特許第6075141号(P6075141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075141
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】綴じ機
(51)【国際特許分類】
   B42B 5/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   B42B5/00
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-60398(P2013-60398)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-184624(P2014-184624A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】青井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】才川 淳二
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/017778(WO,A1)
【文献】 特開昭53−6124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持するベース部と、このベース部に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記ベース部に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とをベース部側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにした綴じ機であって、
前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材とは別に設けられ切起片が切込刃の窓に挿入される際に退避する退避位置及び前記切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束位置をとり得る拘束部材とを備えてなり、前記拘束部材が、切込刃と別に設けられたものであることを特徴とする綴じ機。
【請求項2】
前記拘束部材が、弾性付勢力により前記拘束位置に保持されるとともに、切起片が窓に挿入される際の操作力を利用して一時的に前記退避位置に弾性退避するものである請求項1記載の綴じ機。
【請求項3】
前記拘束部材が、厚み方向に移動して前記拘束位置と前記退避位置とをとり得るように構成され、その回動端で前記切起片を拘束するようにしたものである請求項1または2記載の綴じ機。
【請求項4】
前記拘束部材が、回動端を前記隙間に臨ませてパンチ台側に配設された拘束部材本体と、この拘束部材本体の基端を保持する取付部と、この取付部に設けられ前記拘束部材本体に対向配置されたスプリングリテーナと、このスプリングリテーナに保持されて前記拘束部材本体を前記拘束位置方向に付勢するスプリングと、このスプリングの付勢力に抗して前記拘束部材本体を拘束位置に係止するストッパ部とを備えたものである請求項1、2または3記載の綴じ機。
【請求項5】
前記拘束部材本体が、自らの厚み方向への弾性変形により拘束位置から退避位置に移動するものであり、回動端の厚み寸法をその他の部分の厚み寸法よりも大きく設定している請求項4記載の綴じ機。
【請求項6】
複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持するベース部と、このベース部に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記ベース部に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とをベース部側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにした綴じ機であって、
前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材とは別に設けられ切起片が切込刃の窓に挿入される際に退避する退避位置及び前記切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束位置をとり得る拘束部材とを備えてなり、前記拘束部材が、切込刃に設けられたものであり切込刃の厚み方向に移動することによって前記退避位置及び拘束位置の間で作動し得るものであることを特徴とする綴じ機。
【請求項7】
前記拘束部材が、前記切込刃の窓の先端側の縁に設けられたものであり、前記切起片が窓に挿入されるときにのみ厚み方向に退避するものである請求項6記載の綴じ機。
【請求項8】
前記切込刃が、前記切起片が窓に挿入されるときにのみ抵抗を軽減する方向に退避するものであり、この切込刃が前記拘束部材を兼ねている請求項6記載の綴じ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせた複数枚の用紙の端部を一体的に綴じ合わせる綴じ機のうち、特に金属製の針を使用しない方式の、いわゆる針なしステープラと称される綴じ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の綴じ機として、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持するベース部と、このベース部に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この綴じ機は、前記ベース部に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させて、パンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を、前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とをベース部側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものである。
【0003】
このような綴じ機には、抜き刃と切込刃とが用紙に貫入した段階で切起片を切込刃の窓に挿入するために、抜き刃やインナーカム等の挿入部材が不可欠である。従来の綴じ機は、抜き刃と切込刃が一体化した状態で連動するようになっており、前記挿入部材は、切込刃の進退方向の動きに連動して正逆方向に作動するようになっている。すなわち、前記挿入部材は、切込刃の進入動作に伴って正方向に作動し、切込刃がこの進入動作と対称的な動作である抜き取り動作に伴って逆方向に作動する。換言すれば、挿入部材は、切込刃が最も深く貫入する最貫入位置を中心に対称的な動きをする。
【0004】
そのため、切起片の先端部分を切込刃の窓の縁に押し当て、切起片の先端側を無理に反らせながら窓内に挿入するようにせざるを得ないという事情があり、そのために切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−228451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みて、切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る綴じ機は、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持するベース部と、このベース部に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記ベース部に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とをベース部側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものであって、前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材とは別に設けられ切起片が切込刃の窓に挿入される際に退避する退避位置及び前記切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束位置をとり得る拘束部材とを備えてなり、前記拘束部材が、切込刃と別に設けられたものであることを特徴とする。
