(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の装置では、歩行時の運動の左右差(左足が支持脚のときの動作と右足が支持脚のときの動作との間の差異)の有無は判別できるものの、歩行動作においてどのように左右の均衡の崩れが現れているかを詳細に示すことができなかった。
【0010】
したがって、ユーザは、歩行動作に左右差があることを知ることはできても、自らの歩行姿勢および/または歩行動作においてどのような左右差が存在するかを知ることはできず、自らの歩行を改善するために有用な示唆を得ることはできなかった。
【0011】
そこで、この発明の一態様は、被測定者の歩行動作においてどのように左右差が現れているかをより具体的に示すことができる装置を提供する。
【0012】
そこで、この発明の別の一態様は、被測定者の歩行動作においてどのように左右差が現れているかをより具体的に示すことができるコンピュータ・プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の一態様による歩行姿勢計は、被測定者の歩行姿勢を評価する歩行姿勢計であって、被測定者の腰部の正中線上に装着され、上下軸、左右軸および前後軸方向の加速度を出力する加速度センサと、前記加速度センサが出力する上下軸加速度の時間的な変化波形を用いて左脚により身体が支持される左脚基準期間における前記腰部の上下軸加速度と右脚により身体が支持される右脚基準期間における前記腰部の上下軸加速度との間の差異の程度を示すZ特徴量を算出し、前記加速度センサが出力する左右軸加速度を二階積分して前記左脚基準期間における前記腰部の左右軸方向の軌道の変位と前記右脚基準期間における前記腰部の左右軸方向の軌道の変位との間の差異の程度を示すY特徴量を算出し、前記加速度センサが出力する前後軸加速度の時間的な変化波形を用いて前記左脚基準期間における前記腰部の前後軸加速度と前記右脚基準期間における前記腰部の前後軸加速度との間の差異の程度を示す量であるX特徴量を算出する演算部と、を備える。
【0014】
本明細書で、「左脚基準期間」とは、歩行周期のうち一歩分に相当する期間を指し、特に、左脚により身体が支持される一歩分の期間を指す。具体的には、これに限定されないが、例えば、送り出された左脚の踵が移動面に接地したタイミングから、その次に送り出された右脚の踵が移動面に接地するタイミングまでの期間を「左脚基準期間」と称する。同様、「右脚基準期間」とは、歩行周期のうち一歩分に相当する期間を指し、特に、右脚により身体が支持される一歩分の期間を指す。具体的には、これに限定されないが、例えば、送り出された右脚の踵が移動面に接地したタイミングから、その次に送り出された左脚の踵が移動面に接地するタイミングまでの期間を「右脚基準期間」と称する。また、本明細書では、支持脚がいずれであるかを特に特定する必要がない場合、「左脚基準期間」および「右脚基準期間」を、単に、「基準期間」と称する。
【0015】
本明細書で、左右軸方向の軌道は、被測定者が歩く歩行線をゼロとして左側(プラス側)または右側(マイナス側)に変位することを想定している。
【0016】
本発明の一態様による歩行姿勢計では、加速度センサが被測定者の腰部の正中線上に装着され、上下軸、左右軸および前後軸方向の加速度を出力する。演算部は、前記加速度センサが出力する上下軸加速度の時間的な変化波形を用いて左脚により身体が支持される左脚基準期間における前記腰部の上下軸加速度と右脚により身体が支持される右脚基準期間における前記腰部の上下軸加速度との間の差異の程度を示すZ特徴量を算出する。また、演算部は、前記加速度センサが出力する左右軸加速度を二階積分して前記左脚基準期間における前記腰部の左右軸方向の軌道の変位と前記右脚基準期間における前記腰部の左右軸方向の軌道の変位との間の差異の程度を示すY特徴量を算出する。さらに、演算部は、前記加速度センサが出力する前後軸加速度の時間的な変化波形を用いて前記左脚基準期間における前記腰部の前後軸加速度と前記右脚基準期間における前記腰部の前後軸加速度との間の差異の程度を示す量であるX特徴量を算出する。したがって、Z特徴量、Y特徴量、X特徴量に基づいて、直交する三軸方向それぞれに沿って左右差が現れている程度を具体的に示すことができる。特に、Z特徴量、X特徴量は、それぞれ左脚基準期間と右脚基準期間との間の加速度の差異を示す量であるから、上下軸方向の揺れの左右差、前後軸方向の揺れの左右差をそれぞれ適切に示すことができる。また、Y特徴量は、左脚基準期間と右脚基準期間との間の軌道の変位の差異を示す量であるから、左右軸方向の揺れの左右差を適切に示すことができる。
【0017】
一実施形態による歩行姿勢計では、前記Z特徴量を予め設定された第1の基準と比較して前記上下軸方向の揺れの支持脚の相違による差異である第1の差異を段階的に評価し、前記Y特徴量を予め設定された第2の基準と比較して前記左右軸方向の揺れの支持脚の相違による差異である第2の差異を段階的に評価し、前記X特徴量を予め設定された第3の基準と比較して前記前後軸方向の揺れの支持脚の相違による差異である第3の差異を段階的に評価する評価部を備える。
【0018】
この一実施形態による歩行姿勢計では、評価部は、前記Z特徴量を予め設定された第1の基準と比較して前記上下軸方向の揺れの支持脚の相違による差異である第1の差異を段階的に評価する。また、評価部は、前記Y特徴量を予め設定された第2の基準と比較して前記左右軸方向の揺れの支持脚の相違による差異である第2の差異を段階的に評価する。さらに、評価部は、前記X特徴量を予め設定された第3の基準と比較して前記前後軸方向の揺れの支持脚の相違による差異である第3の差異を段階的に評価する。したがって、前記上下軸方向の揺れの左右差を表す第1の差異、前記左右軸方向の揺れの左右差を表す第2の差異、前記前後軸方向の揺れの左右差を表す第3の差異を、それぞれ段階的に示すことができる。
【0019】
一実施形態による歩行姿勢計では、さらに、前記評価部による評価の結果を報知する報知部を備えたことを特徴とする。
【0020】
この一実施形態による歩行姿勢計では、ユーザは、直交する三軸方向それぞれに沿った腰の揺れの左右差を、それぞれ段階的に知ることができる。
【0021】
一実施形態による歩行姿勢計では、さらに、前記上下軸方向の揺れの支持脚の相違による差異が前記第1の基準よりも大きい歩行姿勢が示された第1の静止画または動画と、前記左右軸方向の揺れの支持脚の相違による差異が前記第2の基準よりも大きい歩行姿勢が示された第2の静止画または動画と、前記前後軸方向の揺れの支持脚の相違による差異が前記第3の基準よりも大きい歩行姿勢が示された第3の静止画または動画と、を記憶する記憶部を有し、前記報知部は、前記評価部が前記第1の差異が前記第1の基準よりも大きいと評価した場合、前記第1の静止画または動画を用いて前記腰部の上下の揺れの左右差が大きいことを報知し、前記評価部が前記第2の差異が前記第2の基準よりも大きいと評価した場合、前記第2の静止画または動画を用いて前記腰部の左右の揺れの左右差が大きいことを報知し、前記評価部が前記第3の差異が前記第3の基準よりも大きいと評価した場合、前記第3の静止画または動画を用いて前記腰部の前後の揺れの左右差が大きいことを報知する、ことを特徴とする。
