特許第6075176号(P6075176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075176
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20170130BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H05K7/20 E
   H01L23/40 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-85543(P2013-85543)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-207404(P2014-207404A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】北谷 一治
(72)【発明者】
【氏名】野口 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 清美
【審査官】 石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−317586(JP,A)
【文献】 実開平06−009146(JP,U)
【文献】 実開平01−079893(JP,U)
【文献】 特開2014−067824(JP,A)
【文献】 特開2013−074138(JP,A)
【文献】 特開2011−124452(JP,A)
【文献】 特開平02−065260(JP,A)
【文献】 特開平09−293981(JP,A)
【文献】 米国特許第05344113(US,A)
【文献】 特開2008−159716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00−5/06
7/20
H01L 23/29
23/34−23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部の表面に本体の背面を接触させた状態で当該本体の幅方向に沿って一列に並設された複数の電子部品と、
方形状の板体を側面視L字状に一の辺に沿って折り曲げた第1帯状部位で形成された支持部、および前記板体における前記支持部を除く部位で形成された押圧部を有し、前記支持部の先端が前記固定部の前記表面に当接し、かつ前記押圧部の先端部が前記本体の前面に当接した状態で当該固定部の当該表面に配設された取付具とを備え、
前記押圧部の前記先端部は、前記板体の前記一の辺と対向する他の辺に沿って当該押圧部における前記本体との対向面側に当該板体を側面視U字状に折り曲げた第2帯状部位で構成され、
前記取付具は、前記押圧部における前記複数の電子部品のうちのいずれの電子部品も挟むことなく前記固定部の前記表面と対向する位置において当該固定部および当該押圧部のうちの一方に形成された挿通孔を通り当該固定部および当該押圧部のうちの他方に形成された雌ねじ孔に螺合された固定ねじによって当該固定部の当該表面にねじ止めされると共に、前記第2帯状部位における折り曲げ部分の付近のみが前記複数の電子部品の前記本体の前記前面と当接した状態の当該押圧部の前記先端部で当該複数の電子部品の前記本体の前記背面を当該固定部の当該表面に圧接する電源装置。
【請求項2】
前記支持部の前記先端には、突起部が形成され、
前記固定部には、前記突起部と係合する係合部が形成されている請求項1記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタなどの発熱部品を放熱板などの固定部に取り付けて構成された電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電源装置として、下記の特許文献1に開示された電源装置が知られている。この電源装置は、発熱部品、プリント基板(回路基板)、ケースおよび取付具(取付板)を備えている。発熱部品は、電源装置に使用されているスイッチ素子(トランジスタやダイオード)などの発熱する電子部品であり、他の電子部品と共にプリント基板に実装されている。複数の発熱部品は、起立した状態でプリント基板の一辺に沿って並列した状態で実装されている。
【0003】
ケースは、発熱部品を含む電子部品がプリント基板に実装されて構成された電源回路実装体を収納する。また、ケースの側板のうちの1つであって、複数の発熱部品が実装されているプリント基板の上記の一辺に沿って位置している側板は、複数の発熱部品が固定される固定部として機能する。この側板には、取付具に形成された後述のねじ孔に螺合するねじを挿通させるねじ挿通孔が形成されている。また、ケースのこの側板には、取付具に突設された位置決め突起が嵌め込まれる少なくとも一対の位置決め用孔が形成されている。
【0004】
