【実施例】
【0016】
以下に、上記組付用台車にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の組付用台車1は、
図1、
図2に示すごとく、荷台ベース2、昇降ベース3、昇降手段31、部品載置台4及びストッパー5を備えている。
荷台ベース2には、組付用台車1を走行可能にするための複数の車輪21が設けられている。昇降ベース3は、荷台ベース2に対して昇降可能に取り付けられている。昇降手段31は、昇降ベース3を荷台ベース2に対して昇降させるものである。部品載置台4は、組付部品7が載置される台であり、昇降ベース3に対して、前後スライドガイド41によって前後方向Lにスライド可能であるとともに、左右スライドガイド42によって左右方向Wにスライド可能であり、かつ、回動ガイド44によって上下方向Hの中心軸線Cの回りに回動可能である。ストッパー5は、昇降ベース3に対する部品載置台4の前後方向Lのスライド、昇降ベース3に対する部品載置台4の左右方向Wのスライド、及び昇降ベース3に対する部品載置台4の回動を停止させるものである。
【0017】
組付用台車1は、
図1、
図4に示すごとく、組付部品7を搬送する際には、ストッパー5によって部品載置台4を昇降ベース3に対する原位置401に保持するよう構成されている。また、組付用台車1は、
図2、
図3に示すごとく、組付部品7を被組付対象8に対して着脱する際には、ストッパー5による部品載置台4の保持状態を解除して、組付部品7が載置された部品載置台4を昇降ベース3に対して前後方向L及び左右方向Wにスライドさせ、かつ中心軸線Cの回りに回動させることができるよう構成されている。
【0018】
以下に、本例の組付用台車1につき、
図1〜
図5を参照して詳説する。
本例の組付用台車1は、作業者によって走行させるものであり、作業者が、被組付対象8としての自動車のメインボディ8に対して、組付部品7としてのドア7を着脱する際に用いる。本例の組付用台車1は、試作自動車に対して性能試験等を行う際にドア7の着脱を行うときに用いる。
図3に示すごとく、メインボディ8には、ドア7を配置する位置に開口部81が形成されており、開口部81の周縁部には、ドア7のヒンジ部71を取り付ける取付部位810が形成されている。ドア7のヒンジ部71には、ボルトを挿通させる挿通穴711が形成されており、開口部81の取付部位810には、ボルトを締め付けるネジ穴811が形成されている。本例のドア7は、メインボディ8の側部に形成された開口部81に組み付けられるサイドドアである。
【0019】
図1、
図2に示すごとく、荷台ベース2には、その下面の4つの角部に車輪21が設けられている。荷台ベース2の水平方向の一端部には、作業者が組付用台車1を走行させる際に把持するためのハンドル22が設けられている。
昇降ベース3は、荷台ベース2と略同じ大きさに形成されており、昇降手段31による推力を受けて稼動するリンク32A,32Bによって、荷台ベース2から上昇するように構成されている。なお、
図2、
図4においては、昇降手段31及びリンク32A,32Bを実線によって示す。
【0020】
昇降手段31は、作業者が踏み込む操作によって駆動される空気圧シリンダー31によって構成されている。リンク32A,32Bは、荷台ベース2における一端部と昇降ベース3における他端部とに掛け渡される第1リンク32Aと、第1リンク32Aに対して回動可能な状態で交わり、荷台ベース2における他端部と昇降ベース3における一端部とに掛け渡される第2リンク32Bとによって構成されている。空気圧シリンダー31による推力は、第1リンク32A及び第2リンク32Bを介して昇降ベース3を上昇させる力に変換される。空気圧シリンダー31は、そのシリンダー室に空気圧ポンプ(図示略)から空気が送られることにより、昇降ベース3を上昇させ、操作部(図示略)の操作によって、シリンダー室から空気が抜かれることによって昇降ベース3を下降させる。
【0021】
空気圧ポンプは、荷台ベース2に設けられており、空気圧ポンプの踏み込み部は、作業者が踏み込むことができる位置に設けられている。操作部は、ハンドル22に取り付けられている。ドア7の組付を行う作業者は、部品載置台4を、目標とする高さよりも高い位置にしておき、ハンドル22に取り付けられた操作部を操作して、部品載置台4を下降させながら、部品載置台4に載置されたドア7の高さ位置を調整する。
【0022】
図2に示すごとく、部品載置台4には、ドア7を保持するための保持枠部46が立設して設けられている。保持枠部46の上部には、ドア7の上端部を挟み込んで支持するための部品支持部47が設けられている。部品支持部47は、ドア7の上端部に合わせて上下にスライドさせる上下支柱471と、上下支柱471に対して水平方向にスライドさせる水平支柱472と、水平支柱472の先端部においてドア7の上端部を挟み込む挟持部473と、挟持部473によるドア7の挟持状態を維持するためのトグルクランプ474とを有している。
【0023】
部品載置台4を前後方向L及び左右方向Wにスライドさせ、上下方向Hの中心軸線Cの回りに回動させる構造は、次のように形成されている。
図1、