【0022】
この一実施形態による歩行姿勢計では、ユーザは、直交する三軸方向それぞれに沿った腰の揺れの左右差を、画像を通じて視覚的に知ることができる。
【0023】
一実施形態による歩行姿勢計では、前記記憶部が記憶する前記第1の静止画または動画は、前記第1の差異が前記第1の基準と同程度である場合の歩行姿勢よりも前記腰部の上下の揺れの左右差が誇張された歩行姿勢を示す画像を含み、前記記憶部が記憶する前記第2の静止画または動画は、前記第2の差異が前記第2の基準と同程度である場合の歩行姿勢よりも前記腰部の左右の揺れの左右差が誇張された歩行姿勢を示す画像を含み、前記記憶部が記憶する前記第3の静止画または動画は、前記第3の差異が前記第3の基準と同程度である場合の実際の歩行姿勢よりも前記腰部の前後の揺れの左右差が誇張された歩行姿勢を示す画像を含む、ことを特徴とする。
【0024】
この一実施形態による歩行姿勢計では、ユーザは、直交する三軸方向それぞれに沿った腰の揺れの左右差を、左右差が実際よりも誇張された画像を通じて視覚的に知ることができる。したがって、自らの歩行の左右差の特徴をさらに理解しやすい。
【0025】
一実施形態による歩行姿勢計では、前記演算部は、前記左脚基準期間における上下軸加速度の最大値と前記左脚基準期間と隣接する前記右脚基準期間における上下軸加速度の最大値との差の絶対値を用いて前記Z特徴量を求め、前記演算部は、前記左脚基準期間における左右軸方向の軌道の最大変位と前記左脚基準期間と隣接する前記右脚基準期間における左右軸方向の軌道の最大変位との差の絶対値を用いて前記Y特徴量を求め、前記演算部は、前記左脚基準期間における前後軸加速度の最大値と前記左脚基準期間と隣接する前記右脚基準期間における前後軸加速度の最大値との差の絶対値を用いて前記X特徴量を求める、ことを特徴とする。
【0026】
本明細書で、「軌道の最大変位」は、左側(プラス側)、右側(マイナス側)の絶対値であるものとする。
【0027】
この一実施形態による歩行姿勢計は、直交する三軸方向それぞれに沿った腰の揺れの左右差を、至極簡単な計算により求めることができる。したがって、当該歩行姿勢計は、極めて少ない計算資源により迅速な評価が可能である。
【0028】
一実施形態による歩行姿勢計では、前記演算部は、交代的に現れる前記左脚基準期間および前記右脚基準期間の連続した4以上の期間について、前記左脚基準期間における上下軸加速度の最大値と前記左脚基準期間と隣接する前記右脚基準期間における上下軸加速度の最大値との差の絶対値をそれぞれ求め、当該求めた複数の差の絶対値の平均値を用いて前記Z特徴量を求め、前記左脚基準期間における左右軸方向の軌道の最大変位と前記左脚基準期間と隣接する前記右脚基準期間における左右軸方向の軌道の最大変位との差の絶対値をそれぞれ求め、当該求めた複数の差の絶対値の平均値を用いて前記Y特徴量を求め、前記左脚基準期間における前後軸加速度の最大値と前記左脚基準期間と隣接する前記右脚基準期間における前後軸加速度の最大値との差の絶対値をそれぞれ求め、当該求めた複数の差の絶対値の平均値を用いて前記X特徴量を求める、ことを特徴とする。
【0029】
この一実施形態による歩行姿勢計では、複数の歩数に渡る加速度または移動量を用いて直交する三軸方向それぞれに沿った腰の揺れの左右差を求める。そのため、当該歩行姿勢計は、より安定的に評価を行うことができる。
【0030】
一実施形態による歩行姿勢計では、前記評価部は、前記第1の基準に加えて、前記第1の基準と異なる予め設定された複数の第1の副基準を用いて、前記腰部の上下の揺れの左右差を3段階以上の複数段階に評価し、前記第2の基準に加えて、前記第2の基準と異なる予め設定された複数の第2の副基準を用いて、前記腰部の左右の揺れの左右差を3段階以上の複数段階に評価し、前記第3の基準に加えて、前記第3の基準と異なる予め設定された複数の第3の副基準を用いて、前記腰部の前後の揺れの左右差を3段階以上の複数段階に評価する、ことを特徴とする。
【0031】
この一実施形態による歩行姿勢計では、複数の歩数に渡る加速度または移動量を用いて直交する三軸方向それぞれに沿った腰の揺れの左右差の程度を3段階以上の複数段階に評価することができる。したがって、ユーザは、各軸に沿った腰部の揺れの左右差を多段的に知ることができる。
【0032】
一実施形態による歩行姿勢計では、前記評価部は、前記第1の差異が前記第1の基準以下であり、かつ前記第2の差異が前記第2の基準以下であり、かつ前記第3の差異が前記第3の基準以下である場合に、前記被測定者の歩行姿勢に左右差がないと評価し、前記評価部は、前記第1の差異が前記第1の基準より大きいか、前記第2の差異が前記第2の基準より大きいか、または、前記第3の差異が前記第3の基準より大きい場合に、前記被測定者の歩行姿勢に左右差があると評価する、ことを特徴とする。
【0033】
この一実施形態による歩行姿勢計では、三軸のいずれかの軸に沿った腰部の揺れに基準よりも大きい左右差がある場合に、歩行姿勢に左右差があると評価する。そのため、ユーザは、簡潔に自らの歩行に左右差が存在するか否かを知ることができる。
【0034】
本発明の別の一態様によるプログラムは、被測定者の歩行姿勢を評価する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、上記方法は、被測定者の腰
部の正中線上に装着された加速度センサから上下軸、左右軸および前後軸方向の加速度の出力を取得するステップと、前記加速度センサが出力する上下軸加速度の時間的な変化波形を用いて左脚により身体が支持される左脚基準期間における前記腰部の上下軸加速度と右脚により身体が支持される右脚基準期間における前記腰部の上下軸加速度との間の差異の程度を示すZ特徴量を算出し、前記加速度センサが出力する左右軸加速度を二階積分して前記左脚基準期間における前記腰部の左右軸方向の軌道の変位と前記右脚基準期間における前記腰部の左右軸方向の軌道の変位との間の差異の程度を示すY特徴量を算出し、前記加速度センサが出力する前後軸加速度の時間的な変化波形を用いて前記左脚基準期間における前記腰部の前後軸加速度と前記右脚基準期間における前記腰部の前後軸加速度との間の差異の程度を示す量であるX特徴量を算出するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0035】
当該プログラムを実行させることにより、コンピュータは、まず被測定者の腰
