(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係るラドル給湯制御方法及び装置を詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るラドル給湯制御方法が適用されたラドル給湯制御装置を備えたダイカストマシンの一部の構成を示す図である。
図2は、ダイカストマシンの射出スリーブ及びラドルの概略構成を示す斜視図である。
図3及び
図4は、射出スリーブ及びラドルの位置関係を示す図である。
図5は、ラドルからの溶湯の流出挙動を示す図である。
【0021】
図1に示すように、鋳造に用いられるダイカストマシン1は、射出スリーブ20を有する図示しない射出装置と、この射出装置の射出スリーブ20内に溶湯4を供給するためのラドル10とを備える。射出装置の射出スリーブ20は、図示しない金型のキャビティに連通している。
【0022】
図2に示すように、射出スリーブ20の上面部には、ラドル10から溶湯4を射出スリーブ20内に供給するための給湯口21が形成されている。射出スリーブ20は、例えば円筒状に形成されている。このように構成された射出スリーブ20内に供給された溶湯4は、プランジャチップ22が金型のキャビティ側へ前進することによって、キャビティ内へ射出されて充填される。
【0023】
射出スリーブ20に供給される溶湯4は、射出スリーブ20から離れた所定位置に設置された溶湯保温炉3内に溶融状態で貯留されている。溶湯保温炉3内に貯留された溶湯4は、アーム2の先端に取り付けられたラドル10により、溶湯保温炉3から汲み出されて射出スリーブ20内に払い出されて供給される。
【0024】
アーム2は、駆動ベース部5に内蔵された駆動モータ(図示せず)により溶湯保温炉3内の汲出位置と給湯口21上の払出位置との間を往復動可能に駆動される。ラドル10は、駆動ベース部5に内蔵されたモータやアーム2に内蔵されたチェーン等の動力伝達機構(図示せず)により、ラドル回転軸11を中心に回動する。
【0025】
ラドル10は、例えば半球状の周面部を有するラドル本体10aと、このラドル本体10aの周面部の頂部から外側に突出する注ぎ口10bとを備えている。具体的には、ラドル10は、注ぎ口10b側がラドル回転軸11を介してアーム2の先端に取り付けられることにより、ラドル回転軸11を中心に回転可能に構成されている。ラドル10は、射出スリーブ20内に供給する溶湯4の材質や給湯量等の給湯条件によって使用される種類が異なり、例えば表面にはライニングが施されている。
【0026】
溶湯4は、アーム2によってラドル10が溶湯保温炉3内に貯留されている溶湯4に浸漬された後に、ラドル10が引き上げられることにより汲み出される。ラドル10が引き上げられる際には、例えばラドル10を水平面に対して所定の傾斜角で傾斜させ、余分な溶湯4を溶湯保温炉3内に戻すようにする。これにより、ラドル10のラドル本体10a内には、1回の鋳造に必要な1ショット分の給湯量の溶湯4が汲み上げられる。
【0027】
その後、ラドル10は、アーム2の動作により
図1に示すような移動軌跡Lを描きながら溶湯保温炉3上から射出スリーブ20の給湯口21上の設定された給湯位置に搬送される。そして、ラドル10を給湯口21上でラドル本体10aが注ぎ口10bよりも上方に移動するように回転動作させることにより、注ぎ口10bから給湯口21内に溶湯4を給湯する。
【0028】
ラドル10は、
図3及び
図4に示すような設定された給湯位置に配置される。すなわち、ラドル10はラドル回転軸11を基準とした給湯位置に設置される。給湯位置は、ラドル10の設置時におけるラドル回転軸11の射出スリーブ20の給湯口21からの垂直距離である設置時垂直距離(以下、「設置高さ」と呼ぶ。)Hsと、ラドル10の設置時におけるラドル回転軸11の射出スリーブ20の給湯口21の最遠端21aからの水平距離である設置時水平距離(以下、「設置距離」と呼ぶ。)Dsとで定められる。
【0029】
なお、
図4に示すように、ラドル10は、射出スリーブ20の軸方向とラドル回転軸11の軸方向とが上方から見て直角に交わらない状態で給湯位置に配置される。従って、ラドル10は、
図1に示すような移動軌跡Lが水平面方向においては曲線状となるように搬送されて給湯位置に配置される。