取付具は、一例として、十字形に形成された平板の部位のうちの一の方向に沿って延出する一対の部位で構成された一対の押圧部と、一方の方向と直交する他方の方向に沿って延出する他の一対の部位が直角に同じ方向に折曲して形成された一対の突片とを有している。また、この一対の突片の各先端には、突片の延出方向に沿って突出する位置決め突起がそれぞれ形成されている。なお、一対の突片の一対の押圧部からの長さ(突出量)は、発熱部品の押圧方向の厚みと同程度の長さ、またはやや短い長さに規定されている。また、取付具における一対の押圧部と一対の突片の交差部位には、取付具をケースの上記側板に取り付けるためのねじが螺合されるねじ孔が形成されている。
【0005】
この電源装置では、まず、発熱部品を含む電子部品が実装されたプリント基板をケースに収納して、ケースの上記した側板に発熱部品の背面を接近させる。次いで、取付具を、その押圧部を発熱部品に対向させながら、位置決め突起をこの側板に形成された位置決め用孔に挿入する。続いて、この側板に向けて取付具を押しながら、側板の外側からねじをねじ挿通孔に通して取付具のねじ孔にねじ込む(螺合させる)ことで、取付具を側板側に引き寄せる。これにより、発熱部品は、取付具の一対の押圧部によってケースの側板に押圧されるため、固定部として機能するケースの側板に、この側板との間での良好な密着性が維持された状態で固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−145193号公報(第5−8頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の電源装置には、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、上記の電源装置で使用される構造の取付具は、通常、部品コスト低減のため、プレス加工により、一枚の金属板から複数個同時に打ち抜かれて作製される。これにより、取付具における電子部品を押圧する一対の押圧部の縁部にも、打ち抜き加工特有のバリが発生している。
【0008】
このような取付具で電子部品を固定する場合、製造時または保守時において、このバリによって作業者が指に怪我をしないように、バリの発生している面を電子部品側に向けて電子部品を押圧する。このため、バリによって電子部品に擦り傷などが付かないように慎重に電子部品の固定作業を行う必要があることから、電子部品の固定作業に時間がかかるという課題が存在している。特に近年では、熱伝導性の良好な絶縁材としての筒状(またはキャップ状)の絶縁シート(絶縁カバー)を電子部品に装着し、この状態で電子部品を上記の取付具で固定することが行われているが、絶縁シートは薄く特に傷つき易いため、電子部品の固定作業に要する時間が長時間化しているという課題が生じている。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、電子部品への傷つきを回避しつつ電子部品の固定作業に要する時間を短縮し得る電源装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明に係る電源装置は、固定部の表面に本体の背面を接触させた状態で当該本体の幅方向に沿って一列に並設された複数の電子部品と、方形状の板体を側面視L字状に一の辺に沿って折り曲げた第1帯状部位で形成された支持部、および前記板体における前記支持部を除く部位で形成された押圧部を有し、前記支持部の先端が前記固定部の前記表面に当接し、かつ前記押圧部の先端部が前記本体の前面に当接した状態で当該固定部の当該表面に配設された取付具とを備え、前記押圧部の前記先端部は、前記板体の前記一の辺と対向する他の辺に沿って当該押圧部における前記本体との対向面側に当該板体を側面視U字状に折り曲げた第2帯状部位で構成され、前記取付具は、前記押圧部における前記複数の電子部品のうちのいずれの電子部品も挟むことなく前記固定部の前記表面と対向する位置において当該固定部および当該押圧部のうちの一方に形成された挿通孔を通り当該固定部および当該押圧部のうちの他方に形成された雌ねじ孔に螺合された固定ねじによって当該固定部の当該表面にねじ止めされると共に、前記第2帯状部位における折り曲げ部分の付近のみが前記複数の電子部品の前記本体の前記前面と当接した状態の当該押圧部の前記先端部で当該複数の電子部品の前記本体の前記背面を当該固定部の当該表面に圧接する。
【0012】
また、本発明に係る電源装置は、前記支持部の前記先端には、突起部が形成され、前記固定部には、前記突起部と係合する係合部が形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電源装置によれば、複数の電子部品の本体の前面に当接させる取付具における押圧部の先端部が、方形状の板体における他の辺に沿って押圧部における電子部品の本体との対向面側に側面視U字状に折り曲げた第2帯状部位で構成されているため、取付具を固定部の表面に固定ねじでねじ止めして、押圧部の先端部を本体の前面に当接させて本体の背面を固定部の表面に圧接した際に、第2帯状部位における折り曲げ部分の付近のみを本体の前面に当接させて、板体の他の辺自体の本体の前面との当接を回避することができる。