部の正中線上に装着された加速度センサから上下軸、左右軸および前後軸方向の加速度の出力を取得する。そして、コンピュータは、前記加速度センサが出力する上下軸加速度の時間的な変化波形を用いて左脚により身体が支持される左脚基準期間における前記腰部の上下軸加速度と右脚により身体が支持される右脚基準期間における前記腰部の上下軸加速度との間の差異の程度を示すZ特徴量を算出し、前記加速度センサが出力する左右軸加速度を二階積分して前記左脚基準期間における前記腰部の左右軸方向の軌道の変位と前記右脚基準期間における前記腰部の左右軸方向の軌道の変位との間の差異の程度を示すY特徴量を算出し、前記加速度センサが出力する前後軸加速度の時間的な変化波形を用いて前記左脚基準期間における前記腰部の前後軸加速度と前記右脚基準期間における前記腰部の前後軸加速度との間の差異の程度を示す量であるX特徴量を算出する。したがって、コンピュータは、Z特徴量、Y特徴量、X特徴量に基づいて、直交する三軸方向それぞれに沿って左右差が現れている程度を具体的に示すことができる。特に、Z特徴量、X特徴量は、それぞれ左脚基準期間と右脚基準期間との間の加速度の差異を示す量であるから、上下軸方向の揺れの左右差、前後軸方向の揺れの左右差をそれぞれ適切に示すことができる。また、Y特徴量は、左脚基準期間と右脚基準期間との間の軌道の変位の差異を示す量であるから、左右軸方向の揺れの左右差を適切に示すことができる。
【発明の効果】
【0036】
以上より明らかなように、この発明の一態様による歩行姿勢計によれば、被測定者の歩行動作においてどのように左右差が現れているかを具体的に示すことができる。
【0037】
また、この発明の別の一態様によるプラグラムをコンピュータに実行させることにより、被測定者の歩行動作においてどのように左右差が現れているかを具体的に示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
図1は、この発明の実施の形態の歩行姿勢計(全体を符号1で示す。)のシステム構成を示している。この歩行姿勢計1は、活動量計100と、スマートフォン200とを含んでいる。活動量計100とスマートフォン200とは、この例ではBLE(Bluetooth low energy;低消費電力Bluetooth、Bluetooth Core Specification Ver. 4.0において規定。)通信によって互いに通信可能になっている。
【0041】
図2に示すように、活動量計100は、ケーシング100Mと、このケーシング100Mに搭載された、制御部110と、発振部111と、加速度センサ112と、メモリ120と、操作部130と、表示部140と、BLE通信部180と、電源部190と、リセット部199とを含む。
【0042】
ケーシング100Mは、この活動量計100を携帯し易いように、ヒトの手のひらに収まる程度の大きさに形成されている。
【0043】
発振部111は、水晶振動子を含み、この活動量計100の動作タイミングの基準となるクロック信号を発生する。発振部111は、クロックジェネレータとしての機能を有するモジュールチップでよい。
【0044】
加速度センサ112は、ケーシング100Mが受ける3軸(3方向)の加速度をそれぞれ検出して、制御部110へ出力する。加速度センサ112は、3軸加速度センサのモジュールチップでよい。
【0045】
メモリ120は、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを含む。ROMは、この活動量計100を制御するためのプログラムのデータを記憶する。また、RAMは、この活動量計100の各種機能を設定するための設定データ、加速度測定結果および演算結果のデータなどを記憶する。メモリ120は、以下で詳細に説明する記憶部を構成してもよい。
【0046】
制御部110は、上記クロック信号に基づいて動作するCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)を含み、メモリ120に記憶された活動量計100を制御するためのプログラムに従って、加速度センサ112からの検知信号に基づいて、この活動量計100の各部(メモリ120、表示部140およびBLE通信部
180を含む。)を制御する。この制御部110は、少なくとも、上下軸加速度、左右軸加速度、および、前後軸加速度それぞれの時系列データを処理することができる信号処理系を含む。当該信号処理系は、左右軸加速度の時系列データを処理して左右軸軌道の時系列データを生成し、当該左右軸軌道の時系列データを処理することも可能である。制御部110は、以下で詳細に説明する演算部、および、評価部として動作する。
【0047】
操作部130は、この例ではボタンスイッチからなり、電源オン・オフ切り替えの操作、表示内容切り替えの操作など、適宜の操作入力を受け付ける。
【0048】
表示部140は、この例ではLCD(液晶表示素子)または有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイからなる表示画面を含み、この表示画面に制御部110から受けた信号に従って所定の情報を表示する。表示部140は、以下で詳細に説明する報知部として動作してもよい。表示部140は、電源のオン/オフ、動作状態等を点灯、消灯、点滅、等で表示するLED(発光ダイオード)であってもよい。
【0049】
電源部
190は、この例ではボタン電池からなり、この活動量計100の各部へ電力を供給する。
【0050】
BLE通信部
180は、スマートフォン200との間でリアルタイムで通信を行う。例えば、スマートフォン200へ測定結果を表す情報などを送信する。また、スマートフォン200から操作指示を受信する。BLE通信部
180は、BLE機能を備えたモジュールチップでよい。
【0051】
リセット部199は、スイッチからなり、制御部110の動作やメモリ120の記憶内容をリセットして初期化する。
【0052】
図3に示すように、スマートフォン200は、本体200Mと、この本体200Mに搭載された、制御部210と、メモリ220と、操作部230と、表示部240と、BLE通信部280と、ネットワーク通信部290とを含む。このスマートフォン200は、市販のスマートフォンに、活動量計100への指示を行わせるようにアプリケーションソフトウェア(コンピュータ・プログラム)をインストールしたものである。
【0053】
制御部210は、CPUおよびその補助回路を含み、スマートフォン200の各部を制御し、メモリ220に記憶されたプログラムおよびデータに従って処理を実行する。すなわち、操作部230、および、通信部280,290から入力されたデータを処理し、処理したデータを、メモリ220に記憶させたり、表示部240で表示させたり、通信部280,290から出力させたりする。制御部210は、以下で詳細に説明する演算部、および、評価部として動作してもよい。
【0054】
メモリ220は、制御部210でプログラムを実行するために必要な作業領域として用いられるRAMと、制御部210で実行するための基本的なプログラムを記憶するためのROMとを含む。また、メモリ220の記憶領域を補助するための補助記憶装置の記憶媒体として、半導体メモリ(メモリカード、SSD(Solid State Drive))などが用いられてもよい。メモリ220は、以下で詳細に説明する記憶部を構成する。