【0030】
こうして給湯位置に配置されたラドル10からは、
図5に示すように、ラドル10が上述したように回転動作されて傾くことにより注ぎ口10bを介してラドル本体10a内の溶湯4が流出し、給湯口21に注がれる。このときの溶湯4の流出挙動に伴う、ラドル10のラドル回転軸11の回転速度に応じた流出溶湯4aの所定の到達距離までのラドル回転軸11からの水平距離を流出時水平距離(以下、「流出距離」と呼ぶ。)FDとし、この流出距離FDを得たときの流出溶湯4aの上記到達位置までのラドル回転軸11からの垂直距離を流出時垂直距離(以下、「流出高さ」と呼ぶ。)FHとする。
【0031】
図6は、ラドルの回転角度と溶湯の収容可能湯量との関係を示す図である。
図7は、ラドルからの溶湯の流出開始条件を示す図である。
図6に示すように、一般的に、ラドル10のラドル本体10a内に収容可能な溶湯4の湯量(収容可能湯量)は、ラドル10(ラドル回転軸11)の回転角度が大きくなるほど少なくなる傾向にある。
【0032】
具体的には、回転角度がa<b<cの関係にある場合、溶湯4の収容可能湯量は回転角度がaのときは回転角度がbのときよりも多く、回転角度がbのときは回転角度がcのときよりも多くなる。すなわち、回転角度がaからcに変化すると、収容可能湯量は減っていく。
【0033】
図7に示すように、例えばラドル10の回転が進行して回転角度がaからbに大きくなるように変化した場合、ラドル本体10a内に貯留している溶湯4の給湯量が収容可能湯量を超えた時点で溶湯4は流出を開始する。このとき、ラドル10内に収容できない溶湯4bは自身の水頭圧によって注ぎ口10bからラドル10の外部に流出して流出溶湯4aとなる。
【0034】
収容できない溶湯4bの収容可能湯量の溶湯4からの液面の高さをhとした場合、流出溶湯4aの流出速度Vは、重力加速度をgとすると、トリチェリの定理より、V=√2ghという関係式で表すことができる。従って、流出溶湯4aの流出距離FDは、上記液面が高くなるほど長くなる。
【0035】
このように、ラドル10が回転することによる溶湯4の給湯動作においては、ラドル10の回転速度や給湯量等の給湯条件の違いによって流出溶湯4aの流出距離FDが変化する。このため、適正なラドル10の回転速度を維持することは非常に困難であり、従来の技術では回転速度が速過ぎる場合には湯こぼれが発生し、遅過ぎる場合には溶湯4に酸化膜ができてしまったり不要なサイクルタイムが必要になってしまったりといった不具合が生じてしまうおそれがあった。
【0036】
ここで、ラドル10の回転角度と溶湯4の収容可能湯量との関係について着目する。
図8は、ある種類のラドル10の回転角度と溶湯の収容可能湯量との関係を示す図であり、同図(b)は同図(a)よりも回転速度が速い場合を示している。
図8(a)に示すように、ある回転速度においては、回転角度が大きくなるほど溶湯4の収容可能湯量が減っていくことが分かる。
【0037】
ラドル10の回転速度が一定速の場合、X軸の回転角度を時間に置き換えることができるため、
図8(a)の場合よりも回転速度を速くすると、回転角度と収容可能湯量との関係は
図8(b)に示すようになる。このとき、収容可能湯量の単位時間当たりの減少量が大きくなることが分かる。従って、同一条件のラドル10において、回転速度が速いと収容できない溶湯4bの湯量が増えて上記液面が高くなることから、流出溶湯4aの流出距離FDが長くなることとなる。
【0038】
図9は、このラドルのある回転速度における流出距離と回転角度との関係を示す図である。
図9に示すように、
図8に示したラドル10において、ラドル本体10aに給湯量が多いときと給湯量が少ないときの溶湯4を貯留した後に給湯動作を開始してラドル10を回転動作させると、給湯量が多いときは回転角度が水平面に対して20°程度となったときに、給湯量が少ないときはそれよりも回転角度が大きくなった(30°程度)ときに溶湯4が流出を開始する。そして、流出を開始した後、しばらくの間は、流出量よりも収容可能湯量の減少量の方が大きくなるので、流出溶湯4aの流出距離FDは大きくなることが分かる。
【0039】