図2に示すごとく、本例の組付用台車1においては、昇降ベース3上に左右スライドガイド42が設けられ、左右スライドガイド42上に前後スライドガイド41が設けられ、前後スライドガイド41上に回動ガイド44が設けられ、回動ガイド44上に部品載置台4が設けられている。
左右スライドガイド42は、左右方向Wに延びる左右レール421と、左右レール421に対して転がり接触する状態で係合して、左右方向Wにスライドする左右スライダー422とによって構成されている。左右レール421は、昇降ベース3における前後2箇所に取り付けられており、各左右レール421における左右スライダー422には、左右スライダー422に対して前後方向Lに掛け渡す状態でベース板43が取り付けられている。
【0024】
前後スライドガイド41は、前後方向Lに延びる前後レール411と、前後レール411に対して転がり接触する状態で係合して、前後方向Lにスライドする前後スライダー412とによって構成されている。前後レール411は、ベース板43の上面において、前後2箇所の左右レール421の上に掛け渡される状態で取り付けられている。
回動ガイド44は、互いに転がり接触する一対の回動部441,442によって構成されている。下方側に位置する回動部441は前後スライダー412に取り付けられており、上方側に位置する回動部442に部品載置台4が取り付けられている。部品載置台4は、原位置401において前後方向Lに長い形状に形成されており、上方側に位置する回動部442は、部品載置台4の略中心部に取り付けられている。
図3に示すごとく、ドア7は、その前後方向Lが組付用台車1の前後方向Lに向くように、部品載置台4に載置される。
【0025】
図1に示すごとく、本例のストッパー5は、昇降ベース3における前後方向Lの2箇所に設けられた前後係止部511,512と、部品載置台4に設けられ、2箇所の前後係止部511,512のいずれに対しても係止可能な前後被係止部52とによって構成されている。
前後係止部511,512は、昇降ベース3から立設して水平方向に設けられた係止プレート51における前後方向Lの2箇所に形成された係止穴511,512によって構成されている。前後被係止部52は、部品載置台4の後方側端部において、上下方向Hにスライド可能に設けられたスライドピン52によって構成されている。そして、スライドピン52が係止穴511,512に差し込まれることによって、部品載置台4の前後方向Lの位置及び水平方向における回動位置が固定される。
【0026】
図1に示すごとく、部品載置台4は、後方側の係止穴511にスライドピン52が係止されたときに、組付用台車1を走行させるための(ドア7を搬送するための)原位置401に保持される。組付用台車1を走行させる際には、部品載置台4を原位置401にすることにより、部品載置台4が昇降ベース3の前端部301から前後方向Lの前方側に突出せず、この走行の際に部品載置台4又は部品載置台4に載置されたドア7が、周囲に衝突しにくくすることができる。
【0027】
一方、
図5に示すごとく、部品載置台4は、前方側の係止穴512にスライドピン52が係止されたときに、昇降ベース3の前端部301から部品載置台4が前後方向Lの前方側に突出されて、ドア7が保管された保管台71からドア7を受け取るための突出位置402に保持される。保管台71からドア7を部品載置台4に受け取る際には、部品載置台4を突出位置402にすることにより、部品載置台4を保管台71に近づけることができ、保管台71から部品載置台4へのドア7の移載を容易にすることができる。
【0028】
図3、
図4に示すごとく、部品載置台4には、昇降ベース3に設けられた回動規制部62に対して係合して、回動ガイド44による部品載置台4の回動を拘束するとともに左右スライドガイド42による部品載置台4の左右方向Wへのスライドを拘束するための拘束部材45が設けられている。拘束部材45は、部品載置台4の下面において、左右一対に設けられたガイド板451によって形成されている。左右一対のガイド板451の後方側端部は、左右方向Wの外方に傾斜して開かれている。
昇降ベース3における回動規制部62を、左右一対のガイド板451の間を通過させることにより、部品載置台4の左右方向Wへのスライド及び上下方向Hの中心軸線Cの回りの回動を停止させて、係止穴511,512に対するスライドピン52の挿入を容易にすることができる。
【0029】
図6に示すごとく、昇降ベース3には、ストッパー5とは別に、部品載置台4の左右方向Wに延びる回動中心部611の回りに自重によって回動して、部品載置台4の左右方向Wへのスライドを停止させるとともに、回動中心部611の回りに持ち上げて回動させて、部品載置台4の左右方向Wへのスライドを可能にする左右ストッパー61が設けられている。同図において、左右ストッパー61が持ち上げられた状態を二点鎖線で示す。
図3、
図4に示すごとく、左右ストッパー61は、前後レール411が取り付けられたベース板43に対して係合して、部品載置台4が左右方向Wにスライドすることを停止させるよう構成されている。左右ストッパー61は、左右レール421に対して平行に、左右方向Wに延びる回動中心部611を中心に回動可能な回動部材によって構成されている。左右ストッパー61は、後方側の左右レール421に対向する位置に設けられており、左右方向Wの中心位置には、ベース板43のスライドを停止させるための切欠部612を有している。