【0055】
操作部230は、この例では、表示部240上に設けられたタッチパネルからなっている。なお、キーボードその他のハードウェア操作デバイスを含んでいてもよい。
【0056】
表示部240は、表示画面(例えばLCDまたは有機ELディスプレイからなる)を含む。表示部240は、制御部210によって制御されて、所定の画像を表示画面に表示させる。表示部240は、以下で詳細に説明する報知部を構成する。
【0057】
BLE通信部280は、活動量計100との間でリアルタイムで通信を行う。例えば、活動量計100へ操作指示を送信する。また、活動量計100から測定結果を表す情報などを受信する。
【0058】
ネットワーク通信部290は、制御部210からの情報をネットワーク900を介して他の装置へ送信するとともに、他の装置からネットワーク900を介して送信されてきた情報を受信して制御部210に受け渡すことができる。
【0059】
例えば
図4(A)に示すように、この歩行姿勢計1が例えばユーザとしての被測定者90によって使用される場合、活動量計100が装着クリップ100C(
図1中に示す)によって被測定者90の正中線91上の腰の背面側に装着される。
【0060】
この例では、
図4(B)に示すように、被測定者90にとって前後方向をX軸、左右方向をY軸、上下方向をZ軸とする。そして、活動量計100の加速度センサ112は、被測定者90が前方へ歩行するのに伴ってケーシング100Mが受けるX軸(前後軸)の加速度、Y軸(左右軸)の加速度、Z軸(上下軸)の加速度をそれぞれ出力するものとする。
【0061】
この歩行姿勢計1によって測定を行う場合、被測定者90は、活動量計100とスマートフォン200の電源をオンする。それとともに、スマートフォン200のアプリケーションソフトウェアを起動して、操作部230、BLE通信部280を介して、活動量計100へ測定スタートを指示する。
【0062】
その状態で、被測定者90は前方へ真っ直ぐに所定の歩数、この例では10歩だけ歩行する。そして、被測定者90は、スマートフォン200の操作部230、BLE通信部280を介して、活動量計100へ演算および演算結果の出力を指示する。
【0063】
すると、活動量計100の制御部110は演算部として働いて、後述する演算を行う。そして、その演算結果を表す情報を、BLE通信部180を介して、スマートフォン200へ送信する。
【0064】
図12は、実施の形態による活動量計100の制御部110による動作フローを示している。活動量計100の制御部110は、電源がオンされると、ステップS1に示すように、スマートフォン200からの測定スタートの指示を待つ。スマートフォン200からの測定スタートの指示を受信すると(ステップS1でYES)、ステップS2に示すように、制御部110は、加速度センサ112による3軸方向加速度の出力を取得する。加速度センサ112の出力の取得は、この例では10歩分の加速度時系列データを含む期間として、予め定められた期間(例えば14秒間)だけ行われる。取得された加速度の時系列データは、メモリ120に一旦記憶される。次に、制御部110は、ステップS3に示すように、スマートフォン200からの測定スタートの指示を待つ。スマートフォン200からの演算の指示を受信すると(ステップS3でYES)、ステップS4に示すように、制御部110は演算部として働いて、被測定者の身体(主として腰部)の三軸方向それぞれについて、左脚基準期間と右脚基準期間との間の差異(左右バランス(左右差))の程度を示す特徴量(Z特徴量、Y特徴量、X特徴量)の算出を行う。そして、ステップS5に示すように、制御部110は評価部として働いて、その演算結果(Z特徴量、Y特徴量、X特徴量結果)を用いて、被測定者の歩行中の身体の左右バランス(左右差)を複数の観点から評価する。ここで、複数の観点とは、被測定者の身体(主として腰部)の上下軸方向の揺れについての左右差、身体(主として腰部)の左右軸方向の揺れについての左右差、身体(主として腰部)の前後軸方向の揺れについての左右差を指す。その後、ステップS6に示すように、その評価の結果をスマートフォン200へ出力(送信)する。なお、制御部110は、少なくとも一歩分の加速度時系列データが得られ次第、ステップS4の処理を実行してもよい。その場合、ステップS3として示した判断のステップは省略されてもよい。
【0066】
図5は、ヒトの歩容と、歩行周期のうち1歩分に相当する基準期間(図中のT7(=StepT))の間に、腰に装着された活動量計100の加速度センサ112から出力される上下軸加速度(鉛直上方を正とするZ軸方向加速度)の時間変化波形の典型例との関係を示す図である。
【0067】
繰り出された前足(図では右足)の踵が移動面と接地するタイミング(踵接地タイミング)の近傍において、上下軸加速度は、ゼロクロス点を通過して負から正へ転じる。
【0068】
その後、上下軸加速度には、3つのピーク(極大点)(P
1(時間t=T
1)、P
2(時間t=T
3)、P
3(時間t=T
5))およびその間の谷(極小点)(V
1(時間t=T
2)、V
2(時間t=T
4))が現れる。歩容における、立脚(図では右足)と遊脚(図では左脚)とが進行方向に関して略一致するタイミング(立脚中期タイミング)は、第3のピーク
P3が現れたタイミング近傍に対応する。
【0069】
歩容における立脚中期タイミングを超えると、上下軸加速度は、再びゼロクロス点を通過して正から負に転じ、最小点(V
3(時間t=T
6))を通過し、やがて時間t=T
7において再度ゼロクロス点(時間t=T
7)を通過して負から正へ転じる。時間t=T
7におけるゼロクロス点は、(図では左足を前足とする)次の一歩の踵接地タイミングである。
【0070】
このように、上下軸加速度には、ヒトの歩行の一歩の間に図示して説明したような波形が現れる。本明細書では、前足の踵が接地したタイミング(踵接地タイミング)から次の踵接地タイミングまでの期間(StepT)を、基準期間として規定する。なお、以下の説明において特に区別する必要がある場合に限り、左足の踵接地タイミングから右足の踵接地タイミングまでの期間を左足基準期間と称し、右足の踵接地タイミングから左足の踵接地タイミングまでの期間を右足基準期間と称することとして、左足による一歩と右足による一歩のそれぞれの基準期間を区別する。
【0071】
上方を正とする前記上下軸加速度の時間的な変化波形においては、加速度値が負から正へ変化するゼロクロス点の出現タイミングから次の負から正へ変化するゼロクロス点の出現タイミングまでの期間が一基準期間に相当する。
【0072】
次に、
図6、
図7、および、
図8を参照し、発明者らによる鋭意研究によって明らかとなったヒトの歩行動作の左右バランスと三軸加速度それぞれの波形に現れる特徴との関係について説明する。