【0008】
ここで「用紙」とは、穿孔対象物であれば、どのようなものであってもよく、紙製のものの他、プラスチック製、金属製、または木製のものも含まれる。また、薄いシート状のものに限られない。
【0009】
前記挿入部材の好適な一態様としては、前記抜き刃に保持されたインナーカムが挙げられる。挿入部材としては、抜き刃以外の部分に保持され抜き刃と連動することなく作動するインナーカムや、抜き刃自体が挿入部材としての役割を果たすものであってもよい。また、挿入部材は、回転動作により用紙を挿入する以外のものであってもよい。
【0010】
前記拘束部材は、弾性付勢力により前記拘束位置に保持されるとともに、切起片が窓に挿入される際の操作力を利用して一時的に前記退避位置に弾性退避するものが好ましい。
【0011】
前記拘束部材は、厚み方向に移動して前記拘束位置と前記退避位置とをとり得るように構成され、その回動端で前記切起片を拘束するようにしたものが好適な一態様として挙げられる。
【0012】
前記拘束部材の具体的な一態様としては、回動端を前記隙間に臨ませてパンチ台側に配設された拘束部材本体と、この拘束部材本体の基端を保持する取付部と、この取付部に設けられ前記拘束部材本体に対向配置されたスプリングリテーナと、このスプリングリテーナに保持されて前記拘束部材本体を前記拘束位置方向に付勢するスプリングと、このスプリングの付勢力に抗して前記拘束部材本体を拘束位置に係止するストッパ部とを備えたものが挙げられる。
【0013】
前記拘束部材本体は、自らの厚み方向への弾性変形により拘束位置から退避位置に移動するものであり、回動端の厚み寸法をその他の部分の厚み寸法よりも大きく設定しているものが好ましい。
【0014】
本発明にかかる他の綴じ機としては、複数枚の用紙に切起片を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片の先端側を係止させるためのカット孔を穿設する切込刃と、これら抜き刃及び切込刃を保持するベース部と、このベース部に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記ベース部に保持された前記抜き刃と切込刃とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙を貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片の先端側を前記切込刃の窓に係わり合わせた状態で、その切込刃と前記抜き刃とをベース部側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片を前記カット孔に貫通させて前記用紙を綴じるようにしたものであって、前記切起片を切込刃の窓に挿入するための挿入部材と、この挿入部材とは別に設けられ切起片が切込刃の窓に挿入される際に退避する退避位置及び前記切起片を窓に挿入された状態に保つための拘束位置をとり得る拘束部材とを備えてなり、前記拘束部材が、切込刃に設けられたものであり切込刃の厚み方向に移動することによって前記退避位置及び拘束位置の間で作動し得るものであることを特徴とする。
【0015】
前記拘束部材の一例としては、前記切込刃の窓の先端側の縁に設けられたものであり、前記切起片が窓に挿入されるときにのみ厚み方向に退避するものが挙げられる。
【0016】
前記切込刃が、前記切起片が窓に挿入されるときにのみ抵抗を軽減する方向に退避するものであり、この切込刃が前記拘束部材を兼ねているものが他の一例として挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上のような構成であるから、切起片に無理な力がかかって破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなるという問題なしに、確実に用紙を綴じることのできる綴じ機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の綴じ機を示す全体斜視図。
図2】同実施形態の綴じ機を示す平面図。
図3】同実施形態の綴じ機及び用紙の要部を示す平面図。
図4図3のX−X線断面図。
図5図2のY−Y線断面で示す作用説明図。
図6図2のY−Y線断面で示す作用説明図。
図7】同実施形態の綴じ機の要部を一部破断して示す分解斜視図。
図8】同実施形態の綴じ機の要部を示す側面図。
図9】同実施形態の綴じ機の要部を示す平面図。
図10】同実施形態の打ち抜き孔及びカット孔を示す平面図。
図11】同実施形態の綴じ機の作用説明図。
図12】同実施形態の綴じ機の作用説明図。
図13】同実施形態の綴じ機の作用説明図。
図14】同実施形態の綴じ機の作用説明図。
図15】同実施形態の綴じ機の作用説明図。
図16】同実施形態の綴じ機の作用説明図。
図17】本発明の他の実施形態の綴じ機の作用説明図。
図18】本発明のさらに他の実施形態の綴じ機の作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図1図16を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態にかかる綴じ機1は、図1図16に示すように、複数枚の用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成するとともに、その打ち抜き孔P1から切り起こされた切起片P5を前記カット孔P2に挿通させることにより、それら複数枚の用紙Pを相互に綴じて冊子Bを作ることができるようにしたものである。
【0021】
前記冊子Bは、図3及び図4に示すように、複数枚の用紙Pを束ねてなるもので、それらの用紙Pは角部P4に設定した一ヵ所の接合部分P3において相互に接合されている。この接合部分P3は、用紙Pの一面Pa側から貫入させた抜き刃32により各用紙Pに形成された打ち抜き孔P1と、この打ち抜き孔P1に隣接させて前記各用紙Pに形成された引き上げ用カット孔P2と、前記打ち抜き孔P1から用紙Pの他面Pb側に切り起こされた切起片P5とから構成されている。そして、前記切起片P5の先端P51部分を、前記カット孔P2を貫通させて前記用紙Pの一面Pa側に導出させることによって、前記複数枚の用紙Pの角部P4が相互に接合されている。なお、図3及び図4では、用紙Pの角部P4を綴じ機1に向けて差し入れた態様を示しているが、用紙Pの縁部を綴じ機1に向けて差し入れて綴じるようにしてもよいのはもちろんのことである。また、用紙Pにおける切起片P5の基端P52近傍には、破れ抑制用の逃げ部P6が形成されている。この逃げ部P6は、切起片P5の基端P52の両側から延びるスリット状のものであり、前記切起片P5をカット孔P2に挿通させる際の前記切起片P5の基端P52への応力集中を緩和するためのものである。
【0022】
前記切起片P5は、図3及び図4に示すように、先端側が膨らんだ形状、具体的には全体として矢印形状をなすもので、境界部P53を挟んで基端P52側に基端領域P54を備えるとともに、先端P51側に先端領域P55を備えている。
【0023】
前記打ち抜き孔P1は、前記切起片P5に対応する大きさ及び形状をなしており、抜き刃32による穿孔直後は、図10に示すように、抜き刃32の形状に対応したスリット状のものであり、切起片P5を切り起こした後は、図3に示すように、切起片P5の形状に対応した矢印形状の空間である。
【0024】