【0015】
したがって、この電源装置によれば、取付具の製造時に板体の他の辺に発生しているバリによって電子部品の本体の前面や電子部品に装着された絶縁シートに傷が付くという不具合の発生を確実に防止することができる。これにより、この電源装置によれば、取付具のバリによって電子部品や絶縁シートに傷が付かないように取付具で電子部品を慎重に固定する従来の固定作業とは異なり、固定作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0016】
また、本発明の電源装置によれば、取付具に形成されている突起部が固定部に形成されている係合部と係合する構成のため、固定ねじの回転に伴って取付具も回転するという事態の発生を確実に防止することができる。したがって、この電源装置によれば、固定部に対する取付具の固定位置、ひいては押圧部の先端部と電子部品の本体との当接位置を、常に一定の位置に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電源装置1における発熱部品の一例としての整流ダイオード2およびスイッチ素子3、並びに取付具6の近傍の要部拡大図である。
図2図1のW−W線(スイッチ素子3を通過する線)に沿った断面図である。
図3】取付具6の背面側から見た斜視図である。
図4】整流ダイオード2およびスイッチ素子3のケース5の側板5bへの固定構造を説明するための説明図である。
図5】電源装置1Aにおける発熱部品の一例としての整流ダイオード2およびスイッチ素子3、並びに取付具6Aの近傍の要部拡大図である。
図6】電源装置1Bにおける発熱部品の一例としての整流ダイオード2およびスイッチ素子3、並びに取付具6Bの近傍の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、電源装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
電源装置1は、図1に示すように、電源回路を構成する端子台、抵抗、コンデンサ、コイル、制御IC(いずれも図示せず)、整流ダイオード2およびスイッチ素子3(例えば、バイポーラトランジスタや電界効果型トランジスタ)などの複数の電子部品と、これらの電子部品が実装された回路基板4と、回路基板4および回路基板4に実装された電子部品で構成される電源回路実装体を収納する金属材料製(一例としてアルミニウム製)のケース5と、取付具6と、固定ねじ7とを備えている。
【0020】
回路基板4は、ケース5の底板5aに不図示の絶縁スペーサを介した状態でねじ止めされている。また、底板5aに対して直角に折り曲げて形成されたケース5の側板5bに沿った回路基板4の1つの縁部4a側には、上記の複数の電子部品のうちの動作状態において特に発熱する複数の電子部品(以下、発熱部品ともいう。本例では一例として、整流ダイオード2とスイッチ素子3の2つの電子部品)が、この縁部4aに沿って間隔を空けて一列に並んだ状態で実装されている。
【0021】
この整流ダイオード2およびスイッチ素子3のような発熱部品は、通常、熱伝導性に優れた材料(例えば、アルミニウムなどの金属材料)で形成された放熱板を固定部として、この固定部に固定されることにより、発熱による温度上昇が抑制される。本例では、ケース5が熱伝導性に優れた金属材料で構成されているため、取付具6および固定ねじ7を使用してこのケース5の側板5bに整流ダイオード2およびスイッチ素子3を固定することにより、この側板5bを整流ダイオード2およびスイッチ素子3用の共通の固定部(1つの固定部)として機能させる構成を採用している。つまり、整流ダイオード2およびスイッチ素子3で発生する熱を側板5bから放熱させる構成を採用している。
【0022】
また、本例では一例として、整流ダイオード2およびスイッチ素子3は、図1,2に示すように、熱伝導性の良好な絶縁材としての筒状またはキャップ状(本例では図6に示すようにキャップ状)の絶縁シート(絶縁カバー)8,9が装着された状態で、取付具6および固定ねじ7を使用して側板5bに固定されている。
【0023】
この整流ダイオード2およびスイッチ素子3を側板5bに固定する固定構造について、各部材の具体的な構造と共に具体的に説明する。
【0024】
まず、発熱部品である2つの整流ダイオード2およびスイッチ素子3について説明する。整流ダイオード2およびスイッチ素子3は、図4に示すように、例えばTO3Pパッケージ、TO220パッケージおよびTO247パッケージなどのような本体(端子を除く部位)の背面側に放熱板が一体化されたパッケージであって、同等の厚みに規定されたパッケージを備えている。これらの発熱部品のパッケージは、背面側に放熱板が一体化されたパッケージであってもよいし、背面側も樹脂で覆われているフルモールドパッケージであってもよい。
【0025】