【0073】
図6は、歩行時に、身体の上下軸方向の揺れに左右差がないヒト(
図6(A))の上下軸加速度典型例(
図6(C))と、身体の上下軸方向の揺れに左右差があるヒト(
図6(B))の上下軸加速度典型例(
図6(D))と、を示す図である。なお、
図6(C)および
図6(D)のグラフでは、上記した踵接地のタイミングに破線を付し、各一歩を区別しやすいようにしている。すなわち、期間Step1,Step2,...は、それぞれ上記した基準期間に相当する。
【0074】
身体の上下軸方向の揺れに左右差がないヒト(
図6(A))の上下軸加速度典型例(
図6(C))では、各基準期間における(上下軸)加速度最大値(例えば
図6(C)の丸で囲った部分)に顕著な差は見られない。
【0075】
これに対し、身体の上下軸方向の揺れに左右差があるヒト(
図6(B))の上下軸加速度典型例(
図6(D))では、奇数番目の基準期間における(上下軸)加速度最大値と、隣接する偶数番目の基準期間における(上下軸)加速度最大値との間に顕著な差が現れる。また、奇数番目の基準期間(左脚基準期間または右脚基準期間)における(上下軸)加速度最大値と、隣接する偶数番目の基準期間(右脚基準期間または左脚基準期間)における(上下軸)加速度最大値との間の大小関係は、連続する複数歩数の期間において一定に保たれる。これは、
図6(B)を参照すれば、歩行時の被測定者90の腰部の上向きの運動において当該運動が最高速に達するまでの時間に違いがあることを意味する。視覚的には、
図6(B)のように、右脚基準期間の最大加速度61が左脚基準期間の最大加速度63よりも大きいヒトの場合、右脚基準期間においてはビクンと素早く腰部が跳ね上がり、左脚基準期間においてはゆっくりと腰部が上方に向かって運動するような、運動の左右差として現れる。このような歩行をするヒトは、重心が左右のいずれか一方に偏っている場合があるとされる。このような上下軸方向の身体運動の左右差は、上下軸加速度の時間変化波形において顕著に表れる。そのため、本発明の実施の形態では、上下軸方向の歩行時の身体の揺れの左右差を、上下軸加速度の時間変化波形から検出する。これにより、歩行時の身体の上下軸方向の揺れの左右差を、適切に示すことができる。なお、上下軸加速度を一階積分または二階積分して得られる時間変化波形(速度、軌道)では、このような左右差は、加速度時間変化波形ほどには顕著に見られない。
【0076】
次に、
図7は、歩行時に、身体の左右軸方向の揺れに左右差がないヒト(
図7(A))の左右軸方向の軌道波形の典型例(
図7(C))と、身体の左右軸方向の揺れに左右差があるヒト(
図7(B))の左右軸方向の軌道波形の典型例(
図7(D))と、を示す図である。なお、
図7(C)および
図7(D)のグラフでも、上記した踵接地のタイミングに破線を付し、各一歩を区別しやすいようにしている。すなわち、期間Step1,Step2,...は、それぞれ上記した基準期間に相当する。
【0077】
身体の左右軸方向の揺れに左右差がないヒト(
図7(A))の左右軸方向の軌道の典型例(
図7(C))では、各基準期間における左右軸方向の軌道の最大変位の絶対値(例えば
図7(C)の丸で囲った部分)に顕著な差は見られない。
【0078】
これに対し、身体の左右軸方向の揺れに左右差があるヒト(
図7(B))の左右軸方向の軌道波形の典型例(
図7(D))では、奇数番目の基準期間における(左右軸)最大変位の絶対値と、隣接する偶数番目の基準期間における(左右軸)最大変位の絶対値との間に顕著な差が現れる。また、奇数番目の基準期間(左脚基準期間または右脚基準期間)における(左右軸)最大変位の絶対値と、隣接する偶数番目の基準期間(右脚基準期間または左脚基準期間)における(左右軸)最大変位の絶対値との間の大小関係は、連続する複数歩数の期間において一定に保たれる。これは、
図7(B)を参照すれば、歩行時の被測定者90の腰部の左右方向の変位量に違いがあることを意味する。視覚的には、
図7(B)のように、右脚基準期間の最大変位71が左脚基準期間の最大変位73よりも大きいヒトの場合、右脚基準期間においては大きく腰部がスウィングし、左脚基準期間においては右脚基準期間ほどに腰部がスウィングしないといった、運動の左右差として現れる。このような歩行動作の左右差は、腕の振りに左右差があるときに現れることがあるとされる。このような左右軸方向の身体運動の左右差は、左右軸軌道の時間変化波形において顕著に表れる。そのため、本発明の実施の形態では、左右軸方向の歩行時の身体の揺れの左右差を、左右軸加速度の二階積分である左右軸軌道の時間変化波形から検出する。これにより、歩行時の身体の左右軸方向の揺れの左右差を、適切に示すことができる。
【0079】
図8は、歩行時に、身体の前後軸方向の揺れに左右差がないヒト(
図8(A))の前後軸加速度典型例(
図8(C))と、身体の前後軸方向の揺れに左右差があるヒト(
図8(B))の前後軸加速度典型例(
図8(D))と、を示す図である。なお、
図8(C)および
図8(D)のグラフでも、上記した踵接地のタイミングに破線を付し、各一歩を区別しやすいようにしている。すなわち、期間Step1,Step2,...は、それぞれ上記した基準期間に相当する。
【0080】
身体の前後軸方向の揺れに左右差がないヒト(
図8(A))の前後軸加速度典型例(
図8(C))では、各基準期間における(前後軸)加速度最大値(例えば
図8(C)の丸で囲った部分)に顕著な差は見られない。
【0081】
これに対し、身体の前後軸方向の揺れに左右差があるヒト(
図8(B))の前後軸加速度典型例(
図8(D))では、奇数番目の基準期間における(前後軸)加速度最大値と、隣接する偶数番目の基準期間における(前後軸)加速度最大値との間に顕著な差が現れる。また、奇数番目の基準期間(左脚基準期間または右脚基準期間)における(前後軸)加速度最大値と、隣接する偶数番目の基準期間(右脚基準期間または左脚基準期間)における(前後軸)加速度最大値との間の大小関係は、連続する複数歩数の期間において一定に保たれる。これは、
図8(B)を参照すれば、歩行時の被測定者90の腰部の前向きの運動に違いがあることを意味する。視覚的には、
図8(B)のように、右脚基準期間の最大加速度81が左脚基準期間の最大加速度83よりも大きいヒトの場合、右脚基準期間においては足が内側(進行方向中心軸をまたぐ方向)に大きく入り込み、左脚基準期間においては右脚基準期間におけるそれほどには足が内側に入り込まないといった、運動の左右差として現れる。このような歩行をするヒトは、骨盤の向きが進行方向に対して直角に保たれていない場合があるとされる。このような前後軸方向の身体運動の左右差は、前後軸加速度の時間変化波形において顕著に表れる。そのため、本発明の実施の形態では、前後軸方向の歩行時の身体の揺れの左右差を、前後軸加速度の時間変化波形から検出する。これにより、歩行時の身体の前後軸方向の揺れの左右差を、適切に示すことができる。なお、前後軸加速度を一階積分または二階積分して得られる時間変化波形(速度、軌道)では、このような左右差は、加速度時間変化波形ほどには顕著に見られない。
