(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[現像液の精製方法]
本発明の現像液の精製方法は、化学増幅型レジスト組成物を用いてネガ型のパターンを形成する方法に用いられる有機溶媒を主成分とする現像液に適用されるものである。当該精製方法は、孔径0.05μm以下の濾材(I)を有する濾過装置を用い、上記現像液を上記濾過装置内で循環させることによって、濾材(I)を2回以上通過させるものである。
【0015】
当該精製方法によれば、現像液中の極性が高い異物(例えばカルボン酸塩)、パーティクル、金属不純物等の難溶性又は不溶性異物を効率よく取り除くことができる。その結果、難溶性又は不溶性異物に起因する現像欠陥、現像液中の異物とレジストパターンとの相互作用により発生する現像欠陥等の発生を抑制することができると考えられる。
【0016】
具体的には、当該精製方法によれば、現像液に含まれる粒径が0.15μm以上のパーティクル数を例えば20個/mL以下とすることができ、10個/mL以下、さらには5個/mL以下とすることも可能である。
【0017】
当該精製方法によれば、現像液に含まれるパーティクル量をウェットパーティクル量により評価した場合、粒径0.10μm以上のパーティクル量を180pcs/wf以下とすることが可能となる。ウェットパーティクル量は、例えば規定量の現像液を基板に液盛して規定の回転数でスピンオフした後、さらに規定の回転数で基板を乾燥させた後、基板上の欠陥数をKLA−Tencor社製明視野検査装置などの欠陥検出装置を用いて測定することにより得られる値(pcs/wf:ウエハあたりの異物数)である。
【0018】
また、当該精製方法によれば、現像液中の金属不純物量を、例えば20ppb以下とすることができ、10ppb以下、さらには5ppb以下とすることも可能である。ここで、現像液中の金属不純物量は、例えばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)で測定することにより得られる値である。
【0019】
このように、現像液中のパーティクル数及び金属不純物量を上記範囲とできることで、現像時に発生する残渣欠陥、パーティクル欠陥等の現像欠陥を適切に抑制することができる。
【0020】
ここで、「残渣欠陥」とは、レジスト組成物中の成分が溶け残っている欠陥をいう。この残渣欠陥は、主に現像によりレジスト膜が除去されたスペース部に発生する。当該精製方法では、この残渣欠陥数を少なくとも20pcs/wf以下、多くの場合、10pcs/wf以下まで低減することができる程度に現像液を精製することができる。ここでの残渣欠陥数は、例えばKLA−Tencor社製の明視野検査装置等の欠陥検出装置を用いて測定される値である。
【0021】
一方、「パーティクル欠陥」とは、金属不純物等のパーティクル、又はこのパーティクルとレジスト組成物中の成分との相互作用により発生する異物による欠陥をいう。このパーティクル欠陥は、主に現像により除去されずにレジスト組成物が残ったパターン部又は上記スペース部に発生する。当該精製方法では、このパーティクル欠陥数を少なくとも100pcs/wf以下、多くの場合、50pcs/wf以下まで低減することができる程度に現像液を精製することができる。ここでのパーティクル欠陥数は、残渣欠陥と同様に、例えばKLA−Tencor社製の明視野検査装置等の欠陥検出装置を用いて測定される値である。
【0022】
当該精製方法では残渣欠陥数及びパーティクル欠陥数が上記範囲と出来る精製現像液を提供できる結果、いわゆるBridge欠陥の発生を抑制することができる。ここで、「Bridge欠陥」とは、現像により除去されたスペース部に異物が存在することで、現像後に除去されずに残れているラインパターン間を異物が橋架けするように存在する欠陥をいう。このBridge欠陥は、主として、極性が高く、現像液に難溶性の異物に起因して発生する。このようなBridge欠陥が多いと、エッチング工程後、デバイスの通電試験をすると電気的ショートが起こる原因となりかねない。従って、当該精製方法のように残渣欠陥数及びパーティクル欠陥数を低減できる精製現像液を提供できることで、基板のエッチング加工時の加工性不良の発生を低減することができ、歩留まり向上に繋げることができる。
【0023】
<濾過装置>
濾過装置は、現像液を循環させることで濾材(I)により2回以上の濾過できる構成を有するものであり、例えば
図1〜
図6のような構成とされる。
【0024】
図1の濾過装置1Aは、濾過ユニット11及び三方バルブB1,B2を備えたものである。この濾過装置1Aは、ポンプ等の動力により現像液を循環させることで、回分式で現像液を濾過することができる。
【0025】
濾過ユニット11は、孔径0.05μm以下の濾材(I)を有するものである。この濾材(I)の詳細については後述する。
【0026】
三方バルブB1は、未濾過の現像液を濾過ユニット11に供給する状態と、濾過ユニット11によって濾過されて循環させられた現像液を濾過ユニット11に供給する状態とを切り替えるものである。
【0027】
三方バルブB2は、濾過ユニット11によって濾過された現像液を精製現像液として排出する状態と、濾過ユニット11によって濾過された現像液を循環させて濾過ユニット11に供給する状態とを切り替えるものである。
【0028】
三方バルブB1,B2としては、特に限定されず、公知の種々の三方バルブを使用することができる。