前記カット孔P2は、図3及び図10に示すように、切起片P5を主として係わり合わせるための第一のスリットP21と、この第一のスリットP21の途中から打ち抜き孔P1方向に伸びる左右方向に対をなす第二のスリットP22とからなる。
【0025】
このように用紙Pを綴じる際に使用される綴じ機1について、図1図3図5図9及び図11図16を参照して説明する。
【0026】
この綴じ機1は、図1図3図5図9及び図11図16に示すように、複数枚の用紙Pに切起片P5を形成しつつ打ち抜き孔P1を穿設する抜き刃32と、この抜き刃32に隣接して設けられ前記切起片P5の先端P51側を係止させるためのカット孔P2を穿設する切込刃33と、これら抜き刃32及び切込刃33を保持する本体であるベース部2と、このベース部2に用紙挿入用隙間35を介して配設されたパンチ台4とを具備してなる。前記ベース部2には、操作レバー5が回動可能に取り付けてあるとともに、このベース部2の内部には、前記操作レバー5に接続された駆動機構6の駆動プレート61が収容してある。さらに、本実施形態の綴じ機1は、前記切起片P5を切込刃33の窓D3に挿入するための挿入部材であるインナーカム34と、このインナーカム34とは別に設けられ切起片P5が切込刃33の窓D3に挿入される際に退避する退避位置(S)及び前記切起片P5を窓D3に挿入された状態に保つための拘束位置(R)をとり得る拘束部材7を備えてなる。
【0027】
前記ベース部2は、図1図3図5図6及び図11図16に示すように、内部に前記スライド部材31及び前記駆動プレート61を配する空間を備えたベースフレーム21と、このベースフレーム21の下側に外嵌されるベースカバー22とからなる。
【0028】
前記ベースフレーム21は、図1図3図5図6及び図11図16に示すように、ベース部2の上向面F14を形成する前部ハウジングFと、操作レバー5の上方に位置し操作レバー5を操作する際に手をかけるハンドル部を形成する後部ハウジングRとからなり、合成樹脂により一体に成形されている。
【0029】
前記前部ハウジングFは、図1図3図5図6及び図11図16に示すように、天壁F1と、この天壁F1の前縁から垂下する前壁F2と、前記天壁F1の左右両側縁から垂下する左右の側壁F3とからなり、内部に刃ユニット3を収容するための空間を備えている。前記天壁F1は、前記抜き刃32及び切込刃33が通過するための開口F11を有している。この天壁F1の下面側には、前記開口F11縁の近傍に設けられ後述するインナーカム34の軸341を受けるための図示しない軸受部と、この軸受部に隣接して設けられインナーカム34のアーム344を係止するための係止壁F13及び係止ピンF15とを設けている。この天壁F1の上面である上向面F14と、前記パンチ台4の下向面414との間に用紙Pを挿入するための隙間35を形成している。また、本実施形態では、前記天壁F1に用紙Pをパンチ台4側に寄せるためのリブ状の突部F16を設けている。対をなす2枚の突部F16は、用紙挿入用の隙間35の奥側領域に略平行に配されており、前記ベースフレーム21に一体に形成されている。前記前壁F2には、中央に前記スライド部材31を鉛直方向に案内するためのレール溝F21が設けられている。前記側壁F3には、前側に前記スライド部材31を鉛直方向に案内するためのレール溝F31が設けられているとともに、中央にドライブシャフト36を上下方向に案内するための長孔F32が設けられている。この側壁F3には、支軸53を介して操作レバー5が上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0030】
前記後部ハウジングRは、図1図3図5図6及び図11図16に示すように、手を掛けるのに適した形状をなすもので、内部にコイルスプリングS1及び前記駆動プレート61を収容するための空間を備えている。具体的には、この後部ハウジングRは、前記前部ハウジングFの天壁F1の後端から立ち上がる前壁R1と、この前壁R1の上端から後方に延伸する天壁R2と、この天壁R2の左右両側端から垂下する左右の側壁R3と、前記天壁R2の後端から垂下する後壁R4とを備えている。前記天壁R2は、前記前壁R1と協働して前記コイルスプリングS1の上端を保持するスプリング保持部R21と、このスプリング保持部R21の後側に設けられ前記パンチ台4及びベースカバー22を取り付けるための取付部R22と、この取付部R22の両側に設けられ後方に向かって漸次下がる手掛け用の傾斜部R23とを備えている。前記側壁R3には、軸62を介して駆動プレート61が回動可能に取り付けられている。前記後壁R4には、ストラップ等のオプションを挿通させるための挿通孔R41が設けられている。
【0031】
前記ベースカバー22は、図1図5図6及び図11図16に示すように、前記ベースフレーム21の下側に外嵌されるもので、前端部及び後端部にそれぞれ設けられた係合部23a、23bによって前記ベースフレーム21に係り合っているとともに、中間部においてボルト20を用いて前記ベースフレーム21の前記取付部R22に螺着されている。このベースカバー22には、操作レバー5との干渉を避けるための窓24が設けられている。
【0032】
このようにしてなるベース部2内に、抜き刃32及び切込刃33を有した刃ユニット3を収納している。
【0033】
前記刃ユニット3は、図5図9及び図11図16に示すように、前記ベースフレーム21のレール溝F21、F31に案内されて鉛直姿勢を維持しつつ昇降可能なスライド部材31と、このスライド部材31に取り付けられた抜き刃32と、この抜き刃32に隣接させて配された切込刃33と、前記抜き刃32の内側に配され前記抜き刃32内に収まる初期姿勢(S)から抜き刃32外に突出する回動姿勢(K)との間で、前記スライド部材31に軸341を介して回転可能に枢止されたインナーカム34と、前記初期姿勢(S)に自己復帰する方向に前記インナーカム34を回動付勢するコイルスプリングS2とを具備してなる。
【0034】
前記スライド部材31は、図5図8及び図11図16に示すように、前記ベースフレーム21のレール溝F21、F31に上下方向にスライド可能に係合する突条311を備えたブロック状のもので、ドライブシャフト36を介して前記駆動機構6に接続されている。すなわち、このドライブシャフト36は、前記駆動機構6の駆動プレート61の先端に設けられた長孔614に係わり合わせてある。前記スライド部材31は、上方に開放された箱状のもので、前記抜き刃32及び切込刃33の下半部が収容され得るようになっている。
【0035】
前記切込刃33は、図3及び図10に示すようなゲタ状をなすスリットP21、P22からなるカット孔P2を形成するものであって、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られている。この切込刃33は、図2図3図5図9及び図11図16に示すように、第一のスリットP21を形成するための第一のブレードD1と、この第一のブレードD1の途中から打ち抜き孔の方向に延びる第二のスリットP22を形成するための第二のブレードD2とを備えている。
【0036】
前記第一のブレードD1は、用紙Pから打ち抜かれた切起片P5を通過させるための窓D3を備えている。窓D3の先端側の縁D4は、当該窓D3に挿入された切起片P5に係わり合って当該切起片P5をカット孔P2内に引き込むためのものであり、当該切込刃33の窓D3の先端側の縁D4に連続し基端側に突出している板状素材を切込刃33の先端側に巻き込んで折り曲げることによって形成されたものである。なお、符号D5は、折り曲げた板状素材の先端を180度以上反転させて切込刃33から浮き上がらないようにするための逃げ孔である。
【0037】