また、図4に示すように、整流ダイオード2およびスイッチ素子3は、それぞれの背面が側板5b側に向き、かつ各背面が共通の仮想平面上に位置した状態で、かつ回路基板4からの高さがほぼ同等になるように回路基板4に実装されている。また、ケース5の側板5bは、整流ダイオード2およびスイッチ素子3側の表面Sが上記の仮想平面と平行で、かつこの仮想平面に近接した状態になるように、回路基板4に対する位置が規定されている。この構成により、整流ダイオード2およびスイッチ素子3は、それぞれに絶縁シート8,9が装着された状態で、かつ絶縁シート8,9を介して側板5bの表面Sに各背面を当接(接触)させた状態で、本体の幅方向に沿って一列に互いに離間して表面Sに並設可能になっている。
【0026】
次に、側板5bについて説明する。図1,4に示すように、側板5bのこの図中における上端部には、取付具6に形成された後述の突起部23と係合する係合部(本例では一例として、側板5bの上端面に開口する係合用の切欠部)10が形成されている。なお、本例では図4に示すように、係合部10は、後述する非接触領域A3内に形成されているが、後述する取付具6の支持部21の先端(取付具6を構成する板体の一の辺E1。以下、先端E1ともいう)の長さの範囲内であれば、任意の位置に形成することができる。
【0027】
続いて、取付具6について説明する。取付具6は、図1図4に示すように、一例として、平面視形状が方形状の金属製の板体を側面視L字状に一の辺E1に沿って折り曲げた第1帯状部位RE1(平面視形状が長方形の部位)で形成された支持部21、および板体における支持部21を除く部位で形成された押圧部22を有している。また、押圧部22の先端部は、板体の一の辺E1と対向する他の辺E2に沿って押圧部22における後述の対向面22a(整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体との対向面)側に板体を折り曲げた第2帯状部位RE2(平面視形状が長方形の部位)で構成されている。この先端部の構成により、押圧部22は、撓みに対する剛性の向上が図られている。
【0028】
なお、方形状の板体は、プレス加工により、一枚の金属板から複数個同時に打ち抜かれて作製される。このため、板体のいずれか一方の面の周縁には、バリが発生している。また、取付具6は、このようにして作製された板体に対してプレスによる曲げ加工を施すことにより、第1帯状部位RE1および第2帯状部位RE2を上記のように折り曲げて作製される。
【0029】
この取付具6は、図1,2に示すように、支持部21の先端E1が、側板5bの表面Sに当接し、かつ押圧部22が整流ダイオード2およびスイッチ素子3の本体と対向すると共にその先端部(第2帯状部位RE2で構成される部位)が整流ダイオード2およびスイッチ素子3の本体の前面に当接した状態で側板5bの表面Sに配設されている。
【0030】
この配設状態において、支持部21は、図2に示すように、先端E1(図2中の右端)が側板5bの表面Sに当接した状態でこの表面Sに対してほぼ直角に起立して位置している。また、支持部21の幅(第1帯状部位RE1の幅)は、絶縁シート8,9が装着された状態での整流ダイオード2およびスイッチ素子3の厚み(整流ダイオード2の厚みに絶縁シート8の厚みを加えた厚みや、スイッチ素子3の厚みに絶縁シート9の厚みを加えた厚み)よりも長くなるように規定されている。
【0031】
また、このようにして、整流ダイオード2およびスイッチ素子3の本体の各前面に位置する絶縁シート8の表面よりも側板5bの表面Sから離れた位置にある支持部21の後端(図2中の左端)に接続されている押圧部22は、その先端部が整流ダイオード2およびスイッチ素子3の本体の各前面(具体的には、絶縁シート8,9を介して各前面)に当接するように、支持部21との角度θ(図2,3参照)が90度未満に規定されている。
【0032】
この構成により、押圧部22は、図2に示すように、支持部21に接続された基端部(同図中の上端部)に対して先端部が側板5bの表面Sに一層接近する斜めの状態で支持部21から整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体上に延出している。このため、押圧部22の先端部は、整流ダイオード2およびスイッチ素子3の本体の各前面に対して斜めの状態で当接する。これにより、押圧部22の先端部は、第2帯状部位RE2における折り曲げ部分(直線L1で示す部分)の付近のみが整流ダイオード2およびスイッチ素子3の本体の各前面に当接する。この結果、板体における他の辺E2は、各本体の前面との接触(当接)が回避されている。
【0033】
次に、取付具6を側板5bに取り付けるための構成について説明する。図4に示すように、側板5bの表面Sにおける整流ダイオード2の背面が絶縁シート8を介して接触させられる領域(接触領域)A1とスイッチ素子3の背面が絶縁シート9を介して接触させられる領域(接触領域)A2との間に位置する領域(非接触領域)A3に、固定ねじ7を挿通させるための挿通孔11が形成されている。