【0029】
このような濾過装置1Aでは、三方バルブB1,B2を適宜切り替えることにより、濾過ユニット11によって濾過させた現像液を循環させて濾過ユニット11に供給できるため、濾過ユニット11(濾材(I))による複数回の濾過が可能である。また、三方バルブB1,B2を適宜切り替えることにより、現像液を濾過ユニット11(濾材(I))によって濾過する回数を適宜選択することができる。このような濾過回数は、例えば2回以上20回以下とされ、2回以上10回以下が好ましく、2回以上7回以下がさらに好ましい。濾過回数が上記範囲外であると、その回数に見合うだけの効果に乏しく、濾過効率が悪化する傾向がある。
【0030】
図2の濾過装置1Bは、濾過ユニット11によって濾過された現像液の一部を精製現像液として排出しつつ、残りの現像液を濾過ユニット11に循環可能に構成したものである。この濾過ユニット11では、3つのバルブB3,B4,B5によって現像液の供給、循環、及び排出が選択される。具体的には、バルブB3は、濾過ユニット11に未濾過現像液を供給するか否かを選択するものである。バルブB4は、濾過ユニット11で濾過した現像液を精製現像液として排出するか否かを選択するものである。バルブB5は、濾過ユニット11で濾過された現像液を濾過ユニット11に循環させるか否かを選択するものである。
【0031】
このような濾過装置1Bでは、濾過装置1Aのように回分式で現像液の濾過を行うものではなく、現像液の一部が連続的に排出されるため、現像液の精製効率を向上させることが可能となる。
【0032】
図3の濾過装置1Cは、三方バルブB1から三方バルブB2への主流路に2つの濾過ユニット11,12を配置したものである。濾過ユニット11は、
図1の濾過装置1の濾過ユニット11と同様なものであるが、濾過ユニット12は濾過ユニット11とは異なる構成を有するものである。具体的には、濾過ユニット12は、濾材(II)を有するものであり、濾過ユニット11(濾材(I))の下流側に配置されている。この濾材(II)の詳細については後述するが、濾過ユニット11の濾材(I)とは、少なくとも孔径又は素材が異なるものである。
【0033】
このような濾過装置1Cでは、濾材(I)によって除去することができなかった現像液中の異物を、濾材(II)によってより効果的に除去することが可能となる。その結果、現像液を精製する際の循環回数を少なくすることができるため、濾過効率を向上させることが可能となる。
【0034】
図4の濾過装置1Dは、濾過ユニット12を循環流路に配置したものである。このような濾過装置1Dにおいても、濾材(I)によって除去することができなかった現像液中の異物を、濾材(II)によってより効果的に除去できる結果、濾過効率を向上させることが可能となる。
【0035】
図5の濾過装置1Eは、2つの濾過ユニット11の間に濾過ユニット12を配置したものである。
図6の濾過装置1Fは、2つの濾過ユニット12の間に濾過ユニット11を配置したものである。このような濾過装置1E,1Fでは、濾過ユニット11,12の数が多いため、現像液の循環回数を減らすことができるため、濾過効率が向上する。
【0036】
もちろん、
図1〜
図6に示した濾過装置1A〜1Fは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々に変更可能である。例えば、各濾過ユニット11,12には、それぞれ1つの濾材(I)又は濾材(II)が配置されていたが、一つの濾過ユニットに同一又は異なる複数の濾材を配置してもよい。また、各濾過ユニット11,12の配置及び数についても、少なくとも現像液を循環させることで濾材(I)により2回以上の濾過できる限りは、図示した形態以外にも種々に変更可能である。さらに、現像液の循環形式、バルブの構成等も変更可能である。
【0037】
<濾材(I)及び濾材(II)>
濾材(I)及び濾材(II)は、互いに種類の異なるものである。典型的には、濾材(I)と濾材(II)とは、孔径及び構成素材のうちの少なくとも一方が異なっている。
【0038】
濾材(I)及び濾材(II)は、上述のように孔径が0.05μm以下とされる。濾材(I)及び濾材(II)の孔径としては、0.01μm以上0.04μm以下が好ましく、0.01μm以上0.02μm以下がより好ましい。濾材(I)及び濾材(II)の孔径が小さすぎると、現像液の濾過に必要な圧力が高くなって濾過効率が悪化し、また濾材(I)の目詰まり等が生じやすくなって濾過効率が悪化する。一方、濾材(I)及び濾材(II)の孔径が大きすぎると、粒子径の小さい異物を十分に除去できないおそれがある。
【0039】
濾材(I)及び濾材(II)としては、ポリアミド製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製又はポリテトラフルオロエチレン製が好ましく、ポリアミド製がより好ましい。これらの素材により形成された濾材(I)及び濾材(II)を使用することで、残渣欠陥やパーティクル欠陥の原因となり易い極性の高い異物を効果的に除去できる。
【0040】
濾材(I)及び濾材(II)の臨界表面張力としては、70mN/m以上が好ましく、95mN/m以下がより好ましく、75mN/m以上85mN/m以下が特に好ましい。尚、臨界表面張力の値は、製造メーカーの公称値である。臨界表面張力が上記範囲の濾材(I)及び濾材(II)を使用することで、残渣欠陥やパーティクル欠陥の原因となり易い極性の高い異物を効果的に除去できる。