前記第二のブレードD2は、第一のブレードD1の窓D3の両側縁からそれぞれ抜き刃32側に折り曲げて形成されたものであり、用紙Pに最初に当接する尖端部D21と、この先端部D21よりも後に用紙Pに当接する傾斜部D22とを備えている。具体的には、本実施形態の第二のブレードD2はそれぞれ、正面視において窓D3の中央部側が切込刃33の先端方向に突出するとともに、側面視において抜き刃32側が切込刃33の先端方向に突出するように構成されている。換言すれば、各第二のブレードD2は、用紙Pへの貫入時にかかる抵抗をできるだけ小さくするために、第一のブレードD1から最も離れた前記尖端部D21が切込刃33の先端側に位置するとともに、この尖端部D21から第一のブレードD1側方向に向かって漸次切込刃33の基端側へと傾斜する前記傾斜部D22を有するようになっている。
【0038】
前記抜き刃32は、図3及び図10に示すような用紙Pに矢尻状の切起片P5を形成するものであって、一枚の板金素材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことにより作られている。抜き刃32は、図2図3図5図9及び図11図16に示すように、用紙Pに打ち抜き孔P1を打ち抜くための刃本体D7と、用紙Pにスリット状の逃げ部P6を形成するための補助刃部D8とを備えている。前記抜き刃32の内部空間には、前記切起片P5を前記切込刃33に設けられた窓D3に挿入させるためのインナーカム34を設けている。なお、符号D9は、インナーカム34との干渉を防ぐための開口である。
【0039】
前記インナーカム34は、図2図3図5図9及び図11図16に示すように、基端に軸341を有するとともに先端に前記切起片P5を前記切込刃33に設けられた窓D3に挿入させるための押し出し部343を備えたもので、その軸341が前記抜き刃32及びスライド部材31に支持されている。前記インナーカム34の基端には、該インナーカム34を回動させるためのアーム344が突出させてある。このインナーカム34は、前記スライド部材31が上方へ移動する際に、前記アーム344の上面が前記ベースフレーム21に設けられた係止ピンF15の下縁に当接するように設定してある。そして、当接後さらにスライド部材31が上方へ移動することにより、基端の軸341が前記ベースフレーム21に設けられた軸受部に支持されながら、該インナーカム34が回動姿勢(K)にまで回動するように構成されている。すなわち、用紙Pに打ち抜き孔P1が形成された後に、前記インナーカム34が切起片P5を押圧しつつ切込刃33方向に回動するように構成されている。
【0040】
以上のようにしてなる刃ユニット3は、駆動機構6を介して上方に移動されるようにしている。
【0041】
前記駆動機構6は、図5図6図8及び図11図16に示すように、前記刃ユニット3を付勢して待機位置と穿孔位置との間で往復動作させるための駆動プレート61と、この駆動プレート61に操作力を伝達するためのレバープレート51と、このレバープレート51からの操作力が消勢した際に前記駆動プレート61を初期位置に戻すためのコイルスプリングS1とを主体に構成されている。
【0042】
前記駆動プレート61は、図5図6図8及び図11図16に示すように、基端が軸62を介してベース部2の後部ハウジングRに枢着され、先端部で前記刃ユニット3を付勢するように構成されている。具体的には、駆動プレート61は、天壁611と、この天壁611の左右両側縁から垂下する左右の側壁612とを備えた金属製のものである。前記天壁611には、該天壁611と前記ベースフレーム21の後部ハウジングRの天壁F1との間に配されるコイルスプリングS1を保持するためのスプリング保持部613が設けられている。前記駆動プレート61は、前記コイルスプリングS1によって下方に付勢されている。前記左右の側壁612の前端部、すなわち、駆動プレート61の先端部には、刃ユニット3に貫通させた前記ドライブシャフト36を案内するための長孔614が設けられている。この長孔614は、刃ユニット3の進退方向に直交する方向に伸びるものであり、前記ドライブシャフト36がスライド及び回転可能に挿通されている。また、ドライブシャフト36の両端はベース部2の両側壁F3に設けられた前記長孔F32にスライド可能に挿通されている。
【0043】
前記操作レバー5は、図1図5図6及び図8に示すように、金属製のレバープレート51と、このレバープレート51の外方に装着される樹脂製のレバーカバー52とからなる。
【0044】
前記レバープレート51は、板金素材を折曲加工したもので、底壁511と、この底壁511の両側縁から立ち上がる側壁512とを有している。前記側壁512は、操作レバー5の支軸53から偏位した位置に付勢軸54を備えている。この付勢軸54を前記駆動プレート61の中間部に枢着している。
【0045】
前記レバーカバー52は、手を掛けるのに適した形状をなすもので、操作レバー5の支軸53近傍に凹部521を備えている。
【0046】
前記パンチ台4は、図1図3図5図7及び図11図16に示すように、前記抜き刃32及び切込刃33と協働して用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2を穿孔するためのパンチプレート41と、このパンチプレート41の上部に配され前記ベース部2に固定される扁平箱形をなすトップフレーム42とを備えている。
【0047】
パンチプレート41は、図1図3図5図7及び図11図16に示すように、前記抜き刃32と協働して用紙Pに打ち抜き孔P1を穿設するための穿孔部412と、前記切込刃33と協働して用紙Pにカット孔P2を穿孔するための穿孔部413とを備えた金属製のもので、前記トップフレーム42の下面に重ね合わせた状態で、前記ベースフレーム21に図示しないビス及び位置決めピンを用いて取り付けられている。また、本実施形態においては、前記パンチプレート41の下向面414に用紙Pをパンチ台4側から離すための突部415が設けられている。対をなす2つの突部415は、用紙挿入用の隙間35の手前側に対をなして配されている。各突部415は、略半球状をなすもので、前記パンチ台4のパンチプレート41に一体に形成されている。なお、図7では、パンチプレート41の一部を破断して示している。
【0048】
前記トップフレーム42は、上方及び前方に開放された前部ハウジング44と、この前部ハウジング44と一体に形成され下方及び後方に開放された後部ハウジング45とを備えている。
【0049】
前記前部ハウジング44は、窓カバー43取付用の窓カバー取付部441と、拘束部材7を取り付けるための拘束部材取付部442と、前側領域に設けられ前記抜き刃32及び切込刃33がそれぞれ通過する通過孔443と、これら通過孔443の縁から立ち上げて形成された壁444、445、446とを備えている。前記窓カバー取付部441は、前記トップフレーム42内に溜まった紙粉を外部に取り除くべく、前後方向にスライド開閉可能に取り付けられた透明な窓カバー43を取り付けることが可能な形状をなしている。前記拘束部材取付部442は、後端部にピン挿通孔447を有した取付台座448と、この取付台座448の両側に配される対をなす起立壁449とを備えてなる。各起立壁449は、上端に位置決め用の切り欠き部440を備えてなる。なお、図7では、一方の起立壁449の一部を破断して示している。前記壁444、445、446は、前記通過孔443から前記用紙Pの切り粉が落ちることを抑制するためのもので、前記通過孔443の縁に沿って連続的に形成されている。前端側の壁444は、他の壁445、446よりも高さ寸法が大きく設定されたもので、穿孔位置(C)に突出した抜き刃32を案内するように構成されている。後端側の壁446は、前記対をなす起立壁449間に形成されるもので、他の壁444、445よりも高さ寸法が小さく設定されている。
【0050】
前記後部ハウジング45は、前記ベースフレーム21の後部ハウジングRの外側を覆うようにして嵌め合わせられ、前記ビス20を用いてベースフレーム21に螺着されている。
【0051】
このようなトップフレーム42に拘束部材7が取り付けられている。
【0052】