【0034】
また、図1に示すように、突起部23を係合部10に係合させて取付具6を側板5bの表面Sに装着した状態において、押圧部22における整流ダイオード2およびスイッチ素子3のうちのいずれも挟むことなく側板5bの表面Sにおける領域(非接触領域)A3と対向する位置(部位)には、固定ねじ7と螺合する雌ねじ孔12が挿通孔11に対向して形成されている。
【0035】
この構成により、図1に示すように、取付具6を側板5bに装着した状態において、ケース5の外方から側板5bの挿通孔11に挿入された固定ねじ7の先端側が押圧部22の雌ねじ孔12に螺合することにより、取付具6および側板5bは、整流ダイオード2およびスイッチ素子3のいずれも挟むことなく対向する位置において、固定ねじ7によって相互に固定される。つまり、取付具6は、その押圧部22と側板5bとの間で整流ダイオード2およびスイッチ素子3を挟んだ状態で側板5bの表面Sに取り付けられる(ねじ止めされる)。
【0036】
また、この取付具6では、雌ねじ孔12に螺合された固定ねじ7により、側板5bの表面Sと接触している(当接している)支持部21の先端E1を支点として、押圧部22が側板5bの表面S側に移動させられる。これにより、取付具6は、整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体の前面に当接している押圧部22の先端部でこれらの本体を側板5b側に押し付けることにより、これらの本体の背面を側板5bの表面Sに圧接する。
【0037】
この電源装置1では、発熱部品としての整流ダイオード2およびスイッチ素子3のケース5の側板5bへの固定に際して、まず、図4に示すように、整流ダイオード2およびスイッチ素子3に、その上方から絶縁シート8,9を装着する。次いで、同図に示すようにして、側板5bの上方から、または図示はしないが、整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体の前面側から、押圧部22における先端部(板体の第2帯状部位RE2)側を下側にした状態で取付具6を側板5b側に移動させて、側板5bの係合部10内に突起部23を差し込んで、取付具6を側板5bに装着する。この場合、通常、回路基板4における整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体の前面側には、不図示の他の電子部品が実装されている。このため、整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体の前面側から取付具6を側板5bに装着するのは困難な場合が多い。したがって、一般的には、取付具6は、側板5bの上方から側板5bに近づけて、側板5bに装着される。
【0038】
この電源装置1によれば、この取付具6を側板5bに取り付けると共にその押圧部22の先端部を整流ダイオード2およびスイッチ素子3(本例では、整流ダイオード2およびスイッチ素子3に装着されている絶縁シート8,9)の各本体の前面に当接させたときに、押圧部22の先端部を構成する板体の第2帯状部位RE2のうちの折り曲げ部分の付近のみを当接させて、板体の他の辺E2自体の各本体の前面への当接を回避することができる。
【0039】
したがって、この電源装置1によれば、押圧部22における側板5bとの対向面側の縁部にバリが存在する状態で取付具6が製造されたとしても、バリの存在している板体の他の辺E2自体の各本体の前面への当接が回避されているため、このバリによって、整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体の前面(本例では、整流ダイオード2およびスイッチ素子3に装着されている絶縁シート8,9の表面)に傷(擦り傷など)が付くという不具合の発生を確実に防止することができる。これにより、この電源装置1によれば、取付具6のバリによって整流ダイオード2およびスイッチ素子3(具体的には絶縁シート8,9)の各本体の前面に擦り傷などが付かないように取付具6で整流ダイオード2およびスイッチ素子3を慎重に固定する従来の固定作業とは異なり、固定作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0040】
また、この電源装置1によれば、板体の他の辺E2に沿って折り曲げた第2帯状部位RE2で押圧部22の先端部が形成されているため、この先端部の剛性が高められている。これにより、取付具6が押圧部22の中央部位において上記したように1本の固定ねじ7で側板5bに固定される構成であっても、複数の発熱部品(本例では整流ダイオード2およびスイッチ素子3)に当接している押圧部22の先端部の撓みが極めて少なくなっている。したがって、この電源装置1によれば、ほぼ同等の厚みに形成された整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体の前面を押圧部22の先端部でほぼ均一に押圧することができる。これにより、この電源装置1によれば、取付具6で固定されている整流ダイオード2およびスイッチ素子3のうちのいずれかに押圧部22からの押圧力が過度に集中するといった不具合の発生を確実に防止することができる。