【0041】
濾材(I)は、例えば濾過ファンネル等の濾過ユニットとして濾過装置に組み込まれるが、このような濾過ユニットとしては、ポリアミド製の「P−ナイロンフィルター(孔径0.02μm、臨界表面張力77mN/m)」;(日本ポール株式会社製)、高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(孔径0.02μm)」;(日本ポール株式会社製)、及び高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(孔径0.01μm)」;(日本ポール株式会社製)を使用することができる。
【0042】
<(未精製)現像液>
精製対象となる現像液(未精製現像液)は、化学増幅型レジスト組成物を用いてのネガ型のパターンの形成に用いられるものであり、有機溶媒を主成分とするものである。
【0043】
現像液の主成分となる有機溶媒としては、エステル系溶媒及びケトン系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。ここで、「主成分」とは、50質量%以上を含むことをいい、好ましくは80質量%以上含むことをいう。
【0044】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0045】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0046】
これらのうち、酢酸ブチル、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、酢酸n−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、メチルエチルケトン、メチル−n−ブチルケトンが好ましく、酢酸ブチル、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトンがより好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
現像液は、エステル系溶媒及びケトン系溶媒以外にも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、炭化水素系溶媒、水及びシリコンオイル等を含有していても良い。
【0048】
アルコール系溶媒としては、例えばモノアルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒等が挙げられる。
【0049】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジフェニルエーテル、メトキシベンゼン等が挙げられる。
【0050】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0051】
炭化水素系溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0052】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0053】
[精製現像液]
当該精製現像液は、上記未精製現像液を、当該精製方法により精製したものである。
【0054】
当該精製現像液は、未精製現像液に比べて異物量が低減されているが、異物量以外の組成は上述した未精製現像液と同様である。当該精製現像液は、当該精製方法によって精製されることで、例えば粒径が0.15μm以上のパーティクル数が20個/mL以下、好ましくは10個/mL以下、さらに好ましくは5個/mL以下とされている。当該精製現像液は、ウェットパーティクル量により評価した場合、粒径0.10μm以上のパーティクル量が180pcs/wf以下であることが好ましい。当該精製現像液の金属不純物量は、例えば20ppb以下であり、好ましくは10ppb以下、さらに好ましくは5ppb以下である。
【0055】
当該精製現像液によれば、パーチィクル量、金属不純物等の異物量が低減されているため、レジスト膜を現像したときの現像欠陥の発生を効果的に抑制することができる。
【0056】
[レジストパターン形成方法]
当該レジストパターン形成方法は、化学増幅型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」という)、上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」という)、及び当該精製現像液を用いて現像することによりネガ型のパターンを形成する工程(以下、「現像工程」という)を含む。
【0057】
<レジスト膜形成工程>
このレジスト膜形成工程では、化学増幅型レジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成することで行われる。レジスト膜形成工程で用いる化学増幅型レジスト組成物の詳細についは後述するが、この組成物は[A]酸の作用により有機溶媒を主成分とする当該精製現像液への溶解性が減少する重合体、及び[B]感放射線性酸発生体を含有する。
【0058】
レジスト膜形成工程を行う前に、例えば特公平6−12452号公報、特開昭59−93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を、基板上に予め形成してもよい。また、上記レジスト組成物を基板に塗布した後、必要に応じてプレベーク(PB)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。