【0083】
図13を参照すれば、左右バランス推定処理において、制御部110は先ず、ステップS2において取得した三軸加速度の時間変化波形から、上下軸加速度時系列データを生成し、生成した上下軸加速度時系列データから負から正へ転じるゼロクロス点のタイミング(
図5における時間t=0)を検出し、(当該ゼロクロス点が踵接地タイミングと略一致するという実験的事実に基づいて)検出したタイミングを踵接地タイミングとして特定する。制御部110は、次の負から正へ転じるゼロクロス点を同様にして検出し、当該タイミングを次の一歩の基準期間の始期として(現基準期間の終期として)特定する(ステップS41)。そのようにして、制御部110は、少なくとも連続する10歩分の基準期間(
図9のStep1からStep10)を特定する。
【0084】
次に、ステップS42において、制御部110は、左右軸加速度時系列データから左右軸軌道時系列データ(
図10)を算出する。
【0085】
次に、ステップS43において、制御部110は、上下軸加速度時系列データ(
図9)、左右軸軌道時系列データ(
図10)、前後軸加速度時系列データ(
図11)それぞれの測定開始から10歩分(Step1〜Step10)のデータについて、最初の3歩分(Step1〜Step3)と最後の3歩分(Step8〜Step10)を除いた、4歩分(Step4〜Step7)の時系列データを抽出する。この処理には、測定開始時近傍および終了時近傍における歩行姿勢の乱れによる影響が評価結果におよばないようにする効果がある。ステップS44の処理、ステップS45の処理、および、ステップS46の処理では、このようにして抽出された4歩分の連続した基準期間にわたる時系列データが用いられる。
【0086】
ステップS44において、制御部110は、4歩分の上下軸加速度時系列データを用いて、左脚基準期間における身体(主として腰部)の上下軸方向の揺れと右脚基準期間における身体(主として腰部)の上下軸方向の揺れとの間の差異の程度を示す量(Z特徴量)を算出する。
【0087】
具体的には、制御部110は、ステップS44において、4歩分の上下軸加速度時系列データに含まれる任意の左脚基準期間(例えば、偶数番目の基準期間)における上下軸加速度の最大値と当該左脚基準期間と隣接する右脚基準期間(奇数番目の基準期間)における上下軸加速度の最大値との差の絶対値を算出し、それをZ特徴量とする。例えば、Z特徴量は、
図9を参照すれば、基準期間Stepi(iは、4〜7)における上下軸加速度最大値をZAMXiとして、
Z特徴量 = |ZAMX6−ZAMX7|、 ・・・(1a)
または、
Z特徴量 = |ZAMX5−ZAMX6|、 ・・・(1b)
といった量である。
【0088】
なお、制御部110は、4歩分の上下軸加速度時系列データについて、左脚基準期間における上下軸加速度の最大値と当該左脚基準期間と隣接する右脚基準期間における上下軸加速度の最大値との差の絶対値を複数求め、当該求めた複数の差の絶対値の平均値を用いて前記Z特徴量としてもよい。この場合、
図9を参照すれば、
Z特徴量 = (|ZAMX4−ZAMX5|
+|ZAMX5−ZAMX6|
+|ZAMX6−ZAMX7|)/3 ・・・(1c)
である。
【0089】
なお、Z特徴量の導出において、左脚基準期間における上下軸加速度の最大値と当該左脚基準期間と隣接する右脚基準期間における上下軸加速度の最大値との差の絶対値を、当該左脚基準期間における上下軸加速度の代表値およびそれと隣接した右脚基準期間における上下軸加速度の代表値を用いて正規化してもよい。この場合、正規化後の値を、以降、Z特徴量として用いればよい。そうすることで、推定精度の向上が期待できる。ここでの上下軸加速度の代表値としては、各基準期間における上下軸加速度の最大値、最小値、最大値と最小値の相加平均値、最小値と最大値との隔たりの大きさ、といった量を用いることができ、またこれらに限定されない。
【0090】
次に、ステップS45において、制御部110は、4歩分の左右軸軌道時系列データを用いて、左脚基準期間における身体(主として腰部)の左右軸方向の揺れと右脚基準期間における身体(主として腰部)の左右軸方向の揺れとの間の差異の程度を示す量(Y特徴量)を算出する。
【0091】
具体的には、制御部110は、ステップS45において、4歩分の左右軸軌道時系列データに含まれる任意の左脚基準期間(例えば、偶数番目の基準期間)における左右軸軌道の最大変位の絶対値と当該左脚基準期間と隣接する右脚基準期間(奇数番目の基準期間)における左右軸軌道の最大変位の絶対値との差の絶対値を算出し、それをY特徴量とする。例えば、Y特徴量は、
図10を参照すれば、基準期間Stepi(iは、4〜7)における左右軸最大変位をYTMXiとして、
Y特徴量 = ||YTMX6|−|YTMX7||、 ・・・(2a)
または、
Y特徴量 = ||YTMX5|−|YTMX6||、 ・・・(2b)
といった量である。なお、ここでの最大変位とは、一基準期間において進行方向中心軸から最も離れた時点の左右軸座標値を指し、離れる方向を問わないものとする。
【0092】
なお、制御部110は、4歩分の左右軸軌道時系列データについて、左脚基準期間における左右軸最大変位の絶対値と当該左脚基準期間と隣接する右脚基準期間における左右軸最大変位の絶対値との差の絶対値を複数求め、当該求めた複数の差の絶対値の平均値を用いて前記Y特徴量としてもよい。この場合、
図10を参照すれば、
Y特徴量 = (||YTMX4|−|YTMX5||
+||YTMX5|−|YTMX6||
+||YTMX6|−|ZAMX7||)/3 ・・・(2c)
である。あるいは、
Y特徴量 = (||YTMX4|−|YTMX5||
+||YTMX6|−|ZAMX7||)/2 ・・・(2d)
でもよい。
【0093】
なお、Y特徴量の導出においても、左脚基準期間における左右軸最大変位の絶対値と当該左脚基準期間と隣接する右脚基準期間における左右軸最大変位の絶対値との差の絶対値を、当該左脚基準期間における左右軸軌道の代表値およびそれと隣接した右脚基準期間における左右軸軌道の代表値を用いて正規化してもよい。この場合、正規化後の値を、以降、Y特徴量として用いればよい。そうすることで、推定精度の向上が期待できる。ここでの左右軸軌道の代表値としては、各基準期間における左右軸軌道の最大値、最小値、最大値と最小値の相加平均値、最小値と最大値との隔たりの大きさ、といった量を用いることができ、またこれらに限定されない。
【0094】
次に、ステップS46において、制御部110は、4歩分の前後軸加速度時系列データを用いて、左脚基準期間における身体(主として腰部)の前後軸方向の揺れと右脚基準期間における身体(主として腰部)の前後軸方向の揺れとの間の差異の程度を示す量(X特徴量)を算出する。
【0095】