前記拘束部材7は、切起片P5を窓D3に挿入された状態に保つためのもので、本実施形態では、切込刃33と別に設けられている。前記拘束部材7は、図2図3図5図8及び図11図16に示すように、回動端711を前記隙間35に臨ませてパンチ台4側に配設された拘束部材本体71と、この拘束部材本体71の基端712を保持する取付部72と、この取付部72に設けられ前記拘束部材本体71に対向配置されたスプリングリテーナ73と、このスプリングリテーナ73に保持されて前記拘束部材本体71を拘束位置(R)方向に付勢するスプリング74と、このスプリング74の付勢力に抗して前記拘束部材本体71を拘束位置(S)に係止するストッパ部75とを備えたものである。本実施形態においては、前記拘束部材7のスプリング74以外の部分を合成樹脂で一体に成形している。
【0053】
前記拘束部材本体71は、図5図8及び図11図16に示すように、弾性付勢力により前記切起片P5を窓D3に挿入された状態に保つための拘束位置(R)に保持されるとともに、切起片P5が窓D3に挿入される際の操作力を利用して一時的に切起片P5が切込刃33の窓D3に挿入される際に退避する退避位置(S)に弾性退避するものである。具体的には、拘束部材本体71は、前記パンチ台4のトップフレーム42を介して静止部材であるベース部2に保持され、基端712側で片持ち支持された弾性変形可能な板状のものである。前記拘束部材本体71は、当該拘束部材本体71の厚み方向、換言すれば、綴じ機1の前後方向に移動して前記拘束位置(R)と前記退避位置(S)とをとり得るように構成され、その回動端712で前記切起片P5を拘束するようにしたものである。換言すれば、拘束部材本体71は、自らの厚み方向への弾性変形により拘束位置(R)から退避位置(S)に移動するものであり、下面713で切起片P5を下方に押圧するようになっている。そして、この拘束部材本体71は、回動端712の厚み寸法をその他の部分の厚み寸法よりも大きく設定している。より具体的には、拘束部材本体71は、回動端712近傍に傾斜面714を形成しており、前記拘束位置(R)から退避位置(S)へと移動させる操作力が加えられた際に、インナーカム34及び切起片P5との引っ掛かりをできるだけ少なくするための案内面として利用することができるようになっている。また、拘束部材本体71は、中間部において前記スプリング74の一端を保持するように構成されている。
【0054】
前記取付部72は、図3図5図8及び図11図16に示すように、前端部で前記拘束部材本体71の基端712を支持するとともに、後端部に設けられた下方に突出するピン721と、中間部に設けられた左右両方向に突出する突部722とを備えている。そして、ピン721を前記トップフレーム42のピン挿通孔447に装着するとともに、突部722を前記トップフレーム42の切り欠き部440に装着することによって、前記トップフレーム42の上方から当該拘束部材7を当該トップフレーム42に取り付けるようにしている。
【0055】
前記スプリングリテーナ73は、図5図8及び図11図16に示すように、基端部が前記取付部72に支持されるとともに、先端部において前記スプリング74の他端を保持する板状のもので、後部が前記トップフレーム42の取付台座448に添接されている。
【0056】
前記スプリング74は、図5図8及び図11図16に示すように本実施形態ではコイルスプリングであり、反発力が比較的弱いものである。
【0057】
前記ストッパ部75は、図5図8及び図11図16に示すように前記拘束部材本体71を前記スプリング74の付勢力に抗して拘束位置(R)に拘束するためのもので、前記トップフレーム42の壁446に係わり合う係止片751と、この係止片751に前記拘束部材本体71の動きを伝達するためのアーム752とを備えている。このアーム752は、一端が係止片751の基端部に接続されるとともに、他端が前記拘束部材本体71の回動端711近傍に接続されている。
【0058】
このような綴じ機1において、図5及び図6に示すように、前記前記用紙挿入用隙間35に挿入された用紙Pが当接する部位、すなわち隙間35の奥に配された係止壁83に、前記用紙Pの角部P4を当接させることにより用紙Pの位置決めを行う位置決め部81を形成している。また、前記綴じ機1の両側面には、図1図3及び図7に示すように、位置決め部81により位置決めした用紙Pの位置決め状態を確認するための目印82を設けている。
【0059】
なお、この実施形態のように、スライド部材31と、操作レバー5とをリンク機構である前記駆動機構6により接続しておけば、刃抜き取り時の性能をさらに向上させることができる。すなわち、用紙Pの枚数が多くなり、前記コイルスプリングS1の力だけでは切起片P5を用紙Pの一面Pa側に引き抜くことができない場合でも、前記操作レバー5に、下方への操作力を加えることによって、引き抜きを完了させることが可能となる。
【0060】
次に、この綴じ機1の作動を説明する。
【0061】
操作レバー5を操作しない状態では、図5に示すように、スライド部材31が下限位置に保持されており、前記インナーカム34が抜き刃32内に収容された初期姿勢(S)を保っている。この状態で、図11に示すように、重ね合わせた複数枚の用紙Pをベースフレーム21の上向面F14とパンチプレート41の下向面414との間に形成されている隙間35の奥まで挿入する。そして、窓カバー43の上方から、通過孔443を通して用紙Pに穿孔される打ち抜き孔P1及びカット孔P2の位置を確認する。また、綴じ機1の側面側から、目印82を用いて、位置決め部81により位置決めした用紙Pの位置決め状態を確認する。しかる後に、操作レバー5を上方に操作すると、この操作レバー5に加えられた力が、駆動機構6を通じてスライド部材31の上方への動きに変換して伝えられる。
【0062】
詳述すれば、操作レバー5を上方に操作すると、この操作レバー5のレバープレート51は、支軸53を中心に回転動作するとともに、駆動プレート61を上方へ押し上げる。前記操作レバー5を上方に操作した力が、駆動プレート61を介してドライブシャフト36に伝達される。その結果、前記スライド部材31を上方に移動させることとなる。
【0063】
スライド部材31が上方に移動を始めると、前記コイルスプリングS1の付勢力に抗してスライド部材31が上昇する。その結果、このスライド部材31に取り付けられた抜き刃32及び切込刃33の先端が用紙Pの一面Paに当接し、この用紙Pがパンチプレート41に押し付けられる位置まで押し上げられる。そして、この位置から操作レバー5をさらに上方に操作すると、前記抜き刃32及び切込刃33によって用紙Pがパンチプレート41に押しつけられた状態のまま、図12に示すように、前記抜き刃32及び前記切込刃33が前記用紙Pを貫通し、その用紙Pに打ち抜き孔P1及びカット孔P2が穿孔される。
【0064】
穿孔後さらに、前記抜き刃32及び前記切込刃33が上昇すると、前記抜き刃32の内部に配されるインナーカム34のアーム344が前記係止壁F13の下方に配された係止ピンF15に当接し、インナーカム34とスライド部材31との間に配されるコイルスプリングS2の付勢力に抗して、図13に示すように、前記インナーカム34が回動姿勢(K)にまで回動する。その結果、打ち抜き孔P1から用紙Pの他面Pb側に切り起こされた切起片P5の先端P51側が、切込刃33の窓D3に挿入される。
【0065】
なお、この綴じ機1は、前記窓D3の先端側の縁D4が切起片P5の動作の邪魔にならない位置に設定してある。すなわち、この実施形態においては、窓D3の先端側の縁D4に全く切起片P5が触れることなく切起片P5を窓D3内に挿入されるように各部の寸法が設定してある。そのため、操作力が一時的に増大することなく切起片P5を窓D3内に挿入することができる。インナーカム34によって窓D3内に挿入された切起片P5は、拘束位置(R)に待機している拘束部材本体71の正面に当接することになるが、この拘束部材本体71は押圧力を受けると退避位置(S)に弾性退避するようになっているので、大きな操作力を有することなく拘束部材本体71の回動端711の下側に潜り込ませることができる。すなわち、図12に示すように、切起片P5が拘束部材本体71の正面に接触した位置からさらにインナーカム34が窓侵入方向に回動すると、その力によって、図13に示すように、拘束部材本体71が前記スプリング74の力に抗して退避位置(S)側に回動しながら退避することになる。そのため、インナーカム34が回動姿勢(K)に達した段階で、前記切起片P5が拘束部材本体71の回動端711の下側にもぐり込むことができる位置にまで達する。