このような状況を踏まえ、本実施形態に係るラドル給湯制御方法においては、上述したような給湯動作に伴うラドル10の回転動作に関して、まず予めデータベースに必要なデータを格納しておくように構成した。その後、ダイカストマシン1のオペレータが入力した条件等に基づいて、データベースに格納したデータを参照し、種々の給湯条件に応じた最適なラドル10の回転パターンを演算してラドル10の回転動作を制御するように構成した。これにより、簡単な設定で溶湯4の湯こぼれによる給湯量のばらつきや溶湯温度の低下による品質の低下を防止している。
【0040】
図10は、本発明の一実施形態に係るラドル給湯制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
図10に示すように、ラドル給湯制御装置30は、例えばダイカストマシン1に備えられ、このダイカストマシン1の給湯動作に関してラドル10の回転動作を制御する装置である。
【0041】
ラドル給湯制御装置30は、例えば入力部31と、制御部33と、データベース35を備える記憶部34とを備えて構成されている。また、ラドル給湯制御装置30は、表示部32と、駆動部36と、報知部37とを備えている。入力部31は、例えば文字や数値、或いは各種の指示情報等の入力に用いられる複数のキーを備えたキーボードやリモコン、マウス、タッチパネル等の入力デバイスや、カメラ等の撮像手段を備える画像センサ等により構成される。
【0042】
入力部31には、例えばオペレータによって、実際の給湯に使用するラドル10に関する種々の設定データが入力される。入力部31に入力される設定データは、例えば実際の給湯に使用するラドル10の種類を指定するラドル種類指定データ、その際に予定される溶湯4の給湯量を指定する給湯量指定データ、ラドル10の射出スリーブ20に対する位置に関する対射出スリーブ位置指定データが挙げられる。対射出スリーブ位置指定データは、上述した設置高さHsを指定する設置高さ指定データ、及び上述した設置距離Dsを指定する設置距離指定データである。こうして入力部31に入力された設定データは、後述する演算部33に送信される。
【0043】
表示部32は、例えばTFT液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイ装置により構成される。この表示部32には、ウィンドウ、メニュー、アイコン、カーソル、画像、文字等の各種表示データが表示される。なお、入力部31がタッチパネルにより構成されている場合は、表示部32は入力部31と一体的な装置として配置構成される。
【0044】
制御部33は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成され、ラドル10の給湯時におけるラドル10の回転動作を制御するための回転パターンを演算する。そして、制御部33は、演算した回転パターンに基づいて実際の給湯に使用するラドル10の回転動作を制御する。具体的には、制御部33は、入力部31から送信された設定データを受信して、後述する記憶部34のデータベース35に格納された関係データを参照し、回転パターンを演算する。
【0045】
制御部33により演算される回転パターンは、例えば入力部31に入力された設定データに基づいて、記憶部34のデータベース35に格納された関係データから選択された実際に使用するラドル10に対応する種類のラドルの複数の回転範囲と、これら回転範囲毎に設定されたラドル10のラドル回転軸11を中心とした回転速度のデータの組み合わせにより構成される。
【0046】
記憶部34は、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)、光ディスク装置等の記憶装置により構成されている。記憶部34は、上述した関係データをデータベース35にして格納する。なお、記憶部34は、着脱可能な記録媒体にデータを読み書き可能な装置により構成されていても良い。着脱可能な記録媒体としては、例えばメモリーカード等が挙げられる。
【0047】
データベース35には、例えば次のような相関関係が関係データとして格納されている。すなわち、関係データは、(a)ラドルの種類、(b)射出スリーブ内への溶湯の給湯量、及び(c)ラドル回転角度に応じた溶湯の収容可能湯量の関係を表す第1の関係データと、(a)ラドルの種類、(d)ラドル回転軸を中心としたラドルの回転速度、及び(e)回転速度に応じたラドルからの流出溶湯の到達位置(流出距離FD)の関係を表す第2の関係データからなる。
