え、110℃にて1時間撹拌した。次いで、2−(tributylstannyl)thiophene(アルドリッチ社製)40mgを加え、110℃にてさらに1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール100mlに注いだ。析出した固体をろ取し、メタノール、水、アセトンの順に洗浄した。次いでソックスレー抽出器を用いてアセトン、ヘキサンの順で洗浄した。次に、得られた固体をクロロホルムに溶解させ、セライト(ナカライテスク(株)製)を通して濾過した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を再びクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(溶離液:クロロホルム)を通した後に濃縮し、メタノールに再沈澱させ、化合物B−1(80mg)を得た。重量平均分子量は10,200、数平均分子量は9,000、重合度nは14であった。また、光吸収端波長は770nm、バンドギャップ(Eg)は1.61eV、最高被占分子軌道(HOMO)準位は−4.93eVであった。
【0104】
合成例7
化合物B−2を式7に示す方法で合成した。なお、合成例7記載の化合物(7−a)はザジャーナルオブオーガニックケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)、2002年、67巻、9073−9076頁に記載されている方法を参考にして合成した。
【0105】
【化14】
【0106】
化合物(7−a)66.6mg(0.15mmol)および化合物(1−g)116mg(0.15mmol)をトルエン(和光純薬工業(株)製)8mlに溶解させたところに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業(株)製)8mg、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(東京化成工業(株)製)を13mg加え、窒素雰囲気下、110℃で12時間撹拌した。次いで、ブロモベンゼン(東京化成工業(株)製)10mgを加え、110℃にて1時間撹拌した。次いで、2−(tributylstannyl)thiophene(アルドリッチ社製)40mgを加え、110℃にてさらに1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール100mlに注いだ。析出した固体をろ取し、メタノール、水、アセトンの順に洗浄した。次いでソックスレー抽出器を用いてアセトン、ヘキサンの順で洗浄した。次に、得られた固体をクロロホルムに溶解させ、セライト(ナカライテスク(株)製)を通して濾過した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を再びクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(溶離液:クロロホルム)を通した後に濃縮し、メタノールに再沈澱させ、化合物B−2(76mg)を得た。重量平均分子量は7,800、数平均分子量は5,600、重合度nは10であった。また、光吸収端波長は915nm、バンドギャップ(Eg)は1.36eV、最高被占分子軌道(HOMO)準位は−4.91eVであった。
【0107】
合成例8
【0108】
【化15】
【0109】
化合物B−3を式8に示す方法で合成した。なお、合成例8記載の化合物(8−a)はマクロモレキュルズ(Macromolecules)、2010年、43巻、811−820頁に記載されている方法を参考にして合成した。
【0110】
化合物(8−a)111mg(0.15mmol)および化合物(1−g)116mg(0.15mmol)をトルエン(和光純薬工業(株)製)8mlに溶解させたところに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成工業(株)製)8mg、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(東京化成工業(株)製)を13mg加え、窒素雰囲気下、110℃で12時間撹拌した。次いで、ブロモベンゼン(東京化成工業(株)製)10mgを加え、110℃にて1時間撹拌した。次いで、2−(tributylstannyl)thiophene(アルドリッチ社製)40mgを加え、110℃にてさらに1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール100mlに注いだ。析出した固体をろ取し、メタノール、水、アセトンの順に洗浄した。次いでソックスレー抽出器を用いてアセトン、ヘキサンの順で洗浄した。次に、得られた固体をクロロホルムに溶解させ、セライト(ナカライテスク(株)製)を通して濾過した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を再びクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(溶離液:クロロホルム)を通した後に濃縮し、メタノールに再沈澱させ、化合物B−3(90mg)を得た。重量平均分子量は14,100、数平均分子量は11,500、重合度nは14であった。また、光吸収端波長は730nm、バンドギャップ(Eg)は1.70eV、最高被占分子軌道(HOMO)準位は−5.19eVであった。
【0111】
合成例9
化合物B−4を式9に示す方法で合成した。
【0112】
【化16】
【0113】
上記化合物(3−c)124mg(0.15mmol)および化合物(9−a)(アルドリッチ社製)84mg(0.15mmol)をトルエン10mlに溶解させたところに、濃度1M炭酸カリウム水溶液1ml、Aliquat336(アルドリッチ社製)1滴およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム触媒(東京化成工業(株)製)10mgを加え、窒素雰囲気下、100℃で8時間撹拌した。次いで、ブロモベンゼン(東京化成工業(株)製)30mgを加え、100℃にて1時間撹拌した。次いで、フェニルボロン酸(東京化成工業(株)製)50mgを加え、100℃にてさらに1時間撹拌した。撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、メタノール100mlに注いだ。析出した固体をろ取し、メタノール、水、アセトンの順に洗浄した。次いでソックスレー抽出器を用いてアセトン、ヘキサンの順で洗浄した。次に、得られた固体をクロロホルムに溶解させ、セライト(ナカライテスク(株)製)を通して濾過した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を再びクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラム(溶離液:クロロホルム)を通した後に濃縮し、メタノールに再沈殿 させ、化合物B−4(92mg)を得た。重量平均分子量は32,400、数平均分子量は18,400、重合度nは30であった。また、光吸収端波長は600nm、バンドギャップ(Eg)は2.07eV、最高被占分子軌道(HOMO)準位は−5.47であった