【0066】
ついで、操作レバー5への操作を解除すると、前記コイルスプリングS2の付勢により前記インナーカム34が回動姿勢(K)から初期姿勢(S)に復帰する。詳述すれば、前記切起片P5が拘束部材本体71の回動端711の下側にもぐり込んだ状態からインナーカム34が初期姿勢(S)方向に復帰し始めると、図14に示すように、拘束部材本体71が自身の弾性保形力及びスプリング74の弾性付勢力により拘束位置(R)方向に回動し、最終的にインナーカム34が切起片P5から離れても切起片P5は前記拘束部材本体71により拘束されて窓D3側に戻らないこととなる。すなわち、切起片P5は、前記拘束部材本体71の回動端711の下面713で押圧され、窓D3内に拘束される。
【0067】
また、前記インナーカム34の初期姿勢(S)方向への復帰とともに、前記抜き刃32及び切込刃33がコイルスプリングS1の付勢により没入側たる下方に移動し、図15に示す状態を経て、用紙Pがパンチプレート41から引き離されながら抜き刃32及び切込刃33が用紙Pから抜き取られる。その際に、切込刃33の窓D3に挿入されている切起片P5は、図14に示すように、前記拘束部材本体71の回動端711で下方に押圧された後、図15に示すように、窓D3の先端側の縁D4に押圧されながらカット孔P2を通過して、図16に示すように、用紙Pの一面Pa側に抜き出され、この切込刃33により複数の用紙Pが結合される。
【0068】
この状態で、用紙Pを綴じ機1から抜き取れば、その途上において、前記用紙Pの接合部分P3が厚み方向に圧縮変形され、図16に二点鎖線で示すように、前述した冊子Bができあがる。
【0069】
以上に述べたように、本実施形態に係る綴じ機1は、複数枚の用紙Pに切起片P5を形成しつつ打ち抜き孔P1を穿設する抜き刃32と、この抜き刃32に隣接して設けられ前記切起片P5の先端P51側を係止させるためのカット孔P2を穿設する切込刃33と、これら抜き刃32及び切込刃33を保持するベース部2と、このベース部2に用紙挿入用隙間35を介して配設されたパンチ台4とを具備してなり、前記ベース部2に保持された前記抜き刃32と切込刃33とを前記用紙挿入用隙間35に挿入された用紙Pを貫通させてパンチ台4側に切り起こされた切起片P5の先端P51側を前記切込刃33の窓D3に係わり合わせた状態で、その切込刃33と前記抜き刃32とをベース部2側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片P5を前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pを綴じるようにしたものであって、前記切起片P5を切込刃33の窓D3に挿入するためのインナーカム34と、このインナーカム34とは別に設けられ切起片P5が切込刃33の窓D3に挿入される際に退避する退避位置(S)及び前記切起片P5を窓D3に挿入された状態に保つための拘束位置(R)をとり得る拘束部材7とを備えてなり、前記拘束部材7が、切込刃33と別に設けられたものである。
【0070】
本実施形態の綴じ機1は、上述したようなものであるので、拘束部材7が切起片P5を窓D3に挿入された状態に保つため、インナーカム34が切起片P5が開放される逆方向に作動した場合であっても、切起片P5がインナーカム34とともに戻らなくなる。そのため、切起片P5が窓D3に挿入される際に窓D3の縁D4との干渉をできるだけ小さくしたり、または、全くなくしたりする等、窓D3に関する設計の自由度を高めることができる。したがって、窓D3への挿入時に切起片P5に無理な力がかかって当該切起片P5が破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなってしまうという問題なしに、確実に用紙Pを綴じることのできる綴じ機1を提供することができる。すなわち、従来のものでは、窓D3にいったん挿入された切起片P5はインナーカム34が回動姿勢(K)から初期姿勢(S)方向に戻るのに伴って打ち抜き孔P1方向へと戻ってしまうという事情があり、このような切起片P5の戻りを防ぐために窓D3に切起片P5の先端P51側を変形させながら押し込んで、窓D3の縁に切起片P5を引っ掛けるように構成されていた。そのため、切起片P5を窓D3に押し込む際に一時的に操作力が大きくなってしまっていたという問題があったが、本実施形態のようなものであれば、切起片P5を窓D3に無理矢理押し込む必要なしに窓D3内に保持させておくことができるため、前述したような操作力の一時的な増大を招く必要がなくなる。
【0071】
前記拘束部材本体71が、弾性付勢力により前記拘束位置(R)に保持されるとともに、切起片P5が窓D3に挿入される際の操作力を利用して一時的に前記退避位置(S)に弾性退避するものであるので、拘束部材7を比較的簡単な構造とすることができる。そのため、綴じ機1全体をコンパクトにすることができる。
【0072】
前記拘束部材本体71が、厚み方向に移動して前記拘束位置(R)と前記退避位置(S)とをとり得るように構成され、その回動端711で前記切起片P5を拘束するようにしたものであるので、拘束部材本体71の回転動作を有効に利用できる。また、本実施形態で拘束部材本体71に退避位置(S)方向への操作力を与えるインナーカム34が回転動作するものであるため、このインナーカム34の回転動作を拘束部材本体71の回動動作に伝達しやすい。
【0073】
前記拘束部材7が、回動端711を前記隙間35に臨ませてパンチ台4側に配設された拘束部材本体71と、この拘束部材本体71の基端712を保持する取付部72と、この取付部72に設けられ前記拘束部材本体71に対向配置されたスプリングリテーナ73と、このスプリングリテーナ73に保持されて前記拘束部材本体71を前記拘束位置(R)方向に付勢するスプリング74と、このスプリング74の付勢力に抗して前記拘束部材本体71を拘束位置(R)に係止するストッパ部75とを備えたものであるので、これらをユニット化した状態で綴じ機1に組み込むことができる。特に、本実施形態では、パンチ台4の拘束部材取付部442にユニット化された拘束部材7を上方から取り付けるだけでよいため、組み立て作業も容易である。
【0074】
前記拘束部材本体71が、自らの厚み方向への弾性変形により拘束位置(R)から退避位置(S)に移動するものであり、回動端711の厚み寸法をその他の部分の厚み寸法よりも大きく設定しているので、回動端711の下面713に形成された広い領域で切起片P5を拘束することができるとともに、回動端711よりも厚み寸法の小さい他の部分で部材の弾性変形を容易に行うことができるようになっている。
【0075】
また、本実施形態の綴じ機1によれば、以下のような効果も得られる。
【0076】
この綴じ機1の使用者は用紙Pがどのように綴じられるのかを目で見ることができるため、綴じ機1の使用の際に、心地良い使用感を与えることができる。
【0077】
また、パンチ台4のトップフレーム42に壁444、445、446を設けているので、前記パンチプレート41の穿孔部412、413の下側から前記用紙Pの切り粉が落ちることを抑制することができる。特に、壁446は、拘束部材7のストッパ部75の係止壁としての役割も担っている。さらに、窓カバー43が開けられても、前記窓カバー43が開いて使用者の手の届き得る位置に高い起立壁449が立設されているため、使用者の手が直接抜き刃32及び切込刃33に触れることが防止または抑制される。
【0078】