【0030】
ドア7をメインボディ8に組み付ける際に、部品載置台4を左右方向Wにスライドさせるときには、作業者は、左右ストッパー61を、回動中心部611を中心に上方へ回動させるように持ち上げる。そして、作業者が部品載置台4を組付用台車1の左右方向Wにおける中心位置に戻したときには、左右ストッパー61がその自重によって下方へ回動し、左右ストッパー61における切欠部612にベース板43が配置される。これにより、部品載置台4が左右方向Wにスライドしないようにすることができる。
【0031】
次に、本例の組付用台車1を用いて、メインボディ8に対してドア7を組み付ける場合につき説明するとともに、本例の作用効果につき説明する。
ドア7をメインボディ8に組み付ける際には、作業者は、組付用台車1を、ドア7が保管された保管台71まで走行させる。このとき、
図1に示すごとく、スライドピン52を後方側の係止穴511に挿入しておくことにより、部品載置台4を、周囲の構造物等に衝突しないように原位置401にしておくことができる。
【0032】
そして、組付用台車1を保管台71に対向させたときには、作業者は、スライドピン52を後方側の係止穴511から抜き出し、部品載置台4を前方へスライドさせる。そして、
図5に示すごとく、スライドピン52を前方側の係止穴512に挿入し、部品載置台4を、突出位置402にして、昇降ベース3の前端部301から前方側に突出させる。これにより、部品載置台4を保管台71に近づけた状態において、保管台71からドア7を部品載置台4へ容易に移載することができる。
【0033】
次いで、作業者は、上記と同様にスライドピン52を操作し、部品載置台4を後方側にスライドさせて、部品載置台4を原位置401にする。そして、作業者は、部品載置台4にドア7が載置された状態の組付用台車1を、メインボディ8の開口部81まで走行(移動)させる。
次いで、作業者は、
図3に示すごとく、メインボディ8の開口部81における取付部位810に対して、ドア7のヒンジ部71の水平方向の組付位置、水平方向の組付角度、組付高さが合うように、部品載置台4を動かす。
【0034】
このとき、作業者は、部品載置台4上のドア7のヒンジ部71が、開口部81の取付部位810よりも高い位置になるように、昇降手段31によって昇降ベース3を上昇させる。また、スライドピン52を後方側の係止穴511から抜き出して、部品載置台4が前後方向Lにスライド可能な状態にする。また、左右ストッパー61を上方に回動させて、ベース板43及び部品載置台4を左右方向Wにスライド可能な状態にする。
そして、作業者は、同図に示すごとく、ドア7が載置された部品載置台4を前方へスライドさせて、昇降ベース3の回動規制部62から拘束部材45を抜き出し、部品載置台4が、前後方向L及び左右方向Wにスライド可能で、上下方向Hの中心軸線Cの回りに回動可能な状態を形成する。
【0035】
こうして、作業者は、部品載置台4を、前後スライドガイド41及び左右スライドガイド42によって、前後方向L及び左右方向Wにスライドさせることができ、回動ガイド44によって、上下方向Hの中心軸線Cの回りに回動させることができる。これにより、作業者は、部品載置台4に載置されるドア7の水平方向の位置及び水平方向の角度を容易に調整することができる。
また、作業者は、部品載置台4上のドア7のヒンジ部71が、開口部81の取付部位810に正対するように、昇降手段31を操作して昇降ベース3を下降させることができる。これにより、作業者は、部品載置台4に載置されたドア7の高さを任意に調整することができる。
なお、メインボディ8に組み付けられたドア7を取り外す際にも、上記組み付ける場合と同様の操作を行うことができる。
【0036】
このように、本例の組付用台車1は、ストッパー5を構成するスライドピン52等を操作することによって、走行状態と調整状態とに容易に切り換えることができる。
そして、組付用台車1を走行状態にする際には、ストッパー5によって部品載置台4を昇降ベース3に対する原位置401に保持する。これにより、部品載置台4にドア7が載置された状態で走行する際(ドア7を搬送する際)、あるいは部品載置台4にドア7が載置されていない状態で走行する際(空の状態で走行する際)には、部品載置台4が昇降ベース3に対して動かないようにして、この走行を容易にすることができる。
【0037】
また、組付用台車1を調整状態にする際には、ストッパー5による部品載置台4の保持状態を解除して、部品載置台4が前後方向L及び左右方向Wにスライド可能で、かつ上下方向Hの中心軸線Cの回りに回動可能にすることができる。これにより、ドア7をメインボディ8に対して組み付ける際、あるいはドア7をメインボディ8から取り外す際には、メインボディ8に対するドア7又は部品載置台4の水平方向の組付位置及び水平方向の組付角度の調整を容易にすることができる。
それ故、本例の組付用台車1によれば、水平方向の組付位置、水平方向の組付角度及び組付高さを容易に調整することができる。