【0048】
駆動部36は、駆動ベース部5に内蔵された各種モータや動力伝達機構により構成され、ラドル10のラドル回転軸10を制御部33からの制御命令に従い駆動する。報知部37は、制御部33からの報知命令に従い、例えば表示部32に対して所定の表示を行わせて所望の内容の情報を報知する。報知部33は、その他音声出力や印刷出力により報知を行うようにしても良い。本ラドル給湯制御装置30においては、報知部33は、表示部32に所定の場合に警告表示を行わせる。
【0049】
このようなデータベース35は、例えば次のように構築される。
図11は、ラドル給湯制御装置30のデータベース35の構築方法例を示す図である。
図11(a)に示すように、上記関係データが格納されたデータベース35の構築に際しては、まず、例えばカメラ39をラドル10の側方に設置する。そして、同図(b)に示すように、ラドル10のラドル本体10a内に溶湯4のサンプルを貯留した後にラドル10を回転動作させ、そのときの流出溶湯4aの流出挙動を動画としてカメラ39で撮像する。
【0050】
こうしてカメラ39で撮像された動画データは、例えば30fps毎の静止画像データとして別途用意した画像解析装置にて分析される。画像解析に際しては、例えば各フレーム静止画像毎に5mmピッチのマス目を設けて、注ぎ口10b上方からの流出溶湯4aの縁部位置をプロットし、ラドル10の回転角度、流出距離FD及び流出高さFH等を記録する。
【0051】
このような解析作業をラドル10の種類毎に、溶湯4の給湯量や回転速度を変化させて記録することで、上記(a),(b),(c)の各項目を関係付けた第1の関係データと、上記(a),(d),(e)の各項目を関係付けた第2の関係データを生成し、関係データとしてデータベース35に格納する。なお、例えば茨城日立情報システム株式会社製の「ADSTEFAN(登録商標)」等の鋳造シミュレーションシステムを用いることもできる。
【0052】
そして、ラドル10の給湯動作は、上述したように制御部33により演算された回転パターンに基づいて行われる。回転パターンは、ここでは例えば後述する
図13に示すように、回転速度1、回転速度2及び回転速度3のような、ラドル回転軸11の回転角度が増加しながらも一定速を保つ3つの回転速度のうちの回転速度1及び2を、回転範囲1及び回転範囲2と組み合わせることにより構成されている。
【0053】
回転速度1は、ラドル回転軸11が初期位置から急激に回転速度及び回転角度を増した後に、一定速となってラドル本体10a内の溶湯4が注ぎ口10bから流出を開始するまでの回転範囲1における最高速度をいう。これら回転範囲1及び回転速度1は、第1の関係データに基づき決定される。
【0054】
また、回転速度2は、ラドル回転軸11が回転範囲1における回転速度1から急激に回転速度を減らしつつ回転角度を僅かに増した後に、一定速となってピーク回転角度に至るまでの回転範囲2における最高速度をいう。これら回転範囲2及び回転速度2は、第2の関係データに基づき決定される。
【0055】
なお、回転速度3は、例えばラドル回転軸11が回転範囲2における回転速度2から急激に回転速度及び回転角度を増した後に、回転速度1より遅く回転速度2より速い一定速となってラドル本体10a内の溶湯4の注ぎ口10bからの流出が終わり湯切りされるまで(すなわち、到達ピーク距離PFDを超えて湯切りが完了されるまで)ラドル回転軸11を回転させる速度をいう。このように、回転パターンは、回転範囲1における高速の回転速度1、及び回転範囲2における低速の回転速度2の組み合わせにより構成される。また、中速の回転速度3をこれらに組み合わせても良い。
【0056】
ここで、データベース35内において、例えば回転速度2に関するデータベースを構築する場合には、ラドル10の種類毎の流出高さFH、給湯量及び回転速度の組み合わせ毎に流出距離FDを関係付けて格納すれば良い。そして、制御部33における回転パターンの演算は、例えば次のように行われる。
【0057】
図12は、ラドル給湯制御装置による単純な回転パターンを示す図である。また、
図13は、ラドル給湯制御装置による演算された回転パターンを示す図である。