【0041】
また、この電源装置1によれば、取付具6に形成されている突起部23が固定部としての側板5bに形成されている係合部10と係合する構成のため、固定ねじ7の回転に伴って取付具6も回転するという事態の発生を確実に防止することができる。したがって、この電源装置1によれば、側板5bに対する取付具6の固定位置、ひいては取付具6における押圧部22の先端部と整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体の前面との当接位置を、常に一定の位置に位置決めすることができる。
【0042】
なお、上記した電源装置1では、側板5b側に挿通孔11を形成し、取付具6側に雌ねじ孔12を形成する構成を採用しているが、側板5b側に雌ねじ孔12を形成し、取付具6側に挿通孔11を形成する構成を採用することもできる。つまり、電源装置1では、側板5bおよび取付具6のうちの一方に挿通孔11を形成し、側板5bおよび取付具6のうちの他方に雌ねじ孔12を形成する構成を採用することができる。
【0043】
また、上記の例では、取付具6を用いて側板5bに固定する複数の発熱部品が整流ダイオード2およびスイッチ素子3の2つであるが、発熱部品が3つ以上であっても、取付具6の長さ(板体の他の辺E2の長さ、つまり押圧部22の先端部の長さ)を、各発熱部品の本体の幅方向に沿った全体の長さ以上に規定することにより、上記した発熱部品が2つの場合と同様にして、1つの固定ねじ7を用いて側板5bにすべての発熱部品を固定することができる。
【0044】
なお、上記した電源装置1では、発熱部品としての整流ダイオード2およびスイッチ素子3についての固定部として、ケース5の側板5bを使用する例を挙げて説明しているが、側板5bに代えて、整流ダイオード2およびスイッチ素子3と共に回路基板4に実装されている放熱板を固定部として使用することもできる。
【0045】
また、上記の電源装置1では、取付具6の縁部に形成されているバリで最も傷の付きやすい絶縁シート8,9が装着された状態の整流ダイオード2およびスイッチ素子3を取付具6で側板5bに固定する例を挙げて説明しているが、絶縁シート(上記の例では絶縁シート8,9)が装着されていない発熱部品(上記の例では整流ダイオード2およびスイッチ素子3)の固定部への固定にも、上記の取付具6を用いることができるのは勿論である。
【0046】
また、上記の電源装置1では、押圧部22の突起部23と係合する係合部10を、側板5bの上端面に開口する切欠部として形成する構成を採用しているが、図示はしないが、突起部23が挿入される平面視長方形(突起部23の断面形状よりも若干大きめの長方形)の貫通孔を係合部として側板5bに形成する構成を採用することもできる。
【0047】
また、上記の電源装置1では、板体の他の辺E2に沿った第2帯状部位RE2を折り曲げ線L1で、押圧部22の対向面22a側に側面視U字状に折り曲げて押圧部22の先端部を形成することで、他の辺E2自体と整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体の前面(絶縁シート8,9)との当接を回避する構成を採用しているが、この構成に代えて、図5,6に示す電源装置1A,1Bのように、板体の他の辺E2に沿った第2帯状部位RE2を折り曲げ線L1で、押圧部22の非対向面22b側に折り曲げて押圧部22の先端部を形成することで、他の辺E2自体と整流ダイオード2およびスイッチ素子3の各本体の前面(絶縁シート8,9)との当接を回避する構成を採用することもできる。
【0048】
さらに、この構成では、図5に示す電源装置1Aのように、押圧部22における非対向面22b側に接触するように(側面視U字状に)第2帯状部位RE2を折り曲げた取付具6Aを使用する構成を採用することもできるし、図6に示す電源装置1Bのように、側面視L字状(く字状)に第2帯状部位RE2を折り曲げた取付具6Bを使用する構成を採用することもできる。なお、図5,6では、図1と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略した。
【符号の説明】
【0049】
1,1A,1B 電源装置
2 整流ダイオード
3 スイッチ素子
5 ケース
5b 側板
6,6A,6B 取付具
7 固定ねじ
11,12 取付孔
13 挿通孔
14 雌ねじ孔
15,16 突起部
21 支持部
22 押圧部
22a 対向面
22b 非対向面
RE1 第1帯状部位
RE2 第2帯状部位
C3,A3 非挟持部位
E1 板体の一の辺
E2 板体の他の辺
S 表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6