【0059】
さらに、レジスト膜の形成後には、保護膜をレジスト層上に設けることもできる。保護膜としては、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するためのもの(例えば特開平5−188598号公報等参照)、レジスト膜からの[B]感放射線性酸発生体等の流出を防止するための液浸用保護膜(例えば特開2005−352384号公報等参照)が挙げられる。これらの保護膜の双方をレジスト層上に形成してもよい。
【0060】
<露光工程>
この露光工程では、レジスト形成工程で形成したレジスト膜の所望の領域に特定パターンのマスク、及び必要に応じて液浸液を介して縮小投影することにより露光することで行われる。露光は、所望のパターンとマスクパターンによって2回以上行ってもよい。
【0061】
露光に使用される放射線としては、[B]感放射線性酸発生体の種類に応じて適宜選択される。この場合の放射線としては、例えば、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。これらの放射線のうち、ArFエキシマレーザーやKrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表されるエキシマレーザーから出射される遠紫外線が好ましい。露光量等の露光条件は、レジスト組成物の配合組成、添加剤の種類等に応じて適宜選択される。
【0062】
また、レジスト膜の露光後には、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行なうことが好ましい。PEBを行なうことにより、レジスト組成物中の酸解離性基の解離反応を円滑に進行できる。
【0063】
<現像工程>
現像工程は、レジスト膜の露光後に、当該精製現像液を用いて現像を行うことで、レジストパターンを形成する工程である。精製現像液としてエステル系溶媒及びケトン系溶媒より選ばれる少なくとも1種を含むものを使用することで、低露光部及び未露光部を選択的に溶解・除去させることができる。
【0064】
当該レジストパターン形成方法では、当該精製現像液を、上記レジスト組成物を用いたネガ型のパターンを形成する方法に用いることで、特に酸の作用によって重合体の極性が増大する。そのため、精製現像液への溶解性が減少したパターン部に存在する重合体は、極性の高い異物との相互作用が十分に抑制されると考えられる。その結果、欠陥の発生を抑制することで、半導体デバイスの歩留まりを向上させることができる。
【0065】
[化学増幅型レジスト組成物]
化学増幅型レジスト組成物は、上述のように[A]酸の作用により有機溶媒を主成分とする現像液への溶解性が減少する重合体、及び[B]感放射線性酸発生体を含有し、さらに、本発明の効果を損なわない限度において、他の成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0066】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸解離性基を含む構造単位として、構造単位(I)を有することが好ましい。ここで、「酸解離性基」とは、カルボキシル基等の極性官能基中の水素原子を置換する基であって、露光により[B]感放射線性酸発生体から発生した酸の作用により解離する基を意味する。[A]重合体は、酸解離性基を含む構造単位を有しているので、露光によりカルボキシル基等の極性官能基の数が増大し、重合体全体として極性が増大して、有機溶媒を含有する現像液に対する溶解性が低下することにより、良好なレジストパターンを形成することができる。
【0067】
また、[A]重合体は、構造単位(I)以外にも、ラクトン含有基又は環状カーボネート含有基を含む構造単位(II)(以下、「構造単位(II)」という)を有することが好ましく、親水性官能基を有する構造単位(III)(以下、「構造単位(III)」という)を有していてもよい。[A]重合体は、各構造単位を1種又は2種以上有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0068】
(構造単位(I))
[A]重合体は、構造単位(I)として、酸解離性基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構造単位を有することが好ましく、下記式(1)で表される構造単位がより好ましい。
【0070】
上記式(1)中、R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
pは酸解離性基である。
【0071】
R
pで表される酸解離性基としては下記式(i)で表される基が好ましい。
【0073】
上記式(i)中、R
p1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R
p2及びR
p3はそれぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基である。なお、R
p2及びR
p3は相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。
【0074】
構造単位(I)としては、例えば下記式(1−1)〜(1−4)で表される構造単位が挙げられる。