図12に示すように、ラドル10の単純な回転パターンは、例えばX軸を回転角度(deg.)とし、Y軸を回転速度(rpm)とした場合、回転角度がある角度まで増すに従って回転速度が上昇し、その後一定速の回転速度を維持したまま回転角度が増え続け、更にある回転角度に到達した以降は回転速度が減少するという
図12上において単なる台形のようなパターン軌跡を描く回転パターンとなる。なお、流出距離FDは、回転速度2の速度によって定まるが、溶湯4の慣性により回転速度2が速過ぎると安定せず遅過ぎると酸化膜が生成されてしまう等の問題が生じてしまう。
【0058】
これに対し、
図13に示すように、演算された回転パターンは、流出距離FDへの影響が少ない範囲におけるラドル回転軸11の回転速度を速くすることで、全体の回転動作時間そのものを短縮するように構成されている。従って、
図13上において左側が高く右側が低い高さの異なる2つの台形を凹み形で繋いだようなパターン軌跡を描く回転パターンとなる。このような回転パターンでラドル10の回転動作を制御すれば、給湯動作における溶湯4のラドル10からの湯こぼれによる給湯量のばらつきや、ラドル本体10内の溶湯4の温度低下による品質の低下を確実に防止することが可能となる。
【0059】
図14は、ラドル給湯制御装置の回転パターンにおける回転範囲1の算出方法例を説明するための図である。
図14は、種類の異なるラドルA、ラドルB及びラドルC毎の回転角度(deg.)と溶湯4の収容可能湯量(cm
3)との関係イメージを示している。これら3つのラドルA,B,Cのいずれにおいても、ラドル回転軸11の回転角度が増す(進む)に連れてラドル本体10a内に収容できる収容可能湯量は減少することが分かる。
【0060】
従って、データベース35内の第1の関係データにおける(a)ラドルの種類毎の(b)給湯量及び(c)収容可能湯量に基づき、各ラドルA,B,C毎に溶湯4の給湯量から溶湯4が流出を開始しない回転角度を算出することができる。算出されたこの回転角度までは回転速度が高速であっても上記流出距離FDに影響を与えることはないので、上記のように予めデータベース35内に(a)ラドルの種類毎に(b)給湯量とラドル回転角度に応じた溶湯4の(c)収容可能湯量との関係を表す第1の関係データを格納しておけば、例えば設定データにより指定された給湯量指定データ等に基づいて、ラドル回転軸11の回転範囲1を算出し自動的に決定することができる。
【0061】
図15は、ラドル給湯制御装置に適用された画像解析装置の画像解析結果におけるラドル回転軸の回転角度(deg.)と流出溶湯の給湯位置(流出距離)(mm)との関係を示す図である。
図16は、画像解析結果における溶湯の給湯量(cm
3)とラドル回転軸の回転速度(rpm)と到達ピーク距離に対応するラドル回転軸のピーク回転角度(deg.)との関係を3次元的に示す図である。
【0062】
図15に示すように、流出溶湯4aの流出挙動の画像解析結果によれば、流出溶湯4aの給湯位置(流出距離FD)は、到達ピーク距離PFD及びピーク回転角度を超えた後は回転角度を増しても増えることがないことが分かる。また、
図16に示すように、給湯量が増減したとしても流出距離FDが到達ピーク距離PFDに対応するピーク回転角度を超えた後には、回転速度を速めたとしても流出距離FDは到達ピーク距離PFDを超えないことが分かる。
【0063】
従って、データベース35内の第2の関係データにおける(a)ラドルの種類毎の(d)ラドル回転軸を中心とした回転速度及び(e)回転速度に応じたラドルからの流出溶湯の到達位置(到達ピーク距離)に基づき、第1の関係データにおける(b)給湯量を考慮して、到達ピーク距離PFDに対応するラドル回転軸11のピーク回転角度を種々の給湯条件に応じて算出することができる。この算出されたピーク回転角度を上記回転範囲1から続く回転範囲2を定める角度として種々の給湯要件に合わせてデータベース35に格納すれば、例えば給湯条件に応じた回転範囲2を決定することができる。
【0064】
なお、上記回転範囲1は、ラドル10のラドル本体10a内に貯留された溶湯4が注ぎ口10bから流出しない範囲であるため、この回転範囲1における回転速度1については具体的な速度を規定する必要はない。ただし、回転速度1が速過ぎると大きな遠心力が生じて回転速度2でラドル10が回転する回転範囲2において一時的に流出距離FDが大きくなることがあるので、回転速度1は従来から用いられてきた速度域において設定することが望ましい。