具体的には、制御部110は、ステップS46において、4歩分の前後軸加速度時系列データに含まれる任意の左脚基準期間(例えば、偶数番目の基準期間)における前後軸加速度の最大値と当該左脚基準期間と隣接する右脚基準期間(奇数番目の基準期間)における前後軸加速度の最大値との差の絶対値を算出し、それをX特徴量とする。例えば、X特徴量は、
図11を参照すれば、基準期間Stepi(iは、4〜7)における前後軸加速度最大値をXAMXiとして、
X特徴量 = |XAMX6−XAMX7|、 ・・・(3a)
または、
X特徴量 = |XAMX5−XAMX6|、 ・・・(3b)
といった量である。
【0096】
なお、制御部110は、4歩分の前後軸加速度時系列データについて、左脚基準期間における前後軸加速度の最大値と当該左脚基準期間と隣接する右脚基準期間における前後軸加速度の最大値との差の絶対値を複数求め、当該求めた複数の差の絶対値の平均値を用いて前記X特徴量としてもよい。この場合、
図11を参照すれば、
X特徴量 = (|XAMX4−XAMX5|
+|XAMX5−XAMX6|
+|XAMX6−XAMX7|)/3 ・・・(3c)
である。
【0097】
なお、X特徴量の導出においも、左脚基準期間における前後軸加速度の最大値と当該左脚基準期間と隣接する右脚基準期間における前後軸加速度の最大値との差の絶対値を、当該左脚基準期間における前後軸加速度の代表値およびそれと隣接した右脚基準期間における前後軸加速度の代表値を用いて正規化してもよい。この場合、正規化後の値を、以降、X特徴量として用いればよい。そうすることで、推定精度の向上が期待できる。ここでの前後軸加速度の代表値としては、各基準期間における前後軸加速度の最大値、最小値、最大値と最小値の相加平均値、最小値と最大値との隔たりの大きさ、といった量を用いることができ、またこれらに限定されない。
【0098】
以上のようにして、制御部110は、演算部として動作して、上下軸加速度時系列データから、左脚基準期間における身体(主として腰部)の上下軸方向の揺れと右脚基準期間における身体(主として腰部)の上下軸方向の揺れとの間の差異の程度を示すZ特徴量を算出し、左右軸加速度時系列データから左右軸軌道時系列データを導出し、導出された左右軸軌道時系列データから左脚基準期間における身体(主として腰部)の左右軸方向の揺れと右脚基準期間における身体(主として腰部)の左右軸方向の揺れとの間の対称性の程度を示すY特徴量を算出し、前後軸加速度時系列データから、左脚基準期間における身体(主として腰部)の前後軸方向の揺れと右脚基準期間における身体(主として腰部)の前後軸方向の揺れとの間の差異の程度を示す量であるX特徴量を算出する。
【0099】
図12を参照すれば、制御部110は、ステップS5において、評価部として動作して、被測定者の歩行時の左右バランスを複数の観点(上下軸方向の身体の揺れの左右差、左右軸方向の身体の揺れの左右差、前後軸方向の身体の揺れの左右差)から評価する。
【0100】
具体的な評価の手法について、
図14を参照して説明する。
図14は、複数の被測定者(Aさん〜Eさん)について、左右バランスの評価を行った結果をまとめた表である。サブテーブルSCYは、左右軸方向の左右バランスを11段階で多段的に評価した結果であり、サブテーブルSCZは、上下軸方向の左右バランスを11段階で多段的に評価した結果であり、サブテーブルSCXは、前後軸方向の左右バランスを11段階で多段的に評価した結果である。サブテーブルCMTは、各被測定者の評価結果に付随してユーザに報知されるコメントの例である。
【0101】
本明細書において使用するZ特徴量、Y特徴量、X特徴量では、その定義(式(1a)〜(3c))等から明らかなように、被測定者の三軸の各軸方向に沿った揺れの左右差が大きければ大きいほどに、その軸の特徴量の大きさは増大する。
【0102】
そこで、制御部110は、ステップS5(
図12)において、Z特徴量を、予め定めた基準値(第1の基準値)と比較し、Z特徴量が第1の基準値よりも大きい場合に、身体(主として腰部)の上下方向の揺れに左右差がある、と評価する。なお、第1の基準値は、複数の被測定者を観察して求めた実験値である。逆に、Z特徴量が第1の基準値以下である場合に、身体(主として腰部)の上下方向の揺れに左右差はない、と評価する。
【0103】
さらに、制御部110は、ゼロから第1の基準値までの間に1つまたは複数の副基準を設けることにより、身体(主として腰部)の上下動に左右差はないと評価した場合についてさらに多段的に左右バランスを評価するとともに、第1の基準値より大きい値域にも1つまたは複数の副基準を設けることにより、身体(主として腰部)の上下動に左右差があると評価した場合についてもさらに多段的に左右バランスを評価する。
【0104】
図14に示した例では、評価単位「ブレ」値0,1,2が、上下動に左右差がない、と評価される場合(Z特徴量が第1の基準値以下である場合)に相当し、評価単位「ブレ」値3以上が、上下動に左右差がある、と評価される場合(Z特徴量が第1の基準値よりも大きい場合)に相当する。
【0105】
また、制御部110は、ステップS5(
図12)において、Y特徴量を、予め定めた基準値(第2の基準値)と比較し、Y特徴量が第2の基準値よりも大きい場合に、身体(主として腰部)の左右方向の揺れに左右差がある、と評価する。なお、第2の基準値は、複数の被測定者を観察して求めた実験値である。逆に、Y特徴量が第2の基準値以下である場合に、身体(主として腰部)の左右方向の揺れに左右差はない、と評価する。
【0106】
さらに、制御部110は、ゼロから第2の基準値までの間に1つまたは複数の副基準を設けることにより、身体(主として腰部)の左右方向の揺れに左右差はないと評価した場合についてさらに多段的に左右バランスを評価するとともに、第2の基準値より大きい値域にも1つまたは複数の副基準を設けることにより、身体(主として腰部)の左右方向の揺れに左右差があると評価した場合についてもさらに多段的に左右バランスを評価する。
【0107】
図14に示した例では、評価単位「ブレ」値0,1,2が、左右方向の揺れに左右差がない、と評価される場合(Y特徴量が第2の基準値以下である場合)に相当し、評価単位「ブレ」値3以上が、左右方向の揺れに左右差がある、と評価される場合(Y特徴量が第2の基準値より大きい場合)に相当する。
【0108】
また、制御部110は、ステップS5(
図12)において、X特徴量についても同様に、予め定めた基準値(
第3の基準値)と比較し、X特徴量が第3の基準値よりも大きい場合に、身体(主として腰部)の前後方向の揺れに左右差がある、と評価する。なお、第3の基準値もまた、複数の被測定者を観察して求めた実験値である。逆に、X特徴量が第3の基準値以下である場合に、身体(主として腰部)の前後方向の揺れに左右差はない、と評価する。
【0109】