【0076】
上記式(1−1)〜(1−4)中、R
1は上記式(1)と同義である。R
p1、R
p2及びR
p3は上記式(i)と同義である。n
pは1〜4の整数である。
【0077】
上記式(1)又は(1−1)〜(1−4)で表される構造単位としては、例えば下記式で表される構造単位が挙げられる。
【0080】
上記式中、R
1は上記式(1)と同義である。
【0081】
[A]重合体において、構造単位(I)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%以上60モル%以下であることが好ましい。構造単位(I)の含有率を上記範囲とすることで、パターン形成に十分なコントラストが得られる。
【0082】
(構造単位(II))
[A]重合体において、上記構造単位(II)を有することで、レジスト膜の基板への密着性を向上できる。ここで、構造単位(II)のラクトン含有基とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する環式基を表す。また、構造単位(II)の環状カーボネート含有基とは、−O−C(O)−O−で表される結合を含むひとつの環(環状カーボネート環)を含有する環式基を表す。ラクトン環又は環状カーボネート環を1つめの環として数え、ラクトン環又は環状カーボネート環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
【0083】
構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位が挙げられる。
【0086】
上記式中、R
L1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0087】
[A]重合体において、構造単位(II)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%以上60モル%以下であることが好ましい。構造単位(II)の含有率を上記範囲とすることで、当該化学増幅型レジスト組成物から形成されるレジストパターンの密着性がさらに向上する。
【0088】
(構造単位(III))
上記構造単位(III)」としては、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0090】
上記式中、R
2は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0091】
[A]重合体において、上記構造単位(III)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して0モル%以上30モル%以下が好ましく、0モル%以上20モル%以下がより好ましい。
【0092】
[A]重合体は、上述した構造単位以外の構造単位を1種又は2種以上さらに有していてもよい。
【0093】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。
【0094】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)としては、1,000以上100,000以下が好ましく、1,000以上50,000以下がより好ましく、1,000以上30,000以下がさらに好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状を向上させることができる。
【0095】
<[B]感放射線性酸発生体>
[B]感放射線性酸発生体は、露光により酸を発生し、その酸により[A]重合体中に存在する酸解離性基を解離させカルボキシル基等を発生させる。その結果、[A]重合体が現像液に難溶性となる。
【0096】
[B]感放射線性酸発生体としては、例えばオニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらの[B]感放射線性酸発生体のうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0097】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0098】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(2−アダマンタンオキシカルボニル)−エタン−1−スルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(2−アダマンタンオキシカルボニル)−エタン−1−スルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0099】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0100】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0101】
N−スルホニルオキシイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等を挙げることができる。
【0102】