【0065】
図17は、画像解析結果により構築されたデータベースの一例を視覚的に示す図である。
図18は、データベースの一例を3次元的な応答曲面で示す図である。
図19は、データベースを用いて算出されるラドル回転軸の回転速度(rpm)と溶湯の給湯位置(流出距離)(mm)との関係を示す図である。
図17に示すように、データベース35には、例えば流出溶湯4aの流出挙動の画像解析結果により得られた給湯位置(流出高さFH)、給湯量及び回転速度の組み合わせ毎に流出距離(FD)を関連付けて格納する。
【0066】
すなわち、上記第1及び第2の関係データとして、(b)給湯量、(d)回転速度及び流出高さFHの組み合わせ毎に(e)流出距離FDを関係付けて、例えば(a)ラドルの種類毎にデータベース35に格納する。このようなデータベース35を参照すれば、例えば給湯量が2200cm
3、回転速度が5rpmで給湯位置(流出高さFH)が40mmであるときの流出距離FDは78mmであることが導き出される。
【0067】
そして、上記データベース35を利用して、例えば上記設置高さHsを設定データに含まれる設置高さ指定データにより流出高さFHと仮定して指定すれば、
図18に示すような給湯量(cm
3)、回転速度(rpm)及び給湯位置(流出距離)(mm)の関係を示す3次元の応答曲面19を得ることができる。
【0068】
更に、給湯量を設定データに含まれる給湯量指定データにより指定すれば、
図19に示すような回転速度(rpm)と給湯位置(流出距離FD)(mm)との関係において、給湯位置の目標値に対する許容可能な最速の回転速度を表す曲線18を得ることができる。この曲線18を用いれば、設定データに含まれる設置距離指定データにより指定された設置距離Dsの値を流出距離FDの目標値とした場合の最速の回転速度2を算出することができる。なお、上記回転速度3はこの回転速度2よりも速い速度であれば良く、好ましくは上述したように回転速度2より速く回転速度1より遅い速度であれば良い。
【0069】
その他、本実施形態においては、設定データに含まれる設置距離指定データにより指定された設置距離Dsの値に補正値を反映した値を、流出距離FDの目標値とした場合の最速の回転速度2を算出することもできる。補正値は、例えばラドル10の膨張や金属疲労、ダイカストマシン1の機械的な疲労等の経年変化等により寸法精度が出なくなり、データベース35に格納された第2の関係データによる算出値と、カメラ39などの画像センサ等により入力部31に入力された実測値とに差異が生じる場合などに用いられる。
【0070】
図20は、データベースによる給湯位置(流出距離)の算出値と実測値との差異を示す図である。
図21は、算出値と補正された目標値とのラドル回転軸の回転速度と溶湯の給湯位置(流出距離)との関係を示す図である。
図20に示すように、給湯動作時の回転動作に伴ってラドル10のラドル本体10a内の溶湯4が注ぎ口10bを通って流出溶湯4aとなった場合に、例えばデータベース35を用いて算出した給湯位置(流出距離FD)をXとしたときに、実測の給湯位置(流出距離FD)がこのXと異なるYとなるときがある。
【0071】
このようなときは、給湯位置Xの値−給湯位置Yの値というような計算を行ってその差分を補正値として増減したり、給湯位置Xの値に所定の補正係数k(Y/X)を与えたりすることで補正処理を行うことができる。このような補正処理を行えば、
図21に示すように、
図19に示したような算出された曲線18に対して補正後の曲線17を得ることが可能となる。
【0072】
この補正後の曲線17を用いれば、目標値である給湯位置Xにおける最速の回転速度2に対して、回転速度2を維持したまま補正された目標値である給湯位置Yを容易に得ることができる。なお、補正処理に際しては、別途設定データとして入力される安全率も加味されても良い。安全率は、例えば制御部33により演算された回転パターンの回転速度2の値を数%程度遅くなる値にしたり、算出された流出距離FDの値から数mm引いた値にしたりするものである。
【0073】