実施例1
上記A−1(1mg)とPC
70BM(4mg、Solenne社製)をクロロベンゼン0.25mlの入ったサンプル瓶の中に加え、超音波洗浄機((株)井内盛栄堂製US−2(商品名)、出力120W)中で30分間超音波照射することにより溶液Aを得た。
【0114】
スパッタリング法により正極となるITO透明導電層を120nm堆積させたガラス基板を38mm×46mmに切断した後、ITOをフォトリソグラフィー法により38mm×13mmの長方形状にパターニングした。得られた基板をアルカリ洗浄液(フルウチ化学(株)製、“セミコクリーン”EL56(商品名))で10分間超音波洗浄した後、超純水で洗浄した。
【0115】
この基板を30分間UV/オゾン処理した後に、基板上に正孔輸送層となるPEDOT:PSS水溶液(PEDOT0.8重量%、PPS0.5重量%)をスピンコート法により60nmの厚さに成膜した。ホットプレートにより200℃で5分間加熱乾燥した後、上記の溶液AをPEDOT:PSS層上に滴下し、スピンコート法により膜厚100nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層が形成された基板と陰極用マスクを真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10
−3Pa以下になるまで再び排気し、抵抗加熱法によって、負極となるアルミニウム層を80nmの厚さに蒸着した。以上のように、ストライプ状のITO層とアルミニウム層が交差する部分の面積が5mm×5mmである光起電力素子を作製した。
【0116】
このようにして作製された光起電力素子の正極と負極をヒューレット・パッカード社製ピコアンメーター/ボルテージソース4140Bに接続して、大気中でITO層側から擬似太陽光(山下電装株式会社製 簡易型ソーラシミュレータ YSS−E40、スペクトル形状:AM1.5、強度:100mW/cm
2)を照射し、印加電圧を−1Vから+2Vまで変化させたときの電流値を測定した。この時の短絡電流密度(印加電圧が0Vのときの電流密度の値)は6.49mA/cm
2、開放電圧(電流密度が0になるときの印加電圧の値)は0.78V、フィルファクター(FF)は0.61であり、これらの値から算出した光電変換効率は3.09%であった。なお、フィルファクターと光電変換効率は次式により算出した。
フィルファクター=IVmax(mA・V/cm
2)/(短絡電流密度(mA/cm
2)×開放電圧(V))
(ここで、IVmaxは、印加電圧が0Vから開放電圧値の間で電流密度と印加電圧の積が最大となる点における電流密度と印加電圧の積の値である。)
光電変換効率=[(短絡電流密度(mA/cm
2)×開放電圧(V)×フィルファクター)/擬似太陽光強度(100mW/cm
2)]×100(%)
以下の実施例と比較例におけるフィルファクターと光電変換効率も全て上式により算出した。
【0117】
実施例2
A−1の代わりに上記A−2を用いた他は実施例1と全く同様にして光起電力素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。この時の短絡電流密度は8.23mA/cm
2、開放電圧は0.79V、フィルファクター(FF)は0.57であり、これらの値から算出した光電変換効率は3.71%であった。
【0118】
実施例3
A−1の代わりに上記A−3を用いた他は実施例1と全く同様にして光起電力素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。この時の短絡電流密度は7.21mA/cm
2、開放電圧は0.83V、フィルファクター(FF)は0.53であり、これらの値から算出した光電変換効率は3.17%であった。
【0119】
実施例4
A−1の代わりに上記A−4を用いた他は実施例1と全く同様にして光起電力素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。この時の短絡電流密度は9.03mA/cm
2、開放電圧は0.71V、フィルファクター(FF)は0.60であり、これらの値から算出した光電変換効率は3.85%であった。
【0120】
実施例5
A−1の代わりに上記A−5を用いた他は実施例1と全く同様にして光起電力素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。この時の短絡電流密度は8.62mA/cm
2、開放電圧は0.93V、フィルファクター(FF)は0.53であり、これらの値から算出した光電変換効率は4.25%であった。
【0121】
比較例1
A−1の代わりに上記B−1を用いた他は実施例1と全く同様にして光起電力素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。この時の短絡電流密度は2.01mA/cm
2、開放電圧は0.59V、フィルファクター(FF)は0.31であり、これらの値から算出した光電変換効率は0.37%であった。
【0122】
比較例2
A−1の代わりに上記B−2を用いた他は実施例1と全く同様にして光起電力素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。この時の短絡電流密度は4.40mA/cm
2、開放電圧は0.52V、フィルファクター(FF)は0.55であり、これらの値から算出した光電変換効率は1.26%であった。
【0123】
比較例3
A−1の代わりに上記B−3を用いた他は実施例1と全く同様にして光起電力素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。この時の短絡電流密度は4.14mA/cm
2、開放電圧は0.82V、フィルファクター(FF)は0.31であり、これらの値から算出した光電変換効率は1.05%であった。
【0124】
比較例4
A−1の代わりに上記B−4を用いた他は実施例1と全く同様にして光起電力素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。この時の短絡電流密度は4.64mA/cm
2、開放電圧は1.03V、フィルファクター(FF)は0.38であり、これらの値から算出した光電変換効率は1.82%であった。
【0125】
【表1】
【0126】
表1から明らかなように、一般式(1)で表される構造を有する電子供与性有機材料を用いて作製した光起電力素子(実施例1〜5)は、同様の条件で作製した他の光起電力素子(比較例1〜4)に比べ高い光電変換効率を示した。