これらの[B]感放射線性酸発生体は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[B]感放射線性酸発生体の使用量としては、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、通常、0.1質量部以上20質量部以下であり、0.5質量部以上15質量部以下が好ましい。この場合、[B]感放射線性酸発生体の使用量が上記質量部未満であると、感度および現像性が低下する傾向があり、一方15質量部を超えることで、放射線に対する透明性が低下して、所望のレジストパターンを得られ難くなる傾向がある。
【0103】
<[C]重合体>
[C]重合体は、[A]重合体よりフッ素原子含有率が高い重合体であって、レジスト膜を形成した際に、膜中の[C]重合体の撥油性的特徴により、その分布がレジスト膜表層に偏在化する傾向がある重合体である。そのため、液浸露光時に酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制でき好ましい。
【0104】
[C]重合体としては、上記性質を有する限り特に限定されないが、フッ素化アルキル基を有することが好ましい。
【0105】
[C]重合体は、フッ素原子を構造中に含む単量体を少なくとも1種類以上重合することにより形成される。フッ素原子を構造中に含む単量体としては主鎖にフッ素原子を含むもの、側鎖にフッ素原子を含むもの、主鎖と側鎖にフッ素原子を含むものが挙げられる。
【0106】
[C]重合体にフッ素原子を付与する構造単位は、特に限定されるものではないが、下記式(F1)で表される構造単位(以下、「構造単位(F−I)」ともいう)をフッ素付与構造単位として用いることが好ましい。
【0108】
上記式(F1)中、R
3は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Aは、単結合又は2価の連結基である。R
4は少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導基である。
【0109】
上記式(F1)におけるAで表される2価の連結基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、アミド基、スルホニルアミド基、ウレタン基等を挙げることができる。
【0110】
上記[C]重合体は、この構造単位(F−I)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。この構造単位(F−I)の含有率は、[C]重合体における全構造単位に対して、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上である。この構造単位(F−I)の含有率が5モル%未満であると、70度以上の後退接触角を達成できないか、レジスト被膜からの酸発生剤等の溶出を抑制できないおそれがある。
【0111】
[C]重合体には、上述のフッ素原子を構造中に有する構造単位以外にも、例えば、現像液に対する溶解速度をコントールするために酸解離性基を有する構造単位や、ラクトン骨格、環状カーボネート骨格、水酸基、カルボキシル基等を有する構造単位、又は脂環式基を有する構造単位や、基板からの反射による光の散乱を抑えるために、芳香族化合物に由来する構造単位等の「他の構造単位」を1種類以上含有させることができる。
【0112】
上記酸解離性基を有する他の構造単位としては、[A]重合体の構造単位(I)と同様のもの(以下、「構造単位(F−II)」ともいう)を使用することができる。
【0113】
上記ラクトン骨格又は環状カーボネート骨格を含有する他の構造単位としては[A]重合体の構造単位(II)と同様のものを使用することができる。(以下、「構造単位(F−III)」ともいう)
【0114】
化学増幅型レジスト組成物の固形分(溶媒を除いた成分)に含まれる[C]重合体の含有量としては1質量%以上10質量%以下が好ましく、1.5質量%以上8質量%以下がより好ましく、2質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。[C]重合体の含有量を上記範囲とすることにより、液浸露光におけるパターン形成性をより向上することができる。
【0115】
<[C]重合体の合成方法>
[C]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。
【0116】
<[D]溶媒>
[D]溶媒は、少なくとも上記の[A]重合体、[B]感放射線性酸発生体、[C]重合体及び必要に応じて加えられる任意成分を溶解できるものであれば特に限定されない。溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
【0117】
化学増幅型レジスト組成物は、[A]重合体、[B]感放射線性酸発生体、[C]重合体、及び[D]溶媒に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分として[E]酸拡散制御体、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等を含有できる。
【0118】
<[E]酸拡散制御体>
[E]酸拡散制御体は、露光により[B]感放射線性酸発生体から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する。このような酸拡散制御体を含有することにより、レジストとしての解像度が更に向上するとともに、露光から露光後の加熱処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができる。