この補正処理は、上述したように画像センサ等により入力部31に実測値が自動的に入力される構成とした場合、自動的に行われても良い。このようにすれば、ラドル給湯制御装置30による給湯制御処理中において、何らかの補正が必要になった場合であってもオペレータに負荷をかけることなく自動的に給湯動作を継続させることが可能となる。
【0074】
図22は、ラドル給湯制御装置の表示部における表示画面例を示す図である。
図23は、ラドル給湯制御装置によるオペレーションフローを示すフローチャートである。
図22に示すように、表示部32に表示される表示画面57上には、例えば設定データの各設定項目をオペレータが入力部31に入力するために表示される入力領域50と、この入力領域50に入力された設定データに基づいて演算された回転パターンの各表示項目を表示する回転パターン表示領域60とが設けられている。
【0075】
また、表示画面57上には、各設定項目や表示項目のうち必要な項目の定義や意味を表示する説明表示領域58と、所定の状態となった場合に警告文等を表示して報知するための警告報知領域59とが設けられている。入力領域50には、設定データとして、予め予定される給湯量を入力する入力枠51aを有する給湯量入力欄51と、実際の給湯に使用するラドルの種類を入力する入力枠52aを有するラドル種類入力欄52とが設けられている。なお、ここではラドルの種類は、アルファベット等により区別されている。
【0076】
また、入力領域50には、設定データとして、実際の給湯に使用するラドルの設置高さHsを入力する入力枠53aを有する設置高さ入力欄53と、設置距離Dsを入力する入力枠54aを有する設置距離入力欄54と、設置距離Dsに対する安全率を入力する入力枠55aを有する安全率入力欄55とが設けられている。
【0077】
一方、回転パターン表示領域60には、演算された回転パターンを構成する回転速度1、回転速度2、回転速度3、回転範囲1及び回転範囲2を表示する回転速度1表示欄61、回転速度2表示欄62、回転速度3表示欄63、回転範囲1表示欄64及び回転範囲2表示欄65がそれぞれ設けられている。
【0078】
各表示欄61〜65には、各回転速度1〜3又は回転範囲1,2についての算出値を表示する算出値表示枠61a,62a,63a,64a,65a及び実際の制御に使用される設定値を入力可能に表示する設定値表示枠61b,62b,63b,64b,65bがそれぞれ設けられている。なお、演算された回転パターンの初期表示状態においては、設定値表示枠61b〜65bにも算出値表示枠61a〜65aと同じ算出値が表示される。
【0079】
説明表示領域58には、ラドル10の初期位置を含む射出スリーブ20との位置関係や、設置高さHs、設置距離Ds、回転速度1〜3及び回転範囲1,2等がどのように定義されて意味をなしているか等が視覚的に容易に把握可能な画像として表示される。警告報知領域59には、後述する警告文等が必要に応じて表示される。このように構成された表示部32の表示画面57を有するラドル給湯制御装置30において、オペレーションは以下のように行われる。
【0080】
図23に示すように、まず、オペレータは、例えばマウスやキーボード等の入力デバイスを用いて、入力領域50の各入力欄51〜55の入力枠51a〜55aに、給湯量、ラドルの種類、設置高さHs、設置距離Ds及び安全率を指定するための英数字を入力して、入力部31に設定データを入力する(ステップS100)。
【0081】
給湯量は、例えばダイカストマシン1により鋳造される製品に関し、CADによって算出した数値や試作品の実測値等により求められる。ラドルの種類は、データベース35内に格納されているラドルの種類から選択候補が選択される。設置高さHs及び設置距離Dsは、ラドル10と射出スリーブ20とを設置した時点で決まるので、図面寸法や実測値等により求められる。安全率は、設置距離Dsに対してマージンを持った給湯を行いたい場合に、例えば2〜3mmというような数値で指定したり、−3〜−5%というような係数で指定したりされる。
【0082】
次に、制御部33によって、入力部31に入力された設定データに基づいて記憶部34のデータベース35内の第1及び第2の関係データを参照し(ステップS102)、例えば回転範囲1、回転速度2及び回転範囲2を算出する(ステップS104)。具体的には、回転範囲1はラドルの種類及び給湯量が決まった時点で算出され、回転速度2は設置高さHs、設置距離Ds、ラドルの種類及び給湯量が決まった時点で設置距離Dsを目標値として算出される。また、回転範囲2はラドルの種類、給湯量及び回転速度2が決まった時点で算出される。