さらに、制御部110は、ゼロから第3の基準値までの間に1つまたは複数の副基準を設けることにより、身体(主として腰部)の前後方向の揺れに左右差はないと評価した場合についてさらに多段的に左右バランスを評価するとともに、第3の基準値より大きい値域にも1つまたは複数の副基準を設けることにより、身体(主として腰部)の前後方向の揺れに左右差があると評価した場合についてもさらに多段的に左右バランスを評価する。
【0110】
図14に示した例では、評価単位「ブレ」値0,1,2が、前後方向の揺れに左右差がない、と評価される場合(X特徴量が第3の基準値以下である場合)に相当し、評価単位「ブレ」値3以上が、前後方向の揺れに左右差がある、と評価される場合(X特徴量が第3の基準値より大きい場合)に相当する。
【0111】
そして最後に、ステップS6において、制御部110は、Z特徴量、Y特徴量、および、X特徴量に基づいて、被測定者の歩行姿勢の左右バランスの総合評価を行う。ここでは、制御部110は、三軸の各方向に関する身体の揺れについて、いずれの方向の揺れにも左右差がないと評価された場合に、被測定者の歩行姿勢に左右差は無いと評価する。逆に、三軸の各方向に関する身体の揺れについて、少なくともいずれか一方向の揺れに左右差があると評価された場合には、被測定者の歩行姿勢に左右差はあると評価する。そして、制御部110は、各軸に関する評価結果、総合評価結果、各軸評価において左右差が見られた軸を特定する情報等を、スマートフォン200へ出力する。制御部110は、
図14のコメントに関するサブテーブルCMTにあるようなメッセージを、スマートフォン200へ出力してもよい。
【0112】
スマートフォン200は、活動量計100からの情報を受信すると、各軸に関する左右差評価結果(「ブレ」値)、総合評価結果、評価コメント等を、表示部240に表示する。すなわち、表示部240は、評価結果をユーザへ報知するための報知部として動作する。スマートフォン200の表示部240には、例えば「あなたの歩行姿勢には、腰の上下(左右、および/または、前後)の揺れに左右差があります。」というようにメッセージとして表示される。なお、表示部240には、静止画であるイラストや動画であるアニメーション等を用いて左右バランスの傾向が直感的にわかるような表示を行ってもよい。
【0113】
図15(A)および
図15(B)は、スマートフォン200のメモリ220(記憶部)に記憶され、腰の上下方向の揺れに左右差があると評価されたときに、表示部240(報知部)に表示される動画のフレーム抜粋である。この動画は、Z特徴量が第1の基準値よりも大きい場合に見られる歩行動作を視覚的に示すものであればよい。動画は、上下方向の揺れの支持脚による差異を、Z特徴量が第1の基準値である場合に見られるような歩行動作よりもさらに誇張したものであってもよい。また、動画には、ユーザに左右差が見られる揺れの方向を示唆するように、矢印151および矢印153といったグラフィックを付してもよい。また、
図15(A)および
図15(B)のような動画フレームを静止画として表示することにより、ユーザに対し、被測定者の歩行姿勢の特徴(左右差が見られる動作の方向性)を示唆してもよい。
【0114】
図16(A)および
図16(B)は、スマートフォン200のメモリ220(記憶部)に記憶され、腰の左右方向の揺れに左右差があると評価されたときに、表示部240(報知部)に表示される動画のフレーム抜粋である。この動画は、Y特徴量が第2の基準値よりも大きい場合に見られる歩行動作を視覚的に示すものであればよい。動画は、左右方向の揺れの支持脚による差異を、Y特徴量が第2の基準値である場合に見られるような歩行動作よりもさらに誇張したものであってもよい。また、動画には、ユーザに左右差が見られる揺れの方向を示唆するように、矢印161および矢印163といったグラフィックを付してもよい。また、
図16(A)および
図16(B)のような動画フレームを静止画として表示することにより、ユーザに対し、被測定者の歩行姿勢の特徴(左右差が見られる動作の方向性)を示唆してもよい。
【0115】
図17(A)および
図17(B)は、スマートフォン200のメモリ220(記憶部)に記憶され、腰の前後方向の揺れに左右差があると評価されたときに、表示部240(報知部)に表示される動画のフレーム抜粋である。この動画は、X特徴量が第3の基準値よりも大きい場合に見られる歩行動作を視覚的に示すものであればよい。動画は、前後方向の揺れの支持脚による差異を、X特徴量が第3の基準値である場合に見られるような歩行動作よりもさらに誇張したものであってもよい。また、動画には、ユーザに左右差が見られる揺れの方向を示唆するように、矢印171および矢印173といったグラフィックを付してもよい。また、
図17(A)および
図17(B)のような動画フレームを静止画として表示することにより、ユーザに対し、被測定者の歩行姿勢の特徴(左右差が見られる動作の方向性)を示唆してもよい。
【0116】
この表示部240の表示内容を見て、ユーザは、歩行時の姿勢、動作に左右バランスの崩れが存在するか否かといった情報のみならず、自身の歩行姿勢、動作に存在する左右バランスの崩れにより、自身の歩行姿勢がどのような視覚的特徴を有するかといった情報を取得することができる。自身の歩行姿勢がどのような視覚的特徴を知ることは、ユーザが自身の歩行姿勢、動作を改善する上で非常に有用な情報として用いられる。よって、ユーザは、効率よく自身の歩行姿勢、動作を改善することが可能となる。
【0117】
上述の実施形態では、活動量計100とスマートフォン200とは、BLE通信によって互いに通信を行ったが、これに限られるものではない。例えば、活動量計100とスマートフォン200とは、NFC(Near Field Communication;近距離無線通信)によって、スマートフォン200と活動量計100とが互いに接近したときに通信を行うようにしてもよい。
【0118】
また、上述の実施形態では、本発明の歩行姿勢計を、活動量計100とスマートフォン200とを含むシステムとして構成したが、これに限られるものではない。
【0119】
例えば、本発明の歩行姿勢計を、スマートフォン200のみで構成しても良い。その場合、スマートフォン200が加速度センサを含むものとする。また、スマートフォン200のメモリ220には、制御部210に、ヒトの歩行姿勢が正しい姿勢であるか否かを定量的に評価するプログラム、より詳しくは、歩行中の
身体の揺れの左右差を評価するプログラムをインストールする。これにより、本発明の歩行姿勢計を小型かつコンパクトに構成することができる。
【0120】
また、そのプログラムは、アプリケーションソフトウェアとして、CD、DVD、フラッシュメモリなどの記録媒体に記録することができる。この記録媒体に記録されたアプリケーションソフトウェアを、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)などの実質的なコンピュータ装置にインストールすることによって、それらのコンピュータ装置に、ヒトの歩行姿勢が正しい姿勢であるか否かを定量的に評価する方法を実行させることができる。