【0119】
[E]酸拡散制御体としては、例えば、3級アミン化合物、その他のアミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、その他含窒素複素環化合物等を挙げることができる。尚、これらは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0120】
また、酸拡散制御体として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。
【実施例】
【0121】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0122】
<重合体の合成>
[A]重合体及び[C]重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。
【0123】
【化10】
【0124】
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
上記化合物(M−1)12.8g(50モル%)、上記化合物(M−3)3.6g(10モル%)及び上記化合物(M−4)13.6g(40モル%)を2−ブタノン60gに溶解させ、さらにAIBN1.3g(5モル%)を溶解させた単量体溶液を調製した。次に、30gの2−ブタノンを投入した200mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を、滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合反応液を水冷して30℃以下に冷却し、600gのメタノールへ投入して、析出した白色粉末を濾別した。濾別した白色粉末を150gのメタノールにてスラリー状にして2度洗浄した後、再度濾別し、50℃にて17時間乾燥して白色粉末の重合体(A−1)を得た。
【0125】
[合成例2]
上記化合物(M−1)10.5g(45モル%)、上記化合物(M−2)5.7g(15モル%)及び上記化合物(M−5)13.8g(40モル%)を2−ブタノン60gに溶解させ、さらにAIBN1.1g(2モル%)を溶解させた単量体溶液を調製して用い、上記合成例1と同様にして白色粉末の重合体(A−2)を得た。
【0126】
<[C]重合体の合成>
[合成例3]
上記化合物(M−6)10.4g(30モル%)及び化合物(M−7)19.6g(70モル%)を2−ブタノン60gに溶解させ、さらにAIBN1.6g(8モル%)を溶解させた単量体溶液を調製して用い、合成例1と同様にして白色粉末の重合体(C−1)を得た。
【0127】
<化学増幅型レジスト組成物の調製>
上記合成例にて合成した[A]重合体及び[C]重合体以外の化学増幅型レジスト組成物を構成する各成分([B]感放射線性酸発生体、[D]溶媒、及び[E]酸拡散制御体について以下に示す。
【0128】
([B]感放射線性酸発生体)
B−1:下記式(B−1)で表される化合物
B−2:下記式(B−2)で表される化合物
【0129】
【化11】
【0130】
([D]溶媒)
D−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
D−2:シクロヘキサノン
D−3:γ−ブチロラクトン
【0131】
([E]酸拡散制御体)
E−1:下記式(E−1)で表される化合物
E−2:下記式(E−2)で表される化合物
【0132】
【化12】
【0133】
<化学増幅型レジスト組成物の調整>
[調製例1]
重合体(A−1)100質量部、感放射線性酸発生体(B−1)11.6質量部、重合体(C−1)3質量部、溶媒(D−1)2,220質量部、溶媒(D−2)950質量部、及び溶媒(D−3)30質量部、並びに化合物(E−1)1.8質量部を混合して均一溶液とした。その後、孔径200nmのメンブランフィルターを用いて濾過することにより、化学増幅型レジスト組成物(J−1)を調製した。化学増幅型レジスト組成物(J−1)の固形分濃度(溶媒以外の成分の総濃度)は3.5質量%であった。
【0134】
[調製例2]
重合体(A−2)100質量部、感放射線性酸発生体(B−2)8.5質量部、重合体(C−1)3質量部、溶媒(D−1)2,220質量部、溶媒(D−2)965質量部、及び溶媒(D−3)30質量部、並びに化合物(E−2)4.5質量部を混合して均一溶液とした。その後、孔径200nmのメンブランフィルターを用いて濾過することにより、化学増幅型レジスト組成物(J−2)を調製した。化学増幅型レジスト組成物(J−2)の固形分濃度(溶媒以外の成分の総濃度)は3.5質量%であった。
【0135】
<現像液の精製>
現像液を表1に示す条件で精製した。
【0136】
[実施例1]
酢酸ブチル(BA)を、濾材としてポリアミド製ウルチプリーツ・P−ナイロンフィルター(日本ポール株式会社製、孔径20nm、臨界表面張力77mN/m)を用い、濾過圧力0.10MPa、流速600mL/minとして2回濾過し、精製現像液とした。
【0137】
[実施例2]
濾過回数を7回に変更した以外は実施例1と同様とし、精製現像液を得た。
【0138】
[実施例3]
濾過回数を10回に変更した以外は実施例1と同様とし、精製現像液を得た。
【0139】
[実施例4]
酢酸ブチルを、濾材として高密度ポリエチレン(HDPE)製PE・クリーンフィルター(日本ポール株式会社製、孔径10nm)を用い、濾過圧力0.10MPa、流速500mL/minとして2回濾過し、精製現像液とした。