【0083】
そして、回転範囲1、回転速度2及び回転範囲2の算出値や設定データ、データベース35内の各関係データを用いてラドル10の回転パターンを演算し(ステップS106)、表示部32によって演算された回転パターンの回転速度1〜3及び回転範囲1,2の各表示項目の算出値及び設定値を、表示画面57上の各表示欄61〜65の算出値表示枠61a〜65a及び設定値表示枠61b〜65bに表示する(ステップS108)。
【0084】
その後、給湯条件を変更するに際してのオペレータの操作により、例えば入力部31からの情報に基づき設定値表示枠61b〜65b内にカーソルの移動があったか否か等を判断することにより表示項目の変更があるか否かを判断する(ステップS110)。表示項目の変更がないと判断された場合(ステップS110のN)は、例えば別途表示画面57上に表示された図示しない処理スタートボタンの押下に相当する操作がオペレータによりあったか否か等を判断することにより、給湯を開始するか否かを判断する(ステップS112)。
【0085】
給湯を開始しないと判断された場合(ステップS112のN)は、例えば別途表示画面57上に表示された図示しないキャンセルボタンの押下に相当する操作がオペレータによりあったか否か等を判断することにより、キャンセルか否かを判断する(ステップS114)。
【0086】
キャンセルではないと判断された場合(ステップS114のN)は、上記ステップS110に移行して処理を継続する。反対に、キャンセルであると判断された場合(ステップS114のY)は、本フローチャートによるオペレーションを終了する。なお、給湯を開始すると判断された場合(ステップS112のY)は、制御部33から駆動部36に対して演算された回転パターンに基づく制御命令が出力されて給湯制御処理が実行され(ステップS116)、同様に本フローチャートによるオペレーションを終了する。
【0087】
一方、表示項目の変更があると判断された場合(ステップS110のY)は、カーソル位置及び入力値等を判断することにより、変更が回転範囲1、回転速度2又は回転範囲2の設定値に対するものであるか否かを判断する(ステップS118)。これらの設定値に対するものではないと判断された場合(ステップS118のN)は、他の表示項目に対するその入力値による変更を設定値に反映した上で(ステップS124)、上記ステップS108に移行して再度設定値の表示を行う。
【0088】
また、設定値に対するものであると判断された場合(ステップS118のY)は、入力値が算出値の上限値(算出上限値)を超えているか否か、又は入力値が算出値の下限値(算出下限値)を下回っているか否かを判断する(ステップS120)。例えば、回転範囲1及び回転速度2に関しては、入力値がデータベース35を参照して算出された算出上限値を超えているか否かが判断され、回転範囲2に関しては、入力値がデータベース35を参照して算出された算出下限値を下回っているか否かが判断される。
【0089】
入力値が算出上限値を超えていない又は入力値が算出下限値を下回っていないと判断された場合(ステップS120のN)は、上記ステップS124に移行してその入力値による変更を設定値に反映する。入力値が算出上限値を超えている又は入力値が算出下限値を下回っていると判断された場合(ステップS120のY)は、報知部37によって表示画面57上の警告報知領域59に、例えば「回転速度2が速過ぎます。○○rpm以下にしてください。」といった旨の具体的な設定値の上限値又は下限値を示唆する内容の警告文を表示させて再入力を促すように報知し(ステップS122)、上記ステップS110に移行して処理を継続する。
【0090】
以上のようなオペレーションにより、ラドル給湯制御装置30を用いて演算された回転パターンに則ったラドル10の回転動作を制御することで、ダイカストマシン1の給湯動作を制御することができる。これにより、簡単な操作や設定で、溶湯4の湯こぼれによる給湯量のばらつきや、溶湯4の温度低下による品質の低下を高精度に防ぐことが可能となる。