抜き刃32が、補助刃部D8を備えたものであるので、この補助刃部D8によって形成された逃げ部P6によって、打ち抜き孔P1の基端から破れが生じるのを抑制または防止することができる。また、インナーカム34が切起片P5を押圧する際に、切起片P5が切込刃33の窓D3を通過できないほど長くなってしまう、という不具合の発生を効果的に抑制または防止することができ、前記切起片P5の基端P52が破断するのを抑制または防止することができる。
【0079】
切込刃33が、窓D3の先端側の縁D4に板金素材を折り曲げ加工した接触部を備えているので、切起片P5の両側部を部分的に押圧して、切起片P5をカット孔P2に通過させることができる。そのため、切起片P5の枚数が比較的多い場合であっても、切起片P5が窓D3の縁D4に当接してカット孔P2を通過する際に切込刃32と切起片P5との間に生じる摩擦力が増大することを抑制することができる。
【0080】
また、隙間35に挿入された用紙Pは、隙間35の奥側領域においてベース部2側の突部F16によりパンチ台4に接近するように持ち上げられるので、突部F16がない場合に比べて用紙Pの厚み方向に変位する量が少なくて済む。換言すれば、隙間35の奥側領域においては、ベース部2側の突部F16によって、用紙Pがパンチ台4側に寄せられたままであるので、綴じ動作中に用紙Pが厚み方向に暴れることを、隙間35全体を狭くすることなく、効果的に抑制することができる。したがって、従来の紙押さえを設けたものに準じた効果が得られる。そのため、可動部品を用いることなく用紙Pを押さえることができ、綺麗な打ち抜き孔P1及びカット孔P2を形成することができる。一方、パンチ台4側の突部415により用紙Pがパンチ台4から引き離されるように押し下げられるので、綴じ動作が終了し、用紙Pを引き抜く際、切起片P5の用紙Pから上面すなわち他面Pb側に突出している部分が、パンチプレート41の縁に引っ掛かるのを防止又は抑制することができる。
【0081】
次に、本発明の他の実施形態について図17を参照して説明する。本実施形態の綴じ機は、請求項6及び請求項7に記載の綴じ機に対応するものである。なお、上述した実施形態と同一または対応する部分には、前に「A」を加えた同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0082】
この綴じ機は、前述した実施形態と同様に、複数枚の用紙Pに切起片P5を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片P5の先端P51側を係止させるためのカット孔P2を穿設する切込刃A33と、これら抜き刃及び切込刃A33を保持するベース部と、このベース部に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記ベース部に保持された前記抜き刃と切込刃A33とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙Pを貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片P5の先端P51側を前記切込刃A33の窓AD3に係わり合わせた状態で、その切込刃A33と前記抜き刃とをベース部側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片P5を前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pを綴じるようにしたものである。
【0083】
そして、本実施形態の綴じ機は、前記切起片P5を切込刃A33の窓AD3に挿入するための挿入部材であるインナーカムA34と、このインナーカムA34とは別に設けられ切起片P5が切込刃A33の窓AD3に挿入される際に退避する退避位置(S)及び前記切起片P5を窓AD3に挿入された状態に保つための拘束位置(R)をとり得る拘束部材A7とを備えてなる。
【0084】
この拘束部材A7は、切込刃A33に設けられたものであり切込刃A33の厚み方向に移動することによって前記退避位置(S)及び拘束位置(R)の間で作動し得るものである。この拘束部材A7は、前記切込刃A33の窓AD3の先端側の縁AD4に設けられたものであり、前記切起片P5が窓AD3に挿入されるときにのみ厚み方向に退避するものである。具体的には、この拘束部材A7は、切込刃A33の先端側の縁AD4近傍にヒンジA70を介して回転可能に取り付けられたもので、その回動端で前記切起片P5を拘束するようにしている。この拘束部材A7は、例えば、自重により前記拘束位置(R)に保持されるとともに、切起片P5が窓AD3に挿入される際の操作力を利用して一時的に前記退避位置(S)に退避するようになっている。
【0085】
このようなものであれば、上述したのと同様に、拘束部材A7が切起片P5を窓AD3に挿入された状態に保つため、インナーカムA34が切起片P5が開放される逆方向に作動した場合であっても、切起片P5がインナーカムA34とともに戻らなくなる。そのため、切起片P5が窓AD3に挿入される際に窓AD3の縁AD4との干渉をできるだけ小さくしたり、または、全くなくしたりする等、窓AD3に関する設計の自由度を高めることができる。したがって、窓AD3への挿入時に切起片P5に無理な力がかかって当該切起片P5が破れたり、操作に要するエネルギーが大きくなってしまうという問題を解消できる。
【0086】
なお、請求項6及び請求項7に対応する綴じ機は、上述したものに限られず種々変更可能なのはもちろんである。
【0087】
例えば、拘束部材が設けられる位置は、窓の先端側の縁以外の縁であってもよいし、窓の縁から少し離れた位置であってもよい。さらに、拘束部材の切込刃に対する取り付け方法もヒンジに限られず種々変更可能である。また、切込刃と別体の拘束部材を切込刃に取り付けるものに限られず、拘束部材が切込刃に一体に設けられたものであってもよい。
【0088】
さらに、拘束部材の切込刃に対する動きは、厚み方向に退避するものであればどのようなものであってもよく、例えば、スライド動作等、回転動作以外の動作であってもよい。
【0089】
次に、本発明のさらに他の実施形態について図18を参照して説明する。本実施形態の綴じ機は、請求項6及び請求項8に記載の綴じ機に対応するものである。なお、上述した実施形態と同一または対応する部分には、前に「B」を加えた同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0090】
この綴じ機は、前述した実施形態と同様に、複数枚の用紙Pに切起片P5を形成しつつ打ち抜き孔を穿設する抜き刃と、この抜き刃に隣接して設けられ前記切起片P5の先端P51側を係止させるためのカット孔P2を穿設する切込刃B33と、これら抜き刃及び切込刃B33を保持するベース部と、このベース部に用紙挿入用隙間を介して配設されたパンチ台とを具備してなり、前記ベース部に保持された前記抜き刃と切込刃B33とを前記用紙挿入用隙間に挿入された用紙Pを貫通させてパンチ台側に切り起こされた切起片P5の先端P51側を前記切込刃B33の窓BD3に係わり合わせた状態で、その切込刃B33と前記抜き刃とをベース部側に復帰するように抜き取り動作させることによって、前記切起片P5を前記カット孔P2に貫通させて前記用紙Pを綴じるようにしたものである。
【0091】
そして、本実施形態の綴じ機は、前記切起片P5を切込刃B33の窓BD3に挿入するための挿入部材であるインナーカムB34と、このインナーカムB34とは別に設けられ切起片P5が切込刃B33の窓BD3に挿入される際に退避する退避位置(S)及び前記切起片P5を窓BD3に挿入された状態に保つための拘束位置(R)をとり得る拘束部材B7とを備えてなる。
【0092】