【0140】
[実施例5]
酢酸ブチルを、濾材として材質の異なるポリアミド製ウルチプリーツ・P−ナイロンフィルター(日本ポール株式会社製、孔径20nm、臨界表面張力77mN/m)及び高密度ポリエチレン(HDPE)製PE・クリーンフィルター(日本ポール株式会社製、孔径10nm)の2種類を用い、濾過圧力0.10MPa、流速600mL/minとして2回濾過し、精製現像液を得た。
【0141】
[実施例6]
酢酸ブチルを、濾材として孔径の異なる高密度ポリエチレン(HDPE)製PE・クリーンフィルター(日本ポール株式会社製、孔径20nm)及び高密度ポリエチレン(HDPE)製PE・クリーンフィルター(日本ポール株式会社製、孔径10nm)の2種類を用い、濾過圧力0.10MPa、流速500mL/minとして2回濾過し、精製現像液を得た。
【0142】
[実施例7]
酢酸ブチルをメチル−n−アミルケトン(MAK)に変更し、濾過回数を7回に変更した以外は実施例5と同様とし、精製現像液を得た。
【0143】
[比較例1]
酢酸ブチルを、濾材として高密度ポリエチレン(HDPE)製PE・クリーンフィルター(日本ポール株式会社製、孔径10nm)を用い、濾過圧力0.10MPa、流速600mL/minとして1回濾過し、比較用の精製現像液を得た。
【0144】
[比較例2]
酢酸ブチルをメチル−n−アミルケトン(MAK)に変更した以外は比較例1と同様とし、比較用の精製現像液を得た。
【0145】
[比較例3]
酢酸ブチルを、濾材として高密度ポリエチレン(HDPE)製PE・クリーンフィルター(日本ポール株式会社製、孔径100nm)を用い、濾過圧力0.10MPa、流速600mL/minとして2回濾過し、比較用の精製現像液とした。
【0146】
[比較例4]
濾材をポリアミド製ウルチプリーツ・P−ナイロンフィルター(日本ポール株式会社製、孔径150nm)に変更した以外は比較例3と同様とし、比較用の精製現像液を得た。
【0147】
【表1】
【0148】
<レジストパターンの形成>
12インチシリコンウェハ上に、下層反射防止膜形成用組成物(ARC66、ブルワーサイエンス製)をスピンコーター(CLEAN TRACK Lithius Pro i、東京エレクトロン製)を使用してスピンコートした後、205℃で60秒間PBを行うことにより膜厚105nmの塗膜を形成した。次に、上記塗膜上にクリーントラック(東京エレクトロン社、ACT12)を用いて、調製例1で得られた化学増幅型レジスト組成物(J−1)又は(J−2)をスピンコートし、90℃で60秒間PBした後、23℃で30秒間冷却することにより膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
【0149】
次いで、ArF液浸露光装置(NSR−S610C、ニコン精機カンパニー製、液浸液:水)を使用し、NA=1.3、アニュラー アウターシグマ/インナーシグマ=0.97/0.77の光学条件にて、200nmクロム/512nmピッチのマスクを用いてベストフォーカスの条件で露光した。その後、105℃で60秒間PEBを行い、23℃で30秒間冷却した後、精製現像液で30秒間パドル現像を行い、4−メチル−2−ペンタノールで7秒間リンスを行い、40nmスペース/128nmピッチのレジストパターンを形成した。
【0150】
<評価>
実施例1〜7及び比較例1〜4の精製現像液により現像して形成したレジストパターンについて、残渣欠陥、及びパーティクル欠陥を、下記方法に従って評価した。評価結果を表2に示す。また、使用した現像液のウェットパーティクル量を測定した結果も併せて表2に示す。
【0151】
[ウェットパーティクル量]
Bare−Si基板上に実施例に記載の方法で精製した精製現像液20mLを30秒間液盛し、1000rpmでスピンオフした後に2,000rpmで10秒間回転させることで乾燥させた。この基板上の粒径が0.10μm以上の異物数をKLA−TENCOR製、KLA2810を用いて測定した。本異物数をウェットパーティクル量(pcs/wf)とした。
【0152】
[残渣欠陥]
上記手法で形成した40nmスペース部の欠陥数をKLA−TENCOR製、KLA2810を用いて測定した。さらに、上記KLA2810にて測定された欠陥を分類し、スペース部に溶け残りが残っている欠陥を残渣欠陥(pcs/wf)とした。
【0153】
[パーティクル欠陥]
上記手法で形成した40nmスペース部または128nmパターン部の欠陥数をKLA−TENCOR製、KLA2810を用いて測定した。さらに、上記KLA2810にて測定された欠陥を分類し、スペース部またはパターン部に異物として残っている欠陥をパーティクル欠陥(pcs/wf)とした。
【0154】
【表2】
【0155】
表2の結果から、孔径の小さい濾材(孔径:10nm)を用いて濾過を1回行った比較例1,2、及び孔径の大きい濾材(孔径:100nm又は150nm)を用いて濾過を2回行った比較例3,4の精製現像液を用いてレジストの現像を行った場合、ウェットパーティクル量が多く、残渣欠陥及びパーティクル欠陥の多く発生した。
【0156】
これに対して、孔径の小さい濾材(孔径:10nm又は20nm)を用いて複数回(2回〜10回)濾過した実施例1〜7を用いてレジストの現像を行った場合、ウェットパーティクル量が少なく、残渣欠陥及びパーティクル欠陥の発生が抑制されていた。