本実施形態の拘束部材B7は、切込刃B33に設けられたものであり切込刃B33の厚み方向に移動することによって前記退避位置(S)及び拘束位置(R)の間で作動し得るものであって、前記切込刃B33が、前記切起片P5が窓BD3に挿入されるときにのみ抵抗を軽減する方向に退避するものであり、この切込刃B33が前記拘束部材B7を兼ねている。具体的には、この拘束部材B7(切込刃B33)は、切込刃B33の基端側を中心として拘束部材B7(切込刃B33)の厚み方向に回転動作可能に設けられたもので、切起片P5が窓BD3に挿入される際に窓BD3の先端側の縁BD4が切起片P5と接触しない位置(または少し接触する位置)に移動するとともに、切起片P5が窓BD3に挿入された後は窓BD3の先端側の縁BD4で前記切起片P5を拘束するようにしている。拘束部材B7(切込刃B33)を作動させる方法は、操作レバーの操作に関連づけて作動させるものであってもよいし、操作レバーの操作とは無関係に作動させるものであってもよい。
【0093】
このようなものであっても、上述したのと同様の効果が得られる。
【0094】
なお、請求項6及び請求項8に対応する綴じ機は、上述したものに限られず種々変更可能なのはもちろんである。例えば、拘束部材(切込刃)の動きは、厚み方向に退避するものであればどのようなものであってもよく、例えば、スライド動作等、回転動作以外の動作であってもよい。
【0095】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0096】
例えば、挿入部材は、インナーカムに限られず、抜き刃の他、種々変更可能である。また、これら挿入部材の正方向または逆方向への動きは、回転動作に限られず、スライド動作等であってもよい。この挿入部材は、切込刃の進退動作と挿入部材の正方向及び逆方向への動作とを連動させて切込刃の最貫入位置を中心に前後で対称的な動きをするものであっても、切込刃の進退動作と挿入部材の作動とを連動させない部分を作り、切込刃が抜き取り方向に移動した後に挿入部材を逆方向に作動させるようなものであってもよい。
【0097】
拘束部材は、拘束部材作動機構によって、拘束位置と退避位置との間で動くものであってもよい。すなわち、拘束部材が、抜き刃及び切込刃が用紙を貫通させて前記挿入部材が前記切起片を切込刃の窓に挿入した段階で、前記切起片が拘束される方向に作動されるとともに、切込刃が一定距離抜き取り方向に移動した後に、切起片が解放される方向に作動されるものであればどのようなものであってもよい。
【0098】
また、拘束部材は、切込刃側、抜き刃側、またはベース部側のいずれに取り付けられたものであってもよい。さらに、拘束部材は、弾性付勢力を利用することなく、重力や他の操作力を利用して拘束位置に保持されるものであってもよい。また、拘束部材は、切起片が窓に挿入される際の操作力を利用して一時的に前記退避位置に退避するものであればどのようなものであってもよく、操作力を伝達するものは、インナーカムに限られず、例えば、切起片や、切込刃または抜き刃、ベース部やパンチ台に設けられた突部等であってもよい。
【0099】
さらに、拘束部材の形状や大きさは種々変更可能である。例えば、拘束部材の左右方向の寸法については、切起片の幅方向の全体にわたって押圧するように設定されたものや、切起片の幅方向の一部のみを押圧するように設定されたもの等であってもよい。また、拘束部材の上下方向の寸法については、切起片が窓の外部に出て挿入部材側に戻らない程度の長さを有したものであればどのようなものであってもよく、切起片を常に用紙の他面側に接触させた状態とすることができるような長さを有したものには限られない。
【0100】
拘束部材本体は、基端が固定された片持ち梁状をなすものであっても、基端が一方向または複数方向に回転可能なヒンジやジョイントによって接続されたものであってもよく、前記退避位置と拘束位置との移動は、回転動作に限られず種々変更可能である。
【0101】
綴じ機は、複数の切込刃を備えたものや、複数の抜き刃を備えたものであってもよい。例えば、複数の切起片を形成するための単一の抜き刃と、前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記複数の切起片を係止可能なカット孔を形成するための単一の切込刃を備えたものや、複数の切起片を形成するための複数の抜き刃と、前記前記複数の切起片に対応した数の切込刃を備えたものであってもよい。
【0102】
また、これら切込刃及び抜き刃の突没方向は、上述した実施形態に示すように、切込刃及び抜き刃の突出側を上方とし没入側を下方とするものに限られず、例えば、上下を逆向きにして、切込刃及び抜き刃の突出側を下方とし、没入側を上方として使用することも可能である。さらに、抜き刃及び切込刃の移動方向は、一時的に上下方向に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものや、左右方向、または斜め方向に移動することによって打ち抜き孔及びカット孔を形成するものであってもよい。例えば、上述した実施形態のものと上下を逆にした仕様のものも考えられる。この仕様の綴じ機は、前述した実施形態における「上方」、「下方」、「上昇」、「上面」、または「下面」を、それぞれ「下方」、「上方」、「下降」、「下面」、または「上面」と読み替えた構造をなしている。
【0103】
用紙は、シート状であれば、紙製またはプラスチック製等種々変更可能である。また、同質の材料により作られた複数枚のシート体を綴じるようにすれば、分別廃棄の際の手間をより少なくすることができる。
【0104】
刃ユニットは、切込刃、抜き刃、及びインナーカムの3ピース構造のみならず、切込刃及び抜き刃の2ピース構造であってもよい。この際、抜き刃は、穿孔姿勢から回動姿勢までの間で回動可能に設けられ穿孔姿勢において打ち抜き孔を形成し得るものとするのが好ましい。
【0105】
切込刃及び抜き刃は、図示したものに限られず種々変更可能である。例えば、切込刃は、図17及び図18等に模式的に示した一直線状のカット孔のみを形成する平坦なブレードを備えたもの、図示しないコ字状のカット孔を形成する両端側を厚み方向に屈曲させたブレードを備えたもの、図7等に示したようなH字状(またはゲタ状)のカット孔を形成する両端側を厚み方向に屈曲させた第一のブレード及びこの第一のブレードの屈曲方向とは反対側に延伸する第二のブレードを備えたもの等が考えられる。コ字状のカット孔形成用の切込刃やH字状(またはゲタ状)のカット孔形成用の切込刃におけるブレードを屈曲させる角度や、第一のブレードと第二のブレードとがなす角度は、図示したものに限られず種々変更可能である。切込刃の窓の形状も、図示したものに限られない。また、抜き刃は、図7等に示した矢印形状の打ち抜き孔を形成するものの他、U字形状の打ち抜き孔を形成するものや、補助刃部を備えていないものであってもよい。
【0106】
また、本実施形態では、パンチ台を静止させた状態で抜き刃及び切込刃を往復動作させるようにしていたが、これとは逆に、抜き刃及び切込刃を静止させた状態でパンチ台を往復動作させるように構成してもよい。
【0107】
前記実施形態では、操作レバーを手動で操作するものについて説明したが、電動で作動させるものであってもよい。操作レバーは、本実施形態に示した往復回動させるレバーに限らず、例えば一方向に回動させるダイヤル式のものや、直線的に作動させるスライダ式のもの等であってもよい。
【0108】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0109】
1…綴じ機
2…ベース部
32…抜き刃
33、A33…切込刃
D3、AD3…窓
D4、AD4…縁
35…隙間
4…パンチ台
7、A7…拘束部材
71…拘束部材本体
(S)…退避位置
(R)…拘束位置
711…回動端
712…基端
72…取付部
73…スプリングリテーナ
74…スプリング
75…ストッパ部
P…用紙
P1…打ち抜き孔
P2…カット孔
P5…切起片
P51…先端
図1
図3
図4
図6
図